特許第6571258号(P6571258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571258
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】動力源を有する減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20190826BHJP
   F16H 57/023 20120101ALI20190826BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   F16H1/32 A
   F16H57/023
   H02K7/116
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-206871(P2018-206871)
(22)【出願日】2018年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-86150(P2019-86150A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2018年11月1日
(31)【優先権主張番号】62/581,345
(32)【優先日】2017年11月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502330713
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Delta Electronics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】蔡清雄
(72)【発明者】
【氏名】鐘啓聞
(72)【発明者】
【氏名】朱恩毅
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−152766(JP,A)
【文献】 特開2013−86687(JP,A)
【文献】 特開2007−282377(JP,A)
【文献】 特開2007−51709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 57/023
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源を有する減速機であって、
動力源としての役割を果たすモータ、及び減速機構を備え、
前記モータは、ステータ部、及びロータ部を備え、
前記ロータ部は前記ステータ部によって駆動され回転し、前記ロータ部は中空構造を有するロータケーシングアセンブリ、第1偏心リング、及び第2偏心リングを備え、前記第1偏心リング及び前記第2偏心リングは、相互に隣接して配置され、且つ前記ロータケーシングアセンブリの内側表面上に配置され、
前記減速機構の少なくとも一部は、前記モータの内側に位置し、且つ前記ロータ部内に収容され、
前記減速機構は、第1ローラアセンブリ、第2ローラアセンブリ、第3ローラアセンブリ、第1サイクロイドディスクセット、及び第2サイクロイドディスクセットを備え、
前記第1ローラアセンブリは、前記減速機構の第1面に位置し、且つ第1減速機ケーシング、及び少なくとも1つの第1ローラを備え、前記少なくとも1つの第1ローラは、前記第1減速機ケーシング上に配置され、
前記第2ローラアセンブリは、前記減速機構の第2面に位置し、且つ第2減速機ケーシング、及び少なくとも1つの第2ローラを備え、前記少なくとも1つの第2ローラは、前記第2減速機ケーシング上に配置され、
前記第3ローラアセンブリは、前記第1ローラアセンブリと前記第2ローラアセンブリとの間に配置され、前記第3ローラアセンブリは、前記ロータ部、前記第1ローラアセンブリ、及び前記第2ローラアセンブリの内側に収容され、前記第3ローラアセンブリは、出力シャフト、及び少なくとも1つの第3ローラを備え、前記少なくとも1つの第3ローラは、前記出力シャフト上に取り付けられ、
前記第1サイクロイドディスクセットは、前記出力シャフトの周囲に取り付けられ、前記第1偏心リング内に配置され、複数の第1歯構造、及び複数の第2歯構造を備え、
前記第2サイクロイドディスクセットは、前記出力シャフトの周囲に取り付けられ、前記第2偏心リング内に配置され、複数の第3歯構造、及び複数の第4歯構造を備え、
前記第1ローラは、前記複数の第1歯構造の少なくとも1つと接触し、前記第2ローラは、前記複数の第3歯構造の少なくとも1つと接触し、前記第3ローラは、前記第2歯構造の少なくとも1つ、及び前記第4歯構造の少なくとも1つと接触する、
減速機。
【請求項2】
請求項1に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第1偏心リングの偏心方向、及び前記第2偏心リングの偏心方向は、相互に逆である、
減速機。
【請求項3】
請求項1に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第1ローラアセンブリ及び前記第2ローラアセンブリは、前記出力シャフトの周りを回転せず、前記ロータ部が回転している間、前記第1サイクロイドディスクセットは前記第1偏心リングと連動して回転し、前記第2サイクロイドディスクセットは前記第2偏心リングと連動して回転し、前記第3ローラアセンブリの前記少なくとも1つの第3ローラは、対応する前記第2歯構造及び対応する前記第4歯構造に押し付けられ、従って、前記第3ローラアセンブリは前記出力シャフトの周りを回転し、前記出力シャフトはそれに応じて回転し、動力を発生させ出力する、
減速機。
【請求項4】
請求項1に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第1サイクロイドディスクセットは、中空構造を有する第1外側サイクロイドディスク及び第1内側サイクロイドディスクをさらに備え、前記第2サイクロイドディスクセットは、中空構造を有する第2外側サイクロイドディスク及び第2内側サイクロイドディスクをさらに備え、前記第1外側サイクロイドディスク及び前記第1内側サイクロイドディスクは隣接して配置され、前記第1内側サイクロイドディスクは、前記第1外側サイクロイドディスクと前記第2内側サイクロイドディスクとの間に配置され、前記第2外側サイクロイドディスク及び前記第2内側サイクロイドディスクは隣接して配置され、前記第2内側サイクロイドディスクは、前記第1内側サイクロイドディスクと前記第2外側サイクロイドディスクとの間に配置されている、
減速機。
【請求項5】
請求項4に記載の動力源を有する減速機であって、
前記複数の第1歯構造は、前記第1外側サイクロイドディスクの内側表面から突出し、前記複数の第2歯構造は、前記第1内側サイクロイドディスクの内側表面から突出し、前記複数の第3歯構造は、前記第2外側サイクロイドディスクの内側表面から突出し、前記複数の第4歯構造は、前記第2内側サイクロイドディスクの内側表面から突出する、
減速機。
【請求項6】
請求項4に記載の動力源を有する減速機であって、
前記複数の第1歯構造は、前記第1外側サイクロイドディスクの外側表面から突出し、前記複数の第2歯構造は、前記第1内側サイクロイドディスクの内側表面から突出し、前記複数の第3歯構造は、前記第2外側サイクロイドディスクの外側表面から突出し、前記複数の第4歯構造は、前記第2内側サイクロイドディスクの内側表面から突出する、
減速機。
【請求項7】
請求項1に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第1減速機ケーシングは、中空構造を有する第1固定部、及び第1設置部を備え、
前記第1固定部の一部は、前記ステータ部の第1側縁と組み立てられ、且つ前記ロータケーシングアセンブリの外側表面と接触し、
前記第1設置部の一部は前記第1固定部上に固定され、第1リング状延長壁は、前記第1設置部から突出し、且つ前記第1固定部の前記中空構造内に配置され、前記第1リング状延長壁は中空構造を有し、前記第1リング状延長壁の前記中空構造は第1軸孔を規定し、前記出力シャフトの第1端部は前記第1軸孔内に挿入されている、
減速機。
【請求項8】
請求項7に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第2減速機ケーシングは、中空構造を有する第2固定部、及び第2設置部を備え、
前記第2固定部の一部は、前記ステータ部の第2側縁と組み立てられ、且つ前記ロータケーシングアセンブリの外側表面と接触し、
前記第2設置部の一部は前記第2固定部上に固定され、第2リング状延長壁は、前記第2設置部から突出し、且つ前記第2固定部の前記中空構造内に配置され、前記第2リング状延長壁は中空構造を有し、前記第2リング状延長壁の前記中空構造は第2軸孔を規定し、前記出力シャフトの第2端部は前記第2軸孔内に挿入されている、
減速機。
【請求項9】
請求項8に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第1リング状延長壁の一部は、前記複数の第1歯構造と前記出力シャフトとの間に配置され、前記少なくとも1つの第1ローラは、前記第1リング状延長壁の外側表面上に配置され、前記第2リング状延長壁の一部は、前記複数の第3歯構造と前記出力シャフトとの間に配置され、前記少なくとも1つの第2ローラは、前記第2リング状延長壁の外側表面上に配置されている、
減速機。
【請求項10】
請求項8に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第1リング状延長壁の一部は、前記複数の第1歯構造と前記第1偏心リングとの間に配置され、前記少なくとも1つの第1ローラは、前記第1リング状延長壁の内側表面上に配置され、前記第2リング状延長壁の一部は、前記複数の第3歯構造と前記第2偏心リングとの間に配置され、前記少なくとも1つの第2ローラは、前記第2リング状延長壁の内側表面上に配置されている
減速機。
【請求項11】
請求項4に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第1外側サイクロイドディスクの歯形、及び前記第2外側サイクロイドディスクの歯形は同一であり、前記第1内側サイクロイドディスクの歯形、及び前記第2内側サイクロイドディスクの歯形は同一であり、前記複数の第1歯構造の数は、前記複数の第3歯構造の数に等しく、前記複数の第2歯構造の数は、前記複数の第4歯構造の数に等しい、
減速機。
【請求項12】
請求項1に記載の動力源を有する減速機であって、
前記第1ローラの数は、前記第2ローラの数に等しく、前記第1ローラの数は、前記複数の第1歯構造の数よりも少なくとも1小さく、前記第2ローラの数は、前記複数の第3歯構造の数よりも少なくとも1小さく、前記第3ローラの数は、前記複数の第2歯構造の数又は前記複数の第4歯構造の数よりも少なくとも1小さい、
減速機。
【請求項13】
請求項1に記載の動力源を有する減速機であって、
前記複数の第1歯構造の数、及び前記複数の第2歯構造の数は異なり、前記複数の第3歯構造の数、及び前記複数の第4歯構造の数は異なる、
減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月3日に出願された「動力ギア」という名称の米国仮出願第62/581,345号の利益を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、減速機に関するものであり、より詳細には、動力源を有する減速機に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、モータは高速且つ低トルクで作動する。すなわち、大きな負荷を駆動することは困難である。従って、モータが重い物体を駆動できるようにするために、減速機を用いてモータの回転速度を減少させ、トルクを増加させる。
【0004】
従来、減速機とモータは別々の部品である。減速機は、シャフトカップリング又はギアボックスなどの追加の連結構造によってモータと連結する必要がある。このようにして、減速機及びモータの全体構造の体積及び重量が増加する。すなわち、減速機とモータとを連結するための連結構造は、軽量かつコンパクトな空間を必要とする装置には利用することができない。例えば、当該連結構造は、産業用ロボットアーム又は動力補助装置への利用には適さない。
【0005】
現在、モータが装備されている減速機が存在する。この状況下で、減速機とモータとを連結するためのシャフトカップリング又はギアボックスは省略される。しかしながら、この減速機はモノサイクロイドセット(すなわち、単一サイクロイド)を用いるので、いくつかの不都合が生じる。例えば、減速機が高速で作動する場合、動的バランス状態を維持することが難しい。従って、減速機の作動により、高い振動が生じる。
【0006】
従って、上述の問題に対処するために、動力源を有する減速機を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、モータ及び減速機構を備える減速機を提供することである。モータ及び減速機構は、連結構造(例えば、シャフトカップリング又はギアボックス)を用いずに共に組み合わされる。モータ及び減速機構が一体構造として組み合わされるため、減速機の重量及び体積が低減される。
【0008】
本開示の別の目的は、動力源を有する減速機を提供することである。当該減速機は、動的バランス、高剛性、及び高減速比の達成と、高負荷の駆動とが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の態様によれば、動力源を有する減速機が提供される。減速機は、モータ及び減速機構を含む。モータは、ステータ部及びロータ部を含む。ロータ部は、ステータ部に対して回転する。ロータ部は、ロータケーシングアセンブリ、第1偏心リング、及び第2偏心リングを含む。第1偏心リング及び第2偏心リングは、相互に隣接して配置され、且つロータケーシングアセンブリの内側表面上に配置されている。減速機構の少なくとも一部は、モータの内側に位置し、ロータ部内に収容されている。減速機構は、第1ローラアセンブリ、第2ローラアセンブリ、第3ローラアセンブリ、第1サイクロイドディスクセット、及び第2サイクロイドディスクセットを含む。第1ローラアセンブリは、減速機構の第1面に位置し、第1減速機ケーシング、及び少なくとも1つの第1ローラを含む。少なくとも1つの第1ローラは、第1減速機ケーシング上に配置されている。第2ローラアセンブリは、減速機構の第2面に位置し、第2減速機ケーシング、及び少なくとも1つの第2ローラを含む。少なくとも1つの第2ローラは、第2減速機ケーシング上に配置されている。第3ローラアセンブリは、第1ローラアセンブリと第2ローラアセンブリとの間に配置されている。第3ローラアセンブリは、ロータ部、第1ローラアセンブリ、及び第2ローラアセンブリの内側に収容されている。第3ローラアセンブリは、出力シャフト、及び少なくとも1つの第3ローラを含む。少なくとも1つの第3ローラは、出力シャフト上に設置されている。第1サイクロイドディスクセットは、出力シャフトの周囲に取り付けられ、第1偏心リング内に配置されている。第1サイクロイドディスクセットは、複数の第1歯構造、及び複数の第2歯構造を含む。第2サイクロイドディスクセットは、出力シャフトの周囲に取り付けられ、第2偏心リング内に配置されている。第2サイクロイドディスクセットは、複数の第3歯構造、及び複数の第4歯構造を含む。少なくとも1つの第1ローラは、複数の第1歯構造の少なくとも1つと接触している。少なくとも1つの第2ローラは、複数の第3歯構造の少なくとも1つと接触している。少なくとも1つの第3ローラは、第2歯構造の少なくとも1つ、及び第4歯構造の少なくとも1つと接触している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の上述の内容は、以下の詳細な説明、及び添付図面を参照した後に、当業者にとってより容易に明らかとなるであろう。
【0011】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る動力源を有する減速機を示す、概略断面図である。
【0012】
図2図2は、図1の減速機を示す、概略分解組立図である。
【0013】
図3図3は、図1の減速機のモータのロータ部を示す、概略透視図である。
【0014】
図4図4は、本開示の第2実施形態に係る動力源を有する減速機を示す、概略断面図である。
【0015】
図5図5は、図4の減速機を示す、概略分解組立図である。
【0016】
図6図6は、図4の減速機の第1サイクロイドディスクセットの第1内側サイクロイドディスク及び第1外側サイクロイドディスクを示す、概略透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示を、以下の実施形態を参照してより具体的に説明する。本開示の好ましい実施形態に関する以下の説明は、例示及び説明のみを目的として、本明細書に提示されることに留意されたい。包括的であること、又は開示された形態に正確に限定されることを意図するものではない。
【0018】
図1図2、及び図3を参照されたい。図1は、本開示の第1実施形態に係る動力源を有する減速機を示す、概略断面図である。図2は、図1の減速機を示す、概略分解組立図である。図3は、図1の減速機のモータのロータ部を示す、概略透視図である。動力源を有する当該減速機(以下、減速機1と呼ぶ)は、減速機能を提供するために、産業用ロボットアーム又は動力補助装置などの、様々な動力機械装置に利用することができる。
【0019】
この実施形態において、減速機1は、2段サイクロイド減速機である。減速機1は、モータ2及び減速機構3を備える。モータ2は、動力源としての役割を果たす。
【0020】
ある実施形態において、モータ2は、減速機構3の周囲に配置されている。例えば、モータ2は、ラジアルフラックスモータである。モータ2は、ステータ部20及びロータ部21を備える。ステータ部20は、モータ2の全体の外側に位置する。ロータ部21は、モータ2の全体の内側に位置する。この実施形態において、ロータ部21は、ロータケーシングアセンブリ210、第1偏心リング211、及び第2偏心リング212を備える。ロータケーシングアセンブリ210は、減速機構3の一部を収容するための中空構造を有する。第1偏心リング211及び第2偏心リング212は、相互に隣接して配置され、ロータケーシングアセンブリ210の内側表面上に配置されている。ロータ部21がステータ部20に対して回転すると、第1偏心リング211及び第2偏心リング212は、ロータケーシングアセンブリ210の中心に対して偏心回転する。第1偏心リング211の偏心方向、及び第2偏心リング212の偏心方向は、相互に逆である。
【0021】
この実施形態において、ステータ部20は、鉄心アセンブリ200、コイルアセンブリ201、及びステータケーシングアセンブリ202をさらに備える。ステータケーシングアセンブリ202は、中空構造を有する。鉄心アセンブリ200、コイルアセンブリ201、及びロータ部21は、ステータケーシングアセンブリ202の中空構造内に収容されている。鉄心アセンブリ200は、ステータケーシングアセンブリ202の内側表面上に取り付けられている。コイルアセンブリ201は、鉄心アセンブリ200の周囲に巻かれている。ロータ部21は、少なくとも1つの磁石213をさらに備える。例えば、磁石213は、円弧状の磁石、又はリング状の磁石である。磁石213は、ロータケーシングアセンブリ210の外側表面上に取り付けられている。磁石213は、ステータ部20のコイルアセンブリ201と相互作用して磁力を発生させる。この磁力によって、ロータ部21は、磁石213に駆動され、ステータ部20に対して回転する。図1及び図2に示したようないくつかの実施形態では、第1偏心リング211及び第2偏心リング212は、ロータケーシングアセンブリ210により一体的に形成されているが、これに限定されるものではない。別の実施形態において、ロータケーシングアセンブリ210、第1偏心リング211、及び第2偏心リング212は、独立した部品である。加えて、第1偏心リング211及び第2偏心リング212は、ロータケーシングアセンブリ210の内側表面上に、螺合手段により固定されている。
【0022】
図1及び図2に示したような実施形態において、モータ2は、ラジアルフラックスモータである。別の実施形態において、モータ2は、アキシャルフラックスモータである。アキシャルフラックスモータの機能は、ラジアルフラックスモータの機能に類似しており、アキシャルフラックスモータの構造は、当業者にはよく知られている。従って、アキシャルフラックスモータの構造は、本明細書において重複して説明はしない。
【0023】
減速機構3の少なくとも一部は、モータ2の内側に位置し、ロータ部21内に収容されている。ある実施形態において、減速機構3は、第1サイクロイドディスクセット30、第2サイクロイドディスクセット31、第1ローラアセンブリ32、第2ローラアセンブリ33、第3ローラアセンブリ34、第1減速機ベアリング35、及び第2減速機ベアリング36を備える。
【0024】
第1ローラアセンブリ32は、減速機構3の第1面に位置する。第1ローラアセンブリ32は、第1減速機ケーシング320、及び少なくとも1つの第1ローラ321を備える。少なくとも1つの第1ローラ321は、第1減速機ケーシング320上に配置されている。第1減速機ケーシング320は、モータ2の第1面と組み立てられ、モータ2の第1面は、第1減速機ケーシング320により覆われている。第1軸孔3200は、第1減速機ケーシング320の中央領域に形成されている。
【0025】
第2ローラアセンブリ33は、減速機構3の第2面に位置し、減速機構3の第1面及び第2面は、相互に向かい合っている。第2ローラアセンブリ33は、第2減速機ケーシング330、及び少なくとも1つの第2ローラ331を備える。少なくとも1つの第2ローラ331は、第2減速機ケーシング330上に配置されている。第2減速機ケーシング330は、モータ2の第2面と組み立てられ、モータ2の第2面は、第2減速機ケーシング330により覆われている。つまり、モータ2は、第1減速機ケーシング320と第2減速機ケーシング330との間に配置されている。第2軸孔3300は、第2減速機ケーシング330の中央領域に形成されている。
【0026】
第3ローラアセンブリ34は、第1ローラアセンブリ32と第2ローラアセンブリ33との間に配置されている。第3ローラアセンブリ34は、第1ローラアセンブリ32、第2ローラアセンブリ33、及びロータ部21内に収容されている。第3ローラアセンブリ34は、出力シャフト340、及び少なくとも1つの第3ローラ341を備える。少なくとも1つの第3ローラ341は、出力シャフト340上に取り付けられている。出力シャフト340の第1端部は、第1軸孔3200内に挿入されている。出力シャフト340の第2端部は、第2軸孔3300内に挿入されている。
【0027】
第1サイクロイドディスクセット30 は、出力シャフト340の周囲に取り付けられ、且つ第1偏心リング211内に配置されたスリーブ構造である。さらに、第1サイクロイドディスクセット30は、複数の第1歯構造300、及び複数の第2歯構造301を備える。
【0028】
第2サイクロイドディスクセット31は、出力シャフト340の周囲に取り付けられ、且つ第2偏心リング212内に配置されたスリーブ構造である。さらに、第2サイクロイドディスクセット31は、複数の第3歯構造310、及び複数の第4歯構造311を備える。
【0029】
少なくとも1つの第1ローラ321は、少なくとも1つの対応する第1歯構造300と接触している。少なくとも1つの第2ローラ331は、少なくとも1つの対応する第3歯構造310と接触している。少なくとも1つの第3ローラ341は、少なくとも1つの対応する第2歯構造301、及び少なくとも1つの対応する第4歯構造311と接触している。
【0030】
第1減速機ベアリング35は、第1軸孔3200内に配置され、第1軸孔3200と出力シャフト340との間に配置されている。
【0031】
第2減速機ベアリング36は、第2軸孔3300内に配置され、第2軸孔3300と出力シャフト340との間に配置されている。
【0032】
第1ローラアセンブリ32が複数の第1ローラ321を備える場合、複数の第1ローラ321は、第1減速機ケーシング320上の周方向に離散して配置及び配列される。第2ローラアセンブリ33が複数の第2ローラ331を備える場合、複数の第2ローラ331は、第2減速機ケーシング330上の周方向に離散して配置及び配列される。第3ローラアセンブリ34が複数の第3ローラ341を備える場合、複数の第3ローラ341は、出力シャフト340上の周方向に離散して配置及び配列されている。
【0033】
いくつかの実施形態において、第1ローラアセンブリ32の第1減速機ケーシング320、及び第2ローラアセンブリ33の第2減速機ケーシング330は、ねじ穴(図示されていない)を有する。従って、第1減速機ケーシング320及び第2減速機ケーシング330は、ねじを使用して他の機械構造と連結されている。さらに、第1ローラアセンブリ32及び第2ローラアセンブリ33は、回転しない。つまり、第1ローラアセンブリ32及び第2ローラアセンブリ33は、出力シャフト340の周りを回転しない。ロータ部21がステータ部20に対して回転すると、第1サイクロイドディスクセット30は、第1偏心リング211と連動して回転し、第2サイクロイドディスクセット31は、第2偏心リング212と連動して回転する。第1ローラアセンブリ32及び第2ローラアセンブリ33は回転しないため、少なくとも1つの第2歯構造301、及び少なくとも1つの第4歯構造311と接触する第3ローラ341は、少なくとも1つの第2歯301、及び少なくとも1つの第4歯311に押し付けられる。従って、第3ローラ341は、出力シャフト340の周りを回転する。第3ローラ341は出力シャフト340上に固定されているため、出力シャフト340は、第3ローラ341と共に回転する。従って、第3ローラアセンブリ34は、出力シャフト340の周りを回転することが可能である。この状況下で、出力シャフト340は、動力を発生させ出力するために減速機構3の動力の出力の際に用いられる。他のいくつかの実施形態において、出力シャフト340は、ねじ穴(図示されていない)を備える。従って、出力シャフト340は、ねじを使用して他の機械構造と連結されている。このようにして、動力を機械構造へと送ることができる。
【0034】
上述のように、減速機1のモータ2及び減速機構3は、一体構造として組み合わされている。モータ2は、半径方向に沿って減速機1の外側に位置する。減速機構3の少なくとも一部は、半径方向に沿って減速機1の内側に位置する。ロータ部21がステータ部20に対して回転すると、第1サイクロイドディスクセット30は、第1偏心リング211と連動して回転し、第2サイクロイドディスクセット31は、第2偏心リング212と連動して回転する。上述のように、第1ローラアセンブリ32及び第2ローラアセンブリ33は回転することができないが、第3ローラアセンブリ34は回転可能である。従って、第1サイクロイドディスクセット30及び第2サイクロイドディスクセット31は、第1ローラアセンブリ32、第2ローラアセンブリ33、及び第3ローラアセンブリ34と相互作用する。このようにして、2段減速という目的が達成できる。モータ2及び減速機構3を連結するための追加のシャフトカップリングを用いる必要がないため、減速機1の体積及び重量は低減される。さらに、第1サイクロイドディスクセット30及び第2サイクロイドディスクセット31は、逆の偏心方向を有する第1偏心リング211及び第2偏心リング212上にそれぞれ設置されている。この状況下で、第1サイクロイドディスクセット30及び第2サイクロイドディスクセット31は、相互に平衡を保っており、有効に押されるローラの数は、増加する。従って、減速機1は、高い剛性及び動的バランスを有し、高負荷環境へ利用可能である。
【0035】
いくつかの実施形態において、出力シャフト340は、中空内部構造を有する。ケーブル(例えば、エンコーダの信号ケーブル)、又はステータ部20のコイルアセンブリ201は、出力シャフト340の中空内部構造を貫通することもできる。従って、減速機1のケーブルのレイアウトは単純になる。
【0036】
図1及び図2を再度参照されたい。第1減速機ケーシング320は、中空構造を有する第1固定部3201、及び第1設置部3202を備える。第1固定部3201の一部は、ステータ部20のステータケーシングアセンブリ202の第1側縁と組み立てられている。さらに、第1固定部3201は、ロータケーシングアセンブリ210の外側表面と接触している。第1設置部3202の一部は、第1固定部3201上に固定されている。さらに、第1リング状延長壁3203は、第1設置部3202から突出し、第1固定部3201の中空構造内に配置されている。第1リング状延長壁3203は、中空構造を有する。第1リング状延長壁3203の一部は、少なくとも1つの第1歯構造300と出力シャフト340との間に配置されている。さらに、第1リング状延長壁3203の中空構造は、第1軸孔3200を規定する。少なくとも1つの第1ローラ321は、第1リング状延長壁3203の外側表面上に配置されている。
【0037】
第2減速機ケーシング330は、中空構造を有する第2固定部3301、及び第2設置部3302を備える。第2固定部3301の一部は、ステータ部20のステータケーシングアセンブリ202の第2側縁と組み立てられている。さらに、第2固定部3301は、ロータケーシングアセンブリ210の外側表面と接触している。第2設置部3302の一部は、第2固定部3301上に固定されている。さらに、第2リング状延長壁3303は、第2設置部3302から突出し、第2固定部3301の中空構造内に配置されている。第2リング状延長壁3303は、中空構造を有する。第2リング状延長壁3303の一部は、少なくとも1つの第3歯構造310と出力シャフト340との間に配置されている。さらに、第2リング状延長壁3303の中空構造は、第2軸孔3300を規定する。少なくとも1つの第2ローラ331は、第2リング状延長壁3303の外側表面上に配置されている。
【0038】
減速機1は、第1ロータ外側ベアリングセット4、及び第2ロータ外側ベアリングセット5をさらに備える。第1ロータ外側ベアリングセット4は、第1固定部3201とロータケーシングアセンブリ210との間に配置されている。第2ロータ外側ベアリングセット5は、第2固定部3301とロータケーシングアセンブリ210との間に配置されている。減速機1は、第1ロータ内側ベアリングセット6、及び第2ロータ内側ベアリングセット7をさらに備える。第1ロータ内側ベアリングセット6は、第1偏心リング211と第1サイクロイドディスクセット30との間に配置されている。第2ロータ内側ベアリングセット7は、第2偏心リング212と第2サイクロイドディスクセット31との間に配置されている。第1ロータ内側ベアリングセット6及び第2ロータ内側ベアリングセット7はそれぞれ、少なくとも1つのベアリングを備える。例えば、図1及び図2に示したように、第1ロータ内側ベアリングセット6及び第2ロータ内側ベアリングセット7はそれぞれ、複数のベアリングを備える。他のいくつかの実施形態において、第1ロータ内側ベアリングセット6及び第2ロータ内側ベアリングセット7はそれぞれ、単一のベアリングを備える。
【0039】
第1サイクロイドディスクセット30は、中空構造を有する第1外側サイクロイドディスク302及び第1内側サイクロイドディスク303をさらに備える。第2サイクロイドディスクセット31は、中空構造を有する第2外側サイクロイドディスク312及び第2内側サイクロイドディスク313をさらに備える。第1外側サイクロイドディスク302及び第1内側サイクロイドディスク303は、隣接して配置されている。第1内側サイクロイドディスク303は、第1外側サイクロイドディスク302と第2内側サイクロイドディスク313との間に配置されている。少なくとも1つの第1歯構造300は、第1外側サイクロイドディスク302の内側表面から突出している。少なくとも1つの第2歯構造301は、第1内側サイクロイドディスク303の内側表面から突出している。第2外側サイクロイドディスク312及び第2内側サイクロイドディスク313は、隣接して配置されている。第2内側サイクロイドディスク313は、第1内側サイクロイドディスク303と第2外側サイクロイドディスク312との間に配置されている。少なくとも1つの第3歯構造310は、第2外側サイクロイドディスク312の内側表面から突出している。少なくとも1つの第4歯構造311は、第2内側サイクロイドディスク313の内側表面から突出している。第1外側サイクロイドディスク302上の少なくとも1つの第1歯構造300の歯形、及び第2外側サイクロイドディスク312上の少なくとも1つの第3歯構造310の歯形は同一である。第1内側サイクロイドディスク303上の少なくとも1つの第2歯構造301の歯形、及び第2内側サイクロイドディスク313上の少なくとも1つの第4歯構造311の歯形は同一である。第1歯構造300の数、及び第3歯構造310の数は、等しい。第2歯構造301の数、及び第4歯構造311の数は、等しい。第1歯構造300の数、及び第2歯構造301の数は、異なる。第3歯構造310の数、及び第4歯構造311の数は、異なる。さらに、第1外側サイクロイドディスク302及び第1内側サイクロイドディスク303は、組立プロセスを通じて相互に固定された状態で連結され(図1及び図2を参照)、又は相互に一体的に形成されている。第2外側サイクロイドディスク312及び第2内側サイクロイドディスク313は、組立プロセスを通じて、相互に固定された状態で連結され(図1及び図2を参照)、又は相互に一体的に形成されている。いくつかの実施形態において、複数の第1ローラ321、複数の第2ローラ331、及び複数の第3ローラ341は、それら自身の軸上で回転(すなわち、自転)可能である。
【0040】
第1ローラアセンブリ32の第1ローラ321の数は、第2ローラアセンブリ33の第2ローラ331の数に等しい。第1ローラ321の数は、第1歯構造300の数よりも少なくとも1小さく、第2ローラ331の数は、第3歯構造310の数よりも少なくとも1小さく、第3ローラアセンブリ34の第3ローラ341の数は、第2歯構造301の数、又は第4歯構造311の数よりも少なくとも1小さい。
【0041】
いくつかの実施形態において、減速機1は、第1ブレーキ要素8及び第2ブレーキ要素9をさらに備える。第1ブレーキ要素8は、第2減速機ケーシング330の側面上に配置され、ロータケーシングアセンブリ210と隣接して配置されている。第2ブレーキ要素9は、ロータケーシングアセンブリ210の側面上に配置され、第2減速機ケーシング330と隣接して配置されている。さらに、第2ブレーキ要素9は、第1ブレーキ要素8と一直線上に並んでいる。第1ブレーキ要素8及び第2ブレーキ要素9は、選択的に相互に分離、又は相互に接触している。第1ブレーキ要素8及び第2ブレーキ要素9が相互に接触するとき、ロータ部21の回転は、第1ブレーキ要素8及び第2ブレーキ要素9により制限される。第1ブレーキ要素8及び第2ブレーキ要素9が相互に分離しているとき、ロータ部21の回転が可能となる。
【0042】
ある実施形態において、減速機1は、エンコーダ10をさらに備える。エンコーダ10は、ロータケーシングアセンブリ210の側面上に配置され、第1減速機ケーシング320と隣接して配置されている。モータ2のロータ部21の回転の間、エンコーダ10は、ロータ部21の角度又は変位を検出する。エンコーダ10は、信号源及び信号受信機を備える。信号源は、検出信号を信号受信機に発する。モータ2のロータ部21の回転の間、信号源及び信号受信機は協働して角度又は変位を検出する。
【0043】
減速機1を用いて所望の減速比を達成する原理を、以下に説明する。例えば、第1ローラアセンブリ32の第1ローラ321の数をN、第2ローラアセンブリ33の第2ローラ331の数をN、第3ローラアセンブリ34の第3ローラ341の数をMとする。第1歯構造300の数をA、第3歯構造310の数をA、第2歯構造301の数をB、第4歯構造311の数をBとする。モータ2のロータ部21が回転している間、ロータ部21に設置された第1偏心リング211及び第2偏心リング212は、ロータ部21と同期回転する。第1偏心リング211及び第2偏心リング212が回転する際、少なくとも1つの第1歯構造300と接触している第1ローラアセンブリ32の少なくとも1つの第1ローラ321は、出力シャフト340の周りを回転できず、少なくとも1つの第3歯構造310と接触している第2ローラアセンブリ33の少なくとも1つの第2ローラ331は、出力シャフト340の周りを回転できない。第1サイクロイドディスクセット30及び第2サイクロイドディスクセット31の動作は上述の条件によって制限されるため、第1サイクロイドディスクセット30(及び第2サイクロイドディスクセット31)の回転速度は、モータ2の回転速度の(A−N)/A倍となる。すなわち、1段階目の減速が達成される。さらに、第3ローラアセンブリ34の少なくとも1つの第3ローラ341は、第1サイクロイドディスクセット30の少なくとも1つの第2歯構造301、及び第2サイクロイドディスクセット31の少なくとも1つの第4歯構造311に押し付けられるので、第3ローラアセンブリ34は、出力シャフト340の周りを回転する。上述のように、少なくとも1つの第3ローラ341は、出力シャフト340上に設置されている。出力シャフト340は、少なくとも1つの第3ローラ341と共に回転するため、出力シャフト340は、動力の出力の際に用いられる。従って、出力シャフト340の回転速度は、モータ2の回転速度の((A×M)−(B×N))/(A×M)倍となる。すなわち、2段階目の減速が達成される。
【0044】
ある実施形態において、第1ローラ321の数は、第1歯構造300の数より1小さく、第2ローラ331の数は、第3歯構造310の数より1小さく、第3ローラアセンブリ34の第3ローラ341の数は、第2歯構造301の数、又は第4歯構造311の数よりも1小さい。すなわち、第1歯構造300の数Aは(N+1)に等しく、第3歯構造310の数Aは(N+1)に等しく、第2歯構造301の数Bは(M+1)に等しく、第4歯構造311の数Bは(M+1)に等しい。従って、第1サイクロイドディスクセット30(及び第2サイクロイドディスクセット31)の回転速度は、モータ2の回転速度の1/(N+1)倍となる。上述のように、出力シャフト340は動力の出力の際に用いられる。従って、出力シャフト340の回転速度は、モータ2の回転速度の(M−N)/((N+1)×M)倍となる。
【0045】
図4図5、及び図6を参照されたい。図4は、本開示の第2実施形態に係る動力源を有する減速機を示す、概略断面図である。図5は、図4の減速機を示す、概略分解組立図である。図6は、図4の減速機の第1サイクロイドディスクセットの第1内側サイクロイドディスク及び第1外側サイクロイドディスクを示す、概略透視図である。この実施形態の減速機1'の構造、動作原理、及び減速比は、第1実施形態のものと類似している。第1実施形態と対応する構成部分と要素には同一参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0046】
第1実施形態と比較すると、以下の態様において区別される。この実施形態において、第1ロータ内側ベアリングセット6'は単一のベアリングを備え、第2ロータ内側ベアリングセット7'は単一のベアリングを備える。第1ロータ内側ベアリングセット6'は、第1偏心リング211と、第1サイクロイドディスクセット30'の第1内側サイクロイドディスク303との間に配置されている。第2ロータ内側ベアリングセット7'は、第2偏心リング212と、第2サイクロイドディスクセット31'の第2内側サイクロイドディスク313との間に配置されている。第1実施形態と比較すると、この実施形態の第1サイクロイドディスクセット30'及び第2サイクロイドディスクセット31'の構造も、区別される。第1サイクロイドディスクセット30'の構造、及び第2サイクロイドディスクセット31'の構造は、類似している。従って、第1サイクロイドディスクセット30'の構造のみが、図6に示されている。少なくとも1つの第1歯構造300'は、第1外側サイクロイドディスク302'の外側表面から突出している。少なくとも1つの第2歯構造301も、第1内側サイクロイドディスク303の内側表面から突出している。少なくとも1つの第3歯構造310'は、第2外側サイクロイドディスク312'の外側表面から突出している。少なくとも1つの第4歯構造311も、第2内側サイクロイドディスク313の内側表面から突出している。第1リング状延長壁3203の一部は、少なくとも1つの第1歯構造300'と第1偏心リング211との間に配置されている。第2リング状延長壁3303の一部は、少なくとも1つの第3歯構造310'と第2偏心リング212との間に配置されている。少なくとも1つの第1ローラ321は、第1リング状延長壁3203の内側表面上に配置されている。少なくとも1つの第2ローラ331は、第2リング状延長壁3303の内側表面上に配置されている。少なくとも1つの第1ローラ321は、少なくとも1つの対応する第1歯構造300'と接触している。少なくとも1つの第2ローラ331は、少なくとも1つの対応する第3歯構造310'と接触している。少なくとも1つの第3ローラ341は、少なくとも1つの対応する第2歯構造301、及び少なくとも1つの対応する第4歯構造311と接触している。 ある実施形態において、第1歯構造300の数'、及び第2歯構造301の数は異なり、第3歯構造310の数'、及び第4歯構造311の数は異なる。さらに、第1外側サイクロイドディスク302'及び第1内側サイクロイドディスク303は、組立プロセスを通じて、相互に一体的に形成され(図6参照)、又は相互に固定された状態で連結されている。第2外側サイクロイドディスク312'及び第2内側サイクロイドディスク313は、組立プロセスを通じて、相互に一体的に形成され(図6参照)、又は相互に固定された状態で連結されている。
【0047】
減速機1'を用いて所望の減速比を達成する原理を、以下に説明する。例えば、第1ローラアセンブリ32の第1ローラ321の数をN、第2ローラアセンブリ33の第2ローラ331の数をN、第3ローラアセンブリ34の第3ローラ341の数をMとする。第1歯構造300'の数をA、第3歯構造310'の数をA、第2歯構造301の数をB、第4歯構造311の数をBとする。モータ2のロータ部21が回転している間、ロータ部21に設置された第1偏心リング211及び第2偏心リング212は、ロータ部21と同期回転する。第1偏心リング211及び第2偏心リング212が回転する際、少なくとも1つの第1歯構造300'と接触している第1ローラアセンブリ32の少なくとも1つの第1ローラ321は、出力シャフト340の周りを回転できず、少なくとも1つの第3歯構造310'と接触している第2ローラアセンブリ33の少なくとも1つの第2ローラ331は、出力シャフト340の周りを回転できない。第1サイクロイドディスクセット30'及び第2サイクロイドディスクセット31'の動作は上述の条件によって制限されるため、第1サイクロイドディスクセット30'(及び第2サイクロイドディスクセット31')の回転速度は、モータ2の回転速度の(A−N)/A倍となる。すなわち、1段階目の減速が達成される。さらに、第3ローラアセンブリ34の少なくとも1つの第3ローラ341は、第1サイクロイドディスクセット30'の少なくとも1つの第2歯構造301、及び第2サイクロイドディスクセット31'の少なくとも1つの第4歯構造311に押し付けられるので、第3ローラアセンブリ34は、出力シャフト340の周りを回転する。上述のように、少なくとも1つの第3ローラ341は、出力シャフト340上に設置されている。出力シャフト340は、少なくとも1つの第3ローラ341と共に回転するため、出力シャフト340は、動力の出力の際に用いられる。従って、出力シャフト340の回転速度は、モータ2の回転速度の((A×M)−(B×N))/(A×M)倍となる。すなわち、2段階目の減速が達成される。
【0048】
ある実施形態において、第1ローラ321の数は、少なくとも1つの第1歯構造300'の数より1小さく、第2ローラ331の数は、第3歯構造310'の数より1小さく、第3ローラアセンブリ34の第3ローラ341の数は、第2歯構造301の数、又は第4歯構造311の数よりも1小さい。すなわち、第1歯構造300'の数Aは(N+1)に等しく、第3歯構造310'の数Aは(N+1)に等しく、第2歯構造301の数Bは(M+1)に等しく、第4歯構造311の数Bは(M+1)に等しい。従って、第1サイクロイドディスクセット30'(及び第2サイクロイドディスクセット31')の回転速度は、モータ2の回転速度の1/(N+1)倍である。上述のように、第3ローラアセンブリ34の出力シャフト340は、動力の出力の際に用いられる。従って、出力シャフト340の回転速度は、モータ2の回転速度の(M−N)/((N+1)×M)倍である。
【0049】
上述の説明より、本開示は、動力源を有する減速機を提供する。減速機は、モータ及び減速機構を含む。モータ及び減速機構は、一体構造として組み合わされている。モータは、減速機の外側に位置する。減速機構は、半径方向に沿って減速機の内側に位置する。ロータ部が回転している間、第1サイクロイドディスクセットは第1偏心リングと連動して回転し、第2サイクロイドディスクセットは第2偏心リングと連動して回転する。第1ローラアセンブリ及び第2ローラアセンブリは回転することができないが、第3ローラアセンブリは回転可能である。従って、第1サイクロイドディスクセット及び第2サイクロイドディスクセットは、第1ローラアセンブリ、第2ローラアセンブリ、及び第3ローラアセンブリと相互作用する。このようにして、2段階の減速という目的が達成できる。モータ及び減速機構を連結するための追加のシャフトカップリングを用いる必要がないため、減速機の体積及び重量は低減される。2段減速により、高減速比の達成という目的が達成される。減速機の減速機構は、第1サイクロイドディスクセット及び第2サイクロイドディスクセットを含む。単一サイクロイドディスクを有する減速機と比較すると、本開示の減速機は、高い剛性を有し、より高い負荷に耐えることができる。さらに、第1サイクロイドディスクセット及び第2サイクロイドディスクセットは、逆の偏心方向を有する第1偏心リング及び第2偏心リング上にそれぞれ設置されている。従って、当該減速機は、動的バランスを達成することができる。
【0050】
本発明を、現時点で最も実用的且つ好ましい実施形態と考えられるものに関して説明したが、本発明を、開示された実施形態に限定する必要は無いことを理解されたい。逆に、添付の請求項の精神及び範囲内に含まれる様々な変更及び類似する構成を包含することが意図され、添付の請求項はそのような変更及び類似する構造全てを包含するように最も広い解釈をされるべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6