(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜6を用いて、セル、セルスタック装置、モジュール及びモジュール収容装置について説明する。なお、同一の構成については同一の符号を用いるものとする。以下において、セルとして固体酸化物形で中空平板型のセルの例を用いて説明する。
【0014】
(セルの構成)
図1は、セルの一形態を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は(a)において、インターコネクタ層6側から見た側面図である。なお、両図面において、セル1の各構成を一部拡大して示している。
図2は、インターコネクタ層6の一部の厚さ方向Tにおける断面図である。長手方向をLとし、短手方向をWとし、厚さ方向をTとする。
【0015】
セル1は、支持体2、燃料極層3、固体電解質層4、空気極層5及びインターコネクタ層6を備える。
【0016】
支持体2は、横断面が扁平な楕円形で、全体的に見て楕円柱状をしている。また、支持体2は多孔質体である。
図1に示すように、支持体2は、一対の第1面n1及び第2面n2と一対の側面mとを有する平板状である。
図1に示す例では、一対の第1面n1及び第2面n2は互いに対向している。
図1に示す例では、一対の側面mは、それぞれ弧状面となっている。なお、一対の側面mは、平坦面であってもよい。
【0017】
また、支持体2の内部には、適当な間隔で複数のガス流路2aが長手方向Lに貫通している。この支持体2の外周を後述する各種の部材が取り巻いている。
【0018】
燃料極層3は、
図1に示すように、支持体2の第1面n1上に設けられている。
図1に示す例においては、燃料極層3は、支持体2の第1面n1と両側の側面mとを覆うように支持体2に設けられている。また、燃料極層3は、空気極層5に固体電解質層4を介して対向する位置に設けられていればよいため、例えば、燃料極層3が第2面n2及び側面mまで延びず、第1面n1にのみ設けられていてもよい。また、燃料極層3は多孔質体である。
【0019】
固体電解質層4は、
図1に示すように、燃料極層3を覆っており、支持体2の第1面n1から一対の側面mにかけて設けられている。
【0020】
空気極層5は、
図1に示すように、固体電解質層4上で、燃料極層3と対向するように設けられている。
図1に示す例においては、支持体2の第1面n1であって固体電解質層4の外側に配置されている。また、空気極層5は多孔質体である。
【0021】
インターコネクタ層6は、支持体2の第2面n2に設けられている。
【0022】
以上で説明したセル1は、燃料極層3、固体電解質層4及び空気極層5が積層されている部分が発電素子部として機能する。発電させるためには、空気極層5の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、かつ支持体2内のガス流路2aに燃料ガス(水素含有ガス)を流して、燃料極層3に燃料ガスを供給し、燃料極層3を所定の作動温度まで加熱する。そして、かかる発電によって生成した電流は、インターコネクタ層6にて集電される。
【0023】
図1に示す例において、燃料極層3および固体電解質層4は、第1面n1から両端の側面mを経由して第2面n2の一部まで延びており、固体電解質層4の両端部にはインターコネクタ層6の両端部が積層されて接合されている。これによって、固体電解質層4とインターコネクタ層6とで支持体2が取り囲まれ、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出することを抑制できる構成となっている。
【0024】
図1に示す例では、平面形状が矩形状のインターコネクタ層6が支持体2の長手方向Lの上端から下端までを覆うように配置されており、インターコネクタ層6の左右両側端部は固体電解質層4の両端部上に重畳して接合されている。
【0025】
(セルの各部材の説明)
支持体2は、燃料ガスを燃料極層3まで透過するためにガス透過性であること、及びインターコネクタ層6に接続されて集電するために導電性であることが要求される。したがって、支持体2としては、導電性セラミックスやサーメット等を用いることができる。その導電率は300S/cm以上、特に440S/cm以上であるのが好ましく、ガス透過性を備えるために開気孔率は25%以上であることが好適である。
【0026】
支持体2は、Niを含有している。ここでいうNiとは、金属ニッケルを意味している。つまり、Niは、後述するNiO(酸化ニッケル)と区別されるものである。
【0027】
本例において、支持体2は、Niと、NiOと、特定の希土類酸化物とを有している。特定の希土類酸化物は、支持体2の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近づけるために使用されるものであり、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物が用いられる。このような希土類酸化物の具体例としては、Y
2O
3、Lu
2O
3、Yb
2O
3、Tm
2O
3、Er
2O
3、Ho
2O
3、Dy
2O
3、Gd
2O
3、Sm
2O
3、Pr
2O
3を例示することができる。また、NiおよびNiOとの固溶や反応が殆どなく、熱膨張係数が固体電解質層4と同程度であり、かつ安価であるという点から、Y
2O
3及びYb
2O
3の少なくとも一種からなるとよい。また、本実施形態においては、支持体2の良好な導電率を維持し、かつ熱膨張係数を固体電解質層4と近似させるという点で、Ni及びNiO:希土類酸化物=35:65〜65:35の体積比で存在する。また、支持体2がNi及びNiOの双方を含有している場合に、Ni及びNiOの比率は特に限定されるものではないが、Niは必ず存在する。なお、支持体2中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で、他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
【0028】
さらに、本実施態様によれば、支持体2の第1面n1及び第2面n2の短手方向Wの長さは、15〜60mm、側面mの長さ(弧の長さ)は2〜8mmであり、支持体2の第1面n1及び第2面n2間の厚みは1.5〜5mm、支持体2の長手方向Lの長さは、10〜50cmとされている。
【0029】
燃料極層3は、電極反応を生じさせるものであり、本実施態様では、多孔質の導電性セラミックスからなる。例えば、希土類酸化物が固溶したZrO
2とNi及び/又はNiOとからなる材料、又は他の希土類酸化物が固溶したCeO
2とNi及び/又はNiOとからなる材料が挙げられる。なお、希土類酸化物は、支持体2において例示したものを用いることができ、例えばY
2O
3が固溶したZrO
2(YSZ)とNi及び/又はNiOとからなる材料が挙げられる。本実施態様では、燃料極層3中の希土類酸化物が固溶したZrO
2又は他の希土類酸化物が固溶しているCeO
2の含有量は35〜65体積%の範囲で、Ni及び/又はNiOの含有量は65〜35体積%である。さらに、この燃料極層3の開気孔率は例えば15%以上、特に20〜40%の範囲にあり、その厚みは1〜30μmである。
【0030】
固体電解質層4は、燃料極層3、空気極層5間のイオンの橋渡しをする固体電解質層4としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有することが必要とされる。本実施態様では、3〜15モル%のY、Sc、Yb等の希土類元素の酸化物を含有した部分安定化あるいは安定化ZrO
2からなるセラミックス(固体酸化物)が用いられている。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが用いられている。固体電解質層4は、例えば、LaGaO
3系の材質であっても良く、上記特性を有する限りにおいては、他の材料であってもよいことは勿論である。本実施態様において、固体電解質層4の厚みは10〜40μmである。
【0031】
空気極層5は、一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、いわゆるABO
3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成することができる。具体的には、LaSrCoFeO
3、LaSrMnO
3、LaSrCoO
3等を用いることができる。空気極層5はガス透過性を有していることが必要であり、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。
【0032】
インターコネクタ層6は、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO
3系酸化物)、もしくは、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO
3系酸化物)が好適に使用される。これらの材料は、導電性を有し、かつ燃料ガス(水素含有ガス)及び酸素含有ガス(空気等)と接触しても還元も酸化もされにくい。
【0033】
さらに、インターコネクタ層6は支持体2に設けられたガス流路2aを流通する燃料ガス、及び支持体2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを抑制するために緻密質であるとよい。
【0034】
ところで、セル1の外部を流れる酸素含有ガスが支持体2の内部のガス流路2aに流入する場合がある。例えば、燃料ガスの供給量が低下した場合又は燃料ガスの供給が停止した場合である。これらの場合に、支持体2に含有されるNiが酸化膨張するため、支持体2に接するインターコネクタ層6に応力が印加され、この部分にクラックが発生する。
【0035】
そこで、
図2に示すように、インターコネクタ層6が第1層6aを有しており、第1層6aは、最も支持体2側に位置しており、他の部分より気孔率が高くなっている。ここでいう「他の部分」とは、インターコネクタ層6における第1層6a以外の部分をいう。こ
の構成により、第1層6aに、気孔が比較的多く存在することとなるから、支持体2に含有されるNiの酸化膨張に伴うインターコネクタ層6への応力集中を緩和することができる。従って、インターコネクタ層6にクラックが生じることを抑制することができる。
【0036】
また、インターコネクタ層6は、Niを含有しており、
図2に示す例のように、インターコネクタ層6は、第1層6aよりも支持体2から離れた位置に第2層6bを有しており、第2層6bは他の部分より気孔率が低いとよい。ここでいう「他の部分」とは、インターコネクタ層6における第2層6b以外の部分をいう。インターコネクタ層6の材料としてランタンクロマイトを使用した場合、インターコネクタ層6は還元雰囲気下で体積が膨張する。また、インターコネクタ層6にNiを含有させることにより、酸化雰囲気下ではNiOとして存在し、還元雰囲気下ではNiOが還元されNiとして存在する。よって、還元雰囲気下ではランタンクロマイトが還元膨張する一方で、NiOが還元収縮するため、インターコネクタ層6全体の体積膨張を抑制することができる。従って、インターコネクタ層6の破損を抑制することができる。一方、外表面を流れる酸素含有ガスがインターコネクタ層6の内部まで侵入すると、インターコネクタ層6中のNiが酸化されて体積が膨張し、インターコネクタ層6全体の体積が膨張しやすくなる。そこで第1層6aよりも支持体2から離れた位置に、他の部分より気孔率が低い第2層6bが存在することにより、第2層6bによって酸素含有ガスの侵入を抑制することができる。従って、インターコネクタ層6において、第2層6bから支持体2側の領域においては、Niの体積膨張を抑制できるので、インターコネクタ層6の破損を抑制することができる。
【0037】
インターコネクタ層6におけるNiの含有量は、例えば、5〜15体積%であるとよい。
【0038】
また、第1層6aの気孔率が2〜10%であるよい。第1層6aの気孔率が2%以上の場合には、第1層6aへの応力集中をさらに緩和できる。一方、気孔率が10%以下の場合には、インターコネクタ層6における支持体2との界面において開気孔が存在する確率を抑えることができるため、支持体2とインターコネクタ層6が接合する面積を大きくすることができる。従って、接合強度を十分に保つことができることとなり、インターコネクタ層6の剥離を抑制できる。さらに好ましくは、第1層6aの気孔率が3〜9%であるとよい。
【0039】
また、第2層6bの気孔率は0.2%以下であるとよい。この場合には、インターコネクタ層6において内部に向けて酸素含有ガスが侵入することをさらに抑制することができる。
【0040】
また、インターコネクタ層6は、第1層6aと第2層6bとの間にさらに第3層6cを有しており、第3層6cの気孔率は、第1層6aより低く、第2層6bよりも高いとよい。この構成によれば、第1層6aよりも気孔率が低い第3層6cによって、インターコネクタ層6の外表面を流れる酸素含有ガスのインターコネクタ層6内部への侵入をより防ぐことができる。また、第3層6cの気孔率は、第1層6aと第2層6bとの中間なので、支持体2からの応力により第1層6aが変形した場合に、気孔率が低く変形しにくい第2層6bに応力が伝わることを抑制することができる。従って、インターコネクタ層6内部で破損が生じることを抑制することができる。
【0041】
また、
図3で示す例のように、第3層6cの厚み(Tc)は、第1層6aの厚み(Ta)および第2層6bの厚み(Tb)よりも厚いとよい。この構成により、前述した、酸素含有ガスのインターコネクタ層6内部への侵入防止効果を向上させることができる。また、前述したインターコネクタ層6内部での破損抑制効果をさらに向上させることができる。
【0042】
また、
図3で示すように、インターコネクタ層6は、Niを含有しており、インターコネクタ層6における気孔の内壁の少なくとも一部がNiで構成されているとよい。この構成によれば、インターコネクタ層6内部に酸素含有ガスが進入した場合又は酸素イオンが粒界を通ってインターコネクタ層6内部に進入した場合にインターコネクタ層6内部のNiが酸化膨張したとしても、気孔がNiの体積膨張を吸収することができる。従って、インターコネクタ層6全体としての体積が急激に膨張することを抑制できる。よって、インターコネクタ層6内部での破損を抑制できる。
【0043】
(測定方法)
まず第1層6aの気孔率の測定方法について説明する。第1層6aの断面における気孔の面積占有率を算出し、それを気孔率とする。具体的には、インターコネクタ層6の厚み方向Tにおける断面の倍率1000倍のSEM(ScanningElectron M
icroscope、走査型電子顕微鏡)画像を取得する。SEM画像中における第1層6a全体の断面積を算出し、第1層6aの気孔の面積の総和を算出し、「気孔の面積の総和/第1層6a全体の断面積」を算出し、この値を気孔の面積占有率とする。なお、第2層6b及び第3層6cの気孔率の算出方法についても同様である。
【0044】
また、気孔の面積の算出には画像解析ソフトを用いることもできる。また1つの視野において算出された気孔率を第1層6aの気孔率とみなしてもよいし、複数の視野において同様の手順で気孔率を算出し、その平均値を第1層6aの気孔率とみなしてもよい。
【0045】
なお、第1層6aと他の部分との境界の決定について説明する。まず、上記と同様のSEM画像において、支持体2とインターコネクタ層6の境界線からインターコネクタ層6の内部に向かって1μmの間隔を空けて第1線を引く。そして、前記境界線と第1線との間の領域における気孔率を測定する。次に、第1線から1μmの間隔を空けて第2線を引く。そして、第1線と第2線との間の領域における気孔率を測定する。この気孔率が1%未満であれば、第1線を第1層6aと他の部分との境界とする。すなわち、第1線から支持体2とインターコネクタ層6の境界までを第1層6aとみなす。第1線と第2線との間の領域における気孔率が1%以上であれば、第2線から1μmの間隔を空けて第3線を引く。同様に、第2線と第3線との間の領域における気孔率を求め、1%未満であれば、第2線を第1層6aと他の部分との境界とする。すなわち、第2線から支持体2とインターコネクタ層6の境界までを第1層6aとみなす。また、1%以上であれば、同様に第4線を引いて気孔率を求める。このように、幅が1μmの領域の気孔率を測定し、気孔率が1%未満となるまで繰り返す。そして、1%未満になった場合には、その1つ手前の線を第1層6aと他の部分との境界とすればよい。
【0046】
また、第2層6bとその他の部分との境界の決定について説明する。まず、上記と同様のSEM画像において、インターコネクタ層6における支持体2から遠い方の表面からインターコネクタ層6の内部に向かって1μmの間隔を空けて第1線を引く。そして、表面と第1線との間の領域における気孔率を測定する。次に、第1線から1μmの間隔を空けて第2線を引く。そして、第1線と第2線との間の領域における気孔率を測定する。この気孔率が0.5%より大きければ、第1線を第2層6bと他の部分との境界とする。すなわち、第1線からインターコネクタ層6の表面までを第2層6bとみなす。第1線と第2線との間の領域における気孔率が0.5%以下であれば、第2線から1μmの間隔を空けて第3線を引く。同様に、第2線と第3線との間の領域における気孔率を求め、0.5%より大きければ、第2線を第2層6bと他の部分との境界とする。すなわち、第2線からインターコネクタ層6の表面までを第2層6bとみなす。また、0.5%以下であれば、同様に第4線を引いて気孔率を求める。このように、幅が1μmの領域の気孔率を測定し、気孔率が0.5%より大きくなるまで繰り返す。そして、0.5%より大きくなった場
合には、その1つ手前の線を第2層6bと他の部分との境界とすればよい。
【0047】
また、第3層6cの境界は、第1層6aと他の部分との境界、および第2層6bと他の部分との境界によって定められる。すなわち、第1層6aの境界から、第2層6bの境界までを第3層6bとみなす。
【0048】
次に、「他の部分より気孔率が高い第1層」の確認方法について説明する。上述のように、第1層6aと他の部分との境界を定めた後、第1層6aおよび他の部分の気孔率をそれぞれ算出する。そして、第1層6aの気孔率が他の部分より高くなっていることを確認すればよい。
【0049】
また、「第2層は他の部分より気孔率が低い」の確認方法について説明する。上述のように、第2層6bと他の部分との境界を定めた後、第2層6bおよび他の部分の気孔率をそれぞれ算出する。そして、第2層6bの気孔率が他の部分より低くなっていることを確認すればよい。
【0050】
また、「第3層の気孔率は、第1層より低く、第2層よりも高い」の確認方法について説明する。これは、第1層、第2層、および第3層を特定後、各層の気孔率を算出し、数値を比較して確認すればよい。
【0051】
また、「第3層は、第1層および第2層よりも厚い」の確認方法について説明する。これは、第1層、第2層、および第3層を特定後、各層の厚みを計測し、数値を比較して確認すればよい。
【0052】
(製造方法)
以上説明した本実施形態のセル1の作製方法の一例について説明する。ただし、以下に述べる材料、粒径、温度、及び塗布方法等の各種条件は、適宜変更することができる。以下、「成形体」とは、焼成前の状態を指すものとする。
【0053】
先ず、例えば、Ni及び/又はNiO粉末と、Y
2O
3などの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いて押出成形により支持体成形体を作製し、これを乾燥する。
【0054】
なお、支持体成形体は、900〜1000℃にて2〜6時間仮焼した仮焼体を用いてもよい。
【0055】
次に、例えば所定の調合組成に従い、NiOと、Y
2O
3が固溶したZrO
2(YSZ)との素原料を秤量、混合する。この後、混合した粉体に、有機バインダー及び溶媒を混合して燃料極層用スラリーを調製する。
【0056】
また、Y
2O
3が固溶したZrO
2粉末に、トルエン、バインダー粉末、市販の分散剤等を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、成形してシート状の固体電解質層成形体を作製する。
【0057】
そして、得られたシート状の固体電解質層成形体上に燃料極層用スラリーを塗布し乾燥して燃料極層成形体を形成して、シート状の積層成形体を形成する。この燃料極層成形体及び固体電解質層成形体のシート状の積層成形体の燃料極層成形体側の面を支持体成形体に積層し、成形体を形成する。
【0058】
続いて、インターコネクタ層材料(例えば、LaCrMgO
3系酸化物粉末)、NiO
粉末、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを作製する。
【0059】
なお、第1層、第2層および第3層用のスラリーを作製するためには、それぞれの層が所望の気孔率となるよう造孔材の量を調整する。造孔材は、焼成時に飛散する樹脂、例えばセルロース系樹脂から形成されている。
【0060】
造孔材の大きさによって気孔径を変更することができ、また造孔材量によって、気孔率を変更することができる。
【0061】
そして、
図2に示す例のインターコネクタ層6を作製する場合には、導電性支持体成形体上に第1層用スラリーを塗布し、乾燥させ、第1層成形体を作製した後、第1層成形体上に第3層用スラリーを塗布し、乾燥させ、第3層成形体を作製し、第2層用スラリーを塗布し、乾燥させ、第2層成形体を作製し、積層成形体を作製する。
【0062】
また、
図3に示す例のインターコネクタ層6を作製する場合には、例えば以下の方法をとる。まず、NiO粉末と造孔材からスラリーを作製する。次いで、作製したスラリーをスプレードライヤーによって顆粒とする。作製した顆粒、インターコネクタ層材料(例えば、LaCrMgO
3系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを作製する。このスラリーを使用して前述したような積層成形体を作製すればよい。これにより、インターコネクタ層において造孔材が気孔となりNiO粉末が気孔の内壁を構成するNiとなる。
【0063】
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1400〜1450℃にて2〜6時間、同時焼結(同時焼成)する。
【0064】
続いて、例えば、所定の粒径のLa
xSr
1−xCo
yFe
1−yO
3(以下、単にLSCFと略す)粉末、有機バインダー、造孔材、及び溶媒を混合して空気極層用スラリーを作製する。このスラリーを固体電解質層上にスクリーン印刷にて塗布して、空気極層用成形体を形成する。このスラリーを固体電解質層上にスクリーン印刷にて塗布して、空気極層用成形体を形成する。
【0065】
次に、固体電解質層上に空気極層用成形体が形成された積層体を、1100〜1200℃にて1〜3時間焼成する。このようにして
図1に示す構造の本実施形態のセル1を製造できる。
【0066】
なお、セル1は、その後、ガス流路に水素ガスを流し、支持体及び燃料極層3の還元処理を行なうのが好ましい。その際、たとえば750〜1000℃にて5〜20時間還元処理を行なうのが好ましい。
【0067】
(セルスタック装置)
図4は、上述したセルの複数個を、導電部材13を介して電気的に直列に接続して構成されたセルスタック装置の一例を示したものであり、(a)はセルスタック装置11を概略的に示す側面図、(b)は(a)のセルスタック装置11の破線部についての横断面図であり、(a)で示した破線で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した破線で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示している。
【0068】
セルスタック装置11は、複数のセル1が並設され、各セル1間が導電部材13で接続されているセルスタック12具備する。また、複数のセル1の並設方向の両端には弾性変形可能な端部導電部材14が設けられ、並設された複数のセル1を挟持している。さらに
、端部導電部材14にはセルスタック12(セル1)の発電により生じる電流を引出すための電流引出し部15が接続されている。また、各セル1の下端及び端部導電部材14の下端はガスタンク16に、ガラスシール材等の接着剤により固定されている。
【0069】
本実施形態のセルスタック装置11においても、上述したセル1を具備することから、耐久性の向上したセルスタック装置11とすることができる。
【0070】
(モジュール)
次に、上述したセルスタック装置11を収納容器19内に収納してなるモジュール18について
図5を用いて説明する。
【0071】
図5に示すモジュール18は、セル1にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器20をセルスタック12の上方に配置している。そして、改質器20で生成された燃料ガスは、ガス流通管21を介してガスタンク16に供給され、ガスタンク16を介してセル1の内部に設けられたガス流路(図示せず)に供給される。
【0072】
なお、
図5においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されているセルスタック装置1及び改質器20を後方に取り出した状態を示している。
【0073】
このようなモジュール18においては、耐久性の向上したセルスタック装置11を収納してなることから、耐久性の向上したモジュール18とすることができる。
【0074】
(モジュール収容装置)
次に、上述したモジュール18と、モジュール18を作動させるための補機(不図示)とを外装ケースに収納してなるモジュール収容装置23について
図6を用いて説明する。
【0075】
図6に示すモジュール収容装置23は、支柱24と外装板25から構成される外装ケース内を仕切板26により上下に区画し、その上方側を上述したモジュール18を収納するモジュール収納室27とし、下方側をモジュール18を作動させるための補機を収納する補機収納室28として構成されている。
【0076】
また、仕切板26には、補機収納室28の空気をモジュール収納室27側に流すための空気流通口29が設けられており、モジュール収納室27を構成する外装板25の一部に、モジュール収納室27内の空気を排気するための排気口30が設けられている。
【0077】
このようなモジュール収容装置では、耐久性の向上したセルスタック11を備えるモジュール18を収納してなることから、耐久性の向上したモジュール収容装置23とすることができる。
【0078】
以上、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。例えば、支持体上に空気極層、固体電解質層、燃料極層の順に配置した燃料電池セルであっても良い。さらに、例えば、燃料極層を兼ねる支持体であってもよい。
【0079】
また、上記形態では燃料電池セル、これを用いたセルスタック装置、燃料電池モジュール及び燃料電池装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、セルに水蒸気と電圧とを付与して水蒸気(水)を電気分解することにより、水素と酸素(O
2)を生成する電解セル(SOEC)及びこれを備える電解セルスタック装置、電解モジュール及び電解装置にも適用することができる。
【実施例】
【0080】
(試料の作製)
第1層、第2層及び第3層の気孔率がそれぞれ異なる複数のセルを作製した。具体的には、表1に示すように、10個の試料(N=10)を作製した。
【0081】
各試料にて使用したセルの形状は
図1と同様の板形状とした。セルの長手方向の長さが20cm、セルの短手方向の長さが26mm、厚みが2mmであった。
【0082】
製造方法は前述のものと同様とした。なお、支持体成形体の作製に使用されたNiO粉末は平均粒径0.5μmであり、Y
2O
3粉末は平均粒径0.9μmであった。支持体成形体は、焼成−還元後における体積比率が、NiOが48体積%、Y
2O
3が52体積%であった。電解質層原料粉末は、8mol%のY
2O
3が固溶したマイクロトラック法による粒径が0.8μmのZrO
2粉末を利用した。燃料極成形体の作製に使用されたNiO粉末は平均粒径0.5μmであり、Y
2O
3が固溶したZrO
2粉末は平均粒径0.8μmであった。支持体成形体、電解質層用シートおよび燃料極成形体の積層成形体は、1000℃にて3時間仮焼処理した。インターコネクタ層の材料としては、La(Mg
0.3Cr
0.7)
0.96O
3を使用した。インターコネクタ層は、支持体成形体上に、第1層用スラリー、第3層用スラリー、および第2層用スラリーを順次塗布し、乾燥させてインターコネクタ層成形体を作製した。以上のようにして作製した積層成形体を酸素含有雰囲気中で1450℃にて2時間同時焼成した。
【0083】
空気極の材料としては、La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3を使用した。空気極は1100℃にて4時間で焼き付けて形成した。還元処理は、セルの内部に水素ガスを流し、850℃で10時間、支持体および燃料極の還元処理を施し、冷却した。得られたセルの各層の気孔率は表1に示す通りとなった。
【0084】
得られたセルについて、前述する方法によって第1層、第2層及び第3層を特定し、各層の気孔率を算出した。なお、各層の気孔率は、任意断面における1000倍のSEM写真から画像解析装置を用いて求めた。
【0085】
(クラック試験および剥離試験)
また、同様の条件で作製した10本のセルで、
図4の構成からなるセルスタック装置を組み立てて、750℃の温度環境下で燃料ガスを供給し、一定時間経過後に燃料ガスの供給を停止した。この燃料ガスの供給と停止のサイクルを360回繰り返した。その後、10本のセルそれぞれについて、インターコネクタ層の断面をSEM画像で観察し、インターコネクタ層にクラックが生じているか確認した。表1には、クラックが発生したセルの本数を示した。1μmの長さに達しているものをクラックと認定した。また、このサイクル試験後、10本のセルそれぞれについて、インターコネクタ層と支持体との間に剥離が生じているかも確認した。表1には、剥離が発生したセルの本数を示した。インターコネクタ層と支持体とが接触していない部分の長さが1μmに達しているものを剥離と認定した。
【0086】
【表1】
【0087】
(クラック試験結果)
試料No.1では、インターコネクタ層にクラックが生じたセルの数が6本だった。これは、第1層の気孔率が他の部分より低かったからである。
【0088】
試料No.2、3では、試料No.1と比較して、インターコネクタ層にクラックが生じたセルの数が少なかった。これは、第1層の気孔率が他の部分より高かったからである。
【0089】
試料No.4では、試料No.2、3と比較して、インターコネクタ層にクラックが生じたセルの数が少なかった。これは、第1層の気孔率が2%以上であったからである。
【0090】
試料No.5〜13では、試料No.4と比較して、インターコネクタ層にクラックが生じたセルの数が少なかった。これは、第1層の気孔率が3%以上であったからである。
【0091】
(剥離試験結果)
試料No.9、10では、インターコネクタ層と支持体との間に剥離が生じたセルの数が3本だった。これは、第1層の気孔率が10%よりも高かったからである。
【0092】
試料No.8では、試料No.9、10と比較して、インターコネクタ層と支持体との間に剥離が生じたセルの数が少なかった。これは、第1層の気孔率が10%以下だったからである。
【0093】
試料No.2〜7では、試料No.8と比較して、インターコネクタ層と支持体との間に剥離が生じたセルの数が少なかった。これは、第1層の気孔率が9%以下であったからである。