(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記載置台を構成する複数の部材のうち、前記電磁波を反射させる導電体部材の一部に形成された複数の挿入部の各々に挿入され、前記導電体部材と被連結部材とを連結する第2の連結部材と、
前記第2の連結部材を覆うように前記導電体部材の前記複数の挿入部の各々に装着された導電体製のキャップと
を備えることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本願の開示するプラズマ処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。
【0010】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1においては、プラズマ処理装置の縦断面が概略的に示されている。
図1に示すプラズマ処理装置10は、マイクロ波を用いて処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによって被処理体(以下、「ウエハ」という)Wを処理する装置である。
【0011】
プラズマ処理装置10は、処理容器12を備えている。処理容器12は、その内部において処理空間Sを画成している。プラズマ処理装置10では、処理空間S内にウエハWが収容され、当該ウエハWに対するプラズマ処理が施される。一実施形態において、処理容器12は、側壁12a、底部12b、及び、天部12cを含んでいる。側壁12aは、軸線Zが延びる方向(以下、「軸線Z方向」という)に延在する略円筒形状を有している。底部12bは、側壁12aの下端側に設けられている。側壁12aの上端部は開口している。側壁12aの上端部開口は、誘電体窓18によって閉じられている。誘電体窓18は、側壁12aの上端部と天部12cとの間に挟持されている。この誘電体窓18と側壁12aの上端部との間には封止部材SL1が介在していてもよい。封止部材SL1は、例えばOリングであり、処理容器12の密閉に寄与する。
【0012】
プラズマ処理装置10は、載置台20を更に備えている。載置台20は、処理容器12内において、誘電体窓18の下方に設けられている。載置台20には、ウエハWが載置される。この載置台20及びその周囲の構成要素の詳細については、後述する。
【0013】
図1に示すように、プラズマ処理装置10は、ヒータHT及びHSを更に備え得る。ヒータHTは、天部12c内に設けられており、アンテナ14を囲むように、環状に延在している。また、ヒータHSは、側壁12a内に設けられており、環状に延在している。
【0014】
また、プラズマ処理装置10は、処理容器12内にマイクロ波を導入するために、一実施形態では、アンテナ14、同軸導波管16、誘電体窓18、マイクロ波発生器32、チューナ34、導波管36、及び、モード変換器38を更に備え得る。マイクロ波発生器32は、GHz帯のマイクロ波、例えば2.45GHzの周波数のマイクロ波を発生する。このマイクロ波発生器32は、チューナ34、導波管36、及びモード変換器38を介して、同軸導波管16の上部に接続されている。同軸導波管16は、軸線Zに沿って延在している。
【0015】
同軸導波管16は、外側導体16a及び内側導体16bを含んでいる。外側導体16aは、軸線Z方向に延在する円筒形状を有している。この外側導体16aの中心軸線は、軸線Zに略一致している。外側導体16aの下端は、導電性の表面を有する冷却ジャケット40の上部に電気的に接続されている。内側導体16bは、外側導体16aの内側において、当該外側導体16aと同軸に設けられている。内側導体16bは、一実施形態では、軸線Z方向に延びる円筒形状を有している。この内側導体16bの下端は、アンテナ14のスロット板44に接続している。
【0016】
一実施形態において、アンテナ14は、ラジアルラインスロットアンテナである。このアンテナ14は、天部12cに形成された開口内に配置されており、誘電体窓18の上面の上に設けられている。アンテナ14は、誘電体板42及びスロット板44を含んでいる。誘電体板42は、マイクロ波の波長を短縮させるものであり、略円盤形状を有している。誘電体板42は、例えば、石英又はアルミナから構成される。誘電体板42は、スロット板44と冷却ジャケット40の下面の間に挟持されている。アンテナ14は、したがって、誘電体板42、スロット板44、及び、冷却ジャケット40の下面を含んでいる。
【0017】
図2は、スロット板の一例を示す平面図である。スロット板44は、薄板状であって、円盤状である。スロット板44の板厚方向の両面は、それぞれ平らである。円形のスロット板44の中心CSは、軸線Z上に位置している。スロット板44には、複数のスロット対44pが設けられている。複数のスロット対44pの各々は、板厚方向に貫通する二つのスロット孔44a,44bを含んでいる。スロット孔44a,44bそれぞれの平面形状は、長孔形状である。各スロット対44pにおいて、スロット孔44aの長軸が延びる方向と、スロット孔44bの長軸が延びる方向は、互いに交差又は直交している。
【0018】
図2に示す例では、複数のスロット対44pは、軸線Zを中心とする仮想円VCの内側に設けられた内側スロット対群ISPと仮想円VCの外側に設けられた外側スロット対群OSPとに大別されている。内側スロット対群ISPは、複数のスロット対44pを含んでいる。
図2に示す例では、内側スロット対群ISPは、七つのスロット対44pを含んでいる。内側スロット対群ISPの複数のスロット対44pは、中心CSに対して周方向に等間隔に配列されている。内側スロット対群ISPに含まれる複数のスロット孔44aは、当該スロット孔44aの重心がスロット板44の中心CSから半径r1の円上に位置するよう、等間隔に配列されている。また、内側スロット対群ISPに含まれる複数のスロット孔44bは、当該スロット孔44bの重心がスロット板44の中心CSから半径r2の円上に位置するよう、等間隔に配列されている。ここで、半径r2は、半径r1より大きい。
【0019】
外側スロット対群OSPは、複数のスロット対44pを含んでいる。
図2に示す例では、外側スロット対群OSPは、28個のスロット対44pを含んでいる。外側スロット対群OSPの複数のスロット対44pは、中心CSに対して周方向に等間隔に配列されている。外側スロット対群OSPに含まれる複数のスロット孔44aは、当該スロット孔44aの重心がスロット板44の中心CSから半径r3の円上に位置するよう、等間隔に配列されている。また、外側スロット対群OSPに含まれる複数のスロット孔44bは、当該スロット孔44bの重心がスロット板44の中心CSから半径r4の円上に位置するよう、等間隔に配列されている。ここで、半径r3は、半径r2よりも大きく、半径r4は、半径r3よりも大きい。
【0020】
また、内側スロット対群ISP及び外側スロット対群OSPのスロット孔44aの各々は、中心CSとその重心とを結ぶ線分に対して、その長軸が同一の角度を有するように、形成されている。また、内側スロット対群ISP及び外側スロット対群OSPのスロット孔44bの各々は、中心CSとその重心とを結ぶ線分に対して、その長軸が同一の角度を有するように、形成されている。
【0021】
図1の説明に戻る。誘電体窓18は、略円盤形状を有し、石英又はアルミナといった誘電体から構成されている。誘電体窓18の上面18u上には、スロット板44が設けられている。
【0022】
誘電体窓18の中央には、貫通孔18hが形成されている。貫通孔18hの上側部分は、後述する中央導入部50のインジェクタ50bが収容される空間18sとなり、下側部分は、後述する中央導入部50の中央導入口18iとなる。なお、誘電体窓18の中心軸線は、軸線Zと一致している。誘電体窓の上面18uと反対側の面、即ち下面18bは、処理空間Sに接しており、プラズマを生成する側の面となる。
【0023】
マイクロ波発生器32により発生されたマイクロ波は、同軸導波管16を通って、誘電体板42に伝播され、スロット板44のスロット孔44a及び44bから誘電体窓18を介して、処理容器12の内部(つまり、処理空間S)に供給される。
【0024】
また、プラズマ処理装置10は、中央導入部50及び周辺導入部52を備えている。中央導入部50は、導管50a、インジェクタ50b、及び中央導入口18iを含んでいる。導管50aは、同軸導波管16の内側導体16bの内孔に通されている。また、導管50aの端部は、誘電体窓18が軸線Zに沿って画成する空間18s内まで延在している。この空間18s内且つ導管50aの端部の下方には、インジェクタ50bが収容されている。インジェクタ50bには、軸線Z方向に延びる複数の貫通孔が設けられている。また、誘電体窓18は、中央導入口18iを画成している。中央導入口18iは、空間18sの下方に連続し、且つ軸線Zに沿って延びている。かかる構成の中央導入部50は、導管50aを介してインジェクタ50bにガスを供給し、インジェクタ50bから中央導入口18iを介してガスを噴射する。このように、中央導入部50は、軸線Zに沿って誘電体窓18の直下にガスを噴射する。即ち、中央導入部50は、電子温度が高いプラズマ生成領域にガスを導入する。
【0025】
周辺導入部52は、複数の周辺導入口52iを含んでいる。複数の周辺導入口52iは、主としてウエハWのエッジ領域にガスを供給する。複数の周辺導入口52iは、ウエハWのエッジ領域に向けて開口している。複数の周辺導入口52iは、中央導入口18iよりも下方、且つ、載置台20の上方において周方向に沿って配列されている。即ち、複数の周辺導入口52iは、誘電体窓18の直下よりも電子温度の低い領域(プラズマ拡散領域)において軸線Zを中心として環状に配列されている。この周辺導入部52は、電子温度の低い領域からウエハWに向けてガスを供給する。したがって、周辺導入部52から処理空間Sに導入されるガスの解離度は、中央導入部50から処理空間Sに供給されるガスの解離度よりも抑制される。
【0026】
中央導入部50には、第1の流量制御ユニット群FCG1を介して第1のガスソース群GSG1が接続されている。また、周辺導入部52には、第2の流量制御ユニット群FCG2を介して第2のガスソース群GSG2が接続されている。第1のガスソース群GSG1は、複数の第1のガスソースを含んでおり、第1の流量制御ユニット群FCG1は、複数の第1の流量制御ユニットを含んでいる。複数の第1のガスソースはそれぞれ、複数の第1の流量制御ユニットを介して、共通ガスラインGL1に接続されている。この共通ガスラインGL1は、中央導入部50に接続されている。なお、複数の第1の流量制御ユニットの各々は、例えば、二つのバルブと、当該二つのバルブ間に設けられた流量制御器を含んでいる。流量制御器は、例えば、マスフローコントローラである。
【0027】
第2のガスソース群GSG2は、複数の第2のガスソースを含んでおり、第2の流量制御ユニット群FCG2は、複数の第2の流量制御ユニットを含んでいる。複数の第2のガスソースはそれぞれ、複数の第2の流量制御ユニットを介して、共通ガスラインGL2に接続されている。この共通ガスラインGL2は、周辺導入部52に接続されている。なお、複数の第2の流量制御ユニットの各々は、例えば、二つのバルブと、当該二つのバルブ間に設けられた流量制御器を含んでいる。流量制御器は、例えば、マスフローコントローラである。
【0028】
このように、プラズマ処理装置10では、複数の第1のガスソース及び複数の第1の流量制御ユニットが中央導入部50専用に設けられており、これら複数の第1のガスソース及び複数の第1の流量制御ユニットとは独立した複数の第2のガスソース及び複数の第2の流量制御ユニットが周辺導入部52専用に設けられている。したがって、中央導入部50から処理空間Sに導入される処理ガスに含まれる一以上のガスの種類、中央導入部50から処理空間Sに導入される処理ガスに含まれる一以上のガスの流量を独立して制御することができる。また、周辺導入部52から処理空間Sに導入される処理ガスに含まれる一以上のガスの種類、周辺導入部52から処理空間Sに導入される処理ガスに含まれる一以上のガスの流量を独立して制御することができる。
【0029】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、
図1に示すように、制御部Cntを更に備え得る。制御部Cntは、プログラム可能なコンピュータ装置といった制御器であり得る。制御部Cntは、レシピに基づくプログラムに従ってプラズマ処理装置10の各部を制御し得る。例えば、制御部Cntは、第1の流量制御ユニット群FCG1の各流量制御ユニットに制御信号を送出して、中央導入部50に供給するガス種及びガスの流量を調整することができる。また、制御部Cntは、第2の流量制御ユニット群FCG2の各流量制御ユニットに制御信号を送出して、周辺導入部52に供給するガス種及びガスの流量を調整することができる。また、制御部Cntは、マイクロ波のパワー、RFバイアスのパワー及びON/OFF、並びに、処理容器12内の圧力を制御するよう、マイクロ波発生器32、高周波電源RFG、排気装置30に制御信号を供給し得る。
【0030】
一実施形態において、周辺導入部52は、環状の管52pを更に含んでいる。この管52pには、複数の周辺導入口52iが形成されている。環状の管52pは、例えば、石英から構成され得る。
図1に示すように、環状の管52pは、一実施形態においては、側壁12aの内壁面に沿って設けられている。換言すると、環状の管52pは、誘電体窓18の下面とウエハWとを結ぶ経路上には配置されていない。したがって、環状の管52pは、プラズマの拡散を阻害しない。また、環状の管52pが側壁12aの内壁面に沿って設けられているので、当該環状の管52pのプラズマによる消耗が抑制され、当該環状の管52pの交換頻度を減少させることが可能となる。さらに、環状の管52pは、ヒータによる温度制御が可能な側壁12aに沿って設けられているので、周辺導入部52から処理空間Sに導入されるガスの温度の安定性を向上させることが可能となる。
【0031】
また、一実施形態においては、複数の周辺導入口52iは、ウエハWのエッジ領域に向けて開口している。即ち、複数の周辺導入口52iは、ウエハWのエッジ領域に向けてガスを噴射するよう、軸線Zに直交する平面に対して傾斜している。このように周辺導入口52iが、ウエハWのエッジ領域に向けて傾斜するように開口しているので、当該周辺導入口52iから噴射されたガスの活性種は、ウエハWのエッジ領域に直接的に向かう。これにより、ガスの活性種をウエハWのエッジに失活させずに供給することが可能となる。その結果、ウエハWの径方向における各領域の処理速度のばらつきを低減することが可能となる。
【0032】
次に、
図3を参照して、載置台20、及び、載置台20周囲の構成について詳細に説明する。
図3は、
図1に示す載置台及び載置台周囲の構成を拡大して示す図である。載置台20は、支持部材SP1、下部電極LE、フォーカスリングFR、及び、静電チャックESCを有する。下部電極LEは、第1の電極部材22a及び第2の電極部材22bを有する。
【0033】
支持部材SP1は、処理容器12の底部12bに設けられ、下部電極LEの第1の電極部材22aを支持する。支持部材SP1は、誘電体窓18から処理容器12の内部(つまり、処理空間S)に供給されて、フォーカスリングFR側から支持部材SP1に伝播したマイクロ波を透過させる。
図4は、一実施形態に係る支持部材を処理空間側から見た平面図である。支持部材SP1は、石英等の誘電体製であり、
図4に示すように、略円筒状に形成されている。支持部材SP1は、誘電体部材の一例である。支持部材SP1は、処理容器12の底部12bに接する基部65と、基部65に連続し、下部電極LEの第1の電極部材22aを支持する本体66とを有する。支持部材SP1の基部65には、複数の挿入部71が形成されている。各挿入部71は、例えば、サグリ部又は切欠部等である。一実施形態では、複数の挿入部71は、支持部材SP1の円周方向に沿ってランダムな間隔で配置されている。言い換えれば、複数の挿入部71は、支持部材SP1の中心軸に沿う方向から見た場合に、回転対称とならないように配置されている。
【0034】
図3を再び参照する。支持部材SP1の複数の挿入部71の各々には、ネジ部材72が挿入される。ネジ部材72は、金属等の導電体で形成されており、支持部材SP1と、被連結部材である処理容器12の底部12bとを連結する。ネジ部材72は、第1の連結部材の一例である。
【0035】
支持部材SP1の複数の挿入部71の各々は、キャップ73によって塞がれている。キャップ73は、ネジ部材72を覆うように支持部材SP1の挿入部71に装着される。キャップ73は、誘電体製であり、支持部材SP1の誘電率と略同一の誘電率を有する。一実施形態では、キャップ73は、支持部材SP1を構成する誘電体と同一の誘電体により形成され、支持部材SP1の誘電率と同一の誘電率を有する。キャップ73の誘電率と支持部材SP1の誘電率とが略同一である場合、支持部材SP1を透過したマイクロ波が支持部材SP1とキャップ73との境界面に到達した場合であっても、支持部材SP1とキャップ73との境界面におけるマイクロ波の反射が抑制される。これにより、マイクロ波の反射に起因した載置台20近傍の定在波の発生が抑制される。
【0036】
第1の電極部材22aは、略円盤状の部材である。また、第1の電極部材22aは、導電性の部材(導電体)により形成され、例えば、アルミニウムから構成されている。第1の電極部材22aの中心軸線は、軸線Zに略一致している。この第1の電極部材22aは、支持部材SP1によって支持されている。
【0037】
第2の電極部材22bは、第1の電極部材22a上に設けられている。第2の電極部材22bは、略円盤状の部材である。また、第2の電極部材22bは、導電性の部材(導電体)により形成され、例えば、アルミニウムから構成されている。この第2の電極部材22bは、第1の電極部材22aに導通している。また、第2の電極部材22bの中心軸線は軸線Zに略一致している。一実施形態において、第2の電極部材22bは、大径部22c及び小径部22dを含んでいる。大径部22cは、小径部22dの下側において当該小径部22dに連続している。また、大径部22cの直径は、小径部22dよりも大きくなっており、第1の電極部材22aの直径と略等しくなっている。第2の電極部材22bは、誘電体窓18から処理容器12の内部(つまり、処理空間S)に供給されて、フォーカスリングFR側から第2の電極部材22bに伝播したマイクロ波を反射させる。第2の電極部材22bの小径部22dには、複数の挿入部81が形成されている。各挿入部81は、例えば、サグリ部又は切欠部等である。一実施形態では、複数の挿入部81は、第2の電極部材22bの円周方向に沿ってランダムな間隔で配置されている。言い換えれば、複数の挿入部81は、第2の電極部材22bの中心軸に沿う方向から見た場合に、回転対称とならないように配置されている。
【0038】
第2の電極部材22bの複数の挿入部81の各々には、ネジ部材82が挿入される。ネジ部材82は、金属等の導電体で形成されており、第2の電極部材22bと、被連結部材である第1の電極部材22aとを連結する。ネジ部材82は、第2の連結部材の一例である。
【0039】
第2の電極部材22bの複数の挿入部81の各々は、キャップ83によって塞がれている。キャップ83は、ネジ部材82を覆うように第2の電極部材22bの複数の挿入部81の各々に装着される。キャップ83は、導電体製である。一実施形態では、キャップ83は、第2の電極部材22bを構成する導電体と同一の導電体により形成されている。第2の電極部材22bの複数の挿入部81の各々に導電体製のキャップ83が装着されることにより、ネジ部材82に向かうマイクロ波がキャップ83によって遮断される。このため、マイクロ波がネジ部材82によって意図しない方向に反射される事態が回避される。これにより、マイクロ波の反射に起因した載置台20近傍の定在波の発生が抑制される。
【0040】
また、第1の電極部材22aには、給電棒PFR及びマッチングユニットMUを介して、高周波電源RFGが電気的に接続されている。高周波電源RFGは、ウエハWに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数、例えば、13.65MHzの高周波バイアス電力を出力する。マッチングユニットMUは、高周波電源RFG側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、処理容器12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容している。この整合器の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0041】
第2の電極部材22bの内部には、冷媒室RCが設けられている。冷媒室RCは、軸線Z周りに螺旋状に延在している。この冷媒室RCには、チラーユニットから配管PP1,PP2を介して所定の温度の冷媒、例えば、冷却水が循環するように供給される。このように循環される冷媒によって、静電チャックESC上のウエハWの温度が、制御され得る。さらに、伝熱ガス供給部からの伝熱ガス、例えば、Heガスが供給管PP3を介して静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給される。
【0042】
静電チャックESCは、第2の電極部材22bの上面の上に設けられている。静電チャックESCは、略円盤形状を有しており、その中心軸線は実質的に軸線Zに一致している。静電チャックESCの上面は、ウエハWを載置するための載置領域MRを提供している。載置領域MRは略円形であり、その中心は実質的に軸線Z上に位置している。この静電チャックESCは、ウエハWを静電吸着力で保持する。そのため、静電チャックESCは、誘電体膜の間に挟まれた電極膜EFを含んでいる。電極膜EFには、直流電源DSがスイッチSWを介して電気的に接続されている。静電チャックESCは、直流電源DSから印加される直流電圧により発生するクーロン力によってその上面にウエハWを吸着し、当該ウエハWを保持することができる。
【0043】
また、静電チャックESCの誘電体膜内には、ヒータHC及びヒータHEが設けられている。ヒータHC及びヒータHEは、例えば、電熱線から構成されている。ヒータHCは、電極膜EFの下方、且つ、上述した載置領域MRの中央部分の下方、即ち軸線Zに交差する領域に設けられている。また、ヒータHEは、電極膜EFの下方に設けられており、ヒータHCを囲むように延在している。
【0044】
ヒータHCには、フィルタユニットFU1を介してヒータ電源HP1が接続されている。ヒータ電源HP1は、ヒータHCに交流電力を供給する。フィルタユニットFU1は、高周波電源RFGからの高周波電力がヒータ電源HP1に流入することを抑制する。フィルタユニットFU1は、例えば、LCフィルタから構成されている。また、ヒータHEには、フィルタユニットFU2を介してヒータ電源HP2が接続されている。ヒータ電源HP2は、ヒータHEに交流電力を供給する。フィルタユニットFU2は、高周波電源RFGからの高周波電力がヒータ電源HP2に流入することを抑制する。フィルタユニットFU2は、例えば、LCフィルタから構成されている。かかるフィルタユニットFU1及びFU2により、高周波電源RFGからの高周波電力がヒータ電源に流入して消費されることが抑制される。
【0045】
また、静電チャックESCの径方向外側には、フォーカスリングFRが設けられている。フォーカスリングFRは、静電チャックESCを囲むように、静電チャックESCのエッジ及びウエハWのエッジに沿って環状に延在している。フォーカスリングFRは、石英といった誘電体から構成されている。フォーカスリングFRは、ウエハWのエッジの外側におけるシース電位を調整するために設けられており、ウエハWのプラズマ処理の面内均一性に寄与する。
【0046】
フォーカスリングFRの下方には、筒状部TP1が設けられている。筒状部TP1は、アルミナといった誘電体から構成されている。筒状部TP1は、下部電極LEの外周面に沿って延在している。一実施形態において、筒状部TP1は、支持部材SP1の上側部分の外周面、第1の電極部材22aの外周面、及び、第2の電極部材22bの大径部22cの外周面に沿って延在している。
【0047】
筒状部TP1とフォーカスリングFRとの間には、環状部APが設けられている。環状部APは、アルミナといった誘電体から構成されている。環状部APは、第2の電極部材22bの小径部22dの外周面に沿って環状に延在している。この環状部APの上面は、フォーカスリングFRの下面に接している。一実施形態において、環状部APの上面は、上方に突出した凸部を含んでいる。環状部APの凸部は、環状部APの上面の内縁と外縁との間の中間において、環状に延在している。一方、フォーカスリングFRの下面は、環状部APの凸部が嵌合する凹部を画成している。したがって、環状部AP上にフォーカスリングFRが搭載されることで、当該フォーカスリングFRの位置が決定される。
【0048】
また、環状部APの下面には凹部が形成されている。この凹部は、環状部APの下面の内縁と外縁の間の中間において環状に延在している。
【0049】
また、環状部APの下方には、筒状部TP2が設けられている。筒状部TP2は、略円筒形状を有している。筒状部TP2は、筒状部TP1の外周に沿って延在している。一実施形態において、筒状部TP2は、筒状部TP1の外周面のうち下端から軸線Z方向の中間位置までの領域に接している。また、筒状部TP2は、支持部材SP1の下側部分の外周面にも接している。筒状部TP2は、導電性の材料、例えば、アルミニウムから構成されている。一実施形態では、筒状部TP2の表面には、イットリア(Y
2O
3)製の膜が形成されていてもよい。或いは、筒状部TP2の表面には、酸化処理が施されていてもよい。
【0050】
筒状部TP2の外周面及び環状部APの外周面から側壁12aまでの間には、排気路VLが形成されている。排気路VLは、底部12bまで延びており、当該底部12bに取り付けられた排気管28に接続している。この排気管28には、排気装置30が接続されている。排気装置30は、圧力調整器、及びターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有している。この排気装置30を動作させることにより、載置台20の外周から排気路VLを介してガスを排気することが、また、処理容器12内の処理空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。
【0051】
排気路VLの軸線Z方向の中間には、バッフル板BPが設けられている。バッフル板BPは、軸線Zを中心として環状に延在する板状の部材である。バッフル板BPは、ネジ部材SRによって筒状部TP2に連結されている。このバッフル板BPには、複数の貫通孔が形成されている。これら貫通孔は、軸線Z方向にバッフル板BPを貫通している。
【0052】
このプラズマ処理装置10では、マイクロ波がフォーカスリングFR、環状部AP及び筒状部TP1を介して支持部材SP1に伝播する。支持部材SP1に伝播したマイクロ波は、支持部材SP1を透過し、支持部材SP1とキャップ73との境界面に到達する。上述したように、キャップ73の誘電率と支持部材SP1の誘電率とは、略同一である。このため、マイクロ波が支持部材SP1とキャップ73との境界面に到達した場合であっても、支持部材SP1とキャップ73との境界面におけるマイクロ波の反射が抑制される。これにより、マイクロ波の反射に起因した載置台20近傍の定在波の発生が抑制される。その結果、載置台20近傍の電界強度の均一性を保つことができる。
【0053】
また、プラズマ処理装置10では、マイクロ波がフォーカスリングFRを介して第2の電極部材22bに伝播する。第2の電極部材22bに伝播したマイクロ波は、第2の電極部材22bによって反射される。上述したように、第2の電極部材22bの複数の挿入部81の各々に導電体製のキャップ83が装着されている。これにより、ネジ部材82に向かうマイクロ波がキャップ83によって遮断される。このため、マイクロ波がネジ部材82によって意図しない方向に反射される事態が回避される。これにより、マイクロ波の反射に起因した載置台20近傍の定在波の発生が抑制される。その結果、載置台20近傍の電界強度の均一性をより確実に保つことができる。
【0054】
以上のように一実施形態によれば、支持部材SP1の誘電率と略同一の誘電率を有する誘電体製のキャップ73が支持部材SP1の複数の挿入部71の各々に装着されている。このため、マイクロ波が支持部材SP1とキャップ73との境界面に到達した場合であっても、支持部材SP1とキャップ73との境界面におけるマイクロ波の反射が抑制される。これにより、マイクロ波の反射に起因した載置台20近傍の定在波の発生が抑制される。その結果、載置台20近傍の電界強度の均一性を保つことができる。
【0055】
また、一実施形態によれば、第2の電極部材22bの複数の挿入部81の各々に導電体製のキャップ83が装着されている。これにより、ネジ部材82に向かうマイクロ波がキャップ83によって遮断される。このため、マイクロ波がネジ部材82によって意図しない方向に反射される事態が回避される。これにより、マイクロ波の反射に起因した載置台20近傍の定在波の発生が抑制される。その結果、載置台20近傍の電界強度の均一性をより確実に保つことができる。
【0056】
次に、
図5〜
図8を用いて、一実施形態に係るプラズマ処理装置10による効果(シミュレーション結果)について説明する。ここでは、一実施形態に係るプラズマ処理装置10による効果(シミュレーション結果)を説明する前に、一実施形態におけるシミュレーションモデルについて説明する。
図5は、一実施形態におけるシミュレーションモデルを説明するための図である。
【0057】
図5に示すシミュレーションモデル100は、ブロック101〜105を含む。ブロック101は、支持部材SP1に対応する。ブロック102は、支持部材SP1によって囲まれる空間に対応する。ブロック103は、筒状部TP1に対応する。ブロック104は、キャップ73に対応する。ブロック105は、キャップ73とネジ部材72との間の空間に対応する。また、シミュレーションモデル100を用いたシミュレーションでは、周波数が2.45GHzであり、電力が1kWであるマイクロ波がシミュレーションモデル100の上部から投入されたものとする。
【0058】
図6及び
図7は、一実施形態に係るプラズマ処理装置による効果(キャップの誘電率の違いに応じた電界強度のシミュレーション結果)を示す図である。
図6は、
図5に示したシミュレーションモデル100を紙面に垂直な方向から見た場合の電界強度のシミュレーション結果である。
図7は、
図5に示したシミュレーションモデル100を紙面の上方向から見た場合の電界強度のシミュレーション結果である。
【0059】
また、
図6及び
図7において、「実施例」は、一実施形態に係るプラズマ処理装置10を用いた場合、すなわち、キャップ73が支持部材SP1の誘電率と同一の誘電率を有する場合の電界強度のシミュレーション結果を示している。すなわち、「実施例」では、キャップ73の誘電率及び支持部材SP1の誘電率として、石英の誘電率が用いられた。これに対して、「比較例」は、キャップ73が支持部材SP1の誘電率とは異なる誘電率を有する場合の電界強度のシミュレーション結果を示している。すなわち、「比較例」では、支持部材SP1の誘電率として、石英の誘電率が用いられ、キャップ73の誘電率として、耐熱性の樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の誘電率が用いられた。
【0060】
図6及び
図7のシミュレーション結果から明らかなように、実施例では、比較例と比較して、支持部材SP1とキャップ73との境界面近傍の電界強度の最大値が低減された。すなわち、キャップ73の誘電率と支持部材SP1の誘電率とが同一である場合、支持部材SP1とキャップ73との境界面近傍のマイクロ波の反射が抑制されることが分かった。
【0061】
図8は、一実施形態に係るプラズマ処理装置による効果(支持部材の周方向に沿った電界強度の分布)を示す図である。
図8の電界強度の分布は、
図7のシミュレーション結果における筒状部TP1の電界強度を、支持部材SP1の円周方向に沿った複数の角度位置の各々においてプロットすることにより、得られる。
図8において、横軸は、支持部材SP1の円周方向に沿った角度を示し、縦軸は、筒状部TP1の電界強度を示す。
【0062】
図8から明らかなように、実施例では、比較例と比較して、支持部材SP1の円周方向に沿った筒状部TP1の電界強度のばらつきが低減された。すなわち、複数の挿入部71が、支持部材SP1の中心軸に沿う方向から見た場合に、回転対称とならないように配置される場合であっても、キャップ73の誘電率と支持部材SP1の誘電率とが同一である場合、載置台20近傍の部材である筒状部TP1の電界強度の均一性を保つことができることが分かった。
【0063】
なお、上記実施形態では、プラズマ励起用の電磁波としてマイクロ波が用いられたが、開示技術はこれには限定されない。例えば、プラズマ励起用の電磁波として、マイクロ波よりも波長が長い電磁波や、マイクロ波よりも波長が短い電磁波が用いられても良い。