(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それにもかかわらず、関連分野における防刃織布物品は未だに欠陥がある。このような織布は、刃が当たった時に織物または織物層がシフトせず、刃が織物を貫通しないように十分な摩擦が作り出されるように、極めて目の詰んだ織り方(すなわち56×56/インチより大きいピックカウント)を必要とする。このような高密度の織布を作り出すことは、製造に費用がかかる極めて細い高品質のヤーンの使用を必要とする。またこのような細いヤーンの使用も、それらが高度に撚られているか、および/または高度に混繊されていることを必要としているが、細いヤーンは繊細であり、撚りまたは混繊の間に破断することが多く、生産性は未だに低い。最終的に、弾丸または他の発射体を止めることにおいて、撚った繊維から形成された複合材料は、無撚の繊維から形成された複合材料より有効性が低い。したがって、現在、優れた耐突刺性と優れた防弾性の両方を有する改善された織物の防弾性複合材料が当業界において求められている。本発明は、この要求に対する解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の横方向に配置された横糸細長本体と織り合わせて接合させた複数の縦糸細長本体を含む織布であって、前記縦糸細長本体および横糸細長本体はそれぞれ、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する熱可塑性の高強力細長本体を含み、ここで隣接する縦糸細長本体は、縦糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、隣接する横糸細長本体は、横糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけている、上記織布を提供する。
【0007】
本発明はまた、織布から形成された隙間のない融着シート、および前記隙間のない融着シートから形成された多層物品も提供する。
本発明はさらに、寸法的に安定な隙間のある布を形成するための方法であって、該方法は、
a)複数の横方向に配置された横糸細長本体と織り合わせて接合させた複数の縦糸細長本体を含む織布を用意するステップであって、前記縦糸細長本体および横糸細長本体はそれぞれ、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する熱可塑性の高強力細長本体を含み、ここで隣接する縦糸細長本体は、縦糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、隣接する横糸細長本体は、横糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけている、ステップと;
b)高強力の縦糸細長本体および/または高強力の横糸細長本体の熱可塑性ポリマーを少なくとも部分的に融解させるステップと;
c)高強力の縦糸細長本体および/または高強力の横糸細長本体の、融解させた熱可塑性ポリマーを凝固させることにより、高強力の縦糸細長本体および高強力の横糸細長本体を互いに接合させ、それによって寸法的に安定な隙間のある布を形成するステップと
を含む、上記方法を提供する。
【0008】
本発明は、さらにその上、防弾性の隙間のない熱融着した多層物品を形成するための方法であって、
a)複数の横方向に配置された横糸細長本体と織り合わせて接合させた複数の縦糸細長本体を含む、少なくとも1つの隙間のある織布を用意するステップであって、前記縦糸細長本体および横糸細長本体はそれぞれ、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する熱可塑性の高強力細長本体を含み、ここで隣接する縦糸細長本体は、縦糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、隣接する横糸細長本体は、横糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけている、ステップと;
b)少なくとも1つの、織布から形成された隙間のない融着シートを用意するステップであって、前記複数の横方向に配置された横糸細長本体と織り合わせて接合させた複数の縦糸細長本体を含む織布、前記縦糸細長本体および横糸細長本体はそれぞれ、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する熱可塑性の高強力細長本体を含み、ここで隣接する縦糸細長本体は、縦糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、隣接する横糸細長本体は、横糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、ここで隙間のない融着シートは、隣接する高強力細長本体の間に実質的にギャップを有さず、ここで前記高強力細長本体はオーバーラップしない、ステップと;
c)少なくとも1つの隙間のある織布と少なくとも1つの隙間のない融着シートとを一緒に隣接させるステップと;
d)織布を融着シートに付着させて織布中で高強力細長本体を平らにするのに十分な条件下で、隣接させた少なくとも1つの織布と少なくとも1つの融着シートとを一緒に熱プレスするステップであって、それによって織布中の隣接する高強力の縦糸細長本体の縦エッジを互いに接触させて、前記隣接する高強力の縦糸細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力の縦糸細長本体はオーバーラップしない、ステップと
を含む、上記方法を提供する。
【0009】
本発明は、さらにその上、隙間のない熱融着した多層物品を形成するための方法であって、織布を、高強力細長本体の平行な配列を含むウェブと隣接させるステップであって、ここでウェブの高強力細長本体は、織布の高強力の縦糸細長本体に対して垂直に配置される、ステップと、織布をウェブに付着させ、織布とウェブのそれぞれ両方の高強力細長本体を平らにするのに十分な条件下で、隣接させた織布とウェブとを熱プレスするステップであって、それによってそれぞれ織布およびウェブ中の隣接する高強力細長本体の縦エッジを互いに接触させ、前記隣接する高強力細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力細長本体はオーバーラップしていない、ステップを含む、上記方法を提供する。
【0010】
本発明は、さらにその上、隙間のない熱融着した多層物品を形成するための方法であって、隙間のない融着シートを、高強力細長本体の平行な配列を含むウェブと隣接させるステップであって、ここでウェブの高強力細長本体は、融着シートの高強力細長本体に対して垂直に配置される、ステップと、融着シートをウェブに付着させてウェブの高強力細長本体を平らにするのに十分な条件下で、隣接させた融着シートとウェブとを熱プレスするステップであって、それによってウェブ中の隣接する高強力細長本体の縦エッジを互いに接触させて、前記隣接する高強力細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力細長本体はオーバーラップしない、ステップとを含む、上記方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜6で例示されているように、高強度の複合シートは、高強力の縦糸細長本体を横方向に配置された高強力の縦糸細長本体と織り合わせることによって製造される。「細長本体」は、本明細書で使用される場合、幅および厚さの横断寸法よりかなり長い長さ寸法を有する本体である。このようなものとしては、モノフィラメント、融着したまたは融着していない、無撚の熱融着したマルチフィラメントテープ、または非繊維状高分子テープである無撚マルチフィラメント繊維(すなわち無撚糸)が挙げられる。またこのようなものとしては、融着したまたは融着していない、撚ったマルチフィラメント繊維(すなわち撚糸)も挙げられるが、本発明の布および融着シートを形成する細長本体が全て無撚の細長本体であることが最も好ましい。
【0013】
「高強力」の細長本体は、本明細書で使用される場合、少なくとも約14g/デニール、より好ましくは約20g/デニールまたはそれより高い、さらにより好ましくは約25g/デニールまたはそれより高い、さらにより好ましくは約30g/デニールまたはそれより高い、さらにより好ましくは約40g/デニールまたはそれより高い、さらにより好ましくは約45g/デニールまたはそれより高い、最も好ましくは約50g/デニールまたはそれより高いテナシティを有するものである。またこのような高強力細長本体は、少なくとも約300g/デニール、より好ましくは約400g/デニールまたはそれより高い、より好ましくは約500g/デニールまたはそれより高い、さらにより好ましくは約1,000g/デニールまたはそれより高い、最も好ましくは約1,500g/デニールまたはそれより高い引張弾性率も有する。また高強力細長本体は、少なくとも約15J/gまたはそれより高い、より好ましくは約25J/gまたはそれより高い、より好ましくは約30J/gまたはそれより高い破断エネルギーも有し、最も好ましくは、約40J/gまたはそれより高い破断エネルギーを有する。これらの組み合わされた高い強度特性を有する細長本体を形成する方法は、慣習的に当業界において公知である。
【0014】
用語「デニール」は、繊維/テープの9000メートルあたりの質量(グラム)に等しい線密度の単位を指す。用語「テナシティ」は、応力がかけられていない試料の線密度単位(デニール)あたりの力(グラム)として示される引張応力を指す。「初期弾性率」は、その変形抵抗を代表する材料の特性である。用語「引張弾性率」は、元の繊維/テープの長さの割合として示される歪み(インチ/インチ)の変化に対する、グラム重量/デニール(g/d)で示されるテナシティにおける変化の比率を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「テープ」は、平坦な、幅の狭い、一体式のストリップであって、その幅より長い長さを有し、平均断面アスペクト比、すなわちテープ物品の長さ全体にわたり平均された断面の最大寸法と最小寸法との比率が少なくとも約3:1の材料のものを指す。テープは、繊維材料であってもよいし、または非繊維材料であってもよい。「繊維材料」は、1つまたはそれより多くのフィラメントを含む。本発明の高分子テープの断面は、長方形、卵形、多角形、不規則な形状であってもよいし、または本明細書で概説される幅、厚さおよびアスペクト比の必要条件を満たすあらゆる形状を有していてもよい。
【0016】
このようなテープは、好ましくは実質的に長方形の断面を有し、その厚さは、約0.5mmまたはそれ未満、より好ましくは約0.25mmまたはそれ未満、さらにより好ましくは約0.1mmまたはそれ未満、さらにより好ましくは約0.05mmまたはそれ未満である。最も好ましい実施態様において、高分子テープは、最大約3ミル(76.2μm)、より好ましくは約0.35ミル(8.89μm)〜約3ミル(76.2μm)、最も好ましくは約0.35ミル〜約1.5ミル(38.1μm)の厚さを有する。厚さは、断面の最も厚い領域で測定される。
【0017】
本発明において有用な高分子テープは、好ましくは約2.5mm〜約50mm、より好ましくは約5mm〜約25.4mm、さらにより好ましくは約5mm〜約20mm、最も好ましくは約5mm〜約10mmの幅を有する。これらの寸法は変更してもよいが、本明細書において形成された高分子テープは、最も好ましくは、約3:1より大きい、より好ましくは少なくとも約5:1、さらにより好ましくは少なくとも約10:1、さらにより好ましくは少なくとも約20:1、さらにより好ましくは少なくとも約50:1、さらにより好ましくは少なくとも約100:1、さらにより好ましくは少なくとも約250:1の平均断面アスペクト比、すなわちテープ物品の長さ全体にわたり平均された断面の最大寸法と最小寸法との比率が達成される寸法を有するように製造され、最も好ましい高分子テープは、少なくとも約400:1の平均断面アスペクト比を有する。
【0018】
高分子テープは、例えば押出し、プルトルージョン、スリットフィルム技術などの慣習的に公知の方法によって形成される。例えば、標準的な厚さを有するユニテープ(unitape)を、望ましい長さを有するテープに切断するか、または切り裂いてもよく、これは、マルチプライの不織布繊維層からテープを生産するための望ましい方法である。切り裂く器具の例は、前記ロール上に巻き取られるときにシート状の原料ウェブを切り裂くための器具を教示する米国特許第6,098,510号に開示されている。切り裂く器具の別の例は、複数の刃を用いて高分子フィルムのシートを複数のフィルムストリップに切り裂くための器具を教示する米国特許第6,148,871号に開示されている。米国特許第6,098,510号および米国特許第6,148,871号両方の開示は、矛盾のない程度に参照により本明細書に組み入れられる。他の典型的な方法は、米国特許第7,300,691号;7,964,266号および7,964,267号で説明されており、これらは矛盾のない程度に参照により本明細書に組み入れられる。また、幅の狭いテープ構造は、布の薄いストリップを織ることによって形成することも公知であり、これは一般的に、矛盾のない程度に参照により本明細書に組み入れられる米国特許第2,035,138号;4,124,420号;5,115,839号で開示されたものなどのあらゆる従来の織機における設定を調整することによって達成することができ、あるいは幅の狭い織布またはリボンを織ることに特化したリボン織機の使用によって形成することも公知である。有用なリボン織機は、例えば、それぞれシュタンスシュタット、スイスのテキスタイルマ社(Textilma AG)に譲渡された、それぞれが矛盾のない程度に参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,541,461号;5,564,477号;7,451,787号および7,857,012号で開示されているが、あらゆる代替のリボン織機も等しく有用である。
【0019】
また本発明の細長本体は、フィラメント、繊維およびヤーンも包含する。繊維およびヤーンはフィラメントから形成されるという点で、繊維およびヤーンは、フィラメントと区別される。繊維は、たった1本のフィラメントから形成されてもよいし、または複数のフィラメントから形成されてもよい。たった1本のフィラメントから形成された繊維は、「シングルフィラメント」繊維または「モノフィラメント」繊維のどちらかと称され、複数のフィラメントから形成された繊維は、「マルチフィラメント」繊維と称される。「ヤーン」は、マルチフィラメント繊維に類似した、複数のフィラメントからなる1本のストランドと定義される。繊維、フィラメントおよびヤーンの断面は様々であってもよく、規則的であってもよいしまたは不規則であってもよく、例えば円形の、平坦な、または長方形の断面などであってもよい。
【0020】
高強力細長本体は、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する、あらゆる慣習的に公知の熱可塑性ポリマーのタイプを含んでいてもよい。特に好適なものは、ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレンなど;ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートなど;ポリアミド;ポリフェニレンスルフィド;ゲル紡糸ポリビニルアルコール(PVA);ゲル紡糸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ならびに同種のものから形成された細長本体である。特に好ましいものは、伸び切り鎖ポリオレフィンの細長本体、例えば高配向、高分子量ポリエチレン、特に超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の細長本体、および超高分子量ポリプロピレンの細長本体である。上述したこれらの細長本体のタイプのそれぞれは、慣習的に当業界において公知である。また、上記の材料のコポリマー、ブロックポリマーおよびブレンドも高分子の細長本体を生産するのに好適である。例えば、有用な細長本体は、少なくとも2種の異なるフィラメントタイプ、例えば2種の異なるタイプのUHMW PEフィラメント、またはポリエステルフィラメントとUHMW PEフィラメントとのブレンドを含むマルチフィラメント要素から形成されてもよい。
【0021】
熱可塑性の高強力細長本体は、熱変形、固体変形によって変形することが可能であるため、本明細書において最も好適である。このようなもののために、熱可塑性ではない合成繊維、例えば炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリアクリル系繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維などは排除される。
【0022】
特に最も好ましいものは、超高分子量ポリエチレンから形成された細長本体である。超高分子量ポリエチレンのフィラメント、繊維およびヤーンは、少なくとも300,000、好ましくは少なくとも100万、より好ましくは200万〜500万の分子量を有する伸び切り鎖ポリエチレンから形成される。このような伸び切り鎖ポリエチレン繊維/ヤーンは、例えば参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,137,394号または4,356,138号で説明されているような溶液紡糸プロセスで成長させてもよいし、または溶液から紡糸して、例えば全て参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,413,110号;4,536,536号;4,551,296号;4,663,101号;5,006,390号;5,032,338号;5,578,374号;5,736,244号;5,741,451号;5,958,582号;5,972,498号;6,448,359号;6,746,975号;6,969,553号;7,078,099号;7,344,668および米国特許出願公開公報第2007/0231572号で説明されているようなゲル構造を形成してもよい。特に好ましい繊維のタイプは、ハネウェル・インターナショナル社(Honeywell International Inc)からスペクトラ(登録商標)という商標で販売されているポリエチレン繊維のいずれかであり、例えばスペクトラ(登録商標)900繊維、スペクトラ(登録商標)1000繊維およびスペクトラ(登録商標)3000繊維などが挙げられ、これらは全て、ニュージャージー州モリスタウンのハネウェル・インターナショナル社から市販されている。
【0023】
最も好ましいUHMW PE繊維は、ASTM D1601−99によって135℃でデカリン中で測定した場合、約7dl/g〜約40dl/g、好ましくは約10dl/g〜約40dl/g、より好ましくは約12dl/g〜約40dl/g、最も好ましくは約14dl/g〜35dl/gの固有粘度を有する。最も好ましいUHMW PE繊維は高配向であり、少なくとも約0.96、好ましくは少なくとも約0.97、より好ましくは少なくとも約0.98、最も好ましくは少なくとも約0.99のc軸配向関数を有する。c軸配向関数は、フィラメント方向に対する分子鎖の方向のアライメントの程度を説明するものである。分子鎖の方向が完全にフィラメント軸に沿って並べられているポリエチレンフィラメントは、1の配向関数を有する。C軸配向関数(f
c)は、Correale, S. T.およびMurthy、Journal of Applied Polymer Science、101巻、447〜454(2006)で説明されている広角X線回折方法をポリエチレンに応用させることによって測定される。
【0024】
撚った細長本体を利用することが望ましい場合、繊維/ヤーンを撚る様々な方法は当業界公知であり、あらゆる方法を利用することができる。これに関して、撚ったマルチフィラメントのテープは、まず供給繊維/ヤーン前駆体を撚り、続いて撚った前駆体をテープに圧縮することによって形成される。有用な撚糸方法は、例えば、それらの開示は参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第2,961,010号;3,434,275号;4,123,893号;4,819,458号および7,127,879号で説明されている。繊維/ヤーンは、繊維/ヤーンの長さ1インチあたり少なくとも約0.5巻きのねじれを有するように撚られ、繊維/ヤーンの長さ1インチあたり最大約15回のねじれ、より好ましくは繊維/ヤーンの長さ1インチあたり約3回のねじれから、繊維/ヤーンの長さ1インチあたり約11回のねじれまでを有するように撚られる。代替の好ましい実施態様において、繊維/ヤーンは、繊維/ヤーンの長さ1インチあたり少なくとも11回のねじれ、より好ましくは繊維/ヤーンの長さ1インチあたり約11回のねじれから、繊維/ヤーンの長さ1インチあたり約15回のねじれまでを有するように撚られる。撚糸中のねじれを決定するための標準的な方法は、ASTM D1423−02である。しかしながら、最大の耐突刺性を達成することが望ましい場合は、撚りは、好ましくない。
【0025】
融着させた細長本体を利用することが望ましい場合、繊維/ヤーンを融着させる様々な方法が当業界公知であり、あらゆる方法を利用することができる。融着したマルチフィラメントのテープは、まず供給繊維/ヤーン前駆体を融着させ、続いて融着した前駆体をテープに圧縮することによって形成される。これに関して、繊維/ヤーンフィラメントの融着は、参照によりそれに対応する程度に本明細書に組み入れられる、米国特許第5,540,990号;5,749,214号;および6,148,597号で説明されているように、熱および張力の使用により、または熱および張力に晒す前に溶媒または可塑化材料の適用を介して達成されてもよい。接合による融着は、例えば、樹脂または接着特性を有する他の高分子バインダー材料、例えばテキサス州ヒューストンのクレイトン・ポリマーズ(Kraton Polymers)からクレイトン(KRATON)(登録商標)D1107という商標で市販されているポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン−ブロックコポリマー樹脂、または本明細書で説明される他のあらゆる接着性ポリマーなどによって、フィラメントを少なくとも部分的にコーティングすることによって達成されてもよい。またこれらは、接着剤のコーティングを用いずに、一緒に熱接合させてもよい。熱接合の条件は、繊維のタイプによって決まる。供給繊維/ヤーンが、フィラメントを接合させる接着特性を有する樹脂または他の高分子バインダー材料でコーティングされている場合、必要な樹脂/バインダーの量はわずかでよい。これに関して、フィラメントと樹脂/バインダーとの総重量に基づき、フィラメントがコーティングされた繊維/ヤーンの少なくとも95重量%を構成するように、適用される樹脂/バインダーの量は、フィラメントと樹脂/バインダーとの総重量に基づき5重量%以下であることが好ましく、したがって、それに対応するヤーンから形成されたテープも、少なくとも95重量%の構成要素であるフィラメントを含む。より好ましくは、繊維/ヤーンおよびテープは、少なくとも約96重量%のフィラメント、さらにより好ましくは97重量%のフィラメント、さらにより好ましくは98重量%のフィラメント、さらにより好ましくは99重量%のフィラメントを含む。最も好ましくは、繊維/ヤーンおよびそれらから形成された圧縮テープは、樹脂非含有であり、すなわち接合させるための樹脂/バインダーでコーティングされておらず、本質的にフィラメントからなるか、またはフィラメントのみからなる。
【0026】
繊維/ヤーンをテープに圧縮する方法は、例えば、米国特許第8,236,119号および米国特許出願第13/568,097号で説明されており、これらはそれぞれ矛盾のない程度に参照により本明細書に組み入れられる。例えば撚ったマルチフィラメント繊維/ヤーンから、無撚のマルチフィラメント繊維/ヤーンから、加えて非繊維性テープからテープを形成するための他の方法は、米国特許出願第13/021,262号、13/494,641号、13/647,926号および13/708,360号で説明されており、これらも参照により本明細書に組み入れられる。これらの方法は、本明細書で説明される好ましいアスペクト比のいずれかを有する本発明のテープを形成するのに有用である。
【0027】
細長本体が直交する0°/90°の向きになるように、縦方向の縦糸細長本体を、横方向に配置された、横方向の横糸細長本体と織り合わせる、一般的に公知のあらゆる製織技術を使用して、織布が形成される。平織が最も一般的である。他の織り方のタイプとしては、これらに限定されないが、千鳥綾織、バスケット織、繻子織および綾織が挙げられる。
【0028】
第一の実施態様は、
図1で例示され、この場合、第一のセットの高強力細長本体10は、縦方向に伸長する縦糸本体として配置され、第二のセットの高強力細長本体12は、横方向の横糸本体として横方向に配置される。典型的なプロセスにおいて、高強力の縦糸細長本体10は、1つまたはそれより多くのクリール14に支えられた複数のスプールから解かれる。高強力細長本体10の配列は、隣接する高強力細長本体10を分離する綜絖18を介して、それらが互いに(それらの最も近い縦エッジで)高強力細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離分の間隔があけられるように導入される。分離がこの量であれば、それに続く熱融着工程で、細長本体10の隣接する縦エッジが、オーバーラップせずに実質的に互いに接触するように互いにプレスされるように、隣接する高強力細長本体10間のスペースの十分且つ完全な閉鎖が確実に達成される。これに関して、縦糸方向の高強力細長本体が全て、均一の幅を有することが好ましく、さらに均一の厚さを有することも好ましい。また、横糸方向の高強力細長本体も全て、均一の幅を有することが好ましく、さらに均一の厚さを有することも好ましい。幅が均一ではない場合、分離の距離は、最大の幅の位置で細長本体を測定することによって計算される。これは、本発明の全ての縦糸および横糸繊維に関してあてはまる。また、必須ではないが、全ての縦糸方向の高強力本体は、全ての横糸方向の高強力本体と同じ幅および厚さを有することも好ましい。最も好ましくは、全ての縦糸および横糸の高強力細長本体が互いに同一である。したがって、それに続く熱融着工程により、全ての隣接する高強力細長本体10間のスペースが完全に閉鎖され、十分に隙間のないギャップのない織布構造が達成される。十分で完全な閉鎖は必須ではないが、最も好ましい。
【0029】
本発明のより好ましい実施態様において、隣接する高強力の縦糸細長本体10が、それらの最も近い縦エッジで、高強力縦糸本体の幅の少なくとも約15%、さらにより好ましくは高強力縦糸本体の幅の約15%〜約50%、最も好ましくは高強力縦糸本体の幅の約20%〜約30%分の間隔があけられるように、綜絖18が、隣接する高強力の縦糸細長本体10を分離している。本発明の好ましい実施態様において、これらの幅の分離のパーセンテージは、少なくとも約0.5mm、より好ましくは1mm、さらにより好ましくは1mmより大きい、それでもなおよりよくは少なくとも約1.5mm、さらにより好ましくは少なくとも約2mm、さらにより好ましくは約3mm〜約30mm、最も好ましくは約4mm〜約20mmの分離に対して測定する。熱融着工程によって全ての隣接する高強力の縦糸細長本体10間のスペースを十分に閉鎖して、十分に隙間のないギャップのない織布構造が確実に達成されるように、分離は、高強力縦糸本体の幅の約50%未満でなければならない。
【0030】
ここで再度
図1を参照すれば、高強力の縦糸細長本体10が綜絖18を通過した後、高強力の横糸細長本体12は、標準的な製織技術に従って、横方向で高強力細長本体10と織り合わされる。高強力の横糸細長本体12は、1つまたはそれより多くのクリール16に支えられた1つまたはそれより多くのスプールから解かれる。典型的な製織プロセスを例示する
図7で例示されているように、従来の織りは、隣接する縦糸ストランドの各対の間に、高強力細長本体10の配列の全幅にわたり1本の長い連続する横糸ストランドを配置する。横糸ストランドが縦糸ストランドの配列を一回通過した後、織機が横糸ストランドの向きを逆方向にして、縦糸ストランドの配列を通って逆方向に戻し返す。
図7で示されるように、それによって織布の側端に耳のループが形成され、これらは、典型的にはトリミングされるか、またはさらなる加工中に切断される。耳のループがトリミングまたは切断される場合、結果的に、複数の不連続な横糸本体が実質的に平行な配列で内包された構造が得られる。耳のループがトリミングまたは切断されない場合、結果的に、1本の横糸細長本体を内包する構造が得られ、ここで1本の横糸細長本体は、実質的に平行に配列された横糸本体の複数部分で構成されている。本発明の各実施態様に関して、縦方向の縦糸本体に対して横方向に配置された1本の長い連続する横糸本体のこのような横糸本体の部分は、複数の横方向の横糸本体であると解釈されるべきである。
【0031】
横糸方向にテープが挿入される場合に使用される代替の製織プロセスも、本発明の実施において等しく有用であり、その場合、耳のループが形成されないように、連続するテープを一方向でのみ縦糸本体に通し、次いで挿入されたテープを織物のエッジで切断して新しいテープ端部を形成し、次にこの新しいテープ端部を縦糸本体に通す。
【0032】
製織装置は、隣接する高強力の横糸細長本体12(例えば、1本の連続する細長本体12の隣接する平行な部分)が、互いに少なくとも約2mm、より好ましくは約3mm〜約30mm、最も好ましくは約4mm〜約20mm離れるようにセットされる。本明細書で説明されているように、横方向に配置された高強力の横糸細長本体だけが、隣接する高強力の縦糸細長本体間のスペース中に存在する。
【0033】
高強力の横糸細長本体12が、高強力の縦糸細長本体10と横糸方向で織られた後、高強力の縦糸細長本体10と高強力の横糸細長本体12とが、好ましくはそれらの交差点で一緒に熱接合される。このような熱接合は、加熱要素22を用いて熱可塑性の高強力細長本体を少なくとも部分的に融解させて、熱可塑性ポリマーが互いに接着できるようにそれらを活性化することによって達成される。次いで高強力細長本体の融解させた熱可塑性ポリマーをそのまま凝固させる。縦糸−横糸本体のジャンクション地点でポリマーが一旦凝固すると、高強力の横糸細長本体12は、高強力の縦糸細長本体10に接合され、それによって寸法的に安定な隙間のある布が形成される。
【0034】
加熱要素22は、
図1において、高強力細長本体12との直接の接触により加熱する(すなわち伝導加熱する)長方形のバーとして例示される。加熱は、他の好適な方法、例えば対流加熱(例えば熱風)、放射加熱(例えば赤外線加熱)、加えて他のあらゆる伝導加熱手段などによって達成されてもよい。しかしながら、部分的にのみ高強力本体を溶融させるには、比較的厳格な温度制御が必要である。したがって、伝導加熱方法が好ましい。最も好ましくは、加熱要素22は、接合を補助するために融解させた高強力細長本体に圧力を適用することができる伝導加熱要素である。加熱要素22は、高強力細長本体を、約270°F(約132℃)〜約330°F(約166℃)、より好ましくは約280°F(約138℃)〜約320°F(約160℃)、さらにより好ましくは約285°F(約141℃)〜約315°F(約157℃)、および最も好ましくは約290°F(約143℃)〜約310°F(約154℃)の温度に加熱する。
【0035】
細長本体を縦糸と横糸とが交差する地点で接合させることは、高強力の横糸細長本体12をそれらの位置で固定することによって、隙間のある織物構造を機械的に安定化させ、それによって好ましくは布中の全てのギャップの寸法が同一になるように、布の取り扱い中に維持される高強力細長本体10間のギャップの固定が達成される。加熱要素22からの熱は、縦糸と横糸とが交差する地点で本体が十分に接合されるように、高強力横糸本体12および/または高強力縦糸本体10を粘着性にするのに十分な程度である。
【0036】
このプロセスは、好ましくは第一の貯蔵用ロール24に巻き取られ、その後の加工のために保存された第一の寸法的に安定な隙間のある織布を生産する。本発明のプロセスによれば、第二の寸法的に安定な隙間のある織布は、好ましくは第一の隙間のある織布で製造され、それらを隣接させる。第二の隙間のある織布は、第一の隙間のある織布と同一であってもよいし、または異なっていてもよい。好ましくは、第二の隙間のある織布は、第一の隙間のある織布の製造に関して上述したのと同じ方法に従って製造される。次いで第二の隙間のある織布は、好ましくは第二の貯蔵用ロール26(
図3で例示)に巻き取られ、その後の加工のために保存された。
【0037】
図1で示されるように、任意選択のテンションロール20は、縦糸繊維に張力を提供し、第一の貯蔵用ロール24(または第二の貯蔵用ロール26)への縦糸繊維の引張を助けるために提供されてもよい。任意選択のテンションロール20は、
図1において、綜絖18と加熱要素22との間に配置されるように例示されているが、この位置は単なる典型例であり、当業者による決定に従って他の位置に配置されてもよいし、または完全に排除されていてもよい。テンションロール20が加熱される場合、それらは熱接合プロセスを助ける可能性があり、さらに、縦糸と横糸とが交差する地点で部分的な融解および融着を引き起こすのに十分な熱と圧力を適用することによって、加熱要素22の機能を代用させることもできる。
【0038】
これらの2つの実施態様のそれぞれに従って生産された織布は、隣接する縦糸本体の間隔と隣接する横糸本体の間隔とによって規定されるスペースまたは穴を有する隙間のある布である。本発明の好ましい実施態様において、隣接する高強力の縦糸細長本体間に、横方向に配置された横糸細長本体のみが存在する。しかしながら、結合性細長本体が、縦糸または横糸方向で織り合わされていてもよく、前記結合性縦糸細長本体が、隣接する高強力の縦糸細長本体間のスペースおよび/または隣接する高強力の横糸細長本体間のスペース中に配置されることも、本発明の範囲内である。「結合性」の細長本体は、本明細書で使用される場合、高強力細長本体の融解温度未満の融解温度を有し、熱で活性化される熱可塑性ポリマーを少なくとも部分的に含む細長本体である。前記結合性細長本体は、単一成分のバインダー要素であってもよいし、または多成分の細長本体であってもよい。単一成分の細長本体は、高強力細長本体の融解温度未満の融解温度を有し、熱で活性化される熱可塑性ポリマーから全体的に形成された、繊維、ヤーンまたはテープである。このようなものは慣習的に当業界において公知であり、例としては、これらに限定されないが、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−アクリル酸コポリマー、スチレンブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリオレフィン、例えば最も好ましくはポリエチレンを含む本体が挙げられる。組成が互いに異なる(例えば、ポリウレタンおよびポリエチレン)および/または可視応答、例えば色が異なる別個のポリマーのタイプの複数の別個の断面を有するドメインを含む多成分繊維、例えば二成分繊維が公知である。二成分繊維は、2種の別個のポリマーのタイプの2種の別個の断面のドメインを有する。様々な種類の二成分繊維が公知であり、例としては、サイドバイサイド型繊維、鞘/芯型繊維(芯鞘型繊維としても公知)が挙げられ、これらは、同軸または偏心の、パイウェッジ型繊維、海島型繊維などであってもよい。このようなものは当業界周知である。二成分繊維およびそれらの製造方法は、例えば米国特許第4,552,603号;4,601,949号;および6,158,204号で説明されており、それらの開示は、本明細書と矛盾しない程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0039】
第一の成分と第二の成分とを含む二成分の細長本体を含む結合性細長本体が存在する場合、好ましくは、第一の成分は、高強力細長本体の融解温度未満の融解温度を有する熱で活性化された熱可塑性ポリマーを含み、第一の成分は、第二の成分の融解温度未満の融解温度を有する。第一の成分にとって好適な熱で活性化された熱可塑性ポリマーとしては、これらに限定されないが、上述したものが挙げられる。二成分繊維を構成する好適な第二の成分としては、これらに限定されないが、上述した高強力ポリマーのタイプが挙げられる。最も好ましい実施態様において、二成分の細長本体は、芯鞘型の二成分繊維であり、ここで第二のポリマー成分は、高強力モノフィラメント繊維または高強力マルチフィラメント繊維を含む芯繊維であり、第一のポリマー成分は、熱で活性化された、熱可塑性ポリマーを含む鞘である。好ましい熱で活性化された熱可塑性ポリマーは上述した通りである。好ましい芯繊維は、あらゆる熱可塑性高強力繊維または熱可塑性ではない高強力繊維であってもよく、例えば、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、UHMW PE繊維などが挙げられる。最も好ましくは、芯繊維は、ガラス繊維またはUHMW PE繊維である。
【0040】
最も好ましい単一成分の細長本体は、UHMW PE繊維、好ましくはモノフィラメントまたはモノフィラメント様のUHMW PE繊維である。最も好ましい二成分の細長本体は、EVA熱可塑性ポリマーで覆ったUHMW PE繊維の芯(好ましくはモノフィラメントまたはモノフィラメント様のUHMW PE繊維)を含む。
【0041】
本発明の好ましい実施態様において、結合性の本体が存在する場合、それらは、好ましくは、加熱要素22を通過させることによってそれらの交差点で結合性の本体に対して垂直に配向された高強力本体に熱接合する。このような熱接合は、加熱要素22を用いて結合性細長本体の熱可塑性ポリマー構成要素を少なくとも部分的に融解させることにより、高強力細長本体に接着できるように熱可塑性ポリマーを活性化し、次いで結合性細長本体12の融解させた熱可塑性ポリマーをそのまま凝固させることによって達成される。この接合工程は、好ましくは外部の圧力なしで達成される。加熱要素22からの熱は、本体を互いに接合させるのに十分な、織物構造中で交差する繊維間の接触による元々ある内圧で、縦糸と横糸とが交差する地点で本体が十分に接合されるように、結合性の本体の接着剤のコーティングを粘着性にするのに十分な程度である。縦糸−横糸本体のジャンクション地点でポリマーが垂直の高強力細長本体と共に一旦凝固すると、結合性細長本体が高強力細長本体に接合して、隙間のある布の寸法安定性をさらに強化する。
【0042】
任意選択の結合性細長本体が、単一成分の熱可塑性の本体か、または二成分の細長本体であるかどうかにかかわらず、好ましくは、高強力細長本体は、布の少なくとも約90重量%、より好ましくは布の約90重量%より多く、さらにより好ましくは布の少なくとも約95重量%、さらにより好ましくは布の少なくとも約98重量%、最も好ましくは布の少なくとも約99重量%を構成する。これに関して、結合性細長本体が存在する場合、それらは、ピック/インチ(ppi)で、好ましくは約5ピック/インチ〜約15ピック/インチ、好ましくは約5ピック/インチ〜約10ピック/インチ、またはその代わりに約10ピック/インチ〜約15ピック/インチで取り込まれている。
【0043】
本発明によれば、隙間のある布構造が織られた後、次いでそれらを加熱し、熱可塑性の高強力細長本体を平らにして、隣接する高強力細長本体のエッジを互いに接触させて穴を閉鎖するのに十分な条件下でプレスする。この熱融着は、
図2で例示されているように、単一の隙間のある布上で行って、単一の隙間のない熱融着シートを形成してもよいし、または
図3および5で例示されているように、複数の隣接させた隙間のある布上で一緒に行って、一工程で隙間のない熱融着した多層物品を形成してもよい。
【0044】
図2で例示されているように、熱融着プロセスは、好ましくは連続プロセスとして行われ、その場合、寸法的に安定な隙間のある織布が第一の貯蔵用ロール24から解かれて、圧力ロール30を通過する。ロール30は、好ましくは約200°F(約93℃)〜約350°F(約177℃)、より好ましくは約200°F〜約315°F(約157℃)、さらにより好ましくは約250°F(約121℃)〜約315°F、最も好ましくは約280°F(約138℃)〜約310°F(約154℃)の温度に加熱される。最も好適な温度は、高強力細長本体を形成するのに使用されるポリマーの融点に応じて様々である。ロール30は、隙間のある織布に圧力をかけ、約50psi(344.7kPa)〜約50,000psi(344.7MPa)、より好ましくは約500psi(3.447MPa)〜約20,000psi(137.9MPa)、最も好ましくは約1,000psi(6.895MPa)〜約10,000psi(68.957MPa)の圧力でそれをプレスする。加熱した圧力ロール30を介して隙間のある織布をプレスすることにより、前記本体をオーバーラップさせることなく、縦糸細長本体間にギャップを有さない熱融着シートが生産される。必要に応じて、本発明の実施態様それぞれにおいて、布を複数回ロール30に(または追加のロール30に)通過させて、好ましいギャップのない完全に隙間のないシート構造を達成してもよい。駆動するロール32により融着シートを収集し、シート中に制御された張力が提供される。シートは、好ましくは、ロール32と接触する前に高強力細長本体の融解温度未満に冷却される。
【0045】
図3で例示されているように、熱融着プロセスは、好ましくは連続プロセスとして行われ、その場合、第一の寸法的に安定な隙間のある織布が第一の貯蔵用ロール24から解かれ、第二の寸法的に安定な隙間のある織布が第二の貯蔵用ロール26から解かれ、2つの布を上述した条件に従って加熱した圧力ロール30を通過させることにより、それらを隣接させて互いに融着させる。
図4で例示されているように、第一の寸法的に安定な隙間のある織布は、第二の寸法的に安定な隙間のある織布ではなく、クリール14から供給された縦方向の高強力細長本体の一方向の配列と融着される。融着は、加熱した圧力ロール30を通過させることにより達成される。
【0046】
図5および6は、1つまたはそれより多くの隙間のある織布が、任意選択の結合性細長本体(示さず)を包含する場合に採用される追加のセットのロール(ロール28)を包含する実施態様を例示する。
図5は、第一の寸法的に安定な隙間のある織布を貯蔵用ロール24から解き、貯蔵用ロール26から解かれた第二の織布に付着させる実施態様を例示する。次いで2つの布を、第一のセットのロール28を通過させることにより互いに付着させ、その後それらを第二のセットのロール30の間で一緒に融着させる。
図6は、第一の寸法的に安定な隙間のある織布を貯蔵用ロール24から解き、クリール14から縦方向の高強力細長本体の一方向の配列を供給する実施態様を例示する。次いで高強力本体の布および配列を、第一のセットのロール28を通過させることにより互いに付着させ、その後それらを第二のセットのロール30の間で一緒に融着させる。結合性細長本体は、織布を互いに(または織布を高強力本体の配列に)接着させることを助け、ロール28は、それらの付着を助長する。ロール28は、好ましくは、結合性細長本体の融点をわずかに超える温度に加熱される。好ましくは、ロール28は、結合性細長本体の融解温度より最大10℃高い温度に、最も好ましくは結合性細長本体の融解温度より最大5℃高い温度に加熱される。最も好適な温度は、結合性細長本体を形成するのに使用されるポリマーの融点に応じて様々である。好ましい実施態様において、このようなロール28に関する温度は、好ましくは約200°F(約93℃)〜約350°F(約177℃)、より好ましくは約200°F〜約315°F(約157℃)、さらにより好ましくは約250°F(約121℃)〜約315°F、最も好ましくは約280°F(約138℃)〜約310°F(約154℃)である。またロール28は、好ましくは、軽い圧力を布(または布とウェブ)にかけて、それらを互いに付着させる。
【0047】
次いで、隣接/付着させて加熱された布を、連続的に圧力ロール30を通過させ、上述したようにそれらを一緒にプレスして、融着シートを形成する。結合性細長本体が存在する場合、ロール30は、好ましくは、高強力細長本体の融点よりわずかに低い温度に加熱される。好ましくは、ロール30は、高強力細長本体の融解温度より最大5℃低い温度に、最も好ましくは高強力細長本体の融解温度より最大3℃低い温度に加熱される。加熱した圧力ロール30間で隣接させた布をプレスすることにより、本体をオーバーラップさせることなく、縦糸細長本体間にギャップを有さない熱融着シートが生産される。駆動するロール32により融着シートを収集し、シート中に制御された張力が提供される。シートは、好ましくは、ロール32と接触する前に高強力細長本体の融解温度未満に冷却される。本明細書で説明される連続するロールプロセスのそれぞれにおいて、ロール30および任意選択のロール28の通過の持続時間は、約1メートル/分〜約100メートル/分、より好ましくは約2メートル/分〜約50メートル/分、さらにより好ましくは約3メートル/分〜約50メートル/分、さらにより好ましくは約4メートル/分〜約30メートル/分、最も好ましくは約5メートル/分〜約20メートル/分の速度である。
【0048】
図5および6で例示した多段階の連続するプレスプロセスに加えて、単一の連続するプレス段階で、2つの層(すなわち2つの織布または布と、高強力本体の配列)を隣接させて平らにすることも可能である。また、加熱されたプラテンプレスを使用した多段階および一段階のバッチプロセスも、本発明の寸法的に安定な隙間のある織布の2つまたはそれより多くの層、または布の1つまたはそれより多くの層を、1つまたはそれより多くの高強力本体の配列と共に隣接させて平らにするのに使用することができる。
【0049】
本発明によれば、軟化した間隔をあけて存在する高強力細長本体10を十分な圧力でプレスすると、それらは平らになり、つまりそれらの幅が広くなり同時に厚さが薄くなるため、隣接する高強力細長本体間のスペースが実質的に取り除かれ、最も好ましくは完全に取り除かれる。このような高強力細長本体の幅の平坦化および拡張のために、隣接する高強力細長本体の最も近い縦エッジが互いに接触するようになり、それによって前記隣接する高強力細長本体をオーバーラップさせずに前記隣接する高強力細長本体の間のギャップを実質的になくし、隙間のない熱融着シートが達成される。
【0050】
高強力細長本体、例えば高靭性繊維、ヤーンおよびテープなどは、あらゆる好適なデニールを有していてもよい。例えば、繊維/ヤーンは、約50〜約10,000デニール、より好ましくは約200〜5,000デニール、さらにより好ましくは約650〜約4,000デニール、最も好ましくは約800〜約3,000デニールのデニールを有していてもよい。テープは、約50〜約30,000デニール、より好ましくは約200〜10,000デニール、さらにより好ましくは約650〜約5,000デニール、最も好ましくは約800〜約3,000デニールを有していてもよい。結合性細長本体が存在する場合、それらは、好ましくは、約20〜約2000、より好ましくは約50〜約500、さらにより好ましくは約60〜約400、最も好ましくは約70〜約300のデニールを有する。細長本体のデニールは、防弾効力およびコストの考察に従って選択される。より細い繊維/ヤーン/テープは製造および製織により高い費用がかかるが、単位重量あたりより大きい防弾効力をもたらすことができる。マルチフィラメントのテープは、典型的には、2〜約1000本のフィラメント、より好ましくは30〜500本のフィラメント、さらにより好ましくは100〜500本のフィラメント、さらにより好ましくは約100本のフィラメント〜約250本のフィラメント、最も好ましくは約120〜約240本のフィラメントを一緒に熱融着させることによって形成される。典型的には、フィラメントの数が多ければ多いほど、より高いテープのデニールがもたらされる。
【0051】
熱プレス工程が細長本体の厚さを薄くすると、全体的な織物構造の厚さも薄くなる。隙間のある布および隙間のない熱融着シートの厚さは、それぞれ平坦化させる前および後における個々の高強力細長本体の厚さに相当する。好ましい隙間のある織布は、好ましくは約10μm〜約600μm、より好ましくは約20μm〜約385μm、最も好ましくは約30μm〜約255μmの厚さを有する。好ましい隙間のない熱融着シートは、好ましくは約5μm〜約500μm、より好ましくは約10μm〜約250μm、最も好ましくは約15μm〜約150μmの厚さを有する。
【0052】
複数のこのような単層または多層の隙間のない熱融着シートを本明細書で説明される方法に従って製造して、次いで同じ大きさで互いに重ね合わせてスタックし、統合させて、優れた耐弾道貫通性を有する防弾性物品を形成することができる。本発明の目的に関して、優れた耐弾道貫通性を有する物品とは、弾丸などの変形可能な発射体に対して、さらに榴散弾弾子などの断片の貫通に対して優れた特性を示すものをいう。
【0053】
本明細書で使用される場合、「統合」は、複数の布を、1つの一体の構造に合わせることを指す。本発明の目的に関して、統合は、熱および/もしくは圧力を用いて、または熱および/もしくは圧力を用いないで起こしてもよいし、布/シート間の介在する接着剤を用いて、または用いないで起こしてもよい。例えば、湿式のラミネートプロセスでの場合のように、融着シートを一緒に貼り合わせてもよい。隙間のない熱融着シートを形成するのに使用される独特なプロセスのために、介在する接着剤のコーティングは任意選択であり、防弾性物品を形成するのに必須ではないことは、本発明独自の特色である。融着シートが平坦な構造であるために、従来の統合条件に従ってそれらを単に一緒に熱プレスするだけで十分な接合が達成される。統合は、約50℃〜約175℃、好ましくは約105℃〜約175℃の範囲の温度で、約5psig(0.034MPa)〜約2500psig(17MPa)の範囲の圧力で、約0.01秒〜約24時間、好ましくは約0.02秒〜約2時間でなされてもよい。慣習的に当業界において公知であるように、統合は、カレンダー装置、フラットベッドラミネーター、プレス中で行われてもよいし、またはオートクレーブ中で行われてもよい。また統合は、真空下に置かれた鋳型中で材料を真空成形することによって行われてもよい。真空成形技術は当業界周知である。
【0054】
介在する接着剤が使用される場合において、本発明の防弾性物品は、典型的に未融着未圧縮のシートから物品を形成するのに必要な量より少ない量の接着樹脂で統合することができ、これはなぜなら、1つの隙間のないシートの別の隙間のないシートへの接合を促進するのに、接着剤を表面層として適用すれば十分であり、接着剤で細長本体要素の個々のフィラメント要素を含浸またはコーティングしなくてよいためである。したがって、複合材料中の接着剤またはバインダーのコーティングの総重量は、フィラメント要素の総重量とコーティング重量との合計に基づき、好ましくは約0%〜約10%、さらにより好ましくは約0%〜約5%を構成する。さらにより好ましくは、本発明の防弾性物品は、約0重量%〜約2重量%の接着剤のコーティングを含むか、または約0重量%〜約1重量%のコーティングを含み、またはわずか約1重量%〜約2重量%のコーティングしか含まない。
【0055】
好適な接着剤材料としては、低弾性率素材と高弾性率材料の両方が挙げられる。低弾性率の接着剤材料は、一般的に、ASTM D638試験法に従って約6,000psi(41.4MPa)またはそれ未満の引張弾性率を有し、典型的には、柔軟な軟質装甲、例えば防弾ベストの製造に採用される。高弾性率の接着剤材料は、一般的に、6,000psiより高い初期引張弾性率を有し、典型的には、硬い硬質装甲物品、例えばヘルメットの製造に採用される。
【0056】
低弾性率の接着剤材料の代表的な例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン−コ−イソプレン)、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレン、ポリアミドのコポリマー(一部のフィラメントタイプに有用)、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロックコポリマー、ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、アクリル系コポリマー、アクリレート以外の単量体で改変されたアクリル系ポリマー、およびそれらの組合せ、加えて非高分子テープまたはテープを形成するフィラメントの融点未満で硬化し得る他の低弾性率ポリマーおよびコポリマーが挙げられる。また、様々なエラストマー材料のブレンド、またはエラストマー材料と1種もしくはそれより多くの熱可塑性物質とのブレンドも好ましい。特に好ましくは、テキサス州ヒューストンのクレイトン・ポリマーズからクレイトン(登録商標)という商標で販売されているポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン−ブロックコポリマーである。
【0057】
好ましい高弾性率バインダー材料としては、ポリウレタン(エーテルベースとエステルベースの両方)、エポキシ、ポリアクリレート、フェノール樹脂/ポリビニルブチラール(PVB)ポリマー、ビニルエステルポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、加えてポリマーの混合物、例えばビニルエステルおよびフタル酸ジアリル、またはフェノールホルムアルデヒドおよびポリビニルブチラールが挙げられる。特に好適な硬い高分子バインダー材料は、米国特許第6,642,159号で説明されているものであり、その開示は、矛盾のない程度に参照により本明細書に組み入れられる。高分子接着剤材料は、当業界における従来の方法に従って適用することができる。
【0058】
多層物品を形成する場合、複数の布を、最も好ましくは同じ大きさを有する様式で互いの上にオーバーラップさせ、単層の一体式の要素に統合させる。最も好ましい実施態様において、第一の布の高強力の縦糸細長本体は、第二の隣接する布の高強力の縦糸細長本体に対して垂直であり(すなわち、高強力本体の向きが、各布の縦糸本体の縦軸それぞれに対して0°/90°)、この構造は、全ての奇数の層中の高強力の縦糸細長本体が同じ方向を向いて、全ての偶数の層中の高強力の横糸細長本体が同じ方向を向くように継続する。直交の0°/90°の細長本体の向きが好ましいが、隣接する布は、別の布中の縦糸本体の中央の縦軸に対して約0°から約90°の間の実質的にあらゆる角度で並べることができる。例えば、5つの織物構造を0°/45°/90°/45°/0°で配向させた布を有していてもよいし、または他の角度で配向させた布を有していてもよいし、例えば隣接する布を、高強力の縦糸細長本体の縦軸に対して15°または30°の増分で回転させて配向させた布を有していてもよい。このような回転させた一方向のアライメントは、例えば、米国特許第4,457,985号;4,748,064号;4,916,000号;4,403,012号;4,623,574号;および4,737,402号で説明されており、これらは全て、本明細書と矛盾しない程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0059】
本発明の防弾性多層物品は、典型的には約2〜約100層、より好ましくは約2〜約85層、最も好ましくは約2〜約65層の隙間のない熱融着シート(層)を包含する。プライの数が多くなればなるほど、より大きい防弾性につながるが、重量も重くなる。また層の数は、複合材料の面密度にも影響を与え、望ましい複合材料を形成する層の数は、望ましい防弾性物品の最終用途に応じて変更される。軍事使用のための最低限レベルの防護服の防弾性は、当業界において周知のように、国立司法研究所(National Institute of Justice;NIJ)の脅威レベルによって類別されている。
【0060】
本発明の統合された複数の隙間のない熱融着シートを含む本発明の多層物品は、好ましくは、少なくとも100g/m
2の面密度を有し、好ましくは少なくとも200g/m
2の面密度を有し、より好ましくは少なくとも976g/m
2の面密度を有する。最も好ましくは、このような多層物品は、少なくとも4000g/m
2(4.0ksm)(約0.82psf)の面密度を有する。好ましい実施態様において、本発明の多層物品は、約0.2psf(0.976ksm)〜約8.0psf(39.04ksm)、より好ましくは約0.3psf(1.464ksm)〜約6.0psf(29.28ksm)、さらにより好ましくは約0.5psf(2.44ksm)〜約5.0psf(24.4ksm)、さらにより好ましくは約0.5psf(2.44ksm)〜約3.5psf(17.08ksm)、さらにより好ましくは約1.0psf(4.88ksm)〜約3.0psf(14.64ksm)、さらにより好ましくは約1.5psf(7.32ksm)〜約3.0psf(14.64ksm)の面密度を有する。
【0061】
本発明の物品は、複数の隙間のない熱融着シートから形成されてもよく、その場合、各融着シートが同じタイプの高強力細長本体を含むか、または各融着シートが異なるタイプの高強力細長本体を含む。交互に、ハイブリッド構造を形成してもよく、その場合、少なくとも2種の異なるタイプの融着シートが隣接され、ここで熱融着シートは個々に、単一の構造中に複数の異なる高強力細長本体のタイプを含む。例えば、隙間のない熱融着シートは、少なくとも2種の異なる高分子テープのタイプを包含する隙間のある織布から加工されてもよく、ここで第一のテープのタイプは、ポリエチレンフィラメントを含み、第二のテープのタイプは、ポリプロピレンフィラメントを含む。別の代替の実施態様において、織布は、繊維性テープと非繊維性テープとの組合せから加工されてもよい。さらに別の代替の実施態様において、多層物品を形成する熱融着シートの1つは、高強力細長本体間に結合性繊維を包含していてもよく、一方で該物品の別の熱融着シートは、いかなる結合性繊維も包含しない。
【0062】
本発明の多層複合材料の物品を様々な用途に使用して、周知の技術を使用して、柔軟な軟質装甲物品、加えて硬い硬質装甲物品などの多種多様の防弾性物品を形成することができる。例えば、防弾性物品を形成するための好適な技術は、例えば、米国特許第4,623,574号、4,650,710号、4,748,064号、5,552,208号、5,587,230号、6,642,159号、6,841,492号および6,846,758号で説明されており、これらは全て、本明細書と矛盾しない程度に参照により本明細書に組み入れられる。複合材料は、硬質装甲、硬質装甲物品の製造プロセス中に形成された成形済みまたは未成形の半組み立て部品の中間体の形成に特に有用である。「硬質」装甲は、相当量の応力に晒されたときに構造上の剛性が維持されて、崩壊せずに自立し得るような十分な機械的強度を有する、ヘルメット、軍用車両用のパネル、または防護盾などの物品を意味する。このような硬質物品は、好ましくは、ただしそれに限定されないが、高い引張弾性率のバインダー材料を使用して形成される。このような構造を複数の分離したシートに切断して、物品に形成するためにスタックしてもよいし、またはこのような構造を、後になって物品を形成するのに使用される前駆体に形成してもよい。このような技術は当業界周知である。
【0063】
以下の実施例は、本発明を例示するのに役立つ。
【実施例】
【0064】
実施例1
クリール中に、およそ33g/デニールのテナシティを有する高強力UHMWPE繊維性テープのスプールを並べた。米国特許第8,236,119号で説明されているプロセスに従ってテープを製造した。それらは平均約3/16インチの幅を有し、10:1より大きいアスペクト比を有していた。複数の繊維性テープをクリールから出して、平行な配列に並べ、縦糸方向に1インチあたりテープ5.3本の割合で、テープの間隔をあけつつ織機装置のヘッダーに供給した。織ろうとするテープの縦糸方向における平行な配列の幅は約16インチの幅であった。横糸方向に、1インチあたりテープ約5.3本で、同じタイプの高強度の繊維性テープを使用して、バランスのとれたバスケット織を形成した。その結果として、縦糸および横糸方向の両方においてテープ間に「穴」または「ギャップ」を有する緩く織られた布が得られた。
【0065】
実施例2
実施例1の織布を切断して、16インチ×16インチ(L×W)と測定されたサンプルを得た。次いでこのサンプルを、各外面における6ミル厚さの低密度ポリエチレンフィルムのフィルムと共に、285°Fおよび5000psiで約10分間プレスした。プレスした後、プレスを加圧下で100°Fに冷却し、その後、プレスした布を剥離した。結果得られた隙間のない融着シートの外観は、不透明から半透明に変化し、プレスした融着シート中にギャップまたは穴は実質的になかった。同じプロセスに従って、複数のこのような融着シートを形成した。次いでシートを、同じ大きさで互いに重ね合わせて配置して、スタックを形成し、次いでスタックを、1500トンのプレスで、295°Fおよび5000psiでプレスして、1ポンド/平方フィート(psf)の面密度を有する統合されたパネルを形成した。
【0066】
実施例3
実施例2で形成された融着シートを、プレスせずに一緒にスタックした。次いで統合されていないスタックを軟質防弾ジャケット(ballistic jacket)に置き、柔軟な防弾ベストを形成した。
【0067】
実施例4
実施例2で形成された織布を、実施例2と同じようにして、ただし外部のポリエチレンフィルムを使用せずにプレスした。200トンのプレス中で、プレス温度は285°Fであったが、圧力は2777psigであった。結果得られた融着シートは、隣接するテープ間にギャップまたは穴を実質的に示さなかった。これらの融着シートの数種の層を一緒にスタックし、再度プレスして、スタックを8インチ×12インチ(L×W)の防弾パネル(ballistic panel)に統合させた。
【0068】
好ましい実施態様を参照しながら本発明を具体的に示し説明したが、当業者であれば、本発明の本質および範囲から逸脱することなく様々な変更および改変をなし得ることを容易に理解する。特許請求の範囲は、開示された実施態様、上記で論じられたそれらの代替物および全ての等価体を包含すると解釈されるものとする。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1] 複数の横方向に配置された横糸細長本体と織り合わせて接合させた複数の縦糸細長本体を含む織布であって、前記縦糸細長本体および横糸細長本体はそれぞれ、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する熱可塑性の高強力細長本体を含み、ここで隣接する縦糸細長本体は、縦糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、隣接する横糸細長本体は、横糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけている、上記織布。
[2] 隣接する高強力の縦糸細長本体が、それらの最も近い縦エッジにおいて互いに1mmより大きい間隔をあけており、隣接する高強力の横糸細長本体が、それらの最も近い縦エッジにおいて互いに1mmより大きい間隔をあけている、[1]に記載の織布。
[3] [1]の織布から形成された隙間のない融着シートであって、隙間のない融着シートは、隣接する高強力の縦糸細長本体間に実質的にギャップを有さず、前記隣接する高強力の縦糸細長本体はオーバーラップせず;隣接する高強力の横糸細長本体間に実質的にギャップを有さず、前記隣接する高強力の横糸細長本体はオーバーラップしない、上記融着シート。
[4] 互いに付着された少なくとも2つの[3]に記載の融着シートを含む、防弾性の隙間のない多層物品。
[5] 寸法的に安定な隙間のある布を形成するための方法であって、該方法は、
a)複数の横方向に配置された横糸細長本体と織り合わせて接合させた複数の縦糸細長本体を含む織布を用意するステップであって、前記縦糸細長本体および横糸細長本体はそれぞれ、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する熱可塑性の高強力細長本体を含み、ここで隣接する縦糸細長本体は、縦糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、隣接する横糸細長本体は、横糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけている、ステップと;
b)高強力の縦糸細長本体および/または高強力の横糸細長本体の熱可塑性ポリマーを少なくとも部分的に融解させるステップと;
c)高強力の縦糸細長本体および/または高強力の横糸細長本体の、融解させた熱可塑性ポリマーを凝固させることにより、高強力の縦糸細長本体および高強力の横糸細長本体を互いに接合させ、それによって寸法的に安定な隙間のある布を形成するステップと
を含む、上記方法。
[6] 隣接する縦糸細長本体が、それらの最も近い縦エッジにおいて互いに1mmより大きい間隔をあけており、隣接する高強力の横糸細長本体が、それらの最も近い縦エッジにおいて互いに1mmより大きい間隔をあけている、[5]に記載の方法。
[7] 防弾性の隙間のない熱融着した多層物品を形成するための方法であって、
少なくとも2つの[5]に記載の寸法的に安定な隙間のある布を隣接させるステップと、
隣接させた布を、互いに布を付着させて各布中で高強力の縦糸および横糸細長本体それぞれを平らにするのに十分な条件下で熱プレスするステップであって、それによって各布中の隣接する高強力の縦糸細長本体それぞれの縦エッジを互いに接触させて、前記隣接する高強力の縦糸細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力の縦糸細長本体はオーバーラップせず;さらにそれによって各布中の隣接する横糸の高強力細長本体それぞれの縦エッジを互いに接触させて、前記隣接する高強力の横糸細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力の横糸細長本体はオーバーラップしない、ステップと
を含む、上記方法。
[8] 隙間のない融着シートを形成するための方法であって、
各布中で高強力の縦糸および横糸細長本体それぞれを平らにするのに十分な条件下で、[5]に記載の寸法的に安定な隙間のある布をプレスするステップであって、それによって各布中の隣接する高強力の縦糸細長本体それぞれの縦エッジを互いに接触させて、前記隣接する高強力の縦糸細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力の縦糸細長本体はオーバーラップせず;さらにそれによって各布中の隣接する横糸の高強力細長本体それぞれの縦エッジを互いに接触させて、前記隣接する高強力の横糸細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力の横糸細長本体はオーバーラップしない、ステップ
を含む、上記方法。
[9] 防弾性の隙間のない熱融着した多層物品を形成するための方法であって、
a)複数の横方向に配置された横糸細長本体と織り合わせて接合させた複数の縦糸細長本体を含む、少なくとも1つの隙間のある織布を用意するステップであって、前記縦糸細長本体および横糸細長本体はそれぞれ、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する熱可塑性の高強力細長本体を含み、ここで隣接する縦糸細長本体は、縦糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、隣接する横糸細長本体は、横糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけている、ステップと;
b)少なくとも1つの、織布から形成された隙間のない融着シートを用意するステップであって、前記複数の横方向に配置された横糸細長本体と織り合わせて接合させた複数の縦糸細長本体を含む織布、前記縦糸細長本体および横糸細長本体はそれぞれ、少なくとも約14g/デニールのテナシティおよび少なくとも約300g/デニールの引張弾性率を有する熱可塑性の高強力細長本体を含み、ここで隣接する縦糸細長本体は、縦糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、隣接する横糸細長本体は、横糸細長本体の幅の少なくとも約10%に等しい距離で互いに間隔をあけており、ここで隙間のない融着シートは、隣接する高強力細長本体の間に実質的にギャップを有さず、ここで前記高強力細長本体はオーバーラップしない、ステップと;
c)少なくとも1つの隙間のある織布と少なくとも1つの隙間のない融着シートとを一緒に隣接させるステップと;
d)織布を融着シートに付着させて織布中で高強力細長本体を平らにするのに十分な条件下で、隣接させた少なくとも1つの織布と少なくとも1つの融着シートとを一緒に熱プレスするステップであって、それによって織布中の隣接する高強力の縦糸細長本体の縦エッジを互いに接触させて、前記隣接する高強力の縦糸細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力の縦糸細長本体はオーバーラップしない、ステップと
を含む、上記方法。
[10] 隙間のない熱融着した多層物品を形成するための方法であって、
[1]に記載の織布を、高強力細長本体の平行な配列を含むウェブと隣接させるステップと、
織布をウェブに付着させ、織布とウェブのそれぞれ両方の高強力細長本体を平らにするのに十分な条件下で、隣接させた織布とウェブとを熱プレスするステップであって、それによってそれぞれ織布およびウェブ中の隣接する高強力細長本体の縦エッジを互いに接触させて、前記隣接する高強力細長本体の間のギャップを実質的になくし、ここで前記高強力細長本体はオーバーラップしない、ステップと
を含む、上記方法。