特許第6579153号(P6579153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579153
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】車両用サウンドシステム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   B60R11/02 S
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-94620(P2017-94620)
(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公開番号】特開2018-188088(P2018-188088A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】浅田 健志
(72)【発明者】
【氏名】十亀 克維
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓允
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−273106(JP,A)
【文献】 特開2001−138820(JP,A)
【文献】 特開2009−040130(JP,A)
【文献】 特開2000−045895(JP,A)
【文献】 特開2013−176030(JP,A)
【文献】 特開2017−069806(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0144855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60R 13/01−13/04
B60R 13/08
B60K 35/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
前記エンジンの発生する音が車室内の運転者にとって第1の位置から聞こえるように定位させるエンジン音定位手段と、
前記オーディオ装置の発生するオーディオ音が車室内の運転者にとって第2の位置から聞こえるように定位させるオーディオ音定位手段と、
前記第1の位置と前記第2の位置とは、それぞれ前記運転者にとって車両前方に位置されると共に互いに所定距離離間され、
車両の乗員に対して警報を行うための警報音を、運転者が前方を目視しているときの目線の延長線付近となる第3の位置に定位させる警告音定位手段をさらに備えている、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項2】
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
前記エンジンの発生する音が車室内の運転者にとって第1の位置から聞こえるように定位させるエンジン音定位手段と、
前記オーディオ装置の発生するオーディオ音が車室内の運転者にとって第2の位置から聞こえるように定位させるオーディオ音定位手段と、
前記第1の位置と前記第2の位置とは、それぞれ前記運転者にとって車両前方に位置されると共に互いに所定距離離間され、
車両が、運転席の前方において、インストルメントパネルと該インストルメントパネルの前端部から上方へ延びるフロントウインドガラスとを備え、
前記第1の位置が、前記フロントウインドガラスに設定され、
前記第2の位置が、前記インストルメントパネルに設定され、
前記第1の位置でのエンジン音の定位が、車室前方のエンジンルーム内でのエンジン音を、ダッシュパネルに形成された開口部からインストルメントパネル内の空間を通して該インストルメントパネルの上面に形成された開口部を通して、前記フロントウインドガラスへと到達させることにより行われる、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1の位置が、前記第2の位置よりも上方に位置されている、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項4】
請求項1において、
車両が、運転席の前方において、インストルメントパネルと該インストルメントパネルの前端部から上方へ延びるフロントウインドガラスとを備え、
前記第1の位置が、前記フロントウインドガラスに設定され、
前記第2の位置が、前記インストルメントパネルに設定されている、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項5】
請求項1において、
車両が、運転席の前方において、インストルメントパネルと該インストルメントパネルの前端部から上方へ延びるフロントウインドガラスとを備え、
前記第1の位置が、前記インストルメントパネルに設定され、
前記第2の位置が、前記フロントウインドガラスに設定されている、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
車室の前端を仕切るダッシュパネルの前方に形成されたエンジンルーム内に前記エンジンが配設され、
前記ダッシュパネルに、他の部位よりもエンジン音の透過性が高められた高透過性部位が形成されている、
ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項7】
請求項6において、
前記高透過性部位がインストルメントパネル内に臨んでいて、エンジン音が該インストルメントパネル内の空間を介して前記第1の位置に定位される、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、
前記高透過性部位が、前記ダッシュパネルに形成された開口部と、該開口部を覆う空気遮断用のフィルムとを有する構成とされている、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【請求項9】
請求項2において、
車両の乗員に対して警報を行うための警報音を、運転者が前方を目視しているときの目線の延長線付近となる第3の位置に定位させる警告音定位手段をさらに備えている、ことを特徴とする車両用サウンドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サウンドシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両においては、車室内にオーディオ音を流すオーディオ装置が装備されていることが一般的となっている。特許文献1、特許文献2には、オーディオ音が乗員にとって車室内の所定位置から聞こえるようにするために、オーディオ音の定位を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2776092号公報
【特許文献2】特開平5・85288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばスポーツカー等の走行を楽しむことが重視される車両においては、エンジン音を乗員特に運転者に対して積極的に聞かせる(聴かせる)ことが望まれるものである。すなわち、エンジン音は、車両状態をよく示すことから、走行を楽しむ場合にエンジン音というものが非常に重要な要素なり、エンジン音をいかに効果的に乗員に聞かせるようにするかということが重要となる。この一方、エンジン音を積極的に乗員に聞かせるようにした場合、オーディオ音をエンジン音と区別していかに効果的に聞かせるか、ということが新たに問題となる。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、エンジン音を乗員に対して積極的に聞かせるようにしつつ、エンジン音とオーディオ音とを明確に区別できるようにした車両用サウンドシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
前記エンジンの発生する音が車室内の運転者にとって第1の位置から聞こえるように定位させるエンジン音定位手段と、
前記オーディオ装置の発生するオーディオ音が車室内の運転者にとって第2の位置から聞こえるように定位させるオーディオ音定位手段と、
前記第1の位置と前記第2の位置とは、それぞれ前記運転者にとって車両前方に位置されると共に互いに所定距離離間され、
車両の乗員に対して警報を行うための警報音を、運転者が前方を目視しているときの目線の延長線付近となる第3の位置に定位させる警告音定位手段をさらに備えている、
ようにしてある。
【0007】
上記解決手法によれば、エンジン音とオーディオ音とが、互いに異なる位置でかつ運転中に意識の集中する前方から聞こえるため、運転者は容易にエンジン音とオーディオ音とを聞き分けることができる。つまり、オーディオ音を聞きつつも、エンジン音に基づいて車両状態(特にエンジン音の変化)を明確に認識することができる。以上に加えて、運転者の意識が集中する前方への視線延長線上から警報音が聞こえるようにして、警報を極めて効果的に行うことができる。
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項2に記載のように、
車両の所定箇所に配設された音源としてのエンジンと車室内用のオーディオ装置とを備えた車両用サウンドシステムであって、
前記エンジンの発生する音が車室内の運転者にとって第1の位置から聞こえるように定位させるエンジン音定位手段と、
前記オーディオ装置の発生するオーディオ音が車室内の運転者にとって第2の位置から聞こえるように定位させるオーディオ音定位手段と、
前記第1の位置と前記第2の位置とは、それぞれ前記運転者にとって車両前方に位置されると共に互いに所定距離離間され、
車両が、運転席の前方において、インストルメントパネルと該インストルメントパネルの前端部から上方へ延びるフロントウインドガラスとを備え、
前記第1の位置が、前記フロントウインドガラスに設定され、
前記第2の位置が、前記インストルメントパネルに設定され、
前記第1の位置でのエンジン音の定位が、車室前方のエンジンルーム内でのエンジン音を、ダッシュパネルに形成された開口部からインストルメントパネル内の空間を通して該インストルメントパネルの上面に形成された開口部を通して、前記フロントウインドガラスへと到達させることにより行われる、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
前記第1の位置が、前記第2の位置よりも上方に位置されている、ようにしてある(
求項3対応)。この場合、定位位置が上方である方が下方である場合よりもより明確に運転者に認識されやすいことから、エンジン音を主役的な立場でもって運転者に聞かせ、またエンジン音から車両状態を運転者が把握する上で好ましいものとなる。
【0009】
車両が、運転席の前方において、インストルメントパネルと該インストルメントパネルの前端部から上方へ延びるフロントウインドガラスとを備え、
前記第1の位置が、前記フロントウインドガラスに設定され、
前記第2の位置が、前記インストルメントパネルに設定されている、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、定位位置が上方である方が下方である場合よりもより明確に運転者に認識されやすく、また運転者は車両の運転中はフロントウインドガラスを通して前方を視認していることから、エンジン音の定位位置を十分に上方位置として、エンジン音を主役的な立場でもってかつ運転者の意識の集中した位置から運転者に聞かせつつ、オーディオ音を一般的なインストルメントパネルから聞こえるようにすることができる。
【0010】
車両が、運転席の前方において、インストルメントパネルと該インストルメントパネルの前端部から上方へ延びるフロントウインドガラスとを備え、
前記第1の位置が、前記インストルメントパネルに設定され、
前記第2の位置が、前記フロントウインドガラスに設定されている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、定位位置が上方である方が下方である場合よりもより明確に運転者に認識されやすいことから、オーディオ音の定位位置を十分に上方位置として主役的な立場でもって運転者に聞かせつつ、エンジン音をインストルメントパネルから聞こえるようにすることができる。
【0011】
車室の前端を仕切るダッシュパネルの前方に形成されたエンジンルーム内に前記エンジンが配設され、
前記ダッシュパネルに、他の部位よりもエンジン音の透過性が高められた高透過性部位が形成されている、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、エンジンルーム内からのエンジン音を、ダッシュパネルに形成された高透過性部位を介して効果的に車室側へと伝達させることができる。
【0012】
前記高透過性部位がインストルメントパネル内に臨んでいて、エンジン音が該インストルメントパネル内の空間を介して前記第1の位置に定位される、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、インストルメントパネル内の空間を、エンジン音伝達経路として有効に利用することができる。
【0013】
前記高透過性部位が、前記ダッシュパネルに形成された開口部と、該開口部を覆う空気遮断用のフィルムとを有する構成とされている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、エンジンルーム内の空気や液体が車室内へ侵入してしまう事態を防止しつつ、エンジン音を車室側に向けて効果的に透過させることができる。
【0014】
車両の乗員に対して警報を行うための警報音を、運転者が前方を目視しているときの目線の延長線付近となる第3の位置に定位させる警告音定位手段をさらに備えている、ようにしてある(請求項9対応)。この場合、運転者の意識が集中する前方への視線延長線上から警報音が聞こえるようにして、警報を極めて効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エンジン音を乗員に対して積極的に聞かせるようにしつつ、エンジン音とオーディオ音とを明確に区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用された車両の一例を示す平面図。
図2図1に示す車両の側面一部断面図。
図3】ダッシュパネルに形成されたエンジン音透過部分の構造を示す分解斜視図。
図4】エンジン音とオーディオ音と警報音との定位位置の一例を示すもので、車室後部から前方を見た正面図。
図5】本発明における制御系統例をブロック図的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図2において、車両Vは、実施形態では、2ドアのオープンカーとされている。図中、1はダッシュパネルで、エンジンルーム2と車室3とを仕切っている。4は、エンジンルーム2を上方から覆うボンネット、5R、5Lは、左右一対のサイドドア、6はトランクリッド、7はルーフである。また、8は運転席、9は助手席、10はステアリングハンドルである。さらに、11はインストルメントパネル、12はフロントウインドガラスである。
【0018】
図2に示すように、ルーフ7は、リアウインドガラス7aを有しており、図2では、ルーフ7が閉状態のとき、つまりルーフ7によって車室3が上方から覆われた状態が示される。また、図1では、ルーフ7が閉じられた状態を示すが、ルーフ7を透視した状態となっており、またフロントウインドガラス12の上端部を一部カットした状態が示される。
【0019】
車室3の床面を構成するフロアパネル20は、車幅方向中央部において前後方向に延びるトンネル部21を有し、トンネル部21の上面はトリム材22により覆われている。フロアパネル20の後端部は、キックアップ部23を経てリアパネル24へと連なっている。
【0020】
ダッシュパネル1の前方に構成されたエンジンルーム2には、エンジン30が配設されている。エンジン30は、実施形態では縦置きとされて、エンジン本体が符号30Aで示され、吸気系部材が符号30Bで示され、排気系部材が符号30Cで示される。エンジン30(エンジン本体30A)の後部には、変速機31が連結されている。
【0021】
なお、エンジン30には、エンジン本体30Aにより駆動されるオルタネータ、エアコン用コンプレッサ等々の補器類が装備されているが、これらは図示を略してある。エンジン音は、エンジン本体30Aが回転されたり燃焼されるときに発生される音の他、吸気音や排気音、さらには補器類が駆動された音がミックスされた音となる。
【0022】
車両Vの後部には、差動装置(デファレンシャルギア)40が配設されている。この差動装置40と、変速機31(つまりエンジン30)とが、プロペラシャフト41によって連結されている。つまり、車両Vは、実施形態では後輪駆動車とされている。そして、変速機31と差動装置40とが、円環状のトルクチューブ44によって連結されていて、このトルクチューブ44内にプロペラシャフト41が配設されている。
【0023】
エンジン30から延びる排気通路42が後方へ延びている。この排気通路42は、車両後部の下方に配設されたマフラー43に接続されている。マフラー43は、後方へ開口された左右一対の排気パイプ43Aが接続されている。排気ガスが、最終的に、排気パイプ43Aから外部(大気)へ排出される。
【0024】
次に、エンジン音およびオーディオ音の定位について説明する。まず、図4に示すように、エンジン音が定位される第1の位置(部位あるいは領域)が符号T1で示され、オーディオ音が定位される第2の位置が符号T2で示される。この他、実施形態では、警報音を第3の位置T3で定位するようにしてある。
【0025】
第1の位置T1・第3の位置T3は、それぞれ、運転席8に着座される運転者の前方に位置するように設定される。すなわち、第1の位置T1は、フロントウインドガラス12に設定されている。具体的には、第1の位置T1は、フロントウインドガラス12のうち、運転者の眼の位置と略同じ高さ位置で、車幅方向略中央部に位置するように設定されている。
【0026】
また、第2の位置T2は、第1の位置T1よりも所定距離だけ低い位置に設定されている。具体的には、第2の位置T2は、インストルメントパネル11のうち略後方を向いた面のうち、車幅方略中央部に位置するように設定されている。この第2の位置T2は、第1の位置T1よりも車幅方向に広い領域設定とされている(オーディオ音を運転者や助手席乗員に聞かせるため)。なお、第1の位置T1と第2の位置T2とは、所定距離だけ離間しておくので、エンジン音とオーディオ音とを区別して聞き分ける上で好ましいものとなるが、上記所定距離は、少なくとも30cm以上で、50cm以上とするのが好ましい。
【0027】
第3の位置T3は、運転席8に着座している運転者が前方を目視したときに、運転者の視線延長線上に位置するように設定されている。第3の位置T3は、例えばフロントウインドガラス12上に設定することもでき、フロントウインドガラス12よりもさらに前方に設定することもできるが、ヘッドアップディスプレイによる運転者への情報提示位置に設定するのが好ましい。
【0028】
なお、定位位置T1、T2、T3の領域は、図示したものに限らず、例えば、車幅方向や上下方向に拡大した領域でもよく、またT1の位置は、フロントウインドガラス12の領域内において、車両状態、例えばステアリング舵角等に応じて可変としてもよい。
【0029】
次に、エンジン音を第1の位置T1に定位する具体構造例について説明する。まず、ダッシュパネル1のうち、エンジン30(エンジン本体30A)が位置する高さおよび車幅方向位置に、図3に示すように開口部50が形成される。この開口部50は、エンジンルーム2とインストルメントパネル11(の空間)内とを連通している。そして、開口部50は、空気を遮断する膜部材51によって施蓋されている。つまり、エンジンルーム2からのエンジン音が、膜部材51を震動させてインストルメントパネル11内へと効果的に伝達される。
【0030】
インストルメントパネル11には、その上面に開口部11aが形成されている(図2参照)。インストルメントパネル11内に伝達されたエンジン音は、開口部11aを通過してフロントウインドガラス12に向けて伝達されることにより、このフロントウインドガラス12で反射されて、運転席8に着座している運転者へと伝達されることになる。つまり、第1の位置T1は、エンジン音がフロントウインドガラス12で反射される部位とされる。エンジンルーム2内の空気や液体は、膜部材51で遮断されて、車室3へと流れこむことが防止される。
【0031】
図3に示すように、膜部材51により施蓋された開口部50には、弁部材52が取付けられている。弁部材52は、開口部50に臨む短い筒部材52Aと、筒部材52Aを開閉する電磁式の弁体52Bとを有する。実施形態では、弁部材52は常時全開位置とされて、開口部50からのエンジン音が、筒部材52Aを通ってインストルメントパネル11内に常時伝達されるようになっている。なお、車両の走行状態等に応じて弁部材52の開度を変更することもできる(例えばエンジン音あるいは車速が大きいほど、弁部材52の開度を大きくする)。
【0032】
オーディオ音用となる第2の位置T2を定位させるために、実施形態では、図4に示すように、上下左右の合計4個のスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRが設けられている。上方に位置する左右一対のスピーカ60UL、60URは、ツイータ+フルレンジとされて、左右のフロントピラー13L、13Rに取付けられている。下方に位置する左右一対のスピーカ60BL、60BRは、ツイータ+フルレンジとされて、左右のサイドドア5L、5Rに取付けられている。
【0033】
上記4つのスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを利用して、既知のタイムアライメントの手法により、オーディオ音が第2の位置T2から聞こえるように定位される。
【0034】
第3の位置T3は、上記4つのスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを利用して、既知のタイムアライメントの手法により、警報音が第3のT3から聞こえるように定位される。つまり、警報音は、オーディオ音に重畳されてスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRから流されることになる。
【0035】
図5は、オーディオ装置ODの一例を示すものである。図中、70は、DSP(デジタル・サウンド・プロセッサ)である。このDSP70は、オーディオ用の音源71からの信号が入力されると、第2の位置T2でオーディオ音が定位されるように前述したタイムアライメントの処理を行って、アンプ72を介してスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを駆動する。
【0036】
DSP70は、警報用音源を記憶した記憶手段(メモリ)73を有する。DSP70は、警報を行う旨の指令信号が入力されると、第3の位置T3で警報音が定位されるようにタイムアライメントの処理を行って、アンプ72を介してスピーカ60UL、60UR、60BL、60BRを駆動する。
【0037】
実施形態では、さらに、排気音を定位するようにしてある。すなわち、運転者が排気音の聞こえる位置となる第4の位置T4を、車室後部のうち車幅方向略中央部に設定してある(図1図2参照)。この第4の位置T4は、車室内への開口部に弁部材を配設した構造となっており、実質的に図3に示すのと同様の構造とされているので、その重複した説明は省略する。
【0038】
第4の位置T4(の開口部)は、車室内の換気用となる外部に開口されたエキストラチャンバ80に対して、ダクト81を介して接続されている(図1図2参照)。エキストラチャンバ80は、排気パイプ30Aの近くに形成されていることから、排気音が効果的に第4の位置T4へと伝達することができる。なお、第4の位置T4における弁部材は、常時全開とすることもできるが、市街地走行や低速走行時等のスポーツ走行が想定されないときは閉弁しておくこともできる。また、この弁部材は、エンジン回転数が上昇するにつれて、その開度を徐々に増大させることもできる。
【0039】
以上説明したように、エンジン音とオーディオ音とは、共に運転者の前方でかつ互いに所定距離離間した状態なので、運転者は、エンジン音とオーディオ音とを明確に区別することができる。つまり、オーディオ音を楽しみつつ、エンジン音を聞くことにより車両状態を明確に認識して運転操作を行うことができる。特に、上下方向のうち、運転者(の耳)に近くなる高い位置に定位されたエンジン音をより明確に認識して、スポーツ走行を行う上で極めて好ましいものとなる。
【0040】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。第1位置T1を、第2の位置T2よりも低い位置に設定することもできる(例えば、第1位置T1をインストルメントパネル11の上面かあるいはそれよりも低い位置に設定する一方、第2の位置T2を例えばインストルメントパネル11の上面よりも高い位置に設定する等)。また、第1位置T1を、車幅方向中央部よりも運転者側寄りの位置に設定することもできる(エンジン音は、助手席乗員よりも運転者にとって重要な情報である)。スピーカの数は、例えば6以上にする等適宜選択することができ、またその配設位置もその一部をインストルメントパネル11にする等、適宜選択できる。
【0041】
警報音としては、エンジン回転数が上限に達したときを報知するレブリミット音を含めることができる。警報音の定位位置は、適宜の位置に変更することができるが、エンジン音やオーディオ音の定位位置とは異なる位置とするのが好ましい。また、警報音の定位を行わないようにしてもよい。同様に、排気音の定位を行わないようにしてもよい。本発明は、オープンカーに限らず、セダン型やSUV型、4輪駆動車等、種々の形式の車両に適用できる。また、変速機31が車両後部(差動装置40の位置)に配設されたものであってもよく、プロペラシャフト41を有しない前輪駆動車(いわゆるFF車)やエンジン30が車室後方に配設されたものであってもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、エンジン音とオーディオ音とを区別しつつそれぞれの音を明確に認識させる上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0043】
1:ダッシュパネル
2:エンジンルーム
3:車室
5L、5R:サイドドア
8:運転席
9:助手席
11:インストルメントパネル
11a:開口部(エンジン音通過用)
12:フロントウインドガラス
13L、13R:フロントピラー
20:フロアパネル
21:トンネル部
22:トリム材
23:キックアップ部
24:リアパネル
30:エンジン
31:変速機
40:差動装置
41:プロペラシャフト
42:排気通路
43:マフラー
43A:排気パイプ
50:開口部(エンジン音透過用)
51:膜部材
52:弁部材
60UL、60UR、60BL、60BR:スピーカ
70:DSP
71:音源(オーディオ用)
72:アンプ
73:記憶手段(警報音用)
80:エキストラチャンバ
81:ダクト
図1
図2
図3
図4
図5