特許第6555646号(P6555646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555646
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】車両運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20190729BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20190729BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B60W40/08
   G08G1/00 D
   G08G1/16 C
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-68379(P2017-68379)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-167774(P2018-167774A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 由佳
(72)【発明者】
【氏名】富井 圭一
(72)【発明者】
【氏名】栃岡 孝宏
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−213823(JP,A)
【文献】 特開2015−022537(JP,A)
【文献】 特開2016−170688(JP,A)
【文献】 特開2015−110417(JP,A)
【文献】 特表2007−512989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 50/16
G08G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周囲の交通環境と車両により運転者へ提供されている運転支援とに基づいて、前記交通環境において前記車両を運転するために前記運転者に要求される要求運転能力を推定値として推定する要求運転能力推定部と、
前記車両の運転履歴データ、及び、前記運転者の身体状態及び/又は精神状態に基づいて、前記運転者の現在運転能力を推定値として推定する現在運転能力推定部と、
前記現在運転能力の推定値が前記要求運転能力の推定値よりも低い場合に、前記要求運転能力を低減するための低減処理を実行する変更部と、を備え、
前記変更部は、前記要求運転能力と前記現在運転能力との差が同じであっても、前記現在運転能力が所定閾値以上のときと比べて前記現在運転能力が前記所定閾値より低いときの方が、前記要求運転能力の低減度合いを小さくする、車両運転支援システム。
【請求項2】
前記要求運転能力推定部は、所定のセンサの情報に基づいて車両周囲の交通環境要因(Dt)の評価値を算出すると共に、運転支援に関する情報に基づいて運転者へ提供されている運転支援要因(Da)の評価値を算出し、前記車両周囲の交通環境要因(Dt)の評価値に対する前記運転支援要因(Da)の評価値の差分値を前記要求運転能力の推定値とし、
前記現在運転能力推定部は、車両の運転履歴データに基づいて運転者の運転技量要因(Ps)の評価値を算出すると共に、前記運転者の身体状態及び/又は精神状態を分析または検出するための所定のセンサの情報に基づいて運転者の身体要因(Pp)及び/又は精神要因(Pm)の分析値を算出し、前記運転技量要因(Ps)の評価値に対する前記身体要因(Pp)及び/又は精神要因(Pm)の分析値の差分値を前記現在運転能力の推定値とする、請求項1に記載の車両運転支援システム。
【請求項3】
前記要求運転能力推定部により算出される前記運転支援要因(Da)は、運転者への所定の情報提示装置による提示情報を評価した情報関連要因(Di)及び/又は車両において作動中の自動運転支援モードの情報を評価した自動運転要因(Dd)を有する、請求項2に記載の車両運転支援システム。
【請求項4】
前記変更部は、前記現在運転能力の推定値が前記要求運転能力の推定値よりも低い場合に、所定の情報関連運転支援に関する提示情報の増減の度合いを規定した変更テーブルに基づいて、前記運転者による前記交通環境の状況把握を促進させる低減処理を実行する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両運転支援システム。
【請求項5】
前記変更部は、
前記現在運転能力が前記所定閾値以上の場合、前記低減処理として、1又は複数の自動運転制御システムを作動させる自動運転処理を実行し、
前記現在運転能力が前記所定閾値より低い場合、前記低減処理として、前記運転者による前記交通環境の状況把握を促進させる促進処理を実行する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両運転支援システム。
【請求項6】
前記促進処理は、車載情報提示装置による前記運転者への情報提示量を低減する情報量低減処理を含む、請求項に記載の車両運転支援システム。
【請求項7】
前記変更部は、前記現在運転能力が前記所定閾値より低い場合、前記促進処理のうち、視線誘導装置により前記運転者の視線方向を車両前方の所定位置付近へ誘導する視線誘導処理を優先的に実行する、請求項又はに記載の車両運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転支援システムに係り、特に、運転負荷と運転技量とに応じた運転支援を提供可能な車両運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外部環境により運転者に要求される環境難易度に比べて運転者の運転技量が低い場合に、運転操作のアシスト量(例えば、駐車支援のアシスト量)を増加させる運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−110417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単に運転支援のアシスト量を増加させるだけでは、運転者の運転技量が向上しないという問題があった。特に運転技量が低い運転者に対して自動運転支援を提供することは、運転機会を奪うことになるため、運転技量の向上が抑制されるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、運転支援を通じて運転者の運転技量を向上させることが可能な運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の車両運転支援システムは、車両周囲の交通環境と車両により運転者へ提供されている運転支援とに基づいて、交通環境において車両を運転するために運転者に要求される要求運転能力を推定値として推定する要求運転能力推定部と、車両の運転履歴データ、及び、運転者の身体状態及び/又は精神状態に基づいて、運転者の現在運転能力を推定値として推定する現在運転能力推定部と、現在運転能力の推定値が要求運転能力の推定値よりも低い場合に、要求運転能力を低減するための低減処理を実行する変更部と、を備え、変更部は、要求運転能力と現在運転能力との差が同じであっても、現在運転能力が所定閾値以上のときと比べて現在運転能力が所定閾値より低いときの方が、要求運転能力の低減度合いを小さくする。
【0007】
このように構成された本発明によれば、運転者の現在運転能力が所定閾値以上のときよりも、現在運転能力が所定閾値より低いときの方が、要求運転能力の低減度合いが抑えられる。これにより、運転技量が低いと推定される運転者は、運転支援がやや不十分な状況下で運転することになり、運転技量の向上を促進させることができる。
【0008】
また、本発明において好ましくは、要求運転能力推定部は、所定のセンサの情報に基づいて車両周囲の交通環境要因(Dt)の評価値を算出すると共に、運転支援に関する情報に基づいて運転者へ提供されている運転支援要因(Da)の評価値を算出し、車両周囲の交通環境要因(Dt)の評価値に対する運転支援要因(Da)の評価値の差分値を要求運転能力の推定値とし、現在運転能力推定部は、車両の運転履歴データに基づいて運転者の運転技量要因(Ps)の評価値を算出すると共に、運転者の身体状態及び/又は精神状態を分析または検出するための所定のセンサの情報に基づいて運転者の身体要因(Pp)及び/又は精神要因(Pm)の分析値を算出し、運転技量要因(Ps)の評価値に対する身体要因(Pp)及び/又は精神要因(Pm)の分析値の差分値を前記現在運転能力の推定値とする。
また、本発明において好ましくは、要求運転能力推定部により算出される運転支援要因(Da)は、運転者への所定の情報提示装置による提示情報を評価した情報関連要因(Di)及び/又は車両において作動中の自動運転支援モードの情報を評価した自動運転要因(Dd)を有する。
また、本発明において好ましくは、変更部は、現在運転能力の推定値が要求運転能力の推定値よりも低い場合に、所定の情報関連運転支援に関する提示情報の増減の度合いを規定した変更テーブルに基づいて、運転者による交通環境の状況把握を促進させる低減処理を実行する。
また、本発明において好ましくは、変更部は、現在運転能力が所定閾値以上の場合、低減処理として、1又は複数の自動運転制御システムを作動させる自動運転処理を実行し、現在運転能力が所定閾値より低い場合、低減処理として、運転者による交通環境の状況把握を促進させる促進処理を実行する。
このように構成された本発明によれば、運転者の運転技量が高い場合には、運転技量の向上を目的とせずに自動運転処理により要求運転能力を引き下げ、運転者の運転技量が低い場合には、運転者自らによる交通環境の状況把握を促進して運転技量の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、促進処理は、車載情報提示装置による運転者への情報提示量を低減する情報量低減処理を含む。
このように構成された本発明によれば、車載情報提示装置による情報提示量を低減することにより、運転者が運転中に瞬間的に処理しなければならない情報処理量が低減される。これにより、例えば、優先順位の高い情報に絞って情報を提示することにより、運転者の状況把握が促進されるので、要求運転能力を引き下げることができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、変更部は、現在運転能力が所定閾値より低い場合、促進処理のうち、視線誘導装置により運転者の視線方向を車両前方の所定位置付近へ誘導する視線誘導処理を優先的に実行する。
現在運転能力が比較的低い運転者は、視線方向が車両近傍に向いていることが多く、視線方向の誘導が要求運転能力の低減に有効である。そこで本発明では、現在運転能力が低い運転者に対しては、視線誘導処理を優先的に選択する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の運転支援制御システムによれば、運転支援を通じて運転者の運転技量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による交通環境,運転者,運転支援の関係を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態による運転ディマンドと運転パフォーマンスとの関係を説明するグラフである。
図3】本発明の実施形態による運転支援制御システムの構成図である。
図4】本発明の実施形態による変更テーブル(運転ディマンド)の説明図である。
図5】本発明の実施形態による変更テーブル(運転パフォーマンス)の説明図である。
図6】本発明の実施形態によるナビゲーション地図の表示方式の変更の説明図である。
図7】本発明の実施形態による視線誘導処理の説明図である。
図8】本発明の実施形態による運転支援処理の説明図である。
図9】本発明の実施形態による運転支援処理のフローチャートである。
図10】本発明の実施形態の改変例に係る運転支援処理の説明図である。
図11】本発明の実施形態の改変例に係る運転支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両運転支援システムについて説明する。まず、図1図2を参照して、車両運転支援システムで用いられる運転ディマンド及び運転パフォーマンスについて説明する。図1は運転者,交通環境,運転支援の関係を示す説明図、図2は運転ディマンドと運転パフォーマンスとの関係を説明するグラフである。
【0015】
図1に示すように、運転者は交通環境に適応するように車両を運転する必要がある。交通環境は、種々の要素が関係しており、例えば、交通量(交通量の多い交差点等),道路構造(道路幅,道路交差の複雑さ等),天候(濡れた路面等),交通参加者(子供飛び出し等),走行状態(他車両との車間距離等),車両構造(AT車/MT車の相違,車両の大きさ等),車両性能(ブレーキの効き易さ等)が関係している。したがって、交通環境の種々の要素に応じて、運転者は、交通環境に適応するだけの運転能力が要求される(慎重なハンドル操作,飛び出しに注意,他車の動きへの注意,死角への注意等)。
【0016】
また、運転者は、複数の車載装置から種々の運転支援を受ける。運転支援には、大別して情報提示に関する運転支援(「情報関連運転支援」)と、自動運転制御システムによる運転支援(「自動運転支援」)とが含まれる。これらの運転支援は、交通環境により要求される運転能力を軽減する。本実施形態では、運転支援による軽減分を考慮して、実際に交通環境に起因して要求される運転能力を運転ディマンドD(要求運転能力)と定義する。
運転ディマンドD=交通環境要因Dt−運転支援要因Da
運転支援要因Da=情報関連要因Di+自動運転要因Dd
【0017】
一方、運転者は、このような交通環境に適応して車両を運転するための運転技量(技)を有している。しかしながら、運転者の身体状態(体)や精神状態(心)に応じて、この運転技量は必ずしも最大限発揮されない。本実施形態では、運転技量,身体状態及び精神状態に基づいて、運転者が実際に現時点で発揮できる運転能力を運転パフォーマンスP(現在運転能力)と定義する。
運転パフォーマンスP=運転技量要因Ps−身体要因Pp−精神要因Pm
【0018】
図2は、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPとの関係を示している。領域A1(例えば、点B1)では、運転ディマンドDの方が運転パフォーマンスPよりも大きい(P<D)。これらの差が大きいほど運転負荷が大きい。このため、運転者は運転を難しいと感じるため、不安感が生じ易くなる。また、領域A1では、運転者はストレスを受けるため、疲労感が生じ易い。このため、長時間の運転には不向きである。
【0019】
また、領域A2(例えば、点B2)では、運転パフォーマンスPの方が運転ディマンドDよりも大きい(P>D)。これらの差が大きいほど運転負荷が小さい。このため、運転者は運転を易しいと感じるため、物足りなさや退屈感が生じ易くなる。また、退屈さを感じると、運転者はわき見等のセカンドタスクを行ったり、注意散漫になり運転への集中力が低下したり、運転に対する意欲が低下したりして、運転パフォーマンスが低下するおそれがある。
【0020】
一方、直線L上及びその周辺領域A0では(例えば、点B0)、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPとが釣り合った状態となる(理想状態;P=D)。釣り合い状態では、運転操作に対する楽しさや安心感が生じ、車両に対する信頼感を醸成し易くなる。
【0021】
したがって、本実施形態では、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDとの関係点(運転者と交通環境との関係)が、領域A1又は領域A2に位置すると推定される場合、これを領域A0内に移動させるようにD(要すればP)を調整するように構成されている。具体的には、点B1(P1<D1)の場合は、Dを低減する処理及びPを増加する処理が実行され、点B2(P2>D2)の場合は、Dを増加する処理が実行される。なお、Pを減少する処理も可能である。
【0022】
運転ディマンドDの低減処理は、主に情報関連要因Diと自動運転要因Ddを増加する処理である。逆に、運転ディマンドDの増加処理は、主に情報関連要因Diと自動運転要因Ddを低減する処理である。運転パフォーマンスPの増加処理は、身体要因Ppと精神要因Pmによる減少分を低減する処理である(Pp及びPmを小さくする)。
【0023】
次に、図3を参照して、車両運転支援システムの構成について説明する。図3は車両運転支援システムの構成図である。
図3に示すように、車両運転支援システムSは、車載コントローラ(ECU)1と、車両センサ3と、情報提示装置5と、車両駆動制御システム7を備えている。
【0024】
車載コントローラ1は、制御部11,記憶部13,通信部(図示せず)等を備え、車両センサ3から取得したセンサデータに基づいて、情報提示装置5及び車両駆動制御システム7を制御するように構成されている。例えば、車載コントローラ1は、アクセル開度(センサデータ)に基づき、車両駆動制御システム7を介してエンジン出力を制御する。
【0025】
車両センサ3は、種々の情報取得装置からなる。車両センサ3には、車内カメラ,生体センサ,マイク,車外カメラ,レーダ,ナビゲーション装置,車両挙動センサ,運転者操作検知センサ,車車間通信器,車両−インフラ間通信器等が含まれる。
【0026】
車内カメラは、車両内の運転者や他の乗員を撮像し、車内画像データを出力する。
生体センサは、運転者の心拍,脈拍,発汗,脳波等を計測し、生体データを出力する。
マイクは、運転者や他の乗員の音声を取集し、音声データを出力する。
車外カメラは、車両の前方,側方,後方の画像を撮像し、車外画像データを出力する。
【0027】
レーダは、車両の前方,側方,後方に向けて電波,音波又はレーザ光を照射し、車両の周囲の車外物体(先行車,他車両,歩行者,地上固定物,障害物等)からの反射波を受信し、物体の相対位置,相対速度等(例えば、先行車位置,先行車相対速度等)の車外物体データを出力する。
ナビゲーション装置は、車両位置情報を取得し、内部地図情報,外部から取得した交通渋滞情報,入力情報(目的地,経由地等)と組み合わせて、ナビゲーションデータ(複数のルート情報,運転者により選択されたルート情報等)を出力する。
【0028】
車両挙動センサ及び運転者操作検知センサには、速度センサ,前後加速度センサ,横加速度センサ,ヨーレートセンサ,アクセル開度センサ,エンジン回転数センサ,ATギアポジションセンサ,ブレーキスイッチセンサ,ブレーキ油圧センサ,ステアリング角センサ,ステアリングトルクセンサ,ウインカースイッチ位置センサ,ワイパースイッチ位置センサ,ライトスイッチ位置センサ,車内外温度センサ等が含まれる。
【0029】
車車間通信器,車両−インフラ間通信器は、それぞれ他車両からの通信データ,交通インフラからの交通データ(交通渋滞情報,制限速度情報等)を取得し、これらを出力する。
【0030】
情報提示装置5は、複数の装置を含む。情報提示装置5は、ナビゲーション装置5A,インストルメントパネル内の情報表示モニター5B,ダッシュボード上のHUD(ヘッドアップディスプレイ)5C,スピーカ5D,視線誘導装置5E,メータ等に設けられたランプ等を含む。情報表示モニター5Bは、警告情報,運転操作コーチング情報,運転操作アドバイス情報等を表示する。HUD5Cは、ウインドシールドに速度やその他の情報を投影して表示する。スピーカ5Dは、車載コントローラ1やオーディオ装置の出力信号に応じて音声案内を出力する。視線誘導装置5Eは、運転者の視線方向を車両前方の遠方領域へ誘導するように機能する。
【0031】
車両駆動制御システム7は、エンジン,ブレーキ,ステアリング駆動装置をそれぞれ制御するシステムである。各種の自動運転支援モードでは、車両駆動制御システム7を介して、エンジン,ブレーキ,ステアリングの自動操作が実行される。
自動運転支援モードは、代表的には、レーンキープアシストモード,自動速度制御モード,先行車追従モード等を含む。
レーンキープアシストモードでは、車両が車線を逸脱することを防止するように、ステアリング駆動装置が自動的に制御される。
自動速度制御モードでは、車両が設定速度での走行を維持するように、エンジン駆動装置が自動的に制御される。
先行車追従モードでは、所定の車間距離を維持した状態で先行車に追従するように、エンジン駆動装置が自動的に制御される。なお、このモードでは、車線中央を走行するように、ステアリング駆動装置も自動的に制御される。
【0032】
次に、図3図7を参照して、車載コントローラの運転支援機能について説明する。図4及び図5は変更テーブルの説明図、図6はナビゲーション地図の表示方式の変更の説明図、図7は視線誘導処理の説明図である。
【0033】
制御部11は、現在運転能力推定部(P推定部)21と、要求運転能力推定部(D推定部)22と、変更部23とを備えている。記憶部13には、運転履歴データ24と変更テーブル25が記憶されている。運転履歴データ24は、センサデータの蓄積データである。
【0034】
P推定部21は、運転履歴データ24に基づいて、現在の運転パフォーマンスP(現在運転能力)を推定する。D推定部22は、運転履歴データ24に基づいて、運転ディマンドD(要求運転能力)を推定する。変更部23は、変更テーブル25に基づいて、運転ディマンドD及び運転パフォーマンスPを増減する処理を実行する。
【0035】
P推定部21は、原則的に、運転履歴データ24に基づいて、運転者によるアクセル,ブレーキ,ステアリングの操作をそれぞれ評価して運転技量要因Psを算出すると共に、運転者の状態(身体状態,精神状態)に応じた低下分(Pp,Pm)を算出して、これらの差分値を運転パフォーマンスPとして出力する。各要因の算出法の概略は以下の通りである。
【0036】
運転技量要因Psの算出のため、速度,前後加速度,横加速度,ヨーレート,アクセル開度,エンジン回転数,ATギアポジション,ブレーキスイッチ,ブレーキ油圧,ステアリング角,ステアリングトルク等のセンサデータが用いられる。例えば、加速度の安定性,ステアリング角の安定性,速度の安定性,ブレーキタイミング等がそれぞれ記憶部13に格納された運転操作理想モデルと評価され、点数化される。記憶部13は、センサデータを常時取得して、運転履歴データ24を更新している。これに伴い、P推定部21は、運転技量要因Psを更新する。なお、運転技量要因Psの評価は、上述のような評価法に限らず、他の評価法を適用してもよい。
【0037】
また、身体要因Pp,精神要因Pmの算出のため、算出時点における車内画像データ,生体データ,音声データの少なくとも1つが用いられる。P推定部21は、例えば、車内画像データにより、運転者の表情・姿勢分析等を行うことができる。また、生体データ(脈拍,心拍,発汗等)により、運転者のストレス,緊張状態,疲労状態等を分析することができる。また、音声データにより内分泌モデルを用いて感情分析を行うことができる。これらの分析により、運転者の身体状態(眠気,疲労度,健康状態等)及び精神状態(注意状態,覚醒度,感情,ストレス度,運転モチベーション,感動,緊張度等)を評価することにより、身体要因Pp,精神要因Pmを算出することができる。なお、身体要因Pp,精神要因Pmの評価は、上述のような評価法に限らず、他の評価法を適用してもよい。
【0038】
P推定部21は、例えば、画像データから瞼の動きを検出し、瞼の位置から眠気の有無を判定することができる。眠気がある場合、身体要因Ppが所定値に設定される。また、音声データによる感情分析により、運転者が緊張状態にあると判定されると、精神要因Pmが所定値に設定される。
【0039】
D推定部22は、センサデータに基づいて現在の交通環境を評価すると共に(Dt)、現在のアクティブな運転支援による減少分(Da)を評価して、点数化した運転ディマンドDを出力する。
交通環境要因Dtの算出のため、D推定部22は、交通環境について、上述の交通量,道路構造,天候,交通参加者,走行状態,車両構造,車両性能をそれぞれ分析し、評価値を算出する。
【0040】
例えば、車両−インフラ間通信器による交通データから、交通量に関する評価基礎情報を得ることができる。車外カメラによる車外画像データから、道路構造(車線幅等),交通参加者(有無,数,種類)に関する評価基礎情報を得ることができる。ナビゲーション装置による地図情報から、道路構造に関する評価基礎情報を得ることができる。レーダによる車外物体データから、走行状態(車間距離等)に関する評価基礎情報を得ることができる。D推定部22は、これら評価基礎情報に基づき、記憶部13に格納された交通環境換算テーブルを利用して、交通環境を評価し、点数化することができる。
【0041】
また、運転支援要因Daのうち情報関連要因Diの算出のため、D推定部22は、情報提示装置5の各々による情報提示(提示の有無,提示方式,提示内容,提示タイミング,提示頻度,提示判定閾値等)を評価し、点数化した情報関連要因Diを算出する。記憶部13は、各情報提示装置5による情報提示を点数化した情報換算テーブルを記憶している。D推定部22は、情報関連要因Diの評価のため、この情報換算テーブルを参照する。
【0042】
また、運転支援要因Daのうち自動運転要因Ddの算出のため、D推定部22は、複数の自動運転支援モードのうち、作動中の自動運転支援モードをそれぞれ評価し、点数化した自動運転要因Ddを算出する。記憶部13は、各自動運転支援モードを点数化した自動運転換算テーブルを記憶している。D推定部22は、自動運転要因Ddの評価のため、この自動運転換算テーブルを参照する。
【0043】
なお、このようにして算出された運転パフォーマンスPと運転ディマンドDが等しい値であるときに、運転に対する楽しさや安心感が生じ、車両に対する信頼感を醸成するように、運転操作理想モデル,交通環境換算テーブル,情報換算テーブル,自動運転換算テーブルが設定されている。
【0044】
変更部23は、P推定部21から運転パフォーマンスPを取得し、D推定部22から運転ディマンドDを取得し、変更テーブル25に基づいて、運転ディマンドDを増減する処理(及び運転パフォーマンスPを増加する処理)を実行する。具体的には、情報提示装置5,車両駆動制御システム7等へ各処理に応じた指令信号を出力する。変更テーブル25は、運転ディマンド増減テーブル25A(図4)と、運転パフォーマンス増減テーブル25B(図5)を有する。
【0045】
図4に示すように、運転ディマンド増減テーブル25Aは、運転ディマンドDの増加処理(「D増」)と低減処理(「D減」)に分かれている。各分類は、「情報関連」,「自動運転」,「その他」に関する中分類処理を更に含む。
【0046】
「情報関連」処理は、「情報関連運転支援」である。「情報関連」処理による増加処理は、「俯瞰的情報提示」,「情報量増加」,「視線誘導」に関する小分類処理を含む。「情報関連」処理による低減処理は、「局所的情報提示」,「情報量低減」,「視線誘導」に関する小分類処理を含む。これらの各小分類処理には、複数の処理が含まれる。各処理は、運転ディマンドD(情報関連要因Di又は自動運転要因Dd)の増加度合い又は減少度合いが点数化されている(図示せず。目安を中分類に記載)。複数の処理の実行により、これらの合計点数に相当する低下分だけ運転ディマンドが低減される。
【0047】
「情報関連」処理では、運転者による交通状況の把握を促進又は抑制する処理を実行する。これにより、運転者による交通環境の状況把握の難易度が制御され、運転ディマンドDが増減される。即ち、運転中には運転者は必要な情報を瞬間的に処理しなければならない。したがって、当座の運転操作に必要な情報に絞って情報提示すると、状況把握が容易となるため運転ディマンドDは低下する(状況把握促進による低減処理)。一方、詳細な情報を情報提示すると、状況把握が難しくなるため運転ディマンドDは増加する(状況把握抑制による増加処理)。
【0048】
「俯瞰的情報提示」処理は、ナビゲーション画面において俯瞰的な提示方式により地図を表示するようにナビゲーション装置5Aを制御する処理を含む。一方、「局所的情報提示」処理は、ナビゲーション地図を局所的に表示するようにナビゲーション装置5Aを制御する処理を含む。例えば、図6に示すように、現在の地図表示が中程度の表示スケールであったとすると(図6(B)参照)、運転ディマンドDを増加するには表示スケールを縮小して広域な範囲を表示させ(俯瞰的表示;図6(A)参照)、逆に運転ディマンドDを減少するには表示スケールを拡大して局所的な範囲を表示させる(局所的表示;図6(C)参照)。即ち、地図の縮尺度合いが俯瞰的表示(詳細)から局所的表示(簡略)になるに従って、運転支援量が増大すると評価される。運転ディマンド増減テーブル25Aでは、表示スケールの変更に応じた運転ディマンドDの増減量(点数)が規定されている。
【0049】
また、「俯瞰的情報提示」処理の他の例は、以下のように情報を俯瞰的に表示させるようにナビゲーション装置5Aや他の情報提示装置を制御する処理を含む。ルート案内において案内交差点を曲がった先の走行レーンの案内;右左折のルート案内で交差点拡大図の不表示;レーンリストへの走行レーン案内表示;案内表示への一時停止案内表示/踏切案内表示/合流案内表示/減少レーン案内表示/事故多発点表示;道路渋滞情報の音声案内;複数カーブ情報の音声案内等。これらの処理により、運転者が処理すべき情報量が増加し、状況把握というディマンドが増加する。なお、増加された情報には、優先度が低い情報も含まれることになる(渋滞情報等)。
【0050】
一方、「局所的情報提示」処理の他の例は、以下の情報を表示させるようにナビゲーション装置5Aや他の情報提示装置を制御する処理を含む。右左折のルート案内で交差点拡大図表示;難交差点拡大図表示;立体交差点拡大図表示;細路案内表示;高速道路入口イメージ図表示等。これらの処理により、交差点や道路形状の把握が容易になり、状況把握(形状把握)というディマンドが低下する。
【0051】
また、「俯瞰的情報提示」処理の他の例は、ナビゲーション画面による設定時間後の予想到達地点までの区間に対する交通情報(例えば、各通過地点の渋滞状況,通過予想時間等)の提示方式を変更するようにナビゲーション装置5Aを制御する処理を含む。具体的には、現在の設定時間をより長い設定時間に変更する処理である。例えば、60分後までの交通情報の提示が、2時間後までの交通情報の提示に変更される。「局所的情報提示」処理の他の例は、上記とは逆により短い区間の交通情報の提示処理である。例えば、60分後までの交通情報の提示が、30分後までの交通情報の提示に変更される。
【0052】
「情報量増加」処理は、以下の処理を実行させるように情報提示装置5を制御する処理を含む。例えば、所定の表示ランプの点灯,所定の表示装置の表示方式の切替え(簡易表示から詳細表示へ),連続するカーブの表示数の増加(2つ目のカーブまで表示),運転支援警報作動の閾値引下げ等の処理である。これらの処理により、運転者が処理すべき情報量や確認動作(判断,操作等)の回数が増加する。運転支援警報は、例えば、運転者の疲労や注意力の低下を画像データから判断して運転者に休憩を促す警報(疲労や注意力低下の判定閾値を下げる)、後方からの車両の接近を知らせる警報(接近判定閾値距離を長くする)である。
【0053】
一方、「情報量低減」処理は、運転者への情報提示量を低減する処理であり、以下の処理を実行させるように情報提示装置5を制御する処理を含む。例えば、所定の表示ランプの不点灯(例えば、運転技能評価装置の作動ランプ),メータパネルでの情報表示をHUD5Cでの情報表示に変更,所定の表示装置の表示方式の切替え(詳細表示から簡易表示へ),運転支援警報作動の閾値引上げ等の処理である。なお、表示方式の切替えは、情報表示自体を停止すること、表示情報項目の低減等も含む。これらの処理により、優先度の低い情報の表示が停止され、運転者が処理すべき情報量が減少する。また、メータパネルからHUD5Cへの表示変更により、メータパネルへの視線移動(目線を下げる)というディマンドが低下する。
【0054】
また、「視線誘導」処理は、運転者の視認方向の変更を促す視線誘導装置の作動/不作動を制御する処理である。視線誘導装置を作動させることにより、運転者による交通状況の把握が促進される。なお、「視線誘導」処理は、運転ディマンドDを低下させると共に、運転パフォーマンスPを増加させる効果を有する。
【0055】
図7に示すように、視線誘導装置5Eは、車両Vのダッシュボードに設けられており、上方へスポット光9aを照射することにより、ウインドシールド9に視線誘導点(アイポイント)9bを生成する。運転者Eは、視線誘導点9bを通して車外を視認することにより、視線方向Cが車両前方の所定位置付近(車両前方150〜250m付近、又は200m付近)に誘導される。視線誘導点9bの生成位置は、運転者Eの眼球の位置に合わせて予め設定される。また、車載コントローラ1が車内カメラ3aによる運転者Eの画像データから眼球位置を推定して、適切な位置に視線誘導点9bを生成するように指令信号を出力してもよい。この場合、視線誘導装置5Eは、この指令信号に基づいてスポット光9aの照射角度を調整する。
【0056】
一般に、運転技量が低い運転者は、車両近傍(車両前方50m以内)に視線方向を向けており、交通状況の把握力が低く、交通状況の変化に対応する余裕度が低い。一方、運転技量が高い運転者は、車両遠方(車両前方150〜250m付近)に視線方向を向けていることが知られている。この視線方向では、交通状況を把握し易く、運転者は交通状況の変化に余裕をもって対応することができる。
【0057】
なお、車載コントローラ1は、車内カメラ3aによる運転者Eの画像データから視線方向を算出してもよい。この場合、運転者Eの視線方向が車両近傍に向けられていることが検知されると、車載コントローラ1は、視線誘導装置5Eにスポット光9aを照射させる。また、視線方向を段階的に遠方へ誘導するため、スポット光9aの照射方向が段階的に変更可能となるように視線誘導装置5Eが構成されていてもよい。
【0058】
「自動運転」処理は、「自動運転支援」である。「自動運転」処理は、車載コントローラ1により、複数の自動運転支援モード(レーンキープアシストモード,自動速度制御モード,先行車追従モード)のうち、1つ又は複数を選択的に実行する処理を含む。これにより、運転ディマンドDが低下する。一方、作動中の自動運転支援モードを不作動にすることにより、運転ディマンドDを増加させることができる。一般に、「自動運転」処理は、「情報関連」処理及び「その他」処理に比べて、運転ディマンドDの増加及び減少に対する効果が大きく、変化度合い(点数)が大きい。
【0059】
なお、自動運転支援モードに、坂道発進補助モード(坂道発進時における後退を防止)を含めてもよい。また、例えば、自動速度制御モードにおいて、自動的に設定速度を増加させることにより運転ディマンドDを増加させ、自動的に設定速度を低下させることにより運転ディマンドDを低下させることができる。また、例えば、車両が車線から遠い位置で車線逸脱防止制御が作動するように判定閾値を変更することにより運転ディマンドDを低下させ、逆に車線に近い位置で作動するように判定閾値を変更することにより運転ディマンドDを増加させることができる。
【0060】
「その他」処理は、ルート検索処理において、難ルート(例えば、カーブが多い)が優先的に選択されるようにナビゲーション装置5Aを制御する処理を含む。これにより、運転ディマンドDが増加する。また、車線変更のタイミングを音声案内する処理や、適宜に休憩を促す案内を提示する処理を情報提示装置5に実行させることにより、運転ディマンドDを低下することができる。
【0061】
また、図5に示すように、運転パフォーマンス増減テーブル25Bは、運転パフォーマンスPの増加処理(「P増」)と低減処理(「P減」)に分かれている。増加処理は、例えば、運転者がリラックスする音楽をスピーカから出力するようにオーディオ装置を制御する処理,リラックスする香を含む空気流を放出するように空調装置を制御する処理,休憩を促すメッセージを表示又は音声出力するように情報提示装置5を制御する処理,疲労し難いシート位置への変更するようにシート装置を制御する処理等である。低減処理は、特に設定されていない。運転パフォーマンスPの増加は、身体要因Ppと精神要因Pmによる減少分を小さくすることにより達成される。
【0062】
次に、図8図9を参照して、車両運転支援システムの処理について説明する。図8は運転支援処理の説明図、図9は運転支援処理のフローチャートである。
図8は、2人の運転者E3,E4に対して運転ディマンドの低減処理(「D減」処理)が実行された状況を示している。運転者E3は運転技量が高く、所定の閾値Pth以上の高い運転パフォーマンスP3を有している(P3≧Pth)。一方、運転者E4は運転技量が低く、閾値Pthよりも低い運転パフォーマンスP4を有している(P4<Pth)。閾値Pthは、例えば、標準的な運転者の運転パフォーマンスである。
【0063】
運転者E3は運転ディマンドD3の状況下で運転しており(点B3;P3<D3)、運転者E4は運転ディマンドD4の状況下で運転している(点B4;P4<D4)。運転ディマンドD3,D4は異なるが(D3≠D4)、それぞれ運転パフォーマンスP3,P4との差は等しいものとする(Δ=D3−P3=D4−P4)。
【0064】
運転者E3の場合(即ち、運転パフォーマンスが高い場合)、制御部11は、P3とD3を釣り合わせるように、低減処理を実行する。このため、低減処理として、「情報関連」処理,「自動運転」処理,「その他」処理から1又は複数の適宜な処理が選択される。
【0065】
一方、運転者E4の場合(即ち、運転パフォーマンスが低い場合)、制御部11は、P4とD4を釣り合わせるまで運転ディマンドを低下させないように、低減処理を実行する。本実施形態では、運転ディマンドの目標低減値を、D4とP4の差Δに所定の係数k(0<k<1)を乗じた値とすることができる(Δ×k)。係数kは、例えば、P4とPthとの差に応じて、0.4〜0.8とすることができる。このように、運転者E4は、運転ディマンドが運転パフォーマンスをやや上回る状況下(P4<D4)で運転することになるため、運転技量の向上を図ることができる。この場合、低減処理として、「情報関連」処理,「自動運転」処理,「その他」処理から1又は複数の適宜な処理が選択される。
【0066】
車載コントローラ1(制御部11)は、図9に示す運転支援処理を繰返し実行する。まず、制御部11は、車両センサ3からセンサデータを取得し(S11)、センサデータに基づいて、現在の運転パフォーマンスPと運転ディマンドDを推定する(S12)。推定したPとDが釣り合っていた場合(S13;Yes)、制御部11は処理を終了する。なお、PとDが釣り合う場合というのは、PとDとの差が所定値以下であることを含む。例えば、推定値P,Dが図2に示す領域A0内に含まれる場合に、制御部11はPとDが釣り合うと判定してもよい。
【0067】
一方、PとDが釣り合っていなかった場合(S13;No)、PがDよりも小さいか否かが判定される(S14)。PがDよりも小さい場合(S14;Yes)、Pが閾値Pth以上であるか否かが判定される(S15)。Pが閾値Pth以上である場合(S15;Yes、図8の運転者E3の場合)、制御部11は、運転ディマンドの低減処理(「D減」処理)から適切な処理を選択し実行する(S16)。この場合、PとDが釣り合うように1又は複数の低減処理が選択される。
【0068】
一方、Pが閾値Pthより低い場合(S15;No、図8の運転者E4の場合)、制御部11は、運転ディマンドの低減処理(「D減」処理)から適切な処理を選択し実行する(S17)。この場合、PとDが釣り合うまでは運転ディマンドを低下しないように、1又は複数の低減処理が選択される。
【0069】
また、PがDよりも大きい場合(S14;No)、制御部11は、運転ディマンドの増加処理(「D増」処理)から1又は複数の適宜な処理を選択し実行する(S18)。この場合、「情報関連」処理,「自動運転」処理,「その他」処理から1又は複数の適宜な処理が選択及び実行される。この場合、PとDが釣り合うように1又は複数の増加処理が選択される。
【0070】
このようにして、本実施形態では、交通環境や運転者の状況(運転技量,身体状態,精神状態)の変化に応じて、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPが適切な関係となるように、運転ディマンドD(及び運転パフォーマンスP)が増減される。
【0071】
次に、図10図11を参照して、改変例に係る車両運転支援システムの処理について説明する。図10は運転支援処理の説明図、図11は運転支援処理のフローチャートである。
図10は、図8に示した2人の運転者E3,E4に対して運転ディマンドの低減処理(「D減」処理)が実行された状況を示している。以下では、図8及び図9と重複する説明は省略する。
【0072】
運転者E3の場合(即ち、運転パフォーマンスが高い場合)、制御部11は、P3とD3を釣り合わせるように、低減処理を実行する。この場合、低減処理として、「情報関連」処理,「自動運転」処理,「その他」処理のうち、「自動運転」処理が優先的に選択される。即ち、運転技量が高い運転者E3に対して、運転技量の向上を目的として、「自動運転」処理以外の処理を優先的に選択する必要性は低い。むしろ、運転者E3に対しては、運転ディマンドの低減効果が高い「自動運転」処理が優先される。なお、「自動運転」処理だけでは、運転ディマンドの低下が不十分な場合には、他の処理が付加的に選択されてもよい。
【0073】
一方、運転者E4の場合(即ち、運転パフォーマンスが低い場合)、制御部11は、P4とD4を釣り合わせるまで運転ディマンドを低下させないように、低減処理を実行する。運転ディマンドの目標低減値は、D4とP4の差Δに所定の係数k(0<k<1)を乗じた値とすることができる(Δ×k)。このように、運転者は、運転ディマンドが運転パフォーマンスをやや上回る状況下(P4<D4)で運転することになるため、運転技量の向上を図ることができる。
【0074】
また、この場合、低減処理として、「情報関連」処理,「その他」処理から1又は複数の適宜な処理が選択される。即ち、運転技量が低い運転者E4に対しては、「自動運転」処理以外の処理が選択される。これにより、運転ディマンドがやや軽減された状況下において(P4<D4)、運転操作の機会が奪われることなく、運転者自身が運転操作を行うので、運転技量の向上を図ることができる。
【0075】
また、「情報関連」処理,及び「その他」処理において、「視線誘導」処理が優先的に選択される。これにより、運転者の視線方向を車両前方の遠方所定位置付近へ誘導することによって、運転者自身に対して、熟練運転者が実行するように交通環境の状況把握を実行するように促すことができる。これにより、運転技量の向上が促される。なお、「視線誘導」処理だけでは、運転ディマンドの低下が不十分な場合には、他の処理が付加的に選択される。
【0076】
車載コントローラ1(制御部11)は、図11に示す運転支援処理を繰返し実行する。ステップS11〜S25、及びS28は、図9のステップS11〜S15、及びS18と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
Pが閾値Pth以上である場合(S25;Yes、図10の運転者E3の場合)、制御部11は、運転ディマンドの低減処理(「D減」処理)から適切な処理を選択し実行する(S26)。この場合、PとDが釣り合うように1又は複数の低減処理が選択されるが、上述のように「自動運転」処理が優先して選択される。
【0078】
一方、Pが閾値Pthより低い場合(S25;No、図10の運転者E4の場合)、制御部11は、運転ディマンドの低減処理(「D減」処理)から適切な処理を選択し実行する(S27)。この場合、PとDが釣り合うまでは運転ディマンドを低下しないように、1又は複数の低減処理が選択される。このとき、上述のように「情報関連」処理(促進処理)の1又は複数の処理が実行され、特に「視線誘導」処理が優先して選択される。
【0079】
このようにして、本実施形態では、交通環境や運転者の状況(運転技量,身体状態,精神状態)の変化に応じて、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPが適切な関係となるように、運転ディマンドD(及び運転パフォーマンスP)が増減される。特に、本実施形態では、運転者の技量に応じて、より適切な運転支援が選択される。これにより、特に、運転技量の低い運転者に対して、運転技量の向上が見込まれる。
【0080】
次に、本実施形態の車両運転支援システムの作用について説明する。
本実施形態の車両運転支援システムSは、車両周囲の交通環境と車両により運転者へ提供されている運転支援とに基づいて、交通環境において車両を運転するために運転者E3,E4に要求される運転ディマンドD(要求運転能力)を推定する要求運転能力推定部(D推定部)22と、運転者E3,E4の運転パフォーマンスP(現在運転能力)を推定する現在運転能力推定部(P推定部)21と、運転パフォーマンスPが運転ディマンドDよりも低い場合に、運転ディマンドDを低減するための低減処理を実行する変更部23と、を備え、変更部23は、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPとの差Δが同じであっても、運転パフォーマンスPが所定閾値Pth以上のときと比べて運転パフォーマンスPが所定閾値Pthより低いときの方が、運転ディマンドDの低減度合いを小さくする。
【0081】
これにより、本実施形態では、運転者E3の運転パフォーマンスPが所定閾値Pth以上のときよりも、運転者E4の運転パフォーマンスPが所定閾値Pthより低いときの方が、運転ディマンドDの低減度合いが抑えられる。これにより、運転技量が低いと推定される運転者E4は、運転支援がやや不十分な状況下で運転することになり、運転技量の向上を促進させることができる(図8図10参照)。
【0082】
また、本実施形態では、変更部23は、運転パフォーマンスPが所定閾値Pth以上の場合、低減処理として、1又は複数の自動運転制御システム(自動運転支援モード)を作動させる自動運転処理を実行し、運転パフォーマンスPが所定閾値Pthより低い場合、低減処理として、運転者による交通環境の状況把握を促進させる促進処理(「情報関連」処理)を実行する(図10参照)。これにより、本実施形態では、運転者E3の運転技量が高い場合には、運転技量の向上を目的とせずに自動運転処理により運転ディマンドDを引き下げ、運転者E4の運転技量が低い場合には、運転者自らによる交通環境の状況把握を促進して運転技量の向上を図ることができる。
【0083】
また、本実施形態では、促進処理は、車載情報提示装置5による運転者への情報提示量を低減する情報量低減処理を含む。本実施形態では、車載情報提示装置5による情報提示量を低減することにより、運転者が運転中に瞬間的に処理しなければならない情報処理量が低減される。これにより、例えば、優先順位の高い情報に絞って情報を提示することにより、運転者の状況把握が促進されるので、運転ディマンドDを引き下げることができる。
【0084】
また、本実施形態では、変更部23は、運転パフォーマンスPが所定閾値Pthより低い場合、促進処理のうち、視線誘導装置5Eにより運転者の視線方向を車両前方の所定位置付近(車両前方150m〜250m付近、又は200m付近)へ誘導する視線誘導処理を優先的に実行する。運転パフォーマンスPが比較的低い運転者E4は、視線方向が車両近傍(車両前方50m以内)に向いていることが多く、視線方向の誘導が運転ディマンドDの低減に有効である。そこで本実施形態では、運転パフォーマンスPが低い運転者E4に対しては、視線誘導処理を優先的に選択する(図10参照)。
【0085】
また、本実施形態において具体的には、P推定部21は、車両の運転履歴データ、及び、運転者の身体状態及び/又は精神状態に基づいて、運転者の運転パフォーマンスPを推定する。
【符号の説明】
【0086】
1 車載コントローラ
3 車両センサ
5 情報提示装置
5E 視線誘導装置
7 車両駆動制御システム
9 ウインドシールド
9a スポット光
9b 視線誘導点
11 制御部
13 記憶部
21 現在運転能力推定部
22 要求運転能力推定部
23 変更部
C 視線方向
D 運転ディマンド
P 運転パフォーマンス
th 閾値
S 車両運転支援システム
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11