(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関(20)の排気通路(23)に設けられた排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタ(12)より下流に設けられ、排気ガス中の粒子状物質を付着させる被付着部(52)を有し、その被付着部に付着した粒子状物質の量に応じた値を出力するセンサ(13)と、
排気ガス中に粒子状物質と共存する支燃性ガスの濃度を取得する濃度取得手段(S2、S14、S34、S54、S74、17)と、
排気ガスの温度を取得する温度取得手段(S3、S15、S35、S55、S75、17)と、
前記濃度取得手段が取得した濃度と、前記温度取得手段が取得した温度とに基づいて、前記センサの出力値を、粒子状物質の量を多くする方向に補正する補正手段(S5、S76、S77、S81、17)と、
前記補正手段による補正後の前記出力値に基づき前記フィルタの故障判定を行う故障判定手段(S6〜S8、S82〜S84、17)と、
を備え、
前記濃度取得手段は、NO、NO2及びO2の少なくとも1つの濃度を取得することを特徴とするフィルタの故障検出装置。
内燃機関(20)の排気通路(23)に設けられた排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタ(12)より下流に設けられ、排気ガス中の粒子状物質を付着させる被付着部(52)を有し、その被付着部に付着した粒子状物質の量に応じた値を出力するセンサ(13)と、
前記フィルタが故障判定の基準となるフィルタである場合における前記センサの出力値を推定する推定手段(S17、S38、S58、S78、17)と、
前記推定手段が推定した値と、前記センサの実際の出力値との比較に基づき前記フィルタの故障判定を行う故障判定手段(S22〜S24、S42〜S44、S62〜S64、S82〜S84、17)と、
排気ガス中に粒子状物質と共存する支燃性ガスの濃度を取得する濃度取得手段(S14、S34、S54、S74、17)と、
排気ガスの温度を取得する温度取得手段(S15、S35、S55、S75、17)と、
前記濃度取得手段が取得した濃度と、前記温度取得手段が取得した温度とに基づいて、前記センサの出力値を、粒子状物質の量を多くする方向に補正する出力値補正と、前記推定手段の推定値を、粒子状物質の量を少なくする方向に補正する推定値補正とのいずれかを行う補正手段(S16、S18、S19、S76、S77、S81、17)とを備え、
前記故障判定手段は、前記補正手段による補正後の値を用いて前記フィルタの故障判定を行い、
前記濃度取得手段は、NO、NO2及びO2の少なくとも1つの濃度を取得することを特徴とするフィルタの故障検出装置。
前記濃度取得手段(S14、S34、S54、S74、17)及び前記温度取得手段(S15、S35、S55、S75、17)は、各時間での前記濃度及び前記温度を取得し、
前記補正手段(S16、S18、S19、S36、S37、S39、S56、S57、S61、S76、S77、S81、17)は、各時間での前記濃度及び前記温度と、前記被付着部への粒子状物質の捕集開始からの経過時間とを反映させた補正を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルタの故障検出装置。
内燃機関(20)の排気通路(23)に設けられ、排気ガス中の粒子状物質を付着させる被付着部(52)を有し、その被付着部に付着した粒子状物質の量に応じた値を出力するセンサ(13)と、
排気ガス中に粒子状物質と共存する支燃性ガスの濃度を取得する濃度取得手段(S2、S14、S34、S54、S74、17)と、
排気ガスの温度を取得する温度取得手段(S3、S15、S35、S55、S75、17)と、
前記濃度取得手段が取得した濃度と、前記温度取得手段が取得した温度とに基づいて、前記センサの出力値を、粒子状物質の量を多くする方向に補正する補正手段(S5、S76、S77、S81、17)と、
を備え、
前記濃度取得手段は、NO、NO2及びO2の少なくとも1つの濃度を取得することを特徴とする粒子状物質検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明が適用された車両のエンジンシステム100の構成図である。エンジンシステム100は、内燃機関としての多気筒型(
図1では4気筒)のディーゼルエンジン20(以下、単にエンジンという)を備えている。そのエンジン20には、気筒7内に燃料を噴射するインジェクタ6が設けられている。エンジン20は、そのインジェクタ6から噴射された燃料が気筒7内で自己着火することで、車両を駆動するための動力を生み出している。
【0015】
エンジン20の吸気通路10には、上流側から、空気を圧縮する過給機1、過給機1で圧縮された空気を冷却するインタークーラー2及び空気量を調整するスロットルバルブ3が設けられている。吸気通路10は、各気筒7に繋がる分岐通路を有したインテークマニホールド5に接続されている。
【0016】
各気筒7には、各気筒7から排出される排気ガスをまとめて排気通路23に渡すためのエキゾーストマニホールド8が接続されている。排気通路23には、過給機1のタービンが設けられ、そのタービンの上流側には、排気ガスの一部を吸気系に還流させるためのEGR(Exhaust Gas Recirculation)通路19が接続されている。EGR通路19は、スロットルバルブ3とエアフロメータ4の間の位置で吸気通路10に繋がっている。EGR通路19には、吸気系に還流させる排気ガスの量(EGR量)を調整するEGRバルブ9が設けられている。
【0017】
排気通路23には、EGR通路19が接続された位置より下流において、排気ガス中のCO、HC等を酸化して除去する酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)11が設けられている。その酸化触媒11より下流には、本発明のフィルタに相当するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)12が設けられている。DPF12は公知の構造のセラミック製フィルタであり、例えば、コーディエライト等の耐熱性セラミックスをハニカム構造に成形して、ガス流路となる多数のセルを入口側または出口側が互い違いとなるように目封じして構成される。エンジン20から排出された排気ガスは、DPF12の多孔性の隔壁を通過しながら下流へ流れ、その間に排気ガスに含まれるPM(パティキュレートマター、粒子状物質)が捕集されて次第に堆積する。
【0018】
排気通路23のDPF12よりも下流には、排気ガス中のPM量を検出する本発明のセンサとしての電気抵抗式のPMセンサ13が設けられている。ここで、
図2は、PMセンサ13の構造を模式的に示した図である。
図2に示すように、PMセンサ13は、内部が中空にされた例えば金属製のカバー51とそのカバー51内に配置されたセンサ素子52とを備えている。カバー51には多数の孔511が形成されており、排気通路23を流れる排気ガスの一部がそれら孔511からカバー51内に導入されるようになっている。また、カバー51には、カバー51内に導入された排気ガスを排出するための排出孔512が形成されている。なお、
図2では、排出孔512は、カバー51の先端に形成された例を示している。
【0019】
センサ素子52はセラミックス等の絶縁体基板から構成されている。センサ素子52(絶縁体基板)の一方の面には、互いに離間し、かつ対向した一対の対向電極53が設けられている。ここで、
図3は、PMセンサ13によるPM量の検出原理を説明する図であり、一対の対向電極53付近におけるPM付着の様子を示している。
図3に示すように、センサ素子52には、一対の対向電極53間に所定の直流電圧を印加する電圧印加回路55が接続されている。カバー51内に導入された排気ガス中のPMの一部は自身が持つ粘着性によってセンサ素子52に捕集(付着)される。
【0020】
また、電圧印加回路55により対向電極53間に電圧が印加されると、各対向電極53はそれぞれ正、負に帯電する。これにより、対向電極53の近傍を通過するPMを帯電させて、センサ素子52への捕集が促進される。以下では、対向電極53間に電圧を印加することによるセンサ素子52へのPM捕集を静電捕集という。
【0021】
PMセンサ13の出力特性を説明すると、PMセンサ13はセンサ素子52に捕集されたPMによって対向電極53間の抵抗が変化することを利用して、センサ素子52に捕集されたPM量(各時点のPM付着量を積算した積算量)に応じた出力を発生する。つまり、PMセンサ13は、対向電極53間の抵抗値に応じた値をPM量として出力する。詳細には、センサ素子52へのPM捕集量が少ないうちはセンサ出力は発生しない(厳密には、センサ出力が立ち上がったとみなせる閾値出力よりも小さい出力しか発生しない)。PMに含まれるSoot成分はカーボン粒子から構成されており導電性を有するので、PM捕集量が一定以上の量になった時に一対の対向電極53間が導通して、センサ出力が立ち上がる(閾値出力以上の出力が発生する)。
【0022】
センサ出力の立ち上がり後は、PM捕集量が多くなるほど一対の対向電極53間の抵抗が小さくなるので、対向電極53間に流れる電流、つまりセンサ出力が大きくなっていく。エンジンシステム1には、この対向電極53間に流れる電流又はその電流を電圧に変換してその電圧を検出する検出部56(
図3参照)が備えられ、この検出部56の計測値がPMセンサ13の出力となる。なお、対向電極53間を流れる電流に相関する値として例えば一対の対向電極53間の抵抗値を測定して、その抵抗値をPMセンサ13の出力としても良い。
【0023】
また、センサ素子52には、センサ素子52を加熱するヒータ54が設けられている。そのヒータ54は、例えばセンサ素子52に捕集されたPMを燃焼除去してPMセンサ13を再生させるために用いられる。ヒータ54は、例えばセンサ素子52(絶縁体基板)の対向電極53が設けられていない方の面又はセンサ素子52の内部に設けられている。ヒータ54は、例えば白金(Pt)等の電熱線から構成されている。PMセンサ13の再生においては、PMを構成する各成分(Soot成分、SOF成分等)の全てを燃焼除去できる温度、具体的には例えば600℃以上の温度(例えば700℃)となるように、ヒータ54は制御される。ヒータ54はSCU14に接続されている。なお、センサ素子52が本発明における被付着部に相当する。
【0024】
図1の説明に戻り、エンジンシステム100には、PMセンサ13の他に、エンジン20の運転に必要な各種センサが設けられている。具体的には、例えば気筒7内に吸入する空気量を検出するエアフロメータ4、エンジン20の回転数を検出する回転数センサ15(例えばクランク角を検出するクランク角センサ)、車両の運転者の要求トルクを車両側に知らせるためのアクセルペダルの操作量(踏み込み量)を検出するアクセルペダルセンサ24、などが設けられている。さらに、DPF12の下流の排気通路23には、排気ガスの温度を検出する排気温センサ21が設けられている。これら各センサの検出信号はECU17に入力されるようになっている。
【0025】
また、エンジンシステム100には、インジェクタ6を制御するEDU16(電子駆動装置)が設けられている。EDU16は、ECU17から指令された噴射条件(噴射時期、噴射量等)で燃料が噴射されるようにインジェクタ6を駆動する。
【0026】
また、エンジンシステム100にはSCU(Sensor Control Unit)14が設けられている。SCU14は、
図3の電圧印加回路55及び検出部56を有し、電圧印加回路55により対向電極53間の電圧印加を制御、つまり静電捕集の実施を制御したり、ヒータ54の通電を制御したりするなど、PMセンサ13の動作を制御する。SCU14は、ヒータ54を制御する際には、ヒータ54に流す電流(通電量)や通電時間を調整する。また、SCU14は、対向電極53間に流れる電流又はそれに相関する値を検出部56により検出する。SCU14とECU17とは、CAN(Controller Area Network)等の通信線で接続されており、双方向に通信が可能となっている。
【0027】
エンジンシステム100にはエンジンシステム100の全体制御を司るECU(Electronic Control Unit)17が備えられている。ECU17は、通常のコンピュータの構造を有するものとし、各種演算を行うCPU(図示外)や各種情報の記憶を行うROM、RAM、フラッシュメモリ等のメモリ18を備えている。ECU17は、例えば上記各種センサからの検出信号に基づきエンジン20の運転条件を検出し、運転条件に応じた最適な燃料噴射量、噴射時期、噴射圧等を算出して、エンジン20への燃料噴射を制御する。さらに、ECU17は、PMセンサ13の検出値に基づいてDPF12の故障の有無を判定する故障判定処理を実行する。この故障判定処理の詳細は後述する。また、メモリ18には、ECU17(CPU)が実行する処理の制御プログラムや、後述の
図6〜
図8に示す関係データなどの各種情報が記憶されている。
【0028】
ところで、PMが特定のガスと共存下にあるときにそのガスによりPMが燃焼除去され、PMセンサ13の出力が減少してしまう。ここで、
図4、
図5は、酸素原子を含有した酸化性ガス(支燃性ガス)のうち、排気ガス中に含まれるNO、O
2、NO
2の共存下では、PMセンサに捕集されたPMの一部が燃焼(酸化)して、PMセンサの出力が減少することの実験結果を示している。
図4は、NO、O
2、又はNO
2の共存下でのPMセンサの出力減少率を示している。
図4の実験条件を説明すると、エンジンの排気ガスの環境下にPMセンサを設置して、PMセンサの出力が所定値に達した時に、そのPMセンサを電気炉に持っていく。電気炉において400℃に保持した状態でPMセンサの出力が安定するのを待ってから、支燃性ガスとしてNO、O
2、又はNO
2のいずれか1種のガスを供給し、その供給開始から所定時間経過後のPMセンサの出力減少率を確認する。この出力減少率は、ガス供給開始時におけるPMセンサの出力値に対する減少率である。供給ガスの濃度は、NOの場合は2000ppm、O
2の場合は20%、NO
2の場合は500ppmである。
図4に示すように、NO、O
2、NO
2のいずれの場合であっても、センサ出力が減少してしまう。また、センサ出力の減少率はガス種によって異なる。
【0029】
また、
図5は、
図4とは別の実験結果を示し、NO、O
2、又はNO
2の共存下における、温度に対する、PMセンサに捕集されたPMの燃焼量に相当するCO
2生成量の変化を示している。
図5の実験条件を説明すると、ある程度の量のPMを捕集したPMセンサを実機から取り外して電気炉に持っていく。そして、電気炉内にNO、O
2、又はNO
2のいずれか1種のガスを供給し、且つ電気炉内の温度を0℃〜800℃の範囲で変化させたときの、各温度でのCO
2生成量を検出する。このCO
2生成量は、供給ガス(NO、O
2、又はNO
2)とPMとが酸化反応することにより生成されたCO
2生成量であり、PMセンサに捕集されたPMのうち供給ガスにより燃焼除去された量に相当する。供給ガスの濃度は、NOの場合は1%、O
2の場合は10%、NO
2の場合は1%である。
【0030】
図5に示すように、ガス種に応じて温度に対するCO
2生成量(PM燃焼量)の変化の傾向が異なっている。具体的には、供給ガスがNOの場合には、0℃〜400℃の範囲ではCO
2生成量が少なくなっており、400℃以上の範囲では温度が高くなるにつれてゆるやかにCO
2生成量が多くなっていく。
【0031】
また、供給ガスがNO
2の場合には、0℃〜200℃の範囲ではCO
2生成量が少なく、200℃の辺りから温度が高くなるにつれてCO
2生成量は徐々に多くなっていく。そして、400℃辺りの温度でCO
2生成量はピーク値をとり、それ以上の温度範囲では温度が高くなるにつれてCO
2生成量は徐々に少なくなっていく。なお、800℃の辺りでも、CO
2生成量は多少増加している。
【0032】
また、共存ガスがO
2の場合には、0℃〜400℃の範囲ではCO
2生成量が少なく、400℃を超えた辺りから急激にCO
2生成量が増加し、650℃辺りでCO
2生成量のピーク値をとり、そのピーク値をとる温度を超えると急激にCO
2生成量が減少している。
【0033】
また、本発明者は、支燃性ガスの濃度が高いほど、燃焼除去されるPM量が増加して、PMセンサの出力減少率が大きくなることを確認している。さらに、本発明者は、同じ種類のガス、濃度及び温度の共存時であっても、共存している時間が長いほど燃焼除去されるPM量が増加し、PMセンサの出力減少率が大きくなることを確認している。
【0034】
これらの実験結果により、PMと共存する支燃性ガスにより、PMセンサに捕集されたPMの一部が燃焼除去され、PMセンサの出力が減少し、どの程度出力が減少するかは、支燃性ガスの種類、濃度及び温度によって変わることが分かる。この知見に基づき、ECU17のメモリ18には、
図6〜
図8の、支燃性ガスの種類、濃度及び温度と、PMセンサの出力補正値との関係データが記憶されている。なお、SCU14のメモリにこの関係データが記憶されたとしても良い。出力補正値は、PMが捕集されたPMセンサを各支燃性ガスの共存下に置いた時に、基準時でのセンサ出力O1に対する、基準時から所定時間経過した時におけるセンサ出力O2の減少割合(=(O1−O2)/O1)に相当する値である。別の言い方をすると、出力補正値は、NO、NO
2及びO
2の各ガスが共存しなかった場合のセンサ出力に対する、各ガスが各濃度及び各温度で共存した場合のセンサ出力の減少割合に相当する値である。
図6〜
図8の各出力補正値は1より小さい値である。
【0035】
図6は、NO共存時における、温度及びNO濃度と出力補正値A
NOとの関係データを示している。支燃性ガスの共存時におけるPMセンサの出力減少は、PMセンサに捕集されたPMが支燃性ガスにより燃焼除去された量に相関する。したがって、
図6の出力補正値A
NOと温度との関係は、
図5における温度とNO共存時のCO
2生成量との関係と同様となっている。また、同一温度においてはNO濃度が高いほど出力補正値A
NOは大きい値となっている。
【0036】
図7は、NO
2共存時における、温度及びNO
2濃度と出力補正値A
NO2との関係データを示している。
図7の出力補正値A
NO2と温度との関係は、
図5における温度とNO
2共存時のCO
2生成量との関係と同様となっている。また、同一温度においてはNO
2濃度が高いほど出力補正値A
NO2は大きい値となっている。
【0037】
図8は、O
2共存時における、温度及びO
2濃度と出力補正値A
O2との関係データを示している。
図8の出力補正値A
O2と温度との関係は、
図5における温度とO
2共存時のCO
2生成量との関係と同様となっている。また、同一温度においてはO
2濃度が高いほど出力補正値A
O2は大きい値となっている。
図6〜
図8の関係データは、
図4や
図5の実験と同様の方法により得ることができる。
【0038】
次に、ECU17のCPUが実行する故障判定処理を説明する。
図9はその故障判定処理のフローチャートを示している。
図9の処理は、エンジン20の始動後、PMセンサ13(特にセンサ素子52)が被水しない程度に排気管内が乾燥したか否かの乾燥判定が成立した後、ヒータ54(
図2、
図3参照)を通電してセンサ素子52に捕集されたPMを燃焼除去するセンサ再生を実施した後に、開始する。なお、乾燥判定においては、例えば排気温センサ21が検出する排気ガスの温度が、結露水が蒸発により消失する所定温度(例えば100℃)以上か否かを判定する。
【0039】
図9の処理を開始すると、ECU17は、SCU14にPMセンサ13の静電捕集を実施させる(S1)。これにより、PMセンサ13へのPM捕集が開始する。
【0040】
次に、DPF12を通過した排気ガス中のNO、NO
2及びO
2の各濃度を検出する(S2)。排気ガス中の組成はエンジン20の運転条件によって変わるので、例えばエンジン20の運転条件に基づいて、NO、NO
2及びO
2の各濃度を推定する。具体的には、実機と同じ条件で、ガス種ごとに、エンジン運転条件とDPF下流のガス濃度との関係データを予め調べて、メモリ18に記憶しておく。そして、今回のエンジン運転条件を取得して、取得した運転条件に対応するガス濃度を関係データから求める。エンジン運転条件は、具体的にはエンジン回転数、筒内への燃料噴射条件(燃料噴射量、噴射時期等)、吸入空気量、EGR率(吸入空気量に対するEGR量の割合)などである。エンジン回転数は回転数センサ15により得られる。燃料噴射条件は、エンジン回転数及びアクセルペダルセンサ24の検出値(エンジン負荷)に基づきECU17自身が設定した指令値とすれば良い。また、吸入空気量はエアフロメータ4により得られる。EGR率は、エンジン回転数、エンジン負荷などからECU17自身が設定した目標値又はEGRバルブ9の開度とすれば良い。
【0041】
なお、
図1に示すように、DPF12下流のPMセンサ13が設置された辺りに、共存ガスの濃度を検出するセンサ22を設けて、そのセンサ22からガス濃度を取得しても良い。センサ22として、具体的にはNOx濃度を検出するNOxセンサや、O
2濃度を検出するO
2センサ(例えば空燃比センサ)を用いることができる。また、NO、NO
2及びO
2のうち一部のガスについてはエンジン運転条件に基づいて濃度を推定し、残りのガスについてはセンサから濃度を取得するようにしても良い。このとき、NOxセンサではNO濃度とNO
2濃度とを区別して検出できない場合には、NO濃度及びNO
2濃度についてはエンジン運転条件から推定し、O
2濃度はO
2センサから取得しても良い。
【0042】
次に、DPF12下流の排気ガスの温度を検出する(S3)。この温度は、排気温センサ21から取得しても良いし、エンジン20の運転条件に基づいて推定しても良い。エンジン運転条件からガス温度を推定する場合には、エンジン運転条件(エンジン回転数、エンジン負荷等)とガス温度との関係データをメモリ18に記憶して、今回のエンジン運転条件に対応するガス温度をその関係データから求める。また、ヒータ54による加熱が行われていない時のセンサ素子52の温度は排気ガスの温度と同様の値となる。そこで、PMセンサ13に、センサ素子52の温度を検出する温度センサが設けられている場合には、その温度センサの検出値に基づいて排気ガスの温度を推定しても良い。
【0043】
次に、SCU14にPMセンサ13の出力E
1を検出させて、その出力E
1をSCU14から取得する(S4)。
【0044】
次に、S2、S3で検出したガス種、ガス濃度及びガス温度に基づいて、S4で検出したセンサ出力E
1を、PM量を多くする方向に補正する(S5)。具体的には、S2、S3で検出したガス種、ガス濃度及びガス温度と、
図6〜
図8の関係データとに基づいて出力補正値Aを算出する。
図6〜
図8では、ガス種ごとの出力補正値A
NO、A
NO2、A
O2を示しているが、S5では、それら出力補正値A
NO、A
NO2、A
O2の全てを反映した一つの総合補正値Aを求める。そのために、例えば、メモリ18に、
図6〜
図8の関係データに基づいて得られる、ガス種、ガス濃度及びガス温度と総合補正値Aとの関係データ(A=f(ガス種、濃度、温度))を記憶しておき、その関係データに基づいて総合補正値Aを求める。総合補正値Aは、例えば、
図6〜
図8の出力補正値A
NO、A
NO2、A
O2を足し合わせた値とすることができる。
【0045】
また、
図6〜
図8の各関係データに基づいて、先ず、ガス種ごとの出力補正値A
NO、A
NO2、A
O2を個別に求め、それら出力補正値A
NO、A
NO2、A
O2を所定の演算(例えば足し算)を施すことで総合補正値Aを求めても良い。
【0046】
求めた総合補正値Aは、NO、NO
2及びO
2の各ガスが共存しなかった場合のセンサ出力に対する、NO、NO
2及びO
2がS2、S3で検出した濃度及び温度で共存した場合のセンサ出力の減少割合に相当する値である。そこで、S5では、総合補正値Aを用いて、この減少割合を相殺するようにセンサ出力E
1を補正する。具体的には、補正後のセンサ出力をE
1Rとして、E
1R=(1+A)×E
1を計算する。
【0047】
ここで、
図10は、S5の補正の様子を示した図として、静電捕集の開始からの経過時間(捕集時間)に対するセンサ出力を、補正前(細い実線)と、補正後(太い実線)とで示した図である。また、
図10では、異なる3つの補正前のセンサ出力(1)、(2)、(3)と、3つの補正後のセンサ出力とを示している。このように、S5の補正を行うことで、補正後のセンサ出力は、補正前から大きい値となる。
【0048】
次に、補正後のセンサ出力E
1Rに基づいて、DPF12の故障判定を行う(S6)。具体的には、例えば静電捕集の開始からの経過時間が所定時間における補正後のセンサ出力E
1Rが所定の閾値Kより大きいか否かを判断する。また、例えば、出力発生後のセンサ出力
1Rの時間経過に対する変化度合い、すなわち
図11の補正後のセンサ出力のライン(太い実線)の傾きが所定の閾値より大きいか否かを判断しても良い。
【0049】
センサ出力
1Rが閾値Kより大きい場合には(S6:YES)、DPF12から流出するPM量が想定よりも多いとして、DPF12が正常に機能していない、つまりDPF12の故障と判定する(S7)。これに対し、センサ出力
1Rが閾値K以下の場合には(S6:NO)、DPF12から流出するPM量が少ないとして、DPF12の正常と判定する(S8)。
図10の例では、例えば、補正後の(1)、(2)のセンサ出力はDPF故障と判定され、(3)のセンサ出力はDPF正常と判定される。S7、S8の後、
図9の処理を終了する。
【0050】
このように、本実施形態では、支燃性ガス(NO、NO
2、O
2)の種類、濃度及び温度に応じて、センサ出力をPM量を多くする方向に補正するので、補正後のセンサ出力を、共存ガスによるPM燃焼が行われる前の値に近づけることができ、支燃性ガスの影響でPM量の検出精度が低下してしまうのを抑制できる。また、補正後のセンサ出力に基づきDPFの故障判定を行うので、支燃性ガスの影響で故障判定の精度が低下してしまうのを抑制できる。
【0051】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態の構成は
図1の構成と同じである。ECU17が実行する故障判定処理が上記実施形態と異なっている。
【0052】
先ず、
図11を参照して本実施形態の故障判定処理の基本的な考え方を説明する。
図11は、静電捕集を開始してからの時間(捕集時間)に対するPMセンサ13の出力の変化を示した図である。詳しくは、
図11の一点鎖線のラインは、DPF12が故障判定の基準となるフィルタ(以下、基準故障フィルタという)である場合におけるPMセンサ13の推定出力値Eeを示しており、実線のライン((1)、(2)、(3)のライン)は、実際のPMセンサ13の出力値を示している。
【0053】
本実施形態では、DPF12の故障判定をするために、DPF12が基準故障フィルタの場合におけるPMセンサ13の出力値Eeを推定する。その推定出力値Eeと、実際のPMセンサ13の出力値との比較に基づき、DPF12の故障の有無を判定する。詳しくは、推定出力値Eeが所定の閾値Kに達したタイミングを故障判定タイミングとして、その故障判定タイミングにおける実際のセンサ出力値が閾値Kより大きければDPF故障と判定し、閾値K以下の場合はDPF正常と判定する。このことは、実際のセンサ出力値が推定出力値Eeよりも大きければDPF故障と判定し、推定出力値Eeよりも小さければDPF正常と判定することを意味する。
図11の例では、実際の出力値が(1)、(2)のラインの場合にはDPF故障と判定され、(3)のラインの場合にはDPF正常と判定される。
【0054】
なお、
図11で説明した故障判定方法は特許第5115873号公報に記載の方法と同じである。すなわち、本実施形態の故障判定方法は、DPF12が基準故障フィルタである場合におけるPMセンサ13の出力が立ち上がる時期(基準時期)(
図11の故障判定タイミングに相当)を推定する。そして、PMセンサ13の出力が実際に立ち上がる時期(実際時期)が基準時期より先の場合にはDPF12は故障していると判定し、後の場合にはDPF12は正常であると判定することを意味する。
【0055】
また、メモリ18には、第1実施形態と同様に
図6〜
図8の関係データが記憶されているが、本実施形態の出力補正値A
NO、A
NO2、A
O2は、センサ出力の単位時間Δt秒当たりの減少割合(減少度合い)に相当する値に設定されている。
【0056】
次に、本実施形態の故障判定処理の詳細を説明する。
図12は本実施形態の故障判定処理のフローチャートを示している。ECU17は、
図9の処理に代えて、
図12の処理を実行する。
図12の処理は、
図9の処理と同様に、排気管の乾燥判定の成立後、センサ再生を実施した後に開始される。
【0057】
図12の処理を開始すると、先ず、静電捕集の開始からの経過時間tを初期値(=0)に設定した後(S11)、SCU14に指令して静電捕集を実施する(S12)。次に、経過時間tを、所定の単位時間Δt秒だけ進行した時間(t=t+Δt)に更新する(S13)。次に、
図9のS2、S3と同様にして、DPF12を通過した排気ガス中のNO、NO
2及びO
2の各濃度を検出し(S14)、DPF12下流の排気ガスの温度を検出する(S15)。ここで検出したガス種、ガス濃度及びガス温度は、現在時間tを基準とした単位時間Δtにおけるガス種、ガス濃度及びガス温度である。
【0058】
次に、S14、S15で検出したガス種、ガス濃度及びガス温度と、メモリ18に記憶された
図6〜
図8の関係データとに基づいて、検出したガス種、ガス濃度及びガス温度の環境下におけるPMセンサ13の単位時間Δt当たりの出力減少度合いに相当する補正値A(Δt)を算出する(S16)。ここでは、第1実施形態と同様に、ガス種ごとの出力補正値A
NO、A
NO2、A
O2の全てを反映した一つの総合補正値A(=f(ガス種、濃度、温度))を求める。総合補正値A(Δt)は、例えば、
図6〜
図8の出力補正値A
NO、A
NO2、A
O2を足し合わせた値とすることができる。
【0059】
次に、エンジン20の運転条件に基づいて、DPF12が基準故障DPFである場合におけるPMセンサ13の単位時間Δt当たりの出力変化量E
2、Δtを推定する(S17)(
図11も参照)。ここで、本実施形態における基準故障DPFとは、具体的には、故障によりDPF12の捕集率が著しく低下し、DPF12を通過するPM量が自己故障診断(OBD:On−board−diagnostics)の規制値相当の量であるDPFを言う。OBD規制値は、EURO6等のEM規制値(排ガス規制値)より大きい値に設定される。例えば、特定の走行モードにおいて、EM規制値におけるPM量=4.5mg/kmとしたときに、OBD規制値は例えばその約2.67倍のPM量=12.0mg/kmに設定される。
【0060】
S17では、具体的には、先ず、エンジン20の運転条件に基づいて、DPF12が基準故障DPFである場合におけるDPF12を通過するPMの現在時間tを基準とした単位時間Δt当たりの量fを推定する。具体的には、特許第5115873号公報の方法と同様に、エンジン20の回転数や負荷(燃料噴射量)等のエンジン20の運転条件に基づいてエンジン20から排出される単位時間当たりのPM量、言い換えると、基準故障DPFに流入する単位時間当たりのPM量(流入PM量)を推定する。例えば、エンジン20の運転条件(回転数、負荷等)に対する単位時間当たりの流入PM量のマップをメモリ18に予め記憶しておく。そして、そのマップから、今回のエンジン20の運転条件に対応する流入PM量を読み出せばよい。
【0061】
また、基準故障DPFのPM捕集率を推定する。具体的には例えば、基準故障DPFのPM捕集率として予め定められた値αを用いる。また、DPFのPM捕集率は、DPF内に堆積されているPM量(PM堆積量)や排気流量によっても変わってくるので、それらPM堆積量、排気流量に応じて上記PM捕集率αを補正しても良い。なお、PM堆積量は、例えば、DPF12の前後差圧に基づいて推定すれば良い。また、排気流量は、例えば、エアフロメータ4で検出される吸入空気量に基づいて推定すれば良い。
【0062】
そして、推定した流入PM量と基準故障DPFのPM捕集率とに基づいて、基準故障DPFから流出する単位時間当たりのPM量f(流出PM量)が得られる。
【0063】
次に、得られた流出PM量fのうちのPMセンサ13に捕集されるPM量を推定する。具体的には、例えばPMセンサ13の外側を流れるPMのうちどの程度のPMが孔511(
図2参照)からカバー51内に侵入するか、カバー51内に侵入したPMのうちどの程度のPMがセンサ素子52に付着するか等を考慮して、PMセンサ13へのPM捕集率βを推定する。PM捕集率βは、排気ガス流量、λ(空気過剰率)、排気温度、センサ素子52の温度等の各種状態にかかわらず一定の予め定められた値を用いても良いし、各種状態に応じて補正した値を用いても良い。例えば、排気ガス流量が大きいほどPMはカバー51内に侵入しにくくなり、カバー51に侵入したPMはセンサ素子52に付着しにくくなり、付着したとしてもセンサ素子52から離脱しやすくなる。また、λが小さくなるほど、つまりリッチになってPM濃度が高くなるほど、PMセンサ13に捕集されないPMの割合が高くなる。よって、例えば、排気ガス流量が大きいほど、又はλが小さいほど、小さい値となるようにPM捕集率βを推定する。また、排気温度やセンサ素子52の温度に応じて、センサ素子52に作用する熱
泳動力が変化するので、PM捕集率βが変わってくる。そして、上記流出PM量fとPM捕集率βとに基づいて、PMセンサ13に捕集されたPM量が得られる。このPM量が多いほどPMセンサ13の出力が大きくなるので、このPM量とPMセンサ13の出力との関係を予め調べてメモリ18に記憶しておく。そして、この関係と今回得られたPM量とに基づいて、DPF12が基準故障DPFの場合におけるPMセンサ13の単位時間当たりの出力変化量の推定値E
2、Δtが得られる。
【0064】
次に、S16で求めた補正値A(Δt)に基づいて、S17で求めた推定値E
2、Δtを、PM量を少なくする方向に補正する(S18)。具体的には、補正後の出力変化量の推定値をE
2R、Δtとして、E
2R、Δt=(1−A(Δt))×E
2、Δtを計算する。
【0065】
次に、現在時間tにおける、DPF12が基準故障DPFの場合のPMセンサ13の出力推定値E
2R、tを求める(S19)。具体的には、前回のS19で求めた出力推定値E
2R、tに、今回のS18で求めた補正後の推定値E
2R、Δtを加えて、出力推定値E
2R、tを更新する。つまり、E
2R、t=E
2R、t+E
2R、Δtを計算する。
【0066】
次に、S19で求めた出力推定値E
2R、tに基づいてDPF故障を判定するタイミング(故障判定タイミング)に到達したか否かを判断する(S20)。具体的には、出力推定値E
2R、tが所定の閾値Kより大きい否かを判断する。この閾値Kは、例えばPMセンサ13の出力が立ち上がったとみなせる値に設定される。なお、S20では、DPF12が基準故障DPFの場合におけるPMセンサ13の出力が立ち上がるタイミングが到達したか否かを判定することと同義である。
【0067】
S20において故障判定タイミングに未だ到達していない場合、つまり出力推定値E
2R、tが閾値K以下の場合には(S20:NO)、S12に戻る。このように、故障判定タイミングに到達しない間は、各時間におけるガス種、ガス濃度及びガス温度に基づいてPMセンサ13の各時間における単位時間当たりの出力変化量を補正し、補正後の出力変化量を、静電捕集の開始からの経過時間に亘って積算することで、出力推定値の補正を行う。
【0068】
これによって、
図13に示すように、補正後の推定出力値E
2Rが、補正前に比べて小さい値となり、その結果、故障判定タイミングの到達が補正前に比べて遅くなる。
【0069】
S20において故障判定タイミングが到達した場合、つまり出力推定値E
2R、tが閾値Kを超えた場合には(S20:YES)、PMセンサ13の実際の出力E
1をSCU14から取得する(S21)。そのセンサ出力E
1が、S20の閾値Kと同じ値に設定された閾値Kより大きいか否かを判断する(S22)。そして、センサ出力E
1が閾値Kより大きい場合には(S22:YES)、DPF12は基準故障DPFよりもPM捕集能力が低下した故障DPFであると判定する(S23)。これに対し、センサ出力E
1が閾値K以下の場合には(S22:NO)、DPF12は基準故障DPFよりもPM捕集能力が良好な正常DPFであると判定する(S24)。
図13の例では、故障判定タイミング(補正後)において、(1)、(2)の場合はセンサ出力が閾値Kより大きいのでDPF故障と判定され、(3)の場合はセンサ出力が閾値Kより小さいのでDPF正常と判定される。S23、S24の後、
図12の処理を終了する。
【0070】
このように、本実施形態では、基準故障DPFの場合におけるセンサ出力を推定し、その推定値と実際のセンサ出力との比較に基づきDPFの故障判定を行うので、DPFが基準よりも故障度合いが高いか低いかを精度よく判定できる。また、センサ出力の推定値を、支燃性ガス(NO、NO
2、O
2)の種類、濃度及び温度に応じて、PM量を少なくする方向に補正するので、その推定値を支燃性ガスによるPM燃焼後の値に近づけることができ、燃焼後の状態でセンサの実際の出力値と推定値とを比較できる。結果として、支燃性ガスによる燃焼の影響を抑制した形でDPFの故障判定を行うことができ、故障判定の精度低下を抑制できる。例えば、
図13の例では、センサ出力が(2)の場合には、補正前の推定出力値E
2に基づく故障判定タイミング(補正前)で故障判定を実施すると、センサ出力と閾値Kとが近い値となって、DPF故障であるにもかかわらず正常であると誤判定する可能性がある。一方、補正後の推定出力値E
2Rに基づく故障判定タイミング(補正後)で故障判定を実施すると、センサ出力は明らかに閾値Kより大きいので、DPF故障を高精度に判定できる。
【0071】
さらに、センサ出力の推定値の補正として、各時間でのガス種ごとの濃度及び温度に基づく各時間補正を、静電捕集の開始からの経過時間に亘って積算した積算補正を行うので、各時間でのガス種、ガス濃度、及びガス温度と、捕集開始からの経過時間とが反映された、高精度な推定値を得ることができる。よって、より一層、DPFの故障判定の精度低下を抑制できる。
【0072】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態の構成は
図1の構成と同じである。ECU17が実行する故障判定処理が上記実施形態と異なっている。第2実施形態では、PMセンサの推定出力値を補正することで結果的に故障判定タイミングを遅いタイミングに補正させたが、本実施形態では、推定出力値と比較する閾値を補正することで、結果的に故障判定タイミングを遅いタイミングに補正させる実施形態である。
【0073】
また、本実施形態においても第2実施形態と同様に、メモリ18に記憶される
図6〜
図8の関係データにおける出力補正値Aは、センサ出力の単位時間Δt秒当たりの減少割合に相当する値に設定されている。
【0074】
ECU17は、DPFの故障判定処理として
図14の処理を実行する。
図14の処理は、上記実施形態と同様に排気管の乾燥判定の成立後、センサ再生を実施した後に開始される。
図14の処理を開始すると、
図12のS11〜S16の処理と同様の処理を実行する(S31〜S36)。
【0075】
次に、現在時間tまでの各時間のS36の処理で得られた、PMセンサ13の単位時間Δt当たりの出力減少度合いに相当する補正値A(Δt)を積算した積算補正値A(t)を算出する(S37)。具体的には、前回のS37で求めた積算補正値A(t)に、今回のS36で求めた補正値A(Δt)を加えて、積算補正値A(t)を更新する。つまり、A(t)=A(t)+A(Δt)を計算する。
【0076】
次に、エンジン20の運転条件に基づいて、DPF12が基準故障DPFである場合におけるPMセンサ13の出力E
2を推定する(S38)。
図12のS17では、PMセンサ13の単位時間Δt当たりの出力変化量E
2、Δtを推定した。ここでは、S17と同様に各時間で出力変化量E
2、Δtを求め、求めた出力変化量E
2、Δtを静電捕集の開始から現在時間tに亘って積算した積算値を、現在時間tにおけるPMセンサ13の出力E
2として推定する。
【0077】
次に、S37で求めた積算補正値A(t)に基づいて、故障判定のタイミングを判定するための閾値K(本発明の第1閾値に相当)を、PM量を多くする方向に補正(本発明の第1の閾値補正に相当)する(S39)。具体的には、補正後の閾値をK
Rとして、K
R=(1+A(t))×Kを計算する。
【0078】
次に、S38で求めた推定出力E
2が、S39で求めた補正後の閾値K
Rより大きいか否かを判断する(S40)。推定出力E
2が閾値K
R以下の場合には(S40:NO)、故障判定タイミングに未だ到達していないとして、S32に戻る。このように、故障判定タイミングに到達しない間は、経過時間に伴って次第に積算補正値A(t)が大きくなり、その結果、閾値K
Rは次第に大きくなっていく。また、センサ出力の推定値E
2も経過時間にともなって次第に大きくなっていく。
【0079】
S40において推定出力E
2が閾値K
Rを超えた場合には(S40:YES)、故障判定タイミングが到達したとして、PMセンサ13の実際の出力E
1をSCU14から取得する(S41)。次に、センサ出力E
1が所定の閾値Kより大きいか否かを判断する(S42)。この閾値Kは、S39の補正が実施される前の、故障判定タイミングを判定するための閾値Kと同じ値に設定されている。センサ出力E
1が閾値Kより大きい場合には(S42:YES)DPF故障と判定し(S43)、閾値K以下の場合には(S42:NO)DPF正常と判定する(S44)。S43、S44の後、
図14の処理を終了する。
【0080】
図15を参照して本実施形態の故障判定処理を説明すると、支燃性ガスの種類、濃度、及び温度に基づき、故障判定タイミングを判定するための閾値KをPM量を多くする方向に補正し、推定出力値Eeが補正後の閾値K
R(故障診断実施判定閾値)を超えたタイミングを故障判定タイミングとして判定する。よって、故障判定タイミングを、閾値Kを補正しない場合の故障判定タイミングよりも遅いタイミングとすることができる。故障判定タイミングが遅くなることで、故障判定タイミングにおけるセンサ出力を大きくすることができ、支燃性ガスの影響によるセンサ出力の減少がDPFの故障判定に影響を及ぼすのを抑制できる。例えば、
図15の例では、センサ出力が(2)の場合には、補正前の閾値Kに基づく故障判定タイミング(補正前)で故障判定を実施すると、センサ出力と閾値Kとが近い値となって、DPF故障であるにもかかわらず正常であると誤判定する可能性がある。一方、補正後の閾値K
Rに基づく故障判定タイミング(補正後)で故障判定を実施すると、センサ出力は明らかに閾値Kより大きいので、DPF故障を高精度に判定できる。
【0081】
また、閾値Kの補正として、各時間でのガス種ごとの濃度及び温度に基づく単位時間当たりの補正値を、静電捕集の開始からの経過時間に亘って積算した積算補正値に基づいて閾値の補正を行うので、補正後の閾値に、各時間でのガス種、ガス濃度、及びガス温度と、捕集開始からの経過時間とを反映させることができる。この補正後閾値に基づき故障判定タイミングを判定し、この故障判定タイミングで故障判定を実施することで、その故障判定に、各時間でのガス種、ガス濃度、及びガス温度と、捕集開始からの経過時間とを反映させることができる。よって、支燃性ガスの影響を抑制した高精度な判定結果を得ることができる。
【0082】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態の構成は
図1の構成と同じである。ECU17が実行する故障判定処理が上記実施形態と異なっている。
【0083】
ECU17は、DPFの故障判定処理として
図16の処理を実行する。
図16の処理は、上記実施形態と同様に排気管の乾燥判定の成立後、センサ再生を実施した後に開始される。
図16の処理と
図14の処理とを比較すると、
図16の処理では、
図14のS39の処理に相当する処理が省略されており、S61の処理が追加されている点で
図14の処理と異なっている。また、S59の処理では、出力推定値E
2は、補正未実施の閾値Kと比較している。また、S62の処理では、センサ出力E
1と補正後の閾値K
Rとを比較している。それ以外は
図14の処理と同じである。すなわち、
図16のS51〜S58の処理は、
図14のS31〜S38の処理と同じであり、S60の処理はS41の処理と同じであり、S63、S64の処理はS43、S44の処理と同じである。
【0084】
図16の処理を開始すると、第3実施形態と同様に積算補正値Aを算出し(S51〜S57)、DPF12が基準故障DPFの場合におけるPMセンサ13の出力E
2を推定し(S58)、その推定出力値E
2が閾値Kを超えたか否かを判断する(S59)。超えていない場合には(S59:NO)、S52に戻り、積算補正値A及び推定出力値E
2を更新する(S52〜S58)。
【0085】
推定出力値E
2が閾値Kを超えた場合、つまり故障判定タイミングに到達した場合には(S59:YES)、次に、PMセンサ13の実際の出力E
1をSCU14から取得する(S60)。次に、S57で求めた積算補正値A(t)に基づいて、故障判定閾値K(本発明の第2閾値に相当)を、PM量を少なくする方向に補正(本発明の第2の閾値補正に相当)する(S61)。具体的には、補正後の閾値をK
Rとして、K
R=(1−A(t))×Kを計算する。
【0086】
次に、センサ出力E
1が補正後の閾値K
Rより大きいか否かを判断する(S62)。センサ出力E
1が閾値K
Rより大きい場合には(S62:YES)DPF故障と判定し(S63)、閾値K
R以下の場合には(S62:NO)DPF正常と判定する(S64)。その後、
図16の処理を終了する。
【0087】
第3実施形態では、故障判定タイミングを判定するための閾値(推定出力値Eeと比較する閾値)を補正する一方で、本実施形態では、
図17に示すように、実際のセンサ出力と比較する故障判定閾値Kを、支燃性ガスの影響によるPMセンサの出力減少分だけ小さい値となるよう補正している。その結果として、その出力減少分を相殺した形で、センサ出力と故障判定閾値との比較を行うことができ、DPFの故障判定の精度低下を抑制できる。例えば、
図17の例では、センサ出力が(2)の場合には、補正前の閾値Kで故障判定を実施すると、センサ出力と閾値Kとが近い値となって、DPF故障であるにもかかわらず正常であると誤判定する可能性がある。一方、補正後の閾値K
Rで故障判定を実施すると、センサ出力は明らかに閾値K
Rより大きいので、DPF故障を高精度に判定できる。
【0088】
(第5実施形態)
次に本発明の第5実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態の構成は
図1の構成と同じである。ECU17が実行する故障判定処理が上記実施形態と異なっている。
【0089】
ECU17は、DPFの故障判定処理として
図18の処理を実行する。
図18の処理は、上記実施形態と同様に排気管の乾燥判定の成立後、センサ再生を実施した後に開始される。
図18の処理と
図16の処理とを比較すると、
図18の処理はS81、S82の処理が
図16の処理と異なっており、それ以外(S71〜S80、S83、S84)は
図16の処理(S51〜S60、S63、S64)と同じである。
【0090】
図18の処理では、故障判定タイミングが到達した場合に(S79:YES)、実際のセンサ出力E
1を検出した後(S80)、そのセンサ出力E
1をS77で求めた積算補正値A(t)に基づいてPM量を多くする方向に補正する(S81)。具体的には、補正後のセンサ出力をE
1Rとして、E
1R=(1+A(t))×E
1を計算する。次に、補正後のセンサ出力E
1Rが閾値Kより大きいか否かを判断し(S82)、大きい場合には(S82:YES)DPF故障と判定し(S83)、閾値K以下の場合には(S82:NO)DPF正常と判定する(S84)。その後、
図18の処理を終了する。
【0091】
このように、本実施形態では、第1実施形態と同様にセンサ出力を補正するので(
図19参照)、センサ出力を支燃性ガスによるPM燃焼前の値に近づけることができ、PM燃焼前の状態で、センサ出力と故障判定閾値とを比較できる。これにより、支燃性ガスによるPM燃焼の影響を抑制した形でその故障判定を行うことができ、故障判定の精度低下を抑制できる。なお、
図19では、(3)のセンサ出力のみ補正した状態を示している。
【0092】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、支燃性ガスとしてNO、NO
2及びO
2の各濃度に基づきセンサ出力等の補正を実施したが、NO、NO
2及びO
2のうちいずれか1つ又は2つのガス濃度に基づき補正を実施しても良い。これによっても、補正を実施しない場合に比べて、支燃性ガスの影響を抑制した形でDPFの故障判定を行うことができ、故障判定の精度低下を抑制できる。また、NO、NO
2及びO
2以外の支燃性ガス(例えば、硫黄酸化物(SO
2など))の濃度も考慮して補正を実施しても良い。
【0093】
また、上記実施形態では、DPFの故障検出の用途でPMセンサを用いていたが、故障検出以外の用途でPMセンサを用いても良い。例えば、DPFの上流にPMセンサを配置して、このPMセンサを、エンジンから排出されるPM量(DPFに流入するPM量)を検出する用途で用いても良い。このとき、本発明によりセンサ出力を補正することで、支燃性ガスによるPM燃焼が行われる前のPM量を高精度に検出できる。
【0094】
また、上記実施形態では、ECUが故障判定処理を実行していたが、SCUが故障判定処理を実行しても良いし、故障判定処理の一部の処理はECUが実行し、他の一部の処理はSCUが実行するとしても良い。
【0095】
なお、上記実施形態において、PMセンサ13、SCU14及びECU17が本発明のフィルタの故障検出装置及び粒子状物質検出装置に相当する。
図9、
図12、
図14、
図16、
図18の処理を実行するECU17が本発明の濃度取得手段、温度取得手段、補正手段、故障判定手段、推定手段、タイミング判定手段、算出手段及び積算補正手段に相当する。