(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基板上に、ハーフトーン位相シフト膜である第1の膜と、該第1の膜に接して形成された遮光膜である第2の膜と、該第2の膜に接して形成されたハードマスク膜である第3の膜と、該第3の膜に接して形成された第4の膜とを有し、
上記第1の膜及び第3の膜が、ケイ素を含有し、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成され、
上記第2の膜及び第4の膜が、クロムを含有し、ケイ素を含有せず、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成されてなり、
上記第4の膜の膜厚が30nm以上120nm以下であり、
上記第2の膜及び第4の膜が、該第4の膜を一の条件で塩素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムが、上記第2の膜を上記一の条件で塩素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムより長くなるように構成されてなることを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハーフトーン位相シフト型フォトマスクにおいては、パターンを転写するための領域であるフォトマスクパターンが形成された領域の外側、即ち、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクの外周縁部に、露光光を遮光する外枠パターンを形成する必要がある。この外枠パターンは、露光光が実質的にほぼ遮光される程度の遮光度が必要であるため、この部分に用いられる膜は、厚さが必要となる。ところが、フォトマスクパターンの形成に用いられる遮光性の膜を厚くして、フォトマスクパターンの形成に用いられる遮光性の膜と、外枠パターンの膜とを共用しようとすると、外枠領域における遮光度は確保できるが、フォトマスクパターンの形成に用いられる遮光性の膜において、微細なパターン加工が困難になるという問題がある。
【0009】
レジスト膜を用いて厚い膜をエッチング加工するには、厚いレジスト膜を必要とするが、厚いレジスト膜からは、微細なレジストパターンは形成し難い。また、特に化学増幅型レジストのパターンをエッチングマスクとして、例えばクロム系の厚い膜を、塩素ガスと酸素ガスとを含むエッチングガスによる塩素系ドライエッチングで加工する場合、塩素系ドライエッチングにおいては、被エッチング膜のリニアリティも悪くなる。
【0010】
塩素系ドライエッチングで、レジスト膜を厚くせずに微細なパターンを形成する方法としては、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有するハードマスク膜を用いることができる。このハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとすれば、フォトマスクパターンと、外枠パターンとを同時に形成することは可能ではあるが、ハードマスク膜上に形成したレジスト膜から、フォトマスクパターンと外枠パターンとの両方に対応するレジストパターンを同時に形成することになるため、ネガレジストを用いる場合には、レジストパターンの描画に時間がかかるという問題がある。
【0011】
また、フォトマスクパターンを形成した後に外枠パターンを形成しようとする場合を、
図6及び
図7を参照して説明すると、以下のようになる。まず、透明基板10の上に、位相シフト膜6、遮光膜7、ハードマスク膜8の順に積層されたフォトマスクブランク9を準備し(
図6(A))、このフォトマスクブランク9のハードマスク膜8の上に、第1のレジスト膜51を塗布する(
図6(B))。次に、第1のレジスト膜51から第1のレジストパターン511を形成した後(
図6(C))、フッ素系ドライエッチングにより、第1のレジストパターン511をエッチングマスクとして、ハードマスク膜8をパターニングして、ハードマスク膜パターン81を形成する(
図6(D))。次に、第1のレジストパターン511を除去した後(
図6(E))、塩素系ドライエッチングにより、ハードマスク膜パターン81をエッチングマスクとして、遮光膜7をパターニングして遮光膜パターン71を形成する(
図6(F))。
【0012】
次に、フッ素系ドライエッチングにより、ハードマスク膜パターン81を除去すると共に、遮光膜パターン71をエッチングマスクとして、位相シフト膜6をパターニングして位相シフト膜パターン61を形成する(
図7(A))。次に、遮光膜パターン71及び露出した透明基板10上に、新たに、第2のレジスト膜52を塗布する(
図7(B))。次に、第2のレジスト膜52から第2のレジストパターン521を形成した後(
図7(C))、塩素系ドライエッチングにより、第2のレジストパターン521をエッチングマスクとして、遮光膜パターン71をパターニングして、遮光膜の外枠パターン711を形成する(
図7(D))。最後に、第2のレジストパターン521を除去して、フォトマスク91が得られる(
図7(E))。ところが、このようにして、遮光膜の外枠パターンを有するフォトマスクを製造すると、フォトマスクパターンの凹部内にも第2のレジスト膜52を形成することになり、第2のレジスト52を除去した後に、フォトマスクパターンの凹部内にレジスト残渣が残る可能性があり、その場合、フォトマスクに欠陥を発生させることになる。
【0013】
また、フォトリソグラフィ技術により、より微細な像を得るために、露光光源に、より短波長のものが使われるようになり、現在の最先端の実用加工工程では、露光光源は、KrFエキシマレーザー光(248nm)からArFエキシマレーザー光(193nm)に移行している。ところが、より高エネルギーのArFエキシマレーザー光を使うことにより、KrFエキシマレーザー光では見られなかったマスクダメージが生じることが判明した。そのひとつが、フォトマスクを連続使用すると、フォトマスク上に異物状の欠陥が発生する問題である。この欠陥を分析すると、クロムが検出されることがあり、その原因は、遮光膜として使用されているクロムが、レーザー照射中にマイグレーションしていると考えられている。
【0014】
ハーフトーン位相シフト型フォトマスクにおいては、パターンを転写するための領域であるフォトマスクパターン(位相シフト膜パターン)が形成された領域の外側、即ち、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクの外周縁部に、露光光を遮光する外枠パターンを形成する必要がある。また、フォトマスクパターン領域においても、遮光性を有する部分を設ける場合もある。この外枠パターンや、フォトマスクパターン領域内の遮光性を有する部分は、露光光が実質的に、ほぼ遮光される程度の遮光度が必要であるため、この部分は、通常、クロムが含まれる遮光膜で形成される。
【0015】
しかし、透明基板上に形成された膜が、透明基板側から、ハーフトーン位相シフト膜と、クロムが含まれる遮光膜とが順に積層された2層からなる構成の、一般的に用いられているハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを作製すると、クロムが含まれる膜の膜面が、遮光性が必要な部分で露出してしまう。また、ハードマスク膜を予め積層した、上述したハーフトーン位相シフト膜、クロムが含まれる遮光膜、及びケイ素が含まれるハードマスク膜の3層からなるハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクを作製しても、通常、最終的にハードマスク膜は除去されてしまうため、クロムが含まれる膜の膜面が、遮光性が必要な部分で露出してしまう。ハーフトーン位相シフト型フォトマスクにおいて、クロムが含まれる膜の膜面が露出していると、ArFエキシマレーザー照射時に、クロムのマイグレーションが起きやすく、この様なハーフトーン位相シフト型フォトマスクを連続使用すると、異物状の欠陥が発生しやすい。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、より薄いレジスト膜を適用して、より微細パターンを形成することができるハードマスク膜が積層されたハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクの外周縁部などに、高い遮光度を確保するために設けられるクロムが含まれる膜の上に、簡易なパターン形成工程でケイ素が含まれる膜を残存させて、クロムが含まれる膜の膜面が露出していないハーフトーン位相シフト型フォトマスクを、欠陥発生の可能性を低減して、精度よく製造することができるハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを、透明基板上に、ハーフトーン位相シフト膜である第1の膜と、第1の膜に接して形成された第2の膜と、第2の膜に接して形成された第3の膜と、第3の膜に接して形成された第4の膜とを有するものとし、第1の膜及び第3の膜を、ケイ素を含有し、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成し、第2の膜及び第4の膜を、クロムを含有し、ケイ素を含有せず、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成することにより、ハードマスク膜が積層されたハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクの外周縁部などに、高い遮光度を確保するために設けられるクロムが含まれる膜の上に、簡易なパターン形成工程でケイ素が含まれる膜を残存させて、クロムが含まれる膜の膜面が露出していないハーフトーン位相シフト型フォトマスクを、欠陥発生の可能性を低減して、精度よく製造することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0018】
従って、本発明は、以下のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを提供する。
請求項1:
透明基板上に、ハーフトーン位相シフト膜である第1の膜と、該第1の膜に接して形成された遮光膜である第2の膜と、該第2の膜に接して形成されたハードマスク膜である第3の膜と、該第3の膜に接して形成された第4の膜とを有し、
上記第1の膜及び第3の膜が、ケイ素を含有し、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成され、
上記第2の膜及び第4の膜が、クロムを含有し、ケイ素を含有せず、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成されてな
り、
上記第4の膜の膜厚が30nm以上120nm以下であり、
上記第2の膜及び第4の膜が、該第4の膜を一の条件で塩素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムが、上記第2の膜を上記一の条件で塩素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムより長くなるように構成されてなることを特徴とするハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
請求項2:
上記第2の膜のシート抵抗が10,000Ω/□以下であることを特徴とする請求項1記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
請求項3:
上記第3の膜の膜厚が1nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
請求項4:
上記第3の膜が上記第2の膜より薄いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
請求項5:
上記第4の膜の膜厚が30nm
超120nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
請求項6:
上記第4の膜の膜厚が40nm以上120nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
請求項
7:
露光光に対する上記第1の膜、第2の膜及び第3の膜の合計の光学濃度が2以上であることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項記載のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを用いることにより、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクの外周縁部などに、高い遮光度を確保するために設けられるクロムが含まれる膜の上に、簡易なパターン形成工程でケイ素が含まれる膜を残存させて、クロムが含まれる膜の膜面が露出しておらず、ArFエキシマレーザー照射時にクロムのマイグレーションが起きにくいハーフトーン位相シフト型フォトマスクを、欠陥発生の可能性を低減して、精度よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクは、石英基板などの透明基板(露光光に対して透明な基板)と、透明基板上に形成された膜として、ハーフトーン位相シフト膜である第1の膜、第2の膜、第3の膜、及び第4の膜を有する。第2の膜、第3の膜及び第4の膜は、各々、第1の膜、第2の膜及び第3の膜に接して形成される。第1の膜、第2の膜、第3の膜及び第4の膜は、各々、単層で構成しても、後述する各々のエッチング特性を満たす複数(2以上で、通常5以下)の層で構成してもよい。
【0022】
図1(A)は、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクの一例を示す断面図である。
図1(A)に示されるハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク11は、透明基板10上に、透明基板10に接して第1の膜1、第1の膜1に接して第2の膜2、第2の膜2に接して第3の膜3、第3の膜3に接して第4の膜4が順に積層された4層の膜を有する。
【0023】
第1の膜及び第3の膜は、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成される。一方、第2の膜及び第4の膜は、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成される。即ち、第1の膜、第2の膜、第3の膜及び第4の膜は、各々、隣接する膜同士が、異なるエッチング特性を有しており、各々、第2の膜は透明基板側で隣接する第1の膜、第3の膜は透明基板側で隣接する第2の膜、第4の膜は透明基板側で隣接する第3の膜のエッチングマスク(ハードマスク)として機能させることができるようになっている。ここで、塩素系ドライエッチングとしては、例えば、酸素ガス(O
2)と塩素ガス(Cl
2)との混合ガス、更に、これらに必要に応じてアルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)などの希ガスから選ばれるガスを添加した混合ガスをエッチングガスとした、酸素を含有する塩素系ドライエッチングが挙げられる。一方、フッ素系ドライエッチングとしては、例えば、六フッ化硫黄ガス(SF
6)又は四フッ化炭素ガス(CF
4)、それに酸素ガス(O
2)及びアルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)などの希ガスから選ばれるガスを添加した混合ガスをエッチングガスとしたフッ素系ドライエッチングが挙げられる。
【0024】
また、第2の膜及び第4の膜は、同じエッチング特性を有する膜であるが、第2の膜及び第4の膜を、第4の膜を一の条件で塩素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムが、第2の膜を一の条件、即ち、第4の膜をエッチングしたときと同一のエッチング条件で塩素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムより長くなるように構成しても、第2の膜を一の条件で塩素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムと同じとなるように又は第2の膜を一の条件で塩素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムより短くなるように構成してもよい。ここで、エッチングクリアタイムとは、エッチングを開始してから膜が完全に除去されるまでの時間であり、通常、膜厚(nm)をエッチングレート(nm/sec)で除した値とすることができる。
【0025】
第1の膜、第2の膜及び第3の膜に加えて、更に第4の膜を設け、第4の膜を用いてマスクパターンを最初に形成することにより、第3の膜のマスクパターンを用いて第2の膜のマスクパターンを形成する前、更には、第2の膜のマスクパターンを用いて第1のマスクパターンを形成する前に、第3の膜の外枠パターン又は第2の膜の外枠パターンを形成するための第4の膜のマスクパターンを形成することができる。このように、第4の膜を用いてマスクパターンを最初に形成することにより、第1の膜のフォトマスクパターンを形成した後に、フォトマスクパターン形成領域にレジスト膜を設けて、レジストパターンを形成する工程が不要となるため、レジストパターンを除去した後に、フォトマスクパターンの凹部内にレジスト残渣が残って欠陥となる問題を回避することができる。
【0026】
そして、上述したように、塩素系ドライエッチングにおける同一のエッチング条件下での第4の膜のエッチングクリアタイムが、第2の膜のエッチングクリアタイムより長くなるようにした場合には、第3の膜のマスクパターンを用いて第2の膜のマスクパターンを形成する間に、第4の膜が塩素系ドライエッチングに曝されても、第2の膜のマスクパターンを形成した後に、第4の膜を残存させることができ、更に、第2の膜のマスクパターンを用いて第1の膜のマスクパターンを形成する間に、第3の膜の外枠パターンを形成する部分に第4の膜を残存させて、第3の膜を保護することができる。その結果、第3の膜を外枠パターンとして残存させることが可能となる。
【0027】
第4の膜のエッチングクリアタイムを、第2の膜のエッチングクリアタイムより長くする場合、第2の膜のエッチングクリアタイムに対する第4の膜のエッチングクリアタイムの比率は1超であり、1.5以上、特に2以上であることが好ましく、5以下、特に4以下であることが好ましい。一方、第4の膜のエッチングクリアタイムを、第2の膜のエッチングクリアタイムと同じ又は第2の膜のエッチングクリアタイムより短くする場合、第2の膜のエッチングクリアタイムに対する第4の膜のエッチングクリアタイムの比率は1倍以下であり、0.9以下、特に0.8以下であることが好ましく、0.3以上、特に0.5以上であることが好ましい。第2の膜と第4の膜とを構成する材料が同じである場合は、エッチングクリアタイムの比率は、膜厚の比率と同じになる。一方、第2の膜と第4の膜とを構成する材料が異なる場合は、通常、両者のエッチングレートが異なるため、各々の膜厚とエッチングレートからエッチングクリアタイムを算出して設定することになる。
【0028】
ハーフトーン位相シフト膜である第1の膜は、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成される。このような材料としては、ケイ素を含有する材料が好適である。ケイ素を含有する材料としては、例えば、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有するケイ素化合物、具体的には、ケイ素酸化物(SiO)、ケイ素窒化物(SiN)、ケイ素酸化窒化物(SiON)など、遷移金属(Me)と、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有する遷移金属ケイ素化合物、具体的には、遷移金属ケイ素酸化物(MeSiO)、遷移金属ケイ素窒化物(MeSiN)、遷移金属ケイ素炭化物(MeSiC)、遷移金属ケイ素酸化窒化物(MeSiON)、遷移金属ケイ素酸化炭化物(MeSiOC)、遷移金属ケイ素窒化炭化物(MeSiNC)、遷移金属ケイ素酸化窒化炭化物(MeSiONC)などが挙げられる。遷移金属(Me)としては、チタン(Ti)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)から選ばれる1種以上が好適であるが、特に、ドライエッチング加工性の点からモリブデン(Mo)が好ましい。このケイ素を含有する材料は、クロム(Cr)を含有しないことが好ましい。
【0029】
ハーフトーン位相シフト膜の露光光に対する位相差、即ち、ハーフトーン位相シフト膜を透過した露光光と、ハーフトーン位相シフト膜と同じ厚さの空気層を透過した露光光との位相差は、ハーフトーン位相シフト膜が存在する部分(位相シフト部)と、ハーフトーン位相シフト膜が存在しない部分との境界部において、それぞれを通過する露光光の位相差によって露光光が干渉して、コントラストを増大させることができる位相差であればよく、位相差は150〜200°であればよい。一般的な位相シフト膜では、位相差を略180°に設定するが、上述したコントラスト増大の観点からは、位相差は略180°に限定されず、位相差を180°より小さく又は大きくすることができる。例えば、位相差を180°より小さくすれば、薄膜化に有効である。なお、より高いコントラストが得られる点から、位相差は、180°に近い方が効果的であることは言うまでもなく、160〜190°、特に175〜185°、とりわけ約180°であることが好ましい。一方、ハーフトーン位相シフト膜の露光光に対する透過率は、3%以上、特に5%以上であることが好ましく、また、30%以下であることが好ましい。
【0030】
ハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜である第1の膜のケイ素を含有する材料は、ケイ素化合物の場合、ケイ素の含有率は30原子%以上、特に40原子%以上で、80原子%以下、特に60原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は10原子%以上、特に30原子%以上で、65原子%以下、特に60原子%以下であることが好ましい。一方、遷移金属ケイ素化合物の場合、遷移金属(Me)の含有率は0.1原子%以上、特に1原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。ケイ素の含有率は25原子%以上、特に30原子%以上で、80原子%以下、特に60原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上、特に5原子%以上で、70原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。窒素の含有率は10原子%以上、特に25原子%以上で、60原子%以下、特に57原子%以下であることが好ましい。炭素の含有率は10原子%以下、特に5原子%以下であることが好ましい。位相シフト膜の厚さは、薄いほど微細なパターンを形成しやすいため80nm以下とすることが好ましく、より好ましくは70nm以下、特に65nm以下である。一方、位相シフト膜の膜厚の下限は、露光光、例えば、ArFエキシマレーザ(193nm)などの波長200nm以下の光に対し、必要な光学特性が得られる範囲で設定され、特に制限はないが、一般的には40nm以上となる。
【0031】
第2の膜は、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成される。このような材料としては、クロムを含有する材料が好適である。クロムを含有する材料としては、クロム単体、クロムと、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有するクロム化合物、具体的には、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)などが挙げられる。このクロムを含有する材料は、スズ(Sn)、インジウム(In)などを含んでいてもよいが、ケイ素を含有しないことが好ましい。第2の膜の膜厚は、1nm以上、特に3nm以上、とりわけ40nm以上で、100nm以下、特に70nm以下が好ましい。
【0032】
第2の膜としては、遮光膜が好適である。第2の膜のクロムを含有する材料が、クロム化合物の場合、クロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に50原子%以下であることが好ましく、酸素を含むようにすること、特に1原子%以上含むようにすることで、光学特性を調整することができる。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、窒素を含むようにすること、特に1原子%以上含むようにすることで、エッチング速度を調整することができる。炭素の含有率は0原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、炭素を含むようにすること、特に1原子%以上含むようにすることで、エッチング速度を調整することができる。クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。第2の膜が遮光膜の場合、その膜厚は、15nm以上、特に30nm以上で、100nm以下、特に50nm以下が好ましい。遮光膜は、例えば、遮光層と反射防止層とを組み合わせた多層膜としてもよい。
【0033】
ハーフトーン位相シフト型フォトマスクにおいて、外枠パターンや、フォトマスクパターン領域内の遮光性を有する部分は、露光光が実質的にほぼ遮光される程度の遮光度が必要であるが、第2の膜を遮光膜とすることにより、遮光性を確保することができる。第1の膜及び第2の膜の合計で、光学濃度が、露光光、例えば、ArFエキシマレーザ(193nm)などの波長200nm以下の光に対して2以上、特に2.5以上、とりわけ3以上となるようにすることが好ましい。一方、光学濃度を高くすると、膜厚が厚くなるため、光学濃度は5以下となるようにすることが好ましい。
【0034】
また、第2の膜のシート抵抗は10,000Ω/□以下であることが好ましい。このようにすることで、第3の膜の上に電子線レジストを形成したときに、チャージアップせずに電子線で描画することができる。
【0035】
第3の膜は、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成される。このような材料としては、ケイ素を含有する材料が好適である。ケイ素を含有する材料としては、例えば、ケイ素単体、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有するケイ素化合物、具体的には、ケイ素酸化物(SiO)、ケイ素窒化物(SiN)、ケイ素酸化窒化物(SiON)など、遷移金属ケイ素(MeSi)、遷移金属(Me)と、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有する遷移金属ケイ素化合物、具体的には、遷移金属ケイ素酸化物(MeSiO)、遷移金属ケイ素窒化物(MeSiN)、遷移金属ケイ素炭化物(MeSiC)、遷移金属ケイ素酸化窒化物(MeSiON)、遷移金属ケイ素酸化炭化物(MeSiOC)、遷移金属ケイ素窒化炭化物(MeSiNC)、遷移金属ケイ素酸化窒化炭化物(MeSiONC)などが挙げられる。遷移金属(Me)としては、チタン(Ti)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)から選ばれる1種以上が好適であるが、特に、ドライエッチング加工性の点からモリブデン(Mo)が好ましい。このケイ素を含有する材料は、クロム(Cr)を含有しないことが好ましい。第3の膜の膜厚は、1nm以上、特に2nm以上で、80nm以下、特に70nm以下が好ましい。
【0036】
第3の膜としては、ハードマスク膜が好適である。第3の膜は、特に、フォトマスクパターン領域のパターン形成においてハードマスクとして機能する膜であることが好ましく、フォトマスクパターンのローディング効果を改善するための膜であることがより好ましい。また、レジストパターンをエッチングマスクとして、レジストパターンから直接パターンが形成される膜であることが好ましい。第3の膜のケイ素を含有する材料が、ケイ素と、酸素及び窒素から選ばれる1種以上とを含有するケイ素化合物、又は遷移金属(Me)と、ケイ素と、酸素及び窒素から選ばれる1種以上とを含有する遷移金属ケイ素化合物である場合、ケイ素の含有率は20原子%以上、特に33原子%以上で、95原子%以下、特に80原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上、特に20原子%以上で、70原子%以下、特に66原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上とすることが好ましい。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、エッチング速度を調整する必要がある場合は、1原子%以上とすることが好ましい。遷移金属の含有率は0原子%以上で、35原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、遷移金属を含有する場合は、1原子%以上であることが好ましい。ケイ素、酸素、窒素及び遷移金属の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。第3の膜は、特に、フォトマスクパターン形成領域において、フォトマスクパターンを形成するためのハードマスクとして適している。第3の膜がハードマスク膜の場合、第3の膜は、微細なパターンの形成に対応できる、より薄膜のレジスト膜を適用できるように、第2の膜より薄いことが好ましい。具体的には、第2の膜の膜厚と第3の膜の膜厚との差が30nm以上、特に35nm以上であること、又は第3の
膜の膜厚が、第2の膜の
膜厚の1/2以下、特に1/3以下であることが好適である。また、第3の膜がハードマスク膜の場合、その膜厚は、1nm以上で、20nm以下であることが好ましく、より好ましくは2nm以上、特に4nm以上、とりわけ8nm以上で、15nm以下である。
【0037】
ハーフトーン位相シフト型フォトマスクにおいて、外枠パターンは、露光光が実質的にほぼ遮光される程度の遮光度が必要であるが、第1の膜及び第2の膜のみ、又は第2の膜のみならず、更に、第3の膜を組み合わせることで、必要な遮光性を確保することもできる。その場合、第1の膜、第2の膜及び第3の膜の合計で、光学濃度が、露光光、例えば、ArFエキシマレーザ(193nm)などの波長200nm以下の光に対して2以上、特に2.5以上、とりわけ3以上となるようにすることが好ましい。一方、光学濃度を高くすると、膜厚が厚くなるため、光学濃度は5以下となるようにすることが好ましい。
【0038】
第4の膜は、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成される。このような材料としては、第2の膜において例示したものと同様のものが挙げられる。第4の膜は、特に、クロム単体、又はクロムと、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有するクロム化合物で構成されていることが好適である。クロム化合物の場合、クロムの含有率は30原子%以上、特に35原子%以上で、100原子%未満、特に99原子%以下、とりわけ90原子%以下であることが好ましい。酸素の含有率は0原子%以上で、60原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、酸素を含むようにすること、特に1原子%以上含むようにすることで、エッチング速度を調整することができる。窒素の含有率は0原子%以上で、50原子%以下、特に40原子%以下であることが好ましく、窒素を含むようにすること、特に1原子%以上含むようにすることで、エッチング速度を調整することができる。炭素の含有率は0原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましく、炭素を含むようにすること、特に1原子%以上含むようにすることで、エッチング速度を調整することができる。クロム、酸素、窒素及び炭素の合計の含有率は95原子%以上、特に99原子%以上、とりわけ100原子%であることが好ましい。第4の膜は、特に、外枠パターンを形成するためのハードマスクとして適している。第4の膜の膜厚は、30nm以上で、120nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm超、特に40nm以上、とりわけ60nm以上で、100nm以下、特に90nm以下である。
【0039】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクに用いる膜の成膜は、スパッタリング法により行うことができる。スパッタリング方法は、DCスパッタリング、RFスパッタリングのいずれでもよく、公知のいずれの方法を用いてもよい。
【0040】
酸素、窒素及び炭素を含む材料の膜を成膜する場合、スパッタリングは、反応性スパッタリングが好ましい。スパッタガスとしては、不活性ガスと反応性ガスとが用いられ、具体的には、ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)などの不活性ガス(希ガス)と、酸素含有ガス、窒素含有ガス及び炭素含有ガスから選ばれる反応性ガス(例えば、酸素ガス(O
2ガス)、酸化窒素ガス(N
2Oガス、NO
2ガス)、窒素ガス(N
2ガス)、酸化炭素ガス(COガス、CO
2ガス)など)との組み合わせによって、目的の組成が得られるように調整すればよい。また、膜を複数の層で構成する場合、例えば、膜厚方向に段階的又は連続的に組成が変化する膜を得る場合、そのような膜を成膜する方法としては、例えば、スパッタガスの組成を段階的又は連続的に変化させながら成膜する方法が挙げられる。
【0041】
成膜時の圧力は、膜の応力、耐薬品性、洗浄耐性などを考慮して適宜設定すればよく、通常、0.01Pa以上、特に0.03Pa以上で、1Pa以下、特に0.3Pa以下とすることで、耐薬品性が向上する。また、各ガス流量は、所望の組成となるように適宜設定すればよく、通常0.1〜100sccmとすればよい。反応性ガスと共に不活性ガスを用いる場合、不活性ガスに対する反応性ガスの流量比が5.0以下であることがより好ましい。
【0042】
第1の膜及び第3の膜を、ケイ素を含有する材料で形成する場合、スパッタターゲットとしては、ケイ素ターゲット、窒化ケイ素ターゲット、ケイ素と窒化ケイ素の双方を含むターゲット、ケイ素と遷移金属との複合ターゲットなどを用いることができ、必要に応じて、ケイ素を含有するターゲットと共に、遷移金属ターゲットを用いることもできる。一方、第2の膜及び第4の膜を、クロムを含有する材料で形成する場合、スパッタターゲットとしては、クロムターゲット、クロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットなどを用いることができる。スパッタターゲットに投入する電力はスパッタターゲットの大きさ、冷却効率、成膜のコントロールのし易さなどによって適宜設定すればよく、通常、スパッタターゲットのスパッタ面の面積当たりの電力として、0.1〜10W/cm
2とすればよい。
【0043】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクからハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクからハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造する方法は、公知の手法が適用でき、例えば、化学増幅型フォトレジスト、特に、電子線で描画される化学増幅型フォトレジストなどの有機系のレジストの膜を用い、レジスト膜からレジストパターンを形成し、被エッチング膜のエッチング特性に応じて、塩素系ドライエッチング又はフッ素系ドライエッチングを選択して、レジストパターン、又はフォトマスクの製造過程でフォトマスクブランクに含まれる膜から形成されたマスクパターンをエッチングマスクとして、透明基板上の膜を順にパターニングすることにより製造することができる。
【0044】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクからは、第1の膜、第2の膜及び第3の膜を有するハーフトーン位相シフト型フォトマスクを得ることができる。具体的には、例えば、
図1(A)に示されるハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク11からは、
図1(B)に示されるような、透明基板10上に、第1の膜のフォトマスクパターン1Pと、第1のフォトマスクパターン1Pに接して透明基板10の外周縁部上に形成された第2の膜の外枠パターン2Fなどの第2の膜のマスクパターン21と、第2の膜のマスクパターン21に接して形成された第3の膜の外枠パターン3Fなどの第3の膜のマスクパターン31とを有するハーフトーン位相シフト型フォトマスク110を得ることができる。
【0045】
このようなハーフトーン位相シフト型フォトマスク110は、例えば、
図2、
図3に示されるような工程で製造することができる。具体的には、
(1)ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク11を準備する工程(
図2(A))、
(2)第4の膜4上に第1のレジスト膜51を形成する工程(
図2(B))、
(3)第1のレジスト膜51から、第2の膜のマスクパターン及び第3の膜のマスクパターンを形成する部分に第1のレジストパターン511を形成する工程(
図2(C))、
(4)塩素系ドライエッチングにより、第1のレジストパターン511をエッチングマスクとして第1のレジストパターン511非被覆部分の第4の膜4を除去して、第4の膜のマスクパターン41を形成する工程(
図2(D))、
(5)第1のレジストパターン511を除去する工程(
図2(E))、
(6)第4の膜のマスクパターン41及び露出した第3の膜3上に、第2のレジスト膜52を形成する工程(
図2(F))、
(7)第2のレジスト膜52から、フォトマスクパターンを形成する部分に第2のレジストパターン521を形成する工程(
図3(A))、
(8)フッ素系ドライエッチングにより、第2のレジストパターン521をエッチングマスクとして第2のレジストパターン521非被覆部分の第3の膜3を除去して、第3の膜のマスクパターン31を形成する工程(
図3(B))、
(9)塩素系ドライエッチングにより、第3の膜のマスクパターン31をエッチングマスクとして第3のマスクパターン31非被覆部分の第2の膜2を除去して、第2の膜2のマスクパターン21を形成すると共に、第4の膜のマスクパターン41が露出している場合は、第4の膜のマスクパターン41が残存する範囲でその高さを減じる工程(
図3(C))、
(10)フッ素系ドライエッチングにより、第4のマスクパターン41をエッチングマスクとして第4の膜のマスクパターン41非被覆部分の第3の膜のマスクパターン31を除去して、第3の膜のマスクパターン31(第3の膜の外枠パターン3F)を新たに形成すると共に、第2の膜のマスクパターン21をエッチングマスクとして、第2のマスクパターン21非被覆部分の第1の膜1を除去して、第1の膜のフォトマスクパターン(ハーフトーン位相シフト膜パターン)1Pを形成する工程(
図3(D))、及び
(11)塩素系ドライエッチングにより、第4のマスクパターン41を完全に除去すると共に、第3の膜のマスクパターン31(第3の膜の外枠パターン3F)非被覆部分の第2の膜のマスクパターン21を除去して、第2の膜のマスクパターン21(第2の膜の外枠パターンを2F)を新たに形成する工程(
図3(E))
を含む方法(第1の製造方法)で製造することができる。
【0046】
この場合、工程(8)の後から工程(11)前の間において、第2のレジストパターン521が残存している場合には、工程(8)から工程(10)のいずれかの工程の後、好ましくは工程(8)と工程(9)との間において、
(12)第2のレジストパターン521を除去する工程
を含むことができる。なお、
図3(B)、
図3(C)及び
図3(D)においては、第2のレジストパターン521がない状態を示しているが、第2のレジストパターン521が残存していてもよい。また、
図3(B)、
図3(C)及び
図3(D)における第2のレジストパターン521がない状態は、工程(12)によって除去されたものであっても、また、塩素系ドライエッチング又はフッ素系ドライエッチングに曝されることにより、第2のレジストパターン521も膜厚が徐々に減少するため、その結果として第2のレジストパターン521がない状態に至ったものであってもよい。なお、第1の製造方法は、第4の膜のエッチングクリアタイムが、第2の膜のエッチングクリアタイムより長い場合に好適に適用される。この場合、第2のレジスト膜は、工程(8)における第3の膜に対するフッ素系ドライエッチングの間だけ消失しない程度の薄い膜でよいので、マスクパターン領域のパターン形成に用いる第2のレジスト膜の膜厚をより薄く設定できる点において有利である。
【0047】
第1の製造方法においては、第1のレジスト膜の厚さは、工程(4)が終了するまでに、塩素系ドライエッチングで第1のレジストパターンが消失しない程度の厚さで適宜設定すればよく、また、第2のレジスト膜の厚さは、少なくとも工程(8)が終了するまでは、フッ素系ドライエッチング又は塩素系ドライエッチングで、第2のレジストパターンが消失しない程度の厚さで適宜設定すればよいが、レジスト膜の厚さはより薄い方が好ましい。
【0048】
また、
図1(B)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスク110は、例えば、
図4、
図5に示されるような工程で製造することもできる。具体的には、
(1A)ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランク11を準備する工程(
図4(A))、
(2)第4の膜4上に第1のレジスト膜51を形成する工程(
図4(B))、
(3)第1のレジスト膜51から、第2の膜のマスクパターン及び第3の膜のマスクパターンを形成する部分に第1のレジストパターン511を形成する工程(
図4(C))、
(4)塩素系ドライエッチングにより、第1のレジストパターン511をエッチングマスクとして第1のレジストパターン511非被覆部分の第4の膜4を除去して、第4の膜のマスクパターン41を形成する工程(
図4(D))、
(5)第1のレジストパターン511を除去する工程(
図4(E))、
(6)第4の膜のマスクパターン41及び露出した第3の膜3上に、第2のレジスト膜52を形成する工程(
図4(F))、
(7)第2のレジスト膜52から、フォトマスクパターンを形成する部分に第2のレジストパターン521を形成する工程(
図5(A))、
(8)フッ素系ドライエッチングにより、第2のレジストパターン521をエッチングマスクとして第2のレジストパターン521非被覆部分の第3の膜3を除去して、第3の膜のマスクパターン31を形成する工程(
図5(B))、
(9A)塩素系ドライエッチングにより、第2のレジストパターン521及び第3の膜のマスクパターン31をエッチングマスクとして第2のレジストパターン521及び第3の膜のマスクパターン31非被覆部分の第2の膜2を除去して、第2の膜のマスクパターン21を形成する工程(
図5(C))、
(10)フッ素系ドライエッチングにより、第4のマスクパターン41をエッチングマスクとして第4の膜のマスクパターン41非被覆部分の第3の膜のマスクパターン31を除去して、第3の膜のマスクパターン31(第3の膜の外枠パターン3F)を新たに形成すると共に、第2の膜のマスクパターン21をエッチングマスクとして、第2のマスクパターン21非被覆部分の第1の膜1を除去して、第1の膜のフォトマスクパターン(ハーフトーン位相シフト膜パターン)1Pを形成する工程(
図5(D))、及び
(11)塩素系ドライエッチングにより、第4のマスクパターン41を完全に除去すると共に、第3の膜のマスクパターン31(第3の膜の外枠パターン3F)非被覆部分の第2の膜のマスクパターン21を除去して、第2の膜のマスクパターン21(第2の膜の外枠パターンを2F)を新たに形成する工程(
図5(E))
を含む方法(第2の製造方法)で製造することができる。
【0049】
この場合、工程(9A)の後から工程(11)の前の間において、第2のレジストパターン521が残存している場合には、工程(9A)から工程(10)のいずれかの工程の後、好ましくは工程(9A)と工程(10)との間において、
(12)第2のレジストパターン521を除去する工程
を含むことができる。なお、
図5(C)及び
図5(D)においては、第2のレジストパターン521がない状態を示しているが、第2のレジストパターン521が残存していてもよい。また、
図5(C)及び
図5(D)における第2のレジストパターン521がない状態は、工程(12)によって除去されたものであっても、また、塩素系ドライエッチング又はフッ素系ドライエッチングに曝されることにより、第2のレジストパターン521も膜厚が徐々に減少するため、その結果として第2のレジストパターン521がない状態に至ったものであってもよい。なお、第2の製造方法は、第1の製造方法の場合と比べて、第2のレジスト膜を厚くする必要があるが、第4の膜のエッチングクリアタイムが、第2の膜のエッチングクリアタイムと同じ又は第2の膜のエッチングクリアタイムより短い場合であっても、第1の製造方法と同等の工程でハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができる。
【0050】
第2の製造方法においては、第1のレジスト膜の厚さは、工程(4)が終了するまでに、塩素系ドライエッチングで第1のレジストパターンが消失しない程度の厚さで適宜設定すればよく、また、第2のレジスト膜の厚さは、少なくとも工程(9A)が終了するまでは、フッ素系ドライエッチング又は塩素系ドライエッチングで、第2のレジストパターンが消失しない程度の厚さで適宜設定すればよいが、レジスト膜の厚さはより薄い方が好ましい。
【0051】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクでは、第4の膜が除去されることにより、第3の膜の膜面が露出することになり、第2の膜の膜面が露出していないハーフトーン位相シフト型フォトマスクとなる。この場合、第1の膜、第2の膜及び第3の膜により、外枠領域や、フォトマスクパターン領域において遮光性を有する部分に、必要な遮光性を確保することができる。外枠パターンは、例えば、透明基板が、6025基板(6インチ(152mm)×6インチ(152mm)×0.25インチ(6.35mm))の場合、膜形成面の四辺から内側の任意の範囲に形成することができ、この外枠パターンの形成領域より内側の領域をフォトマスクパターンの形成領域とすることができる。
【0052】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクは、被加工基板にハーフピッチ50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下のパターンを形成するためのフォトリソグラフィにおいて、被加工基板上に形成したフォトレジスト膜に、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、F
2レーザー光(波長157nm)などの波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光でパターンを転写する露光において特に有効である。
【0053】
本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクを用いたパターン露光方法では、ハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから製造されたハーフトーン位相シフト型フォトマスクを用い、フォトマスクパターンに、露光光を照射して、被加工基板上に形成したフォトマスクパターンの露光対象であるフォトレジスト膜に、フォトマスクパターンを転写する。露光光の照射は、ドライ条件による露光でも、液浸露光でもよいが、本発明のハーフトーン位相シフト型フォトマスクを用いたパターン露光方法は、実生産において比較的短時間に累積照射エネルギー量が上がってしまう液浸露光、特に、300mm以上のウェハーを被加工基板として液浸露光により、フォトマスクパターンを露光する際に、特に有効である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0055】
[実施例1]
図1(A)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして、DCスパッタリング装置にて、6025石英基板上に、ArFエキシマレーザー光での位相差が177°、透過率が6%、光学濃度が1.22のハーフトーン位相シフト膜であるMoSiON膜(膜厚75nm)を第1の膜として成膜し、シート抵抗が420Ω/□であり、ArFエキシマレーザー光での光学濃度が1.82の遮光膜であるCrON膜(膜厚44nm)を第2の膜として成膜し、ArFエキシマレーザー光での光学濃度が0.47のハードマスク膜であるSiO膜(膜厚10nm)を第3の膜として成膜し、更に、CrN膜(膜厚60nm)を第4の膜として成膜してハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを得た。この場合、第1の膜、第2の膜及び第3の膜を合わせたArFエキシマレーザー光での光学濃度は3.51である。また、同一のエッチング条件において、第2の膜の塩素系ドライエッチングによるエッチングクリアタイムは125sec、第4の膜の塩素系ドライエッチングによるエッチングクリアタイムは255secである。
【0056】
このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、
図1(B)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクを、上述した第1の製造方法で製造した。第1のレジスト膜の厚さは、工程(4)が終了するまでに、塩素系ドライエッチングで第1のレジストパターンが消失しない程度の厚さとした。また、第2のレジスト膜の厚さは、工程(8)が終了するまでに、フッ素系ドライエッチングで第2のレジストパターンが消失しない程度の厚さとして、工程(8)が終了した後、工程(9)の前に除去した。その結果、第4の膜が残存しないハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができた。
【0057】
[実施例2]
図1(A)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして、DCスパッタリング装置にて、6025石英基板上に、ArFエキシマレーザー光での位相差が179°、透過率が6%、光学濃度が1.22のハーフトーン位相シフト膜であるSiN膜(膜厚65nm)を第1の膜として成膜し、シート抵抗が420Ω/□であり、ArFエキシマレーザー光での光学濃度が1.82の遮光膜であるCrON膜(膜厚44nm)を第2の膜として成膜し、ArFエキシマレーザー光での光学濃度が0.47のハードマスク膜であるSiO膜(膜厚10nm)を第3の膜として成膜し、更に、CrN膜(膜厚60nm)を第4の膜として成膜してハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを得た。この場合、第1の膜、第2の膜及び第3の膜を合わせたArFエキシマレーザー光での光学濃度は3.51である。また、同一のエッチング条件において、第2の膜の塩素系ドライエッチングによるエッチングクリアタイムは125sec、第4の膜の塩素系ドライエッチングによるエッチングクリアタイムは255secである。
【0058】
このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、
図1(B)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクを、上述した第1の製造方法で製造した。第1のレジスト膜の厚さは、工程(4)が終了するまでに、塩素系ドライエッチングで第1のレジストパターンが消失しない程度の厚さとした。また、第2のレジスト膜の厚さは、工程(8)が終了するまでに、フッ素系ドライエッチングで第2のレジストパターンが消失しない程度の厚さとして、工程(8)が終了した後、工程(9)の前に除去した。その結果、第4の膜が残存しないハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができた。
【0059】
[実施例3]
図1(A)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして、DCスパッタリング装置にて、6025石英基板上に、ArFエキシマレーザー光での位相差が179°、透過率が6%、光学濃度が1.22のハーフトーン位相シフト膜であるMoSiN膜(膜厚64nm)を第1の膜として成膜し、シート抵抗が420Ω/□であり、ArFエキシマレーザー光での光学濃度が1.82の遮光膜であるCrON膜(膜厚44nm)を第2の膜として成膜し、ArFエキシマレーザー光での光学濃度が0.47のハードマスク膜であるSiO膜(膜厚10nm)を第3の膜として成膜し、更に、CrN膜(膜厚60nm)を第4の膜として成膜してハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを得た。この場合、第1の膜、第2の膜及び第3の膜を合わせたArFエキシマレーザー光での光学濃度は3.51である。また、同一のエッチング条件において、第2の膜の塩素系ドライエッチングによるエッチングクリアタイムは125sec、第4の膜の塩素系ドライエッチングによるエッチングクリアタイムは255secである。
【0060】
このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、
図1(B)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクを、上述した第1の製造方法で製造した。第1のレジスト膜の厚さは、工程(4)が終了するまでに、塩素系ドライエッチングで第1のレジストパターンが消失しない程度の厚さとした。また、第2のレジスト膜の厚さは、工程(8)が終了するまでに、フッ素系ドライエッチングで第2のレジストパターンが消失しない程度の厚さとして、工程(8)が終了した後、工程(9)の前に除去した。その結果、第4の膜が残存しないハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができた。
【0061】
[実施例4]
図1(A)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクとして、DCスパッタリング装置にて、6025石英基板上に、ArFエキシマレーザー光での位相差が177°、透過率が6%、光学濃度が1.22のハーフトーン位相シフト膜であるMoSiON膜(膜厚75nm)を第1の膜として成膜し、シート抵抗が420Ω/□であり、ArFエキシマレーザー光での光学濃度が1.82の遮光膜であるCrON膜(膜厚44nm)を第2の膜として成膜し、ArFエキシマレーザー光での光学濃度が0.47のハードマスク膜であるSiO膜(膜厚10nm)を第3の膜として成膜し、更に、CrN膜(膜厚20nm)を第4の膜として成膜してハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクを得た。この場合、第1の膜、第2の膜及び第3の膜を合わせたArFエキシマレーザー光での光学濃度は3.51である。また、同一のエッチング条件において、第2の膜の塩素系ドライエッチングによるエッチングクリアタイムは125sec、第4の膜の塩素系ドライエッチングによるエッチングクリアタイムは85secである。
【0062】
このハーフトーン位相シフト型フォトマスクブランクから、
図1(B)に示されるようなハーフトーン位相シフト型フォトマスクを、上述した第2の製造方法で製造した。第1のレジスト膜の厚さは、工程(4)が終了するまでに、塩素系ドライエッチングで第1のレジストパターンが消失しない程度の厚さとした。また、第2のレジスト膜の厚さは、工程(9A)が終了するまでに、フッ素系ドライエッチング及び塩素系ドライエッチングで第2のレジストパターンが消失しない程度の厚さとして、工程(9A)が終了した後、工程(10)の前に除去した。その結果、第4の膜が残存しないハーフトーン位相シフト型フォトマスクを製造することができた。