【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、自動走行車両の現在位置を認識するため手段を検討するに先立ち、自動走行車両の一つであるゴルフカーを鋭意研究した。ゴルフカーは、ゴルフ場の地形に合わせて設定された走路を自動走行する。そのため、ゴルフカーは、樹木の生い茂る環境下で走行することがある。また、ゴルフカーは、高低差の大きい走路を走行することがある。試験を繰り返した結果、GPSで現在地点を特定するには十分な精度が得られない場合があることがわかった。
【0007】
そこで、本願発明者は、自動走行車両が既定走路を自動走行すること、及び、自動走行車両の速度が既定走路内に埋設された定点に基づいて制御されることに注目した。そして、定点を活用して、定点の位置及び定点から現在地点までの走行距離に基づいて現在地点を特定することを思いついた。このように、定点および走行距離を活用することで、自動走行車両が樹木の生い茂る環境下で走行しても、また、高低差の大きい走路を走行しても、自動走行車両の現在位置を認識することができる。
【0008】
本発明は、既定走路の上を自動走行可能に構成され、且つ、当該既定走路の下に埋設された定点に基づいて車両の走行状態を制御する自動走行車両であって、
前記定点を通過したことを検知する定点検知部と、
複数の前記定点のそれぞれに関して、各定点が配置されている位置に関する定点位置情報と、各定点を識別するための定点識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記定点検知部で通過したことが検知された前記定点を、前記定点識別情報に基づいて特定する定点特定部と、
前記定点特定部によって特定された前記定点から現在地点までの走行距離を計測する走行距離計測部と、
前記定点位置情報に基づいて、前記定点特定部によって特定された前記定点の位置を検出すると共に、当該検出された前記定点の位置と、前記走行距離計測部によって計測された前記定点から現在地点までの走行距離とに基づいて現在地点を特定する現在地点特定部を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、自動走行車両が直前に通過した定点が定点特定部によって特定され、定点位置情報に基づいてその特定された定点の位置が検出される。また、特定された定点から現在地点までの走行距離が走行距離計測部によって計測される。自動走行車両は既定の走路上を走行しているため、定点の位置と、当該定点の位置からの走行距離との2つの情報に基づいて、高精度に自動走行車両の現在地点を特定することが可能である。
【0010】
自動走行車両が定点を通過した際、定点特定部が当該通過した定点を特定するためには、種々の構成を採用することができる。例えば、
前記自動走行車両が、現在地点における世界座標を計測する座標計測部を備え、
前記定点識別情報は、それぞれの前記定点が配置されている世界座標に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点検知部が前記定点を通過したことを検知した時点で、前記座標計測部で計測された世界座標と、前記定点識別情報に記載された世界座標に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定するものとしても構わない。
【0011】
ここで、座標計測部としては、例えばGPSを用いることができる。本構成においては、GPSはあくまで、通過した定点を特定するために用いられる。つまり、走路上には複数の定点が埋設されているが、これらの定点のうちのどの定点であるかを特定するための手段として、GPSが用いられている。定点の世界座標が予め記憶部に記憶されているため、GPS等の座標計測部で計測された世界座標と最も近い世界座標を示している定点を抽出することで、通過した定点を特定することができる。
【0012】
また、前記自動走行車両の別の構成として、
前記定点検知部は、前記定点に対応付けられた速度制御命令の読み出しが可能な構成であり、
前記定点識別情報は、それぞれの前記定点に対応付けられた前記速度制御命令に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点検知部によって読み出された前記定点に対応付けられた前記速度制御命令と、前記定点識別情報に記載された前記速度制御命令に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定するものとしても構わない。
【0013】
速度制御命令としては、定点の位置に応じた内容が付されている。従って、定点を通過した時点で、当該通過した定点に付されている速度制御命令を、前記定点識別情報に記載された速度制御命令と照合することで、通過した定点を特定することができる。
【0014】
また、前記自動走行車両の別の構成として、
前記定点識別情報は、前記既定走路上で直列的に隣接する2つの前記定点間の走行距離に関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点を通過したことを検知した時点で、前記走行距離計測部が計測した前記走行距離と、前記定点識別情報に記載された前記走行距離に関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定するものとしても構わない。
【0015】
定点は、車両の走行状態を制御する目的で既定走路の下に埋設されており、隣接する定点間の距離は異なっている。従って、定点を通過した時点で、走行距離計測部が計測した前記走行距離と、前記定点識別情報に記載された前記走行距離に関する情報とを照合することで、通過した定点を特定することができる。
【0016】
また、前記自動走行車両の構成として、
前記既定走路の上を走行中に、前記自動走行車両から見て所定の方向を撮像する撮像部を有し、
前記定点識別情報は、前記定点を通過する位置において前記自動走行車両から見て前記所定の方向を撮像したときの撮像データに関する情報を含み、
前記定点特定部は、前記定点を通過したことを検知した時点で、前記撮像部によって撮像されたデータと、前記定点識別情報に記載された前記撮像データに関する情報とを照合することで、通過した前記定点を特定するものとしても構わない。
【0017】
ここで、撮像データとしては、例えば画像上の特徴点に関する座標情報を含めることができる。この場合、定点を通過した時点で撮像部において撮像されたデータ上に含まれる特徴点の座標情報と、記憶部に記憶されている定点識別情報に含まれる特徴点の座標情報とを照合することで、定点を特定することができる。
【0018】
また、撮像部が複数のカメラで構成される場合には、撮像データとして、視差画像に関する情報を含めることができる。この場合、定点を通過した時点で撮像部において撮像されたデータから作成された視差画像と、記憶部に記憶されている定点識別情報に含まれる特徴点の座標情報とを照合することで、定点を特定することができる。
【0019】
また、前記走行距離計測部は、前記自動走行車両に搭載された車輪の回転角に基づいて走行距離を計測する構成とすることができる。
【0020】
ところで、定点に複数の情報を記憶させることが可能な構成の場合には、定点そのものに定点が配置されている位置に関する情報(上記の「定点位置情報」)を記憶させることが可能である。このような例としては、定点をRFIDで構成する場合が想定される。このような場合には、定点検知部が定点位置情報を読み出すものとしても構わない。
【0021】
すなわち、本発明は、既定走路の上を自動走行可能に構成され、且つ、当該既定走路の下に埋設された定点に基づいて車両の走行状態を制御する自動走行車両であって、
前記定点には、各定点が配置されている位置に関する定点位置情報が付されており、
前記定点を通過したこと、及び通過した前記定点に付された前記定点維持情報を検知する定点検知部と、
前記定点検知部が検知した前記定点の位置から現在地点までの走行距離を計測する走行距離計測部と、
前記定点検知部が検知した前記定点の位置と、前記走行距離計測部によって計測された前記定点から現在地点までの走行距離とに基づいて現在地点を特定する現在地点特定部を備えたことを別の特徴とする。
【0022】
このような構成とした場合においても、定点の位置と、当該定点の位置からの走行距離との2つの情報に基づいて、高精度に自動走行車両の現在地点を特定することが可能である。
【0023】
また、前記自動走行車両は、前記既定走路上を自動走行するモードと、前記既定走路以外のフィールドをマニュアルにて走行するモードとを切り替える指示部を備えるものとしても構わない。
【0024】
この構成によれば、自動走行車両がマニュアルにて走行した後に既定走路上に復帰した場合において、当該自動走行車両の現在位置を特定することができる。
【0025】
また、本発明に係る自動走行システムは、
前記自動走行車両と、
前記自動走行車両が自動走行するために敷設された誘導線と、
自動走行中に前記自動走行車両が通過する複数の地点に、前記自動走行車両の速度を制御するために敷設された定点とを含むことを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、自動走行中の自動走行車両の現在位置を精度良く特定することができる自動走行システムが実現される。