特許第6512130号(P6512130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512130
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20190425BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20190425BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   F02D29/02 321C
   F02D29/02 321Z
   F02D29/00 G
   F02D29/02 F
   B60K31/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-31583(P2016-31583)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-150344(P2017-150344A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 香治
【審査官】 田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−20188(JP,A)
【文献】 特開2015−51646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D13/00 − 29/06
F02D41/00 − 45/00
B60W10/00 − 10/30
B60W30/00 − 50/16
B60K31/00 − 31/18
F16D25/00 − 39/00
F16D48/00 − 48/12
F16H59/00 − 61/12
F16H61/16 − 61/24
F16H61/66 − 61/70
F16H63/40 − 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーラン制御を実行可能な車両に用いられる車両用制御装置であって、
エンジン補機からの始動要求に応じてフリーラン制御状態からエンジンを始動させた後に前記エンジンの停止要求に応じてフリーラン制御状態に復帰する場合、エンジンを始動させてからエンジンのアイドリング動作によって前記停止要求が出力される条件が成立するまでの時間をエンジン稼働必要時間として算出し、算出されたエンジン稼働必要時間後の車速を推定し、推定された車速が所定速度より速い場合、フリーラン制御状態への復帰を許可し、推定された車速が所定速度より遅い場合には、フリーラン制御状態への復帰を禁止し、クラッチを係合させたエンジンブレーキ状態とする制御手段を備えることを特徴とする車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダル及びブレーキペダルの双方が操作されていない場合にエンジンを停止して惰性走行させるフリーラン制御を実行可能な車両に用いられる車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アイドリングストップを実行可能な車両では、エンジン補機を駆動させるためや排気浄化装置の活性化や再生を行うために、停止中のエンジンに対して始動要求がなされる場合がある。しかしながら、エンジン補機や排気浄化装置のようなエンジンの付属品を駆動させる度毎に停止中のエンジンを始動させることとすると、エンジンの作動時間が長くなるために燃費が低下する。このような背景から、特許文献1には、エンジン補機から始動要求があった場合、クラッチを接続して燃料供給を停止させた上でモータによりエンジンを連れ回す走行モード(エンジンブレーキ状態)を選択し、排気浄化装置から始動要求があった場合には、クラッチを遮断したままエンジンをアイドリングさせるモータ走行モードを選択するハイブリッド電気自動車の制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−180697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の制御装置は、モータを備える車両にしか適用することができない。また、フリーラン制御を実行可能な車両に対して特許文献1記載の制御装置を適用した場合には以下に示すような問題が生じる。すなわち、フリーラン制御を実行している際にエンジン補機から始動要求があった場合において、エンジンブレーキ状態に移行すると、エンジンの停止要求に応じてフリーラン制御状態に復帰した際に減速度が減少することがある。結果、フリーラン制御状態に復帰した際、運転者に飛び出し感を与える可能性がある。一方、運転者に飛び出し感を与えないようにするために減速度が変化しないように制御すると、燃費が悪化してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、エンジンの停止要求に応じてフリーラン制御状態に復帰した際に減速度が減少することを抑制可能な車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用制御装置は、フリーラン制御を実行可能な車両に用いられる車両用制御装置であって、エンジン補機からの始動要求に応じてフリーラン制御状態からエンジンを始動させた後に前記エンジンの停止要求に応じてフリーラン制御状態に復帰する場合、エンジンを始動させてからエンジンのアイドリング動作によって前記停止要求が出力される条件が成立するまでの時間をエンジン稼働必要時間として算出し、算出されたエンジン稼働必要時間後の車速を推定し、推定された車速が所定速度より速い場合、フリーラン制御状態への復帰を許可し、推定された車速が所定速度より遅い場合には、フリーラン制御状態への復帰を禁止する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用制御装置によれば、エンジンを始動させてからエンジン稼働必要時間後の車速が所定速度より速い場合のみ、フリーラン制御状態への復帰を許可するので、エンジンの停止要求に応じてフリーラン制御状態に復帰した際に減速度が減少することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態である車両用制御装置が適用される車両の構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態である再フリーラン許可判定処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、エンジン稼働必要時間を説明するための図である。
図4図4は、本発明の一実施形態であるエンジン制御処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、再フリーランが許可された場合のエンジン制御処理を説明するための図である。
図6図6は、再フリーランが禁止された場合のエンジン制御処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である車両用制御装置の構成及び動作について説明する。
【0010】
〔車両の構成〕
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態である車両用制御装置が適用される車両の構成について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である車両用制御装置が適用される車両の構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である車両用制御装置が適用される車両1は、フリーラン制御が可能な車両によって構成されている。ここで、フリーラン制御とは、アクセルペダル及びブレーキペダルの双方が操作されていない場合において、クラッチを開放してエンジンを停止して車両を惰性走行させる制御のことを意味する。
【0012】
車両1は、エンジン2、クラッチ3、変速機(T/M)4、始動装置5、及び補機6を備えている。
【0013】
エンジン2は、車両1の動力源として機能し、動力伝達経路7を介して変速機4に連結されている。エンジン2の出力トルクは、動力伝達経路7を介してエンジン2の出力軸から変速機4に入力され、図示しない差動機構等を介して変速機4から車両1の駆動輪8に伝達される。
【0014】
クラッチ3は、エンジン2と駆動輪8との間の動力伝達経路に配置された摩擦係合式のクラッチ装置である。クラッチ3が係合している場合、エンジン2の出力トルクは駆動輪8に伝達され、クラッチ3が開放している場合には、エンジン2の出力トルクは駆動輪8に伝達されない。
【0015】
変速機4は、例えば公知のベルト式無段変速機によって構成されている。
【0016】
始動装置5は、所定の始動条件が成立した際に制御装置10からの制御信号に従って停止状態にあるエンジン2を始動させる装置によって構成されている。
【0017】
補機6は、アクセルペダルやブレーキペダルの操作以外でエンジン2に対して始動要求を出力するオルタネータやエアコン等の補機によって構成されている。具体的には、オルタネータは、バッテリ残量が低下した場合にエンジン2に対して始動要求を出力する。また、エアコンは、車内温度調整のためにコンプレッサを駆動する際にエンジン2に対して始動要求を出力する。
【0018】
〔車両用制御装置の構成〕
次に、図1を参照して、本発明の一実施形態である車両用制御装置の構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態である車両用制御装置は、制御装置10と、車速センサ11と、を備えている。制御装置10は、ECU(Electronic Control Unit)によって構成され、車両用制御装置全体の動作を制御する。車速センサ11は、車両の速度(車速)及び減速度を検出し、検出された車速及び減速度を示す電気信号を制御装置10に出力する。制御装置10は、本発明に係る制御手段として機能する。
【0020】
このような構成を有する車両用制御装置は、以下に示す再フリーラン許可判定処理及びエンジン制御処理を実行することによって、エンジン2の停止要求に応じてフリーラン制御状態に復帰した際に減速度が減少することを抑制する。以下、図2図6を参照して、再フリーラン許可判定処理及びエンジン制御処理を実行する際の車両用制御装置の動作について説明する。
【0021】
〔再フリーラン許可判定処理〕
図2は、本発明の一実施形態である再フリーラン許可判定処理の流れを示すフローチャートである。図2に示すフローチャートは、車両1がフリーラン制御状態にある時に補機6からエンジン2の始動要求を受けたタイミングで開始となり、再フリーラン許可判定処理はステップS1の処理に進む。
【0022】
ステップS1の処理では、制御装置10が、始動装置5を制御することによってエンジン2を始動させると共に、車速センサ11を用いてエンジン2を始動させた時の車速及び減速度を検出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、再フリーラン許可判定処理はステップS2の処理に進む。
【0023】
ステップS2の処理では、制御装置10が、エンジン2を始動させてからエンジン2のアイドリング動作によって補機6がエンジン2の停止要求を出力する条件が成立するまでの時間tをエンジン稼働必要時間t(図3参照)として算出する。エンジン稼働必要時間tとしては、エンジン2を始動させてから補機6が必要とする電気量が発電されるまでの時間を例示できる。これにより、ステップS2の処理は完了し、再フリーラン許可判定処理はステップS3の処理に進む。
【0024】
ステップS3の処理では、制御装置10が、ステップS1の処理において検出された車速V0及び減速度(図3に示す破線L1の傾き)を用いてエンジン2を始動させてからステップS2において算出されたエンジン稼働必要時間tが経過するまで惰性走行し続けた時の車速(予測車速)V1(図3参照)を算出する。これにより、ステップS3の処理は完了し、再フリーラン許可判定処理はステップS4の処理に進む。
【0025】
ステップS4の処理では、制御装置10が、ステップS3の処理において算出された車速が所定の閾値より大きいか否かを判別する。所定の閾値は、フリーラン制御状態への移行を許可する所定の車速であってもよいし、再フリーラン許可判定処理用に別に定められた車速であってもよい。判別の結果、車速が所定の閾値より大きい場合(ステップS4:Yes)、換言すれば、エンジン稼働必要時間tが短い場合、制御装置10は、再フリーラン許可判定処理をステップS5の処理に進める。一方、車速が所定の閾値以下である場合には(ステップS4:No)、換言すれば、エンジン稼働必要時間tが長い場合には、制御装置10は、再フリーラン許可判定処理をステップS6の処理に進める。
【0026】
ステップS5の処理では、制御装置10が、フリーラン制御状態に復帰すること(再フリーラン)を許可し、再フリーランを許可するか否かを示す再フリーラン許可フラグの値を1(許可)に設定する。これにより、ステップS5の処理は完了し、一連の再フリーラン許可判定処理は終了する。
【0027】
ステップS6の処理では、制御装置10が、フリーラン制御状態に復帰すること(再フリーラン)を禁止し、再フリーランを許可するか否かを示す再フリーラン許可フラグの値を0(禁止)に設定する。これにより、ステップS6の処理は完了し、一連の再フリーラン許可判定処理は終了する。
【0028】
〔エンジン制御処理〕
図4は、本発明の一実施形態であるエンジン制御処理の流れを示すフローチャートである。図5は、再フリーランが許可された場合のエンジン制御処理を説明するための図である。図6は、再フリーランが禁止された場合のエンジン制御処理を説明するための図である。図4に示すフローチャートは、再フリーラン許可判定処理が終了したタイミングで開始となり、エンジン制御処理はステップS11の処理に進む。
【0029】
ステップS11の処理では、制御装置10が、再フリーラン許可フラグの値が1であるか否かを判別することによって再フリーランが許可されたか否かを判別する。判別の結果、再フリーランが許可されている場合(ステップS11:Yes)、制御装置10は、エンジン制御処理をステップS13の処理に進める。一方、再フリーランが許可されていない場合には(ステップS11:No)、制御装置10は、エンジン制御処理をステップS12の処理に進める。
【0030】
ステップS12の処理では、制御装置10が、図6に示すように、クラッチ3を係合させつつエンジン2への燃料供給を停止させて車両1の状態をエンジンブレーキ状態に制御する。なお、図6中、破線L1は、車両を惰性走行させた際の車速の時間変化を示し、線L2は、車両の状態をエンジンブレーキ状態にした際の車速の時間変化を示す。これにより、ステップS12の処理は完了し、一連のエンジン制御処理は終了する。
【0031】
ステップS13の処理では、制御装置10が、図5に示すように、エンジン2を始動させてからエンジン稼働必要時間tが経過するまでの間(時間T=T1〜T2)、クラッチ3を開放状態にしてエンジン2のアイドル回転数を維持するアイドルコースティング状態に車両1の状態を制御する。これにより、ステップS13の処理は完了し、エンジン制御処理はステップS14の処理に進む。
【0032】
ステップS14の処理では、制御装置10が、エンジン2の停止要件が成立したか否かを判別する。判別の結果、エンジン2の停止要件が成立した場合(ステップS14:Yes)、制御装置10は、エンジン制御処理をステップS15の処理に進める。一方、エンジン2の停止要件が成立していない場合には(ステップS14:No)、制御装置10は、エンジン制御処理をステップS13の処理に戻す。
【0033】
ステップS15の処理では、制御装置10が、エンジン2を停止させることによってフリーラン制御を実行する(図5に示す時間T=T2以後)。これにより、ステップS15の処理は完了し、一連のエンジン制御処理は終了する。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である車両用制御装置は、補機6からの始動要求に応じてフリーラン制御状態からエンジン2を始動させた後にエンジン2の停止要求に応じてフリーラン制御状態に復帰する場合、エンジン2を始動させてからエンジン2のアイドリング動作によって停止要求が出力される条件が成立するまでの時間をエンジン稼働必要時間tとして算出し、算出されたエンジン稼働必要時間t後の車速V1を推定し、推定された車速V1が所定速度より速い場合、フリーラン制御状態への復帰を許可し、推定された車速V1が所定速度より遅い場合には、フリーラン制御状態への復帰を禁止する制御装置10を備える。
【0035】
このような構成によれば、エンジン2を始動させてからエンジン稼働必要時間t後の車速V1が所定速度より速い場合のみ、フリーラン制御状態への復帰を許可するので、エンジン2の停止要求に応じてフリーラン制御状態に復帰した際に減速度が減少することを抑制できる。また、エンジン2を始動させてからエンジン稼働必要時間t後の車速V1が所定速度より遅い場合には、フリーラン制御状態への復帰を禁止し、車両1の状態をエンジンブレーキ状態に制御するので、車両1の燃費を向上させることができる。
【0036】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 エンジン
3 クラッチ
4 変速機(T/M)
5 始動装置
6 補機
10 制御装置
11 車速センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6