(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜
図4を参照して、排気浄化装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、エンジンシステムは、ディーゼルエンジン10(以下、エンジン10という。)を備える。シリンダーブロック11に形成された複数のシリンダー12には、インジェクター13から燃料が噴射される。シリンダーブロック11には、インテークマニホールド14とエキゾーストマニホールド15とが接続されている。
【0015】
インテークマニホールド14に接続される吸気通路16には、上流側から順に、図示されないエアクリーナー、ターボチャージャー17を構成するコンプレッサー18、インタークーラー19が設けられている。エキゾーストマニホールド15に接続される排気通路20には、ターボチャージャー17を構成するタービン22が設けられている。
【0016】
エキゾーストマニホールド15と吸気通路16とを接続するEGR通路25には、EGRクーラー26とEGR弁27とが設けられている。EGR弁27が開状態にあるとき、シリンダー12には、EGRガスと吸入空気との混合気体が作動ガスとして供給される。
【0017】
シリンダー12では、作動ガスとインジェクター13が噴射した燃料との混合気が燃焼する。シリンダー12からの排気ガスは、エキゾーストマニホールド15を通じて排気通路20へと流入し、タービン22を通過した後、排気浄化装置30に流入する。
【0018】
排気浄化装置30は、第1収容部20Aに収容された第1浄化部31と、第2収容部20Bに収容された第2浄化部35と、第1浄化部31および第2浄化部35に流入する排気ガスに対して個別に還元剤を供給する還元剤供給系40とを備える。
【0019】
第1浄化部31は、第1選択還元型触媒32と第1選択還元型触媒32の下流に位置する第2選択還元型触媒33とを備える。第1および第2選択還元型触媒32,33は、後述する第2浄化部35を構成する第3選択還元型触媒36よりも広い活性温度域を有するとともに該活性温度域に第3選択還元型触媒36の活性温度域よりも高い温度域を含んでいる。第1浄化部31を収容する第1収容部20Aは、排気通路20の途中に設けられている拡径部であり、シリンダーブロック11と隣り合う位置に位置している。
【0020】
第1選択還元型触媒32は、燃料(炭化水素)を還元剤に用いてNOxを還元するとともに、NOxを還元する反応においてNH
3(アンモニア)を生成する。第1選択還元型触媒32は、セラミックあるいは金属からなるフロースルー型のモノリス担体と、このモノリス担体にコーティングされた触媒層とを有する。第1選択還元型触媒32は、触媒層に銀アルミナあるいは銀ゼオライトを含む銀系触媒である。第1選択還元型触媒32は、第1下限温度(例えば200℃)以上であって第1上限温度(例えば650℃)以下の比較的高い温度範囲を活性温度域として有する。なお、第1選択還元型触媒32では、燃料の酸化反応よりも燃料によるNOxの還元反応が優先して進行する。
【0021】
第2選択還元型触媒33は、第1選択還元型触媒32で生成されたNH
3を還元剤に用いてNOxを還元する。第2選択還元型触媒33は、セラミックあるいは金属からなるフロースルー型のモノリス担体と、このモノリス担体にコーティングされた触媒層とを有する。第2選択還元型触媒33には、触媒層に鉄ゼオライトを含む鉄系触媒、触媒層に銅ゼオライトを含む銅系触媒、触媒層にバナジウム系酸化物を含むバナジウム系触媒が挙げられる。第2選択還元型触媒33は、第2下限温度(例えば200℃)以上であって第2上限温度(例えば650℃)以下の比較的高い温度範囲を活性温度域として有する。
【0022】
第2浄化部35は、第3選択還元型触媒36と、第3選択還元型触媒36の下流に位置するDPF37(Diesel Particulate Filter)とを備える。第2浄化部35を収容する第2収容部20Bは、第1収容部20Aとの間に縮径部が介在するかたちで排気通路20の途中に設けられた拡径部であり、第1収容部20Aよりも大きな容積を有する。
【0023】
第3選択還元型触媒36は、排気ガス中の燃料を還元剤に用いてNOxを還元するNOx還元機能を有する。また、第3選択還元型触媒36は、排気ガス中の燃料を酸化して排気ガスを昇温する機能、排気ガス中のNOを酸化してNO
2を生成する機能、および、第2選択還元型触媒33を通過したNH
3を酸化してNO
2(二酸化窒素)を生成する機能を有する。第3選択還元型触媒36は第1および第2選択還元型触媒32,33よりも強い酸化力を有し、上述した酸化反応がNOxの還元反応よりも優先して進行する。第3選択還元型触媒36は、セラミックあるいは金属からなるフロースルー型のモノリス担体と、このモノリス担体にコーティングされた触媒層とを有する。触媒層は、例えばゼオライトやアルミナからなる粒子状の触媒担体と、触媒担体に担持された触媒金属とを有する。触媒金属は、例えば白金、パラジウム、および、ロジウム等の白金系元素のうちの少なくとも1種である。このように第3選択還元型触媒36は、白金系触媒であり、第3下限温度(例えば150℃)以上であって第3上限温度(例えば350℃)以下の比較的低い温度範囲を活性温度域に有する。すなわち、第3選択還元型触媒36は、第1および第2選択還元型触媒32,33の活性温度域よりも低い温度範囲を活性温度域に有する。
【0024】
DPF37は、排気ガス中の粒子状物質(以下、PM(Particulate Matter)という)を捕捉する。DPF37は、例えば耐熱性に優れたセラミックやステンレスを素材としたウォールフロー型のフィルターであり、再生温度Tfr(例えば600℃)まで昇温するとPMが焼却されてフィルター機能が再生する。なお、第1および第2選択還元型触媒32,33の総容積は、第3選択還元型触媒36およびDPF37の総容積よりも小さい。
【0025】
還元剤供給系40は、燃料が流れる供給通路42と、第1添加部として機能する第1添加弁51と、第2添加部として機能する第2添加弁52とを備える。第1添加弁51は、タービン22の下流であって、かつ、第1浄化部31の上流に位置し、第2添加弁52は、第1浄化部31の下流であって、かつ、第2浄化部35の上流に位置する。
【0026】
供給通路42は、燃料タンク41に接続された共通通路43と、分岐部44にて共通通路43から分岐した第1分岐通路45および第2分岐通路46とで構成されている。なお、燃料タンク41は、インジェクター13が噴射する燃料を貯留する燃料タンクであってもよいし、該燃料タンクとは別個に設けられる燃料タンクであってもよい。
【0027】
共通通路43には、エンジンを動力源とするポンプ47が配設されている。ポンプ47は、余剰燃料を還流するリリーフ機構を内蔵し、燃料タンク41内の燃料を分岐部44に向けて所定圧力で圧送する。分岐部44に向けて圧送された燃料は、分岐部44と第1添加弁51とを接続する第1分岐通路45を通じて第1添加弁51に圧送され、分岐部44と第2添加弁52とを接続する第2分岐通路46を通じて第2添加弁52に圧送される。
【0028】
また、共通通路43は、ポンプ47の下流であって、かつ、分岐部44の上流に、共通通路43を開閉する電子制御式の遮断弁48を備える。遮断弁48は、開状態においてポンプ47から分岐部44への燃料の流通を許可し、閉状態においてポンプ47から分岐部44への燃料の流通を遮断する。
【0029】
第1添加弁51は、弁機構を内蔵した電子制御式の噴射弁であり、弁機構が開状態にあるときに第1添加部として排気通路20に燃料を噴射する。また、第2添加弁52は、弁機構を内蔵した電子制御式の噴射弁であり、弁機構が開状態にあるときに第2添加部として排気通路20に燃料を噴射する。
【0030】
排気浄化装置30は、各種センサーを備える。排気浄化装置30は、吸気通路16におけるコンプレッサー18の上流に、吸入空気量を検出する吸入空気量センサー55を備える。排気浄化装置30は、排気ガスの温度を検出する温度センサー56,57を備える。温度センサー56は、第1添加弁51と第1選択還元型触媒32との間に位置し、第1浄化部31に流入する排気ガスの温度である第1排気温度を検出する。温度センサー57は、第2添加弁52と第3選択還元型触媒36との間に位置し、第2浄化部35に流入する排気ガスの温度である第2排気温度を検出する。
【0031】
排気浄化装置30は、排気ガスのNOx濃度を検出するNOxセンサー62,63を備える。NOxセンサー62は、第1添加弁51と第1選択還元型触媒32との間に位置し、第1浄化部31に流入する排気ガスのNOx濃度である第1NOx濃度を検出する。NOxセンサー63は、第2選択還元型触媒33と第2添加弁52との間に位置し、第2浄化部35に流入する排気ガスのNOx濃度である第2NOx濃度を検出する。
【0032】
この他、排気浄化装置30は、例えば、クランク角を検出するクランク角センサー64を備える(
図2参照)。各種センサーは、排気浄化装置30を統括制御する制御装置70に検出値を示す信号を出力する。
【0033】
図2に示すように、制御装置70は、CPUと、各種制御プログラムおよび各触媒の活性温度域等の各種データが格納されたROMと、各種演算における演算結果や各種データが一時的に格納されるRAMとを有するマイクロコンピューターを中心に構成される。制御装置70は、各種センサー等からの信号に基づいて取得した各種情報とROMに格納された各種制御プログラムや各種データとに基づき、排気ガスに対する燃料の添加を制御する。制御装置70は、第1添加弁51による燃料の添加、第2添加弁52による燃料の添加、および、インジェクター13のポスト噴射による燃料の添加などを制御する。なお、制御装置70は、吸入空気量を排気流量として扱う。
【0034】
制御装置70は、第1添加弁51による燃料の添加を制御する。制御装置70は、温度センサー56から第1排気温度を取得し、第1排気温度が第1添加温度であるときに第1添加弁51から燃料を添加する。第1添加温度は、第1および第2選択還元型触媒32,33が活性状態にあると判断される第1排気温度である。制御装置70は、吸入空気量と第1NOx濃度とに基づき第1NOx量を演算する。制御装置70は、第1NOx量と第1排気温度とに基づき、第1および第2選択還元型触媒32,33におけるNOxの還元量が最大となる第1添加量を演算する。そして、制御装置70は、第1添加量の分の燃料が排気ガスに添加されるように第1添加弁51の開閉を制御する。
【0035】
制御装置70は、第2添加弁52による燃料の添加を制御する。制御装置70は、温度センサー57から第2排気温度を取得し、第2排気温度が第2添加温度であるときに第2添加弁52から燃料を添加する。第2添加温度は、第3選択還元型触媒36が活性状態にあると判断される第2排気温度である。制御装置70は、吸入空気量および第2NOx濃度に基づき第2NOx量を演算する。制御装置70は、第2NOx量と第2排気温度とに基づき、第3選択還元型触媒36におけるNOxの還元量が最大となる第2添加量を演算する。そして、制御装置70は、第2添加量の分の燃料が排気ガスに添加されるように第2添加弁52の開閉を制御する。
【0036】
また、制御装置70は、DPF37のフィルター機能を再生する再生処理において、第2添加弁52による燃料の添加を行う。第2添加弁52の添加した燃料は、第3選択還元型触媒36で酸化されてDPF37に流入する排気ガスを昇温する。制御装置70は、DPF37に流入する排気ガスの流入温度がDPF37の再生温度Tfrを示す目標値となる再生添加量を演算する。そして、制御装置70は、再生添加量の分の燃料が排気ガスに添加されるように第2添加弁52の開閉を制御する。
【0037】
制御装置70は、遮断弁48の開閉を制御する。制御装置70は、エンジン10が始動すると遮断弁48を開状態に制御し、エンジン10が停止すると遮断弁48を閉状態に制御する。また制御装置70は、例えば、第1分岐通路45における圧力の変化と第2分岐通路46における圧力の変化とに基づく自己故障診断(OBD:On−Board Diagnostics)により還元剤供給系40における異常の有無を取得する。そして制御装置70は、例えば第1および第2分岐通路45,46のいずれかについての異常を取得した場合や第1および第2添加弁51,52の双方について異常を取得した場合に遮断弁48を閉状態に制御する。
【0038】
制御装置70は、インジェクター13によるポスト噴射を制御する。制御装置70は、クランク角センサー64からクランク角を取得し、第1添加部による燃料の添加として燃焼サイクルの膨張行程後半にインジェクター13から燃料を噴射する。
【0039】
ポスト噴射は、例えば、自己故障診断により還元剤供給系40の第1添加弁51について異常を取得した場合に、第1添加弁51に代えて排気ガスに燃料を添加するために行われる。この際、制御装置70は、吸入空気量と第1NOx濃度とに基づき第1NOx量を演算し、該第1NOx量と第1排気温度とに基づき、第1および第2選択還元型触媒32,33におけるNOxの還元量が最大となるポスト噴射量を演算する。制御装置70は、ポスト噴射量の分の燃料が排気ガスに添加されるようにインジェクター13を駆動する。
【0040】
また、ポスト噴射は、例えば、自己故障診断により還元剤供給系40について遮断弁48が閉状態に制御される異常を取得した場合に、第1および第2添加弁51,52に代えて排気ガスに燃料を添加するために行われる。こうした場合のポスト噴射量は、第1および第2選択還元型触媒32,33、ならびに、第3選択還元型触媒36におけるNOxの還元量が最大となるような燃料量である。制御装置70は、第1NOx量、第1排気温度、および、第2排気温度に基づきポスト噴射量を演算する。ポスト噴射により排気ガスに添加された燃料は、第1および第2選択還元型触媒32,33にて反応しきれなかった分が第3選択還元型触媒36へと供給される。
【0041】
図3および
図4を参照して排気浄化装置30の作用について説明する。
図3は、実施例である排気浄化装置30と、上記第2浄化部35の下流に上記第1浄化部31が位置する比較例の排気浄化装置とについて、所定の試験サイクル(WHTC:ホットスタート)において第1選択還元型触媒32に流入する排気ガスの平均温度を比較した結果の一例を示すグラフである。
図3に示すように、第1選択還元型触媒32に流入する排気ガスの平均温度は、比較例では約215℃であり、実施例では約250℃であった。すなわち、比較例よりも実施例が約35℃高いことが認められた。こうした平均温度の違いは、ホットスタートよりもコールドスタートのときにより顕著なものとなる。
【0042】
このように、実施例の排気浄化装置30では、比較例の排気浄化装置に比べて、第1浄化部31に対してより温度の高い排気ガスが流入する。そのため、NOxの還元反応が優先して進行する第1選択還元型触媒32、および、第1選択還元型触媒32で生成されるNH
3を還元剤としてNOxを還元する第2選択還元型触媒33、これらが早期に活性状態に到達するとともに活性状態に維持されやすくなる。
【0043】
図4は、比較例の排気浄化装置と実施例の排気浄化装置30とについて、所定の試験サイクル(WHTC:ホットスタート)におけるNOx浄化率を比較した結果の一例を示すグラフである。
図4に示すように、実施例の排気浄化装置30は、比較例の排気浄化装置よりもNOx浄化率が約15%程度向上することが確認された。こうしたNOx浄化率の違いは、ホットスタートよりもコールドスタートのときにより顕著なものとなる。
【0044】
上記実施形態の排気浄化装置30によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)排気浄化装置30においては、第1および第2選択還元型触媒32,33がエンジン10に近い位置に配置される。そのため、第3選択還元型触媒36よりも活性温度域が高く、かつ、活性温度域の広い第1および第2選択還元型触媒32,33に流入する排気ガスの温度が高くなる。これにより、第1および第2選択還元型触媒32,33が早期に活性状態に到達するとともに活性状態に維持されやすくなる。その結果、NOxの浄化性能を向上させることができる。
【0045】
(2)第1選択還元型触媒32に流入する排気ガスの温度が高くなることから、第1添加弁51から添加された燃料が排気ガス中に拡散しやすくなる。そのため、第1選択還元型触媒32に流入する排気ガスにおける燃料分布の偏りが抑えられることから、第1添加弁51に近い位置、すなわちエンジン10により近い位置に第1選択還元型触媒32を配置することができる。これにより、第1選択還元型触媒32に流入するまでの間における排気ガスの温度低下を抑えることができる。
【0046】
(3)ポスト噴射においては、燃焼直後の排気ガスに対して燃料が添加されることで排気ガス中に気化燃料が多くなる。これにより、排気ガス中で燃料が拡散しやすくなることから、燃料分布の均一化された排気ガスを第1選択還元型触媒32に流入させることができる。その結果、第1選択還元型触媒32におけるNOxの還元を効率よく行うことができる。また、排気通路20に対する燃料の付着も抑えられる。
【0047】
(4)ポスト噴射による燃料の添加においては、エンジンオイルやEGRガスに対して燃料が混入してしまうおそれがある。この点、排気浄化装置30では、第1添加弁51が異常である場合にポスト噴射が行われる。そのため、エンジンオイルやEGRガスに対する燃料の混入を抑えつつ、排気ガスに燃料を添加することができる。また、排気ガスへの燃料の添加に起因したインジェクター13の劣化を抑えることができる。
【0048】
(5)ここで、炭化水素によるNOxの還元反応は、NO(一酸化窒素)とNO
2とのモル比が1:1である反応式において反応速度が最も速くなる。しかしながら、シリンダー12から流出した直後の排気ガス中のNOxは、NOが大部分でありNO
2は僅かである。この点、上述した排気浄化装置30では、第3選択還元型触媒36においては、排気ガス中のNOがNO
2に酸化されることに加えて、第2選択還元型触媒33で消費されなかったNH
3が酸化されることによりさらにNO
2が生成される。これにより、排気ガス中のNO
2が増えることから、第3選択還元型触媒36におけるNOxの浄化を効率よく行うことができる。
【0049】
また、このNO
2が第3選択還元型触媒36を通過したとしてもDPF37に流入する。そのため、DPF37の捕捉したPMがNO
2によって連続的に酸化されることで、DPF37が清浄な状態に維持されやすくなる。
【0050】
(6)第1および第2選択還元型触媒32,33の総容積である第1浄化部31の容積は、第3選択還元型触媒36およびDPF37の総容積である第2浄化部35の容積よりも小さい。そのため、第1浄化部31の設置位置に関する自由度が高く、シリンダーブロック11と隣り合う位置、すなわち排気通路20の最上流部に第1浄化部31を設置することが可能である。これにより、タービン22の排出口により近い位置、例えば当該排出口から150mm〜200mm下流側に第1浄化部31の導入口を配設することができる。すなわち、第1浄化部31の設置位置に関する自由度が高いことで、第1浄化部31までの排気ガスの流通経路を短くすることが可能である。その結果、第1浄化部31に流入するまでの間における排気ガスの温度低下を抑えることができる。
【0051】
また、排気通路20のより上流側の位置に第1浄化部31が設置可能であることから、第2浄化部35の設置位置についての自由度も向上する。その結果、車両に対する排気浄化装置30の搭載性を向上させることができる。
【0052】
(7)第1および第2選択還元型触媒32,33がフロースルー型の構造を有することから、第1および第2選択還元型触媒32,33に対するPMの付着が抑えられる。
(8)第3選択還元型触媒36において、排気ガスは、NH
3の酸化にともない昇温する。NH
3は、燃料の主成分である炭化水素よりも標準燃焼熱が小さい。そのため、NH
3の酸化にともなう排気ガスの昇温は、炭化水素の酸化にともなう排気ガスの昇温よりも穏やかである。そのため、第3選択還元型触媒36に流入する排気ガス中の燃料量を抑えつつNH
3量を調整することにより、DPF37の昇温をより細かく制御することができる。これにより、DPF37の急激な温度上昇が抑えられることから、DPF37の過熱を抑えることができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・制御装置70は、自己故障診断に限らず、還元剤供給系40における異常の有無を判定する異常判定装置から入力される信号に基づいて、第1添加弁51による燃料の添加についての異常の有無を取得してもよい。
【0054】
・排気浄化装置30では、第1添加弁51が正常であるときにポスト噴射による燃料の添加を行ってもよい。こうした構成によれば、例えば、ポスト噴射および第1添加弁51の双方を用いて燃料を添加することにより、第1選択還元型触媒32に供給可能な燃料量についての自由度が向上する。また、例えば、排気ガスの温度が低く排気ガス中において燃料が拡散しにくいときにはポスト噴射で燃料を添加したり、排気ガスの温度が高く排気ガス中において燃料が拡散しやすいときには添加弁から燃料を添加したりすることもできる。すなわち、エンジン10の運転状態に応じて排気ガスへの燃料の添加方法を選択することもできる。
【0055】
・制御装置70は、例えば、アクセル開度を検出するアクセル開度センサーからの信号を取得し、吸入空気量、アクセル開度、および、クランク角に基づくエンジン回転数等をパラメーターに含むモデルに基づき第1NOx量を演算してもよい。こうした構成によれば、NOxセンサー62を割愛することが可能であることから、排気浄化装置30の構成を簡素化することができる。また、ポスト噴射によって排気ガスに燃料が添加される場合には、シリンダー12から排出される排気ガス、すなわちポスト噴射が行われる位置により近い位置を流れる排気ガスのNOx量を演算することができる。これにより、NOxセンサー62の検出値に基づいてポスト噴射量を演算する場合に比べて排気ガスに対する燃料の添加量についての精度が高まる。
【0056】
・また、制御装置70は、例えば、吸入空気量、アクセル開度、クランク角に基づくエンジン回転数、および、第1排気温度等をパラメーターに含むモデルに基づき第2NOx量を演算してもよい。すなわち、制御装置70は、上記モデルに基づく第1NOx量から、第1排気温度に基づく第1および第2選択還元型触媒32,33におけるNOx還元量を減算することにより第2NOx量を演算してもよい。こうした構成によれば、NOxセンサー62,63を割愛することが可能であることから、排気浄化装置30の構成をさらに簡素化することができる。
【0057】
・第1添加部は、インジェクター13によるポスト噴射のみによって排気ガスに燃料を添加するように構成されていてもよい。こうした構成によれば、燃料分布の均一化された排気ガスを第1選択還元型触媒32に流入させることができることに加えて、排気通路20の低温時にも該排気通路20に対する燃料の付着を抑えることができる。また、第1添加弁51が不要となることで還元剤供給系40、ひいては排気浄化装置30の構成を簡素化することもできる。
【0058】
・第1添加部は、第1添加弁51のみで排気ガスに燃料を添加するように構成されていてもよい。こうした構成によれば、エンジンオイルやEGRガスに対する燃料の混入が確実に抑えられる。
【0059】
・NOxを浄化するうえでは、DPF37は割愛されてもよい。また、NOxの浄化性能を向上させるうえでは、DPF37の表層は、例えば第3選択還元型触媒36を通過した燃料を還元剤としてNOxを浄化する触媒層を備えていてもよい。この触媒層は、第3選択還元型触媒36において燃料の一部が酸化されることから、第3選択還元型触媒36よりも活性温度域が高い触媒層、例えば銀アルミナや銀ゼオライトを含む銀系の触媒層であることが好ましい。
【0060】
・排気浄化装置30は、DPF37の下流に、DPF37を通過した燃料やNH
3を酸化する酸化触媒を有していることが好ましい。この酸化触媒は、セラミックあるいは金属からなるフロースルー型のモノリス担体と、このモノリス担体にコーティングされた触媒層とを有する。触媒層は、例えば、ゼオライトやアルミナからなる粒子状の触媒担体と、触媒担体に担持された触媒金属とを有する。触媒金属は、例えば白金、パラジウム、および、ロジウム等の白金系元素のうちの少なくとも1種である。
【0061】
・第2選択還元型触媒は、第1選択還元型触媒32におけるNOxの還元により生成されたNH
3を還元剤に用いてNOxを還元する触媒であればよい。そのため、例えば
図5および
図6に示すような二層構造の触媒であってもよい。
【0062】
図5に示すように、第2選択還元型触媒75は、セラミックあるいは金属からなるフロースルー型のモノリス担体76と、モノリス担体76の表面に積層されたHC触媒層77と、HC触媒層77に積層されたNH
3触媒層78とを備える。
【0063】
HC触媒層77は、排気ガス中の燃料を還元剤に用いてNOxを還元する。HC触媒層77は、粒子状の触媒担体と触媒担体に担持された銅とを有する。触媒担体の形成材料は、多孔質構造を有するゼオライトである。このゼオライトは、炭化水素が進入可能な孔を有する多孔質材料である。HC触媒層77は、銅を担持させた粒子状の触媒担体をモノリス担体にコーティングして構成される。
【0064】
NH
3触媒層78は、第1選択還元型触媒32において生成されたNH
3を還元剤に用いてNOxを還元する。NH
3触媒層78は、粒子状の触媒担体と触媒担体に担持された銅とを有する。触媒担体の形成材料は、多孔質構造を有するゼオライトである。このゼオライトは、炭化水素の進入を拒む一方でNH
3の進入を許可する孔を有する多孔質材料である。NH
3触媒層78は、銅を担持させた粒子状の触媒担体をHC触媒層77が形成されたモノリス担体にコーティングして構成される。第2選択還元型触媒75は、第2下限温度(例えば200℃)以上であって第2上限温度(例えば600℃)以下を活性温度域に有する。
【0065】
図6に示すように、第2選択還元型触媒75では、NH
3がNH
3触媒層78を構成する触媒担体79の孔79hに進入する一方、HC(炭化水素)が触媒担体79の孔79hに進入しない。そのため、HCは、触媒担体79の粒子間の隙間80を通ってHC触媒層77に到達する。そして、HC触媒層77に到達したHCは、HC触媒層77を構成する触媒担体81の孔81h中に進入する。これにより、NH
3触媒層78では、孔79hに進入したNH
3を還元剤に用いてNOxが還元され、HC触媒層77では、孔81hに進入したHCを還元剤に用いてNOxが還元される。
【0066】
こうした構成によれば、第2選択還元型触媒75において、第1選択還元型触媒32にて生成されたNH
3に加えて、第1選択還元型触媒32を通過した燃料を還元剤としてNOxを還元することができる。
【0067】
・排気浄化装置30は、第1浄化部31の上流に排気ガスを昇温するバーナーを備えていてもよい。こうした構成によれば、バーナーが駆動されなくとも上記(1)に準ずる効果が得られるとともに、バーナーが駆動されることにより第1および第2選択還元型触媒32,33が活性状態に到達するまでの時間をさらに短縮することができる。