特許第6651313号(P6651313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

特許6651313自動走行車両及びこれを含む自動走行システム
<>
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000002
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000003
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000004
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000005
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000006
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000007
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000008
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000009
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000010
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000011
  • 特許6651313-自動走行車両及びこれを含む自動走行システム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651313
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】自動走行車両及びこれを含む自動走行システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20200210BHJP
【FI】
   G05D1/02 J
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-175792(P2015-175792)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-54182(P2017-54182A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 貴志
【審査官】 大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−128053(JP,A)
【文献】 特開平10−69219(JP,A)
【文献】 特開2014−137710(JP,A)
【文献】 特開平8−211936(JP,A)
【文献】 特開2014−21624(JP,A)
【文献】 特開平4−100126(JP,A)
【文献】 特開2007−249735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既定走路の上を自動走行可能に構成され、且つ、当該既定走路の下に埋設された定点に基づいて車両の走行状態を制御する自動走行車両であって、
前記定点を通過したことを検知する定点検知部と、
複数の前記定点のそれぞれに関して、各定点が配置されている位置に関する定点位置情報と、各定点を識別するための定点識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記定点検知部で通過したことが検知された前記定点を、前記定点識別情報に基づいて特定する定点特定部と、
前記定点特定部によって特定された前記定点から現在地点までの走行距離を計測する走行距離計測部と、
前記定点位置情報に基づいて、前記定点特定部によって特定された前記定点の位置を検出すると共に、当該検出された前記定点の位置と、前記走行距離計測部によって計測された前記定点から現在地点までの走行距離とに基づいて現在地点を特定する現在地点特定部を備え
前記定点検知部は、前記定点に対応付けられた速度制御命令の読み出しが可能な構成であり、
前記定点識別情報は、それぞれの前記定点に対応付けられた前記速度制御命令に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点検知部によって読み出された前記定点に対応付けられた前記速度制御命令と、前記定点識別情報に記載された前記速度制御命令に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定することを特徴とする自動走行車両。
【請求項2】
既定走路の上を自動走行可能に構成され、且つ、当該既定走路の下に埋設された定点に基づいて車両の走行状態を制御する自動走行車両であって、
前記定点を通過したことを検知する定点検知部と、
複数の前記定点のそれぞれに関して、各定点が配置されている位置に関する定点位置情報と、各定点を識別するための定点識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記定点検知部で通過したことが検知された前記定点を、前記定点識別情報に基づいて特定する定点特定部と、
前記定点特定部によって特定された前記定点から現在地点までの走行距離を計測する走行距離計測部と、
前記定点位置情報に基づいて、前記定点特定部によって特定された前記定点の位置を検出すると共に、当該検出された前記定点の位置と、前記走行距離計測部によって計測された前記定点から現在地点までの走行距離とに基づいて現在地点を特定する現在地点特定部と、
前記既定走路の上を走行中に、前記自動走行車両から見て所定の方向を撮像する撮像部とを有し、
前記定点識別情報は、前記定点を通過する位置において前記自動走行車両から見て前記所定の方向を撮像したときの撮像データに関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点を通過したことを検知した時点で、前記撮像部によって撮像されたデータと、前記定点識別情報に記載された前記撮像データに関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定することを特徴とする自動走行車両。
【請求項3】
現在地点の世界座標を計測する座標計測部を備え、
前記定点識別情報は、それぞれの前記定点が配置されている世界座標に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点検知部が前記定点を通過したことを検知した時点で、前記座標計測部で計測された世界座標と、前記定点識別情報に記載された世界座標に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動走行車両。
【請求項4】
前記定点識別情報は、前記既定走路上で直列的に隣接する2つの前記定点間の走行距離に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点を通過したことを検知した時点で、前記走行距離計測部が計測した前記走行距離と、前記定点識別情報に記載された前記走行距離に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動走行車両。
【請求項5】
前記既定走路の上を自律走行するモードと、前記既定走路以外のフィールドをマニュアルにて走行するモードとを切り替える指示部を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動走行車両。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動走行車両と、
前記自動走行車両が自動走行するために敷設された誘導線と、
自動走行中に前記自動走行車両が通過する複数の地点に、前記自動走行車両の走行状態を制御するために敷設された定点を含むことを特徴とする自動走行車両自走システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動走行車両に関し、特に、予め定められた走路を自動走行可能な自動走行車両に関する。また、本発明は、このような自動走行車両を含む自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走路に埋設された電磁誘導線をセンサによって検出し、この誘導線に沿って既定の走路を自動走行する自動走行車両が開発されている。このような自動走行車両は、例えばゴルフ場において、キャディバッグなどの荷物やプレイヤーを乗せて走行するゴルフカーに利用されている(例えば、下記特許文献1参照)。なお、ゴルフカーは、「ゴルフカート」とも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−181540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のゴルフカーは、既定の走路を自動走行する機能は有しているが、現在の走行位置を認識する機能は有していない。近年市場からは、ゴルフカーの運行管理のために、ゴルフカーの現在位置を認識することが求められている。また、障害物を検知して車両の走行を制御する際にも、ゴルフカーの現在位置を認識することが求められている。さらに、車両の速度制御など車両の走行制御を向上させるためにも、ゴルフカーの現在位置を認識することが求められている。
【0005】
本発明は、より高精度に現在位置を認識できる、既定走路を自動走行可能な自動走行車両を提供することを目的とする。また、本発明はこのような自動走行車両を含む自動走行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、自動走行車両の現在位置を認識するため手段を検討するに先立ち、自動走行車両の一つであるゴルフカーを鋭意研究した。ゴルフカーは、ゴルフ場の地形に合わせて設定された走路を自動走行する。そのため、ゴルフカーは、樹木の生い茂る環境下で走行することがある。また、ゴルフカーは、高低差の大きい走路を走行することがある。試験を繰り返した結果、GPSで現在地点を特定するには十分な精度が得られない場合があることがわかった。
【0007】
そこで、本願発明者は、自動走行車両が既定走路を自動走行すること、及び、自動走行車両の速度が既定走路内に埋設された定点に基づいて制御されることに注目した。そして、定点を活用して、定点の位置及び定点から現在地点までの走行距離に基づいて現在地点を特定することを思いついた。このように、定点および走行距離を活用することで、自動走行車両が樹木の生い茂る環境下で走行しても、また、高低差の大きい走路を走行しても、自動走行車両の現在位置を認識することができる。
【0008】
本発明は、既定走路の上を自動走行可能に構成され、且つ、当該既定走路の下に埋設された定点に基づいて車両の走行状態を制御する自動走行車両であって、
前記定点を通過したことを検知する定点検知部と、
複数の前記定点のそれぞれに関して、各定点が配置されている位置に関する定点位置情報と、各定点を識別するための定点識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記定点検知部で通過したことが検知された前記定点を、前記定点識別情報に基づいて特定する定点特定部と、
前記定点特定部によって特定された前記定点から現在地点までの走行距離を計測する走行距離計測部と、
前記定点位置情報に基づいて、前記定点特定部によって特定された前記定点の位置を検出すると共に、当該検出された前記定点の位置と、前記走行距離計測部によって計測された前記定点から現在地点までの走行距離とに基づいて現在地点を特定する現在地点特定部を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、自動走行車両が直前に通過した定点が定点特定部によって特定され、定点位置情報に基づいてその特定された定点の位置が検出される。また、特定された定点から現在地点までの走行距離が走行距離計測部によって計測される。自動走行車両は既定の走路上を走行しているため、定点の位置と、当該定点の位置からの走行距離との2つの情報に基づいて、高精度に自動走行車両の現在地点を特定することが可能である。
【0010】
自動走行車両が定点を通過した際、定点特定部が当該通過した定点を特定するためには、種々の構成を採用することができる。例えば、
前記自動走行車両が、現在地点における世界座標を計測する座標計測部を備え、
前記定点識別情報は、それぞれの前記定点が配置されている世界座標に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点検知部が前記定点を通過したことを検知した時点で、前記座標計測部で計測された世界座標と、前記定点識別情報に記載された世界座標に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定するものとしても構わない。
【0011】
ここで、座標計測部としては、例えばGPSを用いることができる。本構成においては、GPSはあくまで、通過した定点を特定するために用いられる。つまり、走路上には複数の定点が埋設されているが、これらの定点のうちのどの定点であるかを特定するための手段として、GPSが用いられている。定点の世界座標が予め記憶部に記憶されているため、GPS等の座標計測部で計測された世界座標と最も近い世界座標を示している定点を抽出することで、通過した定点を特定することができる。
【0012】
また、前記自動走行車両の別の構成として、
前記定点検知部は、前記定点に対応付けられた速度制御命令の読み出しが可能な構成であり、
前記定点識別情報は、それぞれの前記定点に対応付けられた前記速度制御命令に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点検知部によって読み出された前記定点に対応付けられた前記速度制御命令と、前記定点識別情報に記載された前記速度制御命令に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定するものとしても構わない。
【0013】
速度制御命令としては、定点の位置に応じた内容が付されている。従って、定点を通過した時点で、当該通過した定点に付されている速度制御命令を、前記定点識別情報に記載された速度制御命令と照合することで、通過した定点を特定することができる。
【0014】
また、前記自動走行車両の別の構成として、
前記定点識別情報は、前記既定走路上で直列的に隣接する2つの前記定点間の走行距離に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点を通過したことを検知した時点で、前記走行距離計測部が計測した前記走行距離と、前記定点識別情報に記載された前記走行距離に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定するものとしても構わない。
【0015】
定点は、車両の走行状態を制御する目的で既定走路の下に埋設されており、隣接する定点間の距離は異なっている。従って、定点を通過した時点で、走行距離計測部が計測した前記走行距離と、前記定点識別情報に記載された前記走行距離に関する情報とを照合することで、通過した定点を特定することができる。
【0016】
また、前記自動走行車両の構成として、
前記既定走路の上を走行中に、前記自動走行車両から見て所定の方向を撮像する撮像部を有し、
前記定点識別情報は、前記定点を通過する位置において前記自動走行車両から見て前記所定の方向を撮像したときの撮像データに関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点を通過したことを検知した時点で、前記撮像部によって撮像されたデータと、前記定点識別情報に記載された前記撮像データに関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定するものとしても構わない。
【0017】
ここで、撮像データとしては、例えば画像上の特徴点に関する座標情報を含めることができる。この場合、定点を通過した時点で撮像部において撮像されたデータ上に含まれる特徴点の座標情報と、記憶部に記憶されている定点識別情報に含まれる特徴点の座標情報とを照合することで、定点を特定することができる。
【0018】
また、撮像部が複数のカメラで構成される場合には、撮像データとして、視差画像に関する情報を含めることができる。この場合、定点を通過した時点で撮像部において撮像されたデータから作成された視差画像と、記憶部に記憶されている定点識別情報に含まれる特徴点の座標情報とを照合することで、定点を特定することができる。
【0019】
また、前記走行距離計測部は、前記自動走行車両に搭載された車輪の回転角に基づいて走行距離を計測する構成とすることができる。
【0020】
ところで、定点に複数の情報を記憶させることが可能な構成の場合には、定点そのものに定点が配置されている位置に関する情報(上記の「定点位置情報」)を記憶させることが可能である。このような例としては、定点をRFIDで構成する場合が想定される。このような場合には、定点検知部が定点位置情報を読み出すものとしても構わない。
【0021】
すなわち、本発明は、既定走路の上を自動走行可能に構成され、且つ、当該既定走路の下に埋設された定点に基づいて車両の走行状態を制御する自動走行車両であって、
前記定点には、各定点が配置されている位置に関する定点位置情報が付されており、
前記定点を通過したこと、及び通過した前記定点に付された前記定点維持情報を検知する定点検知部と、
前記定点検知部が検知した前記定点の位置から現在地点までの走行距離を計測する走行距離計測部と、
前記定点検知部が検知した前記定点の位置と、前記走行距離計測部によって計測された前記定点から現在地点までの走行距離とに基づいて現在地点を特定する現在地点特定部を備えたことを別の特徴とする。
【0022】
このような構成とした場合においても、定点の位置と、当該定点の位置からの走行距離との2つの情報に基づいて、高精度に自動走行車両の現在地点を特定することが可能である。
【0023】
また、前記自動走行車両は、前記既定走路上を自動走行するモードと、前記既定走路以外のフィールドをマニュアルにて走行するモードとを切り替える指示部を備えるものとしても構わない。
【0024】
この構成によれば、自動走行車両がマニュアルにて走行した後に既定走路上に復帰した場合において、当該自動走行車両の現在位置を特定することができる。
【0025】
また、本発明に係る自動走行システムは、
前記自動走行車両と、
前記自動走行車両が自動走行するために敷設された誘導線と、
自動走行中に前記自動走行車両が通過する複数の地点に、前記自動走行車両の速度を制御するために敷設された定点とを含むことを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、自動走行中の自動走行車両の現在位置を精度良く特定することができる自動走行システムが実現される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、より高精度に現在位置を認識できる、既定走路を自動走行可能な自動走行車両を提供することできる。また、このような自動走行車両を含む自動走行システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】自動走行車両を前面から見たときの模式図である。
図2】自動走行車両の第一実施形態の構成を機能的に示すブロック図である。
図3】自動走行車両が走行する走路の一例を示す模式図である。
図4】記憶部に記憶されている情報を説明するための図である。
図5】自動走行車両の第二実施形態の構成を機能的に示すブロック図である。
図6】記憶部に記憶されている情報を説明するための図である。
図7】自動走行車両の第三実施形態の構成を機能的に示すブロック図である。
図8】第四実施形態の自動走行車両を前面から見たときの模式図である。
図9】自動走行車両の第四実施形態の構成を機能的に示すブロック図である。
図10】自動走行車両の別実施形態の構成を機能的に示すブロック図である。
図11】自動走行車両の別実施形態の構成を機能的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第一実施形態]
本発明の自動走行車両の第一実施形態の構成につき、図面を参照して説明する。なお、以下の図面において、実際の寸法比と図面上の寸法比は必ずしも一致しない。
【0030】
本実施形態では、自動走行車両としてゴルフカーを例示して説明する。しかし、自動走行車両としては、ゴルフカーに限られず、工場や果樹園で走行する無人搬送車も含まれる。また、本発明における自動走行車両は四輪車に限られず、三輪車でもよいし、モノレール型でもよい。後述する第二実施形態以後においても同様である。
【0031】
図1は、本実施形態における自動走行車両を前面から見たときの模式図である。図1に示す自動走行車両1は、ゴルフ場内を自動走行するゴルフカーである。なお、図2は、この自動走行車両1の構成を機能的に示すブロック図である。
【0032】
図1に示す自動走行車両1は、ハンドル4と、当該ハンドル4の回転により操舵される右前輪5及び左前輪6とを備える。また、自動走行車両1は、車体の下部に読み取り部7を備えている。読み取り部7は、定点検知部7aと誘導線検知部7bを含む(図2参照)。定点検知部7a及び誘導線検知部7bの説明は後述される。
【0033】
自動走行車両1の右前輪5には、右前輪5の回転角を検出する回転角検知部9が備えられている。回転角センサ9は、車輪の回転角を検出するものであり、例えば、ロータリーエンコーダで構成される。なお、この回転角センサ9は、右前輪5の代わりに、又はこれに加えて、左前輪6や後輪に備えられていても構わない。
【0034】
図2は、自動走行車両1の構成を模式的に示す機能ブロック図である。自動走行車両1は、上述した定点検知部7a、誘導線検知部7b、及び回転角検知部9の他、定点特定部11、走行距離計測部13、記憶部15、現在地点特定部17、及び自動運転制御部19を備える。定点特定部11、走行距離計測部13、現在地点特定部17、及び自動運転制御部19は、例えばCPU等の演算装置によって構成される。また、記憶部15は、例えばメモリやハードディスク等によって構成される。
【0035】
自動運転制御部19は、自動走行車両1に対して、既定の走路上に設置された電磁誘導線に沿った自動運転のための制御を行う。図3は、自動走行車両1が走行することが予定されている走路の一例である。図3に示されるように、走路21の下には電磁誘導線24が埋め込まれている。誘導線検知部7bは、電磁誘導線24から発せられる電磁波の受信が可能な構成であり、例えば磁気センサからなる。誘導線検知部7bは、電磁誘導線24から発せられる電磁波を受信すると、自動運転制御部19に対して検出信号を出力する。自動運転制御部19は、この検出信号に基づいて、図示しない操舵機構を制御する。これにより、自動運転車両1は走路21上を自動運転する。
【0036】
また、図3に示すように、走路21上において、起点C0を含む予め定められた複数の位置に、定点23が埋設されている。定点23は、例えば複数の磁石の組み合わせで構成されている。定点検知部7aは、この定点23からの磁場情報の読み取りが可能な構成であり、例えば磁力センサからなる。これらの定点23は、例えば、走行、停止、減速等を指示する指示信号を発信する。自動運転車両1が定点23上を通過すると、定点検知部7aは、当該通過した定点23からの指示信号を受信し、当該指示信号を自動運転制御部19に対して出力する。自動運転制御部19は、この指示信号に応じて自動走行車両1を制御する。これにより、自動走行車両1は、定点23によって指定された情報に基づいて、自動的に走行、停止、減速等の制御が行われる。
【0037】
また、定点検知部7aは、自動走行車両1が定点23を通過した時点で、その旨の情報を走行距離計測部13に出力する。走行距離計測部13は、定点検知部7aから送られる信号に基づいて、自動走行車両1が定点23を通過した時点を認識する。そして、走行距離計測部13は、回転角検知部9から出力される車輪の回転角に関する情報に基づき、自動走行車両1が定点23を通過してから現在の地点までに走行した距離を計測する。走行距離計測部13は、予め右前輪5の径に関する情報を記憶しているものとすることができる。これにより、定点23を通過した時点からの右前輪5の回転角(回転数)と、右前輪5の径とに基づいて、定点23を通過した時点からの自動走行車両1の走行距離を演算で算出することができる。
【0038】
記憶部15には、走路21の下に埋め込まれた各定点23を識別するための定点識別情報と、各定点23が配置されている位置に関する定点位置情報とが対応づけて記憶されている。図4は、記憶部15に記憶されている情報の一例を説明するための模式的な図である。
【0039】
例えば、各定点23には、それぞれを識別するための符号(23a,23b,23c,…)が付されている。この符号が定点識別情報に対応する。なお、定点識別情報としては、このように単に定点を識別するための符号のみならず、定点23に登録されている、走行、停止、減速等の指示信号に関する情報を含むものとして構わない。また、定点識別情報としては、走路21に沿って走行した場合に、起点C0に配置されている定点23から数えて何番目の定点23であるかを示す情報が含まれているものとしても構わない。
【0040】
また、記憶部15には、各定点23に配置された位置に関する情報が、例えば緯度と経度とによって示されている。一例として、記憶部15には、定点23aが、緯度xa、経度yaの位置に配置されていることが記憶されている。各定点23の位置に関する情報が、定点位置情報に対応する。
【0041】
定点検知部7aは、自動走行車両1が定点23を通過したことを検知すると、その旨の情報を定点特定部11に出力する。定点特定部11は、記憶部15から定点識別情報を読み出して照合し、直前に通過した定点23が、どの定点23であるかを特定する。
【0042】
例えば、定点識別情報として、各定点23の指示信号が記載されている場合には、定点特定部11は、定点検知部7aが読み出した指示信号に関する情報と、記憶部15に記憶されている情報とを照合することで、定点23を特定する。
【0043】
また、定点識別情報として、各定点23が起点C0から数えて何番目に配置されているかに関する情報(以下、「順序情報」という。)が記載されている場合、定点特定部11は、定点検知部7aから定点23を通過した旨の信号が送られる回数をカウントする。そして、定点特定部11は、このカウントされた数と、記憶部15に記憶されている定点識別情報に記載された順序情報とを照合することで、定点23を特定する。
【0044】
なお、定点検知部7aが、定点23を識別するために付されている符号に関する情報を読み出す機能がある場合には、自動走行車両1が定点23を通過すると、かかる符号に関する情報が、定点検知部7aから定点特定部11に対して出力される。定点特定部11は、この定点23に付された符号に関する情報と、記憶部15に記憶されている定点識別情報に記載された符号に関する情報とを照合することで、定点23を特定することができる。
【0045】
上述したような、自動走行車両1が通過した定点23を定点特定部11が特定する方法は、あくまで一例であり、種々の方法を採用することができる。定点特定部11は、このように、自動走行車両1が通過した定点23を特定すると、その旨の情報を現在地点特定部17に出力する。
【0046】
現在地点特定部17は、定点特定部11によって特定された定点23がどの位置に配置されているものであるかを、当該定点23に対応した定点位置情報を記憶部15から読み出して認識する。これにより、現在地点特定部17は、自動走行車両1が直前に通過した定点23の位置を認識する。そして、現在地点特定部17は、走行距離計測部13から、直前に定点23を通過してから現在の位置までに自動走行車両1が走行した距離に関する情報を取得する。現在地点特定部17は、これらの情報に基づいて、自動走行車両1の現在地点を特定する。
【0047】
本実施形態の自動走行車両1によれば、既定の走路21上を走行している間にわたって、現在の地点を自動的に検出することができる。また、通常、定点23は走路21上に複数埋設されている。本実施形態の自動走行車両1は、複数埋設された定点23のうちの、直前に通過した定点23の情報に基づいて現在の位置を検出する構成であるため、検出誤差を小さくすることができる。
【0048】
[第二実施形態]
自動走行車両の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所のみを説明する。図5は、本実施形態の自動走行車両1の構成を示す機能ブロック図である。
【0049】
本実施形態の自動走行車両1において、走行距離計測部13は、計測した走行距離に関する情報を定点特定部11にも出力する。定点特定部11は、走行距離計測部13から入力された走行距離に関する情報に基づいて、直前に通過した定点23を特定する。
【0050】
図6は、本実施形態における自動走行車両1が備える記憶部15に記憶されている情報の一例を説明するための模式的な図である。
【0051】
図6に示すように、記憶部15には、各定点23が配置された位置と、直前の定点23が配置された位置との間の距離に関する情報が記憶されている。一例として、記憶部15には、定点23bが、定点23aから距離dbだけ進んだ位置に配置されていることが記憶されている。このような、隣接する2つの定点23間の距離に関する情報は、定点23を識別する符号と共に定点識別情報に対応する。
【0052】
第一実施形態の構成と同様、定点特定部11は、定点検知部7aから与えられる情報により、自動走行車両1が定点23を通過した時点を認識する。また、走行距離計測部13は、自動走行車両1が定点23を通過した時点から、現在の位置までに自動走行車両1が走行した距離を計測する。
【0053】
定点特定部11は、定点検知部7aから与えられる情報により、自動走行車両1が次の定点23を通過した時点を認識すると、走行距離計測部13から、一つ前に定点23を通過してから直前に定点23を通過するまでに自動走行車両1が走行した距離を取得する。これにより、定点特定部11は、直前に通過した定点23と、その一つ前に通過した定点23との距離を認識する。定点特定部11は、このように走行距離計測部13からの情報に基づいて算出された隣接する2つの定点23間の距離を、記憶部15に記憶されている定点識別情報に記載されている隣接定点間距離に関する情報と照合する。そして、定点特定部23は、算出された距離に最も近い値が記載されている定点23を特定する。
【0054】
上述したように、本実施形態の自動走行車両1は、定点特定部11が、隣接する2つの定点23間の距離に関する情報に基づいて定点23を特定する。しかし、定点特定部11は、隣接する2つの定点23間の距離に関する情報に加えて、第一実施形態で例示した他の定点識別情報も含めて定点23を特定するものとしても構わない。
【0055】
自動走行車両1が直前に通過した定点23が定点特定部11によって特定された後の処理内容は、第一実施形態と共通であるため、説明を割愛する。
【0056】
[第三実施形態]
自動走行車両の第三実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所のみを説明する。図7は、本実施形態の自動走行車両1の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
【0057】
本実施形態の自動走行車両1は、自動走行車両1の現在の地点における世界座標を計測する座標計測部31を備えている。座標計測部31としては、例えばGPSシステムを用いることができる。記憶部15には、例えば図4に記載したように、各定点23が配置されている位置情報が記憶されている。特に本実施形態では、各定点23が配置されている位置情報が世界座標の形式で記載されている。
【0058】
定点特定部11は、定点検知部7aから与えられる情報により、自動走行車両1が定点23を通過したことを検知すると、座標計測部31から自動走行車両1の現在位置を示す世界座標を取得する。そして、定点特定部11は、座標計測部31より取得した世界座標と、記憶部15に記憶されている定点識別情報に記載されている世界座標に関する情報とを照合し、定点23を特定する。
【0059】
上述したように、本実施形態の自動走行車両1は、定点特定部11が、座標計測部31から取得した世界座標と、記憶部15に記憶されている定点識別情報に記載されている世界座標に関する情報とを照合することで、定点23を特定する。しかし、定点特定部11は、座標計測部31より取得した世界座標に加えて、第一実施形態で例示した他の定点識別情報も含めて定点23を特定するものとしても構わない。
【0060】
なお、本実施形態の自動走行車両1は、座標計測部31によって現在の地点における世界座標を計測する機能を備えている。しかし、本実施形態の自動走行車両1は、単に座標系側部31で計測された世界座標の情報そのものをもって自動走行車両1の現在位置を特定する構成とはなっていない。これは、自動走行車両1がゴルフカーとして利用される場合、走路21の極めて近い領域に多くの樹木が植えられているような状況が想定されるためである。すなわち、自動走行車両1の位置によっては、GPSで構成された座標計測部31によって現在の位置が特定できないことも生じ得る。しかし、本実施形態では、座標計測部31で計測された世界座標に関する情報は、直前に通過した定点23を特定するために利用される。このため、座標計測部31で計測される世界座標は、記憶部15に記憶されている各定点23の世界座標のうち、当該計測された世界座標に最も近似しているものが特定できる程度の精度を有していれば足りる。
【0061】
自動走行車両1が直前に通過した定点23が定点特定部11によって特定された後の処理内容は、第一実施形態と共通であるため、説明を割愛する。
【0062】
[第四実施形態]
自動走行車両の第四実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所のみを説明する。図8は、本実施形態における自動走行車両を前面から見たときの模式図である。また、図9は、本実施形態の自動走行車両1の構成を機能的に示すブロック図である。
【0063】
本実施形態の自動走行車両1は、前面中央部に撮像部3を備える。撮像部3は、例えばステレオカメラで構成され、左画像センサ3aと右画像センサ3bを有する。これらの画像センサ(3a,3b)は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary MOS)等の一般的な可視光センサで構成される。
【0064】
本実施形態において、記憶部15に記憶された定点識別情報には、各定点23の位置において撮像部3が前方を撮像したデータが含まれる。なお、撮像部3が撮像する方向は、必ずしも自動走行車両1の前方である必要はない。
【0065】
定点特定部11は、定点検知部7aから与えられる情報により、自動走行車両1が定点23を通過したことを検知すると、この時点において撮像部3が自動走行車両1の前方を撮像したデータが入力される。そして、定点特定部11は、撮像部3から入力された撮像データと、記憶部15から読み出した定点識別情報に記載されている撮像データに関する情報とを照合することで、定点23を特定する。
【0066】
撮像部3から入力された撮像データと、記憶部15から読み出した撮像データに関する情報の照合方法としては、種々の方法を採用することができる。一例として、撮像データから作成された視差画像を比較して照合することができる。視差画像は、周知の方法で作成される。
【0067】
上述したように、本実施形態の自動走行車両1は、定点特定部11が、定点23を通過した時点で撮像部3が生成した撮像データに基づいて定点23を特定する。しかし、定点特定部11は、この撮像データに加えて、上記各実施形態で例示した他の定点識別情報も含めて定点23を特定するものとしても構わない。例えば、本実施形態の自動走行車両1が、更に座標計測部31を備えるものとしても構わない。
【0068】
自動走行車両1が直前に通過した定点23が定点特定部11によって特定された後の処理内容は、第一実施形態と共通であるため、説明を割愛する。
【0069】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
【0070】
〈1〉 自動走行車両1は、走路21の上を自律走行するモードと、走路21以外のフィールドをマニュアルにて走行するモードとを切り替える指示部を備えるものとしても構わない。図10は、第一実施形態で上述した自動走行車両1が指示部33を備えた場合の構成を模式的に図示したものである。
【0071】
かかる構成によれば、自動走行車両1は、走路21以外のフィールドを走行した後に、走路21上を走行するモードに移行するタイミングを検知することができる。自動走行車両1は、走路21上を自動走行するモードに移行すると、いずれは定点23を通過することになるため、上述した方法によって自動走行車両1の現在の位置を特定することができる。なお、第二実施形態以後の各実施形態で上述した自動走行車両1が指示部33を備えても構わない。
【0072】
〈2〉 定点23に対して、当該定点23が配置されている位置に関する情報そのもの(定点位置情報)が記憶されているものとしても構わない。一例として、定点23が、RFIDのような、多くの情報を記憶した形で埋め込まれている場合には、定点23に対して、定点識別情報と定点位置情報の両者を記憶させることが可能である。この場合、自動走行車両1が定点23を通過した時点で、定点検知部7aは、定点23を通過したことのみならず、通過した定点23の位置についても認識することが可能な構成とすることができる。
【0073】
このような構成の場合には、自動走行車両1を例えば図11に示されるような構成とすることができる。すなわち、定点検知部7aは、定点23を通過した時点で、定点23を通過したことのみならず、当該通過した定点23の位置に関する情報をも検知することができる。よって、この別実施形態の構成では、上述した各実施形態の構成のように、必ずしも、定点識別情報と定点位置情報とが関連付けて記憶されている記憶部15を備える必要がない。
【0074】
〈3〉 本願発明及び本明細書の自動走行車両(automatically driven vehicle)は、自動走行可能な車両である。自動走行車両は、オペレーターによる操舵なしで自動走行可能な車両である。自動走行車両は、オペレーターによる加速および減速なしで自動走行可能な車両である。また、自動走行車両は、少なくとも一つのセンサを搭載し、そのセンサの信号に応じて自律的に走行可能な自律走行車両(autonomously driven vehicle)を含む。
【符号の説明】
【0075】
1 : 自動走行車両
4 : ハンドル
5 : 右前輪
6 : 左前輪
7 : 読み取り部
7a : 定点検知部
7b : 誘導線検知部
9 : 回転角検知部
11 : 定点特定部
13 : 走行距離計測部
15 : 記憶部
17 : 現在地点特定部
19 : 自動運転制御部
21 : 走路
23 : 定点
24 : 電磁誘導線
31 : 座標計測部
33 : 指示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11