特許第6512038号(P6512038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6512038-車両前部構造 図000002
  • 特許6512038-車両前部構造 図000003
  • 特許6512038-車両前部構造 図000004
  • 特許6512038-車両前部構造 図000005
  • 特許6512038-車両前部構造 図000006
  • 特許6512038-車両前部構造 図000007
  • 特許6512038-車両前部構造 図000008
  • 特許6512038-車両前部構造 図000009
  • 特許6512038-車両前部構造 図000010
  • 特許6512038-車両前部構造 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512038
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   B62D25/08 D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-171406(P2015-171406)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-47748(P2017-47748A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】前田 章善
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−067184(JP,A)
【文献】 特開2013−133031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部における車幅方向両端側で車両前後方向に延在する一対のフロントサイドメンバと、
各フロントサイドメンバの前端部に接続され、車両上下方向に延在する左右一対のラジエータサポートサイドメンバと、
前記ラジエータサポートサイドメンバの上端部同士を接続し、車幅方向に延在するラジエータサポートアッパメンバと、
前記ラジエータサポートサイドメンバの下端部同士を接続し、車幅方向に延在するラジエータサポートロアメンバと、
それぞれの前記フロントサイドメンバの先端と前記ラジエータサポートアッパメンバを接続する左右一対のブレースと、
前記ラジエータサポートアッパメンバの上面において、車幅方向において前記ラジエータサポートアッパメンバの前記ブレースの固定位置に対応した位置に形成され車両前後方向に延在するビードと、
を備え、前記ラジエータサポートアッパメンバの左右剛性と前記ラジエータサポートロアメンバの左右剛性との比が、前記ラジエータサポートサイドメンバにおいて下端から前記フロントサイドメンバの取付位置までの距離と上端から取付位置までの距離との比と等しくされた車両前部構造。
【請求項2】
前記ラジエータサポートアッパメンバは、車幅方向中央位置における車両前後方向断面の車両上下方向高さがブレース取付位置における車両前後方向断面の車両上下方向高さよりも高い請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記ラジエータサポートアッパメンバは、ブレース取付位置の車両前後方向断面においてブレース取付位置側である車両前方側が車両後方側よりも上面の車両上下方向の高さが低い請求項1記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面入力による車体の振動に基づく車室内の騒音(ロードノイズ)を抑制するために、タイヤから車室に至る振動伝達経路において、各構成要素の振動や、構成要素間の振動伝達を低減させることが図られてきた。
【0003】
例えば、ロードノイズの振動伝達経路の1つであるフロントサイドメンバのラジエータサポートに対する取付点の車幅方向振動に対して、ラジエータサポートロアメンバの剛性を向上させることで取付点の剛性を向上させ、フロントサイドメンバの振動、ひいては車両全体の振動を抑制することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−240744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、取付点の剛性向上を図るには、構成要素の断面拡大や板厚増加、溶接打点や結合部材の追加など、車体重量の増加をもたらし、スペースを新たに必要とする等、部品配置に制約をもたらすことが多い。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、部品点数や車体重量の増加等の製造の制約をもたらすことなく、車室の騒音を抑制する車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両前部における車幅方向両端側で車両前後方向に延在する一対のフロントサイドメンバと、各フロントサイドメンバの前端部に接続され、車両上下方向に延在する左右一対のラジエータサポートサイドメンバと、前記ラジエータサポートサイドメンバの上端部同士を接続し、車幅方向に延在するラジエータサポートアッパメンバと、前記ラジエータサポートサイドメンバの下端部同士を接続し、車幅方向に延在するラジエータサポートロアメンバと、それぞれの前記フロントサイドメンバの先端と前記ラジエータサポートアッパメンバを接続する左右一対のブレースと、前記ラジエータサポートアッパメンバの上面において、車幅方向において前記ラジエータサポートアッパメンバの前記ブレースの固定位置に対応した位置に形成され車両前後方向に延在するビードと、を備え、前記ラジエータサポートアッパメンバの左右剛性と前記ラジエータサポートロアメンバの左右剛性との比が、前記ラジエータサポートサイドメンバにおいて下端から前記フロントサイドメンバの取付位置までの距離と上端から取付位置までの距離との比と等しくされている
【0008】
この車両前部構造は、各フロントサイドメンバの先端とラジエータサポートアッパメンバを接続する一対のブレースが設けられている。また、車幅方向においてラジエータサポートアッパメンバのブレースの固定位置に対応した位置に車両前後方向に延在するビードが形成されている。このビードを設けることによって、ラジエータサポートアッパメンバの車幅方向の剛性(変形しにくさ)(以下、「左右剛性」という)を調整することができる。したがって、ラジエータサポートアッパメンバの左右剛性を調整することによって、ラジエータサポートアッパメンバとラジエータサポートロアメンバの左右剛性の関係で決まるラジエータサポートサイドメンバの車幅方向振動の節位置をラジエータサポートサイドメンバに接続されるフロントサイドメンバの固定位置と同一高さ(車両上下方向)とすることで、フロントサイドメンバの(車幅方向の)振動量を抑制することができる。すなわち、ロードノイズの振動伝達経路の1つであるフロントサイドメンバの振動量を抑制することで、車室内の騒音(ロードノイズ)を抑制することができる。
【0009】
また、例えば、フロントサイドメンバの車両前後方向の振動とラジエータサポートアッパメンバの車両前後方向の振動が逆位相の場合には、ラジエータサポートアッパメンバの左右剛性を低下させることによって、捩れ変形するラジエータサポートアッパメンバの車両前後方向の振動量を増加させることにより、フロントサイドメンバの車両前後方向の振動量を抑制し、車室内の騒音を低減させることができる。逆に、フロントサイドメンバの車両前後方向の振動とラジエータサポートアッパメンバの車両前後方向の振動が同相の場合には、ラジエータサポートアッパメンバの左右剛性を増加させることによって、捩れ変形するラジエータサポートアッパメンバの車両前後方向の振動量を減少させることにより、フロントサイドメンバの車両前後方向の振動量を抑制し、車室内の騒音を低減させることができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ラジエータサポートアッパメンバは、車幅方向中央位置における車両前後方向断面の車両上下方向高さがブレース取付位置における車両前後方向断面の車両上下方向高さよりも高い
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ラジエータサポートアッパメンバは、ブレース取付位置の車両前後方向断面においてブレース取付位置側である車両前方側が車両後方側よりも上面の車両上下方向の高さが低い。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明の車両前部構造は、上記構成としたので、車体重量の増加や部品配置に制約等をもたらすことなく、車室内の騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る車両前部構造を示す斜視図である。
図2】(A)は、ラジエータサポートアッパの車幅方向中央部における車両前後方向断面図であり、(B)は、ラジエータサポートアッパのVブレース取付位置における車両前後方向断面図である。
図3A】本発明の一実施形態に係る車両前部構造を示す正面図である。
図3B】比較例に係る車両前部構造の剪断変形モードにおける変形状態を示す正面図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る車両前部構造を示す側面図である。
図4B】比較例に係る車両前部構造の剪断変形モードにおける変形状態を示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る車両前部構造における変形状態を示す正面図である。
図6】(A)は、本発明の一実施形態に係る車両前部構造における変形状態を示す要部正面図であり、(B)は、その作用の原理を示す模式図である。
図7】(A)、(B)は、それぞれ比較例、本実施形態に係るラジエータサポートアッパの断面変形状態を示す車両前後方向断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る車両前部構造における変形状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る車両前部構造について図1図8を参照して説明する。なお、各図は模式的なものであり、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。また、各図において、矢印FRは車両前方を、矢印Wは車幅方向を、矢印UPは車両上方をそれぞれ意味している。
【0013】
(車両前部構造)
本実施形態の車両前部構造10は、図1に示すように、車両前部の車幅方向の両側部を車両前後方向に延在する一対のフロントサイドメンバ12A、12Bと、フロントサイドメンバ12A、12Bの先端側で両者の間に配設されたラジエータサポート14と、各フロントサイドメンバ12A、12Bの先端とラジエータサポート14を連結する一対のVブレース16A、16Bとを基本的に備えている。
【0014】
フロントサイドメンバ12Aは、フロントサイドメンバ本体18Aと、フロントサイドメンバ本体18Aの先端に形成され、車幅方向の幅が車両前方に向かって拡大する拡幅部材20Aと、拡幅部材20Aの車両前方側に配設されるクラッシュボックス22Aとからなる。なお、クラッシュボックス22Aの先端(車両前方端部)には、キャップ24Aが取り付けられている。
【0015】
フロントサイドメンバ12Bもフロントサイドメンバ12Aと同様の構成なので、同一の構成要素にフロントサイドメンバ12Aと同一の参照番号にBをつけた参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0016】
ラジエータサポート14は、図1に示すように、車幅方向に延在するラジエータサポートロアメンバ26と、ラジエータサポートロアメンバ26の両端部から車両上方に延在する一対のラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bと、ラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bの上端(車両上方端部)間に配設され車幅方向に延在するラジエータサポートアッパメンバ30とを備えている。すなわち、ラジエータサポート14は、車両正面視で矩形状に形成されている。
【0017】
図1に示すように、ラジエータサポートサイドメンバ28Bとクラッシュボックス22Bの間には、両者を連結させるブラケット32Bとブラケット34Bが配設されている。ブラケット32Bは、車両平面視で(車両上方から見て)断面ハット形状であり、その頂面36Bがラジエータサポートサイドメンバ28Bの頂面38Bに溶接によって接合されている。また、ブラケット32Bのフランジ面40Bがクラッシュボックス22Bの側面42Bに溶接によって接合されている。
【0018】
また、ブラケット34Bは、車両平面視で断面L字形状であり、その長辺を形成する第1面44Bがラジエータサポートサイドメンバ28Bの側面46Bとブラケット32Bの側面48Bに溶接で接合されている。また、ブラケット34Bの短辺を形成する第2面50Bは、ブラケット32Bのフランジ面40Bに重ねられてクラッシュボックス22Bの側面42Bに溶接によって接合されている。
【0019】
このように、ブラケット32B、34Bを介してラジエータサポートサイドメンバ28B(ラジエータサポート14)にクラッシュボックス22B(フロントサイドメンバ12B)が固定されている。
【0020】
なお、ラジエータサポートサイドメンバ28Aとクラッシュボックス22Aも同様の構成で接続されている。図において同様な構成要素には、同一の参照番号にAを付した参照符号で示し、その詳細な説明を省略する。
【0021】
ラジエータサポートアッパメンバ30は、図2(A)、(B)に示すように、車両前後方向断面において、略L字状の第1部材52の上部に略ハット形状の第2部材54が配設されている。なお、図2(A)は、ラジエータサポートアッパメンバ30の車幅方向中央における断面を示し、図2(B)は、Vブレース取付位置における断面を示す。
【0022】
第1部材52は、車両前後方向に延在する水平面56と、水平面56の車両前方端部から車両下方に延在する前面58とを備えている。また、第2部材54は、車両前後方向に延在する上面60と、上面60の車両前方端部から車両下方に延在する前面62と、上面60の車両後方端部から車両下方に延在する後面64と、後面64の車両下方端部から車両後方に延在するフランジ面66とを備えている。
【0023】
第1部材52の前面58と第2部材54の前面62が接合されると共に、第1部材52の水平面56の車両後方端部側に第2部材54のフランジ面66が接合されることにより、第1部材52と第2部材54で閉断面が形成されている。
【0024】
なお、図2(A)、(B)に示すように、ラジエータサポートアッパメンバ30の断面高さは、車幅方向中央における高さH1がVブレース取付位置における高さH2よりも高く設定されている。
【0025】
また、図2(B)に示すように、ラジエータサポートアッパメンバ30の上面60は、車幅方向におけるVブレース取付位置で、前面62(Vブレース取付部)側が後面64側よりも低く形成されている。
【0026】
さらに、図2(B)に示すように、Vブレース取付位置における前面58、62には、Vブレース16A、16Bを締結するための孔部68が形成されている。この孔部68(Vブレース取付位置)は、ラジエータサポートアッパメンバ30に形成された閉断面の断面中心(高さ)からオフセットされた位置に形成されている。
【0027】
ラジエータサポートアッパメンバ30の前面62の車幅方向の中央近傍には、図1図3Aに示すように、左右対称にVブレース締結用の締結座70A、70Bが形成されている。また、上面60の車幅方向における締結座70A、70Bと同じ位置には、車両前後方向に延在するビード(凹部)72A、72Bが形成されている。
【0028】
このビード72A、72Bの深さや幅等を調整することにより、ラジエータサポートアッパメンバ30の左右剛性Kaを調整して、ラジエータサポートロアメンバ26の左右剛性Kbとの比(Ka/Kb)が、ラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bにおいて下端からフロントサイドメンバ12A、12B(クラッシュボックス22A、22B)の取付位置までの距離LBから上端から取付位置までの距離LAとの比(LB/LA)と等しくされている(図6(A)、(B)参照)。
【0029】
図1及び図3Aに示すように、クラッシュボックス22Aのキャップ24Aの車幅方向内側には、Vブレース締結用の取付部材74Aが溶接で接合されている。取付部材74Aは、車両平面視において断面が略L字形状であり、車両後方側に取付面76Aが形成されている。
【0030】
なお、取付部材74Bも取付部材74Aと同様の構成である。図において同様な構成要素には、同一の参照番号にBを付した参照符号で示し、その詳細な説明を省略する。
【0031】
Vブレース16Aは、略円柱形状の本体部78Aの両端にそれぞれ平板状とされた取付部80A、82Aを備えている。取付部80A、82Aにはそれぞれ取付用孔部が形成されている。したがって、ラジエータサポートアッパメンバ30の締結座70Aに取付部80Aを締結することにより、Vブレース16Aの一端がラジエータサポートアッパメンバ30の前面62に固定されたものである。また、取付部材74Aの取付面76Aに取付部82Aを締結することにより、Vブレース16Aの他端が取付部材74Aに固定されたものである。この結果、Vブレース16Aを介してクラッシュボックス22A(フロントサイドメンバ12A)とラジエータサポートアッパメンバ30が連結されたことになる。
【0032】
なお、Vブレース16Bとクラッシュボックス22B(フロントサイドメンバ12B)及びラジエータサポートアッパメンバ30との関係も同様なので、同様の構成要素に同一の参照番号にBをつけた参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0033】
また、図1において、ラジエータサポートロアメンバ26の車幅方向両端部の車幅方向外側には、図示しないセカンドメンバの車両前方端部に配設されるクラッシュボックス84A、84Bが配置されている。
【0034】
さらに、図3A図4Aにおいて、86A、86Bはエプロンアッパメンバであり、88A、88Bはラジエータサポートアッパメンバ30のエクステンションである。
【0035】
(変形モード)
ここでは、本実施形態の作用について説明するために、比較例に係る車両前部構造を用いた変形モードについて説明する。なお、比較例で本実施形態と同様の構成要素については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
比較例は、本実施形態と異なり、ラジエータサポートアッパメンバ30の上面60にビードが形成されていないものである。また、図7(A)に示すように、ラジエータサポートアッパメンバ30のVブレース取付位置における断面高さが車幅方向中央における断面高さ(図2(A)参照)と等しく設定されている。また、ラジエータサポートアッパメンバ30のVブレース取付位置において、前面62の閉断面の断面中心位置(高さ)にVブレース締結用の孔部68が形成されている。比較例に係る車両前部構造は、これらの点以外、実施形態に係る車両前部構造と同様の構成である。
【0037】
このような比較例に係る車両前部構造を備える車体のフロントサスペンションメンバのフロントマウントに車体の固有振動数を含む周波数帯の車幅方向振動を加振した場合、図3Bに示すように、ラジエータサポート14は、二点鎖線(加振前)から実線(加振後)で示すように変形する。すなわち、ラジエータサポート14は、ラジエータサポートロアメンバ26、ラジエータサポートサイドメンバ28A、28B、ラジエータサポートアッパメンバ30は、それぞれ捩れ変形する。ラジエータサポートアッパメンバ30とラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bとの接合位置をそれぞれ点CA、CB、ラジエータサポートロアメンバ26とラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bとの接合位置をそれぞれ点CC、CDとすると、各点CA〜CDはそれぞれ矢印A〜Dのように変位する。したがって、ラジエータサポート14は、全体として正面視矩形だったのが略平行四辺形に変形する。この結果、ラジエータサポートアッパメンバ30は、矢印A、矢印Bに示すように、図上右側に変位し、ラジエータサポートロアメンバ26は、矢印C、矢印Dに示すように、図上左側に変位する。また、ラジエータサポートサイドメンバ28Aは、上部側が図上右斜め下(矢印A参照)に移動し、下部側が図上左斜め下(矢印C参照)に移動する。ラジエータサポートサイドメンバ28Bは、上部側が図上右斜め上(矢印B参照)に移動し、下部側が図上左斜め上(矢印D参照)に移動する。
【0038】
この結果、フロントサイドメンバ12A(キャップ24A参照)は、図上右斜め下、フロントサイドメンバ12B(キャップ24B参照)は図上右斜め上に変位する。
【0039】
また、図4Bに示すように、ラジエータサポート14は、車両前後方向で二点鎖線(加振前)から実線(加振後)で示すように変形する。すなわち、ラジエータサポートアッパメンバ30(ラジエータサポートサイドメンバ28Aの上端)は、上記捩れ変形により車両後方側(矢印E参照)に変位する。一方、フロントサイドメンバ12A(キャップ24A)は、車両前方側(矢印F参照)に変位する。すなわち、ラジエータサポートアッパメンバ30とフロントサイドメンバ12Aは、車両前後方向において逆位相で変位する。なお、ラジエータサポートアッパメンバ30とフロントサイドメンバ12Bも、同様に車両前後方向において逆位相で変位する。
【0040】
[作用]
このように変形する車両前部構造10の作用について説明する。
【0041】
(第1の作用)
ラジエータサポートアッパメンバ30に形成されるビード72A、72Bの深さ、幅等を調整することによってラジエータサポートアッパメンバ30の左右剛性Kaとラジエータサポートロアメンバ26の左右剛性Kbとの比(Ka/Kb)が、ラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bにおいて下端からフロントサイドメンバ12A、12B(クラッシュボックス22A、22B)の取付位置までの距離LBから上端から取付位置までの距離LAとの比(LB/LA)と等しくされている(図6(B)参照)。
【0042】
この状態で、路面からの振動入力によりラジエータサポート14が振動すると、車体の固有振動数を含む周波数帯におけるラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bの車幅方向振動(以下、「左右振動」という)の節位置Pが、ラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bのフロントサイドメンバ12A、12Bの取付位置(高さ)と一致することになる。したがって、図5に示すように、ラジエータサポート14は、振動の入力によって二点鎖線(加振前)から実線(加振後)で示すように大きく変形するが、フロントサイドメンバ12A、12B(クラッシュボックス22A、22B(キャップ24A、24B参照))の左右振動(変位)量R3、R4が比較例に係る左右振動量R1、R2(図3B参照)と比較して抑制される。この結果、車室への振動伝達経路を構成する構成要素の一つであるフロントサイドメンバ12A、12Bの左右振動量が低減され、車室内の騒音が低減される。
【0043】
(第2の作用)
ラジエータサポートアッパメンバ30の上面60は、ラジエータサポートアッパメンバ30の車幅方向中央における断面における高さH1(図2(A)参照)よりも、Vブレース16A、16Bの取付位置断面における高さH2(図2(B)参照)が低く設定されている。また、上面60において、前面62(Vブレース16A、16B取付)側の方が後面64側よりも高さが低く設定されている(図7(B)参照)。さらに、比較例の前面62におけるVブレース16A、16Bの車両上下方向取付位置(孔部68)がラジエータサポートアッパメンバ30の断面中心(高さ)に位置している(図7(A)参照)のに対して、本実施形態では、前面62におけるVブレース16A、16Bの車両上下方向取付位置(孔部68)がラジエータサポートアッパメンバ30の断面中心(高さ)から下方にオフセットされた位置に形成されている(図7(B)参照)。
【0044】
この状態で、路面からの振動入力によりラジエータサポート14が振動すると、ラジエータサポートアッパメンバ30のVブレース16A、16Bの取付位置における前後剛性(車両前後方向の変形のしにくさ)が低下しているため、比較例(図7(A)参照)と比較して断面崩れ(車両前後方向の変形量、変位量)が大きくなり(図7(B)参照)、図8に示すように、ラジエータサポートアッパメンバ30(ラジエータサポートサイドメンバ28Aの上端)の車両前後方向の振動(変位)量(D3)が比較例の変位量(D1(図4B参照))と比較して増加する。この結果、車両前後方向でラジエータサポートアッパメンバ30と逆位相で振動しているフロントサイドメンバ12A、12Bの車両前後方向の振動(変位)量(D4)が比較例の変位量(D2(図4B参照))と比較して抑制される。
【0045】
また、ラジエータサポートアッパメンバ30のビード72A、72Bの上記調整の結果、捩り変形しているラジエータサポートアッパメンバ30の車両前後方向の振動量が増大するならば、このビード72A、72Bの調整によってもフロントサイドメンバ12A、12Bの振動量を抑制することができる。
【0046】
(効果)
このように、本実施形態に係る車両前部構造10では、ラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bのフロントサイドメンバ12A、12Bの取付位置が車体の固有振動数を含む周波数帯におけるラジエータサポートサイドメンバ28A、28Bの車幅方向振動における節位置となるように、ラジエータサポートアッパメンバ30のビード72A、72Bを設ける(深さ等を調整する)ことによって、フロントサイドメンバ12A、12Bの車幅方向振動を抑制することができる。
【0047】
また、ラジエータサポートアッパメンバ30の前後剛性をラジエータサポートアッパメンバ30の形状変更や取付位置で調整することによってラジエータサポートアッパメンバ30の車両前後方向の振動量を増大させ、ラジエータサポートアッパメンバ30と逆位相に車両前後方向に振動するフロントサイドメンバ12A、12Bの振動を抑制することができる。
【0048】
すなわち、ラジエータサポートアッパメンバ30にビード72A、72Bを設けることやラジエータサポートアッパメンバ30の形状変更だけでフロントサイドメンバ12A、12Bの振動量を抑制できる。したがって、車体重量の増加や部品配置の制約等を生ずることになく、車室内の騒音を抑制することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、車両前後方向においてラジエータサポートアッパメンバ30とフロントサイドメンバ12A、12Bの振動が逆位相である場合について説明したが、同相である場合には、ラジエータサポートアッパメンバ30の車両前後方向の振動を抑制するように構成することにより、フロントサイドメンバ12A、12Bの振動を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、ラジエータサポートアッパメンバ30のVブレース16A、16Bの取付位置における断面形状が、断面高さで低く、車両前後方向において前面側が低く、さらにVブレース取付位置(高さ)が断面中心からオフセットされていることとしたが、いずれか1つ、又は2つの組み合わせであっても良い。
【0051】
さらに、本実施形態では、ラジエータサポートアッパメンバ30におけるVブレース取付位置における断面形状やVブレース取付位置を変更したが、これを行なわずにビード72A、72Bの形状を調整するのみでも良い。この場合には、ビード72A、72Bを設けることにより、捩り変形を生ずるラジエータサポートアッパメンバ30の前後変形量を調整することで、フロントサイドメンバ12A、12Bの車両前後方向振動を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、ビード72A、72Bはラジエータサポートアッパメンバ30の上面60に形成された凹部だったが、凸部でも良い。
【0053】
さらに、本実施形態では、ビード72A、72Bがラジエータサポートアッパメンバ30の車幅方向におけるVブレース取付位置に形成されていたが、これに限定されるものではない。車幅方向において多少ずれていても良い。このような場合を含めて、本発明でいう「ブレース固定位置に対応した位置」に含むものである。
【符号の説明】
【0054】
10 車両前部構造
12A、12B フロントサイドメンバ
16A、16B Vブレース(ブレース)
26 ラジエータサポートロアメンバ
28A、28B ラジエータサポートサイドメンバ
30 ラジエータサポートアッパメンバ
72A、72B ビード
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8