特許第6573563号(P6573563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6573563ニッケル粉末、ニッケル粉末の製造方法、およびニッケル粉末を用いた内部電極ペーストならびに電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573563
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ニッケル粉末、ニッケル粉末の製造方法、およびニッケル粉末を用いた内部電極ペーストならびに電子部品
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20060101AFI20190902BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20190902BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20190902BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20190902BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20190902BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20190902BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20190902BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   B22F1/00 M
   C22C19/03 M
   B22F1/02 D
   B22F9/24 C
   H01B1/00 E
   H01B1/22 A
   H01B5/00 E
   H01B13/00 501Z
【請求項の数】21
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-56119(P2016-56119)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-171957(P2017-171957A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 潤志
(72)【発明者】
【氏名】村上 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】行延 雅也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄二
(72)【発明者】
【氏名】谷光 力
(72)【発明者】
【氏名】國房 義之
(72)【発明者】
【氏名】西山 治男
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−160964(JP,A)
【文献】 特開2015−190043(JP,A)
【文献】 特開2001−220608(JP,A)
【文献】 三谷 裕康, 横田 勝,無電解NiメッキCu複合粉末を使用したCu-γ2(Cu9Al4)-Ni系混合圧粉体の焼結過程について,日本金属学会誌,1972年,Vol. 36, No.12,P.1189-1195,ISSN:0021-4876
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00−9/30
B22F 1/00−8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略球状の粒子形状を有し、平均粒径が0.05μm〜0.5μmで、X線回折測定の回折データに基づいてWilson法を用いて算出した結晶子径が30nm〜80nm、窒素の含有量が0.02質量%以下であることを特徴とする、ニッケル粉末。
【請求項2】
アルカリ金属元素の含有量が0.01質量%以下である、請求項1に記載のニッケル粉末。
【請求項3】
前記ニッケル粉末を加圧成形したペレットについて、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で、25℃から1200℃まで加熱した時の、25℃における前記ペレット厚さを基準とした熱収縮率の測定において、収縮率が最大となる最大収縮温度が700℃以上であり、最大収縮温度における最大収縮率が22%以下であり、最大収縮温度以上1200℃以下の温度範囲での、25℃における前記ペレット厚さを基準とした最大収縮時のペレットからの最大膨張量が7.5%以下である、請求項1または請求項2に記載のニッケル粉末。
【請求項4】
少なくとも前記ニッケル粉末の表面に硫黄を含有し、硫黄含有量が1.0質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル粉末。
【請求項5】
粒径の標準偏差の平均粒径に対する割合を示すCV値が、20%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル粉末。
【請求項6】
少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤としてのヒドラジン、pH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物、および水を含有する反応液中において、還元反応によりニッケルを析出させてニッケル晶析粉を得る晶析工程を有するニッケル粉末の製造方法であって、
前記反応液を、水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩とを含むニッケル塩溶液と、前記ヒドラジンと前記アルカリ金属水酸化物とを含む混合還元剤溶液とを混合して作製し、
前記反応液中において還元反応が開始した後、該反応液にさらに前記ヒドラジンを追加投入し、および、
前記ヒドラジンのうちの前記還元剤溶液に配合されたヒドラジンである初期ヒドラジンの量を、ニッケルに対するモル比で0.05〜1.0の範囲とし、かつ、前記ヒドラジンのうちの前記反応液に追加投入されるヒドラジンである追加ヒドラジンの量を、ニッケルに対するモル比で1.0〜3.2の範囲とすることを特徴とする、ニッケル粉末の製造方法。
【請求項7】
少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤としてのヒドラジン、pH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物、および水を含有する反応液中において、還元反応によりニッケルを析出させてニッケル晶析粉を得る晶析工程を有するニッケル粉末の製造方法であって、
前記反応液を、水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩とを含むニッケル塩溶液と、前記ヒドラジンを含み、前記アルカリ金属水酸化物を含まない還元剤溶液とを混合し、次いで前記アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ金属水酸化物溶液を混合して作製し、
前記反応液中において還元反応が開始した後、該反応液にさらに前記ヒドラジンを追加投入し、および、
前記ヒドラジンのうちの前記還元剤溶液に配合されたヒドラジンである初期ヒドラジンの量を、ニッケルに対するモル比で0.05〜1.0の範囲とし、かつ、前記ヒドラジンのうちの前記反応液に追加投入されるヒドラジンである追加ヒドラジンの量を、ニッケルに対するモル比で1.0〜3.2の範囲とすることを特徴とする、ニッケル粉末の製造方法。
【請求項8】
前記追加ヒドラジンを、複数回に分けて前記反応液に追加投入する、請求項6または7に記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項9】
前記追加ヒドラジンを、連続的に滴下して前記反応液に追加投入する、請求項6または7に記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項10】
前記追加ヒドラジンの滴下速度を、ニッケルに対するモル比で0.8/h〜9.6/hの範囲とする、請求項9に記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項11】
前記ニッケルよりも貴な金属の金属塩として、銅塩と、金塩、銀塩、プラチナ塩、パラジウム塩、ロジウム塩、およびイリジウム塩から選ばれる1種以上の貴金属塩との少なくともいずれかを用いる、請求項6〜10のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項12】
前記銅塩と前記貴金属塩を併用し、かつ、該貴金属塩の前記銅塩に対するモル比を、0.01〜5.0の範囲とする、請求項11に記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項13】
前記ヒドラジンとして、ヒドラジン中に含まれる有機不純物を除去して精製されたヒドラジンを用いる、請求項6〜12のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびこれらの混合物のいずれかを用いる、請求項6〜13のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項15】
前記ニッケル塩溶液および前記還元剤溶液の少なくとも一方に、錯化剤を含ませる、請求項6〜14のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項16】
前記錯化剤として、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸誘導体、カルボン酸、カルボン酸塩、およびカルボン酸誘導体から選ばれる1種以上を用い、該錯化剤の含有量を、ニッケルに対するモル比で0.05〜1.2の範囲とする、請求項15に記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項17】
前記晶析反応が開始する時点の反応液の温度である反応開始温度を、60℃〜95℃の範囲とする、請求項6〜16のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項18】
前記晶析工程で得られたニッケル粉末を含む水溶液であるニッケル粉末スラリーに、硫黄コート剤を添加し、硫黄で表面修飾されたニッケル粉末を得る、請求項6〜17のいずれかに記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項19】
前記硫黄コート剤として、少なくともメルカプト基およびジスルフィド基のいずれかを含む水溶性硫黄化合物を用いる、請求項18に記載のニッケル粉末の製造方法。
【請求項20】
ニッケル粉末と有機溶剤とを含み、該ニッケル粉末が請求項1〜5のいずれかに記載のニッケル粉末であることを特徴とする、内部電極ペースト。
【請求項21】
少なくとも内部電極を備え、該内部電極は、請求項20に記載の内部電極ペーストを用いて形成された厚膜導体からなることを特徴とする、セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック部品などの電子部品の電極材として用いられる内部電極ペーストの構成材料であるニッケル粉末、特に湿式法により得られるニッケル粉末、およびその製造方法、および、該ニッケル粉末を用いた内部電極ペーストならびに該内部電極ペーストを電極材として用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル粉末は、電子回路を構成する電子部品であるコンデンサの材料、特に、積層セラミックコンデンサ(MLCC)や多層セラミック基板などの積層セラミック部品の内部電極などを構成する厚膜導体の材料として利用されている。
【0003】
近年、積層セラミックコンデンサの大容量化が進み、積層セラミックコンデンサの内部電極を構成する厚膜導体の形成に用いられる内部電極ペーストの使用量も大幅に増加している。このため、内部電極ペースト用の金属粉末として、高価な貴金属の使用に代替して、主としてニッケルなどの安価な卑金属が使用されている。
【0004】
積層セラミックコンデンサは、以下の工程を経て製造される。すなわち、最初に、ニッケル粉末、エチルセルロースなどのバインダ樹脂、および、ターピネオールなどの有機溶剤を混練することにより得られた内部電極ペーストを、誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷する。次に、この内部電極ペーストが印刷された誘電体グリーンシートを、内部電極ペーストと誘電体グリーンシートとが交互に重なるように積層し圧着することにより積層体を得る。さらに、得られた積層体を、所定の大きさにカットし、加熱によるバインダ樹脂の除去(以下、「脱バインダ処理」という)を行った後、1300℃程度の高温で焼成することにより、セラミック成形体が得られる。最後に、得られたセラミック成形体に外部電極を取り付けることにより、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0005】
内部電極ペースト中の金属粉末としてニッケルなどの卑金属が使用されていることから、前記積層体の脱バインダ処理は、これらの卑金属が酸化しないように、不活性雰囲気などの酸素濃度がきわめて低い雰囲気下にて行われる。
【0006】
積層セラミックコンデンサの小型化および大容量化に伴い、内部電極および誘電体はともに薄層化が進められている。これに伴って、内部電極ペーストに使用されるニッケル粉末の粒径も微細化が進行し、現在、平均粒径0.5μm以下のニッケル粉末が必要とされ、かつ、主として平均粒径0.3μm以下のニッケル粉末が使用されている。
【0007】
ここで、ニッケル粉末の製造方法は、気相法と湿式法に大別される。気相法としては、特開平4−365806号公報に記載されている、塩化ニッケル蒸気を水素により還元してニッケル粉末を作製する方法、および、特表2002−530521号公報に記載されている、ニッケル金属をプラズマ中で蒸気化してニッケル粉末を作製する方法がある。一方、湿式法としては、特開2002−053904号公報に記載されている、ニッケル塩溶液に還元剤を添加してニッケル粉末を作製する方法がある。
【0008】
上記気相法は、1000℃程度以上の高温プロセスのため、結晶性に優れる高特性のニッケル粉末を得るためには有効な手段ではあるが、得られるニッケル粉末の粒径分布が広くなるという問題がある。上述の通り、内部電極の薄層化においては、粗大粒子が含まれず、比較的粒径分布の狭い、平均粒径0.5μm以下のニッケル粉末が必要とされるため、気相法でこのようなニッケル粉末を得るためには、高価な分級装置の導入による分級処理が必須となる。
【0009】
なお、分級処理では、0.6μm〜2μm程度の任意の値の分級点を目途に、分級点よりも大きな粗大粒子の除去が可能であるが、分級点よりも小さな粒子の一部も同時に除去されてしまう。このように、分級処理を用いた場合、ニッケル粉末の実収が大幅に低下するという欠点がある。したがって、分級処理を行う場合は、上述のような高額な設備導入も相まって、製品のコストアップが避けられない。
【0010】
さらに、気相法で得られた、平均粒径が0.2μm以下、特に0.1μm以下のニッケル粉末においては、最も分級点が小さい0.6μm程度の分級処理では、粗大粒子の除去自体が困難になるため、このような分級処理を必要とする気相法では、今後の内部電極の一層の薄層化に対応することができない。
【0011】
一方、湿式法は、気相法と比較して、得られるニッケル粉末の粒径分布が狭いという利点がある。特に、特開2002−053904号公報に記載されている、ニッケル塩に銅塩を含む溶液に還元剤としてヒドラジンを含む溶液を添加してニッケル粉末を作製する方法では、ニッケルよりも貴な金属の金属塩(核剤)との共存下でニッケル塩(正確には、ニッケルイオン(Ni2+)、またはニッケル錯イオン)がヒドラジンで還元されるため、核発生数の制御によりその粒径が制御され、かつ、核発生と粒子成長との均一性に起因してより狭い粒径分布を有する、微細なニッケル粉末が得られることが知られている。
【0012】
しかしながら、湿式法により得られたニッケル粉末を積層セラミックコンデンサの内部電極用の内部電極ペーストに適用した場合に、その焼結特性や熱収縮特性の悪化が生じるという問題がある。特に、薄層化が進行した積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極の電極連続性の低下が顕在化して、積層セラミックコンデンサの電気特性が著しく劣化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平4−365806号公報
【特許文献2】特表2002−530521号公報
【特許文献3】特開2002−053904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、湿式法により得られるニッケル粉末であっても、高い結晶性を有し、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部電極用の内部電極ペーストに適用した場合に、優れた焼結特性や熱収縮特性を示す微細なニッケル粉末を、簡易にかつ低コストで提供すること、および、このようなニッケル粉末を用いた内部電極ペーストならびにこの内部電極ペーストを用いた、積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のニッケル粉末は、略球状の粒子形状を有し、平均粒径が0.05μm〜0.5μm、結晶子径が30nm〜80nm、窒素の含有量が0.02質量%以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明のニッケル粉末において、アルカリ金属元素の含有量は0.01質量%以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のニッケル粉末を加圧成形したペレットについて、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で、25℃から1200℃まで加熱した時の、25℃における前記ペレット厚さを基準とした熱収縮率の測定において、収縮率が最大となる(最大収縮時の)温度(最大収縮温度)が700℃以上であり、最大収縮温度における収縮率(最大収縮率)が22%以下であり、最大収縮温度以上1200℃以下の温度範囲での、25℃における前記ペレット厚さを基準とした最大収縮時のペレットからの最大膨張量(高温膨張率)が7.5%以下となることが好ましい。
【0018】
本発明のニッケル粉末は、少なくともその表面に硫黄(S)を含有し、この硫黄含有量が1.0質量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明のニッケル粉末は、その粒径の標準偏差の、その平均粒径に対する割合を示すCV値(変動係数)が20%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明のニッケル粉末の製造方法は、少なくとも水溶性ニッケル塩、ニッケルよりも貴な金属の塩、還元剤としてのヒドラジン、pH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物、および水を含有する反応液中において、還元反応によりニッケルを析出させてニッケル晶析粉を得る晶析工程を有しており、前記反応液を、水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩とを含むニッケル塩溶液と、前記ヒドラジンと前記アルカリ金属水酸化物とを含む混合還元剤溶液とを混合して作製する、あるいは、水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩とを含むニッケル塩溶液と、前記ヒドラジンを含み、前記アルカリ金属水酸化物を含まない還元剤溶液とを混合し、次いで前記アルカリ金属水酸化物を含むアルカリ金属水酸化物溶液を混合して作製する。
【0021】
特に、本発明のニッケル粉末の製造方法では、前記反応液中において還元反応が開始した後、該反応液にさらに前記ヒドラジンを追加投入することに特徴がある。
【0022】
本発明のニッケル粉末の製造方法では、前記ヒドラジンのうちの前記還元剤溶液に配合されたヒドラジンである初期ヒドラジンの量を、ニッケルに対するモル比で0.05〜1.0の範囲とし、かつ、前記ヒドラジンのうちの前記反応液に追加投入されるヒドラジンである追加ヒドラジンの量を、ニッケルに対するモル比で1.0〜3.2の範囲とする。
【0023】
前記追加ヒドラジンは、複数回に分けて追加投入することもでき、あるいは、連続的に滴下して追加投入することもできる。
【0024】
前記追加ヒドラジンを、連続的に滴下して投入する場合、その滴下速度を、ニッケルに対するモル比で0.8/h〜9.6/hの範囲とすることが好ましい。
【0025】
前記ニッケルよりも貴な金属の金属塩として、銅塩と、金塩、銀塩、プラチナ塩、パラジウム塩、ロジウム塩、およびイリジウム塩から選ばれる1種以上の貴金属塩との少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0026】
この場合、前記銅塩と前記貴金属塩を併用し、かつ、該貴金属塩の前記銅塩に対するモル比(貴金属塩のモル数/銅塩のモル数)を、0.01〜5.0の範囲とすることが好ましい。
【0027】
前記ヒドラジンとして、ヒドラジン中に含まれる有機不純物を除去して精製されたヒドラジンを用いることが好ましい。
【0028】
前記アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびこれらの混合物のいずれかを用いることが好ましい。
【0029】
前記ニッケル塩溶液および前記還元剤溶液の少なくとも一方に、錯化剤を含ませることが好ましい。
【0030】
この場合、該錯化剤として、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸誘導体、カルボン酸、カルボン酸塩、およびカルボン酸誘導体から選ばれる1種以上を用い、該錯化剤の含有量を、ニッケルに対するモル比で0.05〜1.2の範囲とすることが好ましい。
【0031】
本発明のニッケル粉末の製造方法において、晶析反応が開始する時点の前記反応液の温度(反応開始温度)を、60℃〜95℃の範囲とすることが好ましい。
【0032】
前記晶析工程で得られたニッケル粉末を含む水溶液であるニッケル粉末スラリーに、硫黄コート剤を加え、硫黄で該ニッケル粉末を表面修飾することが好ましい。
【0033】
前記硫黄コート剤として、少なくともメルカプト基(−SH)およびジスルフィド基(−S−S−)のいずれかを含む水溶性硫黄化合物を用いることが好ましい。
【0034】
本発明の内部電極ペーストは、ニッケル粉末と有機溶剤とを含み、該ニッケル粉末が本発明のニッケル粉末であることを特徴とする。
【0035】
本発明の電子部品は、少なくとも内部電極を備え、該内部電極は、本発明の内部電極ペーストを用いて形成された厚膜導体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明のニッケル粉末は、湿式法により得られるニッケル粉末でありながら、狭い粒度分布を有し、かつ、窒素(N)やアルカリ金属元素などの不純物濃度が低いため、このニッケル粉末を用いた内部電極ペーストにおいて、不純物に起因した焼結特性や熱収縮特性の悪化を抑制することができる。このため、内部電極ペーストを焼成した後の厚膜導体において電極連続性を高く維持し、電子部品の電気特性の劣化を抑制することができるため、本発明のニッケル粉末は、積層セラミックコンデンサの内部電極の薄層化に対してより好適である。
【0037】
また、本発明のニッケル粉末の製造方法によれば、湿式法の晶析工程において、還元剤としてのヒドラジンを複数回に分けて反応液に投入(以下、「分割投入」という)することで、得られるニッケル粉末(ニッケル晶析粉)の結晶性を効果的に高めることができる。このため、内部電極ペーストやこの内部電極ペーストを用いて製造される内部電極の材料として好適な本発明のニッケル粉末を、簡便かつ低コストで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明のニッケル粉末の製造方法における、基本的な製造工程の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明のニッケル粉末の製造方法における、晶析工程の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明のニッケル粉末の製造方法における、晶析工程の別例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の電子部品である、積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、図4に示す積層セラミックコンデンサのLT断面図である。
図6図6は、本発明の実施例1に係るニッケル粉末の熱機械分析(TMA)測定で得られた熱収縮挙動のグラフである。
図7図7は、本発明の実施例2に係るニッケル粉末の熱機械分析(TMA)測定で得られた熱収縮挙動のグラフである。
図8図8は、本発明の実施例8に係るニッケル粉末の熱機械分析(TMA)測定で得られた熱収縮挙動のグラフである。
図9図8は、比較例1に係るニッケル粉末の熱機械分析(TMA)測定で得られた熱収縮挙動のグラフである。
図10図9は、比較例3に係るニッケル粉末の熱機械分析(TMA)測定で得られた熱収縮挙動のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明者らは、湿式法におけるニッケル粉末の晶析反応、すなわち、ニッケル塩と還元剤としてのヒドラジンを含む反応液中での、還元反応で析出する極微細なニッケル粒子である初期核の発生から粒子成長までの一連の反応に着目し、晶析工程の各種条件を最適化した結果、ニッケル粉末中における、上記反応液中の薬剤成分起因の不純物である窒素やアルカリ金属元素の含有量を大幅に低減できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。
【0040】
以下、本発明のニッケル粉末およびその製造方法について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、本発明に対して種々の変更を加えることも可能である。
【0041】
なお、本発明におけるニッケル粉末として、晶析工程で得られるものを特にニッケル晶析粉と記載するが、ニッケル晶析粉をそのままニッケル粉末として用いることもできるが、後述するように、ニッケル晶析粉に解砕処理などを施した後の粉末をニッケル粉末として用いることもできる。
【0042】
(1)ニッケル粉末
本発明のニッケル粉末は、湿式法により得られ、略球状の粒子形状を有し、平均粒径が0.05μm〜0.5μm、結晶子径が30nm〜80nm、窒素の含有量が0.02質量%以下、および、アルカリ金属元素の含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする。
【0043】
(粒子形状)
本発明のニッケル粉末は、たとえば、内部電極における電極連続性の観点などから、略球状の(球形度の高い)粒子形状を有することが好ましい。略球状とは、球形、楕円形、あるいは実質的に球形や楕円形とみなせる程度の形状をいう。
【0044】
(平均粒径)
本発明におけるニッケル粉末の平均粒径は、ニッケル粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から求めた数平均の粒径を意味する。具体的には、ニッケル粉末の平均粒径は、たとえばSEM写真を画像処理することにより、個々のニッケル粒子の面積を測定し、該面積から真円換算でそれぞれのニッケル粒子の直径を算出して、さらにその平均値を求めることにより得られる。
【0045】
本発明のニッケル粉末の平均粒径は、0.05μm 〜0.5μmの範囲であり、0.1μm〜0.3μmの範囲にあることが好ましい。ニッケル粉末の平均粒径を0.5μm以下とすることで、薄層化された積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部電極に好適に適用することが可能となる。この観点からは、平均粒径の下限は特に限定されないが、ニッケル粉末の平均粒径を0.05μm以上とすることにより、乾燥状態のニッケル粉末の取り扱いが容易となる。
【0046】
(粒径のCV値)
本発明では、湿式法によりニッケル粉末を得ているが、個々のニッケル粒子の核生成に影響を及ぼす、ニッケルよりも貴な金属の金属塩の添加条件によって、粒径分布の狭いニッケル粉末を得ることが可能となる。この粒度分布の指標として、粒径の標準偏差をその平均粒径で除した値(%)であるCV値(変動係数:coefficient of variation)[(粒径の標準偏差/平均粒径)×100]で表すことができ、本発明のニッケル粉末のCV値は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。ニッケル粉末のCV値が20%を超えると、粒度分布が広いために、薄層化された積層セラミックコンデンサへの適用が困難となる場合が生じる。粒度分布は狭いほど良好であるため、CV値の下限は特に限定されることはない。
【0047】
(結晶子径)
結晶子径は、結晶子サイズとも呼ばれるが、結晶化の程度を示す指標であり、結晶子径が大きいほど高結晶化していることを示している。湿式法を用いて得られる本発明のニッケル粉末の結晶子径は、30nm〜80nmの範囲であるが、好ましくは35nm〜80nmの範囲であり、より好ましくは45nm〜80nmの範囲である。
【0048】
結晶子径が30nm未満では、上述の通り、結晶粒界が多く存在するため窒素やアルカリ金属元素を含む不純物量が低減されず、積層セラミックコンデンサの内部電極に適用した場合、特に薄層化が進行した積層セラミックコンデンサにおいては、電極連続性の低下が顕在化することで、積層セラミックコンデンサの電気特性が著しく劣化する。
【0049】
本発明では、結晶子径の上限を80nmとしているが、結晶子径が80nmを超えるニッケル粉末であっても、ニッケル粉末の特性上は何ら支障なく、本発明の効果が損なわれることはない。ただし、結晶子径が80nmを超えるニッケル粉末を、湿式法の晶析粉として製造することは非常に困難であり、たとえば、本発明のニッケル晶析粉を不活性雰囲気や還元性雰囲気中で、300℃程度以上で熱処理すれば得ることは可能であるが、熱処理時にニッケル粒子同士が結合し、すなわち、互いの接触点で焼結して連結粒子が発生しやすくなるという問題を生じるため、その上限を80nmとすることが好ましい。
【0050】
ここで、本発明におけるニッケル粉末の結晶子径は、X線回折測定を行い、その回折データに基づいて、Wilson法を用いて算出している。ここで、結晶子径測定において一般に用いられるScherrer法では、結晶子径と結晶歪みを区別せずにまとめて評価するため、結晶歪みが大きい粉末では、結晶歪みを考慮しない場合の結晶子径よりも小さめの測定値が得られる。一方、Wilson法では、結晶子径と結晶歪みを個別に求めるため、結晶歪みに左右されにくい結晶子径を得られるという特徴がある。
【0051】
(窒素含有量およびアルカリ金属含有量)
ニッケル粉末の晶析の過程において、還元剤としてヒドラジンが使用される。窒素は、還元剤であるヒドラジンに起因して、ニッケル粉末に不純物として含有される。また、pHが高くほどヒドラジンの還元力が増強されることから、pH調整剤として、アルカリ金属水酸化物が広く用いられている。これらアルカリ金属水酸化物の構成元素であるアルカリ金属も、窒素と同様に、ニッケル粉末に不純物として含有される。
【0052】
このような反応液中の薬剤に起因する窒素やアルカリ金属元素などの不純物は、晶析工程の後でニッケル粉末に純水による十分な洗浄を施しても、完全に除去されることはなく、ニッケル粉末中に一定量が残留するため、これらの不純物は、ニッケル粒子表面への付着にしているのではなく、ニッケル粒子中に取り込まれているものと考えられる。
【0053】
窒素やアルカリ金属元素などの不純物は、ニッケル粉末において、ニッケルの結晶構造(面心立方構造:fcc)の結晶性が乱れた領域、すなわち、結晶粒界内に元素として介在した状態で、ニッケル粒子に取り込まれているものと推測される。したがって、ニッケル粉末の結晶粒界の総面積を相対的に低減させること、すなわち、ニッケル粉末の結晶子径を増大させて高結晶化させることは、ニッケル粉末中の窒素やアルカリ金属元素などの不純物含有量を低減させるのに有効であると考えられる。
【0054】
本発明のニッケル粉末は、結晶子径が30nm以上と高結晶化しており、大きな結晶子で構成されているため、結晶粒界の存在割合が少なく、その結果、結晶粒界に取り込まれると推定される不純物の含有量が大幅に低下するものと考えられる。
【0055】
本発明のニッケル粉末における、ニッケル粉末の晶析工程に必須の還元剤であるヒドラジンに起因する窒素の含有量は、0.02質量%以下、好ましくは0.015質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
【0056】
また、本発明のニッケル粉末では、ヒドラジンの還元作用を増強するために添加されるpH調整剤であるアルカリ金属水酸化物に起因するアルカリ金属の含有量は、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.008質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下である。
【0057】
なお、アルカリ金属は、アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた場合にはナトリウムであり、水酸化カリウムを用いた場合にはカリウムであり、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの両方を用いた場合には、ナトリウムとカリウムの両方である。
【0058】
ニッケル粉末におけるアルカリ金属の含有量は、晶析工程後に得られたニッケル粉末を洗浄する際の洗浄度合によって影響を受ける。たとえば、洗浄が不十分だと、ニッケル粉末に付着した反応液に起因するアルカリ金属の含有量が大幅に増加することになる。ここで、本発明におけるアルカリ金属の含有量は、ニッケル粉末の内部(主に結晶粒界内)に含まれるアルカリ金属を対象としており、よって、純水で十分に洗浄されたニッケル粉末におけるアルカリ金属の含有量を意味する。なお、本発明において、十分な洗浄とは、たとえば、導電率が1μS/cmの純水を用いた場合、ニッケル粉末のろ過洗浄のろ液の導電率が10μS/cm以下になる程度の洗浄を意味する。
【0059】
本発明のニッケル粉末では、このような薬剤起因の不純物である窒素やアルカリ金属などの含有量が低減されるために、ニッケル粉末の熱収縮挙動が良好となる。一方、ニッケル粉末に含まれる窒素の含有量が0.02質量%を超えたり、および/または、アルカリ金属の含有量が0.01質量%を超えたりした場合には、積層セラミックコンデンサの製造時において、内部電極ペーストの焼結特性や熱収縮特性の悪化により、内部電極ペーストの焼成により得られる厚膜導体の電極連続性が低くなり、積層セラミックコンデンサの電気特性が劣化する場合がある。窒素およびアルカリ金属の含有量の下限については、特に限定されることはなく、分析機器による組成分析において、窒素およびアルカリ金属の含有量が検出限界値以下となるニッケル粉末も、本発明の範囲に含まれる。
【0060】
(熱収縮挙動)
本発明のニッケル粉末は、反応液中の薬剤起因の不純物である窒素やアルカリ金属などの含有量が低減されることで、ニッケル粉末を焼結させた場合の熱収縮挙動が良好となる。すなわち、本発明のニッケル粉末を加圧成形したペレットについて、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で、25℃から1200℃まで加熱した時の、25℃における前記ペレット厚さを基準とした熱収縮率の測定において、収縮率が最大となる(最大収縮時の)温度(最大収縮温度)が700℃以上であり、最大収縮温度における収縮率(最大収縮率)が22%以下であり、最大収縮温度以上1200℃以下の温度範囲での、25℃における前記ペレット厚さを基準とした最大収縮時のペレットからの最大膨張量(高温膨張率=[25℃における前記ペレット厚さを基準とした700℃以上1200℃以下における最大収縮率]−[25℃における前記ペレット厚さを基準とした最大収縮時温度以上1200℃以下における該ペレットが最も膨張した時点での収縮率])が7.5%以下となる。
【0061】
窒素やアルカリ金属などの不純物は、主としてニッケル粉末の結晶粒界内に存在していると考えられるが、これらのうちのアルカリ金属は、ニッケル粉末を焼結させようとした際に、その焼結を阻害する働き、すなわち、結晶粒界の消滅を抑制して結晶成長を阻害する働きをする。したがって、ニッケル粉末中のアルカリ金属の含有量が増加するほど、焼結開始温度が高くなって、焼結開始時に急激に熱収縮が生じることになり、逆に、アルカリ金属の含有量が少なくなるほど、低温からゆっくりと焼結が生じて、焼結時の熱収縮が穏やかに進行することになる。
【0062】
ニッケル粉末の熱収縮後に、さらに加熱を進めると、焼結体の緻密化および結晶成長が進行し、ニッケル粉末の粒内(主に結晶粒界内)に取り込まれていた窒素などの気体成分元素の不純物が放出されることになる。ニッケル粉末中の窒素の含有量が多いと、放出された窒素がガス化して急激に膨張する一方で、焼結体の緻密化によって焼結体外部へのガスの移動が妨げられるため、ニッケル粉末の焼結体自体が大きく膨張する要因となる。
【0063】
以上のように、不純物である窒素とアルカリ金属の含有量が多いと、急激な熱収縮と、その後の大幅な膨張という熱収縮挙動の悪化を生じることになる。積層セラミックコンデンサ製造時の焼成処理では、誘電体グリーンシートとニッケル粉末との熱収縮挙動の乖離が大きくなるほど、内部電極ペーストの焼成により得られる厚膜導体の電極連続性が低下し、積層セラミックコンデンサの電気特性の劣化の原因となる。
【0064】
本発明のニッケル粉末は、窒素やアルカリ金属などの不純物の含有量が十分に低減していることから、焼結開始時の急激な収縮や熱収縮後の膨張が抑制されることから、本発明のニッケル粉末の適用により、厚膜導体における高い電極連続性と積層セラミックコンデンサなどの電子部品における優れた電気特性を実現できる。
【0065】
ここで、本発明におけるニッケル粉末の熱収縮挙動は、TMA(熱機械分析)装置を用いて測定される。TMAでは、ニッケル粉末を加圧成形したペレットを加熱しながらその寸法変化を計測することにより、その熱収縮挙動が測定される。なお、ペレットは、たとえば金型に形成された円柱状の孔に粉末を充填し、該粉末を、10MPa〜200MPa程度の圧力で圧縮することにより、圧粉体として成形される。
【0066】
TMA装置を用いた粉末の熱収縮挙動の測定については、不活性雰囲気、または、還元雰囲気で行うことが好ましい。なお、不活性雰囲気は、アルゴン、ヘリウムなどの希ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気、またはこれらを混合したガス雰囲気であり、還元雰囲気とは、不活性雰囲気の希ガスや窒素ガスに水素を5容量%以下混合させたガス雰囲気である。TMA装置内に流し込む不活性雰囲気ガスまたは還元雰囲気ガスの流量は、たとえば、50ml/min〜2000ml/minとすることが好ましい。一般に、TMA装置を用いた粉末の熱収縮挙動の測定では、25℃から融点を超えない温度範囲において行われ、ニッケル粉末の場合には、たとえば、25℃から1200℃の温度範囲で測定することができる。昇温速度は、5℃/min〜20℃/minとすることが好ましい。
【0067】
本発明のニッケル粉末では、このニッケル粉末を加圧成形したペレットについて、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で、25℃から1200℃まで昇温した場合の熱収縮率の測定において、ペレット厚さの収縮率が最大となる温度である最大収縮温度が700℃以上となる。また、25℃におけるペレット厚さを基準とした、最大収縮温度におけるペレット厚さの最大収縮率が、22%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは18%以下となる。さらに、最大収縮温度以上1200℃以下の温度範囲において、25℃におけるペレット厚さを基準とした最大収縮時のペレットからの最大膨張量である、該ペレットの高温膨張率が、0%〜7.5%、好ましくは0%〜5%、より好ましくは0%〜3%となる。
【0068】
なお、ペレットの最大収縮率が22%を超えると、積層セラミックコンデンサ製造時の焼成において、誘電体グリーンシートとの熱収縮挙動の乖離が激しくなり、厚膜導体の電極連続性が低くなり、電子部品の電気特性の劣化の原因になる。下限については特に限定されないが、ニッケル粉末では通常15%を下回ることは少なく、15%を下限の目安とすればよい。
【0069】
また、高温膨張率が7.5%を超えると、同じく誘電体グリーンシートとの熱収縮挙動の乖離が激しくなり、厚膜導体の電極連続性が低く、電子部品の電気特性の劣化の原因になる。一方、700℃以上の温度領域で膨張が起きないことが最も好ましい。すなわち、高温膨張率の下限は0%である。
【0070】
(硫黄含有量)
本発明のニッケル粉末は、その表面に硫黄を含有していることが好ましい。晶析工程で得られたニッケル粉末に、硫黄コート剤を含有する処理液と接触させる表面処理を施すと、その表面を硫黄で修飾する表面処理を施すことができる。
【0071】
ニッケル粉末は、その表面が触媒的に働いて、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースなどのバインダ樹脂の熱分解を促進する作用があり、積層セラミックコンデンサ製造時の脱バインダ処理にて、昇温中に低温からバインダ樹脂が分解されて、それに伴う分解ガスが多量に発生する結果、内部電極にクラックが発生することがある。このニッケル粉末の表面が有するバインダ樹脂の熱分解を促進する作用は、ニッケル粉末の表面に硫黄が存在すると抑制される。
【0072】
硫黄コート処理が施されたニッケル粉末における硫黄含有量は、1.0質量%以下が好ましく、0.03質量%〜0.5質量%がより好ましく、0.04質量%〜0.3質量%がさらに好ましい。ここで、硫黄含有量が1.0質量%を超えても、バインダ樹脂の熱分解を抑制する効果のさらなる向上は望めず、かえって積層セラミックコンデンサ製造時の焼成において、硫黄を含有するガスが発生しやすくなり、積層セラミックコンデンサ製造装置を腐食させることがあるため、好ましくない。
【0073】
(電極被覆率(電極連続性))
積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極層が積層された積層体により構成される。この積層体は焼成により形成されるため、内部電極層の過剰な収縮や、焼成前の内部電極層の厚みの薄さなどが原因となって、焼成後の内部電極層が途切れて不連続になることがある。このような内部電極層が不連続となった積層セラミックコンデンサは、所望の電気特性が得られないため、内部電極層の連続性(電極連続性)は積層セラミックコンデンサの特性を発揮する上で重要な要因となる。
【0074】
この内部電極層の連続性を評価する指標の一例として、電極被覆率が挙げられる。この電極被覆率は、焼成された誘電体層と内部電極層からなる積層体の断面を、たとえば光学顕微鏡を使って顕微鏡観察し、得られた観察像に対して画像解析することにより、内部電極層の連続している部分の実測面積を計測し、設計上の理論面積に対する比率として表したものである。
【0075】
この内部電極層の電極被覆率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上がさらに好ましい。電極被覆率が80%未満では、内部電極層の連続性が低下し、積層セラミックコンデンサにおいて所望の電気特性が得られないことがある。電極被覆率の上限は特に定めないが、100%に近づくほど良好である。
【0076】
(2)ニッケル粉末の製造方法
図1に、湿式法によるニッケル粉末の製造方法における基本的な製造工程の一例を示す。本発明のニッケル粉末の製造方法は、湿式法を用いており、水溶性ニッケル塩とニッケルよりも貴な金属の金属塩を含むニッケル塩溶液と、還元剤としてのヒドラジンとpH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物を含む混合還元剤溶液とを混合して、あるいは、前記ニッケル塩溶液と、ヒドラジンを含むがアルカリ金属水酸化物を含まない還元剤溶液とを混合したのちに、さらにアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ金属水酸化物溶液を添加して、反応液を作製し、還元反応によりニッケルを析出させてニッケル粉末を得る晶析工程を備える。
【0077】
特に、本発明のニッケル粉末の製造方法では、この晶析工程において、前記反応液を作製した後、該反応液に、還元剤であるヒドラジンを複数回に分けて追加投入しつつ、あるいは、ヒドラジンを連続的に滴下して追加投入しつつ、ニッケル粉末を晶析させることを特徴としている。
【0078】
(2−1)晶析工程
(2−1−1)ニッケル塩溶液
(a)水溶性ニッケル塩
本発明に用いる水溶性ニッケル塩は、水に易溶であるニッケル塩であれば、特に限定されるものではなく、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、および硝酸ニッケルから選ばれる1種以上を用いることができる。これらのニッケル塩の中では、安価で容易に調達できるという観点から、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、あるいはこれらの混合物がより好ましい。
【0079】
(b)ニッケルよりも貴な金属の金属塩
ニッケルよりも貴な金属は、晶析工程のニッケル析出過程において、結晶の核を発生させるための核剤として機能する。すなわち、ニッケルよりも貴な金属の金属塩をニッケル塩溶液に配合することで、ニッケルを還元析出させる際に、ニッケルよりも貴な金属の金属イオンが、ニッケルイオンよりも先に還元されて初期核となり、この初期核が粒子成長することで微細なニッケル粉末を得ることができる。
【0080】
ニッケルよりも貴な金属の金属塩としては、水溶性の銅塩、あるいは、金塩、銀塩、プラチナ塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩などの水溶性の貴金属塩が挙げられる。特に、水溶性の銅塩、銀塩、パラジウム塩のうちの少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0081】
水溶性の銅塩としては硫酸銅を、水溶性の銀塩としては硝酸銀を、水溶性のパラジウム塩としては塩化パラジウム(II)ナトリウム、塩化パラジウム(II)アンモニウム、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)などを用いることができるが、これらには限られない。
【0082】
ニッケルよりも貴な金属の金属塩として、上記に例示した銅塩、および/または、貴金属塩を複数併用することで、得られるニッケル粉末の粒径をより微細に制御したり、粒度分布を狭くしたりすることが可能となる。特に、銅塩と、金塩、銀塩、プラチナ塩、パラジウム塩、ロジウム塩、イリジウム塩などから選ばれる一種以上の貴金属塩とを併用した、二種以上の成分からなるニッケルより貴な金属の金属塩の混合物からなる複合核剤においては、粒径制御がより容易となり、また粒度分布をより狭くすることが可能となる。
【0083】
銅塩と貴金属塩から選択される成分の一種以上の併せて二種以上の成分からなる塩を併用した複合核剤の場合には、貴金属塩の銅塩に対するモル比(貴金属塩のモル数/銅塩のモル数)が0.01〜5.0の範囲内、好ましくは0.02〜1の範囲内、さらに好ましくは0.05〜0.5の範囲内であることが好ましい。上記モル比が0.01未満であったり、5.0を超えたりすると、異なる核剤の併用の効果を得にくく、粒径のニッケル粉末の粒径のCV値が20%を超えて大きくなり、粒度分布が広がってしまう。銅塩と貴金属塩からなる複合核剤の特に好ましい組合せは、上記粒径制御性や狭い粒度分布に及ぼす効果の面から考えると、銅塩とパラジウム塩との組み合わせである。
【0084】
(c)その他の含有物
本発明のニッケル塩溶液には、上記のニッケル塩およびニッケルよりも貴な金属の金属塩以外に、錯化剤を配合することが好ましい。錯化剤は、ニッケル塩溶液中において、ニッケルイオン(Ni2+)と錯体を形成することで、晶析工程において、粒径が細かく粒度分布が狭い上に、粗大粒子や連結粒子が少なく、球状性の良好なニッケル粉末を得ることが可能となる。
【0085】
錯化剤としては、ヒドロキシカルボン酸、その塩またはその誘導体、あるいは、カルボン酸、その塩またはその誘導体を用いることが好ましく、具体的には、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、蟻酸、酢酸、ピルビン酸、およびこれらの塩や誘導体が挙げられる。
【0086】
錯化剤以外にも、ニッケル粉末の粒径や粒度分布を制御する目的で、分散剤を配合することもできる。分散剤としては公知の成分を用いることができるが、具体的には、トリエタノールアミン(N(COH))、ジエタノールアミン(別名:イミノジエタノール)(NH(COH))、オキシエチレンアルキルアミンなどのアミン類、およびこれらの塩や誘導体、もしくは、アラニン(CHCH(COOH)NH)、グリシン(HNCHCOOH)などのアミノ酸類、およびこれらの塩や誘導体が挙げられる。
【0087】
また、本発明のニッケル塩溶液には、配合するそれぞれの溶質の溶解度を高めるために、溶媒として、水とともにアルコールなどの水溶性の有機溶媒を配合することもできる。溶媒に用いる水についても、晶析により得られるニッケル粉末中の不純物量を低減させる観点から、純水を用いることが好ましい。
【0088】
なお、本発明において用いられるニッケル塩溶液に配合される成分の混合順序は特に限定されることはない。
【0089】
(2−1−2)還元剤溶液
(a)還元剤
本発明では、還元剤溶液に含まれる還元剤としてヒドラジン(N、分子量:32.05)を用いる。なお、ヒドラジンには、無水のヒドラジンの他に、ヒドラジン水和物である抱水ヒドラジン(N・HO、分子量:50.06)があり、どちらを用いてもかまわない。ヒドラジンは、還元力が高い、還元反応の副生成物が反応液中に生じない、不純物が少ない、および入手が容易であるという特徴を有しているため、還元剤として好適である。
【0090】
ヒドラジンとしては、具体的には、市販されている工業グレードの60質量%抱水ヒドラジンを用いることができる。ただし、このような市販のヒドラジンや抱水ヒドラジンを用いる場合、その製造過程で、副生成物として複数の有機物が不純物として混入する。これらの有機不純物のうち、特にピラゾールやその化合物に代表される、孤立電子対を有する窒素原子が2個以上存在する複素環式化合物は、ヒドラジンの還元力を低下させる作用を持つことが知られている。したがって、ピラゾールやその化合物などの有機不純物を除去したヒドラジンあるいは抱水ヒドラジンを用いることが、晶析工程での還元反応を安定して進行させる上でより好ましい。
【0091】
(b)その他の含有物
本発明の還元剤溶液には、ニッケル塩溶液と同様に、錯化剤、分散剤などを配合することもできる。さらに、溶媒として、水とともにアルコールなどの水溶性の有機溶媒を配合することもできる。溶媒に用いる水についても、晶析により得られるニッケル粉末中の不純物量を低減させる観点から、純水を用いることが好ましい。なお、還元剤溶液に配合される成分の混合順序は、特に限定されることはない
(2−1−3)錯化剤量
ニッケル塩溶液または還元剤溶液の少なくとも一方に含まれる錯化剤の量は、ニッケルに対する錯化剤(ヒドロキシカルボン酸もしくはカルボン酸、またはこれらの類縁体)のモル比(ヒドロキシカルボン酸イオンもしくはカルボン酸イオンのモル数/ニッケルのモル数)の値が、0.1〜1.2の範囲となるように調整される。モル比が大きくなるほどニッケル錯体の形成が進み、ニッケル晶析粉が析出および成長する際の反応速度が遅くなるが、反応速度が遅いほど、初期に発生した微細なニッケル粒子の核同士の凝集および結合よりも、核成長が促進されて、ニッケル晶析粉中の粒界が減少する傾向となり、反応液に含まれる薬剤起因の不純物がニッケル晶析粉中に取り込まれにくくなる。よって、モル比を0.1以上とすることで、反応液に含まれる薬剤に起因する不純物のニッケル晶析粉中における含有量を低く、ニッケル粒子の結晶子径を大きく、かつ、その粒子表面の平滑性を高くすることが可能となる。一方、モル比が1.2を超えても、ニッケル粉末を構成する粒子の結晶子径や粒子表面の平滑性を改善する効果に大きな違いは生じず、逆に、錯化作用が強くなり過ぎることに起因して、ニッケル粒子生成過程で連結粒子を形成しやすくなったり、錯化剤の増量により薬剤コストが増加して経済的に不利となったりするため、上限値を超える量の錯化剤を添加することは、好ましくない。
【0092】
(2−1−4)アルカリ金属水酸化物
還元剤としてのヒドラジンの機能(還元力)は、特にアルカリ性溶液中において高まることから、還元剤溶液、あるいは、ニッケル塩溶液と還元剤溶液との混合液に、pH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物が添加される。pH調整剤としては、特に限定されるものではないが、通常、入手の容易さや価格の面から、アルカリ金属水酸化物が用いられている。具体的には、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0093】
アルカリ金属水酸化物の配合量は、ヒドラジンの還元力が十分に高まって、晶析反応速度が大きくなるように、反応液のpHが、反応温度において、9.5以上、好ましくは10.0以上、さらに好ましくは10.5以上となるように調整されることが好ましい。なお、反応液のpHは、たとえば、25℃と80℃程度における値を比較すると、高温の80℃の方が小さくなるため、この温度によるpHの変動を考慮した上で、アルカリ金属水酸化物の配合量を決定することが好ましい。
【0094】
(2−1−5)晶析手順
本発明のニッケル粉末の製造方法における晶析工程は、以下の手順で実施することができる。
【0095】
まず、晶析工程の第1の実施形態は、図2に示すように、ニッケル塩溶液とヒドラジンを含む還元剤溶液にpH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物が添加された混合還元剤溶液とを混合させて反応液を作製した後に、ヒドラジンを反応液中に複数回に分けて追加投入するか、あるいは、ヒドラジンを連続的に滴下して追加投入する方法である。
【0096】
一方、晶析工程の第2の実施形態は、図3に示すように、ニッケル塩溶液とヒドラジンを含む還元剤溶液(pH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物は含まれていない)とを混合し、次いでpH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ金属水酸化物溶液とを混合させて反応液を作製した後に、ヒドラジンを反応液中に複数回に分けて追加投入するか、あるいは、ヒドラジンを連続的に滴下して追加投入する方法である。
【0097】
ところで、晶析工程の第2の実施形態では、ニッケル塩と核剤(ニッケルよりも貴な金属の金属塩)を含むニッケル塩溶液に、pH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物を含まない還元剤溶液を予め混合して、核剤のニッケルよりも貴な金属を含んだニッケルヒドラジン錯体粒子のスラリー液を得た後、このスラリー液をpH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ金属水酸化物溶液とを混合して反応液を作製している。なお、ニッケル塩溶液とヒドラジンを含む還元剤溶液を混合した後の保持時間は、ニッケルヒドラジン錯体粒子が形成されれば十分であり、2分程度以上であればよい。
【0098】
この方法では、ニッケル塩、核剤、および還元剤のヒドラジンが均一に混合された状態で、アルカリ金属水酸化物との混合により、反応液の液性を高アルカリ(高いpH)としてヒドラジンの還元力を高めて反応液中で核発生させるため、多くの初期核数を均一に形成でき、ニッケル晶析粉(ニッケル粉末)の微細化と粒度分布の狭小化に有効な方法である。
【0099】
(2−1−6)ヒドラジンの分割投入
本発明では、晶析工程において、所要量のヒドラジンの全量を還元剤溶液に一括投入するのではなく、ヒドラジンを複数回に分けて反応液に投入する、ヒドラジンの分割投入が行われる。すなわち、上述のヒドラジンの所要量のうちの一部のヒドラジンを、初期ヒドラジンとして還元剤用液に予め配合することにより、反応液に投入している。そして、所要量のヒドラジンの全量から初期ヒドラジンの量を除いた残りのヒドラジンを、追加ヒドラジンとして、(a)複数回に分けて反応液中に追加投入させる、あるいは、(b)反応液中に連続的に滴下して追加投入させることにより、湿式法により得られるニッケル粉末の高結晶化を実現する点に特徴がある。
【0100】
本発明においては、還元剤溶液中のヒドラジン量(初期ヒドラジン量)は、ニッケルに対するモル比で表すと、0.05〜1.0の範囲である。初期ヒドラジン量は、好ましくは0.2〜0.7の範囲であり、より好ましくは0.35〜0.6の範囲である。
【0101】
初期ヒドラジン量が下限未満、すなわち初期ヒドラジン量のニッケルに対するモル比が0.05未満では、還元力が小さすぎるため、反応液中の初期核発生を制御できず、粒径制御が困難となって、所望の平均粒径が安定的に得られず、粒度分布が非常に広くなるため、その還元剤としての添加効果が得られなくなる。一方、初期ヒドラジン量が上限を超える、すなわち初期ヒドラジン量のニッケルに対するモル比が1.0を超えてしまうと、ニッケル粉末の晶析時にヒドラジンを追加投入することによるニッケル粉末の高結晶化の効果が十分に得られなくなる。
【0102】
一方、追加投入されるヒドラジンの総量(追加ヒドラジン量)は、ニッケルに対するモル比で表すと、1.0〜3.2の範囲である。追加ヒドラジン量は、好ましくは1.5〜2.5の範囲であり、より好ましくは1.6〜2.3の範囲である。
【0103】
追加ヒドラジン量が下限未満、すなわち追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比が1.0未満では、初期ヒドラジン量にもよるが、反応液中のニッケルが全量還元されない可能性がある。一方、追加ヒドラジン量が上限を超える、すなわち追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比が3.2を超えてしまうと、さらなる効果は得られず、過剰なヒドラジンを用いることで経済的に不利になるだけである。
【0104】
なお、晶析工程に投入されるヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)は、ニッケルに対するモル比で表すと、2.0〜3.25の範囲がよい。ヒドラジンの総量が下限未満、すなわち2.0未満では、反応液中のニッケルが全量還元されない可能性がある。一方、ヒドラジンの総量が上限を超える、すなわち3.25を超えてしまうと、さらなる効果は得られず、過剰なヒドラジンを用いることで経済的に不利になるだけである。
【0105】
追加ヒドラジンを複数回に分けて反応液中に追加投入する場合には、その回数として、2回以上の任意の回数を採用できるが、1回当たりのヒドラジン投入量を少なくして、投入回数を多くした方が、反応液中のヒドラジン濃度を低く維持でき、ニッケル粉末の高結晶化がより容易となるため好ましい。追加ヒドラジンの複数回の追加投入を自動化したシステムで行う場合は、数回〜数十回に分割可能であり、投入回数を多くするほど、追加投入の効果は高くなる。ただし、複数回の追加投入を手動で行う場合でも、操作の煩雑さを考慮して、分割回数を3回〜5回程度とした場合でも、ニッケル粉末の高結晶化の効果は十分に得られる。
【0106】
一方、追加ヒドラジンを反応液中に連続的に滴下して追加投入する場合には、追加ヒドラジンの滴下速度を、ニッケルに対するモル比で0.8/h〜9.6/hとすることが好ましく、1.0/h〜7.5/hとすることがより好ましい。滴下速度がニッケルに対するモル比で0.8/h未満では、晶析反応の進行が遅くなり、生産性が低下するため好ましくない。一方、滴下速度がニッケルに対するモル比で9.6/hを超えると、追加ヒドラジンの供給速度が晶析反応でのヒドラジンの消費速度よりも大きくなり、余剰なヒドラジンによる反応液中のヒドラジン濃度の上昇が生じて、高結晶化の効果を得にくくなる。
【0107】
(2−1−7)各種溶液の混合
ニッケル塩溶液、ヒドラジンを含む還元剤溶液、pH調整剤としてのアルカリ金属水酸化物を含むアルカリ金属水酸化物溶液、ヒドラジンとともにアルカリ金属水酸化物を含む混合還元剤溶液、反応液などの各種溶液の混合時には、これらの各種溶液を撹拌することが好ましい。この撹拌により、晶析反応を均一化でき、粒度分布の狭いニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を得ることができる。撹拌方法は、公知の方法を用いればよく、制御性や設備製作コストの面から撹拌羽根を用いることが好ましい。撹拌羽根としては、パドル翼、タービン翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼などの市販の製品を使用すればよく、晶析槽内に邪魔板や邪魔棒などを設置して、撹拌混合性を高めるなどの措置を講じることもできる。
【0108】
本発明における晶析工程での第1の実施形態において、ニッケル塩溶液と還元剤とpH調整剤の混合還元剤溶液の混合に要する時間(混合時間)、および、晶析工程の第2の実施形態において、ニッケル塩溶液と還元剤溶液との混合後のニッケルヒドラジン錯体粒子のスラリー液とアルカリ金属水酸化物溶液との混合に要する時間(混合時間)は、いずれも好ましくは2分以内、より好ましくは1分以内、さらに好ましくは30秒以内である。混合時間が2分を超えると、混合時間の範囲内で、水酸化ニッケル粒子やニッケルヒドラジン錯体粒子や初期核発生の均一性が阻害されて、ニッケル粉末の微細化が困難になったり、粒度分布が広くなり過ぎたりする可能性があるためである。
【0109】
(2−1−8)晶析反応
本発明における晶析工程では、反応液中でヒドラジンの還元反応によりニッケルが析出することによってニッケル晶析粉(ニッケル粉末)が得られる。
【0110】
ニッケル(Ni)の反応は式(1)の2電子反応、ヒドラジン(N)の反応は式(2)の4電子反応であって、たとえば、ニッケル塩として塩化ニッケル、アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムを用いた場合には、還元反応全体は、式(3)のように、ニッケル塩(NiSO、NiCl、Ni(NOなど)と水酸化ナトリウムの中和反応で生じた水酸化ニッケル(Ni(OH))がヒドラジンで還元される反応で表され、化学量論的には、理論値として、ニッケル1モルに対し、ヒドラジン0.5モルが必要である。
【0111】
ここで、式(2)のヒドラジンの還元反応から、ヒドラジンはアルカリ性が強いほど、その還元力が大きくなることが理解される。アルカリ金属水酸化物は、アルカリ性を高めるpH調整剤として用いられており、ヒドラジンの還元反応を促進する働きを担っている。
【0112】
(化1)
Ni2++2e→Ni↓ (2電子反応) ・・・(1)
【0113】
(化2)
→N↑+4H+4e (4電子反応) ・・・(2)
【0114】
(化3)
Ni2++X2−+2NaOH+1/2N
→Ni(OH)+2Na+X2−+1/2N
→Ni↓+2Na+X2−+1/2N↑+2HO ・・・(3)
(X2−:SO2−、2Cl、2NOなど)
なお、晶析工程では、ニッケル晶析粉の活性な表面が触媒となって、式(4)で示される、アンモニアの副生を伴うヒドラジンの自己分解反応が促進され、還元剤としてのヒドラジンが還元以外にも消費される。
【0115】
(化4)
3N→N↑+4NH ・・・(4)
以上のように、晶析工程の晶析反応は、ヒドラジンによる還元反応とヒドラジンの自己分解反応によって表される。
【0116】
(2−1−9)晶析条件(反応開始温度)
晶析工程において、反応液を作製し、晶析反応が開始する時点の反応液の温度、すなわち、反応開始温度は、60℃〜95℃とすることが好ましく、70℃〜90℃とすることがより好ましい。反応液を作製した(ニッケル塩溶液と初期ヒドラジンとアルカリ金属水酸化物とが混合した)直後から晶析反応が開始するため、上記反応開始温度は、作製された時点の反応液(水溶性ニッケル塩と、ニッケルよりも貴な金属の金属塩と、ヒドラジンと、アルカリ金属水酸化物とを含む溶液)の温度と考えてよい。反応開始温度は、高いほど還元反応速度を大きくできるが、95℃を超えて高くなると、ニッケル晶析粉の粒径制御が困難となったり、晶析反応速度が制御できずに反応液が反応容器から吹きこぼれたりするなどの問題を引き起こす可能性がある。また、反応開始温度が60℃未満まで低くなると、還元反応速度が小さなり、晶析工程に要する時間が長くなって、生産性が低下する。以上の理由から、反応開始温度を60℃〜95℃の温度範囲にすれば、高い生産性を維持しつつ、粒径制御が容易な高性能のニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を製造することができる。
【0117】
(2−1−10)ニッケル晶析粉の回収
晶析工程で得られたニッケル晶析粉を含むニッケル晶析粉スラリーから、公知の手順、たとえば、洗浄、固液分離、乾燥の手順を経ることにより、ニッケル晶析粉のみが分離される。なお、必要に応じて、この工程に先立って、ニッケル晶析粉スラリーに、水溶性硫黄化合物である硫黄コート剤を加えることにより、硫黄で表面修飾されたニッケル晶析粉を得ることもできる。
【0118】
さらに、本発明のニッケル粉末の製造方法では、必要に応じて、晶析工程で得られたニッケル晶析粉に、解砕処理工程(後処理工程)を追加的に施して、晶析工程のニッケル粒子生成過程で主にニッケル粒子の連結で生じた粗大粒子(連結粒子)の低減を図ることが好ましい。
【0119】
ニッケル晶析粉をニッケル晶析粉スラリーから分離するためには、デンバーろ過器、フィルタープレス、遠心分離機、デカンターなどの公知の手段で固液分離するとともに、導電率が1μS/cm以下の純水や超純水などの高純度の水で十分に洗浄する。ここで、十分な洗浄とは、たとえば、導電率が1μS/cm程度の純水を用いた場合、ニッケル晶析粉をろ過洗浄してろ別する際に得られたろ液の導電率が10μS/cm以下となる程度までの洗浄を意味する。このように、固液分離および洗浄された後、大気乾燥機、熱風乾燥機、不活性ガス雰囲気乾燥機、真空乾燥機などの汎用の乾燥装置を用いて、50℃〜200℃の範囲、好ましくは80℃〜150℃の範囲で乾燥することにより、ニッケル晶析粉が得られる。
【0120】
なお、必要に応じて、ニッケル晶析粉スラリーに、チオリンゴ酸(HOOCCH(SH)CHCOOH)、L−システイン(HSCHCH(NH)COOH)、チオグリセロール(HSCHCH(OH)CHOH)、ジチオジグリコール酸(HOOCHS−SCHCOOH)などのメルカプト基(−SH)、ジスルフィド基(−S−S−)のいずれかを含む水溶性硫黄化合物である硫黄コート剤を添加することにより、硫黄で表面処理されたニッケル晶析粉を得ることができる。
【0121】
(2−2)解砕工程(後処理工程)
前述の通り、晶析工程で得られたニッケル晶析粉は、そのまま最終製品のニッケル粉末として用いることも可能ではあるが、図1に示すように、必要に応じて解砕処理を施すことにより、ニッケルが析出する過程で形成された粗大粒子や連結粒子などの低減を図ることがより好ましい。解砕処理としては、スパイラルジェット解砕処理、カウンタージェットミル解砕処理などの乾式解砕方法や、高圧流体衝突解砕処理などの湿式解砕方法、その他の汎用の解砕方法を適用することが可能である。
【0122】
(3)内部電極ペースト
本発明の内部電極ペーストは、ニッケル粉末と有機溶剤とを含み、かつ、該ニッケル粉末が本発明のニッケル粉末により構成されていることを特徴とする。有機溶剤としては、α−テルピネオールなどが使用される。また、バインダ樹脂などの有機バインダをさらに含むことができ、有機バインダとしては、エチルセルロース樹脂などが使用される。
【0123】
本発明の内部電極ペーストは、電子部品における内部電極層の形成に使用される。本発明の内部電極ペーストを使用することによって、電子部品における内部電極の連続性(電極連続性)を高くすることができ、かつ、ショート不良を生じることを防止することができる。内部電極ペーストにおけるニッケル粉末の割合は、40質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0124】
(4)電子部品
本発明の電子部品は、少なくとも内部電極を備え、該内部電極が本発明の内部電極ペーストを用いて形成された厚膜導体により構成されていることを特徴とする。本発明が適用される電子部品としては、積層セラミックコンデンサ(MLCC)、インダクタ、圧電部品、サーミスタなどが挙げられる。以下、本発明の電子部品について、積層セラミックコンデンサを例に説明する。
【0125】
積層セラミックコンデンサは、積層体と、積層体の端面に設けられた外部電極とを備える。図4は、本発明が適用される積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。積層セラミックコンデンサ1は、積層体10の端面に外部電極100を設けることにより構成される。なお、積層体10の長さ方向、幅方向、および積層方向は、それぞれ両矢印L、W、Tで示される。図5は、図4に示す積層セラミックコンデンサの長さ(L)方向、高さ(T)方向を含むLT断面図であり、積層体10は、積層された複数の誘電体層20と複数の内部電極層30を含み、積層方向(高さ(T)方向)に相対する第1主面11および第2主面12と、積層方向に直交する幅(W)方向に相対する第1側面13および第2側面14と、積層方向および幅方向に直交する長さ(L)方向に相対する第1端面15および第2端面16とを含む。積層体10は、積層体10の3面が交わる部分である角部、および積層体10の2面が交わる部分である稜線部において、丸みがつけられていることが好ましい。
【0126】
図5のLT断面図に示すように、積層体10は、積層された複数の誘電体層20と複数の内部電極層30を有し、複数の内部電極層30は、少なくとも積層体10の第1端面15に露出し、第1端面15に設けられた外部電極100と接続する複数の第1内部電極層35と、少なくとも積層体10の第2端面16に露出し、第2端面16に設けられた外部電極100と接続する複数の第2内部電極層36とを備える。
【0127】
複数の誘電体層20の平均厚みは、0.1μm〜5.0μmにあることが好ましい。それぞれの誘電体層の材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)などをそれぞれ主成分とするセラミック材料が挙げられる。また、それぞれの誘電体層20は、マンガン(Mn)化合物、鉄(Fe)化合物、クロム(Cr)化合物、コバルト(Co)化合物、ニッケル(Ni)化合物などの主成分よりも含有量の少ない副成分を主成分に添加した材料を用いることもできる。
【0128】
また、積層された複数の誘電体層20と複数の内部電極層30の外側に、誘電体層20のみが積層されてなる外層部40を設けることもできる。外層部40は、内部電極層30に対して積層体10の高さ方向の両方の主面側に位置し、それぞれの主面と最も主面に近い内部電極層30との間に位置する誘電体層である。これらの外層部40に挟まれた、内部電極層30が存在する領域を内層部ということができる。外層部40の厚みは、5μm〜30μmであることが好ましい。
【0129】
積層体10に積層される誘電体層の枚数は、20枚〜1500枚であることが好ましい。この枚数には外層部40となる誘電体層の枚数も含まれる。
【0130】
積層体10の寸法は、長さ(L)方向に沿った長さは80μm〜3200μm、幅(W)方向に沿った長さは80μm〜2600μm、積層方向(高さ(T)方向)に沿った長さは80μm〜2600μmであることが好ましい。
【0131】
第1内部電極層35は、誘電体層20を挟んで第2内部電極層36と対向する対向部と、対向部から第1端面15に引き出されて第1端面15に露出する引出部とを有する。第2内部電極層36は、誘電体層20を挟んで第1内部電極層35の対向部と対向する対向部と、対向部から第2端面16に引き出されて第2端面16に露出する引出部とを有する。それぞれの内部電極層30は、積層方向から平面視されて、略矩形状である。それぞれの対向部では内部電極層が誘電体層を介して対向することによりコンデンサが形成される。
【0132】
図5に示すように対向部と端面との間に位置し、第1内部電極層および第2内部電極層のいずれか一方の引き出し部を含む部分を積層体のLギャップとする。積層体のLギャップの長さ方向の長さ(LGap)は、5μm〜30μmであることが好ましい。
【0133】
外部電極100は、積層体10の端面(第1端面15、第2端面16)に設けられており、さらに、第1主面11、第2主面12、第1側面13、および第2側面14のそれぞれの一部に延び、それぞれの面の一部を被覆している。そして、外部電極100は、第1端面15で第1内部電極層35と、第2端面16で第2内部電極層36と接続されている。
【0134】
外部電極100は、図5に示すように、下地層60と、下地層60上に配置されためっき層61を有する。下地層60の厚さのうち最も厚い部分の厚さは、5μm〜300μmであることが好ましい。また、複数の下地層60を設けることもできる。
【0135】
図5に示す下地層60は、ガラスと金属とを含む焼付け層であり、焼付け層を構成するガラスは、シリコンなどの元素を含む。また、焼付け層を構成する金属は、銅、ニッケル、銀、パラジウム、銀−パラジウム合金、および金からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。焼付け層は、ガラスおよび金属を含む導電性ペーストを積層体に塗布して焼き付けたものであり、内部電極の焼成と同時に形成されるか、あるいは、内部電極を焼成した後に、個別の焼付け工程により形成される。
【0136】
下地層60は、焼付け層に限定されるものではなく、樹脂層あるいは薄膜層により構成することもできる。下地層60が樹脂層である場合、樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂を含む樹脂層であることが好ましい。樹脂層は、積層体上に直接形成することが可能である。
【0137】
下地層60が薄膜層である場合、薄膜層は、スパッタ法、蒸着法などの薄膜形成法により形成され、金属粒子が堆積された層であって、その厚さが1μm以下の層であることが好ましい。
【0138】
めっき層61としては、銅、ニッケル、スズ、銀、パラジウム、銀−パラジウム合金、および金からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。めっき層は複数層であってもよい。好ましくは、ニッケルめっき層、スズめっき層の二層構造である。ニッケルめっき層は、下地層が電子部品を実装する際のはんだによって侵食されることを防止することができ、スズめっき層は、電子部品を実装する際のはんだの濡れ性を向上させ、電子部品の実装を容易にすることができる。めっき層一層あたりの厚みは、5μm〜50μmであることが好ましい。
【0139】
外部電極は、下地層を有していなくてもよく、内部電極層と直接接続されるめっき層を積層体上に直接形成することによっても形成することができる。この場合、前処理として積層体上に触媒を設けて、この触媒上にめっき層を形成することもできる。この場合、めっき層は、第1めっき層と、第1めっき層上に設けられた第2めっき層を含むことが好ましい。第1めっき層および第2めっき層は、銅、ニッケル、スズ、鉛、金、銀、パラジウム、ビスマス、および亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属または当該金属を含む合金のめっきを含むことが好ましい。本発明の電子部品は、内部電極層を構成する金属としてニッケルを用いているので、第1めっき層としては、ニッケルと接合性のよい銅を用いることが好ましい。また、第2めっき層としては、はんだ濡れ性のよいスズや金を用いることが好ましい。その他、第1めっき層としては、はんだバリア性能を有するニッケルを用いることが好ましい。
【0140】
このように、めっき層は、単一のめっき層によって構成されることもでき、第2めっき層を最外層として第1めっき層の上に形成することもでき、さらには、第2めっき層上に他のめっき層を設けることもできる。いずれの場合も、めっき層1層あたりの厚みは、1μm〜50μmであることが好ましい。また、めっき層にはガラスが含まれないことが好ましい。めっき層の単位体積あたりの金属割合は99体積%以上であることが好ましい。めっき層は、その厚み方向に沿って粒子成長したものであり、柱状であることが好ましい。
【0141】
本発明の積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極層30(第1内部電極層35および第2内部電極層36)は、本発明のニッケル粉末を含む、本発明の内部電極ペーストを用いて形成された厚膜導体により構成される。すなわち、内部電極層30はいずれもニッケルを含む層である。内部電極層30は、ニッケルのほかに、他の種類の金属や、誘電体層に含まれるセラミックと同一組成系の誘電体粒子を含むことができる。
【0142】
積層体10に積層される内部電極層30の枚数は、2枚〜1000枚であることが好ましい。また、複数の内部電極層30の平均厚みは、0.1μm〜3μmであることが好ましい。
【0143】
なお、本発明の電子部品は、基板に内蔵される電子部品として使用でき、また、基板の表面に実装される電子部品としても使用することができる。
【実施例】
【0144】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されることはない。
【0145】
<評価方法>
実施例および比較例において、得られたニッケル粉末について、以下の方法により、不純物含有量(窒素(N)、ナトリウム(Na))、硫黄含有量、結晶子径、平均粒径(Mn)、粒径のCV値、および熱機械分析(TMA)の測定を行った。
【0146】
(窒素、ナトリウム、および硫黄の含有量)
得られたニッケル粉末について、還元剤であるヒドラジン起因と考えられる不純物の窒素、水酸化ナトリウム起因である不純物のナトリウム、および硫黄の含有量を、窒素は、不活性ガス溶融法による窒素分析装置(LECO Corporation製、TC436)、ナトリウムは、原子吸光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、Z−5310)、硫黄は、燃焼法による硫黄分析装置(LECO Corporation社製、CS600)を用いて測定した。
【0147】
(結晶子径)
得られたニッケル粉末について、X線回折装置(スペクトリス株式会社製、X‘Pert Pro)により得られた回折パターンから、公知の方法であるWilson法を用いて算出した。
【0148】
(平均粒径および粒径のCV値)
得られたニッケル粉末について、走査型電子顕微鏡(SEM:JEOL Ltd.製、JSM−7100F)を用いて観察(倍率:5000〜80000倍)し、観察像(SEM像)の画像解析の結果から、数平均で求められた平均粒径(Mn)とその標準偏差(σ)を算出し、平均粒径の標準偏差を平均粒径で除した値(%)であるCV値[平均粒径の標準偏差(σ)/平均粒径(Mn))×100]を得た。
【0149】
(熱機械分析(TMA)測定)
得られたニッケル粉末を約0.3g秤量して、内径5mmの円柱状孔を有する金型内に充填させ、プレス機で100MPaとなるように荷重をかけて、直径5mm、高さ3mm〜4mmのペレットに成形した。このペレットを、熱機械分析(TMA)装置(BRUKER Corporation製、TMA4000SA)を用いて、加熱時の熱収縮挙動を測定した。測定条件は、ペレットにかける荷重を10mNとし、窒素ガスを1000ml/minで連続的に流した不活性雰囲気中で、25℃から1200℃まで10℃/minの昇温速度とした。
【0150】
TMA測定で得られた上記ペレットの熱収縮挙動から、最大収縮温度(25℃から1200℃まで加熱した時の、25℃におけるペレット厚さを基準として、収縮率が最大となる温度)、最大収縮率(25℃におけるペレット厚さを基準とした最大収縮温度における収縮率)、および高温膨張率(最大収縮温度以上1200℃以下の温度範囲での、25℃におけるペレット厚さを基準とした最大収縮時のペレットからの最大膨張量)をそれぞれ求めた。
【0151】
(電極被覆率(電極連続性))
セラミック原料としてのチタン酸バリウム粉末に、ポリビニルブチラール系バインダ樹脂、可塑剤および有機溶剤としてのエタノールを加え、ボールミルにより湿式混合し、セラミックスラリーを作製し、得られたセラミックスラリーをリップ方式によりシート成形することにより誘電体グリーンシートを得て、該誘電体グリーンシート上に得られたニッケル粉末を含有する内部電極ペーストをスクリーン印刷することにより、厚膜導体を備える誘電体シートを得て、厚膜導体の引き出される側が互い違いとなるように、誘電体シートを積層して積層シートを得て、該積層シートを加圧成形し、ダイシングにより分割してチップを得て、該チップを窒素雰囲気中で加熱して、バインダ樹脂を除去(脱バインダ処理)した後、水素、窒素、および水蒸気ガスを含む還元性雰囲気中において焼成し、焼結した積層体を得て、この積層体を電極被覆率の測定に供した。
【0152】
得られた積層体の内部電極層の電極被覆率は、試料5個ずつについて、焼成後の積層体を積層方向の中央部で切断し、切断面を光学顕微鏡で観察し、画像解析を行なって、内部電極層の理論面積に対する実測面積の面積比率を算出し、その平均値を求めて電極被覆率とした。電極被覆率が80%以上の場合、電極連続性が良好(○)であると、電極被覆率が80%未満の場合、電極連続性が不可(×)であると判定した。
【0153】
なお、実施例および比較例において、各試薬については、特に記載がない限り、和光純薬工業株式会社製の試薬を使用した。
【0154】
(実施例1)
[ニッケル塩溶液の調製]
ニッケル塩として硫酸ニッケル6水和物(NiSO4・6H2O、分子量:262.85)448g、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O、分子量:249.7)1.97mg、および、塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NH42PdCl4、分子量:284.31)0.134mg、錯化剤としてクエン酸三ナトリウム2水和物(Na3(C35O(COO)3)・2H2O)、分子量:294.1)228g を、純水1150mLに溶解して、主成分としてのニッケル塩と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤と、錯化剤とを含有する水溶液である、ニッケル塩溶液を調製した。
【0155】
ここで、ニッケル塩溶液において、銅(Cu)とパラジウム(Pd)の含有量は、ニッケル(Ni)に対し、それぞれ5.0質量ppm、0.5質量ppm(それぞれ4.63モルppm、0.28モルppm)であり、クエン酸三ナトリウムのニッケルに対するモル比は0.45であった。
【0156】
[混合還元剤溶液の調製]
還元剤として、ピラゾールなどの有機不純物を除去して精製した60%抱水ヒドラジン(N・HO、分子量:50.06)69g、pH調整剤であるアルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)184g、分散剤として、卜リエタノールアミン(N(COH)、分子量:149.19)6gを、純水1250mLに溶解して、ヒドラジンに加えて、水酸化ナトリウムと、アルカノールアミン化合物とを含有する水溶液である、混合還元剤溶液を調製した。
【0157】
ここで、混合還元剤溶液に含まれるヒドラジン量(初期ヒドラジン量)のニッケルに対するモル比は0.49であった。
【0158】
[晶析工程]
ニッケル塩溶液と混合還元剤溶液を、それぞれ液温85℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して反応液とし、晶析反応を開始した。それぞれの液温が85℃のニッケル塩溶液と混合還元剤溶液の撹拌混合時の発熱により、反応液の温度は88℃に上昇したため、反応開始温度は88℃であった。反応開始(2液の撹拌混合)から2分〜3分程度すると、核剤の働きによる核発生に伴い反応液が変色(黄緑色→灰色)するが、さらに撹拌を続けながら、反応開始の10分後から追加のヒドラジンとして精製した60%抱水ヒドラジン(追加ヒドラジン)を312g、4.6g/minの速度で反応液に68分間滴下して還元反応を行い、ニッケル晶析粉を得た。還元反応が終了した反応液の上澄み液は透明であり、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されていることを確認した。
【0159】
ここで、追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比は2.19であり、追加ヒドラジンの滴下速度をニッケルに対するモル比で表すと1.94/hであった。また、晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)のニッケルに対するモル比は2.68であった。
【0160】
晶析工程で用いたそれぞれの薬剤と晶析条件を、表1にまとめて示す。
【0161】
得られたニッケル晶析粉を含む反応液はスラリー状(ニッケル晶析粉スラリー)であり、このニッケル晶析粉スラリーに、硫黄コート剤(Sコート剤)としてのチオリンゴ酸(別名:メルカプトこはく酸)(HOOCCH(SH)CHCOOH、分子量:150.15)水溶液を加えて、ニッケル晶析粉に表面処理を施した。表面処理後、導電率が1μS/cmの純水を用いて、ニッケル晶析粉スラリーからろ過したろ液の導電率が10μS/cm以下になるまで、ろ過洗浄を行い、固液分離した後、150℃の温度に設定した真空乾燥器中で乾燥して、硫黄(S)で表面処理されたニッケル晶析粉(ニッケル粉末)を得た。
【0162】
[解砕処理工程(後処理工程)]
晶析工程に引き続いて解砕工程を実施し、ニッケル晶析粉中の主にニッケル粒子同士が晶析反応中に結合して形成された連結粒子の低減を図った。具体的には、晶析工程で得られたニッケル晶析粉に、乾式解砕方法であるスパイラルジェット解砕処理を施し、粒度が均一でほぼ球形の実施例1に係るニッケル粉末を得た。
【0163】
[ニッケル粉末の評価]
得られたニッケル粉末の不純物(窒素、ナトリウム)含有量、硫黄含有量、結晶子径、平均粒径、および粒径のCV値を求めるともに、得られたニッケル粉末を用いて作製した積層体についてTMA測定を行い、その熱収縮挙動から、最大収縮温度、最大収縮率、および高温膨張率を求めた。これらの測定結果をまとめて表2に示す。また、図6に、実施例1のニッケル粉末を用いた圧粉体に関する、TMA測定で得られた熱収縮挙動のグラフを示す。
【0164】
(実施例2)
ニッケル塩溶液と混合還元剤溶液を、それぞれ液温80℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して反応液として、還元反応の反応開始温度は83℃としたこと、および、反応開始の10分後から60%抱水ヒドラジン(追加ヒドラジン)を276g、9.2g/分の速度で反応液に30分間滴下して還元反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の実施例2に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0165】
追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比は1.94であり、追加ヒドラジンの滴下速度をニッケルに対するモル比で表すと3.88/hであった。また、晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)のニッケルに対するモル比は2.43であった。図7に、実施例2のニッケル粉末を用いた圧粉体に関する、TMA測定で得られた熱収縮挙動のグラフを示す。
【0166】
(実施例3)
ニッケル塩溶液において、銅とパラジウムの含有量を、ニッケルに対し、それぞれ5.0質量ppm、3.0質量ppm(それぞれ4.63モルppm、1.68モルppm)としたこと、ニッケル塩溶液と混合還元剤溶液を、それぞれ液温80℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して反応液として、還元反応の反応開始温度は83℃としたこと、および、反応開始の10分後から60%抱水ヒドラジン(追加ヒドラジン)を242g、4.6g/分の速度で反応液に53分間滴下して還元反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の実施例3に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0167】
追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比は1.70であり、追加ヒドラジンの滴下速度をニッケルに対するモル比で表すと1.93/hであった。また、晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)のニッケルに対するモル比は2.19であった。
【0168】
(実施例4)
ニッケル塩溶液において、銅とパラジウムの含有量を、ニッケルに対し、それぞれ20質量ppm、8.0質量ppm(それぞれ18.52モルppm、4.48モルppm)としたこと、ニッケル塩溶液と混合還元剤溶液を、それぞれ液温80℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して反応液として、還元反応の反応開始温度は83℃としたこと、および、反応開始の10分後から60%抱水ヒドラジン(追加ヒドラジン)を207g、9.0g/分の速度で反応液に23分間滴下して還元反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の実施例4に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0169】
追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比は1.46であり、追加ヒドラジンの滴下速度をニッケルに対するモル比で表すと3.80/hであった。また、晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)のニッケルに対するモル比は1.94であった。
【0170】
(実施例5)
ニッケル塩溶液において、銅とパラジウムの含有量を、ニッケルに対し、それぞれ2.0質量ppm、0.2質量ppm(それぞれ1.85モルppm、0.11モルppm)としたこと、ニッケル塩溶液と混合還元剤溶液を、それぞれ液温70℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して反応液として、還元反応の反応開始温度は73℃としたこと、および、反応開始の25分後から60%抱水ヒドラジン(追加ヒドラジン)を276g、4.6g/分の速度で反応液に60分間滴下して還元反応を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の実施例5に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0171】
追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比は1.94であり、追加ヒドラジンの滴下速度をニッケルに対するモル比で表すと1.94/hであった。また、晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)のニッケルに対するモル比は2.43であった。
【0172】
(実施例6)
ニッケル塩溶液において、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム0.456mgのみを添加し、パラジウムの含有量を、ニッケルに対して1.7質量ppm(0.95モルppm)としたこと、および、反応開始の30分後から10分ごとに、60%抱水ヒドラジン(追加ヒドラジン)を1回あたり69g(ニッケルに対するモル比で表すと0.49)、合計4回(30分、40分、50分、60分)、反応液に投入して還元反応を行い、反応開始から70分後に還元反応を終了させたこと以外は、実施例5と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の実施例6に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0173】
追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比は1.94であった。また、晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)のニッケルに対するモル比は1.94であった。
【0174】
(実施例7)
反応開始の30分後から10分ごとに、60%抱水ヒドラジン(追加ヒドラジン)を1回あたり69g(ニッケルに対するモル比で表すと0.49)、合計4回(30分、40分、50分、60分)、反応液に投入して還元反応を行い、反応開始から70分後に還元を終了させたこと以外は、実施例5と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の実施例7に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0175】
追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比は1.94であった。また、晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)のニッケルに対するモル比は1.94であった。
【0176】
(実施例8)
ピラゾールなどの有機不純物を除去して精製した60%抱水ヒドラジン69gに、分散剤として、卜リエタノールアミン6gと、純水800mLとを加えて、ヒドラジンとアルカノールアミン化合物を含有する水溶液である、還元剤溶液を調製し、水酸化ナトリウム184gを、純水450mLに溶解して、水酸化ナトリウムを含有する水溶液である、アルカリ金属水酸化物溶液を調製し、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を、それぞれ液温85℃になるように加熱した後、2液を混合時間1分間で撹拌混合し、その後約3分間の撹拌混合を保持し、次いで、あらかじめ液温を85℃に設定したアルカリ金属水溶液を添加して、反応液を得て、反応開始の10分後から60%抱水ヒドラジン(追加ヒドラジン)を258g、9.2g/分の速度で反応液に28分間滴下して還元反応を行ったこと以外は、実施例2と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の実施例8に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0177】
還元剤溶液に含まれるヒドラジン量(初期ヒドラジン量)のニッケルに対するモル比は0.49であった。追加ヒドラジン量のニッケルに対するモル比は1.81であった。また、晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量と追加ヒドラジン量との合計)のニッケルに対するモル比は2.30であった。図8に、実施例8のニッケル粉末を用いた圧粉体に関する、TMA測定で得られた熱収縮挙動のグラフを示す。
【0178】
(比較例1)
追加のヒドラジンを投入せずに、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を一括混合して反応液とし、還元反応を終了させたこと、クエン酸三ナトリウム2水和物の含有量を55.7mg(ニッケルに対するモル比は0.11)としたこと、ニッケル塩溶液において、銅とパラジウムの含有量を、ニッケルに対し、それぞれ2.0質量ppm、0.2質量ppm(それぞれ1.85モルppm、0.11モルppm)としたこと、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を、それぞれ液温55℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して反応液として、還元反応の反応開始温度は60℃としたこと、反応開始から40分後に還元反応を終了させたこと以外は、実施例1と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の比較例1に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0179】
晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量のみ)のニッケルに対するモル比は2.43であった。図9に、比較例1のニッケル粉末を用いた圧粉体に関する、TMA測定で得られた熱収縮挙動のグラフを示す。
【0180】
(比較例2)
追加のヒドラジンを投入せずに、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を一括混合して反応液とし、還元反応を終了させたこと、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を、それぞれ液温70℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して反応液として、還元反応の反応開始温度は74℃としたこと、反応開始から25分後に還元反応を終了させたこと以外は、実施例1と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の比較例2に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0181】
晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量のみ)のニッケルに対するモル比は2.18であった。
【0182】
(比較例3)
追加のヒドラジンを投入せずに、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を一括混合して反応液とし、還元反応を終了させたこと、ニッケル塩溶液と還元剤溶液を、それぞれ液温80℃になるように加熱した後、2液を撹拌混合して反応液として、還元反応の反応開始温度は84℃としたこと、反応開始から15分後に還元反応を終了させたこと以外は、実施例1と同様にして、粒度が均一でほぼ球形の比較例3に係るニッケル粉末を作製し、評価した。
【0183】
晶析工程において投入されたヒドラジンの総量(初期ヒドラジン量のみ)のニッケルに対するモル比は2.43であった。図10に、比較例3のニッケル粉末を用いた圧粉体に関する、TMA測定で得られた熱収縮挙動のグラフを示す。
【0184】
【表1】
【0185】
【表2】
【符号の説明】
【0186】
1 積層セラミックコンデンサ(電子部品)
10 積層体
11 第1主面
12 第2主面
13 第1側面
14 第2側面
15 第1端面
16 第2端面
20 誘電体層
30 内部電極層
35 第1内部電極層
36 第2内部電極層
40 外層部
60 下地層
61 めっき層
100 外部電極

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10