特許第6634891号(P6634891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6634891
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/06 20060101AFI20200109BHJP
【FI】
   H02P6/06
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-41398(P2016-41398)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-158369(P2017-158369A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大塚 光
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−130099(JP,A)
【文献】 特開2013−062933(JP,A)
【文献】 特開2013−046488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅変調信号により各々オンオフ制御される複数のスイッチング素子を備え、前記複数のスイッチング素子のオンオフ状態に応じた駆動電圧でモータを駆動する駆動部と、
所定周期で繰り返し動作し、動作開始時に、各々周波数が異なる複数の予め定められた信号から選択した信号及び指令信号に基づいてパルス幅変調信号を生成し、生成したパルス幅変調信号を用いて前記駆動部の前記複数のスイッチング素子のオンオフ状態を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記複数の予め定められた信号の中の1つの信号を基準信号として定め、該基準信号以外の信号に基づいたパルス幅変調信号を用いて生成される駆動電圧が、前記基準信号に基づいたパルス幅変調信号を用いて生成される駆動電圧と同じになるように、前記基準信号以外の信号に基づいて生成されたパルス幅変調信号を補正するモータ駆動装置
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の予め定められた信号から重複しないように1の信号を順次選択し、前記複数の予め定められた信号の最後の1つを選択した後は、最初に選択した信号から重複しないように1の信号を順次選択することを繰り返す請求項1記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の予め定められた信号からランダムに1の信号を選択する請求項1記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基準信号に基づいたパルス幅変調信号と、前記基準信号以外の信号に基づいたパルス幅変調信号との各々でデッドタイムの影響を排した実質値が同じになるように、前記基準信号以外の信号に基づいたパルス幅変調信号を補正する請求項1〜3のいずれか1項記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記モータの回転速度を検出する回転速度検出部を含み、
前記制御部は、前記指令信号が示す目標回転速度と前記回転速度検出部によって検出された前記モータの実回転速度との偏差を解消するように前記モータの駆動電圧を算出する請求項1〜のいずれか1項記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エアコンのブロアモータ等に用いられるブラシレスDCモータ(以下、「モータ」と略記)の制御装置は、目標回転速度に対応したデューティ比の電圧をインバータ回路に生成させ、生成させた電圧をモータのコイルに印加させている。
【0003】
インバータ回路40は、スイッチング素子を含み、スイッチング素子をオンオフさせて電源の直流電圧をパルス状の波形に変調して電圧調整をするPWM(Pulse Width Modulation)により、モータのコイルに印加する電圧を生成する。しかしながら、PWMの制御に伴ってモータからノイズが発生する場合がある。
【0004】
PWMに起因するノイズを抑制するには、PWMによって生成される電圧の波形の1周期を逐次変更するスペクトラム拡散が有効である。電圧の波形の1周期を変更するには、スイッチング素子をオンオフさせるためのPWM信号の生成に係る搬送波周波数を変更する。搬送波周波数を変更することにより、PWMを原因とするモータからの騒音は短時間毎に変化して一様に拡散されるので、モータからのノイズが低減される。
【0005】
電圧の波形の1周期が変更になっても、電圧の波形の1周期に対するスイッチング素子がオンになったことで生じる1のパルスの時間の割合であるデューティ比が同じであれば、理論上は、モータのコイルに印加される電圧の実効値は変わらない。図8(A)は、PWMの1周期が長い場合、図8(B)はPWMの1周期が短い場合を各々示しているが、デューティ比はいずれもX%なので、モータのコイルに印加される電圧の実効値は理論上は同じになる。
【0006】
特許文献1には、信号波と搬送波とからPWM信号を生成する際に、PWM信号の搬送波周波数をスペクトラム拡散によってランダムに切り換える電動コンプレッサの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−62933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スペクトラム拡散専用の集積回路が別途必要であり、実装すべき部品が増えることで、製品の製造コストが嵩むという問題があった。さらに、スペクトラム拡散専用の集積回路を実装するには、モータ駆動装置の回路を変更する必要があり、回路変更には時間と手間がかかるという問題があった。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、既存回路の変更を要さずにPWMの搬送波周波数を逐次変更することが可能なモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1記載のモータ駆動装置は、パルス幅変調信号により各々オンオフ制御される複数のスイッチング素子を備え、前記複数のスイッチング素子のオンオフ状態に応じた駆動電圧でモータを駆動する駆動部と、所定周期で繰り返し動作し、動作開始時に、各々周波数が異なる複数の予め定められた信号から選択した信号及び指令信号に基づいてパルス幅変調信号を生成し、生成したパルス幅変調信号を用いて前記駆動部の前記複数のスイッチング素子のオンオフ状態を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記複数の予め定められた信号の中の1つの信号を基準信号として定め、該基準信号以外の信号に基づいたパルス幅変調信号を用いて生成される駆動電圧が、前記基準信号に基づいたパルス幅変調信号を用いて生成される駆動電圧と同じになるように、前記基準信号以外の信号に基づいて生成されたパルス幅変調信号を補正する
【0011】
このモータ駆動装置は、予め定められた複数の周波数の信号から選択した1の周波数に従った周期で指令信号に基づいたパルス幅変調信号を生成している。予め定められた周波数から1の周波数の信号を選択する処理は、制御部のプログラムを変更することで可能なので、既存回路の変更を要さずにPWMの搬送波周波数を逐次変更することが可能となる。また、このモータ駆動装置によれば、PWMの搬送波周波数の変更により、モータに印加する電圧の実効値が変化した場合でも、基準周波数によるPWMと同じ電圧をモータに印加できるので、モータの回転を円滑に制御できる。
【0012】
請求項2記載のモータ駆動装置は、請求項1記載のモータ駆動装置において、前前記制御部は、前記複数の予め定められた信号から重複しないように1の信号を順次選択し、前記複数の予め定められた信号の最後の1つを選択した後は、最初に選択した信号から重複しないように1の信号を順次選択することを繰り返す。
【0013】
複数の信号から周波数の重複を避けて1の信号を選択する処理は、制御部のプログラムを変更することで可能となる。従って、このモータ駆動装置によれば、既存回路の変更を要さずにPWMの搬送波周波数を逐次変更することが可能となる。
【0014】
請求項3記載のモータ駆動装置は、請求項1記載のモータ駆動装置において、前記制御部は、前記複数の予め定められた信号からランダムに1の信号を選択する。
【0015】
複数の信号からランダムに1の信号を選択する処理は、制御部のプログラムを変更することで可能となる。従って、このモータ駆動装置によれば、既存回路の変更を要さずにPWMの搬送波周波数を逐次変更することが可能となる。
【0018】
請求項記載のモータ駆動装置は、請求項1〜3のいずれか1記載のモータ駆動装置において、前記制御部は、前記基準信号に基づいたパルス幅変調信号と、前記基準信号以外の信号に基づいたパルス幅変調信号との各々でデッドタイムの影響を排した実質値が同じになるように、前記基準信号以外の信号に基づいたパルス幅変調信号を補正する。
【0019】
このモータ駆動装置によれば、デッドタイムの影響により、PWMの搬送波周波数を変更した際にモータに印加する電圧の実効値が変化した場合でも、基準周波数によるPWMと同じ電圧をモータに印加できるので、モータの回転を円滑に制御できる。
【0020】
請求項記載のモータ駆動装置は、請求項1〜のいずれか1項記載載のモータ駆動装置において、前記モータの回転速度を検出する回転速度検出部を含み、前記制御部は、前記指令値が示す目標回転速度と前記回転速度検出部によって検出された前記モータの実回転速度との偏差を解消するように前記モータの駆動電圧を算出する。
【0021】
このモータ駆動装置によれば、指令信号が示す回転速度とモータの実際の回転速度との偏差を解消するPI制御によって、駆動電圧を算出することにより、モータの実際の回転速度を鑑みたモータの回転速度の制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係るモータ駆動装置を用いたモータユニットの構成を示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るモータ駆動装置の概略を示す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係るモータ駆動装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係るモータ駆動装置のPIデューティ算出部におけるPIデューティ算出処理の一例を示したフローチャートである。
図5】(A)は、搬送波周波数がf1kHzの場合のPWM信号、(B)は、搬送波周波数がf3kHzの場合のPWM信号を各々示している。
図6】本発明の第2の実施の形態に係るモータ駆動装置の機能ブロック図である。
図7】本発明の第2の実施の形態において搬送波周波数がf1kHzの場合のPWM信号の補正の一例を示した概略図である。
図8】(A)は、PWMの1周期が長い場合、図8(B)はPWMの1周期が短い場合を各々示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態に係るモータ駆動装置20を用いたモータユニット10の構成を示す概略図である。図1の本実施の形態に係るモータユニット10は、一例として車載エアコンの送風に用いられる、いわゆるブロアモータのユニットである。
【0024】
本実施の形態に係るモータユニット10は、ステータ14の外側にロータ12が設けられた、アウターロータ構造の三相モータに係るものである。ステータ14はコア部材に導線が巻かれた電磁石であって、U相、V相、W相の三相を構成している。ステータ14のU相、V相、W相の各々は、後述するモータ駆動装置20の制御により、電磁石で発生する磁界の極性が切り替えられることにより、いわゆる回転磁界を発生する。
【0025】
ロータ12の内側(図示せず)にはロータマグネットが設けられており、ロータマグネットは、ステータ14で生じた回転磁界に対応することにより、ロータ12を回転させる。ロータ12にはシャフト16が設けられており、ロータ12と一体になって回転する。図1には示していないが、本実施の形態ではシャフト16には、いわゆるシロッコファン等の多翼ファンが設けられ、当該多翼ファンがシャフト16と共に回転することにより、車載エアコンにおける送風が可能となる。
【0026】
ステータ14は、上ケース18を介して、モータ駆動装置20に取り付けられる。モータ駆動装置20は、モータ駆動装置20の基板22と、基板22上の素子から生じる熱を放散するヒートシンク24とを備えている。ロータ12、ステータ14及びモータ駆動装置20を含んで構成されるモータユニット10には、下ケース60が取り付けられる。
【0027】
図2は、本実施の形態に係るモータ駆動装置20の概略を示す図である。インバータ回路40は、モータ52のステータ14のコイルに供給する電力をスイッチングする。例えば、インバータFET44A、44DはU相のコイル14Uに、インバータFET44B、44EはV相のコイル14Vに、インバータFET44C、44FはW相のコイル14Wに、各々供給する電力のスイッチングを行う。
【0028】
インバータFET44A、44B、44Cの各々のドレインは、ノイズ除去用のチョークコイル46を介して車載のバッテリ80の正極に接続されている。また、インバータFET44D、44E、44Fの各々のソースは、逆接防止FET48を介してバッテリ80の負極に接続されている。
【0029】
本実施の形態では、シャフト16と同軸に設けられたロータマグネット12A又はセンサマグネットの磁界をホール素子12Bが検出する。マイコン32は、ホール素子12Bにより検出された磁界に基づいてロータ12の回転速度及び位置(回転位置)を検出し、ロータ12の回転速度及び回転位置に応じてインバータ回路40のスイッチングの制御を行う。
【0030】
マイコン32には、エアコンのスイッチ操作に対応してエアコンを制御するエアコンECU82からのロータ12の回転速度に係る速度指令値を含む指令信号が入力される。また、マイコン32には、サーミスタ54Aと抵抗54Bとで構成された分圧回路54と、インバータ回路40とバッテリ80の負極との間に設けられた電流検出部56とが接続されている。
【0031】
分圧回路54を構成するサーミスタ54Aは、回路の基板22の温度に応じて抵抗値が変化するので、分圧回路54が出力する信号の電圧は基板22の温度に応じて変化する。マイコン32は、分圧回路54から出力される信号の電圧の変化に基づいて、基板22の温度を算出する。
【0032】
電流検出部56は、抵抗値が0.2mΩ〜数Ω程度のシャント抵抗56Aと、シャント抵抗56Aの両端の電位差を増幅してシャント抵抗56Aの電流に比例する電圧値を信号として出力するアンプ56Bとを含み、アンプ56Bが出力した信号は、マイコン32の温度保護制御部62に入力される。温度保護制御部62は、アンプ56Bが出力した信号に基づいて、インバータ回路40の電流を算出する。
【0033】
本実施の形態では、サーミスタ54Aを含む分圧回路54からの信号、電流検出部56が出力した信号、及びホール素子12Bが出力した信号は、マイコン32内の温度保護制御部62に入力される。温度保護制御部62は、各々入力された信号に基づいて基板22の素子の温度及びインバータ回路40の電流等を算出する。また、温度保護制御部62には、電源であるバッテリ80が接続されており、温度保護制御部62は、バッテリ80の電圧を電源電圧値として検知する。
【0034】
エアコンECU82からの指令信号であるSI信号は、マイコン32内の回転数情報部72に入力され、SI信号に基づいた目標回転速度が算出される。回転数情報部72には、ホール素子12Bが出力した信号も入力され、ロータ12の実回転速度が算出される。回転数情報部72は、算出した目標回転速度及び実回転速度の情報をPIデューティ算出部74に出力する。
【0035】
PIデューティ算出部74は、回転数情報部72が算出した目標回転速度と実回転速度とから、実回転速度を目標回転速度に変化させる場合にステータ14のコイルに印加する電圧のデューティ比をいわゆるPI制御によって算出する。PIデューティ算出部74は、目標回転速度と実回転速度との偏差と目標回転速度における電圧と実回転速度における電圧との偏差との比例関係に基づいて目標回転速度における電圧のデューティ比を算出する。また、PIデューティ算出部74は、上記の比例関係のみでは残留偏差が生じる場合に、かかる残留偏差を偏差積分によって解消する。PIデューティ算出部74は算出したデューティ比を示す矩形波信号を生成し、PWMデューティ算出部66に出力する。
【0036】
ホール素子12Bが出力した信号は、電気角位置情報部76にも入力され、ロータ12の位置が算出される。電気角位置情報部76が算出したロータ12の位置情報は、PWMデューティ算出部66に出力される。
【0037】
PWMデューティ算出部66は、PIデューティ算出部74が生成した矩形波信号及び電気角位置情報部76が算出したロータ12の位置情報に基づいてPWM信号を生成する。具体的には、PIデューティ算出部74が生成した矩形波信号の位相を、電気角位置情報部76が算出したロータ12の位置情報に同期させる。PWMデューティ算出部66は、生成したPWM信号をプリドライバ78に出力する。プリドライバ78は、入力されたPWM信号を増幅してFETゲート信号を作成し、インバータ回路40のインバータFET44A〜44Fの各々のゲートに印加する。
【0038】
PWMデューティ算出部66が算出したPWM信号は、温度保護制御部62に入力される。温度保護制御部62は、基板22の素子の温度と、ロータ12の回転速度と、モータ52及びモータ駆動装置20の回路の負荷と、に基づいて、PWMデューティ算出部66が算出したPWM信号のデューティ比が適切か否かを判定する。温度保護制御部62は、PWMデューティ算出部66が算出したPWM信号のデューティ比が過大な場合には、PWM信号のデューティ比を補正して、PWMデューティ算出部66にフィードバックする。モータ及び回路の負荷は、例えば、インバータ回路40の電流又は電源電圧である。
【0039】
また、温度保護制御部62には、記憶装置であるメモリ68が接続されている。メモリ68は、モータ52及び回路が過負荷状態になった場合にデューティ比を制限するための制限値等を記憶している。
【0040】
図3は、本実施の形態に係るモータ駆動装置20の機能ブロック図である。図示していないが、回転数情報部72には、エアコンECU82から回転速度の指令信号であるSI信号が入力される。目標速度算出部64Aは、入力されたSI信号からモータ52の目標回転速度を算出する。
【0041】
モータ52の実際の回転速度である実回転速度は、ホール素子12Bが検知したセンサマグネットまたはロータマグネット12Aの磁界に応じた信号から回転数情報部72が算出する。回転数情報部72が算出した実回転速度は、回転数情報部72が算出した目標回転速度と共にPIデューティ算出部74に入力される。
【0042】
PIデューティ算出部74は、回転数情報部72が算出した目標回転速度と実回転速度との偏差が解消されるように、ステータ14のコイルに印加する電圧のデューティ比をPI制御によって算出する。また、PIデューティ算出部74は、搬送波周波数に従った周期を有し、かつPI制御によって算出したデューティ比を示す矩形波信号を生成する。
【0043】
PIデューティ算出部74は、矩形波信号の生成に係る搬送波周波数を、マイコン32の制御周期毎に変更する。本実施の形態では、PWM信号の搬送波周波数を、例えば、f1kHz、f2kHz、f3kHz、f4kHz、f5kHzの5段階で変更する。本実施の形態では、f1kHz、f2kHz、f3kHz、f4kHz、f5kHzから周波数が重複しないように1の周波数の信号を順次選択する。f1kHz、f2kHz、f3kHz、f4kHz、f5kHzのうちの最後の1つを選択した後は、最初に選択した周波数の信号から重複しないように1の周波数の信号を順次選択することを繰り返す。
【0044】
周波数変更の態様は、例えば、マイコン32の制御周期毎に、f1kHz→f2kHz→f3kHz→f4kHz→f5kHzのように、低い周波数から高い周波数へ順に選択して変更する。そして、最も高い周波数であるf5kHzを選択した制御周期に後続する1の制御周期では最も低い周波数であるf1kHzを選択し、以後、再び低い周波数から高い周波数へ順に変更する。
【0045】
5kHz→f4kHz→f3kHz→f2kHz→f1kHzのように、高い周波数から低い周波数へ順に選択して変更してもよい。そして、最も低い周波数であるf1kHzを選択した制御周期に後続する1の制御周期では最も高い周波数であるf5kHzを選択し、以後、再び高い周波数から低い周波数へ順に変更する。
【0046】
または、最も高い周波数であるf5kHzを選択した制御周期に後続する制御周期ではf5kHzに次いで高い周波数であるf4kHzから低い周波数の順に1の周波数を選択すると共に、最も低い周波数であるf1kHzを選択した制御周期に後続する制御周期では、f1kHzに次いで低い周波数から高い周波数の順に1の周波数を選択する。
【0047】
さらには、f1kHz、f2kHz、f3kHz、f4kHz、f5kHzの中から、マイコン32の制御周期毎にランダムに選択することにより、周波数を変更してもよい。
【0048】
図3では、PIデューティ算出部74はf4kHzの周波数を選択して、PI制御で算出したデューティ比を示す矩形波信号を生成している。PIデューティ算出部74によって生成された矩形波信号は、PWMデューティ算出部66に出力される。
【0049】
PIデューティ算出部74によるPI制御によって算出したデューティ比を示す矩形波信号の生成は、公知の技術に基づくもので、波形が三角波である搬送波の信号とPI制御によって算出したデューティ比を示す信号とをコンパレータ等の回路を用いて比較する。例えば、搬送波の信号に対してデューティ比を示す信号が小さければハイレベルの信号を、搬送波の信号に対してデューティ比を示す信号が大きければローレベルの信号を、コンパレータ等の回路から各々出力することにより、搬送波周波数に従った周期を有し、かつPI制御によって算出したデューティ比を示す矩形波の信号を生成する。
【0050】
前述のように、ホール素子12Bが出力した信号は、電気角位置情報部76にも入力され、ロータ12の位置が算出される。電気角位置情報部76が算出したロータ12の位置情報は、PWMデューティ算出部66に出力される。
【0051】
PWMデューティ算出部66は、PIデューティ算出部74が生成した矩形波信号及び電気角位置情報部76が算出したロータ12の位置情報に基づいて、インバータ回路40の制御するためのPWM信号を生成してプリドライバ78に出力する。プリドライバ78は、入力されたPWM信号を増幅してインバータFET44A〜44Fの各々をスイッチングさせるためのFETゲート信号を生成し、インバータFET44A〜44Fの各々のゲートに印加する。
【0052】
3相インバータであるインバータ回路40は、プリドライバ78から出力されたFETゲート信号に従ってインバータFET44A〜44Fをスイッチングさせ、バッテリ80から供給された電力からモータ52のコイルに印加する電圧を生成する。
【0053】
図4は、本実施の形態に係るモータ駆動装置20のPIデューティ算出部74におけるPIデューティ算出処理の一例を示したフローチャートである。図4の処理は、マイコン32が新たな制御周期に移行した際に開始され、当該制御周期の終了と共にリターンする。
【0054】
ステップ400では、回転数情報部72が算出した目標回転速度と実回転速度を取得し、ステップ402では、搬送波周波数を変更する。搬送波周波数を直前の制御周期での周波数から変更する態様は、前述のように、低い周波数から高い周波数へ段階的に変更してもよいし、高い周波数から低い周波数へ段階的に変更してもよい。さらには、制御周期毎にランダムに選択してもよい。
【0055】
ステップ404では、回転数情報部72が算出した目標回転速度と実回転速度との偏差が解消されるように、ステータ14のコイルに印加する電圧のデューティ比をPI制御によって算出する。ステップ406では、ステップ402で変更した周波数の搬送波信号とステップ404で算出したデューティ比とに基づいてPWMに係る矩形波信号を生成して処理をリターンする。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態によれば、デューティ比を示す矩形波信号に生成に係る搬送波周波数を、マイコン32の制御周期毎に変更することにより、PWM制御時に随伴するノイズを低減できる。本実施の形態では、周波数は、予め定められた複数の周波数から1の周波数を選択することにより変更する。
【0057】
一般のスペクトラム拡散では、上限値と中間値と下限値とが設定された周波数の範囲から周波数をランダムに設定するが、かかる制御では、スペクトラム拡散専用の集積回路が必須となる。当該集積回路を既存のモータ駆動装置に組み込むには、モータ駆動装置の回路構成を変更する必要があり、実用化にはコスト、時間及び労力を要する。
【0058】
しかしながら、本実施の形態では、有限個の周波数の選択肢から1の周波数を選択するというものであり、マイコン32を動作させるプログラムの変更によって対処可能である。その結果、スペクトラム拡散専用の集積回路は不要であり、当該集積回路を既存のモータ駆動装置に組み込むためのコスト、時間及び労力を要しない。
【0059】
また、本実施の形態では、例えば、f1kHz、f2kHz、f3kHz、f4kHz、f5kHzのように隣接する周波数の間隔を広く設定することにより、変更前の周波数と変更後の周波数が近似するという状況を回避できる。変更前の周波数と変更後の周波数が近似すると、変更前の周波数と変更後の周波数との各々に随伴するサイドバンド周波数同士が重畳されてノイズが悪化するおそれがあるが、上述のように、隣接する周波数の間隔を広く設定することにより、サイドバンド周波数同士が重畳されることを防止できる。
【0060】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、PWM信号の生成に係る搬送波周波数を、マイコン32の制御周期毎に変更することにより、モータ52から生じるノイズを低減した。しかしながら、PWM信号の生成に係る搬送波周波数を変更すると、モータ52に印加される電圧のデューティ比が変動し、モータ52からノイズが発生する場合があった。かかるノイズを抑制するには、例えば、f1kHz、f2kHz、f3kHz、f4kHz、f5kHzから1の基準周波数を定め、基準周波数以外の周波数に従ったPWM信号に基づいて生成される電圧が、基準周波数に従った周期のPWM信号に基づいて生成される電圧と同じになるようにする。
【0061】
モータ制御用のマイコンには、インバータFET44AとインバータFET44Dとのように、直列で接続されたFETに貫通電流が流れないように、PWM信号の矩形波には、FETをオンにしないデッドタイムを必ず設けるようになっている。このデッドタイムの存在により、PWM信号の周期が異なると、モータ52の回転に作用するデューティ比の実質値が変化する。
【0062】
図5(A)は、搬送波周波数がf1kHzの場合のPWM信号、図5(B)は、搬送波周波数がf3kHzの場合のPWM信号を各々示している。搬送波周波数がf1kHzの場合は、指令PWMデューティ比がX%であれば、下記の式(1)のように、デッドタイムDf1を指令PWMデューティから減算して、1周期Pf1で除算した値が周波数f1kHzでの実質PWMデューティDrf1となる。
rf1=(Pf1・X-Df1)/Pf1 …(1)
【0063】
搬送波周波数がf3kHzの場合は、指令PWMデューティ比がX%であれば、下記の式(2)のように、デッドタイムDf3を指令PWMデューティから減算して、1周期Pf3で除算した値が周波数f3kHzでの実質PWMデューティDrf3となる。
rf3=(Pf3・X-Df3)/Pf3 …(2)
【0064】
図5に示したように、搬送波周波数が大きくなるほど、矩形波の周期は短くなるので、デッドタイムによる実質的なPWMデューティへの影響は顕著になる。デッドタイムを周波数毎に変化させることで、実質PWMデューティへのデッドタイムの影響を抑制できるが、かかる制御をマイコン32に担わせるには、マイコン32の仕様変更が必要となる。
【0065】
図6は、本実施の形態に係るモータ駆動装置120の機能ブロック図である。本実施の形態に係るモータ駆動装置120は、PWMデューティ算出部166のみが第1の実施の形態と異なるが、その他の構成は第1の実施の形態と同じなので、PWMデューティ算出部166以外の構成については詳細な説明を省略する。
【0066】
本実施の形態では、デッドタイムが固定値であることによる実質PWMデューティへの影響を抑制する補正値を周波数毎に算出し、これらの補正値でPIデューティ算出部74が算出したデューティ比を補正する。
【0067】
図7は、搬送波周波数がf1kHzの場合のPWM信号の補正の一例を示した概略図である。本実施の形態では、f1kHz、f2kHz、f3kHz、f4kHz、f5kHzの周波数のいずれか1つを基準周波数とし、その基準周波数でのPWM信号は補正値が0であるとみなし、他の周波数でのPWM信号は、基準周波数の実質PWMデューティからどの程度の差が生じるかという観点で、各周波数での補正値を算出する。
【0068】
一例として、基準周波数をf3kHzとし、補正値を算出する周波数をf1kHzとした場合、指令PWMデューティ比がX%であれば、周波数f1kHzでの実質PWMデューティは上述の式(1)、周波数f3kHzでの実質PWMデューティは上述の式(2)のようになる。基準周波数をf3kHzとすれば、周波数f1kHzでの実質PWMデューティDrf1は、周波数f3kHzでの実質PWMデューティDrf3に対し、図7に示した補正値Kf1の差が存在していると考えられる。従って、下記の式(3)が求められる。
(Pf1・X-Df1)/Pf1+Kf1=(Pf3・X-Df3)/Pf3 …(3)
【0069】
上記式(3)から、補正値Kf1は、下記の式(4)で示される。
f1=(Pf3・X-Df3)/Pf3−(Pf1・X-Df1)/Pf1
=(Df1/Pf1)−(Df3/Pf3) …(4)
【0070】
以上より、周波数f1kHzでの実質PWMデューティDrf1は、下記の式(5)のようになる。
rf1=[(Pf1・X+{(Df1/Pf1)-(Df3/Pf3)}-Df1)/Pf1] …(5)
【0071】
補正値Kf1として図7に示した値を除去するようにマイコン32の制御プログラムを設定すれば、周波数f1kHzでの実質PWMデューティDrf1を、周波数f3kHzでの実質PWMデューティDrf3と同じ値に補正できる。また、式(4)、(5)中のDf1、Pf1を他の周波数での値に変更することで、各周波数での実質PWMデューティを算出できる。従って、マイコン32等のハードウェアの変更を要さずに、各周波数での実質PWMデューティを同一とすることが可能となる。
【0072】
なお、上記式(4)、(5)では、各周波数でのデッドタイムが必ずしも同一ではない場合もあることを考慮して、Df1≠Df3としたが、デッドタイムが各周波数で一定であることが担保されている場合では、Df1=Df3として、計算をさらに簡略化してもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態によれば、既存回路の変更を要さずにPWMの搬送波周波数を逐次変更することが可能であって、搬送波周波数を変更した場合でも、モータ52に印加される電圧の変動を抑制し、モータ52の回転制御を安定して実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
10…モータユニット、12…ロータ、12A…ロータマグネット、12B…ホール素子、14…ステータ、14U,14V,14W…コイル、16…シャフト、18…上ケース、20…モータ駆動装置、22…基板、24…ヒートシンク、32…マイコン、40…インバータ回路、44A,44B,44C,44D,44E,44F…インバータFET、46…チョークコイル、48…逆接防止FET、52…モータ、54…分圧回路、54A…サーミスタ、54B…抵抗、56…電流検出部、56A…シャント抵抗、56B…アンプ、60…下ケース、62…温度保護制御部、64A…目標速度算出部、66…PWMデューティ算出部、68…メモリ、72……回転数情報部、74…PIデューティ算出部、76…電気角位置情報部、78…プリドライバ、80…バッテリ、82…エアコンECU、120…モータ駆動装置、166…デューティ算出部、Df1,Df3…デッドタイム、Drf1,Drf3…実質PWMデューティ、Kf1…補正値、Pf1,Pf3…1周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8