特許第6614008号(P6614008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614008
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20191125BHJP
   F01L 13/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   F02D13/02 K
   F01L13/00 301V
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-84247(P2016-84247)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-194001(P2017-194001A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀朗
【審査官】 丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−050032(JP,A)
【文献】 特開2013−047465(JP,A)
【文献】 特開2007−085241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00 − 29/06
F02D 41/00 − 45/00
F01L 13/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンであって、
吸気通路の一方端と排気通路の一方端との各々と頂部において接続される気筒と、
前記気筒と前記吸気通路の一方端との接続部分に開閉可能に設けられた吸気バルブと、
前記気筒と前記排気通路の一方端との接続部分に開閉可能に設けられた排気バルブと、
前記吸気バルブおよび前記排気バルブを動作させる動弁機構とを備え、
前記動弁機構は、
前記排気バルブを排気行程において開弁状態にする第1排気カムと、
前記排気バルブを前記排気行程と吸気行程との各々において前記開弁状態にする第2排気カムと、
前記第1排気カムと前記第2排気カムとのうちのいずれか一方を選択して前記排気バルブを動作させる選択装置と、
前記吸気バルブの閉じタイミングを変更するための変更装置と、を含み、
前記エンジンは、
前記気筒内の第1圧力を検出する第1圧力センサと、
前記吸気通路内の第2圧力を検出する第2圧力センサと、
前記選択装置と前記変更装置とを制御するための制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記選択装置によって前記第1排気カムが選択される場合に、前記閉じタイミングを第1タイミングに変更するように前記変更装置を制御し、前記第2排気カムが選択される場合に、前記閉じタイミングが前記第1タイミングよりも早く前記吸気バルブが閉じる第2タイミングに変更するように前記変更装置を制御し、
前記制御装置は、前記第2排気カムが選択される場合でも、前記吸気行程における前記第1圧力と前記第2圧力との差分の大きさの積算値がしきい値よりも大きいときには、前記閉じタイミングが前記第1タイミングになるように前記変更装置を制御し、
前記積算値が前記しきい値よりも小さいときには、前記閉じタイミングが前記第2タイミングになるように前記変更装置を制御する、エンジン。
【請求項2】
エンジンであって、
吸気通路の一方端と排気通路の一方端との各々と頂部において接続される気筒と、
前記気筒と前記吸気通路の一方端との接続部分に開閉可能に設けられた吸気バルブと、
前記気筒と前記排気通路の一方端との接続部分に開閉可能に設けられた排気バルブと、
前記吸気バルブおよび前記排気バルブを動作させる動弁機構とを備え、
前記動弁機構は、
前記排気バルブを排気行程において開弁状態にする第1排気カムと、
前記排気バルブを前記排気行程と吸気行程との各々において前記開弁状態にする第2排気カムと、
前記第1排気カムと前記第2排気カムとのうちのいずれか一方を選択して前記排気バルブを動作させる選択装置と、
前記吸気バルブの閉じタイミングを変更するための変更装置と、を含み、
前記エンジンは、
前記気筒内の第1圧力を検出する第1圧力センサと、
前記吸気通路内の第2圧力を検出する第2圧力センサと、
前記選択装置と前記変更装置とを制御するための制御装置とをさらに備え、
前記制御装置は、前記選択装置によって前記第1排気カムが選択される場合に、前記閉じタイミングを第1タイミングに変更するように前記変更装置を制御し、前記第2排気カムが選択される場合に、前記閉じタイミングが前記第1タイミングよりも早く前記吸気バルブが閉じる第2タイミングに変更するように前記変更装置を制御し、
前記制御装置は、前記第2排気カムが選択される場合でも、前記吸気行程の下死点における前記第1圧力と前記第2圧力との差分の大きさがしきい値よりも大きいときには、前記閉じタイミングが前記第1タイミングになるように前記変更装置を制御し、
前記差分の大きさが前記しきい値よりも小さいときには、前記閉じタイミングが前記第2タイミングになるように前記変更装置を制御する、エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気行程と吸気行程とにおいて排気バルブを開弁状態にすることが可能な動弁機構を搭載したエンジンの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気バルブを開弁状態として新気を筒内に導入する吸気行程の後半部分において、排気バルブを少量リフトさせて開弁状態にし、排気ポートの排気ガスを筒内に導入する内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)を行なうエンジンが公知である。
【0003】
たとえば、特開2000−199440号公報(特許文献1)は、機関高負荷の均一燃焼時において、必要量の再循環排気ガスを気筒内へ導入するために、排気弁を吸気行程の中期以降にも開弁させる排気弁開弁手段を備える内燃機関を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−199440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吸気バルブは、筒内への新気の充填効率を向上させるために、吸気下死点以降においてもインテークマニホールドの圧力が筒内圧よりも高い所定期間が経過するまで開弁状態を維持するよう制御される場合がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように吸気行程の後半において排気バルブを少量リフトさせて開弁状態にする排気開弁手段を備える内燃機関では、少量リフトされて開弁状態となった排気バルブが再び閉弁状態となった後も吸気バルブの開弁状態が所定期間維持されるので、排気バルブから筒内に導入された高温の排気ガスにより筒内圧が増加してインテークマニホールドの圧力に近づいた場合に、筒内に導入されたガス(新気及びEGRガス)の吸気ポート側への逆流が発生してしまうことがある。このような筒内に導入されたガスの吸気ポートへの逆流は、筒内のガスの充填効率を低下させることになるので、目標の空燃比で燃焼を行なうことができず、排気ポテンシャルが悪化し、その結果、燃費が悪化してしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、吸気行程の後半において排気バルブを開弁状態にする場合に気筒内のガスの充填効率の低下を抑制するエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に係るエンジンは、吸気通路の一方端と排気通路の一方端との各々と頂部において接続される気筒と、気筒と吸気通路の一方端との接続部分に開閉可能に設けられた吸気バルブと、気筒と排気通路の一方端との接続部分に開閉可能に設けられた排気バルブと、吸気バルブおよび排気バルブを動作させる動弁機構とを備える。動弁機構は、排気バルブを排気行程において開弁状態にする第1排気カムと、排気バルブを排気行程と吸気行程との各々において開弁状態にする第2排気カムと、第1排気カムと第2排気カムとのうちのいずれか一方を選択して排気バルブを動作させる選択装置と、吸気バルブが閉じるタイミングを変更するための変更装置とを含む。エンジンは、選択装置と変更装置とを制御するための制御装置をさらに備える。制御装置は、選択装置によって第1排気カムが選択される場合に、吸気バルブが閉じるタイミングを第1タイミングに変更するように変更装置を制御し、第2排気カムが選択される場合に、吸気バルブが閉じるタイミングが第1タイミングよりも早く吸気バルブが閉じる第2タイミングに変更するように変更装置を制御する。
【0009】
このようにすると、排気バルブを排気行程と吸気行程との各々において開弁状態にする第2排気カムが選択装置によって選択される場合に吸気バルブが閉じるタイミングが、第1タイミングよりも早く吸気バルブが閉じる第2タイミングに変更される。そのため、吸気行程において排気バルブが開弁状態になり、排気ガスが筒内に戻されることによって筒内圧が上昇しても、吸気バルブが閉じるタイミングが早めることで気筒内のガスが吸気通路側に逆流することを抑制することができる。そのため、筒内のガスの充填効率の低下を抑制することができる。
【0010】
好ましくは、エンジンは、気筒内の第1圧力を検出する第1圧力センサと、吸気通路内の第2圧力を検出する第2圧力センサとをさらに備える。制御装置は、第2排気カムが選択される場合でも、吸気行程における第1圧力と第2圧力との差分の大きさの積算値がしきい値よりも大きいときには、吸気バルブが閉じるタイミングが第1タイミングになるように変更装置を制御する。制御装置は、第2排気カムが選択される場合、積算値がしきい値よりも小さいときには、吸気バルブが閉じるタイミングが第2タイミングになるように変更装置を制御する。
【0011】
このようにすると、第2排気カムが選択される場合、第1圧力と第2圧力との差分の大きさの積算値がしきい値よりも小さいときには、吸気行程において排気バルブが開弁状態になることにより筒内圧が高い状態になっていると判定することができる。そのため、このようなときには、吸気バルブが閉じるタイミングを早めることで気筒内のガスが吸気通路側に逆流することを抑制することができる。
【0012】
さらに好ましくは、エンジンは、気筒内の第1圧力を検出する第1圧力センサと、吸気通路内の第2圧力を検出する第2圧力センサとをさらに備える。制御装置は、第2排気カムが選択される場合でも、吸気行程の下死点における第1圧力と第2圧力との差分の大きさがしきい値よりも大きいときには、吸気バルブが閉じるタイミングが第1タイミングになるように変更装置を制御する。制御装置は、第2排気カムが選択される場合、差分の大きさがしきい値よりも小さいときには、吸気バルブが閉じるタイミングが第2タイミングになるように変更装置を制御する。
【0013】
このようにすると、第2排気カムが選択される場合、第1圧力と第2圧力との差分の大きさがしきい値よりも小さいときには、吸気行程において排気バルブが開弁状態になることにより筒内圧が高い状態になっていると判定することができる。そのため、このようなときには、吸気バルブが閉じるタイミングを早めることで気筒内のガスが吸気通路側に逆流することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、吸気行程の後半において排気バルブを開弁状態にする場合に気筒内のガスの充填効率の低下を抑制するエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に係るエンジンの概略構成を示す図である。
図2】本実施の形態における吸気側のカムの形状を示す図である。
図3】本実施の形態における排気側のカムの形状を示す図である。
図4】2種類のカムを選択する構成の一例を説明するための図である。
図5】2段カム使用時の運転領域と非使用時の運転領域とを示す図である。
図6】2段カム非使用時におけるエンジンの状態を説明するためのタイミングチャートである。
図7図6との比較例を示すタイミングチャートである。
図8】ECUで実行される制御処理を示すフローチャートである。
図9】2段カム使用時に進角カムを選択する場合のエンジンの状態を説明するためのタイミングチャートである。
図10】インマニ圧と筒内圧との差分の大きさの積算値の算出方法を説明するためのタイミングチャートである。
図11】インマニ圧と筒内圧との差分の大きさの算出方法を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るエンジン100の概略構成を示す。本実施の形態において、エンジン100は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関である。以下の説明においては、ディーゼルエンジンをエンジン100の一例として説明する。
【0018】
エンジン100は、気筒102と、ピストン104と、インテークマニホールド106と、吸気ポート108と、排気ポート110と、吸気バルブ120と、排気バルブ130と、第1動弁機構150と、第2動弁機構160と、制御装置200とを含む。エンジン100は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程を経て動作する。
【0019】
気筒102は、円筒形状を有する。気筒102内にはピストン104が格納される。気筒102内で燃料と空気とを含む混合気が燃焼することによってピストン104が押し下げられ、クランク機構を介して図示しないエンジン100のクランクシャフトが回転させられる。気筒102は、複数個設けられてもよい。気筒102の頂部には、吸気ポート108の一方端と、排気ポート110の一方端とが接続される。
【0020】
吸気ポート108の一方端と気筒102の頂部との接続部分には、吸気バルブ120が設けられる。吸気バルブ120は、第1動弁機構150によって作動する。すなわち、吸気バルブ120は、第1動弁機構150によって図1の紙面下方向に押し下げられると、吸気ポート108の一方端と気筒102の頂部とが連通状態になる。吸気バルブ120は、第1動弁機構150によって図1の紙面上方向に引き上げられると、吸気ポート108の一方端と気筒102の頂部との間を弁体によって遮断状態にする。
【0021】
排気ポート110の一方端と気筒102の頂部との接続部分には、排気バルブ130が設けられる。排気バルブ130は、第2動弁機構160によって作動する。具体的な動作については吸気バルブ120と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0022】
なお、特に図示しないが、気筒102内には、気筒102内に燃料を噴射するための燃料噴射インジェクタや、冷間時の始動を補助する補助熱源であるグロープラグなどが設けられる。
【0023】
吸気ポート108の他方端には、インテークマニホールド106が接続される。インテークマニホールド106は、各気筒に接続される吸気管枝と、共通のサージタンク(いずれも図示せず)とを含む。インテークマニホールド106には、吸気管の一方端が接続されており、吸気管の他方端には、エアクリーナ(いずれも図示せず)や過給機のコンプレッサやインタークーラなどが設けられる。
【0024】
排気ポート110の他方端には、エキゾーストマニホールド(図示せず)が接続される。エキゾーストマニホールドには、排気管の一方端が接続されており、排気管の他方端には、過給機のタービンや排気ガス浄化装置など(いずれも図示せず)が設けられる。
【0025】
第1動弁機構150は、たとえば、エンジン100のシリンダヘッド内に設けられる。第1動弁機構150は、バルブスプリング121と、ロッカーアーム122と、カム124と、アクチュエータ126とを含む。
【0026】
バルブスプリング121は、ロッカーアーム122の一方端からの力が吸気バルブ120上方に接続されるタペット123に作用しない場合に、吸気バルブ120が閉状態になるようにタペット123に付勢力を付与して吸気バルブ120を所定の位置に保持する。所定の位置とは、吸気バルブ120の弁体が吸気ポート108の一方端と気筒102の頂部との接続部分を遮断状態にする位置である。
【0027】
ロッカーアーム122の一方端からの力がタペット123に作用する場合であって、タペット123に作用する力がバルブスプリング121の付勢力を上回ることにより、バルブスプリング121が縮小しタペット123が押し下げられる。これにより、吸気バルブ120のリフト量が増加し、開状態になる。
【0028】
ロッカーアーム122の他方端は、カム124が回転することによって押し上げられる。ロッカーアーム122の一方端と他方端との間の支持部材によって、回転自在に支持されている。そのため、ロッカーアーム122の他方端が押し上げられることによって、ロッカーアーム122の一方端が押し下げられる。
【0029】
カム124は、回転軸方向から視て略楕円形状の外縁を有しており、その外縁の形状によってロッカーアーム122の他方端を押し上げる時期や押し上げ量等が定まる。すなわち、カム124の外縁の形状により、吸気バルブ120の開閉時期やリフト量が定まる。
【0030】
カム124は、吸気バルブ120の動作特性を変更するための2種類のカム部材を含む。カム124は、カムシャフト125に取り付けられる。カムシャフト125は、タイミングチェーン等を介してエンジン100のクランクシャフトと連動して回転する。
【0031】
アクチュエータ126は、制御装置200の制御信号に応じて動作し、カム124に含まれる2種類のカム部材(図2参照)のうちのいずれか一方を選択する。選択されたカム部材の回転によってロッカーアーム122の他方端が押し上げられる。カム部材の選択によって吸気バルブ120の動作特性を変更することができる。
【0032】
第2動弁機構160は、たとえば、エンジン100のシリンダヘッド内に設けられる。第2動弁機構160は、バルブスプリング131と、ロッカーアーム132と、カム134と、アクチュエータ136とを含む。
【0033】
なお、第2動弁機構160による排気バルブ130の開閉動作は、第1動弁機構150による吸気バルブ120の開閉動作と同様であり、その詳細な説明は繰り返さない。
【0034】
カム134は、回転軸方向から視て略楕円形状の外縁を有しており、その外縁の形状によってロッカーアーム132の他方端を押し上げる時期や押し上げ量等が定まる。すなわち、カム134の外縁の形状により、排気バルブ130の開閉時期やリフト量が定まる。
【0035】
カム134は、排気バルブ130の動作特性を変更するための2種類のカム部材(図3参照)を含む。カム134は、カムシャフト135に取り付けられる。カムシャフト135は、タイミングチェーン等を介してエンジン100のクランクシャフトと連動して回転する。
【0036】
アクチュエータ136は、制御装置200の制御信号に応じて動作し、カム134に含まれる2種類のカム部材のうちのいずれか一方を選択する。選択されたカム部材の回転によってロッカーアーム132の他方端が押し上げられる。カム部材の選択によって排気バルブ130の動作特性を変更することができる。カム124やカム134に含まれる2種類のカム部材の詳細な構造やアクチュエータによるカム部材の詳細な選択方法については、後述する。
【0037】
吸気バルブ120は、第1動弁機構150の動作によって吸気行程において開弁状態となる。吸気バルブ120は、排気バルブ130が閉弁状態になる直前に開き、少なくともピストン104が上死点(TDC)に対応する位置から下死点(BDC)に対応する位置に移動する間、開弁状態となる。このとき、ピストン104が下降することによって気筒102内の圧力(以下、筒内圧と記載する)がインテークマニホールド106内の圧力(インマニ圧と記載する)よりも低くなる。筒内圧とインマニ圧との圧力差によって吸気ポート108から気筒102内に空気が導入される。
【0038】
排気バルブ130は、第2動弁機構160の動作によって排気行程において開弁状態となる。排気バルブ130は、膨張行程の後、ピストン104が下死点(BDC)まで低下する直前に開き、少なくとも下死点に対応する位置から上死点(TDC)に対応する位置に移動する間、開弁状態となる。このとき、筒内圧がエキゾーストマニホールド内の圧力(以下、エキマニ圧と記載する)よりも高いため、筒内圧とエキマニ圧との圧力差によって気筒102から排気ポート110に燃焼後の排気ガスが流通する。
【0039】
制御装置200は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、入出力バッファ等とを含んで構成される。制御装置200は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン100が所望の運転状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0040】
制御装置200は、たとえば、排気管に設けられる空燃比センサによって検出される空燃比の実測値がエンジン100の運転状態等によって決定される空燃比の目標値になるように燃料噴射インジェクタの燃料噴射時間を調整して燃料噴射量を制御する。
【0041】
インテークマニホールド106には、インテークマニホールド106内の圧力を検出する第1圧力センサ300が設けられる。第1圧力センサ300は、検出結果を示す信号を制御装置200に出力する。
【0042】
気筒102の頂部には、気筒102の筒内の圧力を検出する第2圧力センサ400が設けられる。第2圧力センサ400は、検出結果を示す信号を制御装置200に出力する。なお、気筒102が複数個設けられる場合には、各気筒に第2圧力センサ400が設けられる。
【0043】
以下、カム124,134の詳細な構造を説明するとともに、アクチュエータ126,136を用いてカム124に含まれる2種類のカム部材のうちのいずれか一方と、カム134に含まれる2種類のカム部材のうちのいずれか一方を選択する方法について説明する。
【0044】
図2は、カム124をカムシャフト125の回転軸方向から視た形状を示す図である。図2に示すように、カム124は、第1カム部材124aと、第2カム部材124bとを含む。第1カム部材124aおよび第2カム部材124bの各々は、回転軸方向に沿って所定の厚さを有する。第1カム部材124aと第2カム部材124bとは、当接して設けられる。
【0045】
また、第1カム部材124aと第2カム部材124bとは、カムシャフト125の回転軸方向から視て同じ外縁形状を有する。すなわち、第1カム部材124aおよび第2カム部材124bは、いずれも略楕円形状を有し、上部(図2の紙面上方向)に先細った形状を有する。第2カム部材124bは、第1カム部材124aに対して、カムシャフト125の回転軸を回転中心として予め定められた角度だけずれた位置関係を有する。これにより、第1カム部材124aと第2カム部材124bとを切り替えることによって、吸気バルブ120の開弁期間およびリフト量を維持しつつ、開閉時期を変更することができる。本実施の形態において第1カム部材124aは、少なくとも上死点(TDC)前に吸気バルブ120が開き始め、下死点(BDC)後に閉じるようにカムシャフト125に固定される。第2カム部材124bは、第1カム部材124aが選択される場合よりも吸気バルブ120が早く閉じる動作特性を有する。
【0046】
図3は、カム134をカムシャフト135の回転軸方向から視た形状を示す図である。図3に示すように、カム134は、第3カム部材134aと、第4カム部材134bとを含む。第3カム部材134aおよび第4カム部材134bの各々は、回転軸方向に沿って所定の厚さを有する。第3カム部材134aと第4カム部材134bとは、当接して設けられる。
【0047】
また、第3カム部材134aと第4カム部材134bとは、第4カム部材134bに突起部134cが設けられる点以外の部分は、同じ外縁形状を有する。第3カム部材134aと第4カム部材134bとにおける同じ外縁形状の部分は、いずれも略楕円形状を有し、上部に先細った形状を有する。第4カム部材134bの上部の先細った形状の部分は、カムシャフト135の回転軸方向から視て第3カム部材134aの上部の先細った形状の部分と一致した位置に設けられる。
【0048】
第4カム部材134bに設けられる突起部134cは、吸気行程における予め定められた時期に排気バルブ130を開弁状態にする位置に設けられる。また、突起部134cの突出量は、吸気行程における排気バルブ130のリフト量が予め定められた量になるように定められる。これにより、第3カム部材134aと第4カム部材134bとを切り替えることによって、排気バルブの開弁期間、リフト量および開閉時期を維持しつつ、吸気行程で排気バルブを開弁するか否かを変更することができる。
【0049】
図4は、カム134の第3カム部材134aと第4カム部材134bとのうちのいずれか一方を選択してロッカーアーム132を動作させる構成の一例を示す。なお、カム124の第1カム部材124aと第2カム部材124bとのうちのいずれか一方を選択してロッカーアーム122を動作させる構成についても同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0050】
ロッカーアーム132は、ベース部132aと、第1アーム部材132bと、第2アーム部材132cと、第1貫通孔132dと、第2貫通孔132eと、ベース支持部材132fとを含む。
【0051】
ベース部132aは、カムシャフト135の回転軸方向から視て一方端と他方端との間に設けられるベース支持部材132fを回転中心として回転自在に支持される。ベース部132aの一方端には、排気バルブ130のタペット133に向けて突出する突起部が設けられる。
【0052】
ベース支持部材132fは、ベース部132aに加えて、第1アーム部材132bの一方端および第2アーム部材132cの一方端の各々を回転自在に支持する。
【0053】
第1アーム部材132bの他方端は、第3カム部材134aの外周面に当接する。第2アーム部材132cの他方端は、第4カム部材134bの外周面に当接する。
【0054】
第1アーム部材132bの一方端と他方端との間には、カムシャフト135の回転軸と平行な方向に沿って第1貫通孔132dが形成される。第2アーム部材132cの一方端と他方端との間には、カムシャフト135の回転軸と平行な方向に沿って第2貫通孔132eが形成される。
【0055】
ベース部132aの他方端には、アクチュエータ136が内蔵される。アクチュエータ136は、第1貫通孔132dと、第2貫通孔132eとのうちのいずれか一方にピン形状の突起部136a,136bのうちのいずれか一方を挿入する。アクチュエータ136は、たとえば、油圧で突起部136a,136bを動作させるものであってもよいし、電動で突起部136a,136bを動作させるものであってもよい。
【0056】
アクチュエータ136によって突起部136aが第1貫通孔132dに挿入されると、第1アーム部材132bとベース部132aとが一体的に動作する。そのため、第3カム部材134aの回転によって第1アーム部材132bの他方端が押し上げられる場合、第1アーム部材132bの他方端が作用点となり、ベース支持部材132fが支点となり、ベース部132aの一方端が力点となる。ベース部132aの一方端が押し下げられると、排気バルブ130が開弁状態になる。このとき、第4カム部材134bが回転しても、第2アーム部材132cは、一方端を回転中心として揺動するのみとなる。そのため、排気バルブ130は、第3カム部材134aの外縁形状による動作特性で動作する。
【0057】
一方、アクチュエータ136によって突起部136bが第2貫通孔132eに挿入されと、第2アーム部材132cとベース部132aが一体的に動作する。そのため、第4カム部材134bの回転によって第2アーム部材132cの他方端が押し上げられる場合、第2アーム部材132cの他方端が作用点となり、ベース支持部材132fが支点となり、ベース部132aの一方端が力点となる。ベース部132aの一方端が押し下げられると、排気バルブ130が開弁状態になる。このとき、第3カム部材134aが回転しても、第1アーム部材132bは、一方端を回転中心として揺動するのみとなる。そのため、排気バルブ130は、第4カム部材134bの外縁形状による動作特性で動作する。
【0058】
制御装置200は、エンジン100の運転状態に応じてアクチュエータ136を動作することによって第3カム部材134aおよび第4カム部材134bのうちのいずれか一方を選択して選択されたカム部材に対応した動作特性で排気バルブ130を開閉させる。
【0059】
第4カム部材134bは、突起部134cが設けられる。そのため、第4カム部材134bが選択される場合には、吸気行程および排気行程の各々において排気バルブ130が開弁状態になる。
【0060】
以下の説明において第3カム部材134aを「通常排気カム」と記載し、第4カム部材134bを「2段カム」と記載する場合がある。また、第3カム部材134aが選択される場合を「2段カム非使用時」と記載し、第4カム部材134bが選択される場合を「2段カム使用時」と記載する場合がある。
【0061】
制御装置200は、予め定められた運転領域において2段カムを使用するためにアクチュエータ136を制御する。図5に、2段カム使用時の運転領域と、2段カム非使用時の運転領域との一例を示す。図5の横軸は、エンジン回転数Neを示す。図5の縦軸は、吸気量Qを示す。
【0062】
図5に示すように2段カムを使用する予め定められた運転領域は、エンジン回転数Neがしきい値Ne(0)よりも低い低回転領域であって、かつ、吸気量Qがしきい値Q(0)よりも低い低負荷領域である。なお、図5に示す運転領域は、一例であり、たとえば、図5の破線で囲われる領域のように、エンジン回転数Neが高くなるほど吸気量Qのしきい値がしきい値Q(0)よりも低下し、吸気量Qが低くなるほどエンジン回転数Neのしきい値がしきい値Ne(0)よりも高くなる領域が予め定められた運転領域として設定されてもよい。
【0063】
制御装置200は、エンジン100の運転領域が予め定められた運転領域になると2段カムである第4カム部材134bが選択されるようにアクチュエータ136を制御する。制御装置200は、エンジン100の運転領域が予め定められた運転領域外になると通常排気カムである第3カム部材134aが選択されるようにアクチュエータ136を制御する。
【0064】
このように低負荷かつ低回転領域で2段カムを使用することによって、吸気行程において高温のEGRガスを筒内に導入することにより燃焼の安定化が図られる。
【0065】
以下に、図6および図7を用いて2段カム使用時と2段カム非使用時とにおけるエンジン100の状態の変化について説明する。図6は、2段カム非使用時におけるエンジン100の状態の変化を示す。図7は、図6の場合と比べて2段カムを使用している点のみが異なるとした場合のエンジン100の状態の変化を示す比較例である。
【0066】
図6を参照して、図6のラインLN1は、インマニ圧の変化を示す。図6の一点鎖線のラインLN2は、2段カム非使用時の筒内圧の変化を示す。図6のラインIN1は、吸気バルブ120のリフト量の変化を示す。図6のラインEX1は、排気バルブ130のリフト量の変化を示す。図6のラインLN3は、吸気ポート108から気筒102内への気体の流量を示す。なお、吸気ポート108から気筒102内への気体の流量は、ゼロよりも大きい場合は順流であること(すなわち、吸気ポート108から気筒102に気体が流れること)を示し、ゼロよりも小さい場合は逆流であること(気筒102から吸気ポート108に気体が流れること)を示す。また、カム124としては、第1カム部材124aが選択されている場合を想定する。
【0067】
図6に示すように、排気行程において排気バルブ130が閉状態になる前であって、かつ、上死点(TDC)の前に吸気バルブ120が開き始める。上死点(TDC)の後に排気バルブ130が閉弁状態になる。上死点(TDC)から下死点(BDC)の間においてピストン104は下降するため、筒内圧が低下する。その結果、インマニ圧と筒内圧との間に差圧が生じることで吸気ポート108から気筒102に空気が流通する。そのため、吸気ポート108から気筒102への空気の流量が増加する。
【0068】
上死点(TDC)と下死点(BDC)との間において吸気バルブ120のリフト量が最も高くなるときに吸気ポート108から気筒102への空気の流量が最も大きくなる。吸気バルブ120は、下死点(BDC)の後に閉弁状態になる。排気バルブ130も閉弁状態であるため、吸気バルブ120の閉弁後においてピストン104が上昇することによって筒内圧が上昇していく。
【0069】
一方、2段カムの使用時においてエンジン100は、図7に示すような変化を示す。なお、図7のラインLN1,IN1およびEX1は、図6のラインLN1,IN1およびEX1と同様に、それぞれ、インマニ圧、吸気バルブ120のリフト量および排気行程における排気バルブ130のリフト量の変化を示す。
【0070】
図7の破線のラインLN4は、2段カム使用時の筒内圧の変化を示す。図7のEX2は、2段カム使用時の吸気行程における排気バルブ130のリフト量の変化を示す。また、図7の破線のラインLN5は、2段カム使用時における吸気ポート108から気筒102内への気体の流量を示す。
【0071】
図7のラインEX2に示すように、吸気行程において排気バルブ130が開弁状態になると、排気ポート110から気筒102へと排気ガスが流入するため、2段カム非使用時と比較して筒内圧が上昇する。その結果、インマニ圧と筒内圧との差圧が縮小することによって、図7のラインLN5に示すように、吸気ポート108から気筒102内への流量が2段カム非使用時と比較して減少する。
【0072】
図7のラインIN1,EX2に示されるように、少量リフトされて開弁状態となった排気バルブ130が再び閉弁状態となった後も吸気バルブ120は、下死点(BDC)後においても開弁状態が所定期間維持される。この期間においては、図7のラインLN5に示されるように、排気バルブ130から筒内に導入された高温の排気ガスにより筒内圧が増加してインテークマニホールド106の圧力に近づいた場合に、筒内に導入されたガス(新気及びEGRガス)の吸気ポート側への逆流が発生してしまうことがある。このような筒内に導入されたガスの吸気ポートへの逆流は、気筒102内のガスの充填効率を低下させることになるので、空燃比制御の実行時において目標の空燃比で燃焼を行なうことができず、排気ポテンシャルが悪化し、その結果、燃費が悪化してしまう。
【0073】
そこで、本実施の形態においては、制御装置200が、第3カム部材134aが選択される場合に、吸気バルブ120の閉じタイミングを第1タイミングに変更するように第1カム部材124aを選択する。制御装置200は、第4カム部材134bが選択される場合に、吸気バルブ120の閉じタイミングが第1タイミングよりも早く吸気バルブ120が閉じる第2タイミングに変更するように第2カム部材124bを選択する。
【0074】
このようにすると、逆流量の増加を抑制することができる。そのため、気筒102筒内のガスの充填効率の低下を抑制することができる。
【0075】
以下の説明において第1カム部材124aを「通常吸気カム」と記載し、第2カム部材124bを「進角カム」と記載する場合がある。
【0076】
図8に、本実施の形態に係るエンジン100の動作を制御する制御装置200で実行される制御処理を示すフローチャートを示す。制御装置200は、図8に示す制御処理を所定の時間間隔毎に実行する。
【0077】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御装置200は、2段カム使用時であるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、エンジン100の運転領域が図5で示された予め定められた運転領域内である場合に、2段カム使用時であると判定する。2段カム使用時であると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
【0078】
S102にて、制御装置200は、2段カムを選択する。すなわち、制御装置200は、アクチュエータ136を用いて第4カム部材134bを選択する。
【0079】
S104にて、制御装置200は、進角カムを選択する。すなわち、制御装置200は、アクチュエータ126を用いて第2カム部材124bを選択する。
【0080】
S100にて、2段カム使用時でないと判定される場合(S100にてNO)、S106にて、制御装置200は、通常排気カムを選択する。すなわち、制御装置200は、アクチュエータ136を用いて第3カム部材134aを選択する。
【0081】
S108にて、制御装置200は、通常吸気カムを選択する。すなわち、制御装置200は、アクチュエータ126を用いて第1カム部材124aを選択する。
【0082】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係るエンジン100の制御装置200の動作について図9を用いて説明する。なお、図9のラインLN1,IN1、EX1およびEX2は、図7のラインLN1,IN1、EX1およびEX2と同様に、それぞれ、インマニ圧、吸気バルブ120のリフト量、排気バルブ130のリフト量、2段カム使用時の吸気行程における排気バルブ130のリフト量の変化を示す。
【0083】
図9の破線のラインLN4は、2段カムおよび通常吸気カムが選択された場合の筒内圧の変化を示し、図7のラインLN4と同様である。図9の破線のラインLN5は、2段カムおよび通常吸気カムが選択された場合の吸気ポート108から気筒102内への気体の流量を示し、図7のラインLN5と同様である。図9のラインLN6は、2段カムおよび進角カムが選択された場合の筒内圧の変化を示す。図9の一点鎖線のラインLN7は、2段カムおよび進角カムが選択された場合の吸気ポート108から気筒102内への気体の流量を示す。図9の破線のラインIN2は、進角カムが選択された場合の吸気バルブ120のリフト量の変化を示す。
【0084】
図9のラインEX2に示すように、吸気行程において排気バルブ130が開弁状態になると、排気ポート110から気筒102へと排気ガスが流入するため、図9のラインLN6に示すように、2段カム非使用時と比較して筒内圧が上昇する。その結果、インマニ圧と筒内圧との差圧が縮小することにより、図9のラインLN7に示すように、下死点(BDC)に直前における吸気ポート108から気筒102内への流量が2段カム非使用時と比較して減少する。
【0085】
さらに、図9のラインIN2に示されるように、進角カムが選択される場合、通常カムが選択される場合(ラインIN1)よりも吸気バルブ120が早く開く。吸気バルブ120が早く開くことにより、図9のラインLN6に示されるように、通常カムおよび2段カムが選択される場合よりも(図9のラインLN4)、早いタイミングで筒内圧が低下する。
【0086】
さらに、図9のラインIN2に示されるように、進角カムが選択される場合、通常カムが選択される場合(ラインIN1)よりも吸気バルブ120が早く閉じる。吸気バルブ120が早く閉じることにより、図9のラインLN7に示されるように、気筒102内の気体が吸気ポート108に逆流することが抑制される。そのため、通常吸気カムおよび2段カムが選択される場合の流量(図9のラインLN5)と比較して、逆流する気体の流量の増加が抑制される。
【0087】
以上のようにして、本実施の形態に係るエンジン100によると、2段カムが選択される場合に進角カムが選択されることによって通常吸気カムが選択される場合に吸気バルブ120が閉じるタイミングよりも早く吸気バルブ120を閉じることができる。そのため、吸気行程において排気バルブ130が開弁状態になることによって、排気ガスが気筒102内に流通して筒内圧が上昇する場合にも、吸気バルブ120の閉じるタイミングを早めて気筒102内のガスが吸気ポート108に逆流することを抑制することができる。その結果、気筒102内のガスの充填効率の低下を抑制することができる。これにより、たとえば、空燃比制御の実行時において空燃比を目標の空燃比に制御することができるため、燃費の悪化を抑制することができる。したがって、吸気行程の後半において排気バルブを開弁状態にする場合に気筒内のガスの充填効率の低下を抑制するエンジンを提供することができる。
【0088】
以下、変形例について説明する。
本実施の形態においては、2段カム使用時に(すなわち、エンジン100の運転領域が予め定められた運転領域である場合に)進角カムを選択するものとして説明したが、2段カムを選択する場合でも、吸気行程(たとえば、上死点から下死点まで)におけるインマニ圧と筒内圧との差分(すなわち、インマニ圧を示す値から筒内圧を示す値を減算した値)大きさの積算値がしきい値以上であるときには通常吸気カムを選択し、積算値がしきい値よりも小さいときには進角カムを選択してもよい。
【0089】
図10は、インマニ圧と筒内圧との差分の大きさの積算値の算出方法を説明するための図である。なお、図10のラインLN1,LN4,LN5,IN1,EX1およびEX2は、図7のラインLN1,LN4,LN5,IN1,EX1およびEX2と同様で、それぞれ、インマニ圧、筒内圧、空気の流量、吸気バルブ120のリフト量、排気行程における排気バルブ130のリフト量および吸気行程における排気バルブ130のリフト量の変化を示す。
【0090】
制御装置200は、たとえば、上死点(TDC)から下死点(BDC)までの期間において、予め定められたクランク角毎に筒内圧とインマニ圧との差分の大きさ(絶対値)を算出する。制御装置200は、算出された差分の大きさと予め定められたクランク角とを乗算した値の合計値(図10のラインLN1とラインLN4とで囲まれた斜線部分の面積)を算出する。制御装置200は、算出された合計値がしきい値よりも小さい場合に、次回以降の燃焼サイクルで進角カムを選択する。制御装置200は、算出された合計値がしきい値以上の場合には、通常吸気カムを選択する。なお、制御装置200は、たとえば、吸気バルブ120が開いてから閉じるまでの期間における合計値を算出してもよい。
【0091】
このようにすると、2段カム使用時において気筒102内のガスの充填効率が低下する可能性があるエンジン100の運転状態のときに進角カムを選択することによって気筒102内のガスの充填効率の低下を抑制することができる。
【0092】
さらに、本実施の形態においては、2段カム使用時に(すなわち、エンジン100の運転領域が合予め定められた運転領域である場合に)進角側のカムを選択するものとして説明したが、2段カムを選択する場合でも、下死点(BDC)におけるインマニ圧と筒内圧との差分(すなわち、インマニ圧を示す値から筒内圧を示す値を減算した値)の大きさがしきい値以上のときには通常吸気カムを選択し、2段カムを選択する場合に差分の大きさがしきい値よりも小さいときには進角カムを選択してもよい。
【0093】
図11は、インマニ圧と筒内圧との差分の大きさの算出方法を説明するための図である。なお、図11のラインLN1,LN4,LN5,IN1,EX1,EX2は、図7のラインLN1,LN4,LN5,IN1,EX1およびEX2と同様で、それぞれ、インマニ圧、筒内圧、空気の流量、吸気バルブ120のリフト量、排気行程における排気バルブ130のリフト量および吸気行程における排気バルブ130のリフト量の変化を示す。
【0094】
制御装置200は、たとえば、吸気行程後半の下死点(BDC)においてインマニ圧と筒内圧との差分の大きさを算出する。制御装置200は、算出された差分の大きさがしきい値よりも小さい場合に、次回以降の燃焼サイクルで進角カムを選択する。制御装置200は、算出された差分の大きさがしきい値以上の場合には、通常吸気カムを選択する。
【0095】
このようにすると、2段カム使用時において気筒102内のガスの充填効率が低下する可能性があるエンジン100の運転状態のときに進角カムを選択することによって気筒102内のガスの充填効率の低下を抑制することができる。
【0096】
また、本実施の形態においては、第1動弁機構150および第2動弁機構160として、ロッカーアームを用いた構成を一例として説明したが、特にロッカーアームを用いた構成に限定されるものではない。第1動弁機構150および第2動弁機構160は、たとえば、カムが直接吸気バルブ120や排気バルブ130のタペット133を押す構成であってもよい。
【0097】
本実施の形態においては、進角カムを選択することで通常吸気カムが選択される場合よりも吸気バルブ120を早く閉じるものとして説明したが、吸気バルブ120の閉じタイミングを変更する構成としては、特に、進角カムと通常吸気カムとのうちのいずれかを選択する構成に限定されるものではない。
【0098】
たとえば、2段カム使用時に、吸気バルブ120の開閉時期を変更するバルブタイミング可変機構を用いることによって吸気バルブ120の閉じタイミングを早めるようにしてもよい。
【0099】
バルブタイミング可変機構は、たとえば、吸気バルブ120のカムシャフト125とクランクシャフトとの回転位相を変化させることにより、リフト量を維持しつつ、吸気バルブ120の開閉タイミングを変更する機構である。
【0100】
カムシャフト125,135の一方端の各々には、カムスプロケットが設けられる。双方のカムスプロケットには同じタイミングチェーンが巻きかけられる。タイミングチェーンは、クランクシャフトに設けられるタイミングロータにも巻きかけられる。このような構成によってクランクシャフトとカムシャフト125,135は、同期して回転する。
【0101】
バルブタイミング可変機構は、カムシャフト125とカムスプロケットとの回転位相を電動式または油圧式のアクチュエータを用いて変化させる。制御装置200は、当該アクチュエータを制御することにより吸気バルブ120の開閉タイミングを変化させる。
【0102】
2段カム使用時に、このようなバルブタイミング可変機構を用いて吸気バルブ120の開閉タイミングを進角する(開閉タイミングを早める)ことにより、吸気行程の後半において気筒102内のガスが吸気ポート108に逆流することを抑制することができる。
【0103】
あるいは、たとえば、2段カム使用時に、吸気バルブ120のリフト量を変更するリフト量可変機構を用いることによって吸気バルブ120の閉じタイミングを早めるようにしてもよい。
【0104】
リフト量可変機構は、たとえば、電動式または油圧式のアクチュエータを用いて、吸気カムとロッカーアームとの当接位置を変更したり、ロッカーアームのレバー比を変更したりする機構である。制御装置200は、当該アクチュエータを制御することにより吸気バルブ120のリフト量を変化させる。
【0105】
2段カム使用時に、このようなリフト量可変機構を用いて吸気バルブ120のリフト量を減少させることにより、吸気バルブ120の閉じタイミングを早めることができる。そのため、吸気行程の後半において気筒102内のガスが吸気ポート108に逆流することを抑制することができる。
【0106】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
100 エンジン、102 気筒、104 ピストン、106 インテークマニホールド、108 吸気ポート、110 排気ポート、120 吸気バルブ、121,131 バルブスプリング、122,132 ロッカーアーム、124,134 カム、124a,124b,134a,134b カム部材、125,135 カムシャフト、126,136 アクチュエータ、130 排気バルブ、132a ベース部、132b,132c アーム部材、132d,132e 貫通孔、132f ベース支持部材、134c,136a,136b 突起部、150,160 動弁機構、200 制御装置、300,400 圧力センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11