特許第6495425号(P6495425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6495425
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】フレキシタンクを利用した液体輸送方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/22 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   B65D88/22 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-238251(P2017-238251)
(22)【出願日】2017年12月13日
【審査請求日】2018年1月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 実用化試験 試験を行った日 平成29年7月20日 試験を行った場所 釜石鉱山株式会社
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517436464
【氏名又は名称】三八五通運株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】山口 武夫
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−017773(JP,A)
【文献】 特公昭45−017351(JP,B1)
【文献】 特開2007−030742(JP,A)
【文献】 実開昭57−017989(JP,U)
【文献】 特開昭58−049534(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/107021(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0001085(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D88/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシタンクをコンテナに搭載してなる液体の輸送方法であって
フレキシタンク自体にラッシングベルトを縦・横方向双方に複数本かけて、ぐるぐる巻き状態とし、固体に近い状態に固縛する一次固縛工程、
一次固縛されたフレキシタンクを、コンテナ床面の荷崩れ防止金具を使用してラッシングベルトをかけ、床面に押さえ付ける形で固縛する二次固縛工程、
とからなることを特徴とするフレキシタンクを利用した液体輸送方法。
【請求項2】
上記一次固縛に用いられるラッシングベルトが、フレキシタンクの下部にあたる部分を予めネット状としたものであることを特徴とする請求項1記載のフレキシタンクを利用した液体輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体輸送方法に関し、詳しくはフレキシタンクを用いた輸送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内における液体輸送は、少量の場合は18リットル(一斗)缶やペール缶(20リットルが主流)、200リットル程度ではドラム缶、1,000リットル程度になるとIBC(Intermediate Bulk Container:中容量コンテナ)を使用し、自動車やコンテナで行われている。
容量が大きい場合は、タンクローリー(トラック及びトレーラー)、タンクコンテナによる輸送が主流となっている。
【0003】
また、最近では、飲料や動植物油などの輸送において、フレキシタンクを利用した輸送が注目されつつある。フレキシタンクは、欧州にて国際海上コンテナを使用して液体を輸送する容器として平成12年(2000年)頃から使用され始め、現在では危険品を除く液体の運搬において一般的に使用されている。
【0004】
天然水や保存水の場合、ペットボトルに充填し、段ボール箱詰めされ、パレットに積載し、鉄道コンテナ又はトラック便での輸送が行われている。
原料水の場合は、ドラム缶(200リットル入り)や、マキシコン(IBCの一種:1,000リットル入り)と呼ばれる立方体の容器に内袋を設置して充填し、輸送している。コンテナを利用する場合、JRコンテナであれば、ドラム缶23本、マキシコンは4基を1コンテナに積載できる。
【0005】
原料水の受注の増大に伴い、積載効率、荷役作業効率、抜き取り効率の向上に向けた改善策を講じることが必要となってきた。
ドラム缶による輸送では、積載効率は比較的良好であるが、1回当りの納入数量単位が大きい場合は、ドラム缶への充填、コンテナへの積載、取り降ろし、納入先におけるドラム缶からの抜き取り作業等、荷役作業に非常に手間を要するという問題点がある。
【0006】
マキシコンによる輸送では、積載量が大きいものの、1容器当りの重量が大きいため、積載率が低くなる問題があり、また荷役作業には手間を要し、輸送費用が嵩むなどの問題も生じる。
【0007】
以上のことから、原料水の効率的な輸送システムの構築に当たっては、積載率の向上、荷役作業効率の改善、の観点からの検討する必要があった。
積載率の向上、荷役作業効率の改善、といった観点から、タンクローリーやタンクコンテナによる輸送も考えられるが、取扱性、輸送費用等からみると、小、中容量の液体輸送となる原料水の輸送に適しているとはいえない、
【0008】
そこで、本発明者は最近注目されてきている、フレキシタンクを利用した輸送に着目した。
フレキシタンクとは、ポリエチレンなどのフレキシブルな素材からなる大容量の容器のことをいい、コンテナに載置し輸送することにより、その積載効率の向上を図るものである。しかしながら、その素材故、長時間の輸送に耐えられるかどうか懸念があり、より安全に、かつ発着荷役作業の簡便性、輸送費用を抑えた輸送手段の開発が待たれていた。
【0009】
フレキシタンクの安全な輸送手段としては、フレキシタンクの外側に剛性の構造体を形成して保護することが考えられる(特許文献1)。特許文献1記載の技術は、フレキシタンクの外形保護の面では効果があると思われるが、取扱性にそれほどの改善は期待できず、輸送費用がかかるなどせっかくのフレキシタンクの良さを生かすことができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2013−501685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の液体輸送の問題点を解決し、原料水の効率的な輸送システムの構築を図り、積載率の向上、荷役作業効率の改善、輸送費用の削減を可能とする液体の輸送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、フレキシタンクを利用した液体の輸送方法において、フレキシタンクをより固体に近い状態に固縛し、その状態でコンテナに固縛することによって、液体輸送における上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0013】
本発明は、まず、フレキシタンクを固体に近い状態に固縛し、しかる後、コンテナに固縛することを特徴とし、以下の技術を基礎とする。
【0014】
(1)フレキシタンクをコンテナに搭載して行う液体輸送方法であって
フレキシタンク自体にラッシングベルトを縦・横方向双方に複数本かけて、ぐるぐる巻き状態とし、固体に近い状態に固縛する一次固縛工程、
一次固縛されたフレキシタンクを、コンテナ床面の荷崩れ防止金具を使用してラッシングベルトをかけ、床面に押さえ付ける形で固縛する二次固縛工程、
とからなることを特徴とするフレキシタンクを利用した液体輸送方法。
【0015】
(2)上記一次固縛に用いられるラッシングベルトが、フレキシタンクの下部にあたる部分を予めネット状としたものであることを特徴とする(1)記載のフレキシタンクを利用した液体輸送方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の固縛手段を採用して液体輸送を行った場合、積載率の向上、荷役作業効率の改善を図ることができ、また、発着荷役施設等への設備投資も抑えることができる、という利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はフレキシタンクを示す写真である。
図2図2はラッシング養生なしの場合を示す図である(比較例1)。
図3図3はラッシングベルト2本による固縛状態を示す図である(比較例2)。
図4図4は本発明において、フレキシタンク自体を固縛した状態を示す図である。
図5図5は本発明において、固縛したフレキシタンクをコンテナに固縛した状態を示す図である。
図6図6は、ラッシングベルトのフレキシタンクの下部あたる部分を予め縫製し、ネット状とした状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
液体の輸送において、液体は流体であるため、トラック輸送中の発進・停止・カーブ走行時などで様々な力が働き、容器内で揺れが生じている。
タンクローリーやタンクコンテナの場合、容器自体は固体であり、かつ流体の揺れの力を抑えるために、容器内に間仕切りを設け、小さい部屋を設けることにより、液体の揺れを小さくしている。この場合においても液体は動揺するため、停車時に制動距離が延びたり、カーブ走行時には外側に遠心力が働くなど トラック走行時には安全確保に細心の配慮を行っている。
【0019】
液体(流体)の輸送にあたっては、フレキシタンクに充填しても、その状態は固体ではなく流体に近いため、輸送中の様々な力で、フレキシタンクが大きな変形を伴う状態にある。輸送中にフレキシタンクが変形を起した場合、ある一部分に過大な加重がかかることにより、容器破損の危険性が増すと考えられる。
それ故、フレキシタンクを用いて液体を輸送する場合、安全に輸送するするためには、より固体に近い状態いすることが必要となる。
【0020】
そのためには、まずフレキシタンク自体を、事前にラッシングベルトで縦・横方向双方にぐるぐる巻きにし、ある程度固体に近い状態とする。
ついで、固縛されて流動性が制御され、ある程度固体に近い状態にしたフレキシタンクを、コンテナ床面の荷崩れ防止金具を使用してラッシングベルトを横や斜めにかけ、床面に抑え付ける形で固縛し、より固体に近づくようにする。
以下、図面に基づき、本発明の実施の態様を説明する。
【0021】
〔比較例1、2〕
図2は、ラッシング養生がない状態を示し(比較例1)、図3は、ラッシングベルト2本による固縛状態を示す(比較例2)。
【0022】
〔実施例1〕
図4は、フレキシタンク自体をラッシングベルト7本により固縛した状態を示し、図5は、その固縛したフレキシタンクをさらにラッシングベルト4本使用し、荷崩れ防止金具を介してコンテナに固縛した状態を示す(実施例1)。
【0023】
固縛方法を、固縛なし(比較例1)、ラッシングベルト2本(比較例2)、ラッシングベルト11本(実施例1)の場合について試験輸送を行い、振動を測定した。試験輸送のパターンを表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
試験輸送の各作業時における加速度の最大値について結果を分析した。
なお、測定条件は以下のとおりである。
・設定条件:0.0312秒ごとにサンプリングし、20秒間での最大値を記録した数値
・X軸:列車方向に対して、左右の力
・Y軸:列車方向に対して、前後の力
・Z軸:上下の力(+が上方向、▲が下方向)
*重力の1Gを常に認識する為、静止状態ではZ軸に対して▲1Gが計測記録される。
【0026】
試験輸送における作業は、通常取扱として、集荷時(通常)、フォークリフトによる通常荷役時について、また、高い負荷をかけた状態として、トラック積載時(時速10kmで急ブレーキ、時速20kmで強めのブレーキ)、フォークリフト積載時(時速10kmで急ブレーキ、急旋回をかけた際、駅ホームに強めに置いた際)について、それぞれ加速度を測定した。結果を表2〜8に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】
表2〜8より、ラッシングベルト11本で固縛したものが、加速度の最大値においてどの作業でも最も低い値を示している。トラックの急制動時でフレキシタンクの動揺によるコンテナの内壁面への接触が抑えられ、強い負荷が内壁面に発生していないことが看取できる。
【0035】
フォークリフトによる急旋回した際のコンテナ内壁への圧力についての値も低く、問題は生じていない。ラッシングベルト11本による固縛を行うことにより、フレキシタンクの動揺はすぐに収まっており、共振による動揺の継続の可能性は低くなる。
【0036】
試験の終了後、コンテナを開扉してフレキシタンクとラッシングベルトの接触面を確認したが、擦れ等は確認されず、フレキシタンクの強度も問題がなかった。
ラッシングベルト11本による固縛が輸送に問題はないものといえる。
【0037】
〔実施例2〕
フレキシタンク自体を固縛するラッシングベルト7本について、フレキシタンクの下部にあたる部分の、ラッシングベルトが交差する箇所を予め縫製し、全体をネット状としたものを使用した。図6の写真がその状態を示している。その結果、固縛のより安定性と荷役時間の短縮を図ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によって、液体の輸送において、効率的な輸送システムを構築することができ、積載率の向上と荷役作業効率の改善を図ることができ、実用的価値の高いものである。
【符号の説明】
【0039】
1 フレキシタンク
2 コンテナ床面
3 振動計
4 ラッシングベルト
5 荷崩れ防止金具
6 ラッシングベルト(荷崩れ防止金具用)
【要約】
【課題】
液体の効率的な輸送システムの構築を図り、積載率の向上、荷役作業効率の改善、輸送費用の削減を可能とする液体の輸送方法を提供すること。
【解決手段】
フレキシタンクをコンテナに搭載して行う液体輸送方法であって、フレキシタンク自体にラッシングベルトを縦・横方向双方に複数本かけて、ぐるぐる巻き状態とし、固体に近い状態に固縛する一次固縛工程、一次固縛されたフレキシタンクを、コンテナ床面の荷崩れ防止金具を使用してラッシングベルトをかけ、床面に押さえ付ける形で固縛する二次固縛工程、とからなる。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6