(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繊維構造体は、厚み方向において、前記繊維構造体の上面を形成し且つ相対的に密度の高い高密度層と、前記高密度層の下面側に位置し且つ相対的に密度の低い低密度層とを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペット用介護用品。
前記ペット用介護用品は、所定の厚みを有する枠体と、前記枠体の厚みよりも小さい厚みを有し且つ前記枠体に着脱自在に嵌め込まれるマットとを含むペット用ベッドを更に含み、前記吸収性シートは、前記マットの上面に配置されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペット用介護用品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなペット用吸収シートを寝たきりのペットの体の下に敷いていると、当該寝たきりのペットが排泄した尿などの液状排泄物が、ペットの体の表面やペット用吸収シートの表面を伝って体毛に付着したり、或いは、ペット用吸収シートに吸収された液状排泄物が、ペットの体圧等により液戻りしてペットの体に付着したりして、ペットの体の表面が液状排泄物によって湿潤状態となってしまい、衛生状態が悪化する虞があった。
また、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態にあると、皮膚をふやかして、物理的刺激を受けやすくなってしまい、床ずれ(褥瘡)が生じやすくなる虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、良好な衛生状態を維持しつつ、床ずれの生じにくいペット用介護用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様(態様1)は、液保持性を有する吸収性シートと、前記吸収性シートの上面に配置され且つ5mm以上の厚みを有する液透過性のクッション材と、を備えたペット用介護用品であって、前記クッション材は、0.01mm〜3mmの繊維径を有する熱可塑性樹脂製の連続繊維によって構成された繊維構造体からなり、前記繊維構造体は、該繊維構造体の上面において前記連続繊維の端部を含まず、且つ、前記連続繊維が前記連続繊維同士の交点において互いに接合している、前記ペット用介護用品である。
【0007】
本態様1のペット用介護用品は、液保持性を有する吸収性シートの上面に、液透過性のクッション材が配置されているため、当該クッション材の上で寝たきりのペットが尿などの液状排泄物を排泄しても、液状排泄物はクッション材を透過して、その下の吸収性シートにおいて吸収及び保持させることができる。さらに、上述のクッション材が、上記特定の構造を有する繊維構造体からなるため、かかるクッション材の上面にペットが横たわってクッション材の厚み方向に体圧が掛かったとしても、当該体圧をクッション材の面方向に分散させて、クッション材の厚みの減少を抑制することができる。これにより、ペットの体と吸収性シートとの間の空間を一定程度確保することができるので、吸収性シートに保持された上述の液状排泄物がペットの体に接触したり、ペットの体の表面が蒸れたりするのを防ぐことができる。
さらに、上述のクッション材を構成する繊維構造体は、該繊維構造体の上面において連続繊維の端部を含まないため、当該端部がペットの体の表面(すなわち、皮膚)に物理的刺激を与えるのを防ぐことができる。
以上より、本態様のペット用介護用品は、寝たきりのペットの体の表面が尿などの液状排泄物によって湿潤状態となりにくく且つ物理的刺激を受けにくいため、良好な衛生状態を維持しつつ、床ずれ(褥瘡)を生じにくくすることができる。
【0008】
また、本発明の別の態様(態様2)では、上記態様1のペット用介護用品において、前記繊維構造体は、密度が0.01g/cm
3〜0.10g/cm
3であり、3.4kPaの圧力による加圧時の厚みが3mm以上である。
【0009】
本態様2のペット用介護用品は、吸収性シートの上面に配置される液透過性のクッション材が上記特定の物性を更に備えた繊維構造体からなり、当該クッション材がペットの体と吸収性シートとの間のスペーサー(空間保持部材)として機能し、吸収性シートに保持された上述の液状排泄物がペットの体に接触したり、ペットの体の表面が蒸れたりするのをより確実に防ぐことができる。これにより、本態様のペット用介護用品は、寝たきりのペットの体の表面が更に湿潤状態となりにくいため、より確実に、良好な衛生状態を維持しつつ、床ずれ(褥瘡)を生じにくくすることができる。
このような作用効果は、クッション材が、ペットの体圧(すなわち、3.4kPa程度)によって一定程度潰れていても、当該クッション材が上記特定の構造(すなわち、上記態様1に係る構造)及び物性(すなわち、本態様2に係る上記各物性)を有することで、ペットの体と吸収性シートとの間の距離を一定以上確保することができ且つ上述の液状物の流路を一定量以上確保することができるため、十分に発揮することができる。
【0010】
また、本発明の別の態様(態様3)では、上記態様1又は2のペット用介護用品において、前記吸収性シートは、不織布からなる表面シートと、裏面シートと、これら両シートの間に位置する吸収体とを備えており、さらに、前記不織布は、前記繊維構造体よりも小さい密度を有している。
【0011】
本態様3のペット用介護用品は、吸収性シートの表面シートに用いられる不織布の密度が、前記繊維構造体の密度よりも小さいため、ペット用介護用品の厚み方向において、前記クッション材(繊維構造体)から前記吸収性シートの表面シートに至る密度勾配を形成することができる。このような密度勾配が形成されていると、寝たきりのペットが上述のクッション材の上面に尿などの液状排泄物を排泄したとしても、排泄された液状排泄物が、毛管現象によって上述のクッション材(繊維構造体)から吸収性シートの表面シートへと移行しやすくなるとともに、上述のクッション材の上面へ液戻りしにくくなるため、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態に更になりにくくなる。これにより、本態様のペット用介護用品は、良好な衛生状態をより確実に維持することができ、床ずれを更に生じにくくすることができる。
【0012】
更に本発明の別の態様(態様4)では、上記態様3のペット用介護用品において、前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が、前記不織布を構成する繊維の繊維径よりも大きい。
【0013】
本態様4のペット用介護用品は、前記繊維構造体を構成する熱可塑性樹脂繊維の繊維径が、吸収性シートの表面シートの不織布を構成する繊維の繊維径よりも大きいため、上述のクッション材(繊維構造体)の上面にペットの体圧が掛かって、当該クッション材及び吸収性シートが厚み方向に圧縮されたとしても、上述のクッション材(繊維構造体)は、密度が変化しにくく(すなわち、高密度化しにくく)、上記態様3のペット用介護用品の密度勾配を維持しやすくなっている。これにより、本態様のペット用介護用品は、液状排泄物の液戻りが更に生じにくくなるため、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態となるのをより確実に防ぐことができ、床ずれを更に確実に生じにくくすることができる。
【0014】
更に本発明の別の態様(態様5)では、上記態様1〜4のいずれかのペット用介護用品において、前記繊維構造体は、厚み方向において、前記繊維構造体の上面を形成し且つ相対的に密度の高い高密度層と、前記高密度層の下面側に位置し且つ相対的に密度の低い低密度層とを有する。
【0015】
本態様5のペット用介護用品は、クッション材を構成する繊維構造体が厚み方向において相対的に密度(見掛け密度)の高い高密度層と、相対的に密度の低い低密度層とを有しているため、当該クッション材において、前記高密度層によってペットの体と吸収性シートとの間の空間を一定程度確保しつつ、前記低密度層によって一定のクッション性を確保することができる。
また、クッション材(繊維構造体)の上面を形成する高密度層は、構成繊維が密に存在して移動しにくくなっているため、クッション材の上面でペットが動いたりしても、当該上面における構成繊維の繊維間距離が変化しにくく、前記クッション材の上面に供給される液状排泄物をクッション材の下方側へと安定的に移行させることができる。これにより、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態となるのをより確実に防ぐことができる。
【0016】
更に本発明の別の態様(態様6)では、上記態様1〜5のいずれかのペット用介護用品において、前記繊維構造体は、保水率が7%以下である。
【0017】
本態様6のペット用介護用品は、クッション材を構成する繊維構造体の保水率が7%以下であるため、クッション材の内部に液状排泄物や汗などの水分が残留しにくく、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態となるのをより確実に防ぐことができる。
また、かかる保水率を有するクッション材(繊維構造体)は、乾燥性が高く、洗浄性に優れるため、当該クッション材の洗浄等により衛生状態を更に良好に維持することができる。
【0018】
更に本発明の別の態様(態様7)では、上記態様1〜6のいずれかのペット用介護用品において、当該ペット用介護用品は、所定の厚みを有する枠体と、前記枠体の厚みよりも小さい厚みを有し且つ前記枠体に着脱自在に嵌め込まれるマットとを含むペット用ベッドを更に含み、前記吸収性シートは、前記マットの上面に配置されている。
【0019】
本態様7のペット用介護用品は、所定の厚みを有する枠体と、前記枠体の厚みよりも小さい厚みを有し且つ前記枠体に着脱自在に嵌め込まれるマットとを含む、特定のペット用ベッドを更に含むものであるため、ペットが寝返り等をしても、ペットの体が前記枠体の内側の範囲内(すなわち、前記マットの上面上)に位置しやすく、上述の吸収性シート及びクッション材によって奏される効果をより確実に且つ安定的に発揮することができる。
さらに、ペットをペット用ベッドに寝かせることによって、ペットが寝返りを打ちやすくなるため、ペットが長時間同じ姿勢となりにくく、床ずれをより生じにくくすることができる。
【0020】
更に本発明の別の態様(態様8)は、5mm以上の厚みを有する液透過性のクッション材の使用方法であって、前記クッション材は、0.01mm〜3mmの繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維によって構成された繊維構造体であって、該繊維構造体の上面において前記連続繊維の端部を含まず、且つ、前記連続繊維が前記連続繊維同士の交点において互いに接合している繊維構造体からなり、前記使用方法は、前記クッション材を、液保持性を有する吸収性シートの上面に配置した後、前記クッション材の上面にペットを載せて、ペットを介護することを含む、前記使用方法である。
【0021】
本態様8のクッション材の使用方法は、液保持性を有する吸収性シートの上面に、液透過性のクッション材を配置するため、当該クッション材の上で寝たきりのペットが尿などの液状排泄物を排泄したとしても、液状排泄物はクッション材を透過して、その下の吸収性シートにおいて吸収及び保持させることができる。さらに、上述のクッション材が、上記特定の構造を有する繊維構造体からなるため、かかるクッション材の上面にペットが横たわってクッション材の厚み方向に体圧が掛かったとしても、当該体圧をクッション材の面方向に分散させて、クッション材の厚みの減少を抑制することができる。これにより、ペットの体と吸収性シートとの間の空間を一定程度確保することができるので、吸収性シートに保持された上述の液状排泄物がペットの体に接触したり、ペットの体の表面が蒸れたりするのを防ぐことができる。
さらに、上述のクッション材を構成する繊維構造体は、該繊維構造体の上面において連続繊維の端部を含まないため、当該端部がペットの体の表面(すなわち、皮膚)に物理的刺激を与えるのを防ぐことができる。
以上より、本態様のクッション材の使用方法は、寝たきりのペットの体の表面が尿などの液状排泄物によって湿潤状態となりにくく且つ物理的刺激を受けにくいため、良好な衛生状態を維持しつつ、床ずれ(褥瘡)を生じにくくすることができる。その結果、介護者によるペットの床ずれ対策(例えば、定期的に寝返りを打たせる等)の手間を軽減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、良好な衛生状態を維持しつつ、床ずれの生じにくいペット用介護用品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のペット用介護用品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「使用状態と同じ態様で水平面上に置いた対象物(例えば、ペット用介護用品、吸収性シート、クッション材、ペット用ベッド等)を垂直方向の上方側から対象物の厚み方向に見ること」を「平面視」というが、特に、対象物が吸収性シート等のシート状部材である場合は、「展開した状態で水平面上に置いた対象物を垂直方向の上方側から対象物の厚み方向に見ること」を「平面視」という。なお、平面視で見たときの図を「平面図」という。
【0025】
本明細書に用いる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。
本明細書において、「長手方向」は、「平面視における縦長の対象物の長さの長い方向」を指し、「幅方向」は、「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向(短手方向)」を指し、「厚み方向」は、「水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指し、これらの長手方向、幅方向及び厚み方向は、それぞれ互いに直交する関係にある。
さらに、本明細書では、「対象物(例えば、ペット用介護用品、吸収性シート、クッション材、ペット用ベッド等)の中心(例えば、長手方向に延びる幅方向中央軸線と幅方向に延びる長手方向中央軸線との交点等)に対して相対的に近位側」を「内側」といい、同様に、「対象物(例えば、ペット用介護用品、吸収性シート、クッション材、ペット用ベッド等)の中心(例えば、長手方向に延びる幅方向中央軸線と幅方向に延びる長手方向中央軸線との交点)に対して相対的に遠位側」を「外側」という。なお、本明細書において「高さ」は、特に断りのない限り、水平面上に置いた対象物(例えば、ペット用介護用品、ペット用ベッド等)において、基準面である水平面から対象物の頂点までの垂直方向の距離を意味する。
また、本明細書では、特に断りのない限り、ペット用介護用品(ペット用ベッドを含む。)の厚み方向において、「ペット用介護用品を使用状態と同じ態様で載置面に置いたときに、当該載置面に対して相対的に遠位側」を「上方側」といい、「ペット用介護用品の使用状態と同じ態様で載置面に置いたときに、当該載置面に対して相対的に近位側」を「下方側」という。なお、ペット用介護用品及び該ペット用介護用品を構成する各種部材において、上方側の面を「上面」といい、下方側の面を「下面」という。
【0026】
図1は、本発明の第一実施形態に係るペット用介護用品1の斜視図であり、
図2は、かかるペット用介護用品1の
図1におけるII−IIの線に沿った断面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の第一実施形態に係るペット用介護用品1は、長手方向L、幅方向W及び厚み方向Tを有する略直方体状の積層物によって構成されており、さらに、前記積層物は、略長方形状の平面視形状を有する液保持性の吸収性シート2と、該吸収性シート2の上方側Daの面(上面)に配置された、クッション性を有する略直方体状の繊維構造体からなるクッション材3と、を備えている。
【0027】
なお、本第一実施形態に係るペット用介護用品は、上述の吸収性シート2に依拠する略長方形の平面視形状を有しているが、本発明において、ペット用介護用品の平面視形状は、本第一実施形態のものに限定されず、対象とするペットのサイズや所望の意匠性等に応じて任意の形状(例えば、円形、楕円形、正方形、三角形、星形等)を採用することができる。また、ペット用介護用品の外形寸法は、当該ベッドを使用するペットのサイズや種類等に応じて適宜設定することができ、例えば、ペットが小型犬ないし中型犬の場合、長手方向Lの長さ(すなわち、吸収性シートの長手方向の長さ)は、300mm〜600mm程度であり、幅方向Wの長さ(吸収性シートの幅方向の長さ)は、200mm〜500mm程度である。
【0028】
本第一実施形態に係るペット用介護用品1は、液保持性を有する吸収性シート2の上面に、液透過性のクッション材3が配置されているため、当該クッション材3の上で寝たきりのペットが尿などの液状排泄物を排泄しても、液状排泄物はクッション材3を透過して、その下の吸収性シート2において吸収及び保持させることができる。さらに、上述のクッション材3は、上述の特定の構造を有する繊維構造体からなるため、かかるクッション材3の上面にペットが横たわってクッション材3の厚み方向Tに体圧が掛かったとしても、当該体圧をクッション材3の面方向(すなわち、上面に対して平行な面方向)に分散させて、クッション材3の厚みの減少を抑制することができる。これにより、ペットの体と吸収性シート2との間の空間を一定程度確保することができるので、吸収性シート2に保持された上述の液状排泄物がペットの体に接触したり、ペットの体の表面が蒸れたりするのを防ぐことができる。
さらに、上述のクッション材3を構成する繊維構造体は、該繊維構造体の上面において連続繊維の端部を含まないため、当該端部がペットの体の表面(すなわち、皮膚)に物理的刺激を与えるのを防ぐことができる。
したがって、本第一実施形態に係るペット用介護用品1は、寝たきりのペットの体の表面が尿などの液状排泄物によって湿潤状態となりにくく且つ物理的刺激を受けにくいため、良好な衛生状態を維持しつつ、床ずれ(褥瘡)を生じにくくすることができる。
なお、本発明において、上記クッション材を構成する繊維構造体は、後述するように繊維構造体の厚み方向に延在する側面には、連続繊維の端部が存在していてもよいため、繊維構造体の上面とも側面とも解することができる各面の境界部分には、前記連続繊維の端部が含まれていてもよい。したがって、本明細書において、繊維構造体が該繊維構造体の上面において連続繊維の端部を含まないとは、当該連続繊維の端部が繊維構造体の上面において実質的に含まれていないことを意味するものであり、上述の境界部分(すなわち、繊維構造体の上面と側面の境界部分)には、上記連続繊維の端部が含まれていてもよい。
【0029】
ここで、本発明のペット用介護用品は、ペットの飼育空間(例えば、室内等)の所定位置において、
図1に示すように、クッション材が吸収性シートよりも上方側に位置するように載置され、前記クッション材の上面がペットの寝床として使用される。なお、本発明のペット用介護用品は、ペットの飼育空間の床面又は地面に直接載置しても、或いは、後述する第二実施形態のようなペット用ベッドや所定のホルダー、敷材等を介して載置してもよい。
【0030】
本発明のペット用介護用品が対象とするペットは、ペットとして飼育され得る動物であれば特に制限されず、犬や猫、ウサギなどの様々な動物に用いることができる。
【0031】
以下、本発明のペット用介護用品を構成する各種部材について、上述の第一実施形態に係るペット用介護用品1を用いて更に詳細に説明する。
【0032】
[吸収性シート]
本実施形態に係るペット用介護用品1において、吸収性シート2は、
図1及び
図2に示すように、展開した状態の平面視にて略長方形の外形形状を有する液保持性のシート状部材によって構成されており、少なくとも表面シート21と、裏面シート22と、これら両シートの間に位置する吸収体23とを備えている。かかる液保持性の吸収性シート2は、寝たきりのペットの寝床となる液透過性のクッション材3の下方側Dbに配置されて、当該クッション材3の上で排泄されて当該クッション材3を透過してきた尿などの液状排泄物を、吸収及び保持することができるようになっている。
【0033】
本発明において、吸収性シートを構成する液保持性のシート状部材は、特に制限されず、液保持性を有する任意のシート状部材を採用することができるが、上述の第一実施形態のように、少なくとも、不織布からなる表面シートと、裏面シートと、これら両シートの間に位置する吸収体とを備えたシート状部材を好適に用いることができる。かかるシート状部材としては、特に制限されないが、例えば、特開2005−198598号公報などに開示されている、ペットの排泄物処理用の吸収性シートなどが挙げられる。
【0034】
また、上述の吸収性シートが、不織布からなる表面シートと、裏面シートと、これら両シートの間に位置する吸収体とを備えた液保持性のシート状部材からなる場合、前記表面シートを構成する不織布は、クッション材を構成する後述の繊維構造体よりも小さい密度を有していることが好ましい。
【0035】
吸収性シートの表面シートに用いられる不織布の密度が、クッション材を構成する繊維構造体の密度よりも小さいと、ペット用介護用品の厚み方向において、前記クッション材(繊維構造体)から前記吸収性シートの表面シートに至る密度勾配を形成することができる。このような密度勾配が形成されていると、寝たきりのペットが上述のクッション材の上面に尿などの液状排泄物を排泄したとしても、排泄された液状排泄物が、毛管現象によって上述のクッション材(繊維構造体)から吸収性シートの表面シートへと移行しやすくなるとともに、上述のクッション材の上面へ液戻りしにくくなるため、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態に更になりにくくなる。これにより、ペット用介護用品は、良好な衛生状態をより確実に維持することができ、床ずれを更に生じにくくすることができる。
【0036】
なお、不織布の密度は、不織布の坪量を厚みで除することによって算出することができる。不織布の厚みの測定は、次のようにして行うことができる。
まず、測定対象の不織布から、所定サイズ(例えば、100mm×100mm)のサンプルシートを切り出す。そして、切り出したサンプルシートを、カトーテック(株)の自動化圧縮試験機「KES FB−3A」にセットして、当該試験機の測定端子によるサンプルシートへの圧力が49Paのときの厚み(mm)を測定し、この測定された厚み(mm)をサンプルシートの厚みとする。
【0037】
一方、クッション材を構成する繊維構造体の密度(見掛け密度)の測定は、次のようにして行うことができる。まず、測定対象の繊維構造体から、厚みをそのままにして15cm×15cmの大きさのサンプルを切り出し、該サンプルの質量(g)を測定する。次に、切り出したサンプルの厚み(cm)を、上述のマットの厚みの測定方法と同様にして測定し、該サンプルの体積(cm
3)を算出する。最後にサンプルの質量を体積で除することにより、密度(見掛け密度)の値(g/cm
3)を得ることができる。
【0038】
なお、本発明において、液保持性の吸収性シートの平面視形状及び外形寸法は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、任意の平面視形状及び外形寸法を採用することができるが、本発明においては、上記吸収性シートは、該吸収性シートに含まれる吸収体がクッション材の上面の平面視面積よりも大きい平面視面積を有するものが好ましい。吸収性シートに含まれる吸収体がクッション材の上面の平面視面積よりも大きい平面視面積を有するものであると、上述のクッション材3を透過してきた尿などの液状排泄物を、当該吸収性シートにおいてより確実に吸収及び保持することができる。
【0039】
なお、本明細書において、「平面視面積」とは、平面視した対象物(例えば、吸収性シート、マット、クッション材等)の外形形状の面積を意味する。したがって、本実施形態において、吸収性シート2の展開した状態の平面視面積は、当該吸収性シート2の上面の外形形状である長方形の面積を意味する。
【0040】
[クッション材]
本第一実施形態に係るペット用介護用品1において、液透過性のクッション材3は、
図1及び
図2に示すように、上記吸収性シート2よりも小さい平面視面積を有する略直方体状の繊維構造体によって構成されている。かかるクッション材3は、上記吸収性シート2の上面に配置されて、ペット用介護用品1の寝床を形成し、当該寝床に横たわるペットの体圧を分散させながら該ペットの体を支持することができるようになっている。したがって、上述のクッション材3を構成する繊維構造体は、液透過性を有し且つペットの寝床として機能し得る物性(例えば、(高反発性の)クッション性、柔軟性、強度、通気性等)を有するものである。なお、クッション材の平面視面積は、通常、吸収性シートの平面視面積の70%〜100%の範囲内である。
【0041】
クッション材3を構成する繊維構造体は、0.01mm〜3mmの繊維径を有する熱可塑性樹脂製の連続繊維によって構成された、5mm以上の厚みを有する繊維構造体であって、該繊維構造体の上面において前記連続繊維の端部を含まず、且つ、前記連続繊維が前記連続繊維同士の交点において互いに接合しているという特定の構造を有する繊維構造体である。
【0042】
上述のクッション材3を構成する繊維構造体が上記特定の構造を備えたものであると、クッション材3の上面にペットが横たわってクッション材3の厚み方向Tに体圧が掛かったとしても、当該体圧をクッション材3の面方向に分散させて、クッション材3の厚みの減少を抑制することができる。これにより、ペットの体と吸収性シート2との間の空間を一定程度確保することができるので、吸収性シート2に保持された上述の液状排泄物がペットの体に接触したり、ペットの体の表面が蒸れたりするのを防ぐことができる。さらに、かかる繊維構造体は、該繊維構造体の上面において連続繊維の端部を含まないため、当該端部がペットの体の表面(すなわち、皮膚)に物理的刺激を与えるのを防ぐことができる。
また、本発明において、上述のクッション材を構成する繊維構造体は、上記特定の構造に加え、密度が0.01g/cm
3〜0.10g/cm
3であり、3.4kPaの圧力による加圧時の厚みが3mm以上であるという特定の物性を備えていることが好ましい。
かかる繊維構造体が上記特定の物性を更に備えたものであると、クッション材が、ペットの体と吸収性シートとの間のスペーサー(空間保持部材)として機能し、吸収性シートに保持された上述の液状排泄物がペットの体に接触したり、ペットの体の表面が蒸れたりするのをより確実に防ぐことができる。これにより、寝たきりのペットの体の表面が更に湿潤状態となりにくくなるため、より確実に、良好な衛生状態を維持しつつ、床ずれを生じにくくすることができる。かかる作用効果は、クッション材が、ペットの体圧(すなわち、3.4kPa程度)によって一定程度潰れていても、当該クッション材が上記特定の構造及び物性を有することで、ペットの体と吸収性シートとの間の距離を一定以上確保することができ且つ上述の液状物の流路を一定量以上確保することができるため、十分に発揮することができる。
【0043】
ここで、繊維構造体を構成する繊維の繊維径の測定は、次のようにして行うことができる。まず、測定対象の繊維構造体の任意の10箇所から、所定長さ(例えば、5mm)の繊維を切り出し、該切り出した繊維の端部を、繊維の延びる方向に対して直角に切断する。その切断面を所定の拡大倍率で撮影し、得られた断面写真から繊維の繊維径(mm)を測定する。なお、繊維径は、切り出した10本の繊維の繊維径の平均値を採用する。
【0044】
また、繊維構造体における、3.4kPa(35gf/cm
2)の圧力による加圧時の厚みの測定は、次のようにして行うことができる。まず、測定対象の繊維構造体に対して、所定の面積を有する加圧板(例えば、100πcm
2の面積を有する円形の加圧板)を3.4kPaの圧力で押し当てる。そして、その加圧板を押し当てた状態の繊維構造体の厚み(mm)を測定することにより、上記特定圧力による加圧時の厚みを得ることができる。
【0045】
本発明のペット用介護用品において、上述の液透過性のクッション材に用いられる繊維構造体は、少なくとも上記特定の構造を有するものであれば特に制限されないが、高反発性の優れたクッション性能を有するとともに、通気性や透水性、耐久性等においても優れた性能を有するという点から、上記繊維構造体は、熱可塑性樹脂製の連続繊維が多数のループを形成しつつも、無秩序に絡み合っていて、互いの交点において熱融着によって接合している網状の繊維構造体であることが好ましい。かかる繊維構造体は、該繊維構造体の厚み方向に延在する側面において連続繊維(構成繊維)の端部を有し、該繊維構造体の内部においては、構成繊維の端部が実質的に存在していない。このような連続繊維を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。
【0046】
また、本発明においては、上記液透過性のクッション材を構成する繊維構造体は、吸収性シートの表面シートに用いられる不織布よりも大きい密度を有し、且つ、上記繊維構造体を構成する熱可塑性樹脂繊維の繊維径が、吸収性シートの表面シートに用いられる不織布を構成する繊維の繊維径よりも大きいことが好ましい。
【0047】
上述の繊維構造体の密度が、吸収性シートの表面シートに用いられる不織布の密度よりも大きいと、ペット用介護用品の厚み方向において、前記クッション材(繊維構造体)から前記吸収性シートの表面シートに至る密度勾配を形成することができる。このような密度勾配が形成されていると、寝たきりのペットが上述のクッション材の上面に尿などの液状排泄物を排泄したとしても、排泄された液状排泄物が、毛管現象によって上述のクッション材(繊維構造体)から吸収性シートの表面シートへと移行しやすくなるとともに、上述のクッション材の上面へ液戻りしにくくなるため、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態に更になりにくくなる。さらに、上記繊維構造体を構成する熱可塑性樹脂繊維の繊維径が、吸収性シートの表面シートに用いられる不織布を構成する繊維の繊維径よりも大きいと、上述のクッション材(繊維構造体)の上面にペットの体圧が掛かって、当該クッション材及び吸収性シートが厚み方向に圧縮されたとしても、上述のクッション材(繊維構造体)は、密度が変化しにくく(すなわち、高密度化しにくく)、上述の厚み方向における密度勾配が維持されやすいため、液状排泄物の液戻りが更に生じにくくなり、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態となるのをより確実に防ぐことができる。
【0048】
なお、不織布を構成する繊維の繊維径は、走査型電子顕微鏡等を用いて繊維を拡大観察することにより測定することができる。
【0049】
また、本発明においては、上述のクッション材を構成する繊維構造体は、厚み方向において、当該繊維構造体の上面を形成し且つ相対的に密度(見掛け密度)の高い高密度層と、前記高密度層の下方側に位置し且つ相対的に密度の低い低密度層とを有する、2層構造の繊維構造体も、好適に用いることができる。
【0050】
クッション材を構成する繊維構造体が厚み方向において相対的に密度の高い高密度層と、相対的に密度の低い低密度層とを有していると、当該クッション材において、前記高密度層によってペットの体と吸収性シートとの間の空間を一定程度確保しつつ、前記低密度層によって一定のクッション性を確保することができる。
また、かかる2層構造の繊維構造体を、高密度層を上方側にして上述のクッション材として用いると、当該クッション材(繊維構造体)の上面を形成する高密度層は、構成繊維が密に存在して移動しにくくなっているため、クッション材の上面でペットが動いたりしても、当該上面における構成繊維の繊維間距離が変化しにくく、前記クッション材の上面に供給される液状排泄物をクッション材の下方側へと安定的に移行させることができる。これにより、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態となるのをより確実に防ぐことができる。
【0051】
また、本発明においては、上述のクッション材を構成する繊維構造体は、保水率が7%以下であることが好ましい。クッション材を構成する繊維構造体の保水率が7%以下であると、当該クッション材の内部に液状排泄物や汗などの水分が残留しにくく、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態となるのをより確実に防ぐことができる。
さらに、クッション材を構成する繊維構造体が、乾燥性が高く、洗浄性に優れるものであると、当該クッション材の洗浄等により、介護現場の衛生状態を更に良好に維持することができる。
かかる繊維構造体の保水率は、構成繊維の材質の選択や密度の調整、撥水処理等の各種表面処理等により調整することができる。
【0052】
なお、繊維構造体の保水率(%)の測定は、次のようにして行うことができる。まず、測定対象の繊維構造体の質量を測定した後、繊維構造体を水槽に浸漬する。10分間浸漬した後に、繊維構造体を水槽から取り出して、できるだけ水切りし、30℃RH65%の雰囲気下で24時間放置する。24時間放置した後の繊維構造体の質量を測定し、残留水分量を百分率で算出し、これを繊維構造体の保水率(%)とする。
【0053】
なお、本発明において、液透過性のクッション材の形状及び外形寸法は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、任意の形状及び外形寸法を採用することができる。
例えば、クッション材の形状は、円板形等の任意の形状を採用することができ、また、クッション材の厚みは、5mm〜200mmの範囲内の任意の厚みを採用することができる。
【0054】
上述の液透過性のクッション材を構成する繊維構造体の製造方法は、特に制限されず、繊維構造体は、公知の任意の製造方法によって製造することができる。繊維構造体は、例えば、複数のオリフィスを有する多孔吐出ノズルから、溶融状態の熱可塑性樹脂を線条に吐出し、線条の吐出物同士を溶融状態のまま互いに接触させることにより、繊維状物が多数のループを形成しつつも無秩序に絡み合って互いに融着してなる網状の繊維構造物を得た後、一対の無端ネットコンベアで前記網状の繊維構造物の両面を挟持しながら冷却することにより製造することができる。
繊維構造体の厚みや密度、圧縮特性、構成繊維の繊維径等の諸物性は、上述の多孔吐出ノズルの吐出口径や吐出量(圧)、一対の無端ネットコンベアのコンベア間距離、搬送速度、冷却温度等の各種製造条件を適宜設定することにより、容易に調整することができる。
なお、後述のマットに用いられる繊維構造体も、同様に製造することができる。
【0055】
次に、本発明の第二実施形態に係るペット用介護用品10について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、上述の第一実施形態と重複する構成等(吸収性シート、クッション材等)については、説明を省略する。
【0056】
図3は、本発明の第二実施形態に係るペット用介護用品10の斜視図であり、
図4は、かかるペット用介護用品10の
図3におけるIV−IVの線に沿った断面図である。また、
図5は、ペット用介護用品10の分解斜視図である。
本発明の第二実施形態に係るペット用介護用品10は、
図3〜
図5に示すように、所定の厚みを有する略長方形の枠状の枠体4及び該枠体4の厚みよりも小さい厚みを有する略直方体状のマット5を含むペット用ベッド6と、前記マット5の上方側Daの面(上面)に配置された略長方形状の吸収性シート2と、前記吸収性シート2の上面に配置された、略直方体状の繊維構造体からなる液透過性のクッション材3と、によって構成されている。なお、本第二実施形態における吸収性シート2及びクッション材3は、上述の第一実施形態のものと同様のものである。
【0057】
本第二実施形態に係るペット用介護用品10において、ペット用ベッド6は、
図3に示すように、平面視にて、長手方向L及び幅方向Wを有する丸みを帯びた略矩形状の外形形状を有している。なお、本発明において、ペット用ベッドの平面視形状は、このようなものに限定されず、対象とするペットのサイズや所望の意匠性等に応じて任意の形状(例えば、円形、楕円形、正方形、三角形、星形等)を採用することができる。また、ペット用ベッドの外形寸法は、当該ベッドを使用するペットのサイズや種類等に応じて適宜設定することができ、例えば、ペットが小型犬ないし中型犬の場合、長手方向Lの長さ(長手方向Lにおける枠体の枠の外側の表面間距離)は、400mm〜1400mm程度であり、幅方向Wの長さ(幅方向Wにおける枠体の枠の外側の表面間距離)は、250mm〜1200mm程度である。
【0058】
本第二実施形態に係るペット用介護用品10は、
図3及び
図4に示すように、ペット用ベッド6の周縁部分が所定の厚みを有する枠体4によって上方側Daに盛り上がっており(すなわち、周縁部分の高さが高くなっており)、この周縁部分(枠体4)に囲まれた中央部分が下方側Dbへ窪んだ凹部6Rとして構成されている。すなわち、凹部6Rは、
図3及び
図4に示すように、枠体4の枠の内側の面(内周壁面)からなる周壁部と、クッション材3の上面からなる底部と、によって構成されていて、当該凹部6Rの底部において、ペットの体圧を分散させながらペットの体を支持することができるようになっている。したがって、ペットは、この凹部6Rを寝床として横たわり、当該凹部6Rにおいて休息することができる。
【0059】
そして、本第二実施形態に係るペット用介護用品10は、液保持性の吸収性シート2が上述のペット用ベッド6のマット5の上面(すなわち、ペット用介護用品10の寝床となる凹部6Rの底部の下方側Db)に配置され、介護が必要な寝たきりのペットが上記凹部6R内で尿などの液状排泄物を排泄したりしても、当該液状排泄物を、上記凹部6Rの底部の下方側Dbにおいて吸収及び保持することができるようになっている。
【0060】
本第二実施形態に係るペット用介護用品10は、所定の厚みを有する枠体4と、前記枠体4の厚みよりも小さい厚みを有し且つ前記枠体4に着脱自在に嵌め込まれるマット5とを含む、特定のペット用ベッド6(ペット用ベッド)を更に含むものであるため、ペットが寝返り等をしても、ペットの体が前記枠体4の内側の範囲内(すなわち、前記マット5の上面上)に位置しやすく、上述の吸収性シート2及びクッション材3によって奏される効果(すなわち、寝たきりのペットの体の表面が尿などの液状排泄物によって湿潤状態となりにくくなるため、良好な衛生状態を維持することができ、床ずれを生じにくくすることができるという効果)をより確実に且つ安定的に発揮することができる。
さらに、ペットをペット用ベッドに寝かせることによって、ペットが寝返りを打ちやすくなるため、ペットが長時間同じ姿勢となりにくく、床ずれをより生じにくくすることができる。
【0061】
なお、本第二実施形態に係るペット用介護用品10は、ペットの飼育空間(例えば、室内等)の所定位置において、
図3に示すように、ペット用ベッドの凹部が上方を向くように載置されて、ペットが上記凹部内に横たわって休息を取れるように使用される。なお、上述のペット用ベッドは、ペットの飼育空間の床面又は地面に直接載置しても、所定のホルダーや敷材等を介して載置してもよい。
【0062】
以下、本発明の第二実施形態に係るペット用介護用品10を構成する各種部材について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第二実施形態に係るペット用介護用品10の一部を構成する吸収性シート2及びクッション材3については、上述の第一実施形態と重複する部分の説明を省略する。
【0063】
[ペット用ベッド]
本第二実施形態に係るペット用介護用品10において、ペット用ベッド6は、
図4及び
図5に示すように、所定の厚みを有し且つ略長方形の平面視形状を有する枠状の枠体4と、該枠体4の内側に着脱自在に嵌め込まれる、前記枠体4の厚みよりも小さい厚みを有する略直方体状のマット5と、によって構成されている。
かかるペット用ベッド6は、
図4及び
図5に示すように、周縁部分が所定の厚みを有する枠体4によってマット5が位置する中央部分よりも上方側Daに盛り上がっており、この上方側Daに盛り上がった周縁部分の内周壁面(すなわち、枠体4の枠の内側の面)と、該内周壁面に囲まれたマット5の上面とによって、上述の吸収性シート2及びクッション材3を収容するための収容凹部が形成されている。この収容凹部は、底部が所定のクッション性を有するマット5によって形成されているため、ペット用ベッドが仮に上述のクッション材を備えていなくても、ペットの体圧を分散させながらペットの体を支持することができるように構成されている。
【0064】
[枠体]
本第二実施形態に係るペット用介護用品10において、ペット用ベッド6の一部を構成する枠体4は、
図5に示すように、所定の厚みを有し且つ平面視にて略長方形の各辺に沿った枠状の構造を有する枠体本体部41と、該枠体本体部41の枠の内側において厚み方向Tの下方側Dbに位置する底部42Bを備えた、上記マット5を収容するための枠体凹部42と、によって構成されている。
【0065】
本第二実施形態において、ペット用ベッド6の周縁部分を構成する枠体本体部41は、
図3〜
図5に示すように、略長方形の各辺に沿った枠状の平面視形状を有しているが、当該枠体本体部41を構成する4辺のうちの1辺は、
図5に示すように、他の3辺よりも上方側に盛り上がった(すなわち、他の3辺よりも相対的に高さが高い)枠体高部41Hとして形成されており、ペット用介護用品10の凹部6R内に横たわるペットの背もたれとして機能することができる。一方、枠体本体部41を構成する4辺のうちの3辺は、
図3に示すように、上述の枠体高部41Hよりも相対的に高さの低い枠体低部41Lとして形成されており、ペットがペット用介護用品10の凹部6R内へ出入りしやすくなっているとともに、当該凹部6R内に横たわるペットが頭部を置く枕として機能することもできる。
【0066】
なお、本発明において、枠体本体部の構造は、上述の実施形態のものに限定されず、枠体本体部は、4辺のうちの2辺が高さの高い枠体高部として形成されていてもよいし、4辺すべてが同じ高さを有していてもよい。また、枠体本体部の平面視形状が円形等の場合は、当該円形の周縁部分の一部が高さの高い枠体高部として形成されていてもよい。
【0067】
さらに、本第二実施形態において、枠体本体部41は、
図4に示すように、該枠体本体部41の基本骨格をなす芯材41aと、該芯材41aを覆うシート状の被覆材41bと、によって構成されている。
芯材41aを構成する部材は、特に制限されず、当分野において公知の任意の部材を採用することができるが、中でも、綿(わた)やウレタンフォーム、発泡ビーズ等の所定のクッション性及び通気性を有するものを好適に用いることができる。
被覆材41bを構成するシートも、特に制限されず、例えば、合成繊維や天然繊維等からなる布帛(例えば、織布や編布等)などを用いることができるが、該シートは、芯材41aの形状変化に対する追従性等の点から、伸縮性を有するものが好ましい。
【0068】
また、本第二実施形態において、上述の枠体凹部42は、
図4及び
図5に示すように、枠体本体部41の枠の内側の面(内周壁面)と、該枠体本体部41の枠の内側において厚み方向Tの下方側Dbに位置する底部42Bと、によって構成されている。かかる底部42Bは、枠体本体部41の下方側Dbの面(下面)から連続するメッシュ状の布帛(例えば、合成繊維によって構成された織布や編布等)によって形成されており、上述の枠体凹部42内に嵌め込まれるマット5に湿気等が籠らないように、通気性が確保されている。なお、上述のメッシュ状の布帛は、枠体本体部41の下面の全体に亘って貼り付けられている。
また、本発明においては、枠体凹部は、このような態様に限定されず、布帛等の底部が存在しない開口部として形成されていてもよい。
【0069】
なお、本発明において、枠体の平面視形状(すなわち、平面視における枠体本体部の枠の内側形状及び枠の外側形状)は、特に制限されず、対象とするペットのサイズや所望の意匠性等に応じて任意の形状(例えば、円形、楕円形、正方形、三角形、星形等)を採用することができる。また、枠体の外形寸法(各種方向長さ、厚み等)も、特に制限されず、対象とするペットのサイズや種類等に応じて任意の外形寸法を採用することができる。
【0070】
[マット]
本第二実施形態に係るペット用介護用品10において、ペット用ベッド6の一部を構成するマット5は、
図4及び
図5に示すように、前記枠体4の枠の内側に着脱自在に嵌め込み得る平面視形状及び寸法を有し、且つ、前記枠体4の厚みよりも小さい厚みを有する略直方体状のクッション性部材によって構成されている。かかるマット5は、ペット用介護用品10の寝床となる凹部6Rに対応する下方側の位置に配置されて、上述のクッション材3とともに、上記凹部6R内に横たわるペットの体圧を分散させながら該ペットの体を支持することができるようになっている。
なお、上記枠体の厚みは、枠体が本第二実施形態のように一定の厚みを有していない場合、厚みが最も小さい部分の厚み(本第二実施形態の場合は、枠体低部41Lの厚み)を指す。また、不織布以外の厚みの測定は、測定対象物(マット、枠体、クッション材等)を水平面上に載置し、任意の4箇所における高さ(水平面から測定対象物の上面までの距離)を測り、その平均値を採用する。
【0071】
また、マット5を構成するクッション性部材は、当該クッション性部材がペット用ベッドの寝床として機能し得る物性(例えば、クッション性、柔軟性、強度、通気性等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、綿(わた)やウレタンフォーム、発泡ビーズ、熱可塑性樹脂からなる網状の繊維構造体などを用いることができる。中でも、高反発性の優れたクッション性能を有するとともに、通気性や透水性、耐久性等においても優れた性能を有するという点から、上記クッション性部材は、上述の液透過性のクッション材3を構成する繊維構造体と同様の、熱可塑性樹脂製の連続繊維からなる網状の繊維構造体を用いることが好ましい。
また、上記繊維構造体としては、厚み方向において、相対的に密度(見掛け密度)の低い低密度層と相対的に密度の高い高密度層とを有する、2層構造の繊維構造体も好適に用いることができる。かかる2層構造の繊維構造体は、上述の低密度層を上方側にしてマットとして用いると、高反発性の優れたクッション性能を発揮することができる。
なお、繊維構造体の密度(見掛け密度)の測定は、上述のクッション材3を構成する繊維構造体と同様にして測定することができる。
【0072】
また、マットを構成する上記クッション性部材は、合成繊維や天然繊維等からなる布帛(織布や編布等)などの被覆材によって被覆されていてもよいが、当該被覆材は、クッション性部材の形状変化に対する追従性等の点から、伸縮性を有するものが好ましい。
【0073】
なお、本発明において、上記マットの形状及び外形寸法は、上記枠体の枠の内側に着脱自在に嵌め込み得る形状及び外形寸法を有し、且つ、上記枠体の厚みよりも小さい厚みを有するものであれば特に制限されず、任意の形状及び外形寸法を採用することができる。
【0074】
また、本発明のペット用ベッドにおいては、ペット用ベッドのマットの上面に配置される吸収性シートは、展開した状態の平面視面積が前記マットの上面の平面視面積よりも大きい外形寸法を有していることが好ましい。吸収性シートがこのような外形寸法を有していると、吸収性シートをペット用ベッドのマットの上面に配置するときに、当該吸収性シートの外周縁が、
図3及び
図4に示すように、枠体4の内周壁面に沿って上方側へ立ち上がり、上述の液状排泄物に対する防漏壁として機能する起立部2Rを形成することができる。このような起立部2Rが形成されることによって、上述の液状排泄物が、ペットの体の表面や吸収性シート2の表面を伝って前記吸収性シートの面方向外側へ拡散したとしても、吸収性シート2から漏出しにくくなる(すなわち、伝い漏れが生じにくくなる)ため、良好な衛生状態をより確実に得ることができる。
【0075】
さらに、本発明においては、上述の液透過性のクッション材を構成する繊維構造体が、当該繊維構造体の厚み方向に延在する側面において、当該繊維構造体を構成する繊維(構成繊維)の端部を有し、且つ、当該端部が、上述の吸収性シートに係合していることが好ましい。
ここで、
図6は、第二実施形態に係るペット用介護用品10の
図4におけるVI部分の要部拡大図である。
図6に示すように、クッション材3を構成する繊維構造体の側面に存在する構成繊維31の端部32が、吸収性シート2(具体的には、吸収性シート2の表面シート21)に係合していると、上述の吸収性シート2の起立部2Rが、係合部ENにおいて繊維構造体の構成繊維31の端部32によって保持され、当該起立部2Rの立ち上がった状態を更に維持しやすくなる。これにより、上述の吸収性シート2の起立部2Rによって奏される効果を更に確実に得ることができる。
なお、液透過性のクッション材を構成する繊維構造体は、上述の側面以外の面(すなわち、上面及び下面)には、構成繊維の端部が存在していないことが好ましい。繊維構造体がこのような構成を備えていると、体圧分散性がより一層優れた高反発性のクッション性能を得ることができる。
【0076】
[使用方法]
以下、本発明の別の態様である、上述のペット用介護用品における5mm以上の厚みを有する液透過性のクッション材の使用方法について説明する。
5mm以上の厚みを有する液透過性のクッション材は、上述のとおり、0.01mm〜3mmの繊維径を有する熱可塑性樹脂繊維によって形成された繊維構造体であって、該繊維構造体の上面において前記連続繊維の端部を含まず、且つ、前記連続繊維が前記連続繊維同士の交点において互いに接合している繊維構造体からなり、かかるクッション材は、液保持性を有する吸収性シートの上面に配置した後、当該クッション材の上面に介護の必要なペットを載せて(寝かせて)使用することができる。
【0077】
かかるクッション材の使用方法は、液保持性を有する吸収性シートの上面に、液透過性のクッション材を配置するため、当該クッション材の上で寝たきりのペットが尿などの液状排泄物を排泄したりしても、液状排泄物はクッション材を透過して、その下の吸収性シートにおいて吸収及び保持させることができる。さらに、上述のクッション材が、上記特定の構造を有する繊維構造体からなるため、かかるクッション材の上面にペットが横たわってクッション材の厚み方向に体圧が掛かったとしても、当該体圧をクッション材の面方向に分散させて、クッション材の厚みの減少を抑制することができる。これにより、ペットの体と吸収性シートとの間の空間を一定程度確保することができるので、吸収性シートに保持された上述の液状排泄物がペットの体に接触したり、ペットの体の表面が蒸れたりするのを防ぐことができる。
さらに、上述のクッション材を構成する繊維構造体は、該繊維構造体の上面において連続繊維の端部を含まないため、当該端部がペットの体の表面(すなわち、皮膚)に物理的刺激を与えるのを防ぐことができる。
したがって、かかるクッション材の使用方法は、寝たきりのペットの体の表面が尿などの液状排泄物によって湿潤状態となりにくく且つ物理的刺激を受けにくいため、良好な衛生状態を維持しつつ、床ずれを生じにくくすることができる。その結果、介護者によるペットの床ずれ対策(例えば、定期的に寝返りを打たせる等)の手間を軽減することができる。
【0078】
なお、本発明のペット用介護用品及び液透過性のクッション材の使用方法は、上述の各実施形態の態様に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや変更等が可能である。例えば、上述のペット用介護用品は、着脱自在の洗濯可能なカバーを備えていてもよい。なお、本明細書において、「第一」、「第二」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び比較例を例示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0080】
実施例1
吸収性シートとして、市販のペット用吸収シート(商品名「デオシート レギュラー」、ユニ・チャーム株式会社製)を使用し、該吸収性シートの上面に、液透過性のクッション材として、0.035g/cm
3の密度、40mmの厚み、3.4kPaの圧力による加圧時の厚みが3mm以上である、熱可塑性樹脂製の繊維構造体を配置して、実施例1のペット用介護用品を作製した。
【0081】
実施例2
液透過性のクッション材として、0.040g/cm
3の密度、35mmの厚み、3.4kPaの圧力による加圧時の厚みが3mm以上である繊維構造体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のペット用介護用品を作製した。
【0082】
実施例3
液透過性のクッション材として、0.015g/cm
3の密度、50mmの厚み、3.4kPaの圧力による加圧時の厚みが3mm以上である繊維構造体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のペット用介護用品を作製した。
【0083】
比較例1
液透過性のクッション材として、坪量が25g/m
2のエアスルー不織布を1枚(密度:0.050g/cm
3、厚み:0.5mm、3.4kPaの圧力による加圧時の厚み:3mm未満)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のペット用介護用品を作製した。
【0084】
比較例2
液透過性のクッション材として、坪量が25g/m
2のエアスルー不織布を16枚重ね(密度:0.050g/cm
3、厚み:8mm、3.4kPaの圧力による加圧時の厚み:3mm以上)で用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のペット用介護用品を作製した。
【0085】
作製した実施例1〜3、比較例1、2のペット用介護用品について、吸収速度(秒)、液戻り量(g)及びクッション材の液保持量(g)をそれぞれ下記の測定方法に従って測定し、各ペット用介護用品の吸収性、液戻り性及びクッション材の液保持性を評価した。各ペット用介護用品の構成及び評価結果を表1に示す。
【0086】
[吸収速度及び液戻り量の測定方法]
(1)ペット用介護用品のクッション材の上面に、円筒(直径60mm、質量200g)を設置する。
(2)上述の円筒内に80mlの人工尿を滴下する。なお、人工尿は、イオン交換水10Lに、尿素200g、塩化ナトリウム80g、硫酸マグネシウム8g、塩化カルシウム3g及び色素(青色1号)約1gを溶解させることにより調製する。
(3)人工尿を滴下してから、当該人工尿が円筒内からなくなるまでの時間(秒)を測定して、それをペット用介護用品の吸収速度(秒)とする。
(4)人工尿を滴下してから10秒後に、当該人工尿を滴下したクッション材の上面に50gの濾紙を載せ、さらに、その濾紙の上に3.5Kg(10cm×10cm)の錘を載せる。
(5)錘を載せてから3分後に濾紙の質量(g)を測定し、当該濾紙に吸収された人工尿の質量(g)を算出して、それをペット用介護用品の液戻り量(g)とする。
【0087】
[クッション材の液保持量の測定方法]
(1)予め質量(g)を測定しておいたクッション材を、所定容量(例えば、500ml)のビーカー上に配置した後、クッション材の上面に60mlの人工尿を滴下する。
(2)人工尿の滴下後、直ぐにクッション材の質量(g)を測定し、クッション材の内部に残留する人工尿の質量(g)を算出して、それをクッション材の液保持量(g)とする。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示すように、実施例1〜3のペット用介護用品は、いずれも、吸収性、液戻り性及びクッション材の液保持性に関するすべての特性に優れており、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態になりにくい環境を提供できることが分かった。一方、比較例1及び2のペット用介護用品は、吸収性、液戻り性及びクッション材の液保持性に関するすべての特性に劣っており、寝たきりのペットの体の表面が湿潤状態になりやすい環境を形成することが分かった。