特許第6593539号(P6593539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593539
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20191010BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20191010BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   F04D29/30 C
   F04D29/30 F
   F04D29/66 M
   F04D29/28 C
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-529414(P2018-529414)
(86)(22)【出願日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2017021390
(87)【国際公開番号】WO2018020854
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2018年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-147548(P2016-147548)
(32)【優先日】2016年7月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-53145(P2017-53145)
(32)【優先日】2017年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 文也
(72)【発明者】
【氏名】小田 修三
(72)【発明者】
【氏名】安田 真範
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−48038(JP,A)
【文献】 特開2013−117233(JP,A)
【文献】 特開2016−156365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/30
F04D 29/28
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吹き出す遠心送風機であって、
回転軸(14)と、
前記回転軸に固定されたモータのアウターロータ(161)と、
前記アウターロータに固定されたターボファン(18)とを備え、
前記ターボファンは、
前記回転軸のまわりに配置された複数枚の翼(52)と、
前記複数枚の翼のそれぞれの回転軸の軸方向(DRa)の一方側に位置する一方側翼端部(521)に連結され、空気が吸い込まれる吸気孔(54a)が形成されたシュラウドリング(54)と、
前記複数枚の翼のそれぞれの前記軸方向の他方側に位置する他方側翼端部(522)に連結された他端側側板(60)と、
前記複数枚の翼のそれぞれの前記他方側翼端部から前記軸方向の前記他方側へ延びる筒部(56)とを有し、
前記筒部は、前記他端側側板よりも前記ターボファンの径方向の内側に位置するとともに、前記筒部の内周側に配置された前記アウターロータに固定され、
前記アウターロータのうち前記軸方向の一方側の表面は、前記複数枚の翼のうち隣り合う翼の間に形成された翼間流路(52a)に向かう空気流れを案内するロータ案内面(164)を構成し、
前記複数枚の翼のそれぞれは、前記筒部よりも前記径方向の内側に位置する前縁側部分(523)を有し、
前記アウターロータのロータ接触部(161c、161d)と前記前縁側部分の翼接触部(531、532a)とが接触した状態で、前記ロータ案内面の前記径方向における外側端部(164c)が、前記筒部の前記軸方向の前記一方側の筒端部(564)と前記軸方向で同じ位置、または、前記筒端部よりも前記軸方向の前記一方側の位置にある遠心送風機。
【請求項2】
前記筒部は、前記シュラウドリングよりも前記径方向の内側に位置し、
前記複数枚の翼、前記シュラウドリングおよび前記筒部は、一体成形品(50)として構成されている請求項に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記ロータ案内面は、前記径方向の外側に、前記軸方向で前記前縁側部分と対向するロータ平面部(164a)を有し、
前記前縁側部分は、前記軸方向の他方側の端部に、前記軸方向で前記ロータ平面部と対向する翼平面部(532)を有し、
前記ロータ平面部の少なくとも一部(161d)が、前記ロータ接触部を構成し、
前記翼平面部の少なくとも一部(532a)が、前記翼接触部を構成する請求項またはに記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記ロータ案内面は、前記ロータ平面部よりも前記径方向の内側にロータ傾斜部(164b)を有し、
前記ロータ傾斜部は、前記径方向の内側から外側に向かうにつれて、前記軸方向の他方側に変位する面形状である請求項に記載の遠心送風機。
【請求項5】
前記前縁側部分は、前記ロータ傾斜部よりも前記径方向の外側に位置する請求項に記載の遠心送風機。
【請求項6】
前記遠心送風機は、前記回転軸、前記アウターロータおよび前記ターボファンを収容するケーシング(12)を備え、
前記ケーシングは、前記軸方向の前記一方側に、空気を吸入する空気吸入口(221a)が形成されており、
前記ロータ案内面における前記軸方向の前記一方側の端部(164d)は、前記複数枚の翼のそれぞれよりも前記軸方向の前記一方側に位置するとともに、前記ケーシングのうち前記空気吸入口の周縁部における前記軸方向の前記一方側の端部(22a)よりも前記軸方向の他方側に位置する請求項に記載の遠心送風機。
【請求項7】
前記筒部は、筒状であって内周面(561a)を有する本体部(561)と、前記内周面から突出するとともに、前記本体部の周方向に並ぶ複数の突出部(562)とを有し、
前記複数の突出部が前記固定部材に接した状態で、前記筒部が前記アウターロータに固定されている請求項ないしのいずれか1つに記載の遠心送風機。
【請求項8】
前記複数の突出部のそれぞれは、前記筒部の周方向において、前記複数枚の翼のうち隣り合う翼の間に位置する請求項に記載の遠心送風機。
【請求項9】
前記複数の突出部のそれぞれは、前記他方側翼端部に連なるとともに、前記複数枚の翼のうち1枚の翼に対して前記複数の突出部のうち1つの突出部の全体が前記回転軸方向で重複している請求項に記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2016年7月27日に出願された日本特許出願番号2016−147548号と、2017年3月17日に出願された日本特許出願番号2017−53145号とに基づくもので、ここにその記載内容が参照により組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ターボファンを備える遠心送風機に関するものである。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に、ターボファンを備える遠心送風機が開示されている。特許文献1の遠心送風機は、2次元形状の翼によって流入空気の翼からの剥離発生を低減することを目的としている。この目的を達成するため、特許文献1の遠心送風機は、翼のファン吸込口側、すなわち、翼のうち回転軸方向の一方側に位置する一方側部位の翼弦線が、翼の主板部側、すなわち、翼のうち回転軸方向の他方側に位置する他方側部位の翼弦線よりも回転方向側にオフセットされている。なお、この遠心送風機では、翼が2次元形状であるため、翼の一方側部位の全部が、翼の他方側部位に対して回転軸方向で重複している。
【0004】
また、特許文献2に、ターボファンを備える遠心送風機が開示されている。特許文献2の遠心送風機は、アウターロータがファンの筒部の内部に配置されている。この状態で、アウターロータがファンに固定されている。アウターロータが、ターボファンに向かう空気流れを案内する部材を兼ねている。このため、アウターロータに加えて、空気流れを案内する部材をさらに備える遠心送風機と比較して、回転軸の軸方向での遠心送風機の厚みを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−60916号公報
【特許文献2】特許第5665802号公報
【発明の概要】
【0006】
しかし、本発明者の検討の結果、上記した特許文献1の従来のターボファンであっても、シュラウドリング付近において、空気流れの翼からの剥離発生の低減が不十分であることがわかった。このため、上記した従来のターボファンは、騒音の低減効果が不十分である。
【0007】
また、特許文献2の遠心送風機では、次の課題が生じることが本発明者によって見出された。遠心送風機の製造時にターボファンとアウターロータとが組み付けられる。この組み付けでは、筒部の内部にアウターロータが配置される。このとき、ターボファンとアウターロータとの両者の回転軸の軸方向での位置がずれて、アウターロータの表面の位置が筒部の上端よりも低い位置になる場合がある。この場合、アウターロータの表面に案内される空気流れが、筒部の側面に衝突する。このように空気流れが阻害されることで、騒音が悪化する。
【0008】
本開示は上記点に鑑みて、従来の遠心送風機と比較して、シュラウドリング付近での空気流れの翼からの剥離を低減できる遠心送風機を提供することを第1の目的とする。さらに、第1の目的とは別に、空気流れの阻害を回避しつつ、遠心送風機の厚みを低減できる遠心送風機を提供することを第2の目的とする。
【0009】
上記第1の目的を達成するため、本開示の1つの観点によれば、
空気を吹き出す遠心送風機は、
回転軸と、
回転軸に固定され、回転軸とともに回転するターボファンとを備え、
ターボファンは、
回転軸のまわりに配置された複数枚の翼と、
複数枚の翼のそれぞれの回転軸方向の一方側に位置する一方側翼端部に連結され、空気が吸い込まれる吸気孔が形成されたシュラウドリングと、
複数枚の翼のそれぞれの回転軸方向の他方側に位置する他方側翼端部に連結された他端側側板とを有し、
複数枚の翼のそれぞれは、翼のうちターボファンの回転方向の前方側に位置する翼面を有し、
さらに、複数枚の翼のそれぞれは、翼のうちターボファンの径方向で最も内側の最内周縁部から翼のうち最内周縁部よりも径方向での外側にある所定位置までの範囲において、回転軸方向の一方側に位置する一方側部位の少なくとも一部が、一方側部位よりも回転軸方向の他方側に位置する他方側部位における翼面よりも回転方向の前方側に位置するように、翼が傾いている。
【0010】
これによれば、複数枚の翼のそれぞれの最内周縁部を含む範囲において、一方側部位が他方側部位よりも回転方向の前方側に位置するように、翼が傾いている。これにより、一方側部位における流入空気に対する翼の働きを改善することができる。このため、従来の遠心送風機と比較して、シュラウドリングの付近での空気流れの翼からの剥離を低減することができる。
【0011】
上記第2の目的を達成するため、本開示の別の観点によれば、
空気を吹き出す遠心送風機は、
回転軸と、
回転軸に固定されたモータのアウターロータと、
アウターロータに固定されたターボファンとを備え、
ターボファンは、
回転軸のまわりに配置された複数枚の翼と、
複数枚の翼のそれぞれの回転軸の軸方向の一方側に位置する一方側翼端部に連結され、空気が吸い込まれる吸気孔が形成されたシュラウドリングと、
複数枚の翼のそれぞれの軸方向の他方側に位置する他方側翼端部に連結された他端側側板と、
複数枚の翼のそれぞれの他方側翼端部から軸方向の他方側へ延びる筒部とを有し、
筒部は、他端側側板よりもターボファンの径方向の内側に位置するとともに、筒部の内周側に配置されたアウターロータに固定され、
アウターロータのうち軸方向の一方側の表面は、複数枚の翼のうち隣り合う翼の間に形成された翼間流路に向かう空気流れを案内するロータ案内面を構成し、
複数枚の翼のそれぞれは、筒部よりも径方向の内側に位置する前縁側部分を有し、
アウターロータのロータ接触部と前縁側部分の翼接触部とが接触した状態で、ロータ案内面の径方向における外側端部が、筒部の軸方向の一方側の筒端部と軸方向で同じ位置、または、筒端部よりも軸方向の一方側の位置にある。
【0012】
これによれば、ターボファンとアウターロータの組み付け時に、筒部の内部にアウターロータが配置される。このとき、ロータ接触部と翼接触部とが接触した状態とされる。これにより、ターボファンとアウターロータのそれぞれにおける回転軸の軸方向での位置が決められる。ロータ案内面の外側端部が、筒端部と軸方向で同じ位置、または、筒端部よりも軸方向の前記一方側の位置となる。このため、アウターロータの表面に案内される空気流れが、筒部の側面に衝突することを回避できる。
【0013】
また、これによれば、アウターロータが翼間流路に向かう空気流れを案内する。このため、遠心送風機が、アウターロータよりも軸方向の一方側に、翼間流路に向かう空気流れを案内する部材を備える場合と比較して、遠心送風機の厚みを低減できる。
【0014】
よって、これによれば、空気流れの阻害を回避しつつ、遠心送風機の厚みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における送風機が配置された車両用シートの側面および一部断面を示す図である。
図2】第1実施形態における送風機の斜視図である。
図3図2中のIII−III線断面図である。
図4図3中のターボファンの上面図である。
図5図3中のターボファンの斜視図である。
図6】第1実施形態における送風機のロータ格納部周辺の拡大断面図である。
図7】第1実施形態における送風機のロータ格納部周辺の拡大断面図であって、図6とは異なる切断位置での断面図である。
図8】第1実施形態におけるファン本体部材の断面図である。
図9A】第1実施形態におけるファン径方向の内側から見た翼の前縁側部分の斜視図である。
図9B図4に対応するターボファンの上面図中に、翼の最内周縁部に接する仮想内接円および翼の一方側縁部に接する仮想内接円を示す図である。
図10図8中のX−X線断面図に対して、図8中のXa−Xa線断面図が重ね合わされた図である。
図11】第1実施形態における送風機の製造工程を示すフローチャートである。
図12】第1実施形態における翼上部の断面図に対して、比較例1の翼上部の断面図が重ね合わされた図である。
図13】比較例1におけるターボファンの上面図である。
図14】第1実施形態の送風機と比較例1の送風機のそれぞれについて、同じ測定条件で騒音を測定した結果を示す図である。
図15】第1実施形態の送風機における前縁側部分の傾け角度と騒音の大きさの関係を示す図である。
図16図3の左半分に対応する第1実施形態の送風機の断面図である。
図17】比較例2における送風機のロータ格納部周辺の拡大断面図である。
図18】第2実施形態におけるターボファンの下面図である。
図19図18中のXIX部の拡大図である。
図20】第2実施形態におけるターボファンの要部の断面図である。
図21】第3実施形態におけるターボファンの要部の断面図である。
図22】第4実施形態における送風機の断面図である。
図23】第5実施形態における送風機のロータ格納部周辺の拡大断面図である。
図24】第5実施形態における送風機のロータ格納部周辺の拡大断面図であって、図23とは異なる切断位置での断面図である。
図25】第6実施形態における送風機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の送風機10は、車両用のシート空調装置に用いられる。送風機10は、乗員が着座するシートS1の内部に収容される。送風機10は、シートS1の乗員側の表面から空気を吸い込む。送風機10は、シートS1の内部で空気を吹き出す。送風機10から吹き出された空気は、シートS1のうち乗員側の表面以外の部位から放出される。
【0018】
図2および図3に示すように、送風機10は遠心送風機である。詳細には、送風機10はターボ型送風機である。図3に示すように、送風機10は、ケーシング12、回転軸14、回転軸ハウジング15、電動モータ16、電子基板17、ターボファン18、ベアリング28、およびベアリングハウジング29等を備えている。なお、図3中の矢印DRaは、ファン軸心方向を示している。ファン軸心CLは、回転軸14の軸心と一致する。ファン軸心方向は、回転軸方向とも呼ばれる。図3中の矢印DRrは、ファン径方向を示している。また、図3は、送風機10の構成要素の正確な位置関係を図示していない。送風機10の構成要素の正確な位置関係については、図6、8等の他の図に示している。
【0019】
ケーシング12は、送風機10の筐体である。ケーシング12は、電動モータ16、電子基板17、およびターボファン18を、送風機10外部の塵および汚れから保護する。そのために、ケーシング12は、電動モータ16、電子基板17、およびターボファン18を収容している。また、ケーシング12は、第1ケース部材22と第2ケース部材24とを有している。
【0020】
第1ケース部材22は、樹脂で構成されている。第1ケース部材22は、ターボファン18よりも大径であって略円盤形状である。第1ケース部材22は、第1カバー部221と、第1周縁部222とを有している。
【0021】
第1カバー部221は、ターボファン18に対しファン軸心方向DRaにおける一方側に配置されている。第1カバー部221の内周側には、第1カバー部221をファン軸心方向DRaに貫通した空気吸入口221aが形成されている。空気は、この空気吸入口221aを介してターボファン18へ吸い込まれる。また、第1カバー部221は、その空気吸入口221aの周縁を構成するベルマウス部221bを有している。このベルマウス部221bは、送風機10の外部から空気吸入口221aへ流入する空気を円滑に空気吸入口221a内へと導く。第1周縁部222は、ファン軸心CLまわりにおいて第1ケース部材22の周縁を構成している。
【0022】
図2に示すように、第1ケース部材22は、複数本の支柱223を有している。複数本の支柱223は、ファン径方向DRrにおいてターボファン18よりも外側に配置されている。そして、第1ケース部材22および第2ケース部材24は、支柱223の先端が第2ケース部材24に突き当てられた状態で結合されている。
【0023】
第2ケース部材24は、第1ケース部材22と略同じ直径の略円盤形状を成している。第2ケース部材24は、樹脂で構成されている。第2ケース部材24は、鉄やステンレス等の金属で構成されていてもよい。
【0024】
図3に示すように、第2ケース部材24は、電動モータ16および電子基板17を覆うモータハウジングとしても機能する。第2ケース部材24は、第2カバー部241と第2周縁部242とを有している。
【0025】
第2カバー部241は、ターボファン18および電動モータ16に対しファン軸心方向DRaにおける他方側に配置されている。第2カバー部241は、ターボファン18および電動モータ16の他方側を覆っている。第2周縁部242は、ファン軸心CLまわりにおいて第2ケース部材24の周縁を構成している。
【0026】
第1周縁部222と第2周縁部242との間に、ターボファン18から吹き出た空気を吹き出す空気吹出口12aが形成されている。
【0027】
回転軸14および回転軸ハウジング15のそれぞれは、鉄、ステンレス、または黄銅等の金属で構成されている。回転軸14は、円柱形状の棒材である。回転軸14は、回転軸ハウジング15とベアリング28の内輪のそれぞれに圧入されることで固定されている。いる。また、ベアリング28の外輪は、ベアリングハウジング29に圧入されることで固定されている。ベアリングハウジング29は、第2カバー部241に固定されている。ベアリングハウジング29は、例えばアルミニウム合金、黄銅、鉄、またはステンレス等の金属で構成されている。
【0028】
従って、回転軸14および回転軸ハウジング15は、第2カバー部241に対してベアリング28を介して支持されている。すなわち、回転軸14および回転軸ハウジング15は、第2カバー部241に対し、ファン軸心CLを中心として回転自在になっている。
【0029】
電動モータ16は、アウターロータ型ブラシレスDCモータである。電動モータ16は、モータロータ161とロータマグネット162とモータステータ163とを備えている。
【0030】
モータロータ161は、モータステータ163のファン径方向DRrの外側に配置されるアウターロータである。モータロータ161は、鋼板等の金属板で構成されている。モータロータ161は、金属板がプレス成形されることにより形成されている。モータロータ161は、ロータ本体部161aとロータ外周部161bとを有する。
【0031】
ロータ本体部161aは、中心に開口部を有する円盤形状である。ロータ本体部161aは、ファン径方向DRrにおける内側から外側に向かうにつれて、ファン軸心方向DRaの他方側へ変位する形状である。ロータ本体部161aの開口端部が回転軸ハウジング15にかしめられている。これにより、モータロータ161と回転軸ハウジング15とが固定されている。すなわち、モータロータ161は、回転軸ハウジング15を介して、回転軸14に固定されている。
【0032】
ロータ本体部161aのファン軸心方向DRaの一方側の表面は、空気流れを案内する気流案内面164を構成している。気流案内面164は、空気吸入口221aから吸い込まれたファン軸心方向DRaを向いた空気流れをファン径方向DRrの外側へ向くように案内する。
【0033】
ロータ外周部161bは、ロータ本体部161aのファン径方向DRrにおける外周端部に位置する。ロータ外周部161bは、ロータ本体部161aの外周端部からファン軸心方向DRaの他方側へ円筒状に延びている。ロータ外周部161bは、後述するターボファン18のロータ格納部56の内周側に圧入されている。これにより、ターボファン18とモータロータ161とが固定されている。
【0034】
このようにして、ターボファン18およびモータロータ161は、ファン軸心CLまわりに回転可能な回転軸14に回転軸ハウジング15を介して固定されている。このため、ターボファン18およびモータロータ161は、送風機10の非回転部材としてのケーシング12に対してファン軸心CLまわりに回転可能に支持されている。
【0035】
ロータマグネット162は永久磁石であって、例えばフェライトやネオジウム等を含むゴムマグネットで構成されている。そのロータマグネット162はロータ外周部161bの内周面に固定されている。したがって、モータロータ161およびロータマグネット162は、ファン軸心CLを中心としてターボファン18と一体的に回転する。
【0036】
モータステータ163は、電子基板17に電気的に接続されたステータコイル163aおよびステータコア163bを含んで構成されている。モータステータ163は、ロータマグネット162に対し微小な隙間を空けて径方向内側に配置されている。そして、モータステータ163は、ベアリングハウジング29を介して第2ケース部材24の第2カバー部241に固定されている。
【0037】
このように構成された電動モータ16では、モータステータ163のステータコイル163aへ外部電源から通電されると、そのステータコイル163aによってステータコア163bに磁束変化が生じる。そして、そのステータコア163bでの磁束変化は、ロータマグネット162を引き寄せる力を発生する。このため、モータロータ161は、ロータマグネット162を引き寄せる力を受けてファン軸心CLまわりに回転運動をする。要するに、電動モータ16は、通電されることにより、モータロータ161が固定されたターボファン18をファン軸心CLまわりに回転させる。
【0038】
図3図4および図5に示すように、ターボファン18は、送風機10に適用されるインペラである。ターボファン18は、図4に示すように、所定のファン回転方向DRfへファン軸心CLまわりに回転することで送風する。すなわち、ターボファン18は、ファン軸心CLまわりに回転することにより、図3中の矢印FLaのように、ファン軸心方向DRaの一方側から空気吸入口221aを介して空気を吸い込む。そして、ターボファン18は、図3中の矢印FLbのように、ターボファン18の外周側へ、その吸い込んだ空気を吹き出す。
【0039】
図3に示すように、具体的に、ターボファン18は、ファン本体部材50と他端側側板60とを有している。
【0040】
ファン本体部材50は、複数枚の翼52とシュラウドリング54とロータ格納部56とを有している。このファン本体部材50は樹脂製である。ファン本体部材50は、1回の射出成形によって形成されている。すなわち、複数枚の翼52とシュラウドリング54とロータ格納部56とは、一体成形品として構成されている。従って、複数枚の翼52、シュラウドリング54、およびロータ格納部56は、互いに連続しているとともに、何れも同じ材料で構成されている。このため、ファン本体部材50は、複数枚の翼52とシュラウドリング54との間に両者を接合した接合部位は存在せず、複数枚の翼52とロータ格納部56との間にも両者を接合した接合部位は存在しない。
【0041】
複数枚の翼52は、回転軸14のまわりに配置されている。すなわち、複数枚の翼52は、ファン軸心CLまわりに配置されている。詳細には、複数枚の翼52は、互いの間に空気が流れる間隔を空けつつ、ファン軸心CLの周方向へ並んで配置されている。
【0042】
1枚の翼52は、翼52のうちファン軸心方向DRaでの一方側に設けられた一方側翼端部521を有している。1枚の翼52は、翼52のうちファン軸心方向DRaでその一方側とは反対側の他方側に設けられた他方側翼端部522を有している。
【0043】
図4に示すように、1枚の翼52は、翼形状を構成する正圧面524および負圧面525を有している。正圧面524は、ファン回転方向DRrの前方側に位置する第1翼面である。負圧面525は、ファン回転方向DRrの後方側に位置する第2翼面である。そして、複数枚の翼52は、その複数枚の翼52のうち互いに隣り合う翼52同士の間にそれぞれ、空気が流れる翼間流路52aを形成している。
【0044】
シュラウドリング54は、図4および図5に示すように、ファン径方向DRrへ円盤状に拡がる形状を成している。そして、そのシュラウドリング54の内周側には、ケーシング12の空気吸入口221aからの空気が図3中の矢印FLaのように吸い込まれる吸気孔54aが形成されている。従って、シュラウドリング54は環形状を成している。
【0045】
また、シュラウドリング54は、リング内周端部541とリング外周端部542とを有している。そのリング内周端部541は、シュラウドリング54のうちファン径方向DRrにおける内側に設けられた端部であり、吸気孔54aを形成している。また、リング外周端部542は、シュラウドリング54のうちファン径方向DRrにおける外側に設けられた端部である。
【0046】
図3に示すように、シュラウドリング54は、複数枚の翼52に対してファン軸心方向DRaにおける一方側すなわち空気吸入口221a側に設けられている。シュラウドリング54は、複数枚の翼52のそれぞれの一方側翼端部521に連結されている。
【0047】
ロータ格納部56は、ファン軸心CLを中心とする円筒形状を有する。ロータ格納部56は、複数枚の翼52のそれぞれの他方側翼端部522に連結されている。言い換えれば、ロータ格納部56は、他方側翼端部522からファン軸心方向DRaにおける他方側へ円筒状に延びる筒部である。ロータ格納部56は、ロータ格納部56の内周側にモータロータ161を格納している。
【0048】
図4に示すように、ロータ格納部56は、本体部561と複数のリブ562とを有する。本体部561は、円筒状であって内周面561aを有する。複数のリブ562は、内周面561aから突出した複数の突出部である。複数のリブ562のそれぞれは、間を空けて本体部561の周方向に並んでいる。本実施形態では、複数のリブ562のそれぞれは、周方向で並ぶ翼52と翼52との間に設けられている。
【0049】
図6に示すように、複数のリブ562は、本体部561のファン軸方向DRaの一方側の端部からファン軸方向DRaの他方側へ延びている。そして、複数のリブ562の内側にロータ外周部161bが圧入されている。これにより、複数のリブ562がロータ外周部161bに接した状態で、ロータ格納部56の内周側にロータ外周部161bが固定されている。なお、図7に示すように、内周面561aのうち複数のリブ562が設けられていない部分は、ロータ外周部161bと接していない。
【0050】
本実施形態では、複数枚の翼52は、シュラウドリング54とロータ格納部56の両方に連なっている。すなわち、複数枚の翼52が、シュラウドリング54とロータ格納部56とを橋渡しするように結合させる結合リブとしての機能を兼ね備えている。このため、複数枚の翼52、シュラウドリング54およびロータ格納部56の一体成形が可能となっている。
【0051】
さらに、図8に示すように、ロータ格納部56の全体が、ファン径方向DRrにおいてシュラウドリング54のリング内周端部541よりもファン径方向DRrにおける内側に配置されている。換言すると、ロータ格納部56の最外径D3は、シュラウドリング54の最小内径D2よりも小さくなっている(すなわち、D3<D2)。本実施形態では、ロータ格納部56の最外径D3は、ロータ格納部56のうち他端側側板60と接合される接合部563の外径である。これにより、ファン本体部材50は、ファン軸心方向DRaを型抜き方向としての一体成形が可能となっている。なお、型抜き方向とは、成形品から成型用の型を離脱させる際の成形品に対する型の移動方向である。
【0052】
図3に示す他端側側板60は、ファン径方向DRrへ円盤状に拡がる形状を成している。そして、その他端側側板60の内周側には、他端側側板60をその厚み方向へ貫通した側板嵌合孔60aが形成されている。従って、他端側側板60は環形状を成している。他端側側板60は、ファン本体部材50とは別体として成形される樹脂成形品である。
【0053】
また、他端側側板60は、複数枚の翼52のそれぞれの他方側翼端部522に接合されている。これにより、他端側側板60は、複数枚の翼52のそれぞれの他方側翼端部522に固定されている。
【0054】
その他端側側板60と翼52との接合は、例えば振動溶着または熱溶着によって行われる。従って、他端側側板60と翼52との溶着による接合性に鑑みて、他端側側板60およびファン本体部材50の材質は熱可塑性樹脂であることが好ましく、更に言えば、同種材であることが好ましい。
【0055】
このように他端側側板60が翼52に接合されることによって、ターボファン18はクローズドファンとして完成する。そのクローズドファンとは、複数枚の翼52の相互間に形成された翼間流路52aのファン軸心方向DRaにおける両側がシュラウドリング54および他端側側板60で覆われたターボファンである。すなわち、シュラウドリング54は、その翼間流路52aに面し翼間流路52a内の空気流れを案内するリング案内面543を有している。また、他端側側板60は、翼間流路52aに面し翼間流路52a内の空気流れを案内する側板案内面603を有している。
【0056】
この側板案内面603は、リング案内面543に対し翼間流路52aを挟んで対向すると共に、気流案内面164に対しファン径方向DRrにおいて外側に配置されている。また、側板案内面603は、気流案内面164に沿った空気流れを円滑に吹出口18aまで導く役割を果たす。
【0057】
また、他端側側板60は、側板内周端部601と側板外周端部602とを有している。その側板内周端部601は、他端側側板60のうちファン径方向DRrにおける内側に設けられた端部であり、側板嵌合孔60aを形成している。側板内周端部601は、図6、7に示すように、ロータ格納部56の接合部563に接合されている。なお、図6、7では、側板内周端部601と接合部563とが視認されやすいように、側板内周端部601と接合部563とが離れて図示されている。また、側板外周端部602は、他端側側板60のうちファン径方向DRrにおける外側に設けられた端部である。
【0058】
側板外周端部602およびリング外周端部542は、ファン軸心方向DRaにおいて互いに離れて配置されている。そして、側板外周端部602およびリング外周端部542は、翼間流路52aを通過した空気が吹き出る吹出口18aを、その側板外周端部602とリング外周端部542との間に形成している。
【0059】
また、図8に示すように、複数枚の翼52のそれぞれの前縁側部分523は、ファン径方向DRrにおいてロータ格納部56の内周面561aよりも内側に張り出している。前縁側部分523は、翼52のうちファン径方向DRrにおける最内周縁部526の位置からロータ格納部56の内周面561aよりも内側にある所定位置までの範囲である。最内周縁部526は、翼52のうちファン径方向DRrで最も内側に位置する内周縁部である。
【0060】
そして、図9Aに示すように、複数枚の翼52のそれぞれの前縁側部分523において、翼上部52bが翼下部52cよりもファン回転方向DRfの前方側に位置するように、翼52がファン回転方向DRfの前方側に傾いている。翼上部52bは、翼52のうちファン軸方向DRaの一方側に位置する一方側部位である。翼下部52cは、翼52のうちその一方側部位よりもファン軸方向DRaの他方側に位置する他方側部位である。なお、図9A中のC1、C2は、図9B中の仮想内接円C1、C2である。
【0061】
翼上部52bが翼下部52cよりもファン回転方向DRfの前方側に位置するとは、図10に示すように、翼下部52cの正圧面524よりもファン回転方向DRfの前方側に、翼上部52bの少なくとも一部が位置すること意味する。図10は、実線で示す図8中のX−X線断面図に対して、破線で示す図8中のXa−Xa線断面図を重ね合わせた図である。
【0062】
また、翼上部52bが翼下部52cよりもファン回転方向DRfの前方側に位置するとは、次のように言い換えられる。ファン軸心方向DRaの一端側の位置でのファン軸心方向DRaに直交する一端側の翼52の断面に対して、ファン軸心方向DRaの他端側の位置でのファン軸心方向DRaに直交する翼52の断面をファン軸心方向DRaに平行に投影する。このとき、一端側の翼52の一部が他端側の翼52からファン回転方向DRfの前方側へはみ出している。
【0063】
また、翼52がファン回転方向DRfの前方側に傾いているとは、翼52のファン径方向DRrにおける内側端部が、ファン軸心方向DRaの一方側に向かうにつれて、ファン回転方向DRfの前方側に位置することを意味する。このように、前縁側部分523は、回転方向の前方側にひねられた形状である。
【0064】
このように構成されたターボファン18は、図3に示すように、モータロータ161と一体にファン回転方向DRfへ回転運動する。それに伴い、ターボファン18の翼52が空気に運動量を与える。これにより、ターボファン18は、そのターボファン18の外周に開口した吹出口18aから径方向外側へ空気を吹き出す。このとき、吸気孔54aから吸い込まれ翼52によって送り出された空気すなわち吹出口18aから吹き出された空気は、ケーシング12が形成する空気吹出口12aを経由して送風機10の外部へ放出される。
【0065】
次に、図11のフローチャートを用いて、ターボファン18の製造方法を説明する。図11に示すように、先ず、ファン本体部材成形工程としてのステップS01において、ファン本体部材50の成形が行われる。すなわち、ファン本体部材50の構成要素である複数枚の翼52とシュラウドリング54とロータ格納部56とが一体成形される。
【0066】
具体的には、複数枚の翼52、シュラウドリング54、およびロータ格納部56が、ファン軸心方向DRaに開閉する一対の成形用金型と熱可塑性樹脂を用いた射出成形によって一体に成形される。その一対の成形用金型は、一方側金型と他方側金型とを含んで構成される。その他方側金型は、ファン軸心方向DRaにおいて一方側金型に対し他方側に設けられる金型である。
【0067】
前縁側部分523では、正圧面524がファン軸心方向DRaの他方側を向いている。このため、前縁側部分523の正圧面524は、他方側金型によって成形される。また、前縁側部分523では、負圧面525がファン軸心方向DRaの一方側を向いている。このため、前縁側部分523の負圧面525は、一方側金型によって成形される。
【0068】
この工程では、加熱溶融された熱可塑性樹脂が一対の成形用金型の間に注入される。注入された熱可塑性樹脂が固化した後、一対の成型用金型が開かれる。すなわち、一対の成型用金型が、固化した成形品からファン軸心方向DRaに移動させられる。これにより、成形品から一対の成型用金型が分離する。
【0069】
ステップS01の次はステップS02へ進む。他端側側板成形工程としてのステップS02において、他端側側板60の成形が、例えば射出成形によって行われる。なお、ステップS01とステップS02とのうち何れが先に実行されても構わない。
【0070】
ステップS02の次はステップS03へ進む。接合工程としてのステップS03において、他端側側板60が、翼52の他方側翼端部522のそれぞれに接合される。その翼52と他端側側板60との接合は、例えば振動溶着または熱溶着によって行われる。このステップS03が完了することで、ターボファン18は完成する。
【0071】
以上の説明の通り、本実施形態では、複数枚の翼52のそれぞれの前縁側部分523において、翼上部52bが翼下部52cよりもファン回転方向DRfの前方側に位置するように、翼52が回転方向の前方側に傾いている。
【0072】
これにより、翼上部52bにおける流入空気に対する翼52の働きを改善できる。すなわち、図12に示すように、本実施形態によれば、翼上部52bにおける翼52の入口角β1を、図13に示す比較例1の翼上部における翼J52の入口角β2よりも小さくすることができる。このため、本実施形態によれば、翼上部52bにおける翼52に対する流入空気の入射角γ1を、比較例1の翼上部における翼J52に対する流入空気の入射角γ2よりも小さくすることができる。
【0073】
比較例1は、図13に示すように、ターボファンJ18の翼J52の前縁側部分がファン回転方向DRfの前方側に傾いていない点が、本実施形態のターボファン18と異なる。図12中の実線で示す翼52は、図10と同じ翼52の断面を示している。図12中の破線で示す翼J52は、本実施形態とファン軸方向DRaで同じ位置での断面を示している。
【0074】
図12中の入口角β1、β2は、翼52、J52の内周縁部P1、P2での内接円の接線と翼弦線L1、L2とのなす角度である。内接円は、複数枚の翼52、J52のそれぞれに対してファン径方向DRrでの内側で接する仮想円である。内周縁部P1、P2は、翼52、J52のうち内接円と接する部分である。内接円の接線は、図12中の二点鎖線である。翼弦線L1、L2は、図12中の一点鎖線である。翼弦線L1、L2は、翼52、J52の内周縁部P1、P2と外周縁部Q1、Q2とを結ぶ直線である。
【0075】
図12中の入射角γ1、γ2は、翼52、J52の内周縁部P1、P2における流入空気の流入角α1、α2と、入口角β1、β2との差である。流入角α1、α2は、翼52、J52の内周縁部P1、P2の位置における内接円の接線と流入空気の流速ベクトルV1、V2の向きとのなす角度である。
【0076】
したがって、本実施形態によれば、シュラウドリング54の付近で生じる空気流れの翼52からの剥離を低減することができる。この結果、図14に示すように、本実施形態によれば、比較例1と比較して、騒音を低減できる。
【0077】
ここで、本実施形態による翼52の傾け角度θと騒音低減効果との関係について、図15を用いて説明する。翼52の傾け角度θは、図9A中の破線で示される翼J52に対しての図9A中の実線で示される翼52の傾け具合を示す。図9A中の破線で示される翼J52は、比較例1の翼J52である。
【0078】
具体的には、最内周縁部526を基点A1とする。一方側翼端部521のファン径方向DRrでの内側に位置する一方側縁部527を第1の点B1とする。さらに、第1の点B1を通り、ファン軸心方向DRaに垂直な面に対して、最内周縁部526の位置での翼弦線L3をファン軸心方向DRaに平行に投影する。第1の点B1を通り、複数枚の翼52のそれぞれのファン径方向DRrでの内側に接する仮想内接円C1と、投影した翼弦線L3aとの交点を第2の点B2とする。このとき、基点A1と、第1の点B1と、第2の点B2の3点を通る平面上において、基点A1と第1の点B1とを結ぶ直線と、基点A1と第2の点B2とを結ぶ直線とがなす角度が翼52の傾け角度θである。
【0079】
なお、最内周縁部526は、図9Bに示すように、ファン軸心方向DRaでの他方側端部の位置における複数枚の翼52のそれぞれに対してファン径方向DRrの内側で接する仮想内接円C2と翼52との接点である。換言すると、最内周縁部526は、ファン軸心方向DRaでのその位置における仮想内接円C2と、その位置での翼弦線L3との交点である。この仮想内接円C2は、複数枚の翼52のそれぞれに接する仮想内接円のなかで最も小さい直径を有する。翼弦線L3は、ファン軸心方向DRaでの最内周縁部526の位置における翼52の内周縁部と外周縁部とを結ぶ直線である。
【0080】
また、一方側縁部527は、図9Bに示すように、ファン軸心方向DRaでの一方側端部の位置における複数枚の翼52のそれぞれに対してファン径方向DRrの内側で接する仮想内接円C1と翼52との接点である。換言すると、一方側縁部527は、ファン軸心方向DRaでのその位置における仮想内接円C1と、その位置での翼弦線L4との交点である。
【0081】
図15からわかるように、傾け角度θが0°よりも大きく、かつ、25°よりも小さいとき、角度θが0°のときと比較して、騒音を低減することができる。
【0082】
また、本実施形態では、複数枚の翼52とロータ格納部56とが一体成形された一体成形品50として構成されている。この一体成形品50には、複数枚の翼52以外に、ロータ格納部56よりもファン径方向DRrの内側に構造部が存在しない。そして、翼52のうちロータ格納部56よりもファン径方向DRrの内側の前縁側部分523のみが、回転方向DRfの前方側へ傾けられている。
【0083】
これによれば、複数の翼52とロータ格納部56とを一対の成形用金型を用いて一体成形する際に、ファン軸方向DRaを型抜き方向とすることができる。このため、翼52が上記のように傾いた形状、すなわち、3次元形状であっても、ターボファン18を容易に成形することができる。
【0084】
また、本実施形態では、複数枚の翼52とシュラウドリング54とロータ格納部56とが一体成形された一体成形品50として構成されている。ロータ格納部56の全体は、シュラウドリング54のリング内周端部541よりもファン径方向DRrでの内側に配置されている。
【0085】
これによれば、複数枚の翼52とシュラウドリング54とロータ格納部56とを、一対の成形用金型を用いて一体成形する際に、ファン軸方向DRaを型抜き方向とすることができる。このため、複数枚の翼52とシュラウドリング54とロータ格納部56とを有するターボファン18を容易に成形することができる。
【0086】
また、本実施形態では、ロータ格納部56は、複数のリブ562を有する。複数のリブ562がモータロータ161に接した状態で、ロータ格納部56がモータロータ161に固定されている。複数のリブ562のそれぞれは、図4に示すように、ロータ格納部56の周方向において、隣り合う2つの翼52の間に位置する。
【0087】
ここで、本実施形態と異なり、翼52に対してファン軸心方向DRaの他方側の位置に、翼52に対して間を空けて、1つのリブ562が配置されている場合が考えられる。この場合、翼52の成形時に、翼52とリブ562との間に成形用金型の一部が配置される。このため、成形品から成形用金型を離す型抜きの際に、成形用金型をファン軸心方向DRaに移動させることができない。したがって、翼52が傾いた形状とする範囲を前縁側部分523全域としたとき、ファン軸心方向DRaを型抜き方向として、複数の翼52とロータ格納部56と一体成形することができない。
【0088】
これに対して、本実施形態によれば、翼52に対してファン軸心方向DRaの他方側にリブ562が存在しない。このため、翼52が傾いた形状とする範囲を前縁側部分523全域としても、ファン軸心方向DRaを型抜き方向として、複数の翼52とロータ格納部56とを一体成形することができる。
【0089】
また、本実施形態では、図16に示すように、ロータ本体部161aの気流案内面164は、ロータ平面部164aと、ロータ傾斜部164bとを有する。以下では、気流案内面164をロータ案内面164と呼ぶ。ロータ案内面164は、複数枚の翼52のうち隣り合う翼52の間に形成された翼間流路52aに向かう空気流れを案内する。
【0090】
ロータ平面部164aは、ロータ案内面164のうちファン軸心方向DRaに垂直な平面形状の部分である。ロータ傾斜部164bは、ロータ平面部164aよりもファン径方向DRrの内側に位置する。ロータ傾斜部164bは、ロータ案内面164のうちファン径方向DRrの内側から外側に向かうにつれて、ファン軸心方向DRaの他方側に変位する面形状の部分である。
【0091】
空気吸入口221aから吸い込まれた空気流れFLaをロータ傾斜部164bに沿わせることで、空気流れの向きをファン軸心方向DRaからファン径方向に良好に変えることができる。すなわち、複数枚の翼52のそれぞれの前縁側部分523の吸気流れを良化できる。よって、ロータ案内面164がロータ傾斜部164bを有していない場合と比較して、騒音を低減できる。
【0092】
また、本実施形態では、図6、7に示すように、前縁側部分523のファン軸心方向DRaの他方側の端部の一部531が、ロータ平面部164aの一部161cに接触している。すなわち、前縁側部分523は、ファン軸心方向DRaの他方側の端部に、ロータ平面部164aと接触する翼接触部531を有している。モータロータ161は、ファン軸心方向DRaで前縁側部分523と対向する部分に、前縁側部分523と接触するロータ接触部161cを有している。ロータ接触部161cと翼接触部531とが接触している。
【0093】
この状態で、ロータ案内面164のファン径方向DRrにおける外側端部164cが、側板案内面603およびロータ格納部56のファン軸心方向DRaの一方側の端部564とファン軸心方向DRaで同じ位置にある。ロータ格納部56のファン軸心方向DRaの一方側の端部564が、筒部の軸方向の一方側の筒端部に対応する。
【0094】
ここで、本実施形態と図17に示す比較例2とを比較する。比較例2は、複数枚の翼52のそれぞれが、ロータ格納部56よりもファン径方向DRrの内側に張り出していない点が、本実施形態と異なる。このため、モータロータ161は、複数枚の翼52のそれぞれと接触していない。
【0095】
比較例2では、特許文献2の遠心送風機と同様の課題が生じる。遠心送風機の製造時にターボファン18とモータロータ161とが組み付けられる。この組み付けでは、ロータ格納部56の内部にモータロータ161が配置される。このとき、ターボファン18とモータロータ161とをファン軸心方向DRaで位置決めする部材が存在しない。このため、図17に示すように、ファン軸心方向DRaでターボファン18とモータロータ161との間に位置ずれが生じ、ロータ案内面164の位置がロータ格納部56の一方側の端部564よりもファン軸心方向DRaの他方側の位置になる場合がある。この場合、ロータ案内面164に案内される空気流れが、ロータ格納部56の側面に衝突する。このように空気流れが阻害されることで、騒音が悪化する。
【0096】
これに対して、本実施形態によれば、ターボファン18とモータロータ161の組み付け時に、ロータ格納部56の内部にモータロータ161が挿入される。このとき、ロータ接触部161cと翼接触部531とが接触した状態とされる。すなわち、両者が接触した状態で、ターボファン18とモータロータ161の組み付けが完了される。これにより、ファン軸心方向DRaにおけるターボファン18とモータロータ161とのそれぞれの位置が決められる。ロータ案内面164の外側端部164cが、側板案内面603およびロータ格納部56の一方側の端部564と、ファン軸心方向DRaで同じ位置となる。このため、気流案内面164に案内される空気流れが、ロータ格納部56の側面に衝突することを回避することができる。
【0097】
また、これによれば、翼間流路52aに向かう空気流れをモータロータ161が案内する。このため、送風機が、モータロータ161よりもファン軸心方向DRaの一方側に、翼間流路52aに向かう空気流れを案内する部材を備える場合と比較して、送風機10の厚みを低減できる。
【0098】
よって、本実施形態によれば、空気流れの阻害を回避しつつ、送風機10の厚みを低減することができる。
【0099】
なお、本実施形態では、側板案内面603の全部が、ロータ格納部56の一方側の端部564とファン軸心方向DRaで同じ位置にある。しかし、これに限定されない。側板案内面603のうちファン径方向DRaの内側の内周端部が、ロータ格納部56の一方側の端部564とファン軸心方向DRaで同じ位置にあればよい。
【0100】
(第2実施形態)
図18、19に示すように、本実施形態は、第1実施形態に対して複数のリブ562の配置場所を変更したものである。送風機10のその他の構成は、第1実施形態と同じである。図18は、本実施形態のターボファン18をファン軸心方向DRaの他方側からファン軸心方向DRaに平行に見た図である。図19は、図18中の1枚の翼52を拡大した図である。
【0101】
図19に示すように、複数のリブ562のそれぞれは、翼52の下面52dに位置している。翼52の下面52dは、図3に示す他方側翼端部522である。
【0102】
より詳細には、1つのリブ562は、図20に示すように、他方側翼端部522に連なっている。1つのリブ562は、他方側翼端部522からファン軸心方向DRaの他方側へ延びている。1つのリブ562は、図19に示すように、1つのリブ562の全体が1枚の翼52に対してファン軸心方向DRaで重複している。
【0103】
ここで、第1実施形態での説明の通り、ファン軸心方向DRaで翼52とリブ562との間に空間があると、型抜きの際に、ファン軸心方向DRaに成形用金型を移動させることができない。
【0104】
これに対して、本実施形態によれば、ファン軸心方向DRaで翼52とリブ562との間に空間が存在しない。このため、翼52が傾いた形状とする範囲を前縁側部分523全域としても、ファン軸心方向DRaを型抜き方向として、複数の翼52とロータ格納部56とを一体成形することができる。
【0105】
(第3実施形態)
上記各実施形態では、翼52が傾いた形状である範囲を前縁側部分523としたが、これに限定されない。翼52が傾いた形状である範囲は、翼52のうち最内周縁部526から翼52の最内周縁部526よりもファン径方向DRrでの外側にある所定位置までの範囲であればよい。成形用金型を用いた成形によって翼52を形成することができれば、図21に示すように、翼52が傾いた形状である範囲は、翼52のうちファン径方向DRrにおける最内周縁部526の位置からロータ格納部56よりもファン径方向DRrでの外側にある所定位置までの範囲523Aであってもよい。この場合、翼52の成形時の型抜き方向は、ファン軸心方向DRa以外の方向である。
【0106】
(第4実施形態)
上記各実施形態では、モータロータ161が、回転軸14とターボファン18とを固定する固定部材として用いられていたが、これに限定されない。図22に示すように、ファンボス部58がこの固定部材として用いられてもよい。
【0107】
図22に示す送風機10は、ファンボス部58を有している点が、第1実施形態と異なる。送風機10のその他の構成は、第1実施形態と同じである。ファンボス部58は、ファン本体部材50とは別体として成形される樹脂成形品である。ファンボス部58は、他方側翼端部522とロータ格納部56に接合されている。本実施形態では、第1実施形態のロータ本体部161aの表面164の替わりに、ファンボス部58のファン軸心方向DRaの一方側の表面が、空気流れを案内する気流案内面を構成している。
【0108】
(第5実施形態)
本実施形態は、翼接触部の形状が第1実施形態と異なる。送風機10のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0109】
図23、24に示すように、前縁側部分523は、ファン軸心方向DRaの他方側の端部に、翼平面部532を有する。翼平面部532は、ファン軸心方向DRaでモータロータ161のロータ平面部164aと対向する。翼平面部532は、ファン軸心方向Draに対して垂直な平面形状である。翼平面部532は、ロータ平面部164aと平行である。翼平面部532の一部532aがロータ平面部164aの一部161dと接触している。したがって、本実施形態では、翼平面部532の一部532aが翼接触部を構成している。ロータ平面部164aの一部161dがロータ接触部を構成している。
【0110】
この状態で、ロータ案内面164の外側端部164cが、側板案内面603およびロータ格納部56の一方側の端部564よりもファン軸心方向DRaの一方側の位置にある。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ターボファン18とモータロータ161の組み付け時に、翼平面部532の一部532aとロータ平面部164aの一部161dとが接触した状態とされる。この状態で、ターボファン18とモータロータ161の組み付けが完了される。これにより、ファン軸心方向DRaにおけるターボファン18とモータロータ161とのそれぞれの位置が決められる。よって、気流案内面164に案内される空気流れが、ロータ格納部56の側面に衝突することを回避することができる。
【0111】
本実施形態では、前縁側部分523は、ファン軸心方向DRaの他方側であって、翼平面部532よりもファン径方向DRrの内側に内側平面部533を有する。内側平面部533は、ファン軸心方向Draに対して垂直な平面である。翼平面部532は、内側平面部533よりもファン軸心方向DRaの他方側に位置する。このため、翼平面部532と内側平面部533とによって段差が形成されている。
【0112】
なお、翼平面部532およびロータ平面部164aは、ファン軸心方向Draに対して垂直でなくてもよい。翼平面部532とロータ平面部164aとが面で接触するように、両者が平行であればよい。
【0113】
ここで、本実施形態と異なり、翼平面部532とロータ平面部164aとが設けられていない場合、翼接触部およびロータ接触部の位置が、ファン軸心方向DRaでずれるおそれがある。
【0114】
これに対して、本実施形態によれば、翼平面部532の位置が翼接触部の位置となる。ロータ平面部164aの位置がロータ平面部の位置となる。このため、翼接触部およびロータ接触部の位置がファン軸心方向DRaでずれることがない。よって、翼平面部532およびロータ平面部164aが設けられていない場合と比較して、モータロータ161とロータ格納部56との位置決め精度を向上させることができる。よって、ターボファン18とモータロータ161との位置決め精度を向上させることができる。
【0115】
また、本実施形態では、前縁側部分523は、ロータ傾斜部164bよりもファン径方向DRrの外側に位置する。これにより、前縁側部分523がロータ傾斜部164bと接触することを回避できる。
【0116】
なお、本実施形態では、翼平面部532の一部532aが翼接触部を構成している。しかし、翼平面部532の全部が翼接触部を構成していてもよい。
【0117】
また、本実施形態では、ロータ平面部164aの一部161dがロータ接触部を構成している。しかし、ロータ平面部164aの全部がロータ接触部を構成していてもよい。
【0118】
(第6実施形態)
図25に示すように、本実施形態は、第5実施形態に対してモータロータ161の配置が変更されている。送風機10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0119】
本実施形態では、ロータ案内面164の一方側端部164dは、複数枚の翼52のそれぞれの一方側端部521aよりもファン軸心方向DRaの一方側に位置する。ロータ案内面164の一方側端部164dは、第1ケース部材22の一方側端部22aよりもファン軸心方向DRaの他方側に位置する。
【0120】
ロータ案内面164の一方側端部164dは、ロータ案内面164におけるファン軸心方向DRaの一方側に位置する端部である。複数枚の翼52のそれぞれの一方側端部521aは、複数枚の翼52のそれぞれにおけるファン軸心方向DRaで最も一方側に位置する端部521aである。第1ケース部材22の一方側端部22aは、ケーシング12におけるファン軸心方向DRaの一方側の端部である。第1ケース部材22の一方側端部22aは、第1ケース部材22のうち空気吸入口221aの周縁部におけるファン軸心方向DRaの一方側の端部である。空気吸入口221aは、ケーシング12の内部に空気を吸入するための吸入口である。
【0121】
このように、ロータ案内面164の一方側端部164dは、複数枚の翼52のそれぞれよりもファン軸心方向DRaの一方側に位置するとともに、第1ケース部材22の一方側端部22aよりもファン軸心方向DRaの他方側に位置する。
【0122】
これによれば、本実施形態と異なり、ロータ案内面164の一方側端部164dが、複数枚の翼52のそれぞれの一方側端部521aよりもファン軸心方向DRaの他方側に位置する場合と比較して、より上流側から、空気流れの向きをファン軸心方向DRaからファン径方向に良好に変えることができる。すなわち、吸気流れをより良化することができる。よって、騒音をより低減することができる。
【0123】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、ロータ格納部56が複数のリブ562を有していたが、これに限定されない。ロータ格納部56が複数のリブ562を有していなくてもよい。この場合、ロータ格納部56の内周面561aがロータ外周部161bに接した状態で、ロータ格納部56の内周側にロータ外周部161bが固定される。また、この場合においても、第1実施形態と同様に、翼52が傾いた形状である範囲は、翼52のうちファン径方向DRrにおける最内周縁部526の位置からロータ格納部56の内周面561aの位置までの範囲、すなわち、前縁側部分523であることが好ましい。
【0124】
(2)本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0125】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、遠心送風機は、回転軸と、ターボファンとを備える。ターボファンは、複数枚の翼と、シュラウドリングと、他端側側板とを有する。複数枚の翼のそれぞれは、翼のうちターボファンの回転方向の前方側に位置する翼面を有する。複数枚の翼のそれぞれは、翼のうちターボファンの径方向で最も内側の最内周縁部から翼のうち最内周縁部よりも径方向での外側にある所定位置までの範囲において、翼が傾いている。具体的には、回転軸方向の一方側に位置する一方側部位の少なくとも一部が、一方側部位よりも回転軸方向の他方側に位置する他方側部位における翼面よりも回転方向の前方側に位置するように、翼が傾いている。
【0126】
また、第2の観点によれば、遠心送風機は、回転軸とターボファンとを固定する固定部材を備える。ターボファンは、複数枚の翼のそれぞれの他方側翼端部から回転軸方向の他方側へ延びる筒部を有する。筒部は、複数枚の翼のそれぞれの最内周縁部よりも径方向の外側に位置するとともに、筒部の内周側に配置された固定部材に固定される。複数枚の翼と筒部とは、一体成形品として構成される。所定位置は、筒部よりも径方向での内側にある。
【0127】
これによれば、複数の翼と筒部とを成形用の型を用いて一体成形する際に、回転軸方向を型抜き方向とすることができる。このため、翼が上記のように傾いた形状であっても、ターボファンを容易に成形することができる。
【0128】
また、第3の観点によれば、シュラウドリングは、複数枚の翼と筒部とともに、一体成形品として構成される。筒部の全体は、シュラウドリングの径方向での内側のリング内周端部よりも径方向での内側に配置されている。
【0129】
これによれば、複数枚の翼とシュラウドリングと筒部とを、成型用の型を用いて一体成形する際に、回転軸方向を型抜き方向とすることができる。このため、複数枚の翼とシュラウドリングと筒部とを有するターボファンを容易に成形することができる。
【0130】
また、第4の観点によれば、筒部は、筒状であって内周面を有する本体部と、内周面から突出するとともに、本体部の周方向に並ぶ複数の突出部を有する。複数の突出部が固定部材に接した状態で、筒部が固定部材に固定される。所定位置は、内周面よりも径方向での内側にある。
【0131】
このように、筒部に複数の突出部を設けた構成を採用することができる。この場合の所定位置は、筒部の内周面よりも径方向での内側であることが好ましい。
【0132】
また、第5の観点によれば、複数の突出部のそれぞれは、筒部の周方向において、隣り合う2つの翼の間に位置する。これによれば、翼が傾いた形状とする範囲を、筒部の本体部の内周面よりも径方向での内側の範囲全域としても、回転軸方向を型抜き方向として、複数の翼と筒部とを一体成形することができる。
【0133】
また、第6の観点によれば、複数の突出部のそれぞれは、他方側翼端部に連なるとともに、複数枚の翼のうち1枚の翼に対して複数の突出部のうち1つの突出部の全体が回転軸方向で重複している。これによれば、翼が傾いた形状とする範囲を、筒部の本体部の内周面よりも径方向での内側の範囲全域としても、回転軸方向を型抜き方向として、複数の翼と筒部とを一体成形することができる。
【0134】
また、第7の観点によれば、最内周縁部を基点とする。一方側翼端部の径方向での内側に位置する一方側縁部を第1の点とする。第1の点を通り、回転軸方向に垂直な面に対して、最内周縁部の位置での翼の翼弦線を回転軸方向に平行に投影する。この投影した翼弦線と、第1の点を通り、複数枚の翼のそれぞれの径方向での内側に接する仮想内接円との交点を第2の点とする。このとき、基点、第1の点および第2の点の3点を通る平面上において、基点と第1の点とを結ぶ直線と、基点と第2の点とを結ぶ直線とがなす角度は、0°よりも大きく、かつ、25°よりも小さい角度である。
【0135】
翼の傾け角は、この範囲であることが好ましい。これによれば、角度が0°のときと比較して騒音を低減することができる。
【0136】
また、第8の観点によれば、遠心送風機は、回転軸と、アウターロータと、ターボファンとを備える。ターボファンは、複数枚の翼と、シュラウドリングと、他端側側板と、筒部とを有する。筒部は、他端側側板よりもターボファンの径方向の内側に位置するとともに、筒部の内周側に配置されたアウターロータに固定される。アウターロータのうち軸方向の一方側の表面は、翼間流路に向かう空気流れを案内するロータ案内面を構成する。複数枚の翼のそれぞれは、前縁側部分を有する。アウターロータのロータ接触部と前縁側部分の翼接触部とが接触した状態で、ロータ案内面の径方向における外側端部が、筒部の軸方向の一方側の筒端部と軸方向で同じ位置、または、筒端部よりも軸方向の一方側の位置にある。
【0137】
また、第9の観点によれば、筒部は、シュラウドリングよりも径方向の内側に位置する。複数枚の翼、シュラウドリングおよび筒部は、一体成形品として構成されている。
【0138】
これによれば、筒部は、シュラウドリングよりも径方向の内側に位置するので、複数枚の翼とシュラウドリングと筒部とを成形用の型を用いて一体成形する際に、回転軸方の軸方向を型抜き方向とすることができる。さらに、筒部が複数枚の翼と一体に成形されているので、筒部と回転軸との芯ずれを抑制することができる。筒部と回転軸との芯ずれによる回転ぶれを低減することができる。
【0139】
また、第10の観点によれば、ロータ案内面は、径方向の外側に、軸方向で前縁側部分と対向するロータ平面部を有する。前縁側部分は、軸方向の他方側の端部に、軸方向でロータ平面部と対向する翼平面部を有する。ロータ平面部の少なくとも一部が、ロータ接触部を構成する。翼平面部の少なくとも一部が、翼接触部を構成する。
【0140】
これによれば、翼平面部およびロータ平面部が設けられていない場合と比較して、ターボファンとアウターロータのそれぞれにおける回転軸の軸方向での位置がずれることを防止できる。よって、ターボファンとアウターロータとの位置決め精度を向上させることができる。
【0141】
また、第11の観点によれば、ロータ案内面は、ロータ平面部よりも径方向の内側にロータ傾斜部を有する。ロータ傾斜部は、径方向の内側から外側に向かうにつれて、軸方向の他方側に変位する面形状である。
【0142】
これによれば、空気流れをロータ傾斜部に沿わせることで、空気流れの向きを軸方向から径方向に良好に変えることができる。よって、ロータ案内面がロータ傾斜部を有していない場合と比較して、騒音を低減できる。
【0143】
また、第12の観点によれば、前縁側部分は、ロータ傾斜部よりも径方向の外側に位置する。これによれば、前縁側部分がロータ傾斜部と接触することを回避できる。
【0144】
また、第13の観点によれば、遠心送風機は、回転軸、アウターロータおよびターボファンを収容するケーシングを備える。ケーシングは、軸方向の一方側に、空気を吸入する空気吸入口が形成されている。ロータ案内面における軸方向の一方側の端部は、複数枚の翼のそれぞれよりも軸方向の一方側に位置するとともに、ケーシングのうち空気吸入口の周縁部における軸方向の一方側の端部よりも軸方向の他方側に位置する。
【0145】
これによれば、ロータ案内面の一方側の端部が、複数枚の翼のそれぞれの一方側の端部よりもファン軸心方向DRaの他方側に位置する場合と比較して、より上流側から、空気流れの向きを軸方向から径方向に良好に変えることができる。よって、騒音をより低減することができる。
【0146】
また、第14の観点によれば、筒部は、筒状であって内周面を有する本体部と、内周面から突出するとともに、本体部の周方向に並ぶ複数の突出部とを有する。複数の突出部が固定部材に接した状態で、筒部がアウターロータに固定されている。これによれば、複数の突出部が設けられていない場合と比較して、ターボファンとアウターロータとの芯ずれを抑制することができる。
【0147】
また、第15の観点によれば、複数の突出部のそれぞれは、筒部の周方向において、複数枚の翼のうち隣り合う翼の間に位置する。複数の突出部のそれぞれを、このように配置することが好ましい。
【0148】
また、第16の観点によれば、複数の突出部のそれぞれは、他方側翼端部に連なるとともに、複数枚の翼のうち1枚の翼に対して複数の突出部のうち1つの突出部の全体が回転軸方向で重複している。複数の突出部のそれぞれを、このように配置することが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25