特許第6560462号(P6560462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6560462抗肥満及び抗糖尿病効能を有するペプチド及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560462
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】抗肥満及び抗糖尿病効能を有するペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20190805BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20190805BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20190805BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190805BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   A61K38/08
   A61P3/04
   A61P3/10
   A61P43/00 111
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-562494(P2018-562494)
(86)(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公表番号】特表2019-509336(P2019-509336A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】KR2017002884
(87)【国際公開番号】WO2017179824
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2018年8月22日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0046097
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジ・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ウンミ・キム
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−508510(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0275872(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/006692(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104497105(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105652009(CN,A)
【文献】 J. Comb. Chem.,2007年,Vol.9,pp.627-634
【文献】 Chem. Biol. Drug Des.,2015年,Vol.86,pp.1482-1490
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/06
A61K 38/08
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなる抗肥満活性または抗糖尿病活性を有する、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、脂肪細胞内の脂肪の蓄積を減少させることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、脂肪分解を増加させることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、pHSL(phospho−hormone−sensitive lipase)またはCGI−58(Comparative Gene Identification−58)の発現を増加させることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは、脂肪細胞の大きさを減少させることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドは、血糖を減少させることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドは、アディポネクチン(adiponectin)、GLUT4(Glucose transporter type 4)、IRS−1(Insulin receptor substrate 1)、またはAMPK(AMP−activated protein kinase)−α1の発現を増加させることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択された1種以上のペプチドを有効成分として含む、肥満の予防または治療用薬剤学的組成物。
【請求項9】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択された1種以上のペプチドを有効成分として含む糖尿病の予防または治療用薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなる抗肥満及び/又は抗糖尿病活性を有するペプチド、前記ペプチドからなる群から選択された1種以上を有効成分として含む肥満及び/又は糖尿病の予防及び/又は治療用薬剤学的組成物及び前記ペプチドの用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、我が国では経済成長と食生活の西欧化によって食物から得る脂肪分の摂取量が増加しており、運動不足などにより肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化症、及び脂肪肝のような代謝性疾患が増加している趨勢である。また、肥満は若者達に当たって、やせた体型を好む美容的な姿を害するだけでなく、肥満が続くことによってさまざまな疾患が取扱されている。
【0003】
現在、肥満を治療する治療剤には、中枢神経系に作用して食欲に影響を与える薬剤と胃腸管に作用して吸収を阻害する薬物とに大別できる。中枢神経系に作用する薬物には、各々のメカニズムによってセロトニン(5−HT)神経系を阻害するフェンフルラミン、デクスフェンフルラミンなどの薬物、ノルアドレナリン神経系を通じてのエフェドリン及びカフェインなどの薬物、及び最近にはセロトニン及びノルアドレナリン神経系に同時作用して肥満を阻害するシブトラミンなどの薬物が市販されている。
【0004】
その他にも、胃/腸管に作用して肥満を阻害する薬物に、腸管リパーゼを阻害して脂肪の吸収を減らす肥満治療剤に許可されたオルリスタートなどが代表的な薬物に使われている。しかしながら、既存に使用されてきた薬物のうち、フェンフルラミンなどの薬物は副作用に原発性肺高血圧や心臓弁膜病変を起こして最近に使用が禁止されており、他の薬物も血圧減少や乳酸血症などの問題点が発生して、心不全、腎臓疾患などの患者には使用できないという問題点がある。
【0005】
糖尿病はインスリンの分泌量が不足するか、または正常な機能がなされないなどの代謝疾患の一種で(非特許文献1)、血中ブドウ糖の濃度が高まる高血糖を特徴とし、高血糖によってさまざまな症状及び徴候を起こし、小便でブドウ糖を排出するようになる疾患である。最近、肥満率、特に腹部肥満の増加によって糖尿病の発生率が爆発的に増加している趨勢である。
【0006】
糖尿病患者の数は2000年に全世界的に1億7千万名と評価されており、2030年に3億7千万名に達することと予想されたが、最近の分析によれば2008年に既に全世界的に約3億5千万名に達したと報告されて(非特許文献2)、予想より遥かに深刻な水準である。2型糖尿病患者の約80%以上が肥満であることに比べて、肥満患者の単に10%未満が糖尿病と報告されて(非特許文献3)いる。このような糖尿病と肥満の連関性は、アディポカイン(adipokine)と遊離脂肪酸(free fatty acid)の不規則的な分泌によって脂肪酸がベータ細胞や腎臓、肝、心臓など、インスリン敏感性組織内に積まれて脂肪毒性(lipotoxicity)を示すためである。慢性的な高血糖状態で適切に治療されなければ、身体で種々の病的症状が伴われるが、代表的なものが網膜病症、腎機能障害、神経病症、血管障害による合併症を予防するためには効果的な血糖管理が必須である。
【0007】
現在、血糖を調節する方法には、生活習慣固定(食餌療法、運動療法)、及び薬物療法などが使われている。しかしながら、食餌療法や運動療法は厳格な管理及び実施が困難であり、その効果においても限界がある。したがって、多くの糖尿病患者は生活習慣の矯正と共に、インスリン、インスリン分泌促進剤、インスリン感受性改善剤、そして血糖降下剤などの薬物に血糖調節に依存している。
【0008】
リコンビナント方法により生産されているインスリンは1型糖尿病患者及び血糖が調節できない2型患者に必須な薬物で、血糖調節において有利であるが、注射針に対する拒否感、投与方法の困難性、低血糖危険、そして体重増加などの短所を有している。
【0009】
インスリン分泌促進剤の一種であるメグリチニド系は薬効が非常に速い製剤で、食前に服用し、ノボナム(レパグリニド)、ファスティック(ナテグリニド)、グルファスト(ミチグリニド)などがある。インスリン感受性改善剤は単独で服用時、低血糖がほとんどないことが特徴であり、ビグアナイド(biguanide)系列薬物であるメトフォルミン(metformin)とチアゾリジンジオン(thiazolidinedione)系列のアバンディア(ロシグリタゾン)、アクトス(ピオグリタゾン)などがある。
【0010】
最近に開発されている薬物には、インスリン分泌を促進させるホルモンであるグルカゴン類似ペプチド−1(Glucagon−like peptide−1)の作用を用いて開発されたGLP−1アゴニスト(agonist)があり、エキセナチド(exenatide)とビクトーザ(liraglutide)がここに該当する。また、GLP−1を速かに不活性化させる酵素であるDPP−4(Dipeptidyl peptidase−4)の作用を抑制するDPP−4抑制剤(Inhibitor)も最近に開発された新薬であり、ジャヌビア(成分名:シタクリプチン(sitagliptin))が代表的である。
【0011】
しかしながら、これら薬剤は、肝毒性、胃腸障害、心血管系疾患、及び発癌性などの副作用が報告されており、年間治療費用も高くて糖尿病の治療において障害になっている。実際に、前糖尿病(pre−diabetes)及び糖尿病関連費用は2007年を基準に米国のみで約200兆ウォンに肉薄し(非特許文献4)、肥満関連費用も2008年基準に米国のみで150兆ウォンに肉薄する(非特許文献5)。したがって、体重を減少させ、血糖を効果的に低めて糖尿病及び肥満性糖尿病の治療に同時に使用することができ、かつ副作用の少ない薬剤の開発は至急な実状である。
【0012】
まず、肥満治療のためのより改善された方法を探すために、最近、エネルギー代謝を調節するメカニズムに関心を有するようになり、こちら系列の化合物がより高い安全性(低い毒性)を有しなければならないという前提の下で人間が高脂肪食餌を摂取した時、脂肪に蓄積されるシグナルと脂肪蓄積に影響を及ぼすタンパク質などの研究を進行しており、このような脂肪の蓄積のタンパク質の発現を抑制し、既に蓄積された脂肪を分解させるためのシグナル研究及び関与タンパク質の研究を通じて脂肪分解を促進する研究及びペプチドを開発するようになった。また、本発明のペプチドは糖尿病及び肥満に誘導される糖尿病に卓越した効能を見せる。高脂肪食餌によって誘発される脂肪の蓄積、肝や筋肉などの脂肪の蓄積により表れるインスリンのシグナル抑制、これによって誘発されるインスリンの耐性が糖尿病の原因となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】DeFronzo、1988
【非特許文献2】Danaei et al., 2011
【非特許文献3】Harris et al., 1987
【非特許文献4】Dall et al., 2010
【非特許文献5】Finkelstein et al., 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは生物学的に有効な活性を有する多数の優れるペプチドを開発するために努力した結果、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドが高脂肪食餌により誘導された脂肪の蓄積を抑制し、既に蓄積された脂肪を分解して抗肥満効果を示すだけでなく、優れる血糖降下効果を示すということを究明することによって、本発明を完成するようになった。
【0016】
したがって、本発明の目的は配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなる抗肥満及び/又は抗糖尿病活性を有するペプチドを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択された1種以上のペプチドを含む肥満の予防及び/又は治療用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の更に他の目的は、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択された1種以上のペプチドを含む糖尿病の予防及び/又は治療用薬剤学的組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなる抗肥満及び/又は抗糖尿病活性を有するペプチドに関するものである。
【0021】
本発明者らは生物学的に有効な活性を有する多数の優れるペプチドを開発するために努力した結果、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドが高脂肪食餌により誘導された脂肪の蓄積を抑制し、既に蓄積された脂肪を分解して抗肥満効果を示すだけでなく、優れる血糖降下効果を示すということを究明した。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなる抗肥満及び/又は抗糖尿病活性を有するペプチド、及び前記ペプチドからなる群から選択された1種以上を有効成分として含む肥満及び/又は糖尿病の予防及び/又は治療用薬剤学的組成物に関するものであって、前記ペプチドは脂肪の蓄積を抑制し、脂肪細胞の大きさを減少させ、脂肪分解因子であるpHSL及びAMPK−α1、CGI−58の発現を増加させて、既に蓄積された脂肪を分解することによって、優れる抗肥満効果を示すだけでなく、血糖を効果的に減少させ、インスリン抵抗性の改善を示すアディポネクチン、AMPKの発現を増加させ、グルコース輸送路であるGLUT4の発現を増加させ、インスリン受容体信号伝達タンパク質であるIRS−1の発現を増加させることによって、糖尿病に対して優れる効果を示すので、肥満及び/又は糖尿病の予防または治療に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、蓄積された脂肪をオイルレッドO染色を通じて確認した写真である。
図1b】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、蓄積された脂肪をオイルレッドO染色を通じて確認したグラフである。
図1c】本発明の一実施例に係る配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、蓄積された脂肪をオイルレッドO染色を通じて確認した写真である。
図1d】本発明の一実施例に係る配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、蓄積された脂肪をオイルレッドO染色を通じて確認したグラフである。
図2a】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、グリセロールの分泌量を測定した結果を示すグラフである。
図2b】本発明の一実施例に係る配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、グリセロールの分泌量を測定した結果を示すグラフである。
図3a】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、蓄積された脂肪を分解する過程に関与する遺伝子であるCGI−58の発現量を測定した結果である。
図3b】本発明の一実施例に係る配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、蓄積された脂肪を分解する過程に関与する遺伝子であるCGI−58の発現量を測定した結果である。
図4a】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをマウスの脂肪組織に処理した後、脂肪細胞の数と面積を測定した結果を示す写真である。
図4b】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをマウスの脂肪組織に処理した後、脂肪細胞の数と面積を測定した結果を示すグラフである。
図5a】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、脂質合成時、重要なタンパク質であるphospho−HSLタンパク質の発現量を測定した結果を示す写真である。
図5b】本発明の一実施例に係る配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドを処理した時、脂質合成時、重要なタンパク質であるphospho−HSLタンパク質の発現量を測定した結果を示す写真である。
図6a】本発明の一実施例に従ってマウスに高脂肪食餌及び配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを提供した後、血液を採取して血糖の変化を測定した結果を示すグラフである。
図6b】本発明の一実施例に従ってマウスに高脂肪食餌及び配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドを提供した後、血液を採取して血糖の変化を測定した結果を示すグラフである。
図7a】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをインスリン抵抗性を誘導した細胞に処理した後、アディポネクチン及びGLUT5の発現変化を測定した結果である。
図7b】本発明の一実施例に係る配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドをインスリン抵抗性を誘導した細胞に処理した後、アディポネクチン及びGLUT5の発現変化を測定した結果である。
図8a】本発明の一実施例に係る配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドをインスリン抵抗性を誘導した細胞に処理した後、IRS−1及びAMPK−α1の発現変化を測定した結果である。
図8b】本発明の一実施例に係る配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドをインスリン抵抗性を誘導した細胞に処理した後、IRS−1及びAMPK−α1の発現変化を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むものであることがあり、例えば、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるものでありうる。
【0025】
前記ペプチドは脂肪の蓄積を抑制し、脂肪細胞の大きさを減少させ、脂肪分解因子であるpHSL、AMPK−α1及びCGI−58の発現を増加させて、既に蓄積された脂肪を分解することによって優れる抗肥満効果を示す。
【0026】
本明細書で使われる用語“肥満”は、体内に体脂肪が過度に蓄積されることを意味する。
【0027】
前記ペプチドは脂肪細胞内の脂肪の蓄積を減少させ、脂肪細胞に分化することを低下させる。
【0028】
前記ペプチドは、脂肪分解を増加させる。本発明のペプチドの脂肪分解効果は、脂肪分解酵素であるpHSL(phospho−hormone−sensitive lipase)及び脂肪分解因子であるCGI−58(Comparative Gene Identification−58)の発現増加を通じて達成される。
【0029】
前記ペプチドは、HSL遺伝子の発現を調節して貯蔵されていた中性脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解する効果を示すことによって、抗肥満活性を示す。
【0030】
以下の実施例から見るように、前記ペプチド処理時、脂肪細胞に貯蔵されている中性脂肪が遊離脂肪酸とグリセロールに加水分解されて放出される。このような結果は、本発明のペプチドが脂肪細胞に貯蔵されていた中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに加水分解させて細胞の外に放出させたことを示す。
【0031】
また、前記ペプチド処理により脂肪細胞内の中性脂肪含有量が減少し、脂肪細胞の外に中性脂肪分解産物であるグリセロールの分泌が増加した。
【0032】
また、前記ペプチド処理により脂肪組織で中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解する酵素であるHSLの遺伝子発現が増加した。
【0033】
したがって、この結果は本発明のペプチドが脂肪組織でのHSL遺伝子発現増加を通じての脂肪分解により抗肥満効果を示すことを見せる。
【0034】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドは、血糖を効果的に減少させ、インスリン抵抗性の改善を示すアディポネクチン、AMPKの発現を増加させ、グルコース輸送路であるGLUT4の発現を増加させ、インスリン受容体信号伝達タンパク質であるIRS−1の発現を増加させることによって、優れる抗糖尿病効果を示す。
【0035】
本明細書で使われる用語“糖尿病”は、ブドウ糖−不耐性(intolerance)をもたらすインスリンの相対的または絶対的不足として特徴される慢性疾患を意味する。本発明の糖尿病は、好ましくは第2型である。第2型糖尿病はインスリン非依存性糖尿病であって、食事後、不充分なインスリン分泌によりもたらされるか、またはインスリン抵抗性によりもたらされる。
【0036】
前記ペプチドは、インスリン抵抗性条件でアディポネクチンの発現を増加させる。インスリン抵抗性がある場合、血中アディポネクチンが減少し、インスリン感受性を増加させる薬剤の投与などによってインスリン抵抗性が改善されれば、アディポネクチンが増加する(糖尿病第31巻第6号2007、新しく診断された第2型糖尿病患者で血中アディポネクチン(Adiponectin)の特性)。即ち、インスリン抵抗性条件でアディポネクチンを増加させる本発明のペプチドは、インスリン抵抗性改善の効果を示し、したがって、糖尿病に対して予防または治療効能を示す。
【0037】
また、前記ペプチドはインスリン抵抗性条件でGLUT4の発現を増加させる。GULT4はインスリン輸送路としてインスリンによる刺激が来れば細胞内GULT4は原形質膜(plasma membrane)に移動してブドウ糖輸送を促進する。したがって、GLUT4は血中グルコースの細胞内流入を円滑にして血糖を低める役割をする。即ち、グルコース輸送に関与するGLUT4の活性及び発現が増加するほど、抗糖尿病効果が増加する。
【0038】
また、前記ペプチドはインスリン抵抗性条件でIRS−1の発現を増加させる。IRS−1,2(insulin receptor substrate 1, 2)はインスリン基質タンパク質であって、ここにp85が結合すればPI3K(phosphatidylinositol 3 kinase)がAktなどの媒介体により伝達され、糖輸送を誘導する。
【0039】
また、前記ペプチドはインスリン抵抗性条件でAMPK−α1の発現を増加させる。
【0040】
AMPKは細胞内のエネルギー恒常性維持にセンサー役割をする酵素であって、代謝性ストレスや運動により細胞内のエネルギーが減少する場合、活性化されてATPを消費する過程(例えば、脂肪酸合成とコレステロール合成)を抑制し、ATPを生産する過程(例えば、脂肪酸酸化と該当過程)を促進する(Hardie DG: AMP−activated/SNF1 protein kinases: conserved guardians of cellular energy. Nat Rev Mol Cell Biol 8:774−785, 2007)。
【0041】
AMPKの活性化に対する効果はエネルギー代謝調節と密接に関連している標的臓器(肝、筋肉、脂肪、膵臓)に関与している(Zhang BB, Zhou G, Li C: AMPK: an emerging drug target for diabetes and the metabolic syndrome. Cell Metab 9:407−416, 2009)。
【0042】
肝でAMPKが活性化されれば、脂肪酸とコレステロールの合成を抑制し、脂肪酸の酸化を促進する。骨格筋でAMPKが活性化されれば、脂肪酸の酸化と糖吸収を促進し、脂肪細胞では脂肪分解と脂肪生成を抑制する。また、AMPKの活性化及び発現増加は肝内糖生成抑制を通じて血糖低下を誘導する(Foretz M, et al., Diabetes 54:1331−1339, 2005, Lochhead PA, et al., Diabetes 49:896−903, 2000)。
【0043】
本明細書で使われる用語“ペプチド”は、ペプチド結合によりアミノ酸残基が互いに結合されて形成された線形の分子を意味する。
【0044】
本発明のペプチドは当業界に公知された化学的合成方法、特に固相合成技術(solid−phase synthesis techniques; Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85:2149−54(1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111(1984))または液相合成技術(US登録特許第5,516,891号)により製造できる。
【0045】
本発明のペプチドはアミノ酸配列の一部部位を選定し、その活性を増加させるためにN−末端またはC−末端に変形を誘導することができる。
【0046】
例えば、前記C−末端変形はペプチドのC−末端がヒドロキシ基(−OH)、アミノ基(−NH)、アザイド(−NHNH)などに変形されるものでありうるが、これに限定されるものではない。
【0047】
また、前記N−末端変形はペプチドのN−末端がアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、及びポリエチレングリコール(PEG)で構成された群から選択された1種以上の保護基が結合されるものでありうるが、これに限定されるものではない。前記保護基は生体内のタンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する作用をする。
【0048】
前記ペプチドのN−末端及び/又はC−末端変形は、ペプチドの安定性を格段に改善する作用をし、このような変形を通じて本発明のペプチドは生体内投与時の半減期を増加させて高い半減期を有することができる。
【0049】
前述したアミノ酸の変形は本発明のペプチドの安定性を格段に改善する作用をする。本明細書で、用語“安定性”は、インビボ安定性だけでなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も意味する。前述した保護基は生体内のタンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する作用をする。
【0050】
本発明の他の一態様は、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択された1種以上のペプチドを有効成分として含む肥満の予防及び/又は治療用薬剤学的組成物に関するものである。
【0051】
前記ペプチドは脂肪生成を抑制し、脂質を分解する機能が卓越して肥満の予防及び/又は治療に利用できる。
【0052】
前記薬剤学的組成物は、(a)前記ペプチドまたは前記ペプチド複合体の薬剤学的有効量;及び/又は(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物でありうる。
【0053】
本明細書で、用語“薬剤学的有効量”は前述したペプチドの効能または活性を達成することに十分な量を意味する。
【0054】
前記薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、燐酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、珪酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアル酸マグネシウム、及び/又はミネラルオイルなどを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0055】
本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、貯蔵剤などを追加で含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
適した薬剤学的に許容される担体及び製剤はRemington’s Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0057】
本発明の薬剤学的組成物は経口または非経口、好ましくは非経口で投与することができ、非経口投与の場合には、筋肉注入、静脈内注入、皮下注入、腹腔注入、局所投与、経皮投与などにより投与することができる。
【0058】
本発明の薬剤学的組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により多様に処方できる。一方、本発明の薬剤学的組成物の好ましい投与量は1日当たり0.0001〜1000μgである。
【0059】
本発明の薬剤学的組成物は当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって、単位容量形態に製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造できる。
【0060】
この際、剤形はオイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、及び/又は乳化液形態であるか、またはエキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、及び/又はカプセル剤形態であることもあり、分散剤及び/又は安定化剤を追加的に含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
本発明の更に他の態様は、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択された1種以上のペプチドを有効成分として含む糖尿病の予防及び/又は治療用薬剤学的組成物に関するものである。
【0062】
本発明のペプチドは糖尿病動物モデルで増加した血糖を効果的に減少させ、インスリン抵抗性改善効能を示すので、糖尿病の予防または治療に利用できる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨に従って本発明の範囲がこれら実施例により制限されないということは、当業界で通常の知識を有する者において自明である。
【0064】
実施例
合成例1:ペプチド合成
クロロトリチルクロライドレジン(Chloro trityl chloride resin; CTL resin, Nova biochem Cat No. 01−64−0021)700mgを反応容器に入れて、メチレンクロライド(MC)10mlを加えて3分間撹拌した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)10mlを入れて3分間撹拌した後、また溶媒を除去した。反応器に10mlのジクロロメタン溶液を入れて、Fmoc−Ser(tBu)−OH(Bachem、Swiss)200mmole及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)400mmoleを入れた後、撹拌してよく溶かして、1時間の間撹拌しながら反応させた。反応後、洗浄し、メタノールとDIEA(2:1)をDCM(dechloromethane)に溶かして10分間反応させ、過量のDCM/DMF(1:1)で洗浄した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間撹拌した後、また溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピペリジン(Piperidine)/DMF)10mlを反応容器に入れて、10分間常温で撹拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れて、また10分間反応を維持した後、溶液を除去し、各々3分ずつDMFで2回、MCで1回、DMFで1回洗浄して、Ser(tBu)−CTL Resinを製造した。新しい反応器に10mlのDMF溶液を入れて、Fmoc−Lys(Boc)−OH(Bachem、Swiss)200mmole、HoBt 200mmole、及びBop 200mmoleを入れた後、撹拌してよく溶かした。反応器に400mmoleのDIEAを分画で2回に亘って入れた後、全ての固体が溶けるまで最小限5分間撹拌した。溶かしたアミノ酸混合溶液を脱保護されたレジンがある反応容器に入れて、1時間の間常温で撹拌しながら反応させた。反応液を除去し、DMF溶液で3回5分ずつ撹拌した後、除去した。反応レジンを少量取ってカイザーテスト(Nihydrin Test)を用いて反応程度を点検した。脱保護溶液で前記と同様に2回脱保護反応させてLys(Boc)−Ser(tBu)−CTL Resinを製造した。DMFとMCで十分に洗浄し、また1回カイザーテストを遂行した後、前記と同様に以下のアミノ酸付着実験を遂行した。選ばれたアミノ酸配列に基づいてFmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OHの順に連鎖反応させた。Fmoc−保護基を脱保護溶液で10分ずつ2回反応させた後、よく洗浄して除去した。無水酢酸とDIEA、HoBtを入れて1時間の間アセチル化を遂行した後、製造されたペプチジルレジンをDMF、MC、及びメタノールで各々3回洗浄し、窒素空気をゆっくり流して乾燥した後、P下で真空に減圧して完全に乾燥した後、脱漏溶液[トリフルオロ化酢酸(Trifluoroacetic acid)95%、蒸溜水2.5%、チオアニソール(Thioanisole)2.5%]30mlを入れた後、常温で時々振り回しながら2時間反応を維持した。フィルタリングを行ってレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合せた。減圧を用いて全体ボリュームが半分位残るように蒸留し、50mlの冷たいエーテルを加えて沈殿を誘導した後、遠心分離して沈殿を集めて、もう2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去し、窒素下で十分に乾燥して精製前Lys−Glu−Arg−Lys−Serペプチド1を0.77g合成した(収率:89.2%)。分子量測定機を用いて測定時、分子量646.7(理論値段:646.7)を得ることができた。
他の配列番号2のペプチドも前記のような方法により合成を進行した。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1:オイルレッドO染色
本発明のペプチドによる脂肪蓄積抑制効果を測定するために、3T3−L1細胞を2×10細胞/ウェルで24ウェルプレートにシーディングして培養した後、10ug/mlのインスリン、0.1uMのデキサメタゾン、及び0.5uMのIBMXが含まれた分化培地に交換し、濃度別にペプチドを処理した。その後、毎2日毎に10ug/mlのインスリンが含まれた培地に交換し、分化誘導9日目にオイル−レッドO染色アッセイを遂行した。
【0067】
細胞をPBSで洗浄した後、4%のパラホルムアルデヒドを10分間処理して固定し、蒸溜水で洗浄した後、60%のイソプロパノールで5〜10分間培養した。固定された細胞はオイルレッド溶液[1% Oil Red in isopropanol was diluted in dHO in ratio of 6:4(vol/vol)]で30分間染色させた後、またPBSで洗浄した。染色された細胞は光学顕微鏡で観察した後、蒸溜水で洗浄し、100%のイソプロパノールを1mlずつ入れて4℃で混ぜた後、翌日510nmで定量した。
【0068】
図1aから図1dから確認できるように、配列表の配列番号1及び配列番号2のペプチドを処理した時、細胞内脂肪の蓄積程度が減少することをオイルレッドO染色を通じて確認することができた。
【0069】
実施例2:グリセロールアッセイ(脂肪分解誘導)
脂肪細胞は余分のエネルギーを脂肪滴(lipid droplet)の中に中性脂肪の形態に貯蔵してからエネルギーが必要になれば、脂肪トリグリセリドリパーゼ(adipose triglyceride lipase)とHSL、モノグリセリドリパーゼ(monoglyceride lipase)のような酵素により脂肪酸とグリセロールに分解されてエネルギーを生産するか、または細胞信号伝達または脂肪合成に用いる。遊離グリセロール放出の測定は、脂肪細胞に蓄積された中性脂肪の分解効果を評価するためのものである。
【0070】
本発明のペプチドによる脂肪分解効果を測定するために、マウスの脂肪組織を採取して100mmのディッシュ(DMEM)で一日間培養した後、各同一な重量に切って24ウェルプレートに移してペプチドを処理し、48〜72時間の間培養した。処理時間別培地を各100ulずつ回収してグリセロールアッセイを進行して、その結果を図2a及び図2bに示した。
【0071】
図2aから確認できるように、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド処理により組織内にグリセロール分泌が増加した。
【0072】
また、図2bから確認できるように、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドを処理により対照群であるNCと比較して濃度依存的にグリセロール分泌が増加し、高濃度処理時、グリセロール分泌が22%増加した。
【0073】
実施例3:CGI−58 RT−PCR
Qiagen RNeasy kitを使用して全体RNAを抽出した。RNAから単一鎖DNAを合成するために3mgのRNA、ランダムヘキサマー2mgとDEPCを処理した水を加えて、65℃で5分間反応させた。5×first strand buffer、0.1M DTT、10mM dNTP、逆転写酵素を入れて、総20mlになるようにし、42℃で1時間の間反応させた。また、95℃で5分間加熱した後、蒸溜水20mlを加えて最終40mlのcDNAを作った。PCRは、3mlcのDNA、CGI 58遺伝子に特異的な10pmoleのプライマー、10×Tagバッファ、10mM dNTP、そしてi−Tag DNA合成酵素を混合して施行した。PCR条件は94℃で30秒、55〜56℃で30秒、72℃で30秒に反応させた。サイクル数遺伝子はPCR結果が指数的に増幅できる条件で分析した。PCR産物の5mlを得て1%アガロースゲルに電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色して確認して、その結果を図3aから図3cに示した。
【0074】
【表2】
【0075】
図3aから図3cから確認できるように、細胞内CGI 58発現程度をRT−PCRを通じて確認した結果、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列がなされたペプチド処理により脂肪分解因子であるCGI−58の発現が増加した。
【0076】
実施例4:組織学的分析(脂肪分解誘導)
マウスの脂肪組織を採取して100mmのディッシュ(DMEM)で一日間培養した後、同一な重量に切って24ウェルプレートに移してペプチドを処理し、48〜72時間の間培養した。各組織の截片を用いてH&E染色を進行した。顕微鏡撮影を通じて得た写真ファイルをImage Jを通じて区画を取って、各区画当たりサイズを比較することができるプログラムを用いて分析した。これを通じて細胞全体個数の面積が分かり、全体個数で割った平均面積も分かる。染色の程度によって結果値が異なるように表現できるが、序盤にしきい(threshold)値を調整して補正することができ、原本ファイルと対照して相対的に少ない面積の細胞は除去後、結果を導出する。
【0077】
図4a及び図4bから確認できるように、脂肪細胞の数は配列表の配列番号1のペプチドの濃度増加によって増加し、脂肪面積は減少した。
【0078】
単位面積当たり脂肪細胞の数の増加は、脂肪細胞の大きさ、即ち脂肪細胞内の脂肪蓄積が減少したと見ることができる。
【0079】
実施例5:免疫組織化学染色(脂肪分解誘導)
本発明のペプチドが中性脂肪の分解を促進させて脂肪細胞内の脂肪の蓄積を抑制させるメカニズムを調べるためにHSL遺伝子発現に及ぼす効果を調べた。HSL酵素は、脂肪組織で脂肪を分解する時、中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解する脂肪分解酵素として知られている。
【0080】
マウスの脂肪組織を採取して100mmディッシュ(DMEM)で一日間培養した後、同一な重量に切って24ウェルプレートに移してペプチドを処理し、48〜72時間の間培養した。各組織の截片に抗−pHSL抗体を用いて免疫組織化学染色を進行し、蛍光顕微鏡で撮影して、その結果を図5a及び図5bに示した。
【0081】
図5a及び図5bから確認できるように、脂肪分解因子であるpHSL(hormone sensitive lipase)の発現が配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドにより増加した。
【0082】
実施例6:抗糖尿病効能評価(in vivo)
実験動物は6週齢のC57BL/6J miceを中央実験動物(Central Lab. Animal Inc., Seoul, Korea)から購入した後、1週間の間正常食餌により適応期間を有した後、実験に使用した。高脂肪食餌飼料はResearch diets inc.(#product D12492)を用いた。
【0083】
実験動物を総4群に分けて、各群当たり3頭ずつ12週間飼育した。<表3>のように、実験群は正常食餌を供給した正常食餌群(non groups)、高脂肪食餌実験群(NC groups)、高脂肪食餌と配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド(経口投与)、高脂肪食餌とジャヌビア錠(経口投与)である。
【0084】
【表3】
【0085】
また、実験動物は総5群に分けて、各群当たり3頭ずつ12週間飼育した。<表4>のように、実験群は正常食餌を供給した正常食餌群(non groups)、高脂肪食餌実験群(NC groups)、高脂肪食餌と配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド(経口投与)、高脂肪食餌と配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド(腹腔投与)、高脂肪食餌とジャヌビア錠(経口投与)である。
【0086】
【表4】
【0087】
ペプチドを30分、前処理した後、グルコース(60mg/300ul蒸溜水)を経口投与した後、時間に従う血糖降下効果を確認して、その結果を図6a乃至図6b及び<表5>乃至<表6>に示した。
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
図6a及び図6bから確認できるように、NC群と対比して配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド処理群でグルコースによる血糖増加が減少した。
【0091】
実施例7:抗糖尿病効能評価(アディポネクチン & GLUT4 RT−PCR)
インスリン抵抗性条件を作るためにTNF−α処理して条件を構成した後、ペプチドを16時間処理後、回収して各因子の変化をRT−PCRで確認して、その結果を図7a及び図7bに示した。RT−PCR遂行条件は実施例3の通りである。
【0092】
【表7】
【0093】
図7a及び図7bから確認できるように、TNF−α処理時、減少したアディポネクチンは配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド処理時、また発現が増加する様相を示した。また、TNF−αにより減少したグルコース輸送路であるGLUT4はペプチド処理によりまた発現が増加することを確認した。
【0094】
実施例8:抗糖尿病効能評価(IRS−1 & AMPK−α1 RT−PCR)
インスリン抵抗性条件を作るためにTNF−α処理して条件を構成した後、ペプチドを16時間処理後、回収して各因子の変化をRT−PCRで確認して、その結果を図8a及び図8bに示した。RT−PCR遂行条件は実施例3の通りである。
【0095】
【表8】
【0096】
図8a及び図8bから確認できるように、TNF−α処理時、減少したAMPK−α1及びインスリン受容体シグナルリングタンパク質であるIRS−1は配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド処理時、また発現が増加する様相を示した。また、TNF−αにより減少したAMPK−α1は配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド処理によりまた発現が増加することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列からなる抗肥満及び/又は抗糖尿病活性を有するペプチド、前記ペプチドからなる群から選択された1種以上を有効成分として含む肥満及び/又は糖尿病の予防及び/又は治療用薬剤学的組成物及び前記ペプチドの用途に関するものである。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]