【文献】
FAN Yuanzhang et al.,"A New Method of multi-target detectionfor FMCW Automotive Radar",In:IET International RadarConference,2013年,vol.3,p.1583-1586
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の車両警報システム1は、
図1に示すように、警報装置2と、レーダ装置3,4,5,6と車速センサ7を備える。
【0021】
警報装置2は、車室内に設置された音声出力装置であり、車両警報システム1を搭載した車両(以下、自車両)の乗員に対して、警報を発する。
レーダ装置3,4,5,6は、レーダ波を送信し、反射したレーダ波を受信する。これにより、レーダ装置3〜6は、受信したレーダ波の受信強度と、レーダ波を反射した地点(以下、観測点)までの距離(以下、観測点距離)と、観測点との相対速度(以下、観測点相対速度)と、観測点が存在する方位(以下、観測点方位)を検出する。またレーダ装置3〜6は、検出した受信強度と観測点距離と観測点相対速度と観測点方位を示す観測点情報を警報装置2へ出力する。レーダ装置3,4,5,6はそれぞれ、自車両の前方の左端、前方の右端、後方の左端および後方の右端に設置される。
【0022】
車速センサ7は、自車両の走行速度を検出し、自車両の走行速度を示す検出信号をレーダ装置3,4,5,6へ出力する。
図2に示すように、レーダ装置3は、自車両の前方における左側に向けてレーダ波を送信することにより、物体検出領域Rfl内に存在する周辺車両を検出する。レーダ装置4は、自車両の前方における右側に向けてレーダ波を送信することにより、物体検出領域Rfr内に存在する周辺車両を検出する。レーダ装置5は、自車両の後方における左側に向けてレーダ波を送信することにより、物体検出領域Rrl内に存在する周辺車両を検出する。レーダ装置6は、自車両の後方における右側に向けてレーダ波を送信することにより、物体検出領域Rrr内に存在する周辺車両を検出する。
【0023】
レーダ装置3,4,5,6は、
図3に示すように、FMCW処理部11と、2周波CW処理部12とを備える。
FMCW処理部11は、送信回路21と、送信アンテナ22と、受信アンテナ23と、受信回路24と、信号処理部25とを備える。
【0024】
送信回路21は、送信アンテナ22に対して送信信号Ss1を供給するものであり、発振器31と増幅器32と分配器33とを備える。発振器31は、時間に対して周波数が直線的に増加する上り変調区間および周波数が直線的に減少する下り変調区間を有するように変調されたミリ波帯の高周波信号を生成して出力する。増幅器32は、発振器31から出力される上記高周波信号を増幅する。分配器33は、増幅器32の出力信号を送信信号Ss1とローカル信号L1とに電力分配する。
【0025】
送信アンテナ22は、この送信回路21から供給される送信信号Ss1に基づいて、送信信号Ss1に対応する周波数のレーダ波を照射する。これにより、周波数が直線的に増加するレーダ波と、周波数が直線的に減少するレーダ波とが交互に出力される。
【0026】
受信アンテナ23は、複数のアンテナ素子を一列に配列して構成されたアレーアンテナである。
受信回路24は、受信スイッチ41と、増幅器42と、ミキサ43と、フィルタ44と、A/D変換器45とを備える。
【0027】
受信スイッチ41は、受信アンテナ23を構成する複数のアンテナ素子の何れか一つを順次選択し、選択されたアンテナ素子からの受信信号Sr1を増幅器42へ出力する。
増幅器42は、受信スイッチ41から入力した受信信号Sr1を増幅してミキサ43へ出力する。
【0028】
ミキサ43は、増幅器42にて増幅された受信信号Sr1とローカル信号L1とを混合してビート信号BT1を生成する。
フィルタ44は、ミキサ43が生成したビート信号BT1から不要な信号成分を除去する。
【0029】
A/D変換器45は、フィルタ44から出力されたビート信号BT1をサンプリングしてデジタルデータに変換し、このデジタルデータを信号処理部25へ出力する。
信号処理部25は、CPU51、ROM52およびRAM53等を備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU51が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM52が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。そして信号処理部25は、ROM52が記憶するプログラムに基づく処理をCPU51が実行することにより、信号解析を行ったり、FMCW処理部11の動作の制御を行ったりする。
【0030】
具体的には、信号処理部25は、送信回路21を制御して、上り変調区間のレーダ波と下り変調区間のレーダ波が送信アンテナ22から変調周期Tmで交互に照射されるようにする。また信号処理部25は、受信アンテナ23を構成する複数のアンテナ素子のそれぞれのビート信号BT1が受信回路24においてサンプリングされるようにする。そして信号処理部25は、ビート信号BT1のサンプリングデータを解析することにより、観測点までの距離と、観測点との相対速度と、観測点が存在する方位を計測する。
【0031】
FMCW方式では、ビート信号BT1として、上りビート信号および下りビート信号が生成される。上りビート信号は、上り変調区間のレーダ波が送信されている期間において受信信号Sr1とローカル信号L1とを混合することにより生成される。同様に下りビート信号は、下り変調区間のレーダ波が送信されている期間において受信信号Sr1とローカル信号L1とを混合することにより生成される。
【0032】
そして、上りビート信号の周波数fbuおよび下りビート信号の周波数fbdと、観測点の距離L(以下、観測点距離L)および相対速度v(以下、観測点相対速度v)との間には、下式(1),(2)の関係が成立する。なお、式(1),(2)において、cは光速、Δfは送信信号Ss1の周波数変動幅、f0は送信信号Ss1の中心周波数である。
【0033】
【数1】
したがって、観測点距離Lと観測点相対速度vは、下式(3),(4)により算出される。
【0034】
【数2】
2周波CW処理部12は、送信回路61と、送信アンテナ62と、受信アンテナ63と、受信回路64と、信号処理部65とを備える。
【0035】
送信回路61は、送信アンテナ62に対して送信信号Ss2を供給するものであり、発振器71と増幅器72と分配器73とを備える。発振器71は、ミリ波帯の高周波信号を生成するものであり、短い時間間隔で交互に、第1変調周波数f1の高周波信号と、第1変調周波数f1とは僅かに周波数の異なる第2変調周波数f2の高周波信号とを生成して出力する。増幅器72は、発振器71から出力される上記高周波信号を増幅する。分配器73は、増幅器72の出力信号を送信信号Ss2とローカル信号L2とに電力分配する。
【0036】
送信アンテナ62は、この送信回路61から供給される送信信号Ss2に基づいて、送信信号Ss2に対応する周波数のレーダ波を照射する。これにより、第1変調周波数f1のレーダ波と、第2変調周波数f2のレーダ波とが交互に出力される。
【0037】
受信アンテナ63は、複数のアンテナ素子を一列に配列して構成されたアレーアンテナである。
受信回路64は、受信スイッチ81と、増幅器82と、ミキサ83と、フィルタ84と、A/D変換器85とを備える。
【0038】
受信スイッチ81は、受信アンテナ63を構成する複数のアンテナ素子の何れか一つを順次選択し、選択されたアンテナ素子からの受信信号Sr2を増幅器82へ出力する。
増幅器82は、受信スイッチ81から入力した受信信号Sr2を増幅してミキサ83へ出力する。
【0039】
ミキサ83は、増幅器82にて増幅された受信信号Sr2とローカル信号L2とを混合してビート信号BT2を生成する。
フィルタ84は、ミキサ83が生成したビート信号BT2から不要な信号成分を除去する。
【0040】
A/D変換器85は、フィルタ84から出力されたビート信号BT2をサンプリングしてデジタルデータに変換し、このデジタルデータを信号処理部65へ出力する。
信号処理部65は、CPU91、ROM92およびRAM93等を備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU91が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM92が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。そして信号処理部65は、ROM92が記憶するプログラムに基づく処理をCPU91が実行することにより、信号解析を行ったり、2周波CW処理部12の動作の制御を行ったりする。
【0041】
具体的には、信号処理部65は、送信回路61を制御して、第1変調周波数f1および第2変調周波数f2のレーダ波が送信アンテナ62から予め設定された変調周期で交互に発射されるようにする。また信号処理部65は、受信アンテナ63を構成する複数のアンテナ素子のそれぞれのビート信号BT2が受信回路64においてサンプリングされるようにする。そして信号処理部65は、ビート信号BT2のサンプリングデータを解析することにより、観測点距離と、観測点相対速度と、観測点方位を計測し、観測点距離と観測点相対速度と観測点方位を示す観測点情報をFMCW処理部11へ出力する。
【0042】
2周波CW方式では、ビート信号BT2として、第1変調ビート信号および第2変調ビート信号が生成される。第1変調ビート信号は、第1変調周波数f1の受信信号Sr2と第1変調周波数f1のローカル信号L2とを混合することにより生成される。同様に第2変調ビート信号は、第2変調周波数f2の受信信号Sr2と第2変調周波数f2のローカル信号L2とを混合することにより生成される。
【0043】
そして、第1変調ビート信号の周波数fb1および第2変調ビート信号の周波数fb2と、観測点相対速度vとの間には、下式(5),(6)の関係が成立する。
fb1 = (2v/c)×f1 ・・・(5)
fb2 = (2v/c)×f2 ・・・(6)
すなわち2周波CW方式では、生成したビート信号の周波数に基づいて、観測点相対速度を計測する。
【0044】
さらに2周波CW方式では、周知のように、第1変調ビート信号と第2変調ビート信号との間の位相差に基づいて、観測点距離を算出する。なお、2周波CW方式では、上記の観測点相対速度は、受信信号の周波数情報から得られるのに対し、上記の観測点距離は、受信信号の位相情報から得られる。このため、二周波CW方式において、距離の観測精度は、速度の観測精度に対し大きく劣る。
【0045】
このように構成された車両警報システム1において、信号処理部25と信号処理部65は、観測点情報生成処理を実行する。なお、信号処理部25,65が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。信号処理部25の観測点情報生成処理は、信号処理部25の動作中において繰り返し実行される処理である。信号処理部65の観測点情報生成処理は、信号処理部65の動作中において繰り返し実行される処理である。
【0046】
まず、信号処理部65が実行する観測点情報生成処理の手順を説明する。
この観測点情報生成処理が実行されると、信号処理部65は、
図4に示すように、まずS10にて、発振器71を起動してレーダ波の送信を開始する。その後S20にて、周波数が第1変調周波数f1である第1変調区間および周波数が第2変調周波数f2である第2変調区間からなる一周期が経過するまで、A/D変換器85から出力されるビート信号BT2をサンプリングして取り込む。そして、第1変調区間および第2変調区間からなる一周期が経過すると、S30にて、発振器71を停止してレーダ波の送信を停止する。
【0047】
次にS40にて、S20の処理で取り込んだサンプリングデータについて周波数解析処理を実行して、第1変調ビート信号のパワースペクトルと第2変調ビート信号のパワースペクトルを算出する。このパワースペクトルは、第1変調ビート信号と第2変調ビート信号に含まれる周波数と、各周波数における強度とを表したものである。本実施形態では、上記の周波数解析処理は高速フーリエ変換である。
【0048】
そしてS50にて、車速センサ7からの検出信号に基づいて自車両の走行速度を算出し、上式(5),(6)を用いて、自車両の走行速度に対応する周波数fb1,fb2を算出する。以下、自車両の走行速度に対応する周波数fb1,fb2をそれぞれ自車速周波数fv1,fv2という。
【0049】
さらにS60にて、第1変調ビート信号のパワースペクトルと第2変調ビート信号のパワースペクトルのそれぞれについて、パワースペクトル上に存在する1または複数の周波数ピークを検出する。但し、
図5に示すように、第1変調ビート信号のパワースペクトルについては、自車速周波数fv1より高い周波数の周波数ピークを検出する。同様に、第2変調ビート信号のパワースペクトルについては、自車速周波数fv2より高い周波数の周波数ピークを検出する。
図5では、探索範囲Rsが、周波数ピークを検出する周波数範囲であり、ピークPkが、S60で検出される周波数ピークである。
【0050】
S60の処理が終了すると、
図4に示すように、S70にて、S60で検出した周波数ピークの各々について、受信アンテナ63を構成する複数のアンテナ素子から取得した同一ピーク周波数の信号成分間の位相差情報などに基づいて、そのピーク周波数で特定される観測点方位を算出する。
【0051】
またS80にて、2周波CW方式における周知の手法により、観測点距離と観測点相対速度を算出する。そしてS90にて、観測点距離と観測点相対速度と観測点方位を示す観測点情報をFMCW処理部11へ出力し、観測点情報生成処理を一旦終了する。
【0052】
次に、信号処理部25が実行する観測点情報生成処理の手順を説明する。
この観測点情報生成処理が実行されると、信号処理部25は、
図6に示すように、まずS210にて、発振器31を起動してレーダ波の送信を開始する。その後S220にて、周波数が漸増する上り変調区間および周波数が漸減する下り変調区間からなる一周期が経過するまで、A/D変換器45から出力されるビート信号BT1をサンプリングして取り込む。そして、上り変調区間および下り変調区間からなる一周期が経過すると、S230にて、発振器31を停止してレーダ波の送信を停止する。
【0053】
次にS240にて、S220の処理で取り込んだサンプリングデータについて周波数解析処理を実行して、受信チャンネルCH1〜CHn毎かつ上り/下り変調区間毎にビート信号BT1のパワースペクトルを算出する。このパワースペクトルは、ビート信号BT1に含まれる周波数と、各周波数における強度とを表したものである。本実施形態では、上記の周波数解析処理は高速フーリエ変換である。
【0054】
またS250にて、S240で得られたパワースペクトルを用いて、
図7に示すように、観測点方位毎かつ上り/下り変調区間毎にビート信号BT1のパワースペクトルを算出する。観測点方位は、例えばデジタルビームフォーミングの手法を用いて算出される。
図7は、方位角θ1,θ2,・・・,θn毎に上り変調区間および下り変調区間のパワースペクトルを算出することを示す。なお、θnにおけるnは整数である。
【0055】
S250の処理が終了すると、
図6に示すように、S260にて、2周波CW処理部12の信号処理部65から観測点情報を取得する。さらにS270にて、下式(7)によりドップラーシフト周波数f
Δを算出する。なお、式(7)において、θはS260で取得した観測点情報が示す観測点方位と自車両の進行方向とが成す角度、f0は上記のようにFMCW処理部11が送信するレーダ波の中心周波数、vは自車両の走行速度である。なお、式(7)において、中心周波数f0の代わりに、FMCW処理部11が送信するレーダ波の周波数範囲内における任意の周波数を設定することが可能である。
【0056】
f
Δ= 2×f0×v×cosθ/c ・・・(7)
次にS280にて、
図8に示すように、S260で取得した観測点情報が示す観測点方位における上り変調区間のビート信号BT1のパワースペクトルをドップラーシフト周波数f
Δだけ周波数軸に沿って正方向へ移動させる。同様に、S260で取得した観測点情報が示す観測点方位における下り変調区間のビート信号BT1のパワースペクトルをドップラーシフト周波数f
Δだけ周波数軸に沿って負方向へ移動させる。
【0057】
図8では、パワースペクトルPS1が、S260で取得した観測点情報が示す観測点方位における上り変調区間のパワースペクトルである。パワースペクトルPS2が、S260で取得した観測点情報が示す観測点方位における下り変調区間のパワースペクトルである。また、矢印SH1で示すように上り変調区間のパワースペクトルPS1を正方向へ移動させるとともに、矢印SH2で示すように下り変調区間のパワースペクトルPS2を負方向へ移動させる。
【0058】
図8におけるパワースペクトルPS3は、上り変調区間のパワースペクトルPS1をドップラーシフト周波数f
Δだけ正方向へ移動させた後のパワースペクトルである。同様に、パワースペクトルPS4は、下り変調区間のパワースペクトルPS2をドップラーシフト周波数f
Δだけ負方向へ移動させた後のパワースペクトルである。
【0059】
S280の処理が終了すると、
図6に示すように、S290にて、ドップラーシフト周波数f
Δだけ正方向へ移動させた上り変調区間のパワースペクトルと、ドップラーシフト周波数f
Δだけ負方向へ移動させた下り変調区間のパワースペクトルとの差分を算出する。S290における差分で算出されたパワースペクトルを差分パワースペクトルという。
図8におけるパワースペクトルPS5は、上り変調区間のパワースペクトルPS3と下り変調区間のパワースペクトルPS4との差分で得られる差分パワースペクトルである。
【0060】
S290の処理が終了すると、
図6に示すように、S300にて、上り探索中心周波数fsuと下り探索中心周波数fsdを算出する。上り探索中心周波数fsuは、S260で取得した観測点情報が示す観測点距離をLとし、S260で取得した観測点情報が示す観測点相対速度をvとして、Lとvを上式(1)の右辺に代入することにより算出される。同様に、下り探索中心周波数fsdは、Lとvを上式(2)の右辺に代入することにより算出される。
【0061】
そしてS310にて、S290で算出された差分パワースペクトル上において、上り探索中心周波数fsuを中心として予め設定された探索周波数幅を有する上り探索範囲内に存在する周波数ピークと、下り探索中心周波数fsdを中心として上記探索周波数幅を有する下り探索範囲内に存在する周波数ピークを検出する。これにより、上り探索範囲内に存在する周波数ピークの周波数を上りピーク周波数fbuとして検出し、下り探索範囲内に存在する周波数ピークの周波数を下りピーク周波数fbdとして検出する。
【0062】
図8では、差分パワースペクトルPS5において、上り探索中心周波数fsuを中心とする上り探索範囲Rsu内に周波数ピークPK1が存在し、下り探索中心周波数fsdを中心とする下り探索範囲Rsd内に周波数ピークPK2が存在していることを示している。
【0063】
次にS320にて、同一の観測点に基づく上りピーク周波数fbuと下りピーク周波数fbdとを組み合わせるペアマッチングを実行する。具体的には、上りピーク周波数fbuと下りピーク周波数fbdとの組合せについて、ピーク強度の差、および観測点方位の角度差が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。その判定の結果、ピーク強度の差および観測点方位の角度差がともに、許容範囲内であれば、対応するピーク周波数の組をピークペアとして登録する。
【0064】
その後S330にて、登録されたピークペアについて、FMCW方式のレーダ装置における周知の手法により、観測点距離と観測点相対速度を算出する。
そしてS340にて、観測点距離と観測点相対速度と観測点方位を示す観測点情報を警報装置2へ出力し、観測点情報生成処理を一旦終了する。
【0065】
警報装置2は、レーダ装置3,4,5,6から入力された観測点情報と、自車両の走行速度等に基づいて、衝突予測時間TTCを算出する。なお、TTCはTime To Collisionの略である。そして警報装置2は、衝突予測時間TTCが予め設定された警報判定時間未満である場合に、衝突可能性があると判断し、自車両の乗員に対して警報を発する。
【0066】
このように構成された車両警報システム1のレーダ装置3,4,5,6は、車両に搭載されて、車両の周辺に存在する観測点を検出する。
レーダ装置3〜6の送信回路21と送信アンテナ22は、予め設定された変調周期Tm内に、時間が経過するにつれて周波数が漸増する上り変調区間と、時間が経過するにつれて周波数が漸減する下り変調区間とが含まれるように、周波数変調したレーダ波を送信する。
【0067】
受信アンテナ23と受信回路24は、送信アンテナ22から送信されて観測点で反射したレーダ波を受信し、受信したレーダ波と、送信するレーダ波とを混合してビート信号BT1を生成する。
【0068】
信号処理部25は、受信回路24で生成されたビート信号BT1を周波数解析することにより、ビート信号BT1に含まれる周波数と、各周波数における強度との対応関係を表すパワースペクトルを算出する。
【0069】
送信回路61と送信アンテナ62は、予め設定された変調周期内に、周波数が第1変調周波数f1に設定された第1変調区間と、周波数が第2変調周波数f2に設定された第2変調区間とが含まれるように、周波数変調したレーダ波を送信する。
【0070】
受信アンテナ63と受信回路64は、送信アンテナ22から送信されて観測点で反射したレーダ波を受信し、受信したレーダ波と、送信するレーダ波とを混合してビート信号BT2を生成する。
【0071】
信号処理部65は、受信回路64で生成されたビート信号BT2を周波数解析することにより、ビート信号BT2に含まれる周波数と、各周波数における強度との対応関係を表すパワースペクトルを算出する。
【0072】
信号処理部65は、算出されたパワースペクトルを用いて、観測点が存在する方位である観測点方位を算出する。
信号処理部65は、車両の走行速度と、信号処理部65が算出した観測点方位とに基づいて、式(7)により、ドップラーシフト周波数f
Δを算出する。
【0073】
信号処理部25は、信号処理部25で算出されたパワースペクトルを用いて、少なくとも、信号処理部65が算出した観測点方位から到来したレーダ波に基づいて生成されたビート信号BT1のパワースペクトル(以下、方位パワースペクトル)を、上り変調区間と下り変調区間のそれぞれについて算出する。
【0074】
信号処理部25は、上り変調区間の方位パワースペクトルを、算出されたドップラーシフト周波数f
Δだけ周波数の正方向へ移動させ、下り変調区間の方位パワースペクトルを、ドップラーシフト周波数f
Δだけ周波数の負方向へ移動させる。
【0075】
信号処理部25は、移動された後の上り変調区間の方位パワースペクトルと、移動された後の下り変調区間の方位パワースペクトルとを差分することで得られる差分パワースペクトルを算出する。
【0076】
信号処理部25は、算出された差分パワースペクトルにおいて強度がピークとなるピーク周波数を検出する。
このようにレーダ装置3〜6では、観測点で反射したレーダ波を2周波CW処理部12で受信し、ビート信号BT2のパワースペクトルを用いて、レーダ波を反射した観測点が存在する観測点方位を算出する。これにより、レーダ装置3〜6は、FMCW処理部11が送信したレーダ波を反射した観測点が存在する方位を特定することができる。このため、レーダ装置3〜6は、互いに異なる複数の方位毎に、ビート信号BT1に含まれる周波数と、各周波数における強度との対応関係を表すパワースペクトルを算出したとしても、算出した観測点方位のパワースペクトル(すなわち、上記の方位パワースペクトル)についてのみ、ドップラーシフト周波数f
Δだけ移動させる処理を実行すればよくなる。これにより、レーダ装置3〜6は、移動物体を検出するための処理負荷を低減することができる。
【0077】
また、レーダ装置3〜6の信号処理部65は、自車両の走行速度に対応するビート信号BT2の周波数である自車速周波数fv1,fv2を算出する。そして信号処理部65は、ビート信号BT2のパワースペクトルにおいて、算出された自車速周波数fv1,fv2より高い周波数の領域で、強度がピークとなるピーク周波数を検出することにより、観測点を検出する。これによりレーダ装置3〜6は、静止している観測点と、自車両から遠ざかっている観測点とを予め除外して、自車両に近付いてくる観測点を検出することができ、観測点を検出するための処理負荷を低減することができる。
【0078】
また、レーダ装置3〜6の信号処理部65は、自車速周波数fv1,fv2より高い周波数の領域で検出した周波数ピークについて観測点方位を算出する。これによりレーダ装置3〜6は、静止している観測点と、自車両から遠ざかっている観測点とを予め除外して、自車両に近付いてくる観測点についての観測点方位を算出することができ、観測点方位を算出するための処理負荷を低減することができる。
【0079】
また、レーダ装置3〜6の信号処理部65は、算出されたパワースペクトルを用いて、観測点距離と観測点相対速度を算出する。そして信号処理部25は、上り変調区間の方位パワースペクトルにおいて観測点距離と観測点相対速度に対応するビート信号BT1の周波数である上り探索中心周波数fsuを算出する。また信号処理部25は、下り変調区間の方位パワースペクトルにおいて観測点距離と観測点相対速度に対応するビート信号BT1の周波数である下り探索中心周波数fsdを算出する。
【0080】
また信号処理部25は、差分パワースペクトルにおいて、算出された上り探索中心周波数fsuの付近の上り探索範囲内と、算出された下り探索中心周波数fsdの付近の下り探索範囲内とで、ピーク周波数を検出する。
【0081】
これによりレーダ装置3〜6は、ピーク周波数を検出するための探索範囲を縮小することができ、ピーク周波数を検出するための処理負荷を低減することができる。
以上説明した実施形態において、送信回路21および送信アンテナ22は第1送信部に相当し、受信アンテナ23および受信回路24は第1受信部に相当し、S240は第1スペクトル算出部としての処理に相当する。
【0082】
また、送信回路61および送信アンテナ62は第2送信部に相当し、受信アンテナ63および受信回路64は第2受信部に相当し、S40は第2スペクトル算出部としての処理に相当する。
【0083】
また、S70は方位算出部としての処理に相当し、S270は移動量算出部としての処理に相当し、S250は方位スペクトル算出部としての処理に相当する。
また、S280は移動部としての処理に相当し、S290は差分スペクトル算出部としての処理に相当し、S310はピーク検出部としての処理に相当する。
【0084】
また、観測点は物体に相当し、変調周期Tmは第1変調周期に相当し、FMCW処理部11から送信されるレーダ波は第1レーダ波に相当し、ビート信号BT1は第1ビート信号に相当し、S240で算出されるパワースペクトルは第1パワースペクトルに相当する。
【0085】
また、2周波CW処理部12の変調周期は第2変調周期に相当し、2周波CW処理部12から送信されるレーダ波は第2レーダ波に相当し、ビート信号BT2は第2ビート信号に相当し、S40で算出されるパワースペクトルは第2パワースペクトルに相当し、観測点方位は物体方位に相当し、ドップラーシフト周波数f
Δは移動量に相当する。
【0086】
また、S50は車速周波数算出部としての処理に相当し、S60は物体検出部としての処理に相当し、S80は距離速度算出部としての処理に相当し、S300は対応周波数算出部としての処理に相当する。
【0087】
また、観測点距離は物体距離に相当し、観測点相対速度は物体相対速度に相当し、上り探索中心周波数fsuは上り対応周波数に相当し、下り探索中心周波数fsdは下り対応周波数に相当する。
【0088】
また、上り探索範囲は上り対応周波数の付近の周波数範囲に相当し、下り探索範囲は下り対応周波数の付近の周波数範囲に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0089】
[変形例1]
例えば上記実施形態では、S250にて観測点方位毎かつ上り/下り変調区間毎にビート信号BT1のパワースペクトルを算出するものを示した。しかし、2周波CW処理部12から観測点情報を取得した後に、S240で得られたパワースペクトルを用いて、取得した観測点情報が示す観測点方位における上り/下り変調区間のパワースペクトルのみを算出するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0091】
上述したレーダ装置3〜6の他、当該レーダ装置3〜6を構成要素とするシステム、当該レーダ装置3〜6としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、物体検出方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。