特許第6646389号(P6646389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6646389-車両用バッテリの保持構造 図000002
  • 特許6646389-車両用バッテリの保持構造 図000003
  • 特許6646389-車両用バッテリの保持構造 図000004
  • 特許6646389-車両用バッテリの保持構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646389
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】車両用バッテリの保持構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20200203BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20200203BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   B60K1/04 A
   B60R16/04 L
   H01M2/10 S
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-178136(P2015-178136)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-52419(P2017-52419A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 章人
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126396(JP,A)
【文献】 実開平2−124661(JP,U)
【文献】 中国実用新案第204481063(CN,U)
【文献】 中国特許出願公開第103671428(CN,A)
【文献】 特開2000−320013(JP,A)
【文献】 中国実用新案第203906504(CN,U)
【文献】 特開2014−212600(JP,A)
【文献】 特開平11−11237(JP,A)
【文献】 実開平5−54105(JP,U)
【文献】 特開2000−315484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60R 16/04
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを上載するトレイと、前記バッテリ上部両側の角部を押さえ込む一対の固定ビームと、該各固定ビームを前記バッテリ上部両側の角部を押さえ込ませた状態でトレイ側から拘束するロックアームとを備えた車両用バッテリの保持構造であって、前記ロックアームの基端部が円弧状に巻き返されて係止環を成し、前記各固定ビームの対峙方向に傾動し得るよう、前記係止環の中心を挿通させたボルトを介してトレイ側に枢支されており、前記ロックアームの先端部前記各固定ビームに対し締結されることを特徴とする車両用バッテリの保持構造。
【請求項2】
トレイが車両のボデーに設けた格納庫に対し引き出し式に出し入れし得るように構成されていることを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリの保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリの保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、エンジンとモータジェネレータとを併用した燃費性能の高いハイブリッド自動車の開発が進められているが、この種のハイブリッド自動車では、電力走行用電源を成すバッテリを搭載する必要があり、特にハイブリッドバス等においては、ボデーの側面に設けた格納庫に対し引き出し式に出し入れし得るようにトレイを設置し、このトレイにバッテリを上載して保持させるようにしている。
【0003】
図4は従来の車両用バッテリの保持構造を示すもので、ここに図示している例では、二つの角形のバッテリ1が並べてトレイ2に上載されており、このバッテリ1が並べられている方向を幅方向として規定すると共に、該幅方向に対し直角な水平方向を前後方向として規定している。
【0004】
そして、これらのバッテリ1の上部における幅方向両側の角部が一対の固定ビーム3により押さえ込まれるようになっていて、該各固定ビーム3が前記トレイ2側から延びるロックアーム4により拘束されるようになっており、走行振動等に対しバッテリ1が安定して保持されるようにしてある。
【0005】
ここで、前記ロックアーム4の基端部は、釣り針状に巻き返されてフック部5を成すようにしてあり、前記トレイ2の前後端面の夫々に二つずつ開けられた係止孔6に対し前記フック部5が引っ掛けられて係止されるようになっている一方、前記ロックアーム4の先端部は、ボルトの如き雄ネジ部7として形成されていて、前記固定ビーム3の前後端部に対し貫通してナット8により締結されるようになっている。
【0006】
尚、この種の車両用バッテリの保持構造に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平2−124661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、斯かる従来構造においては、バッテリ1の点検整備時にナット8を取り外してから固定ビーム3やロックアーム4を全て撤去してバッテリ1を取り外すようにしているため、該バッテリ1の取り外しやその後の取り付け直しの作業に手間がかかるという問題があり、特にハイブリッドバス等に採用されている引き出し式のトレイ2の場合に格納庫の奥側での作業が非常に煩わしいものとなることから、バッテリ1の点検整備時における作業性の改善が望まれている。
【0009】
ここで、トレイ2側の係止孔6は、ロックアーム4のフック部5を引っ掛け易くするために相対的に大きく開口されているが、ナット8の緩みによりロックアーム4に引っ張り荷重が作用しなくなれば、各固定ビーム3をバッテリ1の角部から外した際にロックアーム4や固定ビーム3が姿勢保持できなくなって全体形状が崩れ、これらのトレイ2下への脱落を招きかねないことから、固定ビーム3やロックアーム4を全て撤去した上でバッテリ1を取り外す措置が取られている。
【0010】
一方、フック部5が外れ難くなるように係止孔6を小径化してしまうと、大きく曲げたフック部5を前記係止孔6に通すのが困難となり、ロックアーム4をトレイ2側に簡便に取り付けることができなくなってしまうため、これまでのところはバッテリ1の点検整備時における作業性に目をつぶって既存構造を踏襲し続けているのが実情である。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、バッテリの点検整備時における作業性を従来よりも大幅に改善し得るようにした車両用バッテリの保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、バッテリを上載するトレイと、前記バッテリ上部両側の角部を押さえ込む一対の固定ビームと、該各固定ビームを前記バッテリ上部両側の角部を押さえ込ませた状態でトレイ側から拘束するロックアームとを備えた車両用バッテリの保持構造であって、前記ロックアームの基端部が円弧状に巻き返されて係止環を成し、前記各固定ビームの対峙方向に傾動し得るよう、前記係止環の中心を挿通させたボルトを介してトレイ側に枢支されており、前記ロックアームの先端部前記各固定ビームに対し締結されることを特徴とするものである。
【0013】
而して、このようにした場合に、ロックアームの先端部と固定ビームとの締結を緩めて前記ロックアームに引っ張り荷重が作用しない状態とし、バッテリ上部両側の角部から固定ビームを外してロックアームをバッテリの外側へ倒すように傾動させると、該バッテリの外側に各固定ビームが退避した状態となり、しかも、各ロックアームがトレイ側に連結された状態のまま保持されるので、これら固定ビームやロックアームを全て撤去しないままバッテリを取り外すことが可能となる。
【0014】
また、バッテリの整備点検後の取り付け直しの作業では、トレイ上にバッテリを上載し直してからロックアームをバッテリの内側へ起こすように傾動させ、固定ビームを前記バッテリ上部両側の角部を押さえ込ませた状態とした上でロックアームの先端部と固定ビームとの締結を締め直すと、前記ロックアームに引っ張り荷重が作用してトレイ側から固定ビームが拘束された状態となり、点検整備後のバッテリを簡便に取り付け直すことが可能となる。
【0016】
また、トレイが車両のボデーに設けた格納庫に対し引き出し式に出し入れし得るように構成されていても良く、このように構成されている場合には、トレイを格納庫から引き出した状態でロックアームを傾動させることが可能となり、該ロックアームの傾動範囲を確保し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
上記した本発明の車両用バッテリの保持構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0018】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、固定ビームやロックアームを全て撤去しないままバッテリを取り外したり、点検整備後のバッテリを簡便に取り付け直したりすることができるので、バッテリの点検整備時における作業性を従来よりも大幅に改善することができる。
【0019】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、既存の構造に対し大掛かりな改造を施す必要がなく、既存の構造に対し簡単な改造を施すだけで実施することができるので、その実施にあたってのコストを大幅に抑制することができる。
【0020】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、トレイを格納庫から引き出した状態でロックアームを傾動させることができるので、該ロックアームの傾動範囲を確保し易くすることができ、バッテリの点検整備時における作業性の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
図2図1のトレイを単独で示す斜視図である。
図3図1のトレイを支持しているレールを単独で示す斜視図である。
図4】従来例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0024】
図1図3に示す如く、本形態例においては、先に図4で説明した既存構造の場合と同様に、二つの角形のバッテリ1が並べてトレイ2に上載されており、このバッテリ1が並べられている方向を幅方向として規定すると共に、該幅方向に対し直角な水平方向を前後方向として規定している。
【0025】
そして、これらのバッテリ1の上部における幅方向両側の角部が一対の固定ビーム3により押さえ込まれるようになっていて、該各固定ビーム3が前記トレイ2側から延びるロックアーム4により拘束されるようになっているが、該ロックアーム4を前記トレイ2の前後端面に一対一組で装備して基端部を前記各固定ビーム3の対峙方向(バッテリ1の幅方向)へ傾動し得るよう枢支し且つ先端部を前記各固定ビーム3に対し締結したところを特徴としている。
【0026】
ここで、ロックアーム4の基端部は、円弧状に巻き返されて係止環9を成し且つ該係止環9の中心を挿通させたボルト10を介してトレイ2側に枢支されており、該トレイ2の前後端面における前記各ボルト10の枢支位置は、二つ並べたバッテリ1の幅寸法の範囲内に設定されるようになっている。
【0027】
一方、ロックアーム4の先端部は、先に図4で説明した既存構造の場合と同様に、ボルトの如き雄ネジ部7として形成されていて、前記固定ビーム3の前後端部に対し貫通して蝶ナット17により締結されるようになっている。
【0028】
また、前記トレイ2は、ハイブリッドバス等におけるボデーの側面に設けられた格納庫11に対し引き出し式に出し入れし得るようになっており、より具体的には、シャシフレーム側から支持されているカバー12により周囲を囲まれて前記格納庫11が形成されていると共に、該格納庫11の底部に前記トレイ2を移動自在に支持するレール13が架設され且つ該レール13上に前記トレイ2下面に具備されたガイドバー14が移動自在に係合設置されている。
【0029】
ここで、前記ガイドバー14は、逆さのL字断面を成すようなアングル形状を有し且つその後端内側にガイド輪15を備えていて、前記レール13は、幅方向外側に向け溝形を成すチャンネル形状を有し且つその前端外側にガイド輪16を備えており、更には、このガイド輪16の配置されている位置における上側のフランジ面が切欠かれて前記ガイド輪16がフランジ面より高く張り出すようになっており、これら相互のガイド輪15,16の転動によりガイドバー14がレール13に沿って移動し得るようにしてある。
【0030】
而して、このようにした場合に、ロックアーム4の先端部と固定ビーム3とを締結している蝶ナット17を緩めて前記ロックアーム4に引っ張り荷重が作用しない状態とし、バッテリ1上部両側の角部から固定ビーム3を外してロックアーム4をバッテリ1の幅方向外側へ倒すように傾動させると(図2中の矢印A参照)、該バッテリ1の幅方向外側に各固定ビーム3が退避した状態となり、しかも、各ロックアーム4がトレイ2の前後端面に連結された状態のまま保持されるので、これら固定ビーム3やロックアーム4を全て撤去しないままバッテリ1を取り外すことが可能となる。
【0031】
また、バッテリ1の整備点検後の取り付け直しの作業では、トレイ2上にバッテリ1を上載し直してからロックアーム4をバッテリ1の幅方向内側へ起こすように傾動させ(図2中の矢印B参照)、固定ビーム3を前記バッテリ1上部両側の角部を押さえ込ませた状態とした上で蝶ナット17を締め直すと、前記ロックアーム4に引っ張り荷重が作用してトレイ2側から固定ビーム3が拘束された状態となり、点検整備後のバッテリ1を簡便に取り付け直すことが可能となる。
【0032】
従って、上記形態例によれば、固定ビーム3やロックアーム4を全て撤去しないままバッテリ1を取り外したり、点検整備後のバッテリ1を簡便に取り付け直したりすることができるので、バッテリ1の点検整備時における作業性を従来よりも大幅に改善することができる。
【0033】
特に本形態例においては、ロックアーム4の基端部が円弧状に巻き返されて係止環9を成し且つ該係止環9の中心を挿通させたボルト10を介してトレイ2側に枢支させるようにしているので、既存の構造に対し大掛かりな改造を施す必要がなく、既存の構造に対し簡単な改造を施すだけで実施することができるので、その実施にあたってのコストを大幅に抑制することができる。
【0034】
また、トレイ2が車両のボデーに設けた格納庫11に対し引き出し式に出し入れし得るように構成されているので、トレイ2を格納庫11から引き出した状態でロックアーム4を傾動させることができ、これによりロックアーム4の傾動範囲を確保し易くすることができてバッテリ1の点検整備時における作業性の更なる向上を図ることができる。
【0035】
尚、本発明の車両用バッテリの保持構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 バッテリ
2 トレイ
3 固定ビーム
4 ロックアーム
9 係止環
10 ボルト
11 格納庫
図1
図2
図3
図4