(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586345
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】基板保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20190919BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20190919BHJP
B23Q 3/15 20060101ALI20190919BHJP
H05B 3/08 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H02N13/00 D
H01L21/68 R
B23Q3/15 D
H05B3/08
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-209423(P2015-209423)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-84884(P2017-84884A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武一
(72)【発明者】
【氏名】菅家 篤
【審査官】
井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−535842(JP,A)
【文献】
特開2008−047657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 3/15
H02N 13/00
H05B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を基板の保持面とする平板状のセラミックス焼結体からなる基体と、前記基体に埋設されている導電体と、前記基体にその裏面から前記導電体の一部まで縦方向に連続するように形成されている縦穴に配置され、前記導電体に電気的に接続される受電端子と、を備えている基板保持装置であって、
前記受電端子が、第1要素と、前記第1要素に対して変位可能に設けられている第2要素と、前記第1要素および前記第2要素の間に付勢力を作用させる付勢要素と、を備え、
前記第1要素が前記基体に対して固定され、かつ、前記第2要素が前記付勢要素の付勢力によって前記導電体に対して押圧され、
前記第1要素および前記第2要素のそれぞれの一部が前記縦穴に配置されていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板保持装置において、
前記受電端子が、前記第1要素および前記第2要素を部分的に離間させる間隙が前記第1要素および前記第2要素の間に存在するように構成され、かつ、前記間隙に配置されて前記第1要素および前記第2要素のそれぞれに当接している中間要素をさらに備えていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項3】
請求項2記載の基板保持装置において、
前記受電端子が、前記第1要素および前記第2要素のそれぞれの周面の間に前記間隙が環状に延在するように構成され、かつ、前記中間要素が前記間隙の全周にわたって配置されていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の基板保持装置において、
前記中間要素のうち少なくとも一部が導電性を有することを特徴とする基板保持装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の基板保持装置において、
前記第1要素の外周面に雄ネジが形成される一方で前記基体の前記縦穴の内周面に雌ネジが形成され、前記第1要素の雄ネジと前記縦穴の雌ネジとが螺着されることで前記第1要素が前記基体に固定されていることを特徴とする基板保持装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の基板保持装置において、
前記第1要素が筒状または有底筒状に形成され、
前記第2要素が、前記第1要素の中空空間から部分的に突出して当該中空空間に可動に配置され、
前記付勢要素が前記第1要素の中空空間に配置されて前記第2要素を前記第1要素の軸線方向に付勢することを特徴とする基板保持装置。
【請求項7】
請求項6記載の基板保持装置において、
前記第1要素が、筒状または有底筒状の本体と、前記本体に対して着脱自在であり、かつ、前記第1要素の中空空間からの前記第2要素の突出量を制限する、開口を有する蓋体と、を備えていることを特徴とする基板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体が埋設されている基体の保持面においてウエハ等の基板を保持する基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャックの基体に埋設されている静電チャック電極に対して電圧を印可するため、次のような構成の接続端子が提案されている(たとえば特許文献1〜3参照)。すなわち、基体において基板が吸着される表面とは反対側の裏面から静電チャック電極まで縦方向(基体の厚さ方向)に連続する縦穴が形成されている。略円柱状の金属製の受電端子が縦穴に嵌入され、その上端部(先端部)が静電チャック電極に対してロウ付けにより接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−267233号公報
【特許文献2】特開平10−189696号公報
【特許文献3】特開2009−188394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、受電端子に対して外力が作用した場合、受電端子と静電チャック電極との接合箇所に過大な力が作用して当該接合箇所が破損し、さらには両者の電気的な接続状態が破綻する可能性がある。これは、基体および静電チャック電極の熱膨張係数の差によって静電チャック電極に熱応力が作用した場合も同様である。
【0005】
そこで、本発明は、受電端子に作用する外力または基体に埋設されている静電チャック電極などの導電体に作用する熱応力の、当該受電端子と当該導電体との電気的な接続状態に対する影響の軽減を図りうる基板保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面を基板の保持面とする平板状の
セラミックス焼結体からなる基体と、前記基体に埋設されている導電体と、前記基体にその裏面から前記導電体の一部まで縦方向に連続するように形成されている縦穴に配置され、前記導電体に電気的に接続される受電端子と、を備えている基板保持装置に関する。
【0007】
本発明の基板保持装置は、前記受電端子が、第1要素と、前記第1要素に対して変位可能に設けられている第2要素と、前記第1要素および前記第2要素の間に付勢力を作用させる付勢要素と、を備え、前記第1要素が前記基体に対して固定され、かつ、前記第2要素が前記付勢要素の付勢力によって前記導電体に対して押圧され
、前記第1要素および前記第2要素のそれぞれの一部が前記縦穴に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の基板保持装置によれば、第1要素が基体に対して固定され、かつ、第2要素が第1要素との間に作用する付勢要素の付勢力によって導電体に対して押圧されている。これにより、基体の縦穴に配置されている受電端子(第1要素、第2要素および付勢要素により構成されている。)と、基体に埋設されている導電体とが電気的に接続されている。受電端子の第1要素に外力が作用し、これに応じた力が第1要素から第2要素に作用した場合でも、第2要素が導電体に対して相対的に変位可能である。これは、基体および導電体の熱膨張係数の差に応じて熱応力が導電体に作用した場合も同様である。よって、受電端子またはその構成要素である第2要素と導電体との電気的な接続状態が維持されながらも、受電端子(第2要素)および導電体の間に作用する力の過大防止、ひいては受電端子および導電体の損傷の防止が図られる。このように、受電端子に作用する外力または基体に埋設されている導電体に作用する熱応力の、当該受電端子と当該導電体との電気的な接続状態に対する影響の軽減が図られうる。
【0009】
この状態で、外部電源に接続されている給電端子およびこれに接続されている受電端子を通じて、この基体に埋設されている導電体に対して電圧が印可される。導電体が静電チャック電極を構成する場合、当該導電体への電圧印加によって基体の一端面側に載置されているウエハなどの基板がクーロン力などによって基体に吸着保持される。導電体が抵抗発熱体を構成する場合、当該導電体への電圧印加によって基板の温度の場所によらない均一化が図られる。導電体が高周波電圧印加用電極(または接地用電極)を構成する場合、当該導電体およびこれと対をなす、基体1に埋設されているまたは基体1の外側に配置されている接地用電極(また高周波電圧印加用電極)の間に高周波電圧が印加されることによって基板の周囲にハロゲンガス等のプラズマが生成される。
【0010】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記受電端子が、前記第1要素および前記第2要素を部分的に離間させる間隙が前記第1要素および前記第2要素の間に存在するように構成され、かつ、前記間隙に配置されて前記第1要素および前記第2要素のそれぞれに当接している中間要素をさらに備えている。
【0011】
当該構成の基板保持装置によれば、第1要素に外力が作用した場合、第2要素に対して第1要素との間隙が存在しない部分(当接している部分)において第1要素から直接的に力を作用させるのみならず、当該間隙が存在する部分においても中間要素を介して第1要素から間接的に力を作用させることができる。このように、第1要素に作用する外力に起因して第2要素に作用する力の分散が図られ、受電端子(第2要素)および導電体の間に作用する力の過大防止、ひいては受電端子および導電体の損傷の防止が図られる。
【0012】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記受電端子が、前記第1要素および前記第2要素のそれぞれの周面の間に前記間隙が環状に延在するように構成され、かつ、前記中間要素が前記間隙の全周にわたって配置されている。
【0013】
当該構成の基板保持装置によれば、第1要素に作用した外力に起因して、第1要素から中間要素の一部を介して第2要素に力が作用した場合、この力とは反対向きの抗力を第1要素から中間要素の当該一部とは反対側の部分を介して第2要素に作用させることができる。このように、第1要素に作用する外力に起因して第2要素に偏向的に力が作用する事態が防止され、受電端子(第2要素)および導電体の間に作用する力の過大防止、ひいては受電端子および導電体の損傷の防止が図られる。
【0014】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記中間要素のうち少なくとも一部が導電性を有する。
【0015】
当該構成の基板保持装置によれば、前記のように受電端子(第2要素)および導電体の間に作用する力の過大防止を図りうる中間要素の一部に対して当接する第1要素および第2要素の導通が確保される。「中間要素の一部」とは、単一の中間要素の一部または複数の中間要素のうち少なくとも1つの中間要素の一部もしくは全部を意味する。
【0016】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記第1要素の外周面に雄ネジが形成される一方で前記基体の前記縦穴の内周面に雌ネジが形成され、前記第1要素の雄ネジと前記縦穴の雌ネジとが螺着されることで前記第1要素が前記基体に固定されている。
【0017】
当該構成の基板保持装置によれば、受電端子(第1要素)をその軸線回りに基体に対して回動させることにより、受電端子と基体との取り付けおよび機械的固定ならびに当該固定解除および取り外し作業が実施されるので、当該作業の容易化が図られる。
【0018】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記第1要素が筒状または有底筒状に形成され、前記第2要素が、前記第1要素の中空空間から部分的に突出して当該中空空間に可動に配置され、前記付勢要素が前記第1要素の中空空間に配置されて前記第2要素を前記第1要素の軸線方向に付勢する。
【0019】
当該構成の基板保持装置によれば、受電端子を構成する付勢要素が露出していない分だけ、当該受電端子の取り扱いの容易化が図られる。
【0020】
本発明の一態様の基板保持装置において、前記第1要素が、筒状または有底筒状の本体と、前記本体に対して着脱自在であり、かつ、前記第1要素の中空空間からの前記第2要素の突出量を制限する、開口を有する蓋体と、を備えている。
【0021】
当該構成の基板保持装置によれば、基体に対する機械的な固定が解除された第1要素を構成する蓋体が本体から取り外されうるので、第2要素など、第1要素の中空空間に配置されている部品の点検、修理または交換などの作業の容易化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態としての基板保持装置の部分断面図。
【
図2】本発明の第2実施形態としての基板保持装置の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
(構成)
図1に示されている本発明の第1実施形態としての基板保持装置は、基体1と、導電体2と、受電端子4と、を備えている静電チャックとして構成されている。
【0024】
基体1は、セラミックス焼結体などの絶縁性誘電体からなり、表面101をウエハなどの基板(図示略)が吸着保持される吸着面とする平板状に形成されている。本実施形態における基体1は略円板状であるが、多角形板状または楕円板状などのさまざまな形状であってもよい。
【0025】
基体1の吸着面には、当該吸着面から突出する略円柱状、略半球状または略円錐台状の複数のピン(図示略)が、三角格子状に配置されるように形成されている。なお、ピンの配置態様は正方格子状または同心円状など変更されてもよく、ピンが部分的にまたは全体的に省略されてもよい。基体1の縦方向(厚さ方向)についてその裏面102から導電体2まで断面が略円形状の縦穴10が形成されている。縦穴10の内周面には雌ねじ112が形成されている。
【0026】
導電体2は、基体1において吸着面に対して平行な姿勢で埋設されている薄板状または薄膜状の金属からなり、静電チャック電極を構成する。
【0027】
受電端子4は、基体1の縦穴10に少なくとも一部が配置され、導電体2に電気的に接続される。複数の独立した静電チャック電極を構成する導電体2が基体1に埋設されている場合、各導電体2に対応する複数の受電端子4が基体1に設けられている。受電端子4は、略円筒状に形成されている導電体(たとえば金属)からなる第1要素41と、第1要素41に対して軸線方向に変位可能に設けられている略円筒状に形成されている導電体からなる第2要素42と、第1要素41および第2要素42の間に付勢力を作用させる付勢要素43と、を備えている。
【0028】
第1要素41は、略円筒状の本体410と、本体410の上部に着脱自在に取り付けられている略円筒状の蓋体420とを備えている。本体410の下端部の内周面には雌ネジ401が形成され、本体410の上端部の内周面には雌ネジ412が形成されている。蓋体420は略円盤状に形成されている上部と、当該上部よりも小径の略円柱状に形成されている下部とにより構成されている。すなわち、蓋体420の外径は上部のほうが下部よりも大きい。蓋体420の上部の外周面には雄ネジ402が形成され、蓋体420の下部の外周面には雄ネジ422が形成されている。なお、本体410の上端部が縦穴10に配置される場合、蓋体420の上部外周面に加えてまたは代えて、本体410の上端部に雄ネジが形成されていてもよい。蓋体420の中空空間(開口)は、略円柱状の上側中空空間と、上側中空空間よりも大径の略円柱状の下側中空空間とに区分される。すなわち、蓋体420の内径(中空空間の径)は上側のほうが下側よりも小さい。本実施形態は、蓋体420の軸線方向についてその上部および下部の境界位置は、上側中空空間および下側中空空間の境界位置よりも上方にあるが、両境界位置が同一であってもよいし、上下関係が逆であってもよい。
【0029】
本体410の上端部内周面に形成されている雌ネジ412と、蓋体420の下部外周面に形成されている雄ネジ422とにより、本体410および蓋体420が螺着されることにより第1要素41が構成されている。この際、本体410の環状上端面413と、蓋体420の上部の環状下端面423とが当接している。第1要素41の中空空間は、軸線を共通にする略円柱状の4つの中空空間により構成されている。当該4つの中空空間は、上から順に蓋体420の上側中空空間および下側中空空間により構成されている第1中空空間と、蓋体420の下側中空空間より大径の第2中空空間と、蓋体420の下側中空空間と同径の第3中空空間と、前記のように雌ネジ401が形成されている第4中空空間と、により構成されている。
【0030】
第2要素42は、蓋体420の上側中空空間と同径またはわずかに小径の略円柱状に形成されている上部と、蓋体420の下側中空空間よりわずかに小径であって当該上部より大径の略円柱状に形成されている下部とにより構成されている。第2要素42の上端部は、当該上部よりも小径の円柱状または円盤状に形成されている。第2要素42は、その上部を蓋体420の上側中空空間(開口)を通じて第1要素41から上方に突出させ、かつ、その下部を蓋体420の下側中空空間、ならびに、第1要素41の第2中空空間および第3中空空間に挿通させた状態で、第1要素41の中空空間に配置されている。第2要素42の下部の環状上端面414が、第1要素41を構成する蓋体420の環状下端面424に当接することで、第2要素42の上部の第1要素41からの突出量が制限される。第2中空空間を画定する第1要素41の内周面と、第2要素42の下部外周面との間には略円環状または略円筒状の間隙が存在する。
【0031】
付勢要素43は本実施形態ではコイルバネにより構成され、第1要素41の第3中空空間に配置され、第1要素41に対して第2要素42を上方に付勢している。付勢要素43は導電性を有していてもいなくてもよい。付勢要素43はコイルバネのほか、皿バネ、板バネ、ベローズ空気バネ、同極を対向させている一対または複数対の磁石などにより構成されていてもよい。
【0032】
第2中空空間を画定する第1要素41の内周面と、第2要素42の下部外周面との間に存在する略円環状の間隙には、円環状に形成されているスペーサとしての第1中間要素441と、円環状に形成されているコイルスプリングからなる第2中間要素442が配置されている。第2中間要素442は、その全周にわたって第2中空空間を画定する第1要素41の内周面と、第2要素42の下部外周面とに対して摺動可能に当接している。本実施形態では、3個の第1中間要素441の間に2個の第2中間要素442が介在した状態で当該中間要素が軸線方向に重なるように配置されている。第1中間要素441および第2中間要素442のそれぞれの個数および軸線方向の配置順序は、第1要素41の第2中空空間の軸線方向の長さなどに応じて任意に変更されてもよい。第1中間要素441および第2中間要素442は導体が望ましいが、第1中間要素441は絶縁体であってもよい。また第1中間要素441は第2要素42と一体化した構造であってもよい。
【0033】
受電端子4を構成する第1要素41(詳細には蓋体420の上部外周面)に形成されている雄ネジ402と、基体1の縦穴10の内周面に形成されている雌ネジ112とにより、受電端子4が基体1に螺着される。これにより、基体1に対して受電端子4が固定されている。この際、受電端子4を構成する第2要素42の上端部が、付勢要素43の付勢力によって導電体2に対して押圧されている。これにより、受電端子4と導電体2との電気的な接続が確立されている。
【0034】
受電端子4を構成する第1要素41の下端部に形成されている雌ネジ401と、給電端子(図示略)の略円柱状の上端部外周面に形成されている雄ネジとにより、受電端子4と給電端子とが螺着される。すなわち、給電端子の上端部は第1要素41の第4中空空間に配置される。給電端子の後端部には、給電端子を外部電源に接続する電線が接続されている(図示略)。
【0035】
(作製方法)
前記構成の基板保持装置(静電チャック)は、たとえば次のような手順で作製される。すなわち、導電体2(静電チャック電極)が埋設されている原料粉末の成形体がホットプレス焼結される。原料粉末としては、たとえば高純度(例えば純度99.9%以上)の窒化アルミニウム粉末、必要に応じてこれに適量の酸化イットリウム粉末などの焼結助剤が添加された混合原料粉末が用いられる。そのほか、アルミナ粉末等、他のセラミックス粉末が原料粉末として用いられてもよい。導電体2としては、たとえばMo箔(例えば厚さ0.1[mm])が用いられる。そのうえで、当該焼結体に複数のピンおよび縦穴10がブラスト加工またはミリング加工などの適当な加工法にしたがって形成される。
【0036】
受電端子4が縦穴10の個数に応じた個数だけ準備される。具体的には、第1要素41を構成する本体410および蓋体420、第2要素42、付勢要素43、第1中間要素441ならびに第2中間要素442が形成される。第1要素41の本体410の上方から中空空間に付勢要素43が挿入されて配置され、さらにその上に第2要素42が挿入されて配置される。さらには第2要素42の外周面および本体410の内周面の間の間隙に環状の第1中間要素441および第2中間要素442が挿入されて配置される。その上で、蓋体420が本体410に螺着されることにより受電端子4が作製される。
【0037】
第1受電端子4を構成する第1要素41に形成されている雄ネジ402と、基体1の縦穴10の内周面に形成されている雌ネジ112とにより、受電端子4が基体1に螺着される。受電端子4を構成する第2要素42の上端部が、付勢要素43の付勢力によって導電体2に対して押圧される。前記工程によって前記構成の基板保持装置が製造される。
【0038】
第1要素41を構成する本体410および蓋体420、第2要素42、付勢要素43、第1中間要素441ならびに第2中間要素442は、ニッケルまたはインコネルのようなニッケル系合金を主成分とした素材にすることにより耐熱性が750℃まで使用可となる。また、これらに金メッキをすることにより半導体製造プロセス環境下での耐食性の向上を図ることができる。
【0039】
これらの素材と本発明の構造を組みあわせることにより高温環境下での使用による熱応力に晒されても受電端子と導電体との電気的な接続状態に対する影響の軽減を図ることができる。
【0040】
(機能)
前記構成の基板保持装置(静電チャック)によれば、第1要素41が基体1に対して螺着によって固定され、かつ、第2要素42が第1要素41との間に作用する付勢要素43の付勢力によって導電体2に対して押圧されている。これにより、基体1の縦穴10に配置されている受電端子4と、基体1に埋設されている導電体2とが電気的に接続されている。受電端子4の第1要素41に外力が作用し、これに応じた力が第1要素41から第2要素42に作用した場合でも、第2要素42が導電体2に対して相対的に変位可能であ
る。これは、基体1および導電体2の熱膨張係数の差に応じて導電体2に熱応力が作用した場合も同様である。よって、受電端子4(または第2要素42)と導電体2との電気的な接続状態が維持されながらも、第1要素41に作用する外力または基体1および導電体2の熱膨張係数の差に応じて導電体2に作用する熱応力に起因して受電端子4(第2要素42)および導電体2の間に作用する力の過大防止、ひいては受電端子4および導電体2の損傷の防止が図られる。
【0041】
第1要素41に外力が作用した場合、第2要素42に対して、第1要素41(その第1中空空間および第3中空空間を画定する内周面)との当接部分において第1要素41から直接的に力を作用させるのみならず、第2中空空間における間隙に配置されている第1中間要素441および第2中間要素442を介して第1要素41から間接的に力を作用させることができる。第1要素41に作用した外力に起因して、第1要素41から環状の第1中間要素441および第2中間要素442のそれぞれの一部を介して第2要素42に力が作用した場合、この力とは反対向きの抗力を第1要素41から第1中間要素441および第2中間要素442それぞれの当該一部とは反対側の部分を介して第2要素42に作用させることができる。このように、第1要素41に作用する外力または基体1および導電体2の熱膨張係数の差に応じて導電体2に作用する熱応力に起因して、第2要素42に集中的または偏向的に力が作用する事態が防止され、受電端子4(第2要素42)および導電体2の間に作用する力の過大防止が図られる。
【0042】
(第2実施形態)
(構成)
図2に示されている本発明の第2実施形態としての基板保持装置は、受電端子4の構成を除き、本発明の第1実施形態としての基板保持装置(静電チャック(
図1参照))とほぼ同様の構成であるので、共通または対応する構成には同一の符号を用い、作製方法も含めて説明を省略する。
【0043】
第1要素41は、略円柱状に形成されている上部と、当該上部よりも大径かつ基体1の縦穴10と略同径または僅かに小径の略円柱状に形成されている下部により構成されている。第1要素41の下部下端面から一定の深さまで軸線方向に延在する縦穴が形成され、当該縦穴の内周面に雌ネジ401が形成されている。第1要素41の下部の上端部外周面に雄ネジ402が形成されている。第2要素42は、略円柱状の上部と、外径が当該上部よりも大径かつ基体1の縦穴10より小径の略有蓋円筒状に形成されている下部とにより構成されている。第2要素42の下部はその内径(当該下部の下端面から軸線方向に一定の深さまで連続する縦穴の径)は、第1要素41の上部よりも大径になるように形成されている。
【0044】
第1要素41の上部外周面と第2要素42の下部内周面との間に存在する略円筒状の間隙に、第1要素41に対して第2要素42を上方に付勢する付勢要素43(たとえばコイルバネ)が配置されている。付勢要素43は導電性を有していてもいなくてもよいが、中間要素の役割を兼ねている。
【0045】
(機能)
前記構成の基板保持装置(静電チャック)によれば、第1実施形態の基板保持装置と同様の作用により、受電端子4(または第2要素42)と導電体2との電気的な接続状態が維持されながらも、第1要素41に作用する外力または基体1および導電体2の熱膨張係数の差に応じて導電体2に作用する熱応力に起因して、受電端子4(第2要素42)および導電体2の間に作用する力の過大防止、ひいては受電端子4および導電体2の損傷の防止が図られる。
【0046】
(本発明の他の実施形態)
基体1に対する第1要素41の機械的な固定方法は縦穴10の内周面に形成されている雌ネジ112および第1要素41の外周面に形成されている雄ネジ402の螺着に限られず、他の固定方法が採用されてもよい。
【0047】
たとえば、第1要素41が基体1の縦穴10に圧入されることにより、第1要素41が基体1に対して固定されていてもよい。第1要素41の外周面と縦穴10の内周面とが接着剤により接着されていてもよい。一般的に接着剤の熱伝導率は金属よりも低いので、基体1から第1要素41を通じて流れる熱量の低減が図られる。このため、基体1の表面101(基板の吸着面)において受電端子4に相当する箇所に局所的な低温箇所(コールドスポット)が生じる事態が抑制される。
【0048】
第1要素41の下端部に径方向外側に拡張されている部位が設けられ、当該部位に縦貫通孔が設けられ、当該縦貫通孔を通じて当該部位が基体1の下端にネジ止めされてもよい。この場合、第1要素41がその外周面と縦穴10の内周面との間に間隙が存在するように構成されることにより、基体1から第1要素41を通じて流れる熱量の低減が図られる。このため、基体1の表面101において受電端子4に相当する箇所にコールドスポットが生じる事態が抑制される。
【0049】
基体1に対して固定されている第1要素41に対して、付勢要素43の付勢力によって第2要素42が基体1に埋設されている導電体2に対して電気的に接続される範囲で、受電端子4が前記実施形態とは異なる形態で構成されていてもよい。第1実施形態の基板保持装置において第1中間要素441および第2中間要素442のうち一方または両方が省略されてもよい。
【0050】
前記実施形態における基板保持装置において、静電チャック電極を構成する導電体2に加えて、薄板状または薄膜状の金属からなり発熱抵抗体を構成する導電体が基体1に対して埋設されていてもよい。発熱抵抗体を構成する導電体は、基体1の縦方向について当該導電体2よりも裏面102に近い位置に、表面101に対して平行な姿勢で基体1に埋設されている。発熱抵抗体を構成する導電体についても、静電チャック電極を構成する導電体2と同様の構成の受電端子および給電端子を介して外部電源に接続される。
【0051】
この場合、基板保持装置はたとえば特開2013−157570号公報に記載されている方法にしたがって製造される。すなわち、第1導電体2(静電チャック電極)が埋設されている第1原料粉末の成形体と、第2導電体(発熱抵抗体)が埋設されている第2原料粉末の成形体とが重ね合わせられた状態で、まとめてホットプレス焼結される。その上で、当該焼結体にピンおよび縦穴10が適当な加工法にしたがって形成されることにより基板保持装置(ヒータ付静電チャック)が製造される。静電チャック電極を構成する導電体2に加えてまたは代えて、薄板状または薄膜状の金属からなり高周波電圧印加用電極または接地用電極を構成する導電体が基体1に対して埋設されていてもよい。
【0052】
そのほか、第1導電体2およびこれを挟む一対の第1原料粉末の成形体と、第2導電体およびこれを挟む一対の第2原料粉末の成形体とが重ね合わせられた状態で、まとめてホットプレス焼結されることにより基板保持装置が製造されてもよい。また、第1導電体2が埋設されている第1原料粉末の成形体と、第2導電体が埋設されている第2原料粉末の成形体とが別個にホットプレス焼結されることにより第1基体部分および第2基体部分が作製された上で、両基体部分が接合されることにより基板保持装置が製造されてもよい。この場合、窒化アルミニウム焼結体の接合材としてアルミナ−酸化イットリウム系の接合材が用いられ、そのほかガラス系接合材が用いられてもよい。ガラス系材料としては、石英、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラスなどが採用される。
【符号の説明】
【0053】
1‥基体、2‥導電体(静電チャック電極)、4‥受電端子、10‥縦穴、41‥第1要素、42‥第2要素、43‥コイルバネ(付勢要素)、410‥本体、420‥蓋体、441‥第1中間要素、442‥第2中間要素。