(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のウレアグリース(以下、「本グリース」ともいう。)は、モノアミン化合物とジイソシアネート化合物とを溶液中で反応させて得られる増ちょう剤を用いたウレアグリースである。そして、前記モノアミン化合物は、シクロヘキシルアミンのみからなり、当該ウレアグリースは、FAG法によるPeak High32−64sが10以下であり、Level High32−64sが40以下であるものである。以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
〔ウレアグリースの構成〕
本グリースで用いられる基油としては、特に限定はなく、通常のグリース製造に使用される鉱油系基油や合成系基油が挙げられる。これらは、単独で、または混合物として使用することができる。
鉱油系基油としては、減圧蒸留、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、および水素化精製等を適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。また、合成系基油としては、ポリアルファオレフィン(PAO)系基油、その他の炭化水素系基油、エステル系基油、アルキルジフェニルエーテル系基油、ポリアルキレングリコール系基油(PAG)、アルキルベンゼン系基油などが挙げられる。
【0010】
本グリースで用いられる増ちょう剤は、モノアミン化合物とジイソシアネート化合物とを溶液中で反応させて得られるものである。本発明においては、このモノアミン化合物は、脂環式モノアミンのみであることが必要である。この脂環式モノアミンとしては、シクロヘキシルアミン、アルキルシクロヘキシルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘプチルアミン等が挙げられる。これらの脂環式モノアミンは単独で用いてもよく、複数の脂環式モノアミンを混合し用いてもよい。
前記ジイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネー
ト(MDI)、トリレンジイソシアネート、およびナフチレン−1,5−ジイソシアネー
ト等が挙げられる。これらのイソシアネートは単独で用いてもよく、複数のイソシアネートを混合し用いてもよい。
【0011】
本グリースは、FAG法によるPeak High32−64sが10以下であり、Level High32−64sが40以下であるものであることが必要である。
Peak High32−64sおよびLevel High32−64sは、用途によって求められるレベルが異なるものである。ただし、Peak High32−64sが10を超える場合、音響特性レベルが従来技術と同レベルであって不十分である。また、Peak High32−64sは、7以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
また、Level High32−64sが40を超える場合、音響特性レベルが従来技術と同レベルであって不十分である。また、Level High32−64sは、30以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。
ここで、FAG法によるPeak High32−64sおよびLevel High32−64sは、SKF社のグリース専用音響測定機器(Grease Test Rig Be Quiet+)を用いて測定できる。具体的には、この音響測定機器に、グリース未封入の音響測定専用ベアリングをセットし、所定速度で回転させながら回転開始から32秒後から64秒後までの音響データを得る。更にこれらのベアリングに所定量の試料(グリース)を封入し、所定速度で回転させながら回転開始から32秒後から64秒後の音響データを得て、これらを音響測定機器に内蔵されたプログラムで解析することでPeak HighおよびLevel Highの値を得る。なお、それらの解析結果は通常n=3〜5の平均値として求められる。
【0012】
なお、FAG法によるPeak High32−64sおよびLevel High32−64sを上述の範囲にする手段としては、例えば、後述する本グリースの製造方法のように、高いせん断を均一に付与しながらグリース化する方法が挙げられる。
【0013】
本グリースには、さらに種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、酸化防止剤、極圧剤、および防錆剤などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、および4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤の好ましい配合量は、グリース全量基準で0.05質量%以上5質量%以下程度である。
【0014】
極圧剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛,ジアルキルジチオリン酸モリブデン,無灰系ジチオカーバメートや亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメートなどのチオカルバミン酸類、硫黄化合物(硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、硫化鉱油、チオリン酸類、チオテルペン類、ジアルキルチオジピロピオネート類等)、リン酸エステル、亜リン酸エステル(トリクレジルホスフェート、トリフェニルフォスファイト等)などが挙げられる。極圧剤の好ましい配合量はグリース全量基準で0.1質量%以上、5質量%以下程度である。
【0015】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ステアリン酸亜鉛、コハク酸エステル、コハク酸誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、亜硝酸ナトリウム、石油スルホネート、ソルビタンモノオレエート、脂肪酸石けん、およびアミン化合物などが挙げられる。防錆剤の好ましい配合量は、グリース全量基準で0.01質量%以上10質量%以下程度である。
以上のような各種添加剤は、単独で、または数種組み合わせて配合してもよい。
【0016】
〔ウレアグリースの製造方法〕
本グリースは、例えば、以下説明する本グリースの製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)により製造できる。本製造方法では、モノアミン化合物を含有する基油1と、ジイソシアネート化合物を含有する基油2とを混合して混合液にするとともに、前記混合液に対し10
3s
−1以上のせん断速度を与える。すなわち、基油1と基油2を混合した後、短時間のうちに高速せん断を混合液に付与する。そして、モノアミン化合物とジイソシアネート化合物を混合分散させながら反応させて増ちょう剤とする。以下、本製造方法について詳細に説明する。
【0017】
(基油)
本製造方法で用いられる基油1および基油2としては、特に限定はなく、前記本グリースで用いられる基油を使用することができる。
基油1や基油2の40℃動粘度は、10mm
2/s以上600mm
2/s以下であることが好ましい。
基油1と基油2の相溶性を考慮すれば同様な極性さらには同様な粘度特性を有することが好ましい。したがって、基油1と基油2は同じ基油を用いることが最も好ましい。
【0018】
(増ちょう剤)
本製造方法では、モノアミン化合物とジイソシアネート化合物とから増ちょう剤を形成する。
モノアミン化合物およびジイソシアネート化合物としては、前記本グリースで用いられるものを使用することができる。
これらのジイソシアネート化合物とモノアミン化合物をモル比1:2で反応容器(グリース製造装置)に連続的に導入し、後述するように、ただちに高せん断を与えながら混合・反応させることで大きなダマが生成しにくいジウレアグリースを製造することができる。また、上記したジイソシアネート化合物とモノアミン化合物との混合体をイソシアネート基とアミノ基が等量となるように反応容器(グリース製造装置)に連続的に導入し、同様に高せん断を与えながら混合・反応させることで大きなダマが生成しにくいウレアグリースを製造することができる。
【0019】
(グリースの製造方法)
本製造方法では、モノアミン化合物を含有する基油1と、ジイソシアネート化合物を含有する基油2とを混合して混合液にするとともに、この混合液に対し10
2s
−1以上の最低せん断速度を与える。すなわち、基油1と基油2を反応容器に入れた後、できるだけ短時間のうちに高速せん断を混合液に付与することがダマの生成または粗大化を抑制する観点より重要である。
具体的には、基油1と基油2を反応容器に入れてから上述のせん断速度を付与するまでの時間は、15分以内であることが好ましく、5分以内であることがより好ましく、10秒以内であることがさらに好ましい。この時間が短いほど、当該モノアミン化合物およびジイソシアネート化合物がよく混合分散した後に反応が始まるので、増ちょう剤分子によるバンドルが太くならず、またダマも大きくならない。
【0020】
また、上述の混合液に付与する最低せん断速度は、上述したように10
2s
−1以上であるが、好ましくは10
3s
−1以上である。せん断速度が高い方がモノアミン化合物およびジイソシアネート化合物、並びに生成した増ちょう剤の分散状態が向上し、より均一なグリース構造となる。すなわち、増ちょう剤分子によるバンドルが太くならず、またダマも大きくならない。
ただし、装置の安全性、せん断等による発熱とその除熱の観点より、上述の混合液に付与する最低せん断速度は10
7s
−1以下であることが好ましい。
せん断速度は、例えば、対向する壁面間の相対運動によりせん断を発生させる反応容器内に混合液を導入することで付与することができる。
【0021】
高せん断速度を発生させることができるグリースの製造装置(反応容器)としては、例えば、
図1に示すような構造の製造装置が挙げられる。
図2は、
図1の製造装置について、側面の概略と上面の概略をともに示したものである。
図1の製造装置は、2種類の基油を混合するとともに、極めて短時間で均一に高速せん断を付与できる構造を備えている。高速せん断は、高速回転部と反応容器内壁との隙間(ギャップa、b)により混合液に付与される。高速回転部は径が回転軸方向に一定でもよく(a=b)、ギャップが異なる構造であってもよい。このようなギャップは、高速回転部の径を回転軸方向で変えることにより、あるいは、高速回転部を円錐台状とし、テーパを設けた反応容器内壁に対しこの高速回転部を上下することにより調整してもよい。
さらにギャップが大きい部分を連続的に傾斜させたスクリュウまたはスパイラル形状とすることで押出能力を持たせてもよい。
また、
図3は、
図1と異なる態様の反応容器(グリースの製造装置)を示したものであるが、ギャップが異なる部分は、回転方向に配されている。この製造装置の場合、ギャップが大きい部分を回転軸に対して傾斜させることでスクリュウのような押出能力を持たせることができる。
【0022】
上述の反応容器内において、混合液に与えるせん断における最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)は100以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、50以下であることがさらにより好ましく、10以下であることが特に好ましい。混合液に対するせん断速度ができるだけ均一であることによりダマが粗大化せず均一なグリース構造となる。
ここで、最高せん断速度(Max)とは、混合液に対して付与される最高のせん断速度であり、最低せん断速度(Min)とは、混合液に対して付与される最低のせん断速度であって、
図1に記載された反応容器を例にとると、下記のように定義されるものである。
Max=(高速回転部表面と容器内壁面とのギャップが最小になる部分における高速回転部表面の線速度/当該ギャップ)
Min=(高速回転部表面と容器内壁面とのギャップが最大になる部分における高速回転部表面の線速度/当該ギャップ)
なお、
図1においては、Maxの計算におけるギャップがaであり、Minの計算におけるギャップがbである。
上記したように、Max/Minは、小さい方が好ましいので、理想的にはa=bである。すなわち、
図1のタイプの反応容器であれば、高速回転部は上下に均一な直径を有する円柱状であることが最も好ましい。
なお、ウレアグリースを製造する場合、製造装置としては
図3のような構造でもよい。
【0023】
本製造方法は、基油1とモノアミン化合物からなる溶液と、基油2とジイソシアネート化合物からなる溶液を混合する工程を含むグリースの製造方法には全て適用できる。増ちょう剤を製造する際の温度条件は用いる前駆体によって異なるが、増ちょう剤としてウレアを製造する場合は50〜200℃程度が好ましい。この温度が50℃以上であるとイソシアネートが基油に溶解しやすく、200℃以下であると基油の劣化を十分に抑制できる。反応容器導入前の基油とアミンの溶液温度としては50〜100℃程度の温度が好ましい。
【0024】
本製造方法では、上述した製造方法により得られたグリースに対し、さらに混練してもよい。この混練には、グリース製造で一般的に使用されるロールミルを用いることができる。上述のグリースはロールミルを2回以上通してもよい。
また、本製造方法では、上述した製造方法により得られたグリースに対し、さらに80℃以上200℃以下の温度に加熱してもよい。さらに、均一に加熱するために混練、撹拌してもよい。なお、加熱の際は、加熱炉等を用いてもよい。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの記載内容に何ら制限されるものではない。具体的には、以下に示す各種の条件でウレアグリースを製造し、得られたグリースの性状を評価した。
〔実施例1〕
図3に示すタイプのウレアグリース製造装置によりグリースを製造した。具体的なグリースの製造方法は以下の通りである。
70℃に加温したPAO系基油(ポリαーオレフィン(40℃動粘度が63mm
2/s、100℃動粘度が9.8mm
2/s)、シクロヘキシルアミン28.1質量%含有)と、同じく70℃に加温したPAO系基油(ポリαーオレフィン(40℃動粘度が63mm
2/s、100℃動粘度が9.8mm
2/s)、MDI11.0質量%含有)とをそれぞれ流量144mL/min、504mL/minで連続的に製造装置内に導入し、ただちに高速回転部により、混合液に対しギャップ通過中に42,000s
−1の最高せん断速度を付与した。また、ギャップ通過中の最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)は1.03であった。また、上記した2種の基油の混合から最高せん断速度を混合液に付与するまでの時間は約3秒であった。製造されたグリースの増ちょう剤量はグリース全量基準に対して15質量%である。
また、得られたグリースについては、光学顕微鏡にてダマの形成状況を観察した。後述する各実施例・比較例のグリースについても同様である。
【0026】
〔実施例2〕
実施例1において、混合液に付与する最高せん断速度を83,900s
−1とした以外は、同様にしてグリースを製造した。製造されたグリースの増ちょう剤量はグリース全量基準に対して15質量%である。
【0027】
〔実施例3〕
実施例1において、シクロヘキシルアミン濃度を23.8質量%、MDI濃度を9.0質量%、アミン溶液流量、MDI溶液流量をそれぞれ100mL/min、330mL/minとし、最高せん断速度を216,000s
−1とした以外は、同様にしてグリースを製造した。製造されたグリースの増ちょう剤量はグリース全量基準に対して12質量%である。
【0028】
〔比較例1〕
通常の方法でウレアグリースを製造した。具体的には、攪拌翼で攪拌され、60℃に保たれたPAO系基油(ポリαーオレフィン(40℃動粘度が63mm
2/s、100℃動粘度が9.8mm
2/s)、MDI14.5質量%含有)に対し、60℃のPAO系基油(ポリαーオレフィン(40℃動粘度が63mm
2/s、100℃動粘度が9.8mm
2/s)、シクロヘキシルアミン15.7質量%含有)を滴下した。アミン溶液を滴下した後、攪拌(撹拌回転数:250rpm)を継続しながら160℃に昇温し、1時間保持した。その後、撹拌しながら放冷した。製造されたグリースの増ちょう剤量はグリース全量基準に対して15質量%である。また、製造時における最高せん断速度は約100s
−1である。
【0029】
<グリースの評価>
グリースの評価(Peak High32−64s、Level High32−64s、ダマの平均径、ダマの数密度、混和ちょう度)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。また、各グリースの製造時における最高せん断速度、最低せん断速度、および最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)も表1に示す。さらに、各グリースの光学顕微鏡写真を
図4〜
図7に示す。
(1)Peak High32−64sおよびLevel High32−64s
SKF社のグリース専用音響測定機器(Grease Test Rig Be Quiet+)を用いて、Peak High32−64sおよびLevel High32−64sを測定する。具体的には、この音響測定機器に、グリース未封入の音響測定専用ベアリングをセットし、所定速度で回転させながら回転開始から32秒後から64秒後までの音響データを得る。更にこれらのベアリングに所定量の試料(グリース)を封入し、所定速度で回転させながら回転開始から32秒後から64秒後の音響データを得て、これらを音響測定機器に内蔵されたプログラムで解析することでPeak HighおよびLevel Highの値を得る。なお、それらの解析結果は通常n=3〜5の平均値として求められる。
(2)15μm以上のダマの平均径、および15μm以上のダマの数密度
グリース10gに基油を5g入れてさじで混合後、ロールミルをかけて均質化したものをスライドガラスに極少量載せてサランラップ(登録商標)(厚さ:11μm)をスペーサとしてカバーガラスを載せ、更にスライドガラスを載せて20N程度の垂直荷重を均等にかけてグリースを潰し膜状にした。ロールミルはEXAKT社製3本ロールミルモデル50(ロール径=50mm)を使用した。上部のスライドガラスを取り去って光学顕微鏡(オリンパスBH−2)で各グリースにつきランダムに4枚以上100倍で写真撮影した。このときに作為的にダマが少ない場所や多い場所を選ばないよう、ランダムに撮影することに留意した(実施例のグリースはダマが小さく、また輪郭が不明確だったので、基油で希釈することでダマ部とその他の部分の屈折率差を大きくした。また高倍率では輪郭が不明瞭になるため100倍で撮影した)。
これらの写真を目視し、ダマが最も少ない写真と最も多い写真を除き、画像処理ソフト(KEYENCE社製、VHX−H3M(Ver.1.0)を使用しダマの大きさと数を計測した。ダマの長径の2点間距離を手動で(マウスで)計測した。このとき、ダマの長径が少なくとも10μm以上あるものは全て計測した。計測面積は、写真1枚当たり、215μm×215μm(枠の大きさ8cm×8cm)を6箇所とした。また、統計的な確度を高めるために、ダマが少ない試料では多くの写真、例えば5枚以上、を用いて計測する必要がある。
そして、得られた2点間距離(ダマの長径)から15μm以上のものを選択し、その平均値を求めて15μm以上のダマの平均径を求めた(15μm以下のものは測定誤差が大きいことと、画像からダマと正確に判断することが困難な場合があるので除外した)。
15μm以上のダマの数密度は、下式で求めた。
15μm以上のダマの数密度=(15μm以上のダマの個数/観察面積)×基油での希釈倍率
ここで、グリース10gに基油5gを加えた場合は、基油での希釈倍率は1.5である。
(3)混和ちょう度
JIS K2220の記載に準拠した方法で、混和ちょう度を測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
表1の結果より、本発明のウレアグリース(実施例1〜3)は、いずれも音響特性が優れ、ダマが小さく、ダマ数が少なく、均一性に優れていることが確認された。特に、せん断速度が216,000s
−1で極めて大きい実施例3では、ダマ数が少なく、優れた音響特性が達成されている。
これに対して、通常の方法で製造された比較例1のウレアグリースは、音響特性が不十分であり、ダマの平均径、ダマの数密度ともに大きく、均一性に著しく劣っている。
また、
図4〜
図7に示す光学顕微鏡像からも実施例では比較例に対してダマが小さく、均質であることは明らかである。
【0032】
〔実施例4〕
図1に示すタイプのウレアグリース製造装置によりグリースを製造した。具体的なグリースの製造方法は以下の通りである。
70℃に加熱した500N鉱油(40℃動粘度が90mm
2/s、MDI6.76質量%含有)と、同じく70℃に加熱した500N鉱油(40℃動粘度が90mm
2/s、シクロヘキシルアミン10.3質量%含有)とをそれぞれ流量325mL/min、175mL/minで連続的に製造装置内に導入し、ただちに高速回転部により、混合液に対しギャップ通過中に216,000s
−1の最高せん断速度を付与した。また、ギャップ通過中の最低せん断速度(Min)は、210,000s
−1であり、ギャップ通過中の最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)は1.03であった。また、上記した2種の基油の混合から最高せん断速度を混合液に付与するまでの時間は約3秒であった。製造装置から吐出したグリースを60℃に
予熱した容器にとり250rpmで撹拌しながらすぐに120℃に昇温し30分間保持し、その後160℃に昇温し1時間保持した。その後、撹拌を維持したまま放冷し、ロールミルを2回かけて、グリースを得た。得られたグリースの増ちょう剤量はグリース全量基準に対して8質量%である。
【0033】
<グリースの評価>
グリースの評価(Peak High32−64s、Level High32−64s、混和ちょう度)を上記のような方法で行った。得られた結果を表2に示す。また、各グリースの増ちょう剤量、並びに、各グリースの製造時における最高せん断速度、最低せん断速度、および最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)も表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2の結果より、実施例4では、優れた音響特性を有するウレアグリースが得られた。