特許第6485875号(P6485875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6485875化学増幅レジスト組成物および化学増幅レジスト組成物を用いてデバイスを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6485875
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】化学増幅レジスト組成物および化学増幅レジスト組成物を用いてデバイスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20190311BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20190311BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20190311BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   G03F7/039 601
   G03F7/004 503A
   G03F7/004 503Z
   G03F7/20 521
   C09K3/00 T
   C09K3/00 K
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-555473(P2015-555473)
(86)(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公表番号】特表2016-526052(P2016-526052A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2014002531
(87)【国際公開番号】WO2014185065
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2017年5月10日
(31)【優先権主張番号】61/822,603
(32)【優先日】2013年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000222691
【氏名又は名称】東洋合成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】榎本 智至
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−165359(JP,A)
【文献】 特開平11−231542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
C09K 3/00
G03F 7/004
G03F 7/20
G03F 7/028
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試剤と、酸発生剤と、酸によって開裂可能な結合を有する樹脂と、を含む、化学増幅レジスト組成物であって、
前記試剤に、またはエネルギーを受けるアクセプタにエネルギーを供給すると、前記試剤から中間体が発生され、
前記中間体は前記酸発生剤からの酸の発生を向上させ、
前記中間体はケチルラジカルであり、
前記試剤が、下記式(I)によって表される第1試剤;下記式(II)によって表される第2試剤;並びに、水酸基と、該水酸基および水素原子に結合した炭素原子を含む第1環状部分と、を含む第3試剤;からなる群より選択されるいずれかである、化学増幅レジスト組成物。
【化1】
(上記式中、R1は、水素原子であり、
2は、フェニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、環状または多環状部分を含むアルキル基、または炭素原子および水素原子以外の少なくとも1つの原子を含む置換基であり、
3は、水素原子、フェニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、環状または多環状部分を含むアルキル基、または炭素原子および水素原子以外の少なくとも1つの原子を含む置換基である。)
【化2】
(前記式中、Zはカルボニル基、メチレン基、アルコキシメチレン、アリールオキシメチレン、またはヒドロキシメチレンであり、
4は、アリール基、または、芳香族基と該芳香族基上に炭素原子および水素原子以外の少なくとも1つの原子を含む置換基とを含むアリール基であり、
5は、水素原子、フェニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、環状または多環状部分を含むアルキル基、または炭素原子および水素原子以外の少なくとも1つの原子を含む置換基である。)
【請求項2】
前記第3試剤はさらに第2環状部分を含み、
前記第1環状部分は、前記第2環状部分にも含まれる少なくとも2つの原子を含む、請求項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項3】
前記第3試剤はさらに第3環状部分を含み、
前記第1環状部分は、前記第3環状部分にも含まれる少なくとも2つの原子を含む、請求項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項4】
前記第1環状部分は6員環または5員環のいずれかである、請求項のいずれか一項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項5】
前記第2環状部分は芳香族基である、請求項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項6】
前記エネルギーの供給を光の照射によって実行する、請求項1〜のいずれか一項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項7】
前記エネルギーの供給を、波長が15nm以下である光および電子線の少なくとも1つで前記試剤を照射することによって実行する、請求項1〜のいずれか一項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項8】
前記中間体は、前記試剤から水素原子を引き抜くことによって発生する、請求項1〜のいずれか一項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項9】
前記中間体の基底状態の第1酸化電位および励起状態の第2酸化電位の少なくとも1つと、前記酸発生剤の基底状態の第1還元電位および励起状態の第2還元電位の少なくとも1つとの差は、0.10eV以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項10】
前記第1還元電位は前記第1酸化電位および前記第2酸化電位の少なくとも1つより低い、請求項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項11】
前記酸発生剤はヨードニウムイオンまたはスルホニウムイオンを含む有機塩である、請求項10のいずれか一項に記載の化学増幅レジスト組成物
【請求項12】
デバイスを製造する方法であって、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化学増幅レジスト組成物の溶液を基板に塗布して、前記化学増幅レジスト組成物を含む膜が前記基板上に形成されるようにすること、および、
前記膜の第2部分が電磁線および粒子線の少なくとも1つで照射されない一方で、前記膜の第1部分が電磁線および粒子線の少なくとも1つで照射されるように、電磁線および粒子線の少なくとも1つで前記膜を照射すること、を含む、方法。
【請求項13】
前記第1部分を取り除くことをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1部分が存在した前記基板の第3部分がエッチングされるように前記基板をエッチングすることを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記膜の照射を、EUV光および電子線の少なくとも1つを使用して実行する、請求項1214のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願の特許請求の範囲は、米国特許法35U.S.C.S119(e)に基づいて2013年5月13日に出願された米国仮出願第61/822,603号の利益を主張するものであり、その内容がここに援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示のいくつかの態様は、化学分野および酸発生を向上する試剤、ならびにレジストの組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の高解像度のリソグラフィ工程は、化学増幅レジスト(CAR)に基づき、100nm未満の寸法のパターン形状に使用される。形状寸法は50nmを下まわる。
【0004】
100nm未満の寸法の形状をパターン形成する方法は、米国特許第7851252号(2009年2月17日出願)に開示されており、引用することによりその全体の内容をここに援用するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7851252号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸発生剤の酸発生を向上させる試剤およびフォトレジストの組成物が説明される。典型的には、そのような試剤は、プレンステッド酸の発生を支援する。さらに、そのような試剤はルイス酸の発生に適用し得る。典型的には、そのような試剤は、還元性を有する中間体を発生させる。
【0007】
そのような試剤の例は、ビスアリールケトン、アリールアルキルケトン、ビスアリールメチルハライド、ベンゾイン、カルバゾール、アルコキシ(またはアリールオキシ)ベンゾフェノン、アルコキシ(またはアリールオキシ)メチルナフタレン、および少なくとも1つのベンジル基を含む試剤である。
【0008】
ある実施形態では、上記試剤は、上記試剤以外のアクセプタにエネルギーが直接または間接的に適用される場合に、上記試剤は、励起されたアクセプタからエネルギーを受けることによって、または励起されたアクセプタまたはアクセプタから発生された反応性化学種と反応することによって、中間体を発生させ、上記中間体は前駆体からの酸の発生を向上させることを特徴とする。
【0009】
ある実施形態では、上記試剤は、上記試剤に直接または間接的にエネルギーが適用される場合に、中間体が上記試剤から発生され、上記中間体は前駆体からの酸の発生を向上させることを特徴とする。
【0010】
ある実施形態では、上記中間体は還元性を有していてもよい。ある実施形態では、上記中間体はケチルラジカル等のラジカルであってもよい。
【0011】
ある実施形態では、上記中間体は還元特性を有する水素原子および水素イオンの少なくとも1つを放出する。
【0012】
ある実施形態では、上記エネルギーは、極紫外線または波長が15nm以下である光等の光での照射を含む。上記エネルギーは、電子線等の粒子線への暴露を含み得る。
【0013】
例として、フォトレジストの組成物は、半導体装置および電気光学装置等の電子装置の製造に適用することができる。
【0014】
本発明の態様に関するある実施形態における試剤は、上記試剤に、またはエネルギーを受けるアクセプタにエネルギーを供給すると、上記試剤から中間体が発生され、上記中間体は、前駆体から酸および塩基等の化学種酸の発生を向上させることを特徴とする。
【0015】
中間体は還元性または電子供与性を有することが好ましい。光酸発生剤は、上記中間体から電子を受けることによって酸または塩基を容易に発生し得る。
【0016】
上記中間体はラジカル等の反応性中間体であることが好ましい。
【0017】
上記中間体は還元特性を有する水素原子および水素イオンの少なくとも1つを放出することが好ましい。
【0018】
上記中間体はケチルラジカルであることが好ましい。そのようなケチルラジカルはアリール基によって安定化され得、少なくとも1つのアリール基を有する上記試剤はそのようなケチルラジカルを容易に生成することができる。
【0019】
上記エネルギーの供給を、光の照射または粒子線への暴露によって実行することが好ましい。
【0020】
波長が15nm以下である光および電子線の少なくとも1つで上記試剤を照射することによってエネルギーの供給を実行することが好ましい。そのような光または電子線での照射によって実行されるエネルギーの供給は、超微細構造を備えたパターンの形成を可能にする。
【0021】
本発明の態様に関するある実施形態における組成物は、上記試剤のうちのいずれか1つと、酸の発生源として機能する第1化合物と、を含む。
【0022】
上記組成物は、酸および塩基等の化学種によって開裂可能な結合を有する第2化合物をさらに含むことが好ましい。
【0023】
本発明の態様に関するある実施形態における組成物は、式(I)によって表される試剤と、酸の発生源として機能する第1化合物と、を含む。
【0024】
【化1】
【0025】
は、水素原子であり、Rは、水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、環状または多環状部分を含むアルキル基、または炭素原子および水素原子以外の少なくとも1つの原子を含む置換基であり、Rは、水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、環状または多環状部分を含むアルキル基、または炭素原子および水素原子以外の少なくとも1つの原子を含む置換基であることが好ましい。
【0026】
本発明の態様に関するある実施形態における組成物は、試剤と、エネルギーを受けることによって、または、電子若しくは少なくとも1つの水素原子を受けることによって酸を発生する第1化合物と、を含む。
【0027】
組成物に関して、上記試剤は、水酸基と、該水酸基および水素原子に結合した炭素原子を含む第1環状部分と、を含むことが好ましい。
【0028】
上記組成物に関して、上記試剤はさらに第2環状部分を含み、上記第1環状部分は、第2環状部分にも含まれる少なくとも2つの原子を含むことが好ましい。
【0029】
上記組成物に関して、上記試剤はさらに第3環状部分を含み、上記第1環状部分は、上記第3環状部分にも含まれる少なくとも2つの原子を含むことが好ましい。
【0030】
上記組成物に関して、上記第1環状部分は6員環または5員環のいずれかであることが好ましい。
【0031】
上記組成物に関して、上記第2環状部分が芳香族基であることが好ましい。
【0032】
本発明の態様に関するある実施形態における組成物は、式(II)によって表される試剤と、エネルギーを受けることによって、または、電子若しくは少なくとも1つの水素原子を受けることによって酸を発生する第1化合物と、を含む。
【0033】
【化2】
組成物に関して、Zはカルボニル基、メチレン基、アルコキシメチレン、アリールオキシメチレン、またはヒドロキシメチレンであり、Rは、アリール基、または、芳香族基と炭素原子および水素原子以外の少なくとも1つの原子を含む、上記芳香族基上の置換基とを含むアリール基であり、Rは、水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基、環状または多環状部分を含むアルキル基、または炭素原子および水素原子以外の少なくとも1つの原子を含む置換基であることが好ましい。
【0034】
上記組成物に関して、上記第1化合物はヨードニウムイオンまたはスルホニウムイオンを含む有機塩であることが好ましい。
【0035】
上記試剤に関して、上記中間体は、試剤から水素原子を引き抜くことによって発生することが好ましい。
【0036】
上記試剤に関して、上記中間体の基底状態の第1酸化電位および励起状態の第2酸化電位の少なくとも1つと、上記前駆体の基底状態の第1還元電位および励起状態の第2還元電位の少なくとも1つとの差は、0.10eV以上であることが好ましい。
【0037】
試剤に関して、第1還元電位は第1酸化電位および第2酸化電位の少なくとも1つより低いことが好ましい。
【0038】
試剤に関して、中間体は還元性を有することが好ましい。
【0039】
試剤に関して、中間体はラジカルであることが好ましい。
【0040】
試剤に関して、中間体は、還元特性を有する水素原子および水素イオンの少なくとも1つを放出することが好ましい。
【0041】
試剤に関して、中間体はケチルラジカルであることが好ましい。
【0042】
試剤に関して、エネルギーの供給は光で試剤を照射することによって実行されることが好ましい。
【0043】
試剤に関して、波長が15nm以下である光および電子線の少なくとも1つで試剤を照射することによってエネルギーの供給は実行されることが好ましい。
【0044】
上記試剤に関して、上記中間体は、上記試剤の水素原子を引き抜くことによって発生することが好ましい。
【0045】
本発明の態様に関するある実施形態におけるデバイスを製造する方法は、基板に組成物のいずれか1つの溶液を塗布して上記組成物を含む膜が基板上に形成されるようにすること、上記膜の第2部分が電磁線および粒子線の少なくとも1つで照射されない一方で、上記膜の第1部分が電磁線および粒子線の少なくとも1つで照射されるように、電磁線および粒子線の少なくとも1つで上記膜を照射することを含む。
【0046】
上記方法に関して、上記方法は上記第1部分を取り除くことをさらに含むことが好ましい。
【0047】
上記方法に関して、上記方法は上記第1部分が存在した基板の第3部分がエッチングされるように基板をエッチングすることをさらに含むことが好ましい。
【0048】
上記方法に関して、上記膜の照射を、EUV光および電子線の少なくとも1つを使用して実行することが好ましい。
【0049】
本発明の態様に関するある実施形態における試剤は、上記試剤にエネルギーが直接または間接的に適用する場合に、中間体が上記試剤から発生し、上記中間体は前駆体からの酸の発生を向上させることを特徴とする。
【0050】
上記試剤に関して、上記中間体は還元性を有することが好ましい。
【0051】
上記試剤に関して、上記中間体はラジカルであることが好ましい。
【0052】
上記試剤に関して、上記中間体はケチルラジカルであることが好ましい。
【0053】
上記試剤に関して、上記中間体は、還元特性を有する水素原子および水素イオンの少なくとも1つを放出することが好ましい。
【0054】
上記試剤に関して、上記エネルギーは光での照射を含むことが好ましい。
【0055】
上記試剤に関して、光は15nm以下の波長を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図面において、本発明を実施するための現在考えられる最良の形態を示す。
【0057】
図1】酸発生向上剤を含むフォトレジストを利用する集積回路(IC)等のデバイスの製造プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
開示は、以下の具体的な実施例を用いてさらに説明される。
【実施例】
【0059】
実験手順
4−ヒドロピラニルアセトフェノンの合成
【0060】
4−ヒドロキシアセトフェノン10.0gおよび2H−ジヒドロピラン9.89gを塩化メチレン80.0gに溶解する。ピリジニウムpトルエンスルフォナート0.74gを4−ヒドロキシアセトフェノンおよび2H−ジヒドロピランを含む塩化メチレン溶液に添加する。混合物を25℃で3時間撹拌する。その後、混合物を水酸化ナトリウム1%水溶液の添加後にさらに撹拌する。有機相を液体抽出によって分離して集める。4−ヒドロピラニルアセトフェノン14.4gを、集めた有機相から溶剤を蒸発させることによって得る。
【0061】
1−(4−テトラヒドロピラニルフェニル)エタノールの合成(実施例1)
【0062】
4−ヒドロピラニルアセトフェノン5.0gおよび水酸化カリウム0.10gをエタノールに溶解する。水素化ホウ素ナトリウム1.04gを4−ヒドロピラニルアセトフェノンおよび水酸化カリウムを含むエタノール溶液に添加する。混合物を25℃3時間で添加する。その後、混合物中のアルカリを塩酸10%水溶液によって中和する。有機相を、塩化メチレン100gを使用して液体抽出によって分離して集める。1−(4−テトラヒドロピラニルフェニル)エタノール4.52gを有機相から溶剤を蒸発させることによって得る。
【0063】
【化3】
【0064】
樹脂Aの合成
【0065】
α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチルラクトン5.0g、2−メチルアダマンタン−2−メタクリレート6.03g、3−ヒドロキシアダマンタン−1−メタクリレート4.34g、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.51g、およびテトラヒドロフラン26.1gを含む溶液を調製する。調製した溶液を、撹拌沸騰しながらフラスコ内に入れたテトラヒドロフラン20.0gに4時間かけて添加する。調製した溶液の添加後、混合物を2時間加熱還流し、室温に冷却する。ヘキサン160gおよびテトラヒドロフラン18gを含む混合液に混合物を(激しく撹拌しながら)滴下して、共重合体を沈殿させる。共重合体をろ過によって分離する。共重合体の精製を、真空乾燥し、その後にヘキサン70gで2回洗浄することによって実行する。それによって、共重合体の白色粉末8.5gを得る。
【0066】
【化4】
【0067】
評価サンプルの調製
【0068】
シクロヘキサノン2000mgに樹脂A300mg、光酸発生剤としての4,4’−ジ−(t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルフォナート36.7mg、および指示薬としてのクマリン6、15.0mgを溶解することによってサンプル1を調製する。
【0069】
シクロヘキサン2000mgに1−(4−テトラヒドロピラニルフェニル)エタノール6.0mg、樹脂A300mg、光酸発生剤としての4,4’−ジ−(t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルフォナート36.7mg、および指示薬としてのクマリン6、15.0mgを溶解することによってサンプル2を調製する。
【0070】
酸発生の効率の評価
【0071】
サンプル1および2のスピン塗布によって4インチの水晶ウェハ上に膜を形成する。各膜に電子線リソグラフィ装置による0、10、20、30および40μC/cmの出力の電子ビームを照射する。電子ビーム露光に続き、各膜を電子ビームの各分量の露光によって発生するプロトン化クマリン6の量に相当する534nmでの吸光度をプロットすることによって膜に対する効率を得る。
【0072】
表1は、サンプル1および2の相対酸発生効率を示す。表1では、サンプル1の酸発生効率を基準として用いる。表1に示される結果は、酸発生効率が1−(4−テトラヒドロピラニルフェニル)エタノールから形成されたケチルラジカルによる光酸発生剤の還元によって向上することを示す。つまり、1−(4−テトラヒドロピラニルフェニル)エタノールは、酸発生向上剤(AGE)として作用する。
【0073】
【表1】
【0074】
結果に基づいて、還元性を有する反応性中間体は、酸発生効率を向上させると考えられる。
【0075】
各実施例2、3、4および5もAGEとして使用することができる。
【0076】
【化5】
【0077】
ヒドロキシ基に結合されるまたはラジカル中心になる炭素原子は、少なくとも1つのアリール基に結合されることが好ましく、理由としてはそのようなアリール基は発生したラジカルを安定させることができるからである。
【0078】
図1は、上記手順によるプロセスによって得られる酸発生向上剤(AGE)を含むフォトレジストを使用する集積回路(IC)等のデバイスの製造プロセスを示す。
【0079】
シリコンウェハを準備する。シリコンウェハの表面を、酸素ガス存在下でシリコンウェハを加熱することによって酸化する。
【0080】
AGE、樹脂A、および光酸発生剤を含む溶液を、スピン塗布によってシリコンウェハの表面に塗布する。AGE、樹脂Aおよび光酸発生剤を含む膜が、シリコンウェハの表面上に形成される。
【0081】
マスクを介したEUV光での膜の照射を、シリコンウェハのプリベーク後に行う。樹脂Aの脱保護反応をAGEによって支援された光酸発生剤の光化学反応による酸発生によって引き起こす。
【0082】
照射された膜の現像をプリベーク後に行う。
【0083】
照射された膜およびシリコンウェハをプラズマで露光する。その後、残りの膜を除去する。
【0084】
集積回路等の電子デバイスを図1に示される方法を用いて製造する。膜の照射時間が短くなるので、光照射による装置の劣化は既存のフォトレジストと比べて抑制される。
図1