特許第6600991号(P6600991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧
特許6600991非水系電解質二次電池用電解液、および該電解液を用いた非水系電解質二次電池
<>
  • 特許6600991-非水系電解質二次電池用電解液、および該電解液を用いた非水系電解質二次電池 図000003
  • 特許6600991-非水系電解質二次電池用電解液、および該電解液を用いた非水系電解質二次電池 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6600991
(24)【登録日】2019年10月18日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】非水系電解質二次電池用電解液、および該電解液を用いた非水系電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20191028BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20191028BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20191028BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20191028BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M10/0568
   H01M10/0569
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-109345(P2015-109345)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-225096(P2016-225096A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年11月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】栗原 好治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光国
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−025992(JP,A)
【文献】 特開2011−181353(JP,A)
【文献】 特開2011−181357(JP,A)
【文献】 特開2012−018796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/052
H01M 10/0568
H01M 10/0569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極、及び負極、セパレータ、並びに非水系電解液で構成される非水系電解質二次電池に用いられる電解液であって、
前記電解液中の溶解されたタングステンの含有量は0.000005〜0.01質量%であり、非溶解のタングステン化合物を含まないことを特徴とする非水系電解質二次電池用電解液。
【請求項2】
前記電解液は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSOおよびそれらの複合塩からなる群から選択される1種以上のリチウム塩を含有することを特徴とする請求項に記載の非水系電解質二次電池用電解液。
【請求項3】
前記電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルからなる群から選択される1種以上の有機溶媒を含有することを特徴とする請求項に記載の非水系電解質二次電池用電解液。
【請求項4】
リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極、及び負極、セパレータ、並びに非水系電解液で構成される非水系電解質二次電池であって、
前記非水系電解液として請求項1〜のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用電解液を用いたものであることを特徴とする非水系電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解質二次電池用電解液、および該電解液を用いた非水系電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水系電解質二次電池は高いエネルギー密度をもつため、近年、小型化や軽量化を要求される携帯電話やノートパソコンのような携帯電子機器に広く使用されており、また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として開発が盛んであり、小型、軽量、高容量、高出力などの高性能化や低コスト化が求められている。
【0003】
このような非水系電解質二次電池は、代表的な電池としてリチウムイオン二次電池があり、現在、研究開発が盛んに行われているが、層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
【0004】
これまでに提案されている活物質材料としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などが挙げられる。
【0005】
このうちリチウムニッケル複合酸化物、及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、サイクル特性が良く、低抵抗で高出力が得られ電池特性に優れた材料として注目され、近年、さらに高出力化に必要な低抵抗化が重要視されている。
上記の低抵抗を実現する方法として異元素の添加が知られている、とりわけW、Mo、Nb、Ta、Reなどの高価数をとることができる遷移金属が有用とされている。
【0006】
例えば、特許文献1には、Mo、W、Nb、Ta及びReから選ばれる1種以上の元素が、Mn、Ni及びCoの合計モル量に対して0.1〜5モル%含有されているリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体が提案され、一次粒子の表面部分のLi並びにMo、W、Nb、Ta及びRe以外の金属元素の合計に対するMo、W、Nb、Ta及びReの合計の原子比が、一次粒子全体の該原子比の5倍以上であることが好ましいとされている。
この提案によれば、リチウム遷移金属系化合物粉体の低コスト化及び高安全性化と高負荷特性、粉体取り扱い性向上の両立を図ることができるとしている。
【0007】
しかし、上記リチウム遷移金属系化合物粉体は、原料を液体媒体中で粉砕し、これらを均一に分散させたスラリーを噴霧乾燥し、得られた噴霧乾燥体を焼成することで得ている。そのため、Mo、W、Nb、Ta及びReなどの異元素の一部が層状に配置されているNiと置換してしまい、電池の容量やサイクル特性などの電池特性が低下してしまう問題があった。
【0008】
また、特許文献2には、少なくとも層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解質二次電池用正極活物質であって、そのリチウム遷移金属複合酸化物は、一次粒子およびその凝集体である二次粒子の一方または両方からなる粒子の形態で存在し、その粒子の少なくとも表面に、モリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1種を備える化合物を有する非水電解質二次電池用正極活物質が提案されている。
これにより、より一層厳しい使用環境下においても優れた電池特性を有する非水電解質二次電池用正極活物質が得られるとされ、特に、粒子の表面にモリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1 種を有する化合物を有することにより、熱安定性、負荷特性および出力特性の向上を損なうことなく、初期特性が向上するとしている。
【0009】
しかしながら、モリブデン、バナジウム、タングステン、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1 種の添加元素による効果は、初期特性、すなわち初期放電容量および初期効率の向上にあるとされ、出力特性に言及したものではない。また、開示されている製造方法によれば、添加元素をリチウム化合物と同時に熱処理した水酸化物と混合して焼成するため、添加元素の一部が層状に配置されているニッケルと置換してしまい電池特性の低下を招く問題があった。
【0010】
さらに、特許文献3には、一次粒子および前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなるリチウム金属複合酸化物粉末とタングステン酸リチウムの混合物を含む非水系電解質二次電池用正極材料が提案されている。
この正極材料を非水系電解質二次電池の正極に用いることにより、高容量と高出力を両立させることが可能としているが、多量のタングステン酸リチウムを混合することが必要であり、混合した量だけ電池容量が低下してしまう、また、コストが上昇するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009‐289726号公報
【特許文献2】特開2005‐251716号公報
【特許文献3】特開2013‐171785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑み、高エネルギー密度でかつ高出力、高容量が得られる非水系電解質二次電池用電解液、および該電解液を用いた非水系電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するために、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極、及び負極、非水系電解液で構成される非水系電解質二次電池において、正極活物質や電解液の正極抵抗に対する影響について鋭意研究したところ、該電解液に微量のタングステンを溶解させることで正極抵抗を低減して出力特性を向上させることが可能となるとの知見を得て、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明の非水系電解質二次電池用電解液は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極、及び負極、セパレータ、並びに非水系電解液で構成される非水系電解質二次電池に用いられる電解液であって、前記電解液中に溶解されたタングステンの含有量は0.000005〜0.01質量%であり、非溶解のタングステン化合物を含まないことを特徴とする。
【0016】
また、前記電解液は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSOおよびそれらの複合塩からなる群から選択される1種以上のリチウム塩を含有することが好ましく、前記電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルからなる群から選択される1種以上の有機溶媒を含有することが好ましい。
【0017】
本発明の非水系電解質二次電池は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極、及び負極、セパレータ、並びに非水系電解液で構成される非水系電解質二次電池であって、前記非水系電解液として上記非水系電解質二次電池用電解液を用いたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電池の電解液として用いた場合に、高容量とともに高出力が実現可能な非水系電解質二次電池用電解液が得られる。
また、本発明の非水系電解質二次電池は、高エネルギー密度でかつ高容量とともに高出力が得られるものであり、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電解液の評価に使用した2031型コイン電池1の概略断面図である。
図2】インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の非水系電解質二次電池用電解液は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極、及び負極、セパレータ、並びに非水系電解液で構成される非水系電解質二次電池に用いられる電解液であって、前記電解液中に溶解されたタングステンの含有量は、該電解液に対して0.000005質量%以上であることを特徴とする。
【0021】
非水系電解質二次電池は、非水系電解液(以下、単に電解液ということがある。)を介して正極と負極の間をリチウム(Li)イオンが移動することにより、充放電が行われる。前記Liイオンの移動が迅速に行われることにより、短時間での放電が可能となることから、出力特性が向上する。したがって、出力特性を向上させるためには、正極活物質の結晶内部と結晶表面の間の移動のみならず、正極活物質の結晶表面と電解液の間および電解液中の移動速度を高くする必要がある。
【0022】
本発明は、電解液中に微量のタングステン(W)を溶解させることで、前記移動速度を向上させることができ、該電解液を用いることにより、高い出力特性を有する電池が得られるとの知見を得て、なされたものである。
【0023】
電解液中に溶解して含まれるタングステン量(以下、単にタングステン含有量という。)は、0.000005質量%以上が必要であり、これにより、前記移動速度を高めて、出力特性を向上させることが可能となる。一方、電解液中のタングステン含有量を多くし過ぎると、負極にタングステンが析出してサイクル特性が劣化するなどの問題が生じることがあり、タングステン含有量は0.01質量%以下とすることが好ましい。したがって、前記移動速度を高め、かつ電池特性の劣化を抑制するためには、タングステン含有量を0.000005〜0.01質量%とすることが好ましく、0.00001〜0.01質量%とすることがより好ましく、0.00001〜0.005質量%とすることがさらに好ましい。
【0024】
電解液中へのタングステンの溶解方法は、必要なタングステン含有量が得られれば特に限定されないが、例えば、電解液にタングステン化合物を浸漬することで、タングステンが溶解した電解液が得られる。その際、必要なタングステン含有量を得るためには、十分な量のタングステン化合物を浸漬する必要があり、浸漬する電解液に対して0.0001質量%以上のタングステン化合物を浸漬することが好ましい。少量のタングステン化合物で上述したタングステン含有量を得るためには、電解液中へのタングステンの溶解を促進するため、加熱や強撹拌などの処理を行うことが好ましい。
【0025】
また、電解液へのタングステンの溶解を容易にするため、前記タングステン化合物の平均粒径は0.1〜5μmとすることが好ましく、0.1〜3μmとすることがより好ましい。平均粒径が小さすぎると取扱い性が低下し、平均粒径が大きくなり過ぎるとタングステン化合物の溶解性が低下する。したがって、平均粒径を0.1〜5μmとすることにより、タングステン化合物の取り扱い性を容易にするとともに溶解性を高めることができる。
【0026】
電解液に浸漬するタングステン化合物は、電解液に溶解可能で、電池として用いた際に有害な元素を含まないものであればよいが、酸化タングステン、タングステン酸、およびLiWO、LiWOもしくはLiなどのタングステン酸リチウムからなる群から選択される1種以上を好適に用いることができる。
【0027】
電解液中のタングステン含有量が必要量となった後、電解液に浸漬されたタングステン化合物は電解液から分離して除去してもよいが、タングステン化合物を分離せずに含んだ状態で電解液と使用してもよい。電解液中のタングステン化合物を含んだ状態で電解液として用いる場合には、電解液中のタングステン化合物の含有量を0.0001〜0.5質量%とすることが好ましく、0.0001〜0.3質量%とすることがより好ましい。また、浸漬するのみで特段の処理を行わない場合には、0.001〜0.5質量%とすることが好ましく、0.001〜0.3質量%とすることがより好ましい。含有するタングステン化合物の含有量が多くなり過ぎると、タングステン含有量が多くなり過ぎて、電池に用い際に特性を劣化させる原因となることがある。
【0028】
電解液に含有される支持塩としてのリチウム塩は、通常の非水系電解質(電解液)に用いられるものでよく、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSOおよびそれらの複合塩からなる群から選択される1種以上が好適に用いられる。
【0029】
また、電解液に含有される有機溶媒は、通常の電解液に用いられるものでよく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルからなる群から選択される1種以上が好適に用いられる。
【0030】
本発明の非水系電解質二次電池は、上記電解液を用いたことを特徴とするものであって、その他の正極や負極などの構成は公知の技術を用いることができる。以下に、電池の構成要素ごとに説明する。
【0031】
(a)正極
正極に用いられる正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物であれば特に制限がなく、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などから1種もしくは複合して用いることができる。正極は、例えば、以下のようにして作製する。
【0032】
まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。
ここで、正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、非水系電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。そのため、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが望ましい。
【0033】
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレス等により加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。
作製したシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、前記例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
【0034】
正極の作製にあたって、導電材としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
【0035】
(b)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
【0036】
(c)セパレータ
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
【0037】
(d)非水系電解質二次電池の形状、構成
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび本発明の電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。得られた非水系電解質二次電池は、高い初期放電容量と低い正極抵抗が得られ、高容量で高出力である。
【0038】
なお、本発明における正極抵抗の測定方法を例示すれば、次のようになる。電気化学的評価手法として一般的な交流インピーダンス法にて電池反応の周波数依存性について測定を行うと、溶液抵抗、負極抵抗と負極容量、および正極抵抗と正極容量に基づくナイキスト線図が得られる。
電極における電池反応は、電荷移動に伴う抵抗成分と電気二重層による容量成分とからなり、これらを電気回路で表すと抵抗と容量の並列回路となり、電池全体としては溶液抵抗と負極、正極の並列回路を直列に接続した等価回路で表される。この等価回路を用いて測定したナイキスト線図に対してフィッティング計算を行い、各抵抗成分、容量成分を見積もることができる。正極抵抗は、得られるナイキスト線図の低周波数側の半円の直径と等しい。
以上のことから、作製される正極について、交流インピーダンス測定を行い、得られたナイキスト線図に対し等価回路でフィッティング計算することで、正極抵抗を見積もることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0040】
(評価用電池および電解液の評価)
電解液の評価に用いた2032型コイン電池1(以下、コイン型電池という)を図1に示す。コイン型電池1は、ケース2と、このケース2内に収容された電極3とから構成されている。
【0041】
ケース2は、中空かつ一端が開口された正極缶2aと、この正極缶2aの開口部に配置される負極缶2bとを有しており、負極缶2bを正極缶2aの開口部に配置すると、負極缶2bと正極缶2aとの間に電極3を収容する空間が形成されるように構成されている。電極3は、正極3a、セパレータ3cおよび負極3bとからなり、この順で並ぶように積層されており、正極3aが正極缶2aの内面に接触し、負極3bが負極缶2bの内面に接触するようにケース2に収容されている。
なお、ケース2はガスケット2cを備えており、このガスケット2cによって、正極缶2aと負極缶2bとの間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。また、ガスケット2cは、正極缶2aと負極缶2bとの隙間を密封してケース2内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
【0042】
製造したコイン型電池1の初期放電容量、正極抵抗を以下のように測定し、電解液を評価した。
初期放電容量は、コイン型電池1を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、1mAで4.2Vまで定電圧充電を行い、4.2Vで低電圧充電(電流値が0.1mAで充電終了)し、1時間の休止後、1mAの定電流でカットオフ電圧2.5Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
【0043】
また、正極抵抗は、コイン型電池1を充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して交流インピーダンス法により測定すると、図2に示すナイキストプロットが得られる。このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算を行い、正極抵抗の値を算出した。正極抵抗は比較例1を100とした相対値を評価値とした。
【0044】
(実施例1)
電解液は、支持塩としてLiPFを1モル/Lを含有するエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)の等量混合液(容積比でEC/EMC/DMC=3/4/3)に、平均粒径1μmの酸化タングステン(WO)粉末を電解液の総量に対して0.05質量%となるように混合して浸漬させ、そのままの状態で用いた。
【0045】
正極活物質には、Niを主成分とする酸化物粉末と水酸化リチウムを混合して焼成する公知技術で得られたLi1.060Ni0.76Co0.14Al0.10で表されるリチウム金属複合酸化物粉末を用いた。このリチウム金属複合酸化物粉末の平均粒径は5.0μmであり、比表面積は0.9m/gであった。なお、平均粒径はレーザー回折散乱法における体積積算平均値を用い、比表面積は窒素ガス吸着によるBET法を用いて評価した。
前記正極活物質を75質量%と、導電材となるカーボン粉末としてアセチレンブラック粉末と結着剤としてのポリテトラフルオロエチレンの質量比で2対1の混合物を25質量%とを混合し、100MPaの圧力で直径9mm、厚さ100μmにプレス成形して、正極3aを作製した。作製した正極3aを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
【0046】
また、負極3bには厚み1.0mm、直径14mmに打ち抜いたリチウム金属を用い、セパレータ3cにはポリプロピレン製の多孔質樹脂膜を用いた。
【0047】
以上の構成材料を用いて、露点が−30℃未満に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で図1に示すコイン型電池1を5個作製し、電池特性により電解液を評価した。初期放電容量と正極抵抗の平均値を表1に示す。
【0048】
(実施例2)
混合した酸化タングステン粉末を、平均粒径0.8μmのタングステン酸リチウム(LiWO)粉末0.2質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして電解液を得るとともに評価した。初期放電容量と正極抵抗の平均値を表1に示す。
【0049】
(実施例3)
実施例1において、酸化タングステン粉末を混合した後、2枚重ねした目開き0.5μmのPTFEフィルターでろ過し、酸化タングステン粉末を分離して電解液を得た以外は、実施例1と同様にして電解液を得るとともに評価した。得られた電解液のタングステン含有量は、IPC−MS法により分析したところ、0.000011質量%であった。初期放電容量と正極抵抗の平均値を表1に示す。
【0050】
(実施例4)
実施例2において、タングステン酸リチウム粉末を混合した後、2枚重ねした目開き0.5μmのPTFEフィルターでろ過し、タングステン酸リチウム粉末を分離して電解液を得た以外は、実施例1と同様にして電解液を得るとともに評価した。得られた電解液のタングステン含有量は、IPC−MS法により分析したところ、0.00012質量%であった。初期放電容量と正極抵抗の平均値を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
タングステン化合物を加えずに、電解質LiPFを1モル/Lを含有するエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)の等量混合液(容積比でEC/EMC/DMC=3/4/3)を電解液とした以外は、実施例1と同様にして評価した。初期放電容量と正極抵抗の平均値を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
(評価)
実施例1〜4は、高い初期放電量を有するとともに、正極抵抗が低く優れた出力特性を有するものとなっている。また、実施例3、4では、電解液中に微量のタングステンを含有するのみであり、電池の単位体積当たり及び単位重量当たりの初期放電量が高いものとなっており、高エネルギー密度の電池となっている。
図1
図2