特許第6634797号(P6634797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6634797
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】開閉部材制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/695 20150101AFI20200109BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20200109BHJP
   E05F 15/41 20150101ALI20200109BHJP
【FI】
   E05F15/695
   B60J5/00 D
   E05F15/41
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-233284(P2015-233284)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2016-108939(P2016-108939A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-243380(P2014-243380)
(32)【優先日】2014年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】青島 宏樹
【審査官】 秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−322232(JP,A)
【文献】 特開2005−83052(JP,A)
【文献】 米国特許第6298295(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/689−15/697
E05F 15/41
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられた開閉部材を開閉移動させる駆動源となるモータを備えた駆動機構と、
前記開閉部材を開移動させる際には前記駆動機構に第一動作を行わせ、前記開閉部材を閉移動させる際には前記駆動機構に第二動作を行わせる制御部と、を備え、
該制御部により、前記駆動機構の動作状態の変化に基づいて、前記開閉部材と前記ドアにおいて前記開閉部材周辺に位置する周辺部材との間に挟まれた異物の有無を判定し、有判定の場合に、前記駆動機構の動作を中断する中断処理を行うとともに、前記モータの起動時から前記モータの回転速度が安定状態に達するまでの期間である初動マスク期間においては、挟まれた異物の有無の判定を行わないよう制御される開閉部材制御装置であって、
前記初動マスク期間は、前記モータにかかる作動負荷に応じて変更され
前記制御部は、前記モータの回転に対応したパルスエッジ数をカウントするとともに、起動時からの経過時間をタイマによりモニタしており、
前記初動マスク期間は、作動時から中継点までの期間である第1初動マスク期間と、前記中継点から前記モータの回転速度が安定する付近までの期間である第2初動マスク期間と、に分割されて構成されており、
前記第1初動マスク期間は、前記モータ特有の所定のパルスエッジ数である第1パルスエッジ数がカウントされるまでの期間として設定され、
前記第2初動マスク期間は、前記第1初動マスク期間の作動負荷の状態をフィードバックすることにより補正される値であって、前記モータの起動時から前記第1初動マスク期間が終了するまでの時間が所定時間を超えない場合には、前記モータ特有の所定のパルスエッジ数である第2パルスエッジ数がカウントされるまでの期間として設定されるとともに、前記第1初動マスク期間が終了するまでの時間が前記所定時間を超えた場合には、前記第2パルスエッジ数に期間補正値として算出されるパルスエッジ数を加算した第3パルスエッジ数がカウントされるまでの期間として設定されることを特徴とする開閉部材制御装置。
【請求項2】
前記作動負荷は、前記モータの回転速度として評価されることを特徴とする請求項1に記載の開閉部材制御装置。
【請求項3】
前記初動マスク期間の変更は、所定の作動負荷を超えることにより実行されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の開閉部材制御装置。
【請求項4】
前記期間補正値は、前記第1パルスエッジ数がカウントされるまでの実測時間と、前記所定時間と、の差分時間内に含まれるべきパルスエッジ数を算出した値であることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか一項に記載の開閉部材制御装置。
【請求項5】
前記期間補正値により補正された前記第3パルスエッジ数に達したことを条件に、前記初動マスク期間が終了され、挟まれた異物の有無の判定が許可されることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか一項に記載の開閉部材制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉部材制御装置に係り、特に開閉部材による異物の挟み込み及び巻き込みを検出可能な開閉部材制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアに設けられたウインドウガラス等の開閉部材を開閉移動させる際、開閉部材とその周辺部材との間に挟まれた異物の有無を判定することは、既に知られている。このような開閉部材制御装置では、通常、異物有りと判定した際には開閉部材の開閉動作を中断し、更には、それまでの動作とは逆の動作を実行して異物を解放することになっている。また、上記の制御としては、例えば、ウインドウに掛かる負荷荷重に応じて変化する測定値(例えば、ウインドウガラスを開閉移動させるために回転するモータの回転速度等)に対して閾値を設定し、この閾値と測定値とを対比して異物の有無を判定することが知られている。
【0003】
ところで、開閉部材の動作を開始する操作(スイッチ操作)を行った場合、当該操作指令を受けて、駆動源(モータ)が駆動されるのであるが、このような駆動源は、起動時には、安定して回転することができない。
よって、正確な挟み込み及び巻き込みを検知するために、駆動源起動時において、駆動源の回転が安定するまでは、挟み込み及び巻き込みの検知を行わない初動マスク期間が設定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような技術の一例として、特許文献1に係る技術においては、駆動源としてのモータの回転数が安定するまでの期間を、起動キャンセル期間(初動マスク期間)としている。
当該技術では、モータ起動時からのモータ回転数変化におけるピークに着目し、起動キャンセル期間(初動マスク期間)が設定される。
つまり、ピークが検出されたときには、モータ回転数の低下の割合を随時計測して、起動時からモータ回転数の低下の割合が最大となる時点までの時間Taを計測し、この時間Taにドアの振動周期の所定倍時間Tbを加算することにより、起動キャンセル期間(初動マスク期間)を設定している。
これにより、ウインドウの建て付け精度が悪く、ウインドウが多方向に搖動して、ウインドウと駆動系との間にクリアランスができ、モータが無負荷に近い状態で高速回転する状態となり、モータ回転数のピークが複数になるような場合においても、適切なキャンセル期間(マスク期間)を設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−322232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、ウインドウとウェザーストリップとの摺動抵抗が大きくなり、駆動源の作動負荷が大きくなる場合等に対応することができない。
このような状態は、例えば、周囲環境が低温時であるとき等に生起するが、これを検知して補正し、適切なマスク期間を設定することは、従来技術によってはできなかった。
このため、駆動源(モータ)が高負荷となる状態においても、適正なマスク期間を設定し、安全面に配慮した中で、誤反転及び誤停止等が発生することを防止するための技術の開発が求められていた。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動源が高負荷となるような状態であっても、適正な初動マスク期間を設定し、誤反転及び誤停止を有効に回避することが可能な開閉部材制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の開閉部材制御装置によれば、車両のドアに設けられた開閉部材を開閉移動させる駆動源となるモータを備えた駆動機構と、前記開閉部材を開移動させる際には前記駆動機構に第一動作を行わせ、前記開閉部材を閉移動させる際には前記駆動機構に第二動作を行わせる制御部と、を備え、該制御部により、前記駆動機構の動作状態の変化に基づいて、前記開閉部材と前記ドアにおいて前記開閉部材周辺に位置する周辺部材との間に挟まれた異物の有無を判定し、有判定の場合に、前記駆動機構の動作を中断する中断処理を行うとともに、前記モータの起動時から前記モータの回転速度が安定状態に達するまでの期間である初動マスク期間においては、挟まれた異物の有無の判定を行わないよう制御される開閉部材制御装置であって、前記初動マスク期間は、前記モータにかかる作動負荷に応じて変更され、前記制御部は、前記モータの回転に対応したパルスエッジ数をカウントするとともに、起動時からの経過時間をタイマによりモニタしており、前記初動マスク期間は、作動時から中継点までの期間である第1初動マスク期間と、前記中継点から前記モータの回転速度が安定する付近までの期間である第2初動マスク期間と、に分割されて構成されており、前記第1初動マスク期間は、前記モータ特有の所定のパルスエッジ数である第1パルスエッジ数がカウントされるまでの期間として設定され、前記第2初動マスク期間は、前記第1初動マスク期間の作動負荷の状態をフィードバックすることにより補正される値であって、前記モータの起動時から前記第1初動マスク期間が終了するまでの時間が所定時間を超えない場合には、前記モータ特有の所定のパルスエッジ数である第2パルスエッジ数がカウントされるまでの期間として設定されるとともに、前記第1初動マスク期間が終了するまでの時間が前記所定時間を超えた場合には、前記第2パルスエッジ数に期間補正値として算出されるパルスエッジ数を加算した第3パルスエッジ数がカウントされるまでの期間として設定されることにより解決される。
【0009】
上記の開閉部材制御装置によれば、初動マスク期間を、モータに係る作動負荷に応じて変更することとした。
このため、モータに高い負荷がかかる状態(例えば、低温時等)においても、当該高負荷を考慮した初動マスク期間を設定することができるため、まだモータの回転速度が安定しない状態において、挟み込み・巻き込み検出が開始されることを防止することができる。
【0010】
また、上記の開閉部材制御装置において、請求項2のように、前記作動負荷は、前記モータの回転速度として評価されると好適である。
具体的には、請求項3のように、前記初動マスク期間の変更は、所定の作動負荷を超えることにより実行されると好適である。
上記の構成であれば、簡易にモニタリングを行い、初動マスク期間を設定することが可能である。
【0013】
更に、期間補正値の算出は、請求項に記載のように、前記期間補正値は、前記第1パルスエッジ数がカウントされるまでの実測時間と、前記所定時間と、の差分時間内に含まれるべきパルスエッジ数を算出した値であると好適である。
そして、請求項に記載のように、前記期間補正値により補正された前記第3パルスエッジ数に達したことを条件に、前記初動マスク期間が終了され、挟まれた異物の有無の判定が許可されるよう構成されている。
【0014】
このように、初動マスク期間を第1初動マスク期間と第2初動マスク期間とに分割し、第1初動マスク期間の情報(第1パルスエッジ数がカウントされるまでの時間)に応じて、第2初動マスク期間を補正することとした。
モータに負荷がかかると、モータの回転速度が変化し、よって、所定のパルスエッジ数がカウントされるまでの時間が変化する。よって、モータの作動負荷として評価される回転速度に依存する指標として所定のパルスエッジ数のカウント時間を選択した。
よって、第1初動マスク期間において、第1パルスエッジ数がカウントされるまでの時間に応じて、第2初動マスク期間を補正することで、第2初動マスク期間に対し、モータの作動負荷を反映した補正を行うことができる。
具体的には、モータに高い作動負荷がかかった場合には、かからない場合よりも、期間補正値分、長い初動マスク期間が設定されることとなる。
これにより、適正な初動マスク期間を設定でき、まだモータの回転速度が安定しない状態において、挟み込み・巻き込み検出が開始されることを防止することができる。
そして、適正な初動マスク期間終了後には、挟み込み・巻き込み検出が許可されることから、以後、挟み込み・巻き込み検出を実行することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の開閉部材制御装置によれば、モータにかかる作動負荷によって、初動マスク期間を補正することができる。
具体的には、初動マスク期間を、第1初動マスク期間と第2初動マスク期間とに分割構成し、第1初動マスク期間においては、作動負荷の程度を把握し、当該情報をフィードバックして第2初動マスク期間を決定するようにした。
よって、柔軟に初動マスク期間を設定することができる。
このように、本発明の開閉部材制御装置によれば、駆動源が高負荷となるような状態であっても、適正なマスク期間を設定し、誤反転及び誤停止を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る開閉部材制御装置のメカニズムを示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る開閉部材制御装置の電気構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る開閉部材制御装置の動作例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る開閉部材制御装置の立ち上がり時を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る開閉部材制御のマスク期間設定の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0018】
本実施形態に係る開閉部材制御装置は、車両Sに搭載されたパワーウインドウ装置1であり、そのメカニズムを示す構成は、図1に示す通りである。図1は、本実施形態に係るパワーウインドウ装置1のメカニズムを簡単に示した説明図である。
【0019】
パワーウインドウ装置1は、車両Sのドア10に設けられた開閉部材としてのウインドウガラス11をモータ20の回転駆動により昇降(開閉)させるものである。パワーウインドウ装置1は、ウインドウガラス11を開閉移動させる駆動機構としての昇降機構2を有する。また、パワーウインドウ装置1の電気構成について説明すると、図2に示すように、昇降機構2の作動を制御するための制御ユニット3と、車両Sの乗員が作動を指令するための操作スイッチ4と、が主な構成要素として設けられている。
【0020】
ウインドウガラス11は不図示のレールに沿って全閉位置(上死端)と全開位置(下死端)との間を昇降動作する。昇降機構2は、ドア10に固定された減速機構を有するモータ20と、モータ20に駆動される扇形状のギヤ21aを備えた昇降アーム21と、昇降アーム21とクロスして枢支される従動アーム22と、ドア10に固定された固定チャンネル23と、ウインドウガラス11の下部に設けられたガラス側チャンネル24と、を主要構成要素としている。
なお、ウインドウガラス11の出入箇所及びウインドウ回りには、合成樹脂弾性体から構成されたウェザーストリップ(図示せず)が配設されており、ウインドウガラス11閉塞状態においては、ウインドウガラス11回りのシーリングを行うよう構成されている。そして、ウインドウガラス11は、ウインドウガラス11の出入箇所配設されたウェザーストリップに摺動しながら昇降を行う構成となっている。
【0021】
モータ20は、制御ユニット3から給電される電力によって回転駆動し、正逆双方の回転方向に回転自在である。そして、モータ20が回転すると、これに連動して昇降アーム21及び従動アーム22が揺動し、これらの各端部が各チャンネル23、24により摺動規制を受ける。つまり、昇降アーム21及び従動アーム22がXリンクとして駆動し、この結果、ウインドウガラス11を昇降作動させる。
【0022】
また、モータ20には、回転検出装置25が一体に備えられている。回転検出装置25は、ホール素子等により構成されており、モータ20の回転と同期したパルス信号(速度検出信号あるいは回転速度信号等)を制御ユニット3へ出力する。かかるパルス信号は、ウインドウガラス11の所定移動量毎もしくはモータ20の所定回転角毎に出力される。すなわち、回転検出装置25は、モータ20の回転速度に略比例するウインドウガラス11の移動に応じた信号を出力することになる。
【0023】
なお、駆動回路32内には、モータ20保護用のリレー33が設けられている。このリレー33は、モータ20と電気的に接続されており、リレー33の極性が切り替えられることでモータ20に流れる電流の方向(向き)が切り替えられる。そして、電流が順方向に流れるとモータ20が正回転し、電流が逆方向に流れるとモータ20が逆回転するようになる。
【0024】
制御ユニット3は、上記のパルス信号に基づいて、ウインドウガラス11の昇降位置を算出する。また、制御ユニット3は、パルス信号の間隔によってモータ20の回転速度、又はこれに対応するウインドウガラス11の昇降速度を算出することができる。具体的に説明すると、制御ユニット3(厳密には、後述するコントローラ31)は、入力されるパルス信号からパルス信号の立上がり部または立下り部、すなわちパルスエッジを検出し、このパルスエッジの間隔(周期、パルス幅)に基づいてモータ20の回転速度(回転周期)を算出すると共に、各パルス信号の位相差に基づいてモータ20の回転方向を検出する。
また、制御ユニット3には、タイマ34が備えられており、コントローラ31に対して、データ処理やデータ演算等に使用するためのクロックを送信できるよう構成されている。
これにより、モータ20の駆動開始から、後述する第1初動マスク期間T1のパルスエッジ数到達までの時間が計測される。
【0025】
以上のように、制御ユニット3は、モータ20の回転速度(回転周期)に基づいてウインドウガラス11の移動速度を間接的に算出し、モータ20の回転方向に基づいてウインドウガラス11の移動方向を特定している。また、制御ユニット3は、モータ20の回転に対応したパルスエッジをカウントしている。このパルスカウント値は、ウインドウガラス11の開閉動作に伴って加減算される。制御ユニット3は、パルスカウント値の大きさによってウインドウガラス11の開閉位置を特定する。
【0026】
制御ユニット3についてより詳しく説明すると、コントローラ31と、駆動回路32から構成されている。コントローラ31は、CPU、ROMやRAM等の不図示のメモリ、入力回路、出力回路等を備えるマイクロコンピュータによって構成されている。コントローラ31には図2に示すようにドア開閉信号6が入力される。このドア開閉信号6は、ドア10のカーテシスイッチ等から発信される信号である。そして、コントローラ31は、上記ドア開閉信号6に基づいてドア10の開閉状態を検知(判断)する。すなわち、コントローラ31は、ドア10の開閉状態を検知する検知部として機能する。
【0027】
また、コントローラ31は、駆動回路32とともに制御部として機能し、操作スイッチ4からの操作信号に応じてウインドウガラス11を開閉移動させる。具体的に説明すると、本実施形態に係る操作スイッチ4は、2段階操作可能な揺動型スイッチ等で構成され、開スイッチ、閉スイッチ及びオートスイッチを有している。この操作スイッチ4を乗員が操作することにより、コントローラ31へウインドウガラス11を開閉動作させるための指令信号が出力される。例えば、操作スイッチ4の一端側が1段階操作されると開スイッチがオンされ、ウインドウガラス11を通常開移動(すなわち操作している間だけの開移動)させるための通常開指令信号がコントローラ31に出力される。コントローラ31は、通常開指令信号を受信している間、ウインドウガラス11を通常開動作させるためにモータ20を正回転させて昇降機構2に下降動作を行わせる。
【0028】
反対に、操作スイッチ4の他端側が1段階操作されると閉スイッチがオンされ、ウインドウガラス11を通常閉移動(すなわち操作している間だけの閉移動)させるための通常閉指令信号がコントローラ31に出力される。コントローラ31は、通常閉指令信号を受信している間、ウインドウガラス11を通常閉動作させるためにモータ20を逆回転させて昇降機構2に上昇動作を行わせる。
【0029】
また、操作スイッチ4が一端側へ2段階操作されると開スイッチ及びオートスイッチが共にオンされ、ウインドウガラス11をオート開移動(すなわち操作を止めても全開位置に到達するまで移動する動作)させるためのオート開指令信号がコントローラ31に出力される。コントローラ31は、オート開指令信号を受信すると、ウインドウガラス11が全開位置に到達するまでモータ20を正回転させ昇降機構2に連続下降動作(第一動作に相当)を行わせる。
【0030】
また、操作スイッチ4が他端側へ2段階操作されると閉スイッチ及びオートスイッチが共にオンされ、ウインドウガラス11をオート閉移動(すなわち操作を止めても全閉位置に到達するまで移動する動作)させるためのオート閉指令信号がコントローラ31に出力される。コントローラ31は、操作スイッチ4からオート閉指令信号を受信すると、ウインドウガラス11が全閉位置に到達するまでモータ20を逆回転させ昇降機構2に連続上昇動作(第二動作に相当)を行わせる。
【0031】
また、コントローラ31は、前述した回転検出装置25と協働して判定部として機能し、モータ20の動作状態の変化に基づいて、ウインドウガラス11とその周辺部材(ドア10においてウインドウガラス11周辺に位置する部材であり、具体的には窓枠)との間に挟まれた異物の有無を判定する。具体的に説明すると、コントローラ31は、回転検出装置25からパルス信号を受信すると、当該パルス信号に基づいてウインドウガラス11と窓枠との間における異物の有無を判定する。
【0032】
ここで、異物の有無とは、ウインドウガラス11が閉移動している状態ではウインドウガラス11の上端部と窓枠との間における異物の挟み込みの有無を意味する。挟み込みが生じると、ウインドウガラス11の移動速度及びモータ20の回転速度が低下する(回転周期が長くなる)。一方、コントローラ31は、ウインドウガラス11が閉動作を行っている間、パルス信号に基づいて、閉動作中のモータ20の回転速度を監視している。そして、コントローラ31は、閉動作中のモータ20の回転速度が低下し始めた時点で挟み込みの開始を検出し、その後に当該回転速度が予め設定された閾値(挟み込み判定閾値)まで低下した時点で挟み込み有りと判定(確定)する。
【0033】
また、ウインドウガラス11が開移動している状態での異物の有無とは、下降しているウインドウガラス11と窓枠との間に異物が巻き込まれること、すなわち巻き込みの有無を意味する。巻き込みの有無についても、上述した挟み込みの有無の場合と同様の手順により判定される。つまり、コントローラ31は、開動作中のモータ20の回転速度が低下し始めた時点で巻き込みの開始を検出し、その後に当該回転速度が予め設定された閾値(巻き込み判定閾値)まで低下した時点で巻き込み有りと判定(確定)する。
【0034】
そして、コントローラ31は、ウインドウガラス11が開閉移動している間(すなわち、昇降機構2が動作している間)に、挟み込み又は巻き込み有りと判定したとき、昇降機構2の動作を中断する中断処理を実行する。例えば、ウインドウガラス11がオート閉移動している間に挟み込み有りと判定した場合、コントローラ31は、昇降機構2の連続上昇動作を中断する中断処理を実行する。また、ウインドウガラス11がオート開移動している間に巻き込み有りと判定した場合、コントローラ31は、昇降機構2の連続下降動作を中断する中断処理を実行する。
【0035】
さらに、コントローラ31は、挟み込み又は巻き込み有りと判定する前の時点から挟み込み又は巻き込み有りと判定した後の時点までの期間内にドア10が開状態から閉状態に移行したことを検知した場合、中断処理の直前に昇降機構2が行っていた動作を再開させる再開処理を実行する。例えば、コントローラ31は、昇降機構2の連続上昇動作を中断する中断処理を実行した場合、挟み込み判定前の時点から挟み込み有りと判定した後の時点までの期間にドア10が開状態から閉状態に移行したことを検知すると、昇降機構2に連続上昇動作を再開させる再開処理を実行する。また、コントローラ31は、昇降機構2の連続下降動作を中断する中断処理を実行した場合、巻き込み判定前の時点から巻き込み有りと判定した後の時点までの期間にドア10が開状態から閉状態に移行したことを検知すると、昇降機構2に連続下降動作を再開させる再開処理を実行する。
【0036】
なお、「挟み込み又は巻き込み有りと判定する前の時点」とは、挟み込み又は巻き込みの開始時間から挟み込み又は巻き込み有りと確定するまでの任意の時点である。また、「挟み込み又は巻き込み有りと判定した後の時点」とは、挟み込み又は巻き込み有りと確定してから所定時間が経過した時点に設定されており、具体的には、リレー33の保護時間が経過した時点に設定されている。
【0037】
また、コントローラ31は、挟み込み又は巻き込み有りと判定した時点で前述の中断処理を実行する。したがって、挟み込み又は巻き込み有りと判定する前の時点から挟み込み又は巻き込み有りと判定した後の時点までの期間内にドア10が開状態から閉状態に移行したことを検知した場合、コントローラ31は、中断処理の実行後、リレー33の保護時間が経過した時点で再開処理を実行することになる。
【0038】
一方、コントローラ31は、挟み込み又は巻き込み有りと判定する前の時点から挟み込み又は巻き込み有りと判定した後の時点までの期間内にドア10が開状態から閉状態に移行したことを検知しない場合、異物解放処理を実行する。異物解放処理とは、中断処理の直前に昇降機構2が行っていた動作とは異なる動作を行わせる処理のことである。具体的に説明すると、中断処理において連続下降動作が中断された場合には、その後の異物解放処理では、所定量だけウインドウガラス11が閉移動するように昇降機構2に上昇動作を行わせる。また、中断処理において連続上昇動作が中断された場合には、その後の異物解放処理では、所定量だけウインドウガラス11が開移動するように昇降機構2に下降動作を行わせる。
【0039】
以上のような構成により、本実施形態に係るパワーウインドウ装置1は、挟み込み/巻き込みの有無について判定用の閾値を変更することなく、ドア10の開閉を考慮して適切に判定することが可能である。この結果、誤判定に基づく制御が回避され、ウインドウガラス11の開閉移動の制御が的確に制御されることになる。
【0040】
具体的に説明すると、本実施形態に係るパワーウインドウ装置1では、図3に示すように、ウインドウガラス11が閉移動している間に挟み込み有りと判定すると、リレー33をオフしてウインドウガラス11の閉移動を一旦停止する。かかる手順については、従来のパワーウインドウ装置と同様である。
【0041】
その後、コントローラ31が、挟み込み判定前の時点から挟み込み有りと判定した後の時点までの期間(図3中の記号X1にて示す期間)にドア10が開状態から閉状態に移行したか否かを判定する。そして、当該期間X1中にドア10が開状態から閉状態に移行したと判定した場合には、挟み込み有りという判定結果をキャンセルする。さらに、本実施形態では、挟み込み有りという判定結果をキャンセルした場合には、図3に示すように、その直前に行っていたウインドウガラス11の動作、すなわち閉移動を再開させることになっている。このように挟み込み有りの判定結果がキャンセルされたときには、一時中断されていたウインドウガラス11の閉移動を再開するので、その前段階で乗員が行った全閉用のスイッチ操作が有効状態で維持されることになる。すなわち、本実施形態によれば、挟み込み/巻き込みについての誤判定に基づいて乗員のスイッチ操作が無効化されるのを回避することが可能であり、以て、パワーウインドウ装置1の利便性が向上することとなる。
【0042】
一方、上記の期間X1中にドア10が開状態から閉状態に移行していないと判定した場合には、挟み込み有りという判定結果の信憑性が高く、当該判定結果を採用することとしている。その後、異物解放処理として昇降機構2を下降させる処理を実行し、これにより、異物を適切に排除することが可能となる。
【0043】
以上のような、挟み込み及び巻き込みの検知機能を有するパワーウインドウ装置1に搭載された「初動マスク期間機能」について説明する。
このマスク期間機能とは、パワーウインドウ装置1の起動時において、モータ20の回転が安定する期間、挟み込み及び巻き込みの検知機能を無効とする機能である。
図4に示すように、本実施形態においては、モータ20にかかる作動負荷の度合をモータ20の回転速度の値を指標として評価している。
このように、モータ20は、起動直後である区間Aでは、回転速度が安定せず、2個のピークを有する形状となり、次の区間Bにおいては、徐々に安定状態に近づいていく。
そして、区間Bが終わる時点で、回転速度が安定し、この地点からの区間Cでは、初動マスク期間機能が解除され、通常の挟み込み及び巻き込み検知が機能することとなる。
【0044】
本実施形態においては、全体の初動マスク期間Tを、第1初動マスク期間T1と第2初動マスク期間T2とに分割した(T=T1+T2=区間A+区間B)。
第1初動マスク期間T1は、モータ20起動時(t=0)の地点から、時間t1までの区間(区間A)である。
当該第1初動マスク期間T1(t0〜t1の区間)は、所定のパルスエッジ数に到達するまでの期間として設定される固定値である。
前述の通り、制御ユニット3(コントローラ31)では、パルスエッジをカウントしており、当該パルスエッジ数が所定数(p1)に到達した時点で、第1初動マスク期間T1は終了する。この終了時の時間をt1とする。
このパルスエッジ数p1が「第1初動パルスエッジ数」に相当する。
【0045】
また、第2初動マスク期間T2は、第1初動マスク期間T1終了時(t1)から、時間t2までの区間である。
この第2初動マスク期間T2には、基準となる第2初動マスク期間基本値T21(パルスエッジ数p2が経過する期間)が設定されている。
第2初動マスク期間T2は、第1初動マスク期間T1の情報をフィードバックすることにより、所定の条件が成立した場合には、補正されてパルスエッジ数p3が経過する期間として設定される。なお、所定の条件が成立しない場合には、第2初動マスク期間基本値T21(パルスエッジ数p2が経過する期間)が、そのまま第2初動マスク期間T2として設定される。
つまり、第2初動マスク期間T2は、条件により変動する変動値(パルスエッジ数p2若しくはパルスエッジ数p3)である。
【0046】
なお、パルスエッジ数p1及びパルスエッジ数p2は、各モータ毎に、試験により決定された固定値である。
このパルスエッジ数p2が「第2初動パルスエッジ数」に相当し、パルスエッジ数p3が「第3初動パルスエッジ数」に相当する。
これらの、条件と制御の流れについて、以下説明する。
【0047】
図5により、第2初動マスク期間T2の設定の流れを説明する。
まず、パワーウインドウ装置1を稼働するスイッチがオンされたことを受け、処理はスタートする。
スタートすると、ステップS1で、モータ20の作動が開始され、ステップS2で、パルスエッジ数のカウントを開始するとともにタイマ34がオンされる。
次いで、ステップS3で、第1初動マスク期間T1として設定されたパルスエッジ数p1に到達したか否かを判定する。
ステップS3で、第1初動マスク期間T1として設定されたパルスエッジ数p1に到達していない場合(ステップS3:NO)は、ステップS3に戻り、第1初動マスク期間T1として設定されたパルスエッジ数(p1)に到達するまで監視を行う。
そして、ステップS3で、第1初動マスク期間T1として設定されたパルスエッジ数p1に到達したと判定された場合(ステップS3:YES)、ステップS4でその時点でのタイマ34の値t1を取得する(つまり、パワーウインドウ装置1が作動してから第1初動マスク期間T1が終了するまでの経過時間を取得する)。
【0048】
次いで、ステップS5で、取得したタイマ34の値t1、つまり、第1初動マスク期間T1として設定されたパルスエッジ数p1に到達するまでの時間t1が、所定時間よりも大きいか否かを判定する。
この取得したタイマ34の値t1が所定時間よりも大きくない場合(ステップS5:NO)、ステップS6で、第2初動マスク期間T2として、第2初動マスク期間基本値T21(パルスエッジ数p2)を第2初動マスク期間T2として設定し、ステップS9で、第2初動マスク期間T2の領域を確定して処理を終了する。前述の通り、この第2初動マスク期間基本値T21は、パルスエッジ数p2が経過する期間として決定されている。
【0049】
取得したタイマ34の値t1が所定時間よりも大きい場合(ステップS5:YES)、ステップS7で、第2初動マスク期間補正値α(特許請求の範囲の「補正値」に相当)を算出する。
この第2初動マスク期間補正値αは、第1初動マスク期間T1の所要時間によって決定される。
つまり、実際にかかった第1初動マスク期間T1の所要時間t1と、基準値である所定時間との差分(Δt)をとり、その差分時間Δtが何パルスエッジ分に相当するかを算出して第2初動マスク期間補正値αとする。
つまり、以下のように算出される。
第2初動マスク期間補正値α=パルスエッジ数p1×(差分時間Δt/所要時間t1)
【0050】
そして、ステップS8で、第2初動マスク期間基本値T21(パルスエッジ数p2)に第2初動マスク期間補正値αを加算した値を第2初動マスク期間T2として設定し、ステップS9で、第2初動マスク期間T2の領域を確定して処理を終了する。
つまり、以下のように算出したパルスエッジ数p3を第2初動マスク期間T2として設定し、処理を終了する。
パルスエッジ数p2+第2初動マスク期間補正値α=パルスエッジ数p3
【0051】
すなわち、第1初動マスク期間T1での所定値以上の遅延度合は、パワーウインドウ装置1(モータ20)に係る過負荷を反映しているため、遅れた分のパルスエッジ数を第2初動マスク期間補正値αとして第2初動マスク期間基本値T21に加算することにより、過負荷分の遅れを第2初動マスク期間T2に反映して当該期間を延長することができることとなる。
換言すれば、第1初動マスク期間T1は固定値であるが、第2初動マスク期間T2は変動値となっており(本実施形態では、パルスエッジ数p2若しくはパルスエッジ数p3経過までの期間)、よって、柔軟な制御を行うことができる。
【0052】
以上のように構成されているため、第1初動マスク期間T1経過に係る時間、すなわち、第1初動マスク期間T1として設定されたパルスエッジ数p1がカウントされる時間が、所定時間を超えない場合には、通常の起動状態であり特に問題は発生していないため、第2初動マスク期間T2として、あらかじめ設定されたパルスエッジ数p2を設定し、当該パルスエッジ数p2のカウントをもって第2初動マスク期間T2を終了することとなる。
しかしながら、第1初動マスク期間T1経過に係る時間、すなわち、第1初動マスク期間T1として設定されたパルスエッジ数p1がカウントされる時間が、所定時間を超えた場合においては、通常の起動状態ではなく、パワーウインドウ装置1に大きな作動負荷が生じている状態であると考えられるため(安定するまでに余分の期間が必要となるため)、あらかじめ設定されたパルスエッジ数p2を補正して、第2初動マスク期間基本値T21(パルスエッジ数p2)を第2初動マスク期間補正値α分延長する。
これにより、第2初動マスク期間T2内において、モータ20が確実に安定化する。
【0053】
従来の技術においては、第1初動マスク期間T1及び第2初動マスク期間T2双方共に、固定値(p1,p2)とされていた。しかし、本実施形態によれば、第1初動マスク期間T1の情報をフィードバックして、第2初動マスク期間T2を設定するように構成されている。つまり、第2初動マスク期間T2は変動値である。
よって、第2初動マスク期間T2内において、モータ20が確実に安定化し、誤反転及び誤停止を防止することができる。
なお、パワーウインドウ装置1に大きな作動負荷が生じる状態とは、例えば、低温環境や、作動負荷の大きい車両用ドアに設置された状態等が想定される。
【符号の説明】
【0054】
1 パワーウインドウ装置(開閉部材制御装置)
2 昇降機構(駆動機構)
3 制御ユニット(制御部)
4 操作スイッチ
5 バッテリ
6 ドア開閉信号
10 ドア
11 ウインドウガラス(開閉部材)
20 モータ
21 昇降アーム
21a ギヤ
22 従動アーム
23 固定チャンネル
24 ガラス側チャンネル
25 回転検出装置
31 コントローラ
32 駆動回路
33 リレー
34 タイマ
S 車両
図1
図2
図3
図4
図5