特許第6511889号(P6511889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511889
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20190425BHJP
   F02D 41/22 20060101ALI20190425BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20190425BHJP
   F02M 37/08 20060101ALI20190425BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   F02D45/00 360Z
   F02D41/22 345
   F02D41/04 345A
   F02D45/00 364Q
   F02M37/08 A
   F02M37/08 B
   F02M63/00 C
   F02D45/00 345Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-54741(P2015-54741)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-176336(P2016-176336A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝
(72)【発明者】
【氏名】長倉 啓介
【審査官】 田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−155462(JP,A)
【文献】 特開2007−192032(JP,A)
【文献】 特開2013−238202(JP,A)
【文献】 特開2013−241879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D29/00 − 29/06
F02D41/00 − 45/00
F02M37/00 − 37/22
F02M39/00 − 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、
吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁と、
前記ポート噴射弁から噴射するための燃料を貯留する貯留部と、
燃料を加圧して前記貯留部に供給するフィードポンプと、
前記貯留部に貯留される燃料の圧力を検出する燃圧センサとを含み、
前記制御装置は、
前記内燃機関の始動時に、前記貯留部に貯留される燃料の圧力の目標値が第1の値に設定されたときの前記燃圧センサの検出値と、前記目標値を前記第1の値から第2の値へと変化させたときの前記燃圧センサの検出値とを比較することによって、前記燃圧センサの異常診断を実行し、
前記異常診断において、前記貯留部に貯留される燃料の温度が所定の判定温度を上回る場合、前記貯留部に貯留される燃料の温度が前記判定温度を下回る場合と比べて、前記第1の値を高く設定する、内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、より特定的には、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁を含む内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポート噴射タイプのエンジンとして、ポート噴射弁から噴射するための燃料を貯留するデリバリーパイプと、燃料を加圧してデリバリーパイプに供給するフィードポンプと、デリバリーパイプに貯留される燃料の圧力を検出する燃圧センサとを備える構成が知られている。このようなエンジンにおいて、燃圧センサに異常が生じる場合がある。そのため、燃圧センサの異常の有無を判定するための構成が提案されている。たとえば特開2013−68127号公報(特許文献1)は、燃料の供給圧を上昇させる方向に燃料ポンプの操作量を変化させ、このときの燃圧センサの検出値に基づき、燃圧センサにおける異常の有無を判断するエンジンの制御装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−68127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃圧センサの異常として、燃圧センサの検出値が固定値となる故障が知られている。本明細書では、この故障をスタック故障と称する。スタック故障が生じていないこと、言い換えると燃圧センサの検出値が実際の燃圧に応じて変化し得ることを確認するためには、目標燃圧を2段階で設定して、各目標燃圧における燃圧センサの検出値を比較することが考えられる。2つの検出値の各々が目標燃圧に近い値を示している場合、燃圧センサは正常と判定され、2つの検出値が互いにほぼ等しい値を示している場合には、燃圧センサは異常(スタック故障)と判定される。以下、このようにスタック故障の有無を診断することをスタック検出とも称する。
【0005】
スタック検出は、たとえばエンジン始動時に実行される。この場合、スタック検出の実行前にはエンジンは停止されている。そのため、デリバリーパイプ内の燃料がポート噴射弁から噴射されることはなく、それに伴って新しい燃料が燃料ポンプからデリバリーパイプに供給されることもない。つまり、スタック検出の実行前にはデリバリーパイプは基本的に密閉状態にある。
【0006】
高温環境下において、デリバリーパイプに閉じ込められた燃料の温度が高くなるに従って燃料は気化しやすくなる。そのため、スタック検出におけるエンジン始動の際に、デリバリーパイプ内の燃料の一部が気化した状態となっている可能性がある。燃料が気化してデリバリーパイプ内にベーパ(vapor)が生じると、ポート噴射弁から燃料が正常に噴射されなくなり得る。その結果、エンジンの始動性が低下してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ポート噴射タイプ(デュアル噴射タイプを含む)のエンジンに設けられた燃圧センサのスタック検出において、エンジンの始動性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内燃機関を搭載する車両の制御装置に関する。内燃機関は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁と、ポート噴射弁から噴射するための燃料を貯留する貯留部と、燃料を加圧して貯留部に供給するフィードポンプと、貯留部に貯留される燃料の圧力を検出する燃圧センサとを含む。制御装置は、内燃機関の始動時に、貯留部に貯留される燃料の圧力の目標値を変化させたときの燃圧センサの検出値に基づいて、燃圧センサの異常診断を実行する。制御部は、異常診断において、貯留部に貯留される燃料の温度が所定の判定温度を上回る場合、貯留部に貯留される燃料の温度が判定温度を下回る場合と比べて、目標値を高く設定する。
【0009】
上記構成によれば、燃料温度が判定温度を上回る場合は、燃料温度が判定温度を下回る場合と比べて目標値が高く設定されるので、貯留部に貯留される燃料の圧力が高くなる。たとえば燃料の圧力を、異常診断時の燃料温度における飽和蒸気圧よりも高く設定することにより、貯留部内の燃料の気化を生じにくくすることができる。これにより、ポート噴射弁から燃料を正常に噴射することができるようになるので、内燃機関の始動性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポート噴射タイプのエンジンに設けられた燃圧センサのスタック検出において、エンジンの始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明が適用される車両の構成を概略的に示す図である。
図2】エンジンおよび燃料供給装置の構成を詳細に説明するための図である。
図3】スタック検出における目標燃圧の変化を説明するための波形図である。
図4】燃料の温度と飽和蒸気圧との関係の一例を示す図である。
図5】本実施の形態におけるスタック検出制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
<車両構成>
以下に説明する実施の形態では、本発明に係るエンジンの制御装置がハイブリッド車両に適用される構成について説明する。しかし、本発明に係る制御装置を適用可能な車両はハイブリッド車両に限定されるものではなく、エンジンの間欠的な駆動/停止が行なわれるのであれば、駆動源としてエンジンのみを備える車両であってもよい。
【0014】
図1は、本発明が適用される車両1の構成を示すブロック図である。図1を参照して、車両1は、エンジン100と、燃料供給装置110と、第1モータジェネレータ(MG:Motor Generator)10と、第2MG20と、動力分割機構30と、リダクション機構40と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)200と、バッテリ250と、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)300とを備える。車両1は、シリーズ・パラレル型のハイブリッド車両であり、エンジン100および第2MG20の少なくとも一方を駆動源として走行可能に構成される。
【0015】
エンジン100は、たとえばガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関を含んで構成される。本実施の形態では、筒内噴射とポート噴射とを併用するデュアル噴射タイプの内燃機関をエンジン100として採用する例について説明する。ただし、筒内噴射は必須ではなく、エンジン100はポート噴射のみを行なうポート噴射タイプであってもよい。
【0016】
燃料供給装置110はエンジン100に燃料を供給する。エンジン100および燃料供給装置110の詳細な構成については図2を参照して説明する。
【0017】
エンジン100と第1MG10と第2MG20とは、動力分割機構30を介して互いに連結されている。動力分割機構30に連結される第2MG20の回転軸22には、リダクション機構40が接続されている。回転軸22は、リダクション機構40を介して駆動輪350に連結されるとともに、動力分割機構30を介してエンジン100のクランクシャフトに連結される。動力分割機構30は、たとえば遊星歯車機構であり、エンジン100の駆動力を第1MG10と第2MG20の回転軸22とに分割可能に構成される。
【0018】
第1MG10および第2MG20の各々は、発電機としても電動機としても作動しうる周知の同期発電電動機である。第1MG10は、動力分割機構30を介してエンジン100のクランクシャフトを回転させることにより、エンジン100を始動するスタータとして機能することができる。第1MG10および第2MG20は、PCU200に電気的に接続されている。
【0019】
PCU200は、ECU300からの制御信号に応じて第1MG10および第2MG20を駆動するための駆動装置である。PCU200はバッテリ250に電気的に接続される。バッテリ250は、再充電可能な直流電源であり、たとえばニッケル水素電池もしくはリチウムイオン電池等の二次電池、または電気二重層キャパシタ等のキャパシタを含んで構成される。
【0020】
外気温センサ260は、車両1の外部の温度(外気温)Taを検出する。エンジン水温センサ270は、エンジン100の冷却系統(図示せず)を流通する冷却水の温度(冷却水温)Twを検出する。各センサは、その検出結果をECU300に出力する。
【0021】
ECU300は、パワーマネジメント(PM:Power Management)用電子制御ユニット(PM−ECU)310と、エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)320と、モータ用電子制御ユニット(モータECU)320と、バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)330とを含む。各ECUは、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入力インターフェース回路、および出力インターフェース回路等を含んで構成される。
【0022】
PM−ECU310は、エンジンECU320と、モータECU330と、バッテリECU340とに通信ポート(図示せず)を介して接続されている。PM−ECU320は、エンジンECU320、モータECU330、およびバッテリECU340と各種制御信号およびデータのやり取りを行なう。
【0023】
エンジンECU320は、エンジン100および燃料供給装置110に接続されている。エンジンECU320は、PM−ECU310からのエンジン起動指令または停止指令(図2参照)に応答して、エンジン100および燃料供給装置110を制御する。より具体的には、エンジンECU320は、アクセル開度、吸入空気量、およびエンジン回転速度などに基づいて、燃焼毎に必要な燃料噴射量を算出する。エンジンECU320は、算出した燃料噴射量に基づいて、筒内噴射弁450およびポート噴射弁550(いずれも図2参照)への噴射指令信号を適時に出力する。
【0024】
モータECU330は、PCU200に接続され、第1MG10および第2MG20の駆動を制御する。バッテリECU340は、バッテリ250に接続され、バッテリ250の充放電を制御する。
【0025】
図2は、エンジン100および燃料供給装置110の構成を詳細に説明するための図である。図1および図2を参照して、エンジン100は、たとえば直列4シリンダのガソリンエンジンであり、吸気マニホールド120と、吸気ポート130と、4つのシリンダ140とを含む。各シリンダ140はシリンダブロックに設けられている。エンジン100への吸入空気AIRは、シリンダ140中のピストン(図示せず)が下降するときに、吸気口管から吸気マニホールド120および吸気ポート130を通って各シリンダ140に流入する。
【0026】
燃料供給装置110は、高圧燃料供給機構400と、低圧燃料供給機構500とを含む。
【0027】
高圧燃料供給機構400は、高圧ポンプ410と、チェック弁420と、高圧燃料配管430と、高圧デリバリーパイプ440と、4つの筒内噴射弁450と、高圧燃圧センサ460とを含む。
【0028】
高圧燃料配管430は、高圧ポンプ410と高圧デリバリーパイプ440とをチェック弁420を介して連結する。高圧デリバリーパイプ440は、筒内噴射弁450から噴射するための燃料を貯留する。
【0029】
4つの筒内噴射弁450の各々は、対応するシリンダ140の燃焼室内に噴孔部452を露出する筒内噴射用インジェクタである。筒内噴射弁450が開弁されると、高圧デリバリーパイプ440内の加圧された燃料が噴孔部452から燃焼室内に噴射される。
【0030】
高圧燃圧センサ460は、高圧デリバリーパイプ440に貯留される燃料の圧力を検出して、その検出結果をエンジンECU320に出力する。
【0031】
低圧燃料供給機構500は、燃料圧送部510と、低圧燃料配管530と、低圧デリバリーパイプ540と、4つのポート噴射弁550と、低圧燃圧センサ560とを含む。
【0032】
低圧燃料配管530は、燃料圧送部510と低圧デリバリーパイプ540とを連結する。低圧デリバリーパイプ540は、ポート噴射弁550から噴射するための燃料を貯留する。低圧デリバリーパイプ540は、本発明に係る「貯留部」に対応する。
【0033】
4つのポート噴射弁550の各々は、対応するシリンダ140に連通する吸気ポート130内に噴孔部552を露出するポート噴射用インジェクタである。ポート噴射弁550が開弁されると、低圧デリバリーパイプ540内の加圧された燃料が噴孔部552から吸気ポート130内に噴射される。
【0034】
低圧燃圧センサ560は、低圧デリバリーパイプ540に貯留される燃料の圧力(燃圧)を検出して、その検出結果をエンジンECU320に出力する。低圧燃圧センサ560は、本発明に係る「燃圧センサ」に対応する。
【0035】
燃料圧送部510は、燃料タンク511と、フィードポンプ512と、サクションフィルタ513と、燃料フィルタ514と、リリーフ弁515と、燃料温度センサ516とを含む。
【0036】
燃料タンク511は、筒内噴射弁450およびポート噴射弁550から噴射するための燃料を貯留する。
【0037】
フィードポンプ512は、燃料タンク511内から燃料を汲み上げ、汲み上げた燃料を加圧して低圧燃料配管530および低圧デリバリーパイプ540に供給する。フィードポンプ512は、エンジンECU320から出力される指令信号に応答して、単位時間当りの吐出量(単位:m/sec)および吐出圧(単位:kPa)を変化させることが可能である。これにより、低圧デリバリーパイプ540内の燃圧を、たとえば1MPa(メガパスカル)未満の範囲内で設定することができる。
【0038】
このようにフィードポンプ512を制御する構成は下記の点で好ましい。すなわち、フィードポンプ512を適切に制御することによって、エンジン100により消費された量に相当する分の燃料を送出するようにすれば、燃料の加圧に要するエネルギーを節約することができる。したがって、一旦余分に加圧してからポート噴射弁550の噴孔部552で圧力を一定にする構成と比べて、燃費を向上させることができる。
【0039】
サクションフィルタ513は燃料中への異物の吸入を阻止する。燃料フィルタ514は吐出燃料中の異物を除去する。リリーフ弁515は、フィードポンプ512から吐出される燃料の圧力が上限圧力に達すると開弁される一方で、燃料の圧力が上限圧力に満たない間は閉弁状態を維持する。
【0040】
燃料温度センサ516は、燃料タンク511内の燃料の温度を検出して、その検出結果をエンジンECU320に出力する。エンジンECU320のROM(図示せず)には、燃料タンク511内の燃料の温度と低圧デリバリーパイプ540内の燃料の温度(燃料温度)Tfとの対応関係を示すマップが予め格納されている。エンジンECU320は、燃料温度センサ516からの検出結果に基づいて、低圧デリバリーパイプ540内の燃料温度Tfを算出する。
【0041】
エンジンECU320は、エンジン100の始動時に、ポート噴射弁550による燃料噴射を最初に実行させる。エンジンECU320は、高圧燃圧センサ460により検出される高圧デリバリーパイプ440内の燃圧が予め設定された値を超えたとき、筒内噴射弁450への噴射指令信号の出力を開始する。さらに、エンジンECU320は、たとえば筒内噴射弁450からの筒内噴射を基本としながら、筒内噴射では混合気形成が不十分となる特定の運転状態下(たとえばエンジン100の始動暖機時または低回転高負荷時)ではポート噴射を併用する。あるいは、エンジンECU320は、たとえば筒内噴射弁450からの筒内噴射を基本としながら、ポート噴射が有効な高回転高負荷時などにポート噴射弁550からのポート噴射を実行する。
【0042】
<スタック検出>
フィードポンプ512による可変燃圧制御には、低圧燃圧センサ560の検出値の信頼性を確保することが望ましい。そのため、低圧燃圧センサ560の検出値が固定値となるスタック故障が生じていないかどうかを診断するスタック検出(異常診断)が定期的に行なわれる。スタック検出においては、低圧燃圧センサ560の検出値が実際の燃圧に応じて変化し得ることを確認するために、目標燃圧(目標値)を2段階で設定して、各目標燃圧における低圧燃圧センサ560の検出値が比較される。
【0043】
図3は、スタック検出における目標燃圧の変化を説明するための波形図である。図3において、横軸は経過時間を表し、縦軸は燃圧を表す。
【0044】
図2および図3を参照して、時刻t1まではエンジン100は運転状態である。低圧デリバリーパイプ540内の目標燃圧は、たとえば400kPaに設定される。本実施の形態において、400kPaは、スタック検出が行なわれない通常運転時の燃圧と等しい燃圧である。
【0045】
時刻t1において、PM−ECU310は、エンジン停止指令をエンジンECU320に出力する。エンジンECU320は、エンジン停止指令に応答してエンジン100を停止する。低圧デリバリーパイプ540内の目標燃圧は0kPaに設定される。
【0046】
時刻t2において、PM−ECU310は、エンジン起動指令をエンジンECU320に出力する。エンジンECU320は、エンジン起動指令に応答して、波形Lcに示すように、目標燃圧をたとえば530kPaに設定する。実際の燃圧が目標燃圧に到達して安定するのに要する時間(燃圧安定時間)が経過した後、時刻t3において、エンジンECU320は、低圧デリバリーパイプ540内の燃圧を検出値D1として取得する。
【0047】
時刻t4において、エンジンECU320は、目標燃圧を400kPaに変更する。その後、時刻t5において、エンジンECU320は、低圧デリバリーパイプ540内の燃圧を検出値D2として取得する。エンジンECU320は、検出値D1と検出値D2とに基づいて、低圧燃圧センサ560のスタック故障の有無を判定する。
【0048】
ここで、時刻t1から時刻t2までの間、エンジン100は停止されている。そのため、低圧デリバリーパイプ540内の燃料がポート噴射弁550から噴射されることはなく、それに伴って新しい燃料がフィードポンプ512から低圧燃料配管530を介して低圧デリバリーパイプ540に供給されることもない。つまり、低圧デリバリーパイプ540は基本的に密閉状態にある。
【0049】
高温環境下において、低圧デリバリーパイプ540に閉じ込められた燃料が温められる。燃料の温度が高くなるに従って燃料は気化しやすくなる。そのため、エンジン100を始動させる際(時刻t2参照)に、低圧デリバリーパイプ540内の燃料の一部が気化した状態となっている可能性がある。燃料が気化して低圧デリバリーパイプ540内にベーパが生じると、ポート噴射弁550から燃料が正常に噴射されなくなり得る。その結果、エンジン100の始動性が低下してしまう可能性がある。
【0050】
そこで、本実施の形態によれば、スタック検出において、低圧デリバリーパイプ540に貯留される燃料の温度(燃料温度)Tfが所定の判定温度Tc以上の場合、燃料温度Tfが判定温度Tc未満の場合と比べて、目標燃圧を高く設定する構成を採用する。波形Lh(1点鎖線で表す)は、燃料温度Tfが判定温度Tc以上の場合の目標燃圧の時間変化を示す。目標燃圧は、たとえば600kPaに設定される。これにより、低圧デリバリーパイプ540内の燃料の気化を生じにくくすることができる。その理由について以下に説明する。
【0051】
図4は、燃料温度Tfと飽和蒸気圧Psとの関係の一例を示す図である。図4において、横軸は燃料温度Tf(単位:℃)を表し、縦軸は燃料の圧力(単位:kPa)を表す。曲線Cは、燃料の飽和蒸気圧Psを示す。
【0052】
図2および図4を参照して、燃料温度Tfが高くなるに従って飽和蒸気圧Psは高くなる。低圧デリバリーパイプ540内の燃圧が飽和蒸気圧Psよりも低い場合、燃料の一部が気化してベーパが発生する。反対に、低圧デリバリーパイプ540内部の燃圧が飽和蒸気圧Psよりも高い場合、燃圧が飽和蒸気圧Psよりも低い場合と比べて、ベーパの発生が抑制される。
【0053】
一例として、目標燃圧が530kPaに設定される場合、高温環境下において燃料温度Tfがたとえば125℃に到達すると、目標燃圧(530kPa)は、125℃における飽和蒸気圧Psはよりも低くなる(点A参照)。そのため、低圧デリバリーパイプ540内の燃料の一部が気化してベーパが発生してしまう。
【0054】
本実施の形態では、燃料温度Tfが判定温度Tc=120℃以上の場合には、目標燃圧を600kPaに設定する。好ましくは、目標燃圧は、スタック検出時の燃料温度Tfにおける飽和蒸気圧(図4に示す例では120℃において530kPa)よりも高く設定される。これにより、低圧デリバリーパイプ540内の燃料の気化が抑制されて、ポート噴射弁550から燃料を正常に噴射することができるようになるので、エンジン100の始動性を向上させることができる。
【0055】
その一方で、目標燃圧を高く設定し過ぎるとフィードポンプ512の負荷が大きくなるため、エネルギーロスが大きくなる。図4に示すように燃料の気化を抑制するための圧力は燃料温度Tfによって変化するので、燃料温度Tfに応じて適切な目標燃圧を設定することにより、エネルギーロスが過度に大きくなることを防止することができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、燃料温度Tfは燃料温度センサ516の検出結果に基づいて算出されると説明したが、燃料温度Tfの算出手法はこれに限定されるものではない。燃料温度Tfは、外気温センサ260により検出される外気温Ta、またはエンジン水温センサ270により検出されるエンジン100の冷却水温Twに基づいて算出することができる。たとえば、エンジンECU320は、エンジンECU320のROM(図示せず)に格納されたマップを参照することによって、外気温センサ260により検出された外気温Taを燃料温度Tfに換算することができる。エンジン100の冷却水温Twについても同様である。
【0057】
あるいは、エンジンECU320は、フィードポンプ512に含まれる図示しないモータの回転速度(負荷)に基づいて燃料温度Tfを算出することも可能である。モータの回転速度が高く(負荷が大きく)、フィードポンプ512による燃料流量が大きいほど、低圧デリバリーパイプ540内の燃料の入れ替え量が大きくなるので、燃料温度Tfが低くなる。したがって、モータの回転速度が所定値未満の場合には、燃料温度Tfが判定温度Tc以上であるとして、モータの回転速度が所定値以上の場合と比べて、低圧デリバリーパイプ540の目標燃圧を高く設定することができる。
【0058】
図5は、本実施の形態におけるスタック検出制御を説明するためのフローチャートである。図5に示すフローチャートは、所定の条件成立時あるいは所定の期間経過毎にメインルーチンから呼び出されて実行される。このフローチャートの各ステップ(Sと略す)は、基本的にはECU300によるソフトウェア処理によって実現されるが、ECU300内に作製されたハードウェア(電子回路)によって実現されてもよい。
【0059】
図1図2、および図5を参照して、S10において、エンジンECU320は、PM−ECU310からのエンジン起動指令があるか否か、またはエンジン100が運転中であるか否かを判定する。エンジン起動指令がなく、かつエンジン100が運転中でない場合(S10においてNO)、エンジンECU320は処理をS20に進める。S20では、低圧デリバリーパイプ540の目標燃圧が0kPaに設定される(図3の時刻t1から時刻t2までの期間参照)。S20の処理が終了すると、制御はメインルーチンに戻される。
【0060】
S10においてエンジン起動指令があった場合、またはエンジン100が運転中であった場合(S10においてYES)には、エンジンECU320は処理をS30に進め、エンジン100を始動してから所定時間が経過したか否かを判定する。
【0061】
所定時間が経過していない場合(S30においてNO)には、エンジンECU320は処理をS40に進め、燃料温度Tfが判定温度Tc以上であるか否かを判定する。
【0062】
燃料温度Tfが判定温度Tc未満の場合(S40においてNO)、エンジンECU320は、低圧デリバリーパイプ540内の目標燃圧を530kPaに設定する(S50)(図3の時刻t2参照)。530kPaは、低圧燃圧センサ560のスタック検出のために、通常使用される目標燃圧(400kPa)よりも高く設定された診断用の目標燃圧の一例である。
【0063】
一方、燃料温度Tfが判定温度Tc以上の場合(S40においてYES)、エンジンECU320は、低圧デリバリーパイプ540の目標燃圧を600kPaに設定する(S55)(図3の時刻t2参照)。600kPaは、高温環境下での低圧燃圧センサ560のスタック検出用の目標燃圧の一例であり、低温環境下での目標燃圧(530kPa)よりも高く設定される。
【0064】
S50,S55の処理に続き、S60において、エンジンECU320は、予め定められた燃圧安定時間が経過したか否かを判定する。燃圧安定時間が経過していない場合(S60においてNO)には、制御がメインルーチンに戻されて、このフローチャートの処理がS10から再び実行される結果、燃圧安定時間が経過するまで時間待ちが行なわれる。
【0065】
S60において燃圧安定時間が経過し燃圧が安定した場合(S60においてYES)、エンジンECU320は、低圧燃圧センサ560により検出された検出値D1を取得する(S70)(図3の時刻t3参照)。その後、制御は一旦メインルーチンに戻される。
【0066】
一方、S30においてエンジン始動後、所定時間が経過した場合(S30においてYES)、すなわちS40〜S70の処理が完了した場合、エンジンECU320はS80に処理を進める。S80において、エンジンECU320は、低圧デリバリーパイプ540の目標燃圧を400kPaに設定する(図3の時刻t4参照)。なお、この目標燃圧は、通常運転時の燃圧と同じでなくてもよい。また、S80における目標燃圧は、S50,S55にて設定された診断用の燃圧より高く設定してもよい。
【0067】
S90において、S60と同様に、エンジンECU320は所定の燃圧安定時間が経過したか否かを判断する。燃圧安定時間が経過していない間(S90においてNO)は、このフローチャートの処理がステップS1から再び実行される結果、燃圧安定時間が経過するまで時間待ちが行なわれる。燃圧安定時間が経過し燃圧が安定した場合(S90においてYES)、エンジンECU320はS100に処理を進める。S100において、エンジンECU320は、低圧燃圧センサ560により検出された検出値D2を取得する(図3の時刻t5参照)。
【0068】
S110において、エンジンECU320は、S70にて取得された検出値D1と、S100にて取得された検出値D2とを用いて、低圧燃圧センサ560のスタック検出を実行する。高温環境下では、検出値D1が600kPaに近い値を示し、検出値D2が400kPaに近い値を示していれば、低圧燃圧センサ560は正常と判定される。低温環境下では、検出値D1が530kPaに近い値を示し、検出値D2が400kPaに近い値を示していれば、低圧燃圧センサ560は正常と判定される。あるいは、検出値D1と検出値D2との差(の絶対値)が所定値以上の場合、低圧燃圧センサ560は正常と判定される。これに対し、検出値D1と検出値D2とが互いにほぼ等しい値を示している場合(あるいは検出値D1と検出値D2との差の絶対値が所定値未満の場合)には、低圧燃圧センサ560にスタック故障が発生していると判定される。
【0069】
スタック検出が完了すると、制御はメインルーチンに戻される。なお、S110の処理は、エンジン運転中に常時行なう必要はなく、1回のエンジン始動時に1回行なわれればよい。
【0070】
以上のように、本実施の形態によれば、燃料温度Tfが判定温度Tc以上の場合、燃料温度Tfが判定温度Tc未満の場合と比べて、目標燃圧が高く設定される。たとえば目標燃圧を、スタック検出時の燃料温度Tfにおける飽和蒸気圧Psよりも高く設定することにより、燃料内部にベーパが生じにくくすることができる。したがって、ポート噴射弁550からの燃料の噴射が正常に行なわれるので、エンジン100の始動性を向上させることができる。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 車両、10 第1モータジェネレータ(MG)、20 第2MG、22 回転軸、30 動力分割機構、40 リダクション機構、100 エンジン、110 燃料供給装置、120 吸気マニホールド、130 吸気ポート、140 シリンダ、200 パワーコントロールユニット(PCU)、250 バッテリ、300 電子制御装置(ECU)、310 PM−ECU、320 エンジンECU、330 モータECU、340 バッテリECU、350 駆動輪、400 高圧燃料供給機構、410 高圧ポンプ、420 チェック弁、430 高圧燃料配管、440 高圧デリバリーパイプ、450 筒内噴射弁、452,552 噴孔部、460 高圧燃圧センサ、500 低圧燃料供給機構、510 燃料圧送部、511 燃料タンク、512 フィードポンプ、513 サクションフィルタ、514 燃料フィルタ、515 リリーフ弁、516 燃料温度センサ、530 低圧燃料配管、540 低圧デリバリーパイプ、550 ポート噴射弁、560 低圧燃圧センサ。
図1
図2
図3
図4
図5