特許第6630036号(P6630036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6630036標的物の精製方法、及び、ミックスモード用担体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6630036
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】標的物の精製方法、及び、ミックスモード用担体
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/22 20060101AFI20200106BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20200106BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   C07K1/22
   C07K16/00
   B01J20/26 L
【請求項の数】11
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-200394(P2014-200394)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-69329(P2016-69329A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513133022
【氏名又は名称】JSRライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】津田 良
(72)【発明者】
【氏名】則信 智哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】廣木 孝典
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/034457(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/086660(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/085988(WO,A1)
【文献】 特表2010−507583(JP,A)
【文献】 特表2011−530606(JP,A)
【文献】 特表2012−506383(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/157415(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/071208(WO,A1)
【文献】 安陪穀由, 他7名,新規プロテインA担体:抗体結合容量に対する合成ポリマー構造設計の影響,JSR TECHNICAL REVIEW (2012) No.119, pp.1-5 [online], [検索日 2018年7月23日], インターネット <URL: http://www.jsr.co.jp/pdf/rd/tec119-1.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
B01J 20/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を含む基及び抗体アフィニティーリガンドを合成高分子支持体上に有し、前記酸性基として、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+(M+は対イオンを示す)及び−S(=O)2-から選ばれる1種又は2種以上を有し、且つ前記合成高分子支持体が(メタ)アクリレート系モノマー及び(メタ)アクリルアミド系モノマーから選ばれる1種以上のモノマーに由来するものであるミックスモード用担体と、抗体とを接触させる工程Aと、
前記抗体アフィニティーリガンドと前記抗体とを解離させる解離液と、前記工程Aで抗体を捕捉したミックスモード用担体とを接触させて抗体を解離させる工程Bと、を含み、
前記工程Bが、抗体アフィニティーリガンドから抗体が解離する条件下で、イオン強度が段階的に高くなる塩濃度を2種類以上使用するステップワイズ方式、又は勾配的に塩濃度を高くするグラジェント方式の少なくともいずれかで解離する工程であることを特徴とする、
抗体の精製方法。
【請求項2】
前記酸性基を含む基のpKaが、−3.0〜1.0である、請求項に記載の精製方法。
【請求項3】
前記酸性基を含む基が、式(1)で表される1価の基である、請求項に記載の精製方法。
【化1】
〔式(1)中、R1は、式(2)で表される2価の基を示し、Xは酸性基を示す。〕
【化2】
〔式(2)中、R2は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示し、Y1は、>S、>S=O、>S(=O)2、>NH、又は>Oを示し、*は、式(1)中のXとの結合位置を示す。〕
【請求項4】
1が、>S、>S=O、又は>S(=O)2である、請求項に記載の精製方法。
【請求項5】
前記酸性基を含む基の含有量が、ミックスモード用担体の表面積1m2あたり0.05μmol以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項6】
前記抗体アフィニティーリガンドが、イムノグロブリン結合タンパク質である、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項7】
前記抗体アフィニティーリガンドが、環状エーテル基が開環してなる基を介して前記合成高分子支持体表面上に結合している、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項8】
前記合成高分子支持体が、(M−1)エポキシ基含有モノビニル単量体に由来する構造単位を全構造単位に対し20質量部を超えて、99.5質量部以下、および(M−2)ポリビニル単量体に由来する構造単位を全構造単位に対し0.5〜80質量部を含む共重合体を含有する固相の支持体であり、前記エポキシ基含有モノビニル単量体が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート系モノビニル単量体であり、前記ポリビニル単量体が、(メタ)アクリレート系ポリビニル単量体である、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項9】
前記合成高分子支持体が、多孔質である、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項10】
前記合成高分子支持体が、粒子状、モノリス状、板状、繊維状又は膜状である、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項11】
合成高分子支持体上に酸性基を含む基及び抗体アフィニティーリガンドを有し、
前記酸性基として、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+(M+は対イオンを示す)及び−S(=O)2-から選ばれる1種又は2種以上を有し、
前記合成高分子支持体が(メタ)アクリレート系モノマー及び(メタ)アクリルアミド系モノマーから選ばれる1種以上のモノマーに由来するものであることを特徴とする、
ミックスモード用担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物の精製方法、及び、ミックスモード用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体医薬品の主成分であるモノクローナル抗体は、主に哺乳類培養細胞等を用いて組換え蛋白質として培養液中で発現させ、数段のクロマトグラフィーや膜工程により高純度に精製された後に製剤化されている。この培養、精製、製剤化の工程で形成又は残留する凝集体(2量体以上の多量体)が副作用の主要原因となるため、その低減が抗体医薬品生産の重要課題となっている。そのため、培養、精製、製剤化の各工程において、複雑な管理をすることや添加剤を使用することによって凝集体の生成抑制やその除去をする試みがなされてきた。特に精製工程では、凝集体の生成を抑制する他にその除去が重要である。よって、精製工程では、簡便で効率的な凝集体除去技術の開発が求められてきている。
【0003】
抗体医薬品の精製工程は、特定の単位操作の組み合わせによる精製手法のプラットフォーム化が進み、その精製工程では、アフィニティーリガンドとしてプロテインAが固定されたプロテインA担体が広く利用されている。中性条件下で抗体をプロテインA担体に吸着させ、酸性条件下で抗体を溶出させる手法が一般的に用いられているが、この溶出過程で酸性条件下に曝された抗体が変性しやすく凝集体が形成されやすい。一般的には、プロテインA担体による精製の後に、イオン交換クロマトグラフィーや疎水性相互作用クロマトグラフィー等の組み合わせにより、凝集体等の不純物が除去されている。しかしながら、プロテインA担体による精製後に凝集体含量が多い場合は、後段の不純物除去工程において、目的の抗体の単量体の収率低下に繋がることから、プロテインA担体による精製での凝集体形成を抑えようとする試みの他、更に、当該精製工程においても凝集体を除去する試みがなされている(特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/085988号公報
【特許文献2】特表2010−507583号公報
【特許文献3】国際公開第2010/019493号公報
【特許文献4】国際公開第2010/141039号公報
【特許文献5】国際公開第2014/034457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、HCPの除去性に優れ、抗体の単量体と凝集体との分離能に優れる標的物の精製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、下記の手段により解決された。
<1>酸性基を含む基及びアフィニティーリガンドを合成高分子支持体上に有するミックスモード用担体と、前記アフィニティーリガンドが捕捉しうる標的物とを接触させる工程Aと、前記アフィニティーリガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉したミックスモード用担体とを接触させて標的物を解離させる工程Bと、を含み、前記工程Bが、アフィニティーリガンドから標的物が解離する条件下で、イオン強度が段階的に高くなる塩濃度を2種類以上使用するステップワイズ方式、又は勾配的に塩濃度を高くするグラジェント方式の少なくともいずれかで解離する工程であることを特徴とする、標的物の精製方法。
<2>前記ミックスモード用担体が、前記酸性基として、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-、−O−P(=O)(OH)2、−O−P(=O)(O-+2、−O−P(=O)(O-2、−O−P(=O)(OH)(O-+)、及び−O−P(=O)(OH)(O-)(上記M+は、それぞれ対イオンを示す)から選ばれる1種又は2種以上を有する、<1>の精製方法。
<3>前記酸性基を含む基のpKaが、−3.0〜5.0である、<1>又は<2>の精製方法。
<4>前記酸性基を含む基の含有量が、ミックスモード用担体の表面積1m2あたり0.05μmol以上である、<1>〜<3>いずれかの精製方法。
<5>前記アフィニティーリガンドが、タンパク質、核酸、又はキレート化合物である、<1>〜<4>いずれかの精製方法。
<6>前記アフィニティーリガンドが、プロテインA、プロテインG、プロテインL、又はそれら類縁物質である、<1>〜<5>いずれかの精製方法。
<7>前記アフィニティーリガンドが、環状エーテル基が開環してなる基を介して前記合成高分子支持体表面上に結合している、<1>〜<6>いずれかの精製方法。
<8>前記合成高分子支持体が、(M−1)エポキシ基含有モノビニル単量体に由来する構造単位を全構造単位に対し20質量部を超えて、99.5質量部以下、および(M−2)ポリビニル単量体に由来する構造単位を全構造単位に対し0.5〜80質量部を含む共重合体を含有する固相の支持体である、<1>〜<7>いずれかの精製方法。
<9>前記合成高分子支持体が、多孔質である、<1>〜<8>いずれかの精製方法。
<10>前記合成高分子支持体が、粒子状、モノリス状、板状、繊維状又は膜状である、<1>〜<9>の精製方法。
<11>合成高分子支持体上に酸性基を含む基及びアフィニティーリガンドを有することを特徴とする、ミックスモード用担体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、HCPの除去性に優れ、抗体の単量体と凝集体との分離能に優れる標的物の精製方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の標的物の精製方法は、酸性基を含む基及びアフィニティーリガンドを合成高分子支持体上に有するミックスモード用担体と、前記アフィニティーリガンドが捕捉しうる標的物とを接触させる工程Aと、前記アフィニティーリガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉したミックスモード用担体とを接触させて標的物を解離させる工程Bと、を含み、前記工程Bが、アフィニティーリガンドから標的物が解離する条件下で、イオン強度が段階的に高くなる塩濃度を2種類以上使用するステップワイズ方式、又は勾配的に塩濃度を高くするグラジェント方式の少なくともいずれかで解離する工程であることを特徴とする。以下、まずは本発明のミックスモード用担体について説明し、その後に本発明の標的物の精製方法(以下、本発明の精製方法ともいう。)について説明する。なお、本明細書において、数値範囲を表すa〜b等の記載は、a以上、b以下と同義であり、a及びbを数値範囲内に含む。
【0009】
〔ミックスモード用担体〕
本発明のミックスモード用担体は、合成高分子支持体上に酸性基を含む基及びアフィニティーリガンドを有する。本発明の精製方法においては、酸性基を含む基は陽イオン交換基として機能する。本発明のミックスモード用担体は、アフィニティーリガンドと酸性基を含む基とが共に水不溶性の合成高分子支持体上に共有結合を介して固定されているミックスモード用のアフィニティー分離マトリックスであり、異なる分離機能を複合させて、各分離機能の協奏作用から優れた分離性(例えば、単量体の選択性、凝集体の除去性)を発揮することができる。特に本発明のミックスモード用担体は、凝集体との疎水性相互作用が多糖類系の支持体よりも強い合成高分子支持体を使用したことに特徴があり、かかる構成を採用することで、アフィニティー精製による作用、イオン交換基による作用だけでなく疎水性相互作用も発揮されることで多糖類系支持体よりも高い分離性能を発揮することができる。
【0010】
<合成高分子支持体>
本発明に用いることのできる合成高分子支持体は、水に不溶な基材であって、アフィニティーリガンドと酸性基を含む基とを固定できれば特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリ(メタ)アクリルアミド類、ポリスチレン類、エチレン−無水マレイン酸共重合物等で構成されるものが挙げられる。これらの中でも、合成高分子支持体の耐圧性の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリ(メタ)アクリレート類及びポリ(メタ)アクリルアミド類から選ばれる合成高分子で構成される支持体がより好ましく、ポリ(メタ)アクリレート類を主要成分とする支持体がさらに好ましい。
【0011】
本発明における合成高分子支持体は、単官能モノマーと多官能モノマーとの共重合体であることが好ましく、より具体的には合成高分子支持体は、(M−1)エポキシ基含有モノビニル単量体に由来する構造単位を全構造単位に対し20質量部を超えて、99.5質量部以下、および(M−2)ポリビニル単量体に由来する構造単位を全構造単位に対し0.5〜80質量部を含む共重合体を含有する固相の支持体であることがより好ましい。また、合成高分子支持体は、上記共重合体以外に、天然高分子や合成高分子などを含んでいてもよい。上記の単量体(M−1)、(M−2)の含有量が上記範囲となる共重合体を使用することで、耐圧性だけでなく、抗体の凝集体との疎水性相互作用が得られ、抗体の単量体と凝集体との分離性能に優れたミックスモード用担体が得られる。
【0012】
((M−1)エポキシ基含有モノビニル単量体に由来する構造単位)
エポキシ基含有モノビニル単量体は、1分子中に、1個の重合性ビニル基(エチレン性不飽和結合を有する基)と、1個以上のエポキシ基とを有する単量体である。エポキシ基含有モノビニル単量体は、固相担体に適切な量のエポキシ基を導入し、適切なリガンド結合量を得るための成分である。
【0013】
エポキシ基含有モノビニル単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリル−ω−グリシジルポリエチレングリコール等のヒドロキシ基非含有(メタ)アクリル酸エステル類;グリセリンモノ(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルベンジルグリシジルエーテル等の芳香族モノビニル化合物の他、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、エポキシ基含有モノビニル単量体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、エポキシ基含有芳香族モノビニル化合物が好ましく、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルがさらに好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、固相担体を順相懸濁重合により粒子状にする場合には、エポキシ基含有モノビニル単量体としては、開環エポキシ基量のコントロールが容易となることから水不溶性のものが好ましい。ここで水不溶性とは水100mLに対して室温(25℃)で10g以上は溶解しないことをいう。
エポキシ基含有モノビニル単量体は市販品を用いてもよく、公知の方法に従い合成して使用してもよい。
【0014】
エポキシ基含有モノビニル単量体に由来する構造単位の含有量は、全構造単位に対し20質量部を超えて、99.5質量部以下が好ましい。上記の範囲内であれば、親水性に優れ、機械的強度に優れた合成高分子支持体が得られる。エポキシ基含有モノビニル単量体に由来する構造単位の含有量は、全構造単位に対し、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上、特に好ましくは50質量部以上であり、また、全構造単位に対し、好ましくは95質量部以下、より好ましくは90質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。
【0015】
((M−2)ポリビニル単量体に由来する構造単位)
ポリビニル単量体は、1分子中に、2個以上の重合性ビニル基(エチレン性不飽和結合を有する基)を有するビニル単量体である。以下、当該ポリビニル単量体を、ヒドロキシ基非含有ポリビニル単量体と、ヒドロキシ基含有ポリビニル単量体とに分けて説明する。なお、ポリビニル単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
ヒドロキシ基非含有ポリビニル単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ジビニルベンゼンなどの芳香族ポリビニル化合物;ブタジエン、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリルなどのアリル化合物などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、ヒドロキシ基非含有ポリビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ポリビニル化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましい。
また、上記ヒドロキシ基非含有ポリビニル単量体に含まれる重合性ビニル基の個数としては、1分子中に、2〜5個が好ましく、2又は3個がより好ましい。
【0017】
ヒドロキシ基含有ポリビニル単量体としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、各種糖類の2置換以上の(メタ)アクリル酸エステル類、多価アルコールの(メタ)アクリルアミド類が好ましい。
多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類としては、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ブタントリオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、イノシトールジ(メタ)アクリレート、イノシトールトリ(メタ)アクリレート、イノシトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
各種糖類の2置換以上の(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、グルコースジ(メタ)アクリレート、グルコーストリ(メタ)アクリレート、グルコーステトラ(メタ)アクリレート、マンニトールジ(メタ)アクリレート、マンニトールトリ(メタ)アクリレート、マンニトールテトラ(メタ)アクリレート、マンニトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
さらに、ヒドロキシ基含有ポリビニル単量体としては、上記例示したものの他に、ジアミノプロパノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、グルコサミンなどのアミノアルコールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合反応物なども挙げることができる。
また、上記ヒドロキシ基含有ポリビニル単量体に含まれる重合性ビニル基の個数としては、1分子中に、2〜5個が好ましく、2又は3個がより好ましく、3個が特に好ましい。
【0018】
これらの中でも、ポリビニル単量体としては、比較的少量の使用で良好な多孔性と機械的強度が得られ、エポキシ基含有モノビニル単量体の使用量を制限することが少ないなどの観点から、ヒドロキシ基非含有ポリビニル単量体が好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0019】
ポリビニル単量体に由来する構造単位の含有量は、全構造単位に対し0.5〜80質量部が好ましい。ポリビニル単量体に由来する構造単位の含有量を0.5質量部以上とすることにより、担体の機械的強度が高くなる。また、80質量部以下とすることにより、親水性が高くなり、HCPの低減効果が向上し、また、アフィニティーリガンドの活性が改善される。
ポリビニル単量体に由来する構造単位の含有量は、全構造単位に対し、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上、特に好ましくは25質量部以上であり、また、全構造単位に対し、好ましくは70質量部以下、より好ましくは65質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。
【0020】
((M−3)エポキシ基を含有しないモノビニル単量体に由来する構造単位)
本発明で用いる合成高分子支持体に含まれる共重合体としては、上記構造単位(M−1)及び構造単位(M−2)に加えて、(M−3)エポキシ基を含有しないモノビニル単量体に由来する構造単位を更に含むものが好ましい。
【0021】
エポキシ基を含有しないモノビニル単量体は、1分子中に、1個の重合性ビニル基(エチレン性不飽和結合を有する基)を有し、エポキシ基を含有しないビニル単量体である。以下、エポキシ基を含有しないモノビニル単量体単量体を、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基非含有モノビニル単量体と、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基含有モノビニル単量体とに分けて説明する。
【0022】
エポキシ基を含有しないヒドロキシ基非含有モノビニル単量体としては、精製時の不純物の非特異吸着を防ぐ点から、非イオン性単量体が好ましい。このような非イオン性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、非イオン性単量体として、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートのような疎水性(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレンのような芳香族ビニル化合物を用いてもよいが、精製時の不純物の非特異吸着を抑える観点から、このような単量体ではなく、上記で例示した単量体のうち、炭素数5以下のアルキル基又はアルコキシアルキル基を有するような(メタ)アクリル酸アルキルエステル類や、上記の(メタ)アクリルアミド類が好ましい。
【0023】
エポキシ基を含有しないヒドロキシ基含有モノビニル単量体としては、例えば、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ブタントリオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、イノシトールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基含有モノビニル単量体に含まれるヒドロキシ基の個数としては、1分子中に、1〜5個が好ましく、1〜3個がより好ましい。
【0024】
これらの中でも、エポキシ基を含有しないモノビニル単量体としては、エポキシ基を含有しないヒドロキシ基含有モノビニル単量体が好ましく、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがさらに好ましく、グリセロールモノ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0025】
エポキシ基を含有しないモノビニル単量体に由来する構造単位の含有量としては、全構造単位に対し40質量部以下が好ましい。当該含有量を40質量部以下とすることにより、ヒドロキシ基含有モノビニル単量体の場合には多孔質粒子の親水性が向上し、凝集が抑制され、アフィニティーリガンドの活性が高くなり標的物質の動的結合量が改善される。また、機械的強度も改善される。上記構造単位の含有量としては、全構造単位に対し、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。また、エポキシ基を含有しないモノビニル単量体に由来する構造単位の含有量は0質量部でもよいが、当該構造単位を含有する場合は、全構造単位に対し5質量部以上が好ましい。
【0026】
上記構造単位(M−1)〜(M−3)の含有量の好ましい組み合わせは、構造単位(M−1):全構造単位に対し40〜80質量部、構造単位(M−2):全構造単位に対し20〜60質量部、構造単位(M−3):全構造単位に対し0〜20質量部である。
【0027】
本発明に用いる合成高分子支持体は、単位時間当たりの処理容量の観点から、表面積が大きいことが望ましく、適当な大きさの細孔を多数有する多孔質であることが好ましい。
合成高分子支持体の形態としては、粒子状(ビーズ状)、モノリス状、板状、繊維状、膜状(中空糸を含む)などいずれも可能であり、任意の形態を選ぶことができる。また、合成高分子支持体は、水不溶性担体であることを考慮すると、多孔性ビーズ、モノリス、又は膜が好ましく、特に水不溶性担体上に配置された抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基が協奏的に機能するために、その物理的距離が近接し、一定の滞留時間が得られることが当該分離マトリックスの機能を効果的に発揮できることから、多孔性ビーズ(多孔質ビーズ)が好ましい。
【0028】
<酸性基を含む基>
本発明における、酸性基を含む基は、アフィニティーリガンドから抗体等の標的物を解離させる条件下で陽イオン交換基として機能し、標的物を捕捉できると共に、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のカウンターイオンにより、該標的物の単量体、凝集体の順序でイオン強度依存的に溶出(脱離)できればよい。また、本発明のミックスモード用担体は、酸性基を含む基が、合成高分子支持体表面上に結合しているものである。これによって、優れた防汚性が得られる。
【0029】
酸性基としては、具体的には、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-、−O−P(=O)(OH)2、−O−P(=O)(O-+2、−O−P(=O)(O-2、−O−P(=O)(OH)(O-+)、−O−P(=O)(OH)(O-)等の1価の酸性基;−O−(O=P−OH)−O−、−O−(O=P−O-+)−O−、−O−(O=P−O-)−O−等の2価の酸性基が挙げられる。ミックスモード用担体は、これらのうち1種又は2種以上を合成高分子支持体上に有していてよい。
なお、上記1価の酸性基は、結合手が1つの酸性基を意味し、2価の酸性基は、結合手が2つの酸性基を意味する。上記M+は、それぞれ対イオンを示す。対イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;有機アンモニウムイオン等が挙げられる。
これら酸性基の中でも、上記1価の酸性基が好ましい。なお、防汚性の観点からは、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-がより好ましい。
酸性基としては、アフィニティーリガンドからの標的物の溶出pH域において、局所的な酸性環境の形成を避けることが好ましく、弱酸性基であることが好ましい。たとえば、プロテインAを抗体アフィニティーリガンドとする場合は、陽イオン交換基としてカルボキシ基の利用が好ましい。
【0030】
酸性基を含む基は、合成高分子支持体上に直接固定されていてもよいし、スペ一サー、リンカー等を介して固定されていてもよい。また、アフィニティーリガンドから標的物が解離する酸性pH条件下で陽イオン交換体として機能できれば、陽イオン交換基、スペーサーやリンカーが他の機能を有する官能基を含んでいてもよく、それらの分子形状も特に制限されない。
【0031】
酸性基を含む基としては、アフィニティーリガンドから標的物を解離する際に少ない解離液の使用量で解離させ、効率よく標的物を分離精製、定量又は検出する観点から、pKaが−3.0〜5.0の範囲内の基が好ましい。特に、pKaが−3.0〜1.0の範囲内であると、標的物を解離させる際に使用する解離液として一般的に用いられているような解離液を用いた場合でも解離液の量を少なく抑えることができ、標的物を高濃度で回収することができる。
【0032】
酸性基を含む基としては、酸性基を含む有機基が挙げられ、好適な例としては、以下の式(1)で表される1価の基が挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
〔式(1)中、R1は、炭素数1〜12の2価の有機基を示し、Xは酸性基を示す。〕
【0035】
上記式(1)中のXで示される酸性基は、上記1価の酸性基と同様である。
1で示される2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。
1で示される2価の有機基としては、以下の式(2)で表される2価の基が好ましい。
【0036】
【化2】
【0037】
〔式(2)中、R2は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示し、Y1は、>S、>S=O、>S(=O)2、>NH、又は>Oを示し、*は、式(1)中のXとの結合位置を示す。〕
【0038】
1としては、>S、>NHが好ましく、>Sがより好ましい。
【0039】
2で示される2価の炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。また、2価の炭化水素基は、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルカンジイル基である。アルカンジイル基の具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0040】
酸性基を含む基の含有量としては、防汚性の観点から、ミックスモード用担体の表面積1m2あたり、0.05μmol以上が好ましく、0.5〜30μmolがより好ましく、1.0〜10μmolがさらに好ましく、2.0〜5.0μmolが特に好ましい。酸性基を含む基の含有量は、後述する実施例と同様の方法で測定すればよい。
【0041】
<アフィニティーリガンド>
本発明におけるアフィニティーリガンドとは、抗原と抗体の結合に代表される、特異的な分子間の親和力に基づいて、ある分子の集合から標的(目的)の分子を選択的に捕集(結合)する物質を示す。本発明のミックスモード用担体は、酸性基を含む基を介さずに合成高分子支持体表面上にアフィニティーリガンドが結合したものであることが好ましい。これによって、アフィニティーリガンドの多点結合が抑えられ、アフィニティーリガンドの三次元構造が維持されるため、アフィニティーリガンドの活性が保たれ、標的物へのアフィニティー低下を防ぐことができる。
【0042】
本発明において、アフィニティーリガンドは、標的物と特異的に結合するものであればよいが、例えば、タンパク質、核酸、ペプチド、酵素、キレート化合物、レセプター、アプタマー、抗体、抗原、ビタミン、金属イオン等が挙げられる。斯様なアフィニティーリガンドの中でも、タンパク質、核酸、キレート化合物が好ましい。中でも、精製の標的物を抗体とする抗体アフィニティーリガンドである場合は、イムノグロブリン結合タンパク質がより好ましい。
【0043】
本発明に用いることができる抗体アフィニティーリガンドは、標的物として抗体又は抗体の定常領域であるFc含有分子に特異的に結合しうる特徴を有していれば特に限定されないが、ペプチド性リガンド、蛋白質性リガンド、又は化学合成性リガンド(合成化合物)が好ましい。標的物に対する特異性の視点からペプチド性又は蛋白質性リガンドが更に好ましく、その内、抗体アフィニティーリガンドがプロテインA、プロテインG、プロテインL、プロテインH、プロテインD、プロテインArp、プロテインFcγR、抗体結合性合成ペプチドリガンド及びそれら類縁物質であることが更に好ましい。抗体アフィニティーリガンドとしては、プロテインA、プロテインG、プロテインL及びそれら類縁物質がより好ましく、プロテインA及びその類縁物質が最も好ましい。抗体アフィニティーリガンドは、標的分子結合ドメイン(単量体ペプチド又は蛋白質、単ドメイン)を有していれば特に制限されないが、2個以上のドメインが連結された多量体ペプチド又は蛋白質(複ドメイン)が好ましい。上記ドメインの数は2〜10個がより好ましく、2〜8個が更に好ましく、2〜6個が更に好ましい。特に3〜6個のドメインが連結された多量体蛋白質であることが好ましい。これらの多量体蛋白質は、単一の標的分子結合ドメインの連結体であるホモダイマー、ホモトリマー等のホモポリマーであってもよいし、標的物が同一であれば、複数種類の標的分子結合ドメインの連結体であるヘテロダイマー、ヘテロトリマー等のヘテロポリマーであってもよい。
【0044】
抗体アフィニティーリガンドの標的分子結合ドメインを連結する方法としては、多量体蛋白質の3次元立体構造を不安定化しない方法が好ましく、たとえば、ドメイン配列の末端アミノ酸を介する連結方法、ドメイン配列のアミノ酸残基を介さず連結する方法、又は、1又は複数のドメイン配列以外のアミノ酸残基で連結する方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0045】
抗体アフィニティーリガンドとしては、多量体蛋白質を1つの構成成分として、機能の異なる他の蛋白質と融合させた融合蛋白質を好ましく用いることができる。融合蛋白質としては、アルブミンやGST(グルタチオンS一トランスフェラーゼ)が融合した蛋白質やDNAアプタマー等の核酸、抗生物質などの薬物、PEG(ポリエチレングリコール)などの高分子が融合されている蛋白質等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
アフィニティーリガンド結合量としては、動的結合容量の観点から、担体の乾燥重量1gあたり、好ましくは10〜200mg、より好ましくは25〜100mg、更に好ましくは30〜100mg、特に好ましくは50〜100mgである。
【0047】
アフィニティーリガンドを合成高分子支持体に固定する方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、アフィニティーリガンドのアミノ基が担体上に導入されたホルミル基を介して合成高分子支持体に結合してもよく、アフィニティーリガンドのアミノ基が合成高分子支持体上の活性化されたカルボキシ基を介して担体に結合してもよく、アフィニティーリガンドのアミノ基が合成高分子支持体上のエポキシ基を介して担体に結合してもよい。
【0048】
アフィニティーリガンドを固定するために合成高分子支持体に導入される官能基としては、アフィニティーリガンドと共有結合を形成することができる官能基であれば、特に限定されないが、例えばエポキシ基(エピクロルヒドリン)、臭化シアン、N,N一ジスクシンイミジル炭酸塩(DSC)などで活性化されるヒドロキシ基、アルデヒド基又は活性化力ルボン酸基(例えば、N一ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、カルボニルジイミダゾール(CDI)活性化エステル)などの反応性官能基(r活性化基)等を挙げることができる(HermansonG.T.他著、「ImmobiIizedAffinityLigandTechniques,AcademicPress」、1992年;米国特許第5,874,165号;米国特許第3,932,557号;米国特許第4,772,653号;米国特許第4,210,723号;米国特許第5,250,6123号;欧州特許公開第1352957号;国際公開第2004/074471号)。これらの中にはアフィニティーリガンドが合成高分子支持体に直接共有結合するものと、直鎖、分岐鎖、又は環状のリンカー又はスペーサーが用いられるものが含まれる。なお、アフィニティーリガンドが導入された合成高分子支持体を活性化する場合はアフィニティーリガンドと直接反応しない活性化手法が好ましい。
【0049】
アフィニティーリガンドのうち、蛋白質性リガンドを担体に固定する方法は、蛋白質の官能基の一部と担体の官能基の一部を反応させる方法を用いることができる。その反応に利用できる蛋白質側の主な官能基(活性基)としては、N末端アミノ酸またはリジン(Lys)側鎖のアミノ基;システイン(Cys)側鎖のチオール基;C末端アミノ酸、グルタミン酸(GIu)側鎖またはアスパラギン酸(Asp)側鎖のカルボキシ基等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
また、リガンドの配向性を制御して蛋白質性抗体アフィニティーリガンドを合成高分子支持体に固定する方法として、C末端にシステインを有するプロテインAを利用する方法が提案されており(米国特許第6,399,750号、LjungquistC.他著,rEur.J.Biochem.」,1989年,186巻,557−561頁)、これを利用してもよい。
【0051】
リンカーを利用する固定技術としては、合成高分子支持体とアフィニティーリガンドとの距離を確保し、立体障害を排除して高性能化を図る方法の他、リンカー又はスペーサーの中に官能基(例えば、帯電アミン)を付与、形成させる方法等が挙げられる。抗体アフィニティーリガンドの固定時にリンカー又はスペーサー部分に抗体アフィニティーリガンドを効果的に集積し、固定収率の向上による分離性能の向上が検討されてきている。たとえば、リンカーアームの1部としてNHS活性化されたカルボン酸で誘導体化された担体への蛋白質性リガンドの固定技術が挙げられ(米国特許第5,260,373号、特開2010−133733号公報、特開2010−133734号公報)、これを利用してもよい。
【0052】
また、リンカーやスペーサーとは別に担体に会合性基を利用し、アフィニティーリガンドを支持体上に集積した後に、会合性基とアフィニティーリガンドの間に共有結合を形成させずに支持体上に抗体アフィニティーリガンドを個別に固定する方法も提案されており(特開2011−256176号公報)、これを利用してもよい。
【0053】
<ヒドロキシ基を含む基>
また、本発明のミックスモード用担体は、ヒドロキシ基を含む基が、合成高分子支持体表面上に結合していてもよい。酸性基の他に更にヒドロキシ基を含む基が支持体表面上に結合していると、さらに優れた防汚性を発揮できる。
【0054】
ヒドロキシ基を含む基としては、ヒドロキシ基を含む有機基が挙げられ、好適な例としては、以下の式(3)で表される1価の基が挙げられ、より好ましくは以下の式(4)で表される1価の基である。
【0055】
【化3】
【0056】
〔式(3)中、R3は、炭素数1〜12の2価又は3価の有機基を示し、nは、1又は2を示す。〕
【0057】
【化4】
【0058】
〔式(4)中、R4は、炭素数1〜12の2価又は3価の炭化水素基を示し、Y2は、>S、>S=O、>S(=O)2、>NH、又は>Oを示し、nは、1又は2を示す。〕
【0059】
式(3)中、R3で示される2価又は3価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。
【0060】
式(4)中、Y2としては、>Sが好ましい。
【0061】
4で示される2価又は3価の炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。2価又は3価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。
また、2価又は3価の炭化水素基は、好ましくは2価又は3価の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルカンジイル基、アルカントリイル基である。
上記アルカンジイル基の具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
上記アルカントリイル基の具体例としては、メタン−1,1,1−トリイル基、エタン−1,1,2−トリイル基、プロパン−1,2,3−トリイル基、プロパン−1,2,2−トリイル基等が挙げられる。
【0062】
酸性基を含む基の含有量(α)とヒドロキシ基を含む基の含有量(β)とのモル比〔(α):(β)〕は特に限定されないが、好ましくは100:0〜5:95、より好ましくは99:1〜25:75、更に好ましくは90:10〜50:50、更に好ましくは85:15〜55:45、特に好ましくは85:15〜60:40とした場合には、優れた防汚性を得ることができる。
【0063】
本発明の担体において、アフィニティーリガンド、酸性基を含む基、ヒドロキシ基を含む基は、担体の安定性の観点から、環状エーテル基が開環してなる基、ホルミル基が還元してなる基、トシル基が求核置換されてなる基等のような、反応性基が開環、還元又は求核置換等してなる基を介して、合成高分子支持体表面上に共有結合しているものが好ましく、環状エーテル基が開環してなる基を介して合成高分子支持体表面上に結合しているものがより好ましい。環状エーテル基が開環してなる基としては、開環エポキシ基が好ましい。
【0064】
ここで、「環状エーテル基」としては、環を構成する原子数が3〜7個の環状エーテル基が好ましい。環状エーテル基は、置換基としてアルキル基を有していてもよい。環状エーテル基の具体例としては、以下の式(5)〜(10)で表される環状エーテル基が挙げられ、式(5)で表される環状エーテル基がより好ましい。
【0065】
【化5】
【0066】
〔式中、R5〜R8は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合位置を示す。〕
【0067】
5〜R8で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1又は2である。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
また、R5〜R8としては、水素原子が好ましい。
【0068】
(担体の製造方法)
本発明のミックスモード用担体は、例えば、以下の工程1及び2を含む方法により製造できる。斯かる方法によれば、簡便且つ容易に、本発明のミックスモード用担体を得ることができる。
(工程1)アフィニティーリガンドと結合可能な反応性基(以下、単に反応性基ともいう)を表面に有する合成高分子支持体(以下、単に原料支持体ともいう)の前記反応性基の一部に、アフィニティーリガンドを結合する工程
(工程2)残りの反応性基に、当該反応性基と反応可能な官能基及び酸性基を有する化合物を反応させる工程
【0069】
<工程1>
工程1は、原料支持体の反応性基の一部に、アフィニティーリガンドを結合する工程である。反応性基に対してアフィニティーリガンドを結合させる手法は特に限定されるものではなく、例えば、アフィニティーリガンドに存在するアミノ基やカルボキシ基、チオール基等を利用した、従来のカップリング法で行えばよい。カップリング法としては、(i)臭化シアン、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、トシルクロライド、トレシルクロライド、ヒドラジン、過ヨウ素酸ナトリウム等を用いて原料支持体を活性化し、アフィニティーリガンドとカップリング反応を行い固定する方法、(ii)原料支持体とアフィニティーリガンドが存在する系に、カルボジイミドのような縮合試薬やグルタルアルデヒドのような分子中に複数の反応性基を持つ試薬を加えて、縮合・架橋することにより固定する方法、(iii)原料支持体に反応性基をあらかじめ導入しておき、原料支持体の活性化を経ずに、カップリング反応を行い固定する方法等が挙げられる。
【0070】
なお、原料支持体として多孔質粒子を用いる場合には、公知のシード重合、懸濁重合等で多孔質粒子を合成すればよい。重合に際しては、モノマーに加えて、重合開始剤、多孔化剤、水系媒体、分散安定剤、界面活性剤、重合調整剤、重合禁止剤、シード粒子等を必要に応じて使用する。モノマーとしては、反応性基を有するモノマーに加え、必要に応じて当該モノマー以外のモノマーを用いてよい。これらモノマーとしては、いずれも、エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。具体的には、スチレン系モノマー、ビニルケトン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー及び(メタ)アクリルアミド系モノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを例示できる。
【0071】
また、原料支持体が有する反応性基としては、水系中でも安定してカップリング反応を実施できる観点から、環状エーテル基が好ましく、環を構成する原子数が3〜7個の環状エーテル基がより好ましい。環状エーテル基は、置換基としてアルキル基を有していてもよい。環状エーテル基の具体例としては、上記式(5)〜(10)で表される環状エーテル基が挙げられる。
【0072】
また、原料支持体に結合させるアフィニティーリガンドは上記と同様である。
アフィニティーリガンドの合計使用量は、原料支持体1gに対し、通常50〜300mg程度であるが、好ましくは120〜180mgである。
【0073】
また、工程1は、塩を添加したバッファー存在下で行うのが好ましい。塩の種類としては、クエン酸三ナトリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられ、バッファーとしては、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー、ホウ酸バッファー等が挙げられる。バッファーの合計使用量は、原料支持体に対し、通常20〜80質量倍程度であるが、好ましくは35〜45質量倍である。
また、工程1の反応時間は特に限定されないが、通常0.5〜72時間程度であり、反応温度は通常1〜60℃程度である。
【0074】
<工程2>
工程2は、残りの反応性基に、当該反応性基と反応可能な官能基及び酸性基を有する化合物(以下、酸性基含有化合物ともいう)を反応させる工程である。
【0075】
酸性基含有化合物としては、メルカプト酢酸(pKa=3.5〜4.0)、3−メルカプトプロピオン酸(pKa=3.5〜4.0)、4−メルカプトブタン酸(pKa=3.5〜4.0)等のメルカプトカルボン酸;グリシン(pKa=2.0〜2.5)、β−アラニン(pKa=2.0〜2.5)等のアミノ酸;2−メルカプトエタンスルホン酸(pKa=−2.5〜−2.0)、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸(pKa=−2.5〜−2.0)等のメルカプトスルホン酸;アミノメタンスルホン酸(pKa=−2.0〜−1.0)、2−アミノエタンスルホン酸(pKa=−2.0〜−1.0)、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(pKa=−2.3〜−1.3)等のアミノ基含有スルホン酸;これらの塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;有機アンモニウム塩等が挙げられる。
酸性基含有化合物の合計使用量は、残留反応性基1モルに対し、通常0.1〜40モル当量であるが、アフィニティーリガンドの多点結合を防ぐ観点から、2〜40モル当量の過剰量にて残留反応性基をブロッキングすることが好ましい。
【0076】
なお、ヒドロキシ基を含む基を導入する場合は、メルカプトエタノール、チオグリセロール等のメルカプト基を含むアルコール等を酸性基含有化合物と組み合わせて添加すればよい。
【0077】
また、工程2の反応時間は特に限定されないが、通常0.5〜72時間程度であり、好ましくは1〜48時間である。また、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常2〜100℃程度である。
なお、上記工程1と工程2は、効率やコストの面から工程1から工程2の順に行うのが好ましい。
【0078】
そして、上記のようにして得られる本発明のミックスモード用担体は、標的物の動的結合容量が高く、且つ非特異吸着が起こり易い合成高分子支持体を用いた場合でも、防汚性に優れる。したがって、本発明のミックスモード用担体は、合成高分子支持体の組成等に依存することなく、宿主細胞に含まれるHCP(Host Cell Protein)やDNA等の生体由来不純物等に対して優れた防汚性を示し、極めて高い分離選択性を有しながら、多糖類系の支持体よりも抗体の凝集体との疎水性相互作用を有しているため、より分離性能に優れた担体が得られる。
【0079】
〔標的物の精製方法〕
本発明の標的物の精製方法は、酸性基を含む基及びアフィニティーリガンドを合成高分子支持体上に有するミックスモード用担体と、前記アフィニティーリガンドが捕捉しうる標的物とを接触させる工程Aと、前記アフィニティーリガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉したミックスモード用担体とを接触させて標的物を解離させる工程Bと、を含み、前記工程Bが、アフィニティーリガンドから標的物が解離する条件下で、イオン強度が段階的に高くなる塩濃度を2種類以上使用するステップワイズ方式、又は勾配的に塩濃度を高くするグラジェント方式の少なくともいずれかで解離する工程を含むことを特徴とする。なお、工程Bにおいて、ステップワイズ方式とグラジェント方式の両方を組合せてもよい。
工程Aに関しては、上記のミックスモード用担体を使用すればよく、特に制限はない。標的物も特に限定されないが、アフィニティーリガンドとしてプロテインAなどの抗体アフィニティーリガンドを用いた場合には、標的物として抗体が例示される。
【0080】
本発明のミックスモード用担体を用いる場合、酸性基を有する基とアフィニティーリガンドとの両リガンドにより、抗体の単量体と凝集体との分離機能が協奏的に機能することで優れた分離特性を示すほか、アフィニティー精製工程とイオン交換基による精製工程との2工程のクロマトグラフィー操作を1工程に短縮可能で、使用する緩衝液の種類および使用量、更に、作業時間の短縮が期待できる。
【0081】
また、本発明のミックスモード用担体を用いた精製方法は、アフィニティーリガンドから標的物が解離する狭いpH域(好ましくはpH3〜4、より好ましくはpH3.1〜3.9、さらに好ましくはpH3.2〜3.8)の条件下で、イオン強度(好ましくは10〜500mM、より好ましくは15〜400mM、さらに好ましくは20〜350mM)が段階的に高くなる塩濃度を2種以上使用する「ステップワイズ方式」、又は前記範囲で勾配的に塩濃度を高くする「グラジェント方式」)の設定により単量体含量の高い溶出画分を得ることが可能である。
【0082】
特にモノクローナル抗体の精製においては、前記解離pHは標的物の等電点から大きく離れているため、抗体毎に解離イオン強度の幅に大きな差異がなく、狭い範囲で各種標的物の使用条件の設定が可能であることが期待できる。更に、アフィニティーリガンドとしては、抗体アフィニティーリガンドが好ましく、解離pH域を更に狭く設定可能であるほか、アルカリCIP洗浄の使用により、効果的な洗浄も可能であるため、安定的なプロセス構築の観点からは改変プロテインAの利用がより好ましい。
【0083】
本発明のミックスモード用担体の使用方法に関し、中性付近で抗体等の標的物を吸着させる場合、陽イオン交換基のカウンターイオンを一定濃度以上添加して使用することが好ましい。当該条件では陽イオン交換体機能は作用せず、また、作用しても更に高いイオン強度の洗浄でその陽イオン交換基に由来する非特異的な吸着物は洗浄除去できる。
一方、イオン強度は抗体アフィニティーリガンドの吸着を阻害せず、高い特異性をもって標的物を吸着できるほか、高イオン強度の洗浄液の使用により、基材、リンカー、スペーサー、リガンドおよび標的物に非特異的に吸着する分子を効果的に洗浄除去しうる。
【0084】
通常、組換えモノクローナル抗体を発現させた培養上清は、ヒトなどの体液に近いイオン強度を有することから直接本発明の分離マトリックスに供しても高い特異性を維持できる他、より高いイオン強度の洗浄液により夾雑物を更に低減できる。
【0085】
本発明により調製されたミックスモードアフィニティー分離マトリックスは、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基の比率によってその機能が調節可能である。抗体アフィニティーリガンドの結合容量が陽イオン交換基の結合容量よりも大きい場合は、酸性溶出時に低イオン強度でも抗体が担体から解離される傾向があり、抗体アフィニティーリガンドの結合容量が陽イオン交換基の結合容量と同程度又は低い場合には、低イオン強度では抗体アフィニティーリガンドから解離された抗体が陽イオン交換基に強く保持され、抗体が解離されにくい傾向にあり、より高い回収率を得るには解離イオン強度を高めに設定する必要がある。何れの場合も、イオン強度の調節により回収率および、そのモノマー比率の制御が可能である。
【0086】
抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量と陽イオン交換基に基づく抗体結合容量の比率に特に制限を設けないが、本発明のミックスモード用担体における標的物(特に抗体、より好ましくはヒトIgG又はヒト化モノクローナル抗体などのIgGである。)の解離pH条件下における陽イオン交換基による標的物(特に抗体、より好ましくはヒトIgG又はヒト化モノクローナル抗体などのIgG)の動的結合容量が、抗体吸着条件下(中性条件下)における抗体アフィニティーリガンドによる標的物(特に抗体、より好ましくはヒトIgG又はヒト化モノクローナル抗体などのIgG)の動的結合容量に対し、2倍以下であることが好ましく、等倍以下であることがより好ましく、1/5倍以下が特に好ましい。下限値は、例えば1/100倍以上であってもよく、1/50倍以上であってもよい。陽イオン交換基による抗体結合量が小さい場合には、解離イオン強度を低く設定することが可能であり、後段の抗体精製プロセスにて脱塩等の処理が必要でなくなる傾向があるほか、解離イオン強度の設定の幅が狭くプロセス開発が容易である。
【0087】
本発明のミックスモードアフィニティー分離マトリックスにより精製される標的物は、例えば、免疫グロブリンGおよびその類縁体(誘導体を含む)などであり、一般的に抗体と称される分子の他、免疫グロブリン分子の定常領域であるFc領域と他の機能性蛋白質又はペプチドを融合してなるFc融合蛋白質(Fc含有分子)が含まれる。これらは、抗体医薬品の原料として利用される。
【0088】
以下に、本発明のミックスモード用担体を用いた精製方法の詳細な説明を、標的物が免疫グロブリンGの場合について例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
本発明の標的物の精製方法は、合成高分子支持体上に酸性基を含む基及びアフィニティーリガンドを有するミックスモード用担体と、前記アフィニティーリガンドが捕捉しうる標的物とを接触させる工程Aを含む。免疫グロブリンGを含む蛋白質溶液のpHが中性付近となるように調整した後、該溶液を本発明のミックスモード用担体を充填したカラムに通過させ、アフィニティーリガンドを介して免疫グロブリンGを特異的にミックスモード用担体に吸着させる。たとえば、プロテインAをアフィニティーリガンドとする場合、その負荷pHは6以上が好ましく、6.3以上9以下がより好ましく、6.5以上8.5以下がさらに好ましい。哺乳類培養細胞により生産される免疫グロブリンGの精製において、特にイオン強度の調製を必要としないほか、あらかじめイオン強度を上げて更に非特異吸着を抑制することもできる。
【0090】
本発明においては、さらに洗浄工程を有することが好ましい。洗浄工程では、アフィニティーリガンドが機能する条件範囲の緩衝液を適量通過させ、カラム内部を洗浄する。すなわち、pHの好ましい範囲は前記負荷時と同じ範囲(中性付近のpH)であってもよく、例えば、6以上が好ましい。この時点では標的物である免疫グロブリンGは本発明のミックスモード用担体に吸着されている。この時、中性付近のpHでイオン強度や組成物の最適化により、不純物を効果的に除去できる場合がある。負荷、洗浄時において、陽イオン交換基が機能しない条件が好ましく、すなわち、中性付近のpHにすると共に一定以上のイオン強度の洗浄液を利用することが好ましい。この過程で該分離マトリックスおよび/又は、免疫グロブリンGを介して非特異的にカラムに残留する不純物を洗浄することができる。イオン強度は、例えば、0.2M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましい。
【0091】
本発明の精製方法は、前記アフィニティーリガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉したミックスモード用担体とを接触させる工程Bを含む。工程Bは、アフィニティーリガンドから解離する条件下、イオン強度が段階的に高くなる塩濃度を2種類以上使用するステップワイズ方式、又は、勾配的に高くなる塩濃度を使用するグラジェント方式の少なくともいずれかで解離する工程である。
【0092】
工程Bでは、中性付近でイオン強度が低い緩衝液にカラムを置換し、解離時の陽イオン交換基によるイオン強度依存的解離機能の発現に備える。
解離の際には酸性pH、イオン強度の組み合わせにより、抗体アフィニティーリガンドからの解離時に陽イオン交換分離モードを機能させ、両リガンドの協奏的な作用で、単量体含量の高い画分を低イオン強度溶出画分に回収することができる。解離液のpHは抗体アフィニティーリガンドからの免疫グロブリンGの解離pHが適用できる。当該pHは、ミックスモード用担体の作製に用いたアフィニティーリガンドと免疫グロブリンGの種類により決定される分離条件を中心に決定されることから、特段の条件設定を必要としない。
【0093】
抗体アフィニティーリガンドにプロテインAを用いた場合は、pHは2〜6の間に設定されることが好ましい。ただし、標的物の酸変性を避ける目的から、pH3.0以上がより好ましく、pH3.3以上がより好ましく、pH3.5以上が特に好ましい。pHは、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。アルカリ耐性型のプロテインAリガンドを使用する場合は、一般的にその解離pHは3.5〜4.0の間を中心に設定されるが、これに限定されるものではない。
【0094】
また、解離イオン強度は、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基の導入比率に依存するほか、単位体積当たりの免疫グロブリンGの負荷量にも依存するが、グラジエント実験やステップワイズ解離実験により最適化ポイントを容易に設定しうる。
【0095】
本発明により調製されるミックスモード用担体からの抗体解離は、塩濃度グラジエント方式でもステップワイズ方式でも適用可能であり、また、これらを組み合わせたものでもよいが、溶出液量の低減を目的にした場合はイオン強度によるステップワイズ方式が好ましい。更に、操作の単純化のためには、ワンステップで抗体の回収と高モノマー含量化を達成できる条件設定が好ましい。
【0096】
なお、洗浄工程のイオン強度と酸性pHの組み合わせでも凝集体がカラムに残留し溶出画分に混入しない場合は、イオン強度調節工程を省略することができる。
【0097】
本発明により調製されたミックスモード用担体を用いて精製された免疫グロブリンGは、単一の分離モードに基づく抗体アフィニティー分離マトリックスよりも高いモノマー選択性を示し、その溶出液中のモノマー含量が高い。
【0098】
本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いることにより、特異性の高いアフィニティー精製と、主に陽イオン交換クロマトグラフィーにより達成しうるモノマー含量の向上を、高回収率を維持したまま単一のクロマト操作で効率的に達成可能であることから、後段プロセスヘの負荷の低減が可能となり、プロセス全体の収率向上と単量体含量の向上に貢献できる。すなわち、本発明により、抗体医薬品の製造プロセスの生産性向上と高純度化に寄与できる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例における各分析条件を以下に示す。なお、実施例1は参考例である。
【0100】
<エポキシ基含有量>
重合で使用したエポキシ基含有モノマー量より計算されるエポキシ基のモル数が1.00mmolとなるように、多孔質粒子分散液(S−3)をポリエチレンボトルに正確に測り取り、これに塩化カルシウム37.5質量%水溶液25mL及び0.2規定の塩酸10mLを加えて、75℃で1時間撹拌することによりエポキシ基を開環し、冷却後、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液10mLで中和し、さらにpHメーターでpHをモニターしながら0.1規定の塩酸で逆滴定することにより、アフィニティーリガンド結合前の多孔質粒子のエポキシ基含有量を定量した。
【0101】
<酸性基の結合量>
担体1〜5を固形分換算で0.5g正確に測り取り、電気伝導度測定計(Metrohm製 794 Basic Titrino)を用いて、酸性基の結合量を算出した。
【0102】
(実施例1)
(1)360gの純水にポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA−217)0.72gを添加し、加熱撹拌しポリビニルアルコールを溶解させ、冷却した後、ドデシル硫酸ナトリウム(花王社製 エマール10G)0.18g、炭酸ナトリウム0.36g及び亜硝酸ナトリウム0.18gを添加し、撹拌して、水溶液(S−1)を調製した。
一方、グリシジルメタクリレート(三菱レーヨン社製)6.88g、グリセロールモノメタクリレート(日油社製)1.37g、トリメチロールプロパントリメタクリレート(サートマー社製)4.12g及びポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学社製、9G)1.37gからなる単量体組成物を、2−オクタノン(東洋合成社製)20.63g及びアセトフェノン(井上香料製造所社製)5.30gの混液に溶解させ、単量体溶液(S−2)を調製した。
次いで、前記水溶液(S−1)を、500mLセパラブルフラスコ内に全量投入し、温度計、撹拌翼及び冷却管を装着して、温水バスにセットし、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。セパラブルフラスコ内に前記単量体溶液(S−2)を全量投入して、温水バスにより加温し内温が85℃に到達したところで2,2’−アゾイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)0.53gを添加し、86℃に温度を維持した。
【0103】
(2)その後、86℃に温度を維持したまま3時間撹拌を行い、反応液を冷却した後、斯かる反応液をろ過し、純水とエタノールで洗浄した。洗浄した粒子を純水に分散させてデカンテーションを3回行い、小粒子を除いた。次いで、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させ、多孔質粒子分散液(S−3)を得た。この多孔質粒子のエポキシ基含有量は、粒子の乾燥重量1gあたり1.57mmolであった。
【0104】
(3)次に、改変プロテインA(Repligen製 rSPA)0.15gを、1.0Mクエン酸三ナトリウム/0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)40mLに分散させプロテインA分散液を得、このプロテインA分散液に、前記多孔質粒子分散液(S−3)を粒子乾燥重量換算で1g添加した。この分散液を25℃で5時間振とう撹拌し、プロテインAを粒子に固定した。この粒子を、プロテインA固定粒子(S−4)とする。
【0105】
(4)前記プロテインA固定粒子(S−4)を、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.6)で洗浄した後、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)40mLに分散させ、25℃で17時間振とう撹拌することで、未反応のエポキシ基を完全に開環(ブロッキング)させた。
その後、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.6)、0.5M水酸化ナトリウム水溶液、0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.2)で洗浄し、ミックスモード用担体(担体1)を得た。メルカプト酢酸の結合量は、担体の表面積1m2あたり、2.48μmolであった。
【0106】
(実施例2)
実施例1のエポキシ開環工程に用いる溶液を、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)から、1.0M 3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、ミックスモード用担体(担体2)を得た。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの結合量は、担体の表面積1m2あたり、3.12μmolであった。
【0107】
(比較例1)
実施例1のエポキシ開環工程に用いる溶液を、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)から、1.0M チオグリセロール(旭化学工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、担体3を得た。酸性基の結合量は、担体の表面積1m2あたり、<0.05μmolであった。
【0108】
(比較例2)
プロテインA固定担体として0.5Mの食塩水に置換したMabSelectSuRe(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)使用し、これにカルボキシ基を導入した。
すなわち、MabSelectSuReを湿潤体積として4mLを反応容器にとり、水にてスラリー体積を5mLとし、これに0.25Mクエン酸ナトリウム(pH3.5)溶液を1mL加えた。次に0.1Mクエン酸/0.1Mグルタミン酸(pH3.5)溶液を1mL加え撹拌した。次いで0.8M過ヨウ素酸ナトリウム溶液0.5mL加え、室温で1時間転倒撹拌してアルデヒド基を導入した。この担体スラリーを、冷水で100倍に希釈した1Mグルタミン酸/PBS(pH7)で5回洗浄し、回収後にスラリーの液量を5mLとした。これに1Mグルタミン酸/PBS(pH7)を5mL添加し、室温で2時間転倒撹拌した後に、1Mのジメチルアミンボラン水溶液を0.5mL追加投入し一晩室温で転倒撹拌した。遠心して担体を沈降させた後に液面が6mLになるように上清を除去した中に、20mgの水素化ホウ素ナトリウムを直接加え、室温で更に2時間転倒撹拌した。水と、0.1Mクエン酸と、0.1M水酸化ナトリウムと、0.5MのNaCIを添加したPBSとで十分に洗浄した。このようにして、グルタミン酸のアミノ基を介し還元的アミノ化法でアルデヒド基にカルボキシル基を導入して、ミックスモード用担体(担体4)を得た。カルボキシ基の結合量は、担体の表面積1m2あたり、2.98μmolであった。
【0109】
(比較例3)
4%アガロースビーズとして水に置換したLow density Glyoxal 4 Rapid Run(ABT社)を、湿潤体積で4mL分を反応容器にとり、水にてスラリー体積を5mLとした。その後、0.25Mクエン酸ナトリウム(pH3.5)溶液を1mL加えた。更に0.8M過ヨウ素酸ナトリウム2mL加え、室温で0.5時間転倒撹拌し、アルデヒド基が導入された担体を得た。この担体のスラリーを水およびリン酸緩衝液としてダルベッコPBS(一)(日水)(以下、PBS)で十分に洗浄し、回収後にスラリーの量を5mLとした。次に0.1Mリン酸ナトリウム、1Mクエン酸ナトリウム、0.3M塩化ナトリウムの混合溶液(pH6.8)を5mL加え、混合した後に液量を調整し5.5mLとした。これに5N水酸化ナトリウム水溶液を加え担体のスラリーのpHを11.5〜12に調整した後、直ちに100mgのプロテインAを加えて2〜8℃の条件下で2.5時間撹拌した。1Mクエン酸溶液を用いて担体スラリーのpHを7〜5に調整した後に1Mのジメチルアミンボラン0.5mLを加え室温で一晩転倒撹拌した。水、0.1Mクエン酸、0.1M水酸化ナトリウム、およびPBSで十分に洗浄し、アガロースにプロテインAが共有結合で固定(結合)された担体(担体5)を得た。酸性基の結合量は、担体の表面積1m2あたり、<0.05μmolであった。
【0110】
(試験例1 抗体アフィニティーリガンドに基づく動的結合容量(DBC)測定試験)
実施例1〜2、比較例1〜3で作製した担体1〜5について、抗体分離用の担体としての抗体の動的結合容量を測定した。具体的には、担体に結合しないIgG3等の画分以外の負荷IgGの10%が漏出するまでにカラムに結合した抗体量をカラム中の担体体積で割った値から、担体1mL当たりのIgG吸着量を10%動的結合容量(Dynamicbindingcapacityl;DBC)として算出した。クロマトグラフィー条件は以下に示すが、負荷時の流速は、0.4mL/分とし、接触時間6分の動的結合容量を求めた。なお、負荷時以外の流速設定は、0.6mL/分(接触時間=4分)とした。
抗体アフィニティーリガンドに基づく10%DBC測定に用いたクロマトグラフィー条件は以下の通りである。
カラム=ID0.66cmxHeight7cm(Omnifit社製)
流速=0.4mL/分(接触時間=6分)又は0.6mL/分(接触時間=4分)
ポリクローナル抗体(IgG)=ガンマグロブリン・ニチヤク(ヒト免疫グロブリンG)(日本製薬)
負荷液=2.5mg−IgG/mL(PBS=ダルベッコ・日水)平衡化液=PBS(pH7.4)
解離液=50mM酢酸、0.1M塩化ナトリウム(pH3.75)再生液=0.1M酢酸、1M塩化ナトリウム
CIP液=0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム中和・再平衡化液=PBS(pH7.4)
【0111】
(試験例2 陽イオン交換基に基づく動的結合容量(DBC)測定試験)
実施例1〜2、比較例1〜3で作製した担体1〜5について陽イオン交換基に基づく抗体結合容量を測定した。具体的には、抗体の負荷条件として、抗体アフィニティーリガンドであるプロテインAの抗体捕捉能力が殆どなく、陽イオン交換基として導入した酸性基含有基が機能しうる条件としてpH3.5の10mM酢酸緩衝液を用いた。陽イオン交換基はプロテインAリガンドと異なりIgG3等に選択性を示さないことから、負荷開始から全負荷IgGの10%が漏出するまでにカラムに結合した抗体量をカラム中の担体体積で割った値から、担体1mL当たりのIgG吸着量を10%DBCとして算出した。クロマトグラフィー条件は以下に示すが、負荷時の流速は、0.4mL/分とし、接触時間6分の動的結合容量を求めた。なお、負荷時以外の流速設定は、0.6mL/分(接触時間=4分)とした。
陽イオン交換基に基づく10%DBC測定に用いたクロマトグラフィー条件は以下の通りである。
カラム=ID0.66cmxHeight7cm(Omnifit社製)
流速=0.4mL/分(接触時間=6分)又は0.6mL/分(接触時間=4分)
ポリクローナル抗体(IgG)=ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)負荷液=2.5mg−IgG/mL(10mM酢酸=pH3.5)平衡化液=10mM酢酸(pH3.5)
解離液=10mM酢酸、0.5M塩化ナトリウム(pH3.5)CIP液=0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム中和・再平衡化液=10mM酢酸(pH3.5)
【0112】
(試験例3 酸性条件下でのステップワイズ方式による解離と凝集体の分離)
試験例1に用いたOmnifit社製のカラム(ID0.66cmxHeight7cm)に充填した実施例1〜2、比較例1〜3で作製した担体1〜5に、中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度(NaCl 0mM、50mM、300mM)の解離液で抗体を溶出させた。各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から抗体含量と抗体収率(YieId)を求めた。また、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomercontent)及び担体5の単量体収率(MonomerYieId)を算出した。
担体1〜5の単量体収率は、抗体収率と単量体含量から、担体5からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、以下の式によりを求めた。
[NaCl 0mM、50mMまたは300mMにおける担体1〜4の単量体収率]
(担体1〜5の各NaCl濃度における単量体収率(%))={(担体1〜5の抗体収率(%))×(担体1〜5の単量体含量(%))×100}/{99.4×94.5+0.6×86.3}
なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各解離液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各解離液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。
各クロマトグラフィー条件は、以下の通りである。
カラム=ID0.66cmxHeight7cm(Omnifit社製)
流速=0.6mL/分(接触時間=4分)
ポリクローナル抗体(IgG)=ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)負荷液=2.5mg−IgG/mL(PBS=ダルベッコ・日水)平衡化液=PBS(pH7.4)(3CV、CV=カラム体積)負荷=6.8mL
負荷後洗浄=PBS(pH7.4)(5CV)
解離前洗浄液=10mMTris/HCI(pH7)(5CV)解離液1=10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
解離液2=50mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
解離液3=300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液=0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)中和・再平衡化液=PBS(pH7.4)
ゲルろ過クロマトグラフィー条件
カラム=Superdex20010/300GL(IDlcmxHeight30cm)(GEヘルスケア・バイオサイエンス社製)
流速=0.5mL/分
検出波長=214nm
負荷液=100μL/injection(吸光度値が1を超えない範囲に希釈)
溶離液=PBS(pH7.4)
担体1〜5の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表1に示した。
【0113】
(試験例4 HCP測定試験)
実施例1〜2、比較例1〜3で作製した担体1〜5を70μL(湿潤状態)それぞれ秤取り、各抗体に1.0mg/mLモノクローナル抗体溶液(モノクローナル抗体Trastuzumabのバイオシミラーを含有するCHO細胞培養上清)2.45mLを加えて、室温で1.5時間撹拌振とうして、抗体を担体に捕捉した。
次いで、前記抗体を捕捉させた担体の全量をスピンカラム(Thermo製)に移し、遠心分離(1000rpm)によって抗体溶液を除いた。
次に、20mMリン酸ナトリウム/150mM NaClバッファー(pH7.5)をスピンカラムに加え、合計840μLを遠心分離によって通液し、担体を洗浄した。
次いで、20mMリン酸ナトリウム/1.0M NaClバッファー(pH7.5)をスピンカラムに加え、合計840μLを遠心分離によって通液し、担体を洗浄した。
次に、20mMリン酸ナトリウム/150mM NaClバッファー(pH7.5)をスピンカラムに加え、合計840μLを遠心分離によって通液し、担体を洗浄した。
その後、50mMクエン酸緩衝液(pH3.2)をスピンカラムに加え、合計700μLを遠心分離によって通液し、担体に捕捉されていたモノクローナル抗体を解離した。解離液中の抗体濃度を、BioRAD製Smartspec Plusを使用して吸光度から算出した。
そして、Cygnus Technologies社製 CHO HCP ELISA kit,3Gを用い、Host Cell Protein(HCP)濃度を測定し、抗体濃度でスタンダード化した。結果を表1に示す。
×:1000ppm/IgGを超える
○:500〜1000ppm/IgG
◎:500ppm/IgG未満
【0114】
【表1】
【0115】
NaCl濃度が50mMの場合における実施例1の単量体含量と比較例2の単量体含量とを対比すると、実施例1が99.2%であるのに対して、比較例2が96.3%であり、本発明のミックスモード用担体のほうが、より単量体と凝集体との分離性能に優れるという結果が得られた。また、実施例2のように、酸性基の種類によっては、凝集体の除去能を維持しながら、比較例2よりもHCPを低減することができた。これらの担体はいずれもプロテインAと酸性基とのミックスモードにより単量体と凝集体とを分離するが、実施例における担体は合成高分子を支持体とし、比較例のものは多糖類を支持体とする点に違いがある。合成高分子は多糖類と比較して抗体の凝集体との相互作用が強いため、単量体と凝集体との分離に有利に作用したと予測される。一方で、合成高分子の支持体を使用すると通常であればHCPが増加するが、酸性基を導入したことで、HCPを低減することができた。