特許第6633025号(P6633025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633025
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】コア板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20200109BHJP
   H02K 1/02 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   H02K15/02 F
   H02K15/02 E
   H02K1/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-107106(P2017-107106)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-23271(P2018-23271A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2018年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-143361(P2016-143361)
(32)【優先日】2016年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 哲也
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 剛士
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 恵一
(72)【発明者】
【氏名】土井 智史
(72)【発明者】
【氏名】藤村 浩志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩明
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−122893(JP,A)
【文献】 特開平9−92561(JP,A)
【文献】 特開2016−94655(JP,A)
【文献】 特開2014−193000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコアバック部(11)と、上記コアバック部から中心(O)に向かって延びる複数のティース部(12)とを有するコア板(1)の製造方法において、
面内の一方向に磁化容易方向(Y)を有する方向性電磁鋼板(3)から、上記磁化容易方向と垂直方向(X)に延びる帯状コアバック部(21)と、上記帯状コアバック部から上記磁化容易方向に平行に延びる複数の平行ティース部(22)とを有するコアシート片(2)を打ち抜く打抜き加工工程と、
上記平行ティース部を内側にして上記コアシート片を環状に巻回させることにより、上記コアバック部と上記ティース部とを有する上記コア板を得る巻回加工工程と、
上記コアシート片の上記帯状コアバック部又は上記コア板の上記コアバック部に、ショットピーニング、ウォータジェットピーニング、レーザピーニング、又は超音波ピーニングにより板厚方向(Z)に圧縮ひずみを付与する歪加工工程と、
上記歪加工工程後に、上記帯状コアバック部又は上記コアバック部を焼鈍により再結晶化させる焼鈍工程と、を有するコア板の製造方法。
【請求項2】
環状のコアバック部(11)と、上記コアバック部から中心(O)に向かって延びる複数のティース部(12)とを有するコア板(1)の製造方法において、
面内の一方向に磁化容易方向(Y)を有する方向性電磁鋼板(3)において、上記磁化容易方向と垂直方向(X)に延びる帯状コアバック部形成予定領域(31)に、板厚方向に圧縮ひずみを付与する歪加工工程と、
上記帯状コアバック部形成予定領域に存在する帯状コアバック部(21)と、上記帯状コアバック部から上記磁化容易方向に平行に延びる複数の平行ティース部(22)とを有するコアシート片(2)を上記方向性電磁鋼板から打ち抜く打抜き加工工程と、
上記平行ティース部を内側にして上記コアシート片を環状に巻回させることにより、上記コアバック部と上記ティース部とを有する上記コア板を得る巻回加工工程と、
上記巻回加工工程後に、上記コアバック部を焼鈍により再結晶化させる焼鈍工程と、を有するコア板の製造方法。
【請求項3】
上記歪加工工程においては、ショットピーニング、ウォータジェットピーニング、レーザピーニング、超音波ピーニング、鍛造、又はローラ圧延加工により、上記圧縮ひずみを付与する、請求項2に記載のコア板の製造方法。
【請求項4】
上記コアバック部と上記ティース部との厚み差が5〜20%となるように上記歪加工工程を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコア板の製造方法。
【請求項5】
上記コアバック部は上記中心から外方に向けて厚みが小さくなるテーパ領域115を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコア板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状のコアバック部と、このコアバック部から中心に向かって延びる複数のティース部とを有するコア板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機やモータ等の回転電機には、環状のコアバック部とティース部とを有する環状のコア板が複数積層されたステータコアが用いられている。回転電機における例えば小型化、高出力化等の高性能化のためには、電磁鋼板からなるコア板における磁化容易方向の制御が望まれている。具体的には、環状のコア板の中心方向に向かって延びるティース部における磁化容易方向をティース部の伸長方向に揃え、コアバック部における磁化容易方向を環状のコア板の周方向に揃えることが望まれている。
【0003】
例えば特許文献1には、一方向に磁化容易方向を有する方向性電磁鋼板からコアバックとティース部とを有する帯状のシート片を打ち抜き、シート片を環状に巻回させることによりコア板を製造する技術が開示されている(特許文献1)。これにより、ティース部における磁化容易方向がティース部の伸長方向に揃ったコア板の製造が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−92561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、方向性電磁鋼板は、磁化容易方向が一方向に揃っているため、方向性電磁鋼板の磁化容易方向がティースの伸長方向となるように打ち抜き、次いで巻回によりコア板を製造すると、コアバック部における磁化容易方向もティース部の伸長方向になる。その結果、コアバック部においては、ステータコアの磁気回路で磁化が困難になる。すなわち、ティース部における磁気特性はよいが、コアバック部における磁気特性が悪くなる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ティース部における磁気特性を向上できると共に、コアバック部における磁気特性の低下を防止できるコア板の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、環状のコアバック部(11)と、上記コアバック部から中心(O)に向かって延びる複数のティース部(12)とを有するコア板(1)の製造方法において、
面内の一方向に磁化容易方向(Y)を有する方向性電磁鋼板(3)から、上記磁化容易方向と垂直方向(X)に延びる帯状コアバック部(21)と、上記帯状コアバック部から上記磁化容易方向に平行に延びる複数の平行ティース部(22)とを有するコアシート片(2)を打ち抜く打抜き加工工程と、
上記平行ティース部を内側にして上記コアシート片を環状に巻回させることにより、上記コアバック部と上記ティース部とを有する上記コア板を得る巻回加工工程と、
上記コアシート片の上記帯状コアバック部又は上記コア板の上記コアバック部に、ショットピーニング、ウォータジェットピーニング、レーザピーニング、又は超音波ピーニングにより板厚方向(Z)に圧縮ひずみを付与する歪加工工程と、
上記歪加工工程後に、上記帯状コアバック部又は上記コアバック部を焼鈍により再結晶化させる焼鈍工程と、を有するコア板の製造方法にある。
【0008】
本発明の他の態様は、環状のコアバック部(11)と、上記コアバック部から中心(O)に向かって延びる複数のティース部(12)とを有するコア板(1)の製造方法において、
面内の一方向に磁化容易方向(Y)を有する方向性電磁鋼板(3)において、上記磁化容易方向と垂直方向(X)に延びる帯状コアバック部形成予定領域(31)に、板厚方向に圧縮ひずみを付与する歪加工工程と、
上記帯状コアバック部形成予定領域に存在する帯状コアバック部(21)と、上記帯状コアバック部から上記磁化容易方向に平行に延びる複数の平行ティース部(22)とを有するコアシート片(2)を上記方向性電磁鋼板から打ち抜く打抜き加工工程と、
上記平行ティース部を内側にして上記コアシート片を環状に巻回させることにより、上記コアバック部と上記ティース部とを有するコア板(1)を得る巻回加工工程と、
上記巻回加工工程後に、上記コアバック部を焼鈍により再結晶化させる焼鈍工程と、を有するコア板の製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
上記製造方法においては、方向性電磁鋼板の磁化容易方向に平行に延びる平行ティース部を形成し、平行ティース部を内側にしてコアシート片を環状に巻回させている。そのため、ティース部においては、環状のコア板の中心に向かう方向に磁化容易方向を揃えることができる。
【0010】
上記製造方法においては、コアバック部は、再結晶化される。そのため、方向性電磁鋼板の磁化容易方向をランダムな向きにすることができる。それ故、従来の方向性電磁鋼板から得られるコア板におけるコアバック部のように、磁化容易方向がティース部の伸長方向、すなわち、コア板の中心方向になることを防止できる。
【0011】
本来、コアバック部における磁化容易方向の所望方向は環状のコアバック部における周方向である。そのため、周方向と直交する方向、すなわちティース部の伸長方向がコアバック部における磁化容易方向の場合には、コアバックは磁化が困難になる。上記態様にかかる製造方法においては、コアバック部における磁化容易方向をランダムにすることができる。そのため、コアバック部において、ティース部の伸長方向と平行な磁化容易方向を減らすことができる。その結果、コアバック部の磁気特性の低下を防止することができる。
【0012】
また、上記製造方法においては、コアバック部は、圧縮ひずみが付与された後、焼鈍による再結晶化を経ている。そのため、焼鈍時に再結晶化されやすく、低温、短時間での再結晶化が可能になる。それ故、焼鈍工程においては、コアバック部、帯状コアバック部、又はコアバック部形成予定領域だけでなく、コアバック部を含むコア板、帯状コアバック部を含むコアシート片、又はコアバック部形成予定領域を含む方向性電磁鋼板の加熱が可能になる。すなわち、焼鈍工程において、コア板、コアシート片、方向性電磁鋼板を加熱しても、ティース部、平行ティース部、又は後工程においてティース部となるティース部の形成予定領域の再結晶化を防止しつつ、コアバック部、帯状コアバック部、又はコアバック部形成予定領域を選択的に再結晶化させることができる。
【0013】
以上のごとく、上記製造方法によって、磁化容易方向がティース部の伸長方向となるティース部と、磁化容易方向がランダム方向となるコアバック部とを有するコア板を得ることができる。したがって、上記態様によれば、ティース部における磁気特性を向上できると共に、コアバック部における磁気特性の低下を防止できるコア板の製造方法の提供が可能になる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1における、(a)方向性電磁鋼板の平面図、(b)コアシート片の平面図、(c)帯状コアバック部に圧縮ひずみを有するコアシート片の平面図、(d)コアバック部に圧縮ひずみを有するコア板の平面図、(e)コアバック部に再結晶化領域を有するコア板の平面図。
図2】実施形態1における、ショットピーニングによる歪加工工程の説明図。
図3】実施形態1における、磁化容易方向を示すコア板の拡大図。
図4】実施形態2における、(a)方向性電磁鋼板の平面図、(b)コアシート片の平面図、(c)コア板の平面図、(d)コアバック部に圧縮ひずみを有するコア板の平面図、(e)コアバック部に再結晶化領域を有するコア板の平面図(e)。
図5】実施形態3における、(a)方向性電磁鋼板の平面図、(b)コアシート片の平面図(b)、(c)帯状コアバック部に圧縮ひずみを有するコアシート片の平面図、(d)コアバック部に再結晶化領域を有するコアシート片の平面図、(e)再結晶化領域を有するコア板の平面図。
図6】実施形態4における、(a)コアバック部形成予定領域に圧縮ひずみを有する方向性電磁鋼板の平面図、(b)帯状コアバック部に圧縮ひずみを有するコアシート片の平面図、(c)コアバック部に圧縮ひずみを有するコア板の平面図、(d)コアバック部に再結晶化領域を有するコア板の平面図。
図7】比較形態1における、(a)方向性電磁鋼板の平面図、(b)コアシート片の平面図、(c)コア板の平面図。
図8】比較形態1における、磁化容易方向を示すコア板の拡大図。
図9】比較形態2における、(a)方向性電磁鋼板の平面図、(b)コア板の平面図。
図10】比較形態2における、磁化容易方向を示すコア板の拡大図。
図11参考形態1における、ローラ圧延による歪加工工程の説明図。
図12参考形態1における、コア板の要部拡大断面図。
図13】実験例における、コアバック部とティース部との厚み差と、磁界H=5000A/m時における磁束密度及び周波数400Hz、磁束密度1.0T時におけるヒステリシス損との関係を示す図。
図14参考形態2における、(a)コアシート片の平面図、(b)帯状コアバック部に圧縮ひずみを付与しながらコアシート片を巻回させる様子を示す説明図。
図15図14(b)におけるXV−XV線矢視断面図。
図16参考形態2における、コア板の要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
コア板の製造方法にかかる実施形態について、図1図3を参照して説明する。本形態においては、打抜き加工工程後に、歪加工工程、巻回加工工程、及び焼鈍工程を行って、図1(e)に例示されるように、円環状のコアバック部11と、コアバック部11からその中心Oに向かって延びる複数のティース部12とを有するコア板1を製造する。
【0016】
本実施形態においては、打抜き加工工程、歪加工工程、巻回加工工程、焼鈍工程を順次行ってコア板を製造する形態について説明する。各工程の概要を以下に示す。
【0017】
図1(a)及び図1(b)に例示されるように、打抜き加工工程においては、方向性電磁鋼板3から、その磁化容易方向Yと垂直方向Xに延びる帯状コアバック部21と、磁化容易方向Yに平行に延びる複数の平行ティース部22とを有するコアシート片2を打ち抜く。歪加工工程においては、図1(c)に例示されるように、コアシート片2の帯状コアバック部21に、板厚方向Zに圧縮ひずみを付与する。なお、図1、後述の図4図6においては、紙面と垂直方向が板厚方向である。
【0018】
図1(c)及び図1(d)に例示されるように、巻回加工工程においては、平行ティース部22を内側にしてコアシート片2を環状に巻回させることにより、コアバック部11とティース部12とを有するコア板1を得る。焼鈍工程においては、焼鈍によりコアバック部11を再結晶化させる。以下、各工程を詳細に説明する。
【0019】
図1(a)及び図1(b)に例示されるように、打抜き加工工程においては、方向性電磁鋼板3から、帯状コアバック部21と複数の平行ティース部22とを有するコアシート片2を打ち抜く。方向性電磁鋼板3は、面内の一方向に磁化容易方向Yを有する。すなわち、磁化容易方向Yが、板状の電磁鋼板の面内方向において一方向に揃った電磁鋼板が方向性電磁鋼板3である。面内方向は、電磁鋼板の厚み方向とは垂直な方向である。方向性電磁鋼板3としては、例えば市販品を利用することができ、例えば新日鐵住金株式会社製の23ZH85を用いることができる。通常、方向性電磁鋼板3の磁化容易方向Yは、圧延方向と平行な方向である。
【0020】
打抜き加工工程において、帯状コアバック部21は、方向性電磁鋼板3の磁化容易方向Yと垂直方向Xに延びるように打ち抜かれる。すなわち、帯状コアバック部21の長尺方向が磁化容易方向Yに対する垂直方向Xに平行になる。一方、平行ティース部22は、方向性電磁鋼板3の磁化容易方向Yに平行に延びるように打ち抜かれる。コアシート片2は、図1(b)に例示されるように櫛状であり、平行ティース部22が櫛歯状に形成されている。
【0021】
なお、本明細書において、垂直方向は、90°の方向だけでなく、外観上90°に近い方向を含む。平行方向についても同様であり、180°又は360°の方向だけでなく、外観上180°又は360°に近い方向を含む。
【0022】
次に、歪加工工程においては、図1(c)に例示されるように、コアシート片2における帯状コアバック部21に圧縮ひずみをあたえる。図1(c)においては、圧縮ひずみが付与された領域をドットハッチングにより示している。以降の図面においてもドットハッチングは圧縮ひずみが付与された領域を示す。歪加工工程においては、帯状コアバック部21に圧縮ひずみを部分的に付与することもできるが、帯状コアバック部21の全体に圧縮ひずみを付与することが好ましい。
【0023】
歪加工工程における圧縮ひずみの付与方法は、特に限定されず、帯状コアバック部21に圧縮ひずみをあたえることができる種々の圧縮加工方法を利用できる。圧縮ひずみとしては、圧縮塑性ひずみ及び圧縮弾性ひずみのいずれでもよいが、焼鈍工程における再結晶化がより容易になるという観点から圧縮塑性ひずみが好ましい。
【0024】
圧縮加工方法としては、ショットピーニング、ウォータジェットピーニング、レーザピーニング、超音波ピーニング、鍛造、又はローラ圧延加工が好ましい、この場合には、圧縮塑性ひずみを与えやすく、焼鈍工程における再結晶化がより容易になる。また、加工領域の制御が比較的容易であり、平行ティース部22などの帯状コアバック部21以外の部分に圧縮塑性ひずみが加わることを防止できるという観点から、ショットピーニング、ウォータジェットピーニング、レーザピーニング、超音波ピーニングがより好ましい。一方、圧縮塑性ひずみを十分に付与でき、コアバック部における磁化容易方向がよりランダムな向きになりやすく、磁気特性をより向上できるという観点からは、鍛造、ローラ圧延加工がより好ましい。
【0025】
図2に例示されるように、ショットピーニングによって圧縮ひずみを付与する場合には、ショットピーニング装置の噴射ノズル41からショットと呼ばれる噴射材40をコアシート片2における帯状コアバック部21に噴射する。噴射方向は、コアシート片2の厚み方向Zと平行方向である。これにより、コアシート片2の帯状コアバック部21に圧縮ひずみが付与される。
【0026】
次に、巻回加工工程を行うことができる。図1(c)における両端から下方向に延びる2つの矢印は、巻回加工工程において巻回させる向きを示す。図1(c)及び図1(d)に例示されるように、巻回加工工程においては、平行ティース部22を内側にしてコアシート片2を環状に巻回させる。図1(c)に示す矢印の方向にコアシート片2をカールさせるため、巻回加工はカーリング加工ということもできる。
【0027】
巻回加工工程においては、帯状コアバック部21が円環状のコアバック部11を形成し、平行ティース部22がティース部21を形成する。そして、各ティース部21の伸長方向が円環状のコアバック部11の中心Oを向くように加工される。
【0028】
本形態においては、巻回加工工程の前に歪加工工程がすでに行われているため、巻回加工工程後に得られるコア板1は、コアバック部11に圧縮ひずみを有している。
【0029】
次に、焼鈍工程を行うことができる。図1(e)においては、再結晶化領域を斜線ハッチングにより示している。以降の図面においても斜線ハッチングは、再結晶化領域を示す。
【0030】
焼鈍工程においては、コア板1を加熱する。これにより、図1(e)に例示されるように、圧縮ひずみが付与されているコアバック部11において再結晶化が起こる。そして、再結晶化により、磁化容易方向がばらばらになり、コアバック部1における磁化容易方向をランダムな方向にすることができる(図3参照)。なお、図3における破線矢印はコア板の各部位における磁化容易方向を示す。後述の図8及び図10においても同様である。
【0031】
圧縮ひずみが付与されたコアバック部11においては、焼鈍工程において再結晶化が起こり易くなる。したがって、低温、短時間の焼鈍での再結晶化が可能である。焼鈍工程においては、圧縮ひずみが付与されていない例えばティース部12などのコアバック部11以外の領域においては再結晶化が起こらず、圧縮ひずみが付与されたコアバック11において再結晶化が起こる温度で焼鈍を行うことができる。
【0032】
焼鈍工程における加熱温度は、素材の組成、歪の程度などにより適宜調整することができるが、例えば700〜1100℃である。圧縮ひずみが付与されているコアバック部11においては上記のごとく再結晶化が起こり易いため、例えば700℃程度という低温でも再結晶化が可能になる。コアバック部11以外の領域における再結晶をより確実に抑制するという観点や、素材の酸化をより抑制するという観点から、焼鈍工程における加熱温度は700〜850℃であることが好ましく、700〜800℃であることがより好ましい。
【0033】
焼鈍工程における上述の加熱温度での保持時間、すなわち加熱保持時間は、素材の塑性、歪の程度、生産性などにより、適宜調整することができるが、例えば1秒〜2時間である。上記のごとく、圧縮ひずみが付与されたコアバック部11においては再結晶化が起こり易いため、例えば10秒以下という短い加熱保持時間での焼鈍も可能になる。生産性の向上や、素材の酸化を抑制するという観点から、焼鈍工程における加熱保持時間は短い方がよく、好ましくは600秒以下がよい。上述の700〜800℃程度の低温でもコアバック部11を十分に再結晶化させることができるという観点から、加熱保持時間は5秒以上であること好ましく、10秒以上であることがより好ましい。
【0034】
次に、本形態の作用効果について説明する。本形態の製造方法においては、図1に例示されるように、方向性電磁鋼板3の磁化容易方向Yに平行に延びる平行ティース部21を形成し、この平行ティース部21を内側にしてコアシート片2を環状に巻回させている。そのため、上記製造方法によって得られるコア板1のティース部12においては、図3に例示されるように、ティース部12の伸長方向L、すなわち、円環状のコア板1の中心Oに向かう方向に磁化容易方向を揃えることができる。その結果、ティース部12の磁気特性を高めることができる。
【0035】
また、コアバック部11は、焼鈍工程において再結晶化される。そのため、図3に例示されるように、コアバック部11においては、磁化容易方向Yをランダムな向きにすることができる。それ故、方向性電磁鋼板を用いて製造したにもかかわらず、図8に例示される後述の比較形態1に例示されるコア板8のように、コアバック部81における磁化容易方向がティース部82の伸長方向L、すなわちコアバック部81から中心O向きになることを防止できる。コアバック部における磁化容易方向の所望方向は環状のコアバック部における周方向であるため、コアバック部81における周方向Cと直交する方向の磁化容易方向、すなわちティース部12の伸長方向Lと平行な磁化容易方向は、コアバック部81の周方向Cには磁化困難方向となり、磁気特性上好ましくない方向となる。
【0036】
本実施形態の製造方法においては、図3に例示されるように、コアバック部11における磁化容易方向をランダムにすることができる。それ故、コアバック部11におけるティース部の伸長方向Lと平行な方向の磁化容易方向を減らすことができる。その結果、上述のティース部12の磁気特性を高めつつも、コアバック部11の磁気特性の低下を防止することができる。
【0037】
また、上記製造方法においては、コアバック部11は、圧縮ひずみが付与された後、焼鈍による再結晶化を経ている。そのため、焼鈍時に再結晶化されやすく、低温、短時間での再結晶化が可能になる。それ故、焼鈍工程においては、コア板1のコアバック部11を部分的に加熱させる必要はなく、コアバック部を含むコア板1の全体を加熱させることができる。すなわち、焼鈍工程において、コア板1を加熱しても、ティース部12の再結晶化を防止しつつ、コアバック部11を選択的に再結晶化させることができる。
【0038】
本形態の製造方法において、打抜き加工工程後の各工程は、歪加工工程を経た後に焼鈍工程が行われていれば順不同であり、順序を入れ替えることができる。例えば、本形態のように、打抜き加工工程、歪加工工程、巻回加工工程、焼鈍工程の順で行うことができる。また、打抜き加工工程、巻回加工工程、歪加工工程、焼鈍工程の順で行うこともできる。さらに、打抜き加工工程、歪加工工程、焼鈍工程、巻回加工工程の順で行うこともできる。打抜き加工工程後の各工程の順序を入れ替えた実施形態については、後述の実施形態2及び実施形態3において説明する。また、後述の参考形態2に例示されるように、歪加工工程と巻回加工工程とは同時進行させてもよい。
【0039】
焼鈍工程は、各工程の最後に行うことが好ましい。この場合には、歪加工工程において付与される厚み方向の圧縮歪だけでなく、例えば巻回加工工程などにおいて生じうる面内方向の歪も焼鈍により解消することができる。そのため、鉄損の劣化を防止することができる。
【0040】
本実施形態のように、巻回加工工程の前に歪加工工程を行う場合には、巻回加工において付与されうる不均質な加工ひずみがない均質な素材からなるコアシート片2に対して圧縮ひずみを付与することができる。そのため、歪加工工程においては、厚み方向Zの圧縮ひずみをコアシート片2における帯状コアバック部21の素材全体へ均質に付与することができる。また、この場合には、一方向に延びる帯状コアバック部21に圧縮加工を行って圧縮ひずみを付与することができるため、圧縮加工がしやすくなり、圧縮加工方法の選択幅も広がる。
【0041】
以上のごとく、本形態の製造方法によれば、磁化容易方向がティース部12の伸長方向Lとなるティース部12と、磁化容易方向がランダム方向となるコアバック部11とを有するコア板1を得ることができる。したがって、上記コア板1の製造方法によれば、ティース部12における磁気特性を向上させることができると共に、コアバック部11における磁気特性の低下を防止することができる。すなわち、コア板1は、コアバック部11及びティース部12の双方において高い磁束密度を発揮することができる。よって、コア板1は、例えば回転電機のステータコアに好適である。
【0042】
(実施形態2)
本形態においては、打抜き加工工程後に、巻回加工工程、歪加工工程、及び焼鈍工程を順次行ってコア板を製造する。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0043】
図4(a)及び図4(b)に例示されるように、まず、実施形態1と同様にして方向性電磁鋼板3の打ち抜き加工を行うことにより、帯状コア部21と平行ティース部22とを有するコアシート片2を得る。次いで、巻回加工工程を行い、図4(b)及び図4(c)に例示されるように、平行ティース部22を内側にしてコアシート片2を環状に巻回させる。これにより、コアバック部11とティース部12とを有するコア板1を得る。
【0044】
次に、歪加工工程を行い、図4(d)に例示されるように、コア板1のコアバック部11に、板厚方向に圧縮ひずみを付与する。次いで、焼鈍工程を行い、図5(e)に例示されるように、焼鈍によりコアバック部11を再結晶化させる。このようにして、実施形態1と同様のコア板1を得ることができる。
【0045】
各工程は、具体的には実施形態1と同様にして行うことができる。本実施形態のように、歪加工工程の前に巻回加工工程を行うことにより、巻回加工によって周方向に伸ばされたコアバック部11に対して厚み方向の圧縮ひずみが付与される。そのため、歪加工工程において付与されるひずみがない状態で巻回加工を行うことができる。それ故、低い加工応力での巻回加工が可能になる。更に巻回加工の寸法精度も向上できる。また、その他には、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
(実施形態3)
本形態においては、打抜き加工工程後に、歪加工工程、焼鈍工程、及び巻回加工工程を順次行ってコア板を製造する。図5(a)及び図5(b)に例示されるように、まず、実施形態1と同様に打抜き加工工程を行うことにより方向性電磁鋼板3からコアシート片2を作製し、さらに実施形態1と同様に歪加工工程を行うことにより、図5(c)に例示されるように、コアシート片2の帯状コアバック部21に圧縮ひずみを付与する。
【0047】
次いで、焼鈍工程を行うことにより、図5(d)に例示されるようにコアシート片2の帯状コアバック部21を再結晶化させる。次に、図5(d)及び図5(e)に例示されるように、平行ティース部22を内側にしてコアシート片2を環状に巻回させる。これにより、コアバック部11とティース部12とを有するコア板1を得る。このようにして、実施形態1と同様のコア板1を得ることができる。
【0048】
各工程は、具体的には実施形態1と同様にして行うことができる。本実施形態のように、巻回加工工程の前に焼鈍工程を行うことにより、焼鈍工程で得られる再結晶粒を例えば粒径500μm以下の細粒に制御することができる。その結果、図5(d)及び図5(e)に例示されるように、巻回加工の際に、帯状コアバック部21における伸び変形が起こり易くなり、加工性が向上する。したがって、例えば円環状のような所望形状に加工し易くなる。更に焼鈍工程において起こりうる収縮変形が巻回加工で矯正されるためコア板1の寸法精度を向上させることができる。その他には、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
(実施形態4)
本実施形態においては、歪加工工程後に、打抜き加工工程、巻回加工工程、及び焼鈍工程を行って実施形態1と同様のコア板1を製造する。以下に、歪加工工程、打抜き加工工程、巻回加工工程、焼鈍工程の順で行う形態について説明する。
【0050】
図6(a)に例示されるように、まず、方向性電磁鋼板3において、帯状コアバック部形成予定領域31を決定する。帯状コアバック部形成予定領域31は、打抜き加工工程後に得られるコアシート片2における帯状コアバック部21と同形状であるが、実際に打ち抜き加工が施される前の方向性電磁鋼板3上の仮想領域である。換言すれば、帯状コアバック部形成予定領域31は、方向性電磁鋼板3上における設計図のようなものであるといえる。帯状コアバック部形成予定領域31の決定の際には、打抜き加工工程後に平行ティース部22となる平行ティース部形成予定領域32を決定しておくこともでき、打抜き加工工程後にコアシート片2となるコアシート片形成予定領域30を決定しておくこともできる。方向性電磁鋼板3における磁化容易方向Yと垂直方向Xに延びる帯状コアバック部形成予定領域31を少なくとも決定しておけばよい。
【0051】
歪加工工程においては、図6(a)に例示されるように、方向性電磁鋼板3の帯状コアバック部形成予定領域31に板厚方向に圧縮ひずみを付与する。次いで、打ち抜き加工を行うことにより、図6(b)に例示されるように、帯状コア部21と平行ティース部22とを有するコアシート片2を得る。打ち抜きは、予め決定した帯状コアバック部形成予定領域31から帯状コアバック部21が形成されるように行う。すなわち、帯状コアバック部21は、方向性電磁鋼板3に存在する帯状コアバック部予定領域31から打抜き加工によって形成される。このようにして得られたコアシート片2は、すでに圧縮ひずみが付与された帯状コアバック部21を有する。
【0052】
次いで、巻回加工工程を行い、図6(b)に例示されるように、平行ティース部22を内側にしてコアシート片2を環状に巻回させる。これにより、図6(c)に例示されるように、コアバック部11とティース部12とを有するコア板1を得る。コア板1は、コアバック11に圧縮ひずみを有している。
【0053】
次に、焼鈍工程を行い、図6(d)に例示されるように、焼鈍によりコアバック部11を再結晶化させる。このようにして、実施形態1と同様のコア板1を得ることができる。
【0054】
各工程は、具体的には実施形態1と同様にして行うことができる。本実施形態のように、打抜き加工工程の前に歪加工工程を行う場合には、例えばトランスファープレス型と呼ばれるプレス機械を用いることによって、歪加工工程と打ち抜き加工工程とを同じプレス機により連続的に行うことが可能になる。すなわち、図6(a)及び図6(b)に例示されるように、帯状コアバック部形成予定領域31への厚み方向の圧縮ひずみの付与と、コアシート片2の打ち抜き加工とを、自動加工により連続で行うことができる。そのため、歪加工工程及び打抜き加工工程の高速化が可能になる。また、その他には、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
(比較形態1)
本形態においては、方向性電磁鋼板からコアシート片を打ち抜き、このコアシート片を巻回させることにより、実施形態1と同形状のコア板を製造する。具体的には、図7(a)及び(b)に例示されるように、まず、実施形態1と同様にして、打抜き加工工程を行うことにより、方向性電磁鋼板3から、帯状コアバック部21と平行ティース部22とを有するコアシート片2を作製する。コアシート片2は実施形態1と同様のものである。
【0057】
次に、巻回加工工程を行い、図7(b)に例示されるように、平行ティース部22を内側にしてコアシート片2を環状に巻回させる。これにより、図7(c)に例示されるように、コアバック部81とティース部82とを有するコア板8を得る。
【0058】
本形態の製造方法においては、コアバック部81は、実施形態1〜4のような歪加工工程及び焼鈍工程を経ていない。そのため、図8に例示されるように、コアバック部81の磁化容易方向とティース部82の磁化容易方向とが平行になり、いずれもティース部82の伸長方向Lとなる。
【0059】
このようなコア板8においては、ティース部82においては、磁化容易方向が所望の伸長方向Lと平行であるため、磁気特性に優れが、コアバック部81においては、磁化容易方向が所望の周方向Cと直交する方向になる。すなわち、コアバック部81は、磁気回路において磁化が困難となり、磁気特性上好ましくない。
【0060】
(比較形態2)
本形態においては、無方向性電磁鋼板から打ち抜きにより、実施形態1と同形状のコア板を製造する。まず、図9(a)に例示されるように、面内の磁化容易方向がランダムな無方向性電磁鋼板300を準備した。無方向性電磁鋼板300としては、市販品を使用することができる。次いで、無方向性電磁鋼板300からコアバック部91とティース部92とを有する実施形態1と同形状のコア板9を打ち抜きにより作製した。
【0061】
コア板9は、無方向性電磁鋼板300から打ち抜きにより作製したため、図10に例示されるように、磁化容易方向は、コアバック部91及びティース部92のいずれにおいてもランダムな方向になる。したがって、ティース部92の伸長方向Lと平行に磁化容易方向を有する上述の実施形態1〜4のコア板1に比べて、ティース部92における磁気特性が低下する。
【0062】
参考形態1
本形態においては、歪加工工程をローラ圧延により行う形態について説明する。本形態においては、実施形態1と同様にして打抜き加工工程、歪加工工程、巻回加工工程、焼鈍工程を順次行ってコア板を製造する。
【0063】
まず、実施形態1と同様に、帯状コアバック部21と、平行ティース部22とを有するコアシート片2を打ち抜く(図1(a)及び図1(b)参照)。次いで、図11に例示されるようにローラ圧延により、コアシート片2の帯状コアバック部21に、板厚方向Zに圧縮ひずみを付与する。つまり、圧延機5の一対のローラ51、52間にコアシート片2の帯状コアバック部21を挟み込み、圧延を行うことにより圧縮ひずみを付与する。
【0064】
ローラ圧延では、帯状コアバック部21に圧縮ひずみを十分かつ均一に付与することができる。その結果、帯状コアバック部21の厚みは小さくなり、例えば均一な厚みに加工される。後述の参考形態2に例示するように、帯状コアバック部21の厚みを傾斜させることも可能である。
【0065】
次いで、実施形態1と同様に、巻回加工工程、焼鈍工程を行うことにより、コア板1を製造することができる。図12に本形態により得られるコア板1におけるコアバック部11とティース部12の境界部分の拡大断面図の一例を示す。歪加工工程において帯状コアバック部21に圧縮ひずみが付与されているため、図12に例示されるように、コアバック部11の厚みT1はティース部12の厚みT2よりも小さくなる。つまり、T1<T2である。
【0066】
コアバック部11とティース部12との厚み差ΔT(単位:%)は、コアバック部11の厚みT1と、ティース部12の厚みT2とから以下の式(I)より算出される。
ΔT=(T2−T1)×100/T2 ・・・(I)
【0067】
コアバック部11とティース部12との厚み差ΔTは、5〜20%であることが好ましい。つまり、コアバック部11とティース部12との厚み差ΔTが5〜20%になるように歪加工工程において圧縮ひずみを付与することが好ましい。この場合には、後述の実験例において示すように、コア板1のコアバック部11における磁束密度をより向上できると共に、ヒステリシス損をより低減できる。その結果、コアバック部における磁気特性をより向上させることができる。コアバック部における磁束密度がさらに向上するという観点から、ΔTは10〜20%であることがより好ましい。
【0068】
(実験例)
本例においては、方向性電磁鋼板の試験片に圧縮ひずみを付与して、厚みの異なる複数の試験片を作製し、各試験片の磁気特性の評価を行う。これにより、コアバック部とティース部との厚み差の好ましい範囲を調べる例である。
【0069】
まず、実施形態1と同様の方向性電磁鋼板から縦55mm、横55mmの試験片を切り出した。試験片の厚みは0.27mmである。
【0070】
次いで、ローラ圧延により、所定の圧延率に設定して試験片に圧縮ひずみを付与した。このようにして、厚みの異なる試験片を作製した。圧延後の試験片の厚みTp1、及び圧延前の試験片の厚みTp2から、厚みの変化率ΔTp(単位:%)を以下の式(II)により算出した。
ΔTp=(Tp2−Tp1)×100/Tp2 ・・・(II)
【0071】
本例においては、ΔTpが0、5%、10%、20%、30%の試験片を作製した。試験片の厚みは、厚みに傾斜やばらつきがある場合には最小厚のことである。ただし、周囲に比べて極端に厚みが小さくなっている部分がある場合にはその部分を除外する。厚みの測定は(株)ミツトヨ製のマイクロメータM110−OMを用いて測定した。
【0072】
次いで、各試験片を実施形態1と同様に加熱し、焼鈍により再結晶化させた。このようにして、コアバック部のモデルとなる試験片を得た。
【0073】
次に、試験片の磁気特性の評価を行った。磁気特性の評価は、試験片の形状が上記の通り50mm×50mmの正方形である点を除いて、JIS C 2556に規定の「電磁鋼板単板磁気特性試験方法」に準拠して、磁束密度及びヒステリシス損を測定することにより行った。測定には、メトロン技研(株)製の磁気特性検査装置SK300を用いた。
【0074】
図13に、厚みの変化率ΔTpと磁界H=5000A/m時における磁束密度との関係、及び厚みの変化率ΔTpと周波数400Hz、磁束密度1.0T時におけるヒステリシス損との関係を示す。なお、厚みの変化率ΔTpは、参考形態1におけるコアバック部とティース部との厚み差ΔTと同義であるため、図13には、厚みの変化率をコアバック部とティース部との厚み差として示す。図13のグラフにおいては、横軸がコアバック部とティース部との厚み差を示す。左側の縦軸が磁界H=5000A/m時における磁束密度を示す。右側の縦軸が周波数400Hz、磁束密度1.0T時におけるヒステリス損を示す。
【0075】
図13より知られるように、コアバック部とティース部との厚み差が5〜20%の場合には、磁束密度をより向上でき、ヒステリシス損をより低減できることがわかる。つまり、磁気特性をより向上させるためには、コアバック部とティース部との厚み差は5〜20%であることが好ましい。より好ましくは、厚み差は10〜20%がよい。
【0076】
また、図13より知られるように、コア板の磁気特性を充分に高めるという観点から、コアバック部の磁束密度は1.65T以上が好ましく、1.7T以上がより好ましい。また、コアバック部のヒステリシス損は7W/kg以下が好ましい。
【0077】
なお、本例においては、ローラ圧延により圧延ひずみを付与した試験片について上述の厚み差ΔTの好ましい範囲を検討したが、鍛造、各種ピーニング等による他の圧縮ひずみの付与方法についても同様の結果が得られる。ただし、圧延ひずみを十分に付与できるという観点からは、ローラ圧延、鍛造がより好ましい。
【0078】
参考形態2
本形態においては、歪加工工程と巻回工程とを同時進行させながら、コアバック部にテーパ領域を形成する例について説明する。本形態においても、打抜き加工工程、歪加工工程、巻回加工工程、焼鈍工程を行ってコア板を製造する。
【0079】
まず、実施形態1と同様に方向性電磁鋼板の打抜き加工工程を行い、図14(a)に例示されるように、帯状コアバック部21と平行ティース部22とを有するコアシート片2を打ち抜く。次いで、歪加工工程と巻回加工工程とを同じ工程内で行う。
【0080】
具体的には、図14(b)に例示されるように、コアシート片2の帯状コアバック部21に、板厚方向Zに圧縮ひずみを付与しながら、平行ティース部22を内側にしてコアシート片2を順次環状に巻回させていく。このようにして、帯状コアバック部21に対する圧縮ひずみの付与と、コアシート片2の巻回とを同時進行させることができる。圧縮ひずみの付与は、参考形態1と同様に、例えばローラ圧延により行うことができる。
【0081】
図15に例示されるように、ローラ圧延による歪加工工程においては、帯状コアバック部21に板厚が傾斜するテーパ領域115を形成することができる。テーパ領域115は、帯状コアバック部21における板厚がティース部側とは反対側の外縁100側に向けて小さくなるように形成される。
【0082】
次いで、実施形態1と同様に、焼鈍工程を行うことにより、コア板1を得ることができる。図16には、本形態のコア板1におけるコアバック部11とティース部12の境界部分の拡大断面図を示す。図16に例示されるように、コアバック部11は、コア板1の中心から外方に向けて厚みが小さくなるテーパ領域115を有している。つまり、テーパ領域115においてはコアバック部11の厚みが外縁100に向けて小さくなり、コアバック部11の厚みが傾斜している。
【0083】
本形態のように、コアバック部11にテーパ領域115を形成することにより、上述のように、歪加工工程と巻回加工工程とを同時進行させることが可能になる。そのため、製造工程の短縮化が可能になり、生産性を向上させることができる。また、この場合には、帯状コアバック部21の外縁100側が伸長しやすくなる。そのため、巻回をより容易に行うことができる。かかる観点からも生産性が向上する。
【0084】
テーパ領域115は、必ずしもコアバック部11の全域に形成する必要はないが、圧縮ひずみを付与してコアバック部11の磁気特性を向上させるという観点からは、コアバック部11の全体に形成することが好ましい。
【0085】
本形態のように、コアバック部11にテーパ領域115を形成する場合においても、参考形態1及び実験例のように、ティース部12に対するコアバック部11の厚みの差を5〜20%にすることが好ましい。コアバック部11がテーパ領域115を有する場合においても、コアバック部11の厚みT1は、その最小厚みで規定される。したがって、この場合のコアバック部11の厚みT1は、図16に例示されるようにコアバック部11における外縁100の厚みとなる。
【0086】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、実施形態1においては、圧縮加工方法として、ショットピーニングによる方法を図示して説明したが、他のピーニング方法や、鍛造等を行うことも可能である。また、円環状のコア板について説明したが、楕円環状や、四角環状、六角環状等の多角環状のコア板の作製も可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 コア板
11 コアバック部
12 ティース部
2 シート片
21 帯状コアバック部
22 平行ティース部
3 方向性電磁鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16