特許第6512112号(P6512112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512112
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】円管部材
(51)【国際特許分類】
   B60G 9/04 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   B60G9/04
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-987(P2016-987)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2017-121840(P2017-121840A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】永田 孝明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 沙弓
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−127724(JP,A)
【文献】 特開2001−355626(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0069496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪側から荷重が入力されるサスペンション装置の円管部材であって、
外周面に略直線状の4辺を有して形成され、平行な2辺を一対有する孔部を備え、
前記孔部は、一方の前記平行な2辺の対向方向が該円管部材の中心軸方向に対して傾斜し、一方の前記平行な2辺の対向方向と他方の前記平行な2辺の対向方向とが直交して形成されていることを特徴とする円管部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪側から荷重が入力されるサスペンション装置の円管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左右輪に連結され、捩りの反力を利用して左右輪の上下方向の変位を減衰するサスペンションのトーションビームが開示される。特許文献1に開示されるトーションビームは薄鋼管により断面が略U字状に形成され、トーションビームの対向する内方壁と外方壁が固定されている。トーションビームの内方壁と外方壁は、長手状のバーリングカシメにより固定され、バーリングカシメの長手方向は、トーションビームが捩られたときの応力の方向と直交する。
【0003】
車両のサスペンション装置には、車両左右方向に延在して左右輪に連結される部材として、トーションビーム以外にもアクスルビームなどの円管部材がある。その円管部材には防錆塗装時の塗料の排出や車両走行時の排水のため、外周面に孔部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−162080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両走行中に左右輪の一方が段差に乗り上げた場合、左右輪が上下逆方向に変位して、サスペンション装置の円管部材に捩りの外力が入力される。このとき、円管部材の排水用の孔部の周りに捩りに起因する応力集中が生じる可能性がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、車輪側から荷重が入力されるサスペンション装置の円管部材において、捩りによる応力集中を低減できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の円管部材は、車輪側から荷重が入力されるサスペンション装置の円管部材であって、外周面に略直線状の4辺を有して形成され、平行な2辺を一対有する孔部を備える。孔部は、一方の平行な2辺の対向方向が該円管部材の中心軸方向に対して傾斜し、一方の平行な2辺の対向方向と他方の平行な2辺の対向方向とが直交して形成されている。
【0008】
この態様によると、孔部の略直線状の辺が主応力方向に平行であれば、応力集中を大きく低減できる。円管部材に捩りの外力が付与された際の応力は概ね螺旋のように傾斜しており、孔部の略直線状の辺を車両左右方向に対して傾斜させて形成することで、孔部の略直線状の辺を捩りによる応力の方向に沿って位置させることができ、捩れによる応力集中を低減できる。孔部は、一方の平行な2辺の対向方向と他方の平行な2辺の対向方向とが直交して形成されることで、捩りの応力の方向が右ネジ方向であるか左ネジ方向であるかに関わらず、いずれかの孔部の辺を捩りの応力の方向に沿って位置させて、応力集中を低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両左右方向に延在するサスペンション装置の円管部材において、捩りによる応力集中を低減する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例のサスペンション装置の斜視図である。
図2】円管部材の下面図である。
図3図3(a)は、部分的に拡大した円管部材の下面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す円管部材の線分A−Aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施例のサスペンション装置10の斜視図である。サスペンション装置10は、アクスルビーム式または3リンク式と呼ばれるものであり、例えば前輪駆動車の後輪に連結される。サスペンション装置10は、円管部材12、ハブ14、ショックアブソーバ16、ラテラルロッド18およびアーム部材20を備える。
【0012】
円管部材12は、例えば車両左右方向に延在するアクスルビームであって、両端がハブ14を介して左右輪に連結される。円管部材12は、左右輪から車両前後方向、車両左右方向、上下方向の荷重を受ける。なお、車両左右方向は、車幅方向または車軸方向ともいい、円管部材12の中心軸方向に概ね沿っている。
【0013】
一対のショックアブソーバ16は、一端がブラケット16aを介して円管部材12の両端側の外周面に連結され、他端が車体側に連結される。ショックアブソーバ16は、車輪と車体との間で主に上下方向の衝撃を吸収する。
【0014】
ラテラルロッド18は、一端が円管部材12に連結され、他端が車体側に連結される。ラテラルロッド18は、車体の高さに応じて傾斜角を変える。ラテラルロッド18は、車両左右方向に延在しており、主に車両左右方向の荷重を受け止め、円管部材12の左右方向の位置決めを行う。
【0015】
一対のアーム部材20は、一端が第1ブラケット20aおよび第2ブラケット20bを介して円管部材12の両端側の外周面に連結され、他端が車体側に連結される。一対のアーム部材20は、一対のショックアブソーバ16より車両左右方向の外側に位置する。アーム部材20は、車両前後方向に延在し、車両前後方向の荷重を受け止めるとともに、左右輪の上下逆方向の変位に対して反力を発生させる。
【0016】
ところで、円管部材12には、製造時の加工基準用の孔、製造時の防錆塗料の排出および車両走行時の排水のため、複数の孔部が外周面に形成される。車両走行中に左右輪の一方が段差に乗り上げた場合、左右輪が上下逆方向に変位し、円管部材12に捩りの外力が入力される。円管部材12は、複数の孔部の周りに捩りに起因する応力集中が生じ得る。そこで、実施例の円管部材12では、捩りに対する応力集中を低減するために、円管部材12の複数の孔部を略直線状の4辺を有して形成する。
【0017】
図2は、円管部材12の下面図である。また、図3(a)は、部分的に拡大した円管部材12の下面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す円管部材12の線分A−Aの断面図である。
【0018】
図2に示すように円管部材12には、第1孔部24a、第2孔部24bおよび第3孔部24c(これらを区別しない場合「孔部24」という)が形成される。孔部24は、排水機能を有するため、車載時には下方に開口し、一対のブラケット16aの間に位置する。
【0019】
第1孔部24aは、円管部材12の中央に位置し、第2孔部24bおよび第3孔部24cは、第1孔部24aからそれぞれ等間隔に離れて位置する。第1孔部24a、第2孔部24bおよび第3孔部24cは、軸方向に沿って並んで位置する。
【0020】
図3(b)に示すように、円管部材12の断面は略円形状に形成され、第1孔部24aは円管部材12の中心軸に向かって円管部材12の外周面を貫通する。
【0021】
図3(a)に示すように、第1孔部24aは、略直線状の4辺を有する略四辺形状に形成される。第1孔部24aの4つの角は、応力集中を低減するため丸みを帯びて形成される。第1孔部24aは、2つの略直線状の第1辺部26aと2つの略直線状の第2辺部26bを有する。第1辺部26aおよび第2辺部26bが主応力方向に平行に位置すれば、応力集中を大きく低減できる。
【0022】
2つの第1辺部26aは平行で対向しており、2つの第2辺部26bは平行で対向している。第1辺部26aおよび第2辺部26bの直線長さは、同じであり、第1孔部24aの対角線の長さの20%〜40%の長さに設定される。
【0023】
2つの第1辺部26aの対向方向と、2つの第2辺部26bの対向方向とは、車両左右方向に傾斜する。つまり、第1辺部26aおよび第2辺部26bを車両左右方向に対して傾斜させている。左右輪から円管部材12に入力される捩りによる応力(主応力)は、円管部材12の外周面上を螺旋のように傾斜している。第1辺部26aおよび第2辺部26bを車両左右方向に対して傾斜させて形成することで、第1辺部26aまたは第2辺部26bを捩りによる応力の方向に沿って位置させることができ、捩りの外力に対する応力集中を低減できる。なお、捩りの外力の大きさによって応力の向きは変わらない。
【0024】
第1辺部26aおよび第2辺部26bは直交する。すなわち、第1孔部24aは、2つの第1辺部26aの対向方向と2つの第2辺部26bの対向方向とが直交して形成される。これにより、第1辺部26aに沿う方向および第2辺部26bに沿う方向の応力に対して応力集中を低減できる。つまり、捩りの応力の方向が右ネジ方向であるか左ネジ方向であるかに関わらず第1辺部26aおよび第2辺部26bのいずれかを捩りの応力の方向に沿って位置させて、応力集中を低減できる。
【0025】
第1孔部24aは車両左右方向において中央に位置しており、第1辺部26aの車両左右方向に対する傾斜角θ1は、45度に設定される。左右輪が円管部材12の中心を軸として上下逆方向に変位した場合、第1孔部24aでの捩りによる主応力の方向は45度になる。このように、左右輪が上下逆方向に変位した場合の主応力の方向にもとづいて、第1孔部24aの傾斜角θ1は設定される。第1辺部26aに沿う方向の荷重が入力した場合、第1辺部26aによって応力集中を低減できる。
【0026】
第2孔部24b、第1孔部24aおよび第3孔部24cの車両左右方向の傾斜は、車両右側(図中左側)から傾斜角θ2、傾斜角θ1、傾斜角θ3と異なる設定にした。このように、孔部24は、各辺部を車両左右方向の位置に応じて車両左右方向に対して傾斜して形成され、応力集中を効果的に低減できる。
【0027】
図2に示す第2孔部24bおよび第3孔部24cは対称形に形成され、右ネジ方向における第2孔部24bの車両左右方向に対する傾斜角θ2と、左ネジ方向における第3孔部24cの車両左右方向に対する傾斜角θ4とは同じである。なお、傾斜角θ4は、傾斜角θ3に直交する。
【0028】
なお、捩りに対する応力集中の低減を追求して孔部24の各辺部の傾斜を設定した場合、車両前後方向および車両左右方向の外力に対する応力集中が生じる可能性がある。そのため孔部24の各辺部の傾斜角は、主として捩りによる応力の方向により定められるが、捩りだけでなく、車両前後方向および車両左右方向の外力に対する応力にもとづいて決定されてよい。
【0029】
以上、本発明を各実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素およびプロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、そのような変形例を述べる。
【0030】
なお、実施例の円管部材12では、3つの孔部24を有する態様を説明したが、この態様に限られない。例えば、孔部24は中央に1つ形成されてよく、左右対称の位置に2つ形成されてよい。また、孔部24は、4つ以上形成されてよい。いずれにしても、孔部24は、略四辺形状に形成される。
【0031】
また、実施例では、3つの孔部24が軸方向に沿って並んで配置される態様を示したが、この態様に限られず、周方向に位置ずれして配置されてよい。
【0032】
また、実施例では、孔部24が略正方形状である態様を示したが、この態様に限られず、長方形状であってもよい。
【0033】
また、実施例の図3(a)には、孔部24の第1辺部26aおよび第2辺部26bが完全な直線である態様を示したが、この態様に限られず、少し湾曲してよい。ただ、孔部24の各辺部を少し湾曲しても、孔部24は、略直線状の四辺を有する。また、孔部24は、角に大きな丸みを有して略四辺形状でなくてよいが、少なくとも略直線状の四辺を有する。
【0034】
また、実施例では、円管部材12としてアクスルビームである態様を説明したが、この態様に限られない。例えば、車輪側と車体側に連結される中間ビームであってよい。中間ビームは、円管形状であり、車両前後方向に延在する。また、中間ビームは、車輪が上下方向に変位した際に、車輪側から捩りの外力が入力される。中間ビームに略直線状の4辺を有する略四辺形状の孔部を形成することで、応力集中を低減できる。
【符号の説明】
【0035】
10 サスペンション装置、 12 円管部材、 14 ハブ、 16 ショックアブソーバ、 18 ラテラルロッド、 20 アーム部材、 22 外周面、 24a 第1孔部、 24b 第2孔部、 24c 第3孔部、 26a 第1辺部、 26b 第2辺部。
図1
図2
図3