(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660022
(24)【登録日】2020年2月12日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】ゲルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 13/00 20060101AFI20200220BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20200220BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20200220BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20200220BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20200220BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20200220BHJP
A61L 15/12 20060101ALI20200220BHJP
C08J 3/075 20060101ALI20200220BHJP
C01B 33/40 20060101ALI20200220BHJP
【FI】
B01J13/00 E
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/25
A61K47/04
A61K47/32
A61L15/12
C08J3/075
C01B33/40
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-504212(P2016-504212)
(86)(22)【出願日】2015年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2015055221
(87)【国際公開番号】WO2015125968
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-33098(P2014-33098)
(32)【優先日】2014年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佳宏
【審査官】
吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−128734(JP,A)
【文献】
特開昭57−195178(JP,A)
【文献】
特開2002−053762(JP,A)
【文献】
特開2009−127035(JP,A)
【文献】
特開2011−012107(JP,A)
【文献】
特開2006−028446(JP,A)
【文献】
国際公開第91/005736(WO,A1)
【文献】
原口和敏、李歓軍,ナノコンポジット型ヒドロゲルの力学物性とそれに及ぼすクレイ変性の効果,ネットワークポリマー,2004年 3月10日,Vol.25, No.1,p.2-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
C01B 33/40
C08J 3/075
A61K 8/
A61K 47/
A61L 15/
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)及びケイ酸塩の分散剤(C)を含んでなるゲルの製造方法であって、
該ゲル中の水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒の一部又は全量を脱溶媒するか、又は
水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、ケイ酸塩の分散剤(C)並びに水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を含むゲル形成性組成物をゲル化するとともに、その中の溶媒の一部又は全量を脱溶媒する、
脱溶媒工程を含み、
前記水溶性有機高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、
ゲルの製造方法。
【請求項2】
前記水溶性有機高分子(A)の重量平均分子量が100万乃至1000万である、請求項1に記載のゲルの製造方法。
【請求項3】
前記ケイ酸塩(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項1又は請求項2に記載のゲルの製造方法。
【請求項4】
前記分散剤(C)がオルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム/マレイン酸ナトリウム共重合体、アクリル酸アンモニウム/マレイン酸アンモニウム共重合体、水酸化ナトリウム、ヒドロキシルアミン、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フミン酸ナトリウム、及びリグニンスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のゲルの製造方法。
【請求項5】
前記水溶性有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、又は1,3−ブチレングリコールである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゲルの製造方法。
【請求項6】
前記水溶性有機溶媒が不揮発性水溶性有機溶媒である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゲルの製造方法。
【請求項7】
前記不揮発性水溶性有機溶媒がグリセリン、エチレングリコール又は1,3−ブチレングリコールである、請求項6に記載のゲルの製造方法。
【請求項8】
前記脱溶媒工程が、溶媒を蒸発させる工程である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のゲルの製造方法。
【請求項9】
前記脱溶媒工程における溶媒の脱溶媒率が、脱溶媒前の溶媒の質量に基いて25%以上である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のゲルの製造方法。
【請求項10】
前記脱溶媒工程における溶媒の脱溶媒率が、脱溶媒前の溶媒の質量に基いて90%以上とすることにより、乾燥したゲルを製造する請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記脱溶媒工程の後、得られたゲルに、水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を添加する溶媒添加工程を含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のゲルの製造方法。
【請求項12】
前記溶媒添加工程が、前記脱溶媒工程後のゲルを水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒に浸漬する工程である、請求項11に記載のゲルの製造方法。
【請求項13】
前記水溶性有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、又は1,3−ブチレングリコールである、請求項11又は請求項12に記載のゲルの製造方法。
【請求項14】
前記水溶性有機溶媒が不揮発性水溶性有機溶媒である、請求項11又は請求項12に記載のゲルの製造方法。
【請求項15】
前記不揮発性水溶性有機溶媒がグリセリン、エチレングリコール又は1,3−ブチレングリコールである、請求項14に記載のゲルの製造方法。
【請求項16】
前記脱溶媒工程の後、得られた乾燥ゲルを粉砕して粉末にする粉末工程を含む、請求項10に記載のゲルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルの製造方法に関し、より詳しくは、溶媒の一部又は全量を脱溶媒する工程を実施することにより、ゲルの機械強度の調整や、種々の溶媒を添加することが可能なゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル、特にヒドロゲルは、水が主成分であるため生体適合性が高く、環境への負荷が低いソフトマテリアル素材という観点から、近年注目されている。その一例として、重合反応を伴わず、室温で電解質高分子、クレイ粒子、及び分散剤を混合するだけで容易に製造できる自己支持性有機無機複合ヒドロゲルが報告されている(非特許文献1)。
ヒドロゲルの機械強度を上げるためには溶質又は分散質の濃度を上げなくてはならない。しかし、非特許文献1に開示されたヒドロゲルでは、溶質又は分散質の濃度を上げると非常に粘性が高くなり、ゲルの製造が困難になる。例えば、シート状ゲル製造時に流動状態のゲル形成性の組成液を平らな容器に均一に流し込みゲル化する方法が望ましい。しかし、電解質高分子、クレイ粒子、及び分散剤から成るヒドロゲルにおいて、加工しやすい程度の流動性を有する組成液では、強度の低いシート状ゲルしか製造することができない。
また、ポリアクリル酸塩と粘土鉱物からなる自立性(自己支持性)を有する乾燥粘土膜が知られており(特許文献1)、中間物としてゲル状のペーストが作製されている。しかし、このペーストには非特許文献1にみられるような自己支持性は有していない。さらに、このペーストは塗布、乾燥による製膜後にカリウムイオン交換することで、水分による膜の膨張や分解を防ぐ機能を付与させ、耐水や耐熱を目的とした表面保護材としてのみに利用されるものである。
また、乾燥によるシート状ヒドロゲルの製造法として、PVA(ポリビニルアルコール)を原料としたシート化が知られている(特許文献2)。これは、強度の弱いPVAゲルシートを何層にも積層させて強度を上げる技術である。しかし、多層を形成する操作が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−274924号公報
【特許文献2】特開2012−16887号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】第61回高分子学会年次大会予稿集、Vol.61,No.1,p.683(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、種々の有機溶媒を添加することができ、ゲル製造工程において加工しやすい流動性を有し、尚且つゲルの機械強度を任意に調整することが可能なゲルの製造方法、及び該製造方法により製造されるゲルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水溶性有機高分子、ケイ酸塩、ケイ酸塩の分散剤、及び溶媒を含んでなるゲル形成性組成物をゲル化することにより得られたゲルから、又は、ゲル形成性組成物をゲル化するとともに該ゲル形成性組成物から、該溶媒を脱溶媒させて固形分濃度を高めることにより、得られるゲルの強度を任意に調整することが可能であることを見出した。また、不揮発性水溶性有機溶媒の存在下、水および揮発性水溶性有機溶媒を蒸発させて得た乾燥ゲルが、柔軟性を保持することを見出した。更に脱溶媒後に、再び溶媒を加えてゲルを膨潤させることにより、得られるゲルの機械強度が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、第1観点として、水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)及びケイ酸塩の分散剤(C)を含んでなるゲルの製造方法であって、
該ゲル中の水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒の一部又は全量を脱溶媒するか、又は
水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、ケイ酸塩の分散剤(C)並びに水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を含むゲル形成性組成物をゲル化するとともに、その中の溶媒の一部又は全量を脱溶媒する、
脱溶媒工程、
を含むゲルの製造方法に関する。
第2観点として、前記水溶性有機高分子(A)が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、第1観点に記載のゲルの製造方法に関する。
第3観点として、前記ケイ酸塩(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である、第1観点又は第2観点に記載のゲルの製造方法に関する。
第4観点として、前記分散剤(C)がオルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム/マレイン酸ナトリウム共重合体、アクリル酸アンモニウム/マレイン酸アンモニウム共重合体、水酸化ナトリウム、ヒドロキシルアミン、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フミン酸ナトリウム、及びリグニンスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、第1観点乃至第3観点のいずれか1項に記載のゲルの製造方法に関する。
第5観点として、前記水溶性有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、又は1,3−ブチレングリコールである、第1観点乃至第4観点のいずれか1項に記載のゲルの製造方法に関する。
第6観点として、前記水溶性有機溶媒が不揮発性水溶性有機溶媒である、第1観点乃至第4観点のいずれか1項に記載のゲルの製造方法に関する。
第7観点として、前記不揮発性水溶性有機溶媒がグリセリン、エチレングリコール又は1,3−ブチレングリコールである、第6観点に記載のゲルの製造方法に関する。
第8観点として、前記脱溶媒工程が、溶媒を蒸発させる工程である、第1観点乃至第7観点のいずれか1項に記載のゲルの製造方法に関する。
第9観点として、前記脱溶媒工程における溶媒の脱溶媒率が、脱溶媒前の溶媒の質量に基いて25%以上である、第1観点乃至第8観点のいずれか1項に記載のゲルの製造方法に関する。
第10観点として、前記脱溶媒工程における溶媒の脱溶媒率が、脱溶媒前の溶媒の質量に基いて90%以上とすることにより、乾燥したゲルを製造する第1観点乃至第8観点のいずれか1項に記載の製造方法に関する。
第11観点として、前記脱溶媒工程の後、得られたゲルに、水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を添加する溶媒添加工程を含む、第1観点乃至第10観点のいずれか1項に記載のゲルの製造方法に関する。
第12観点として、前記溶媒添加工程が、前記脱溶媒工程後のゲルを水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒に浸漬する工程である、第11観点に記載のゲルの製造方法に関する。
第13観点として、前記水溶性有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、又は1,3−ブチレングリコールである、第11観点又は第12観点に記載のゲルの製造方法に関する。
第14観点として、前記水溶性有機溶媒が不揮発性水溶性有機溶媒である、第11観点又は第12観点に記載のゲルの製造方法に関する。
第15観点として、前記不揮発性水溶性有機溶媒がグリセリン、エチレングリコール又は1,3−ブチレングリコールである、第14観点に記載のゲルの製造方法に関する。
第16観点として、第1観点乃至第15観点のいずれか1項に記載の製造方法により製造されてなる、水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、ケイ酸塩の分散剤(C)を含んでなるゲルに関する。
第17観点として、第10観点に記載の製造方法により製造されてなる、水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、ケイ酸塩の分散剤(C)を含んでなる乾燥ゲルに関する。
第18観点として、第17観点に記載の乾燥ゲルを粉砕することによる粉末を製造する方法に関する。
第19観点として、第18観点に記載の製造方法により製造されてなる、水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、ケイ酸塩の分散剤(C)を含んでなる粉末に関する。
【発明の効果】
【0007】
以上、説明したように、本発明によれば水溶性有機高分子、ケイ酸塩、ケイ酸塩の分散剤、並びに水及び水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を含んでなるゲル形成性組成物を調製し、該ゲル形成性組成物をゲル化した後で又はゲル化するとともに、ゲル又はゲル形成性組成物に含まれる溶媒の一部又は全量を脱溶媒することにより、所望の強度を有し、種々の溶媒が添加されたゲルを製造することができる。また、製造の際の操作性を向上させるために、溶媒量を増やして組成物の流動性を高めると、得られるゲルの強度は低下するが、その後の脱溶媒により強度が向上する。更に脱溶媒量を加減することにより所望のゲル強度に調整することもできる。
通常、大部分の溶媒を除去したゲルは柔軟性を失うが、作製時の混合物(ゲル形成性組成物)に不揮発性の水溶性有機溶媒を添加することで、脱溶媒後も柔軟性を維持したゲルとなる。更に脱溶媒(高濃縮又は乾燥)後のゲルに水及び水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を加えてゲルを膨潤させることで、ゲルの強度を向上させることができる。ゲルが脱溶媒された(濃縮や乾燥した)状態では、濃縮前のゲルに比べて含溶媒率が低いことから腐食や菌の発生が抑制され、保存安定性に優れる。また、溶媒添加による膨潤の際には、用途に応じて各種添加剤を加えることが可能であり、例えば、ハップ剤などのゲルシート基材として利用価値が高い。さらに、乾燥したゲルは粉末化することが可能で、保水剤や保冷剤用途のゲルとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、製造例3および実施例1乃至4における応力破断曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ゲル化に必要な成分である水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、分散剤(C)並びに水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を含むゲル形成性組成物を調製し、該ゲル形成性組成物をゲル化した後で又はゲル化するとともに、ゲル又はゲル形成性組成物に含まれる該溶媒分を脱溶媒する脱溶媒工程を含む、任意の強度を有するゲルの製造方法及び該製造方法により得られるゲルに関し、また、ゲル形成性組成物の脱溶媒後に水および水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒を加えて膨潤させ、ゲルの強度を向上させたり、各種溶媒を含ませることを特徴とする、ゲルの製造方法及び該方法により得られるゲルに関する。
本発明においては、ゲル形成性組成物の調製は、例えば成分(A)、成分(B)及び成分(C)を低濃度で前記水に溶解又は分散させた流動性の高い組成液(溶液及び分散液)を調製した後、シャーレやバット、トレー等の容器に溶液及び分散液を流し込むことにより行われる。
本発明のゲルは、上記成分の他に、本発明の所期の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の成分を任意に配合してもよい。
【0010】
<成分(A):水溶性有機高分子>
本発明の成分(A)は、有機酸構造、有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子である。
有機酸構造、有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A)としては、例えば、カルボキシル基を有するものとして、ポリ(メタ)アクリル酸塩、カルボキシビニルポリマーの塩、カルボキシメチルセルロースの塩;スルホニル基を有するものとして、ポリスチレンスルホン酸の塩;ホスホニル基を有するものとして、ポリビニルホスホン酸塩等が挙げられる。上記塩としては、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、及びリチウム塩などが挙げられ、完全中和塩でも部分中和塩でも良い。なお、本発明では、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方をいう。
【0011】
本発明では、水溶性有機高分子(A)は、カルボン酸構造、カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有することが好ましく、また水溶性有機高分子(A)は架橋又は共重合されていてもよく、完全中和物又は部分中和物のいずれも使用できる。
【0012】
水溶性有機高分子(A)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算で、好ましくは100万乃至1000万であり、より好ましくは200万乃至700万である。
また、市販品で入手できる水溶性有機高分子(A)の重量平均分子量は、市販品に記載されている重量平均分子量として、好ましくは100万乃至1000万であり、より好ましくは200万乃至700万である。
【0013】
その中でも、本発明では、水溶性有機高分子(A)としては、完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩であることが好ましく、具体的には完全中和又は部分中和ポリアクリル酸ナトリウムが好ましく、特に重量平均分子量200万乃至700万の完全中和又は部分中和された非架橋型高重合ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0014】
<成分(B):ケイ酸塩>
本発明の成分(B)は、ケイ酸塩であって、好ましくは水膨潤性ケイ酸塩粒子である。
ケイ酸塩(B)としては、例えば、スメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母等が挙げられ、水又は含水溶媒を分散媒としたコロイドを形成するものが好ましい。なお、スメクタイトとは、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのグループ名称である。
ケイ酸塩粒子の一次粒子の形状としては、円盤状、板状、球状、粒状、立方状、針状、棒状、無定形等が挙げられ、直径5nm乃至1000nmの円盤状又は板状のものが好ましい。
【0015】
ケイ酸塩の好ましい具体例としては、層状ケイ酸塩が挙げられ、市販品として容易に入手可能な例として、ロックウッド・アディティブズ社製のラポナイトXLG(合成ヘクトライト)、XLS(合成ヘクトライト、分散剤としてピロリン酸ナトリウム含有)、XL21(ナトリウム・マグネシウム・フルオロシリケート)、RD(合成ヘクトライト)、RDS(合成ヘクトライト、分散剤として無機ポリリン酸塩含有)、及びS482(合成ヘクトライト、分散剤含有);コープケミカル株式会社製のルーセンタイト(コープケミカル株式会社登録商標)SWN(合成スメクタイト)及びSWF(合成スメクタイト)、ミクロマイカ(合成雲母)、及びソマシフ(コープケミカル株式会社登録商標、合成雲母);クニミネ工業株式会社製のクニピア(クニミネ工業株式会社登録商標、モンモリロナイト)、スメクトン(クニミネ工業株式会社登録商標)SA(合成サポナイト);株式会社ホージュン製のベンゲル(株式会社ホージュン登録商標、天然ベントナイト精製品)等が挙げられる。
【0016】
<成分(C):ケイ酸塩の分散剤>
本発明の成分(C)は、ケイ酸塩の分散剤であって、好ましくは水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤である。
ケイ酸塩の分散剤(C)として、ケイ酸塩の分散性の向上や、層状ケイ酸塩を層剥離させる目的で使用される分散剤又は解膠剤を使用することができる。
ケイ酸塩の分散剤(C)としては、例えば、リン酸塩系分散剤として、オルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム;カルボン酸塩系分散剤として、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム/マレイン酸ナトリウム共重合体、アクリル酸アンモニウム/マレイン酸アンモニウム共重合体;アルカリとして作用するものとして、水酸化ナトリウム、ヒドロキシルアミン;多価カチオンと反応し不溶性塩又は錯塩を形成するものとして、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム;その他の有機解膠剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フミン酸ナトリウム、及びリグニンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
その中でも、リン酸塩系分散剤としてピロリン酸ナトリウム、カルボン酸塩系分散剤として重量平均分子量1000乃至2万の低重合ポリアクリル酸ナトリウム、その他の有機解膠剤としてポリエチレングリコール(PEG900等)が好ましい。
【0017】
重量平均分子量1000乃至2万の低重合ポリアクリル酸ナトリウムはケイ酸塩粒子と相互作用して粒子表面にカルボシキアニオン由来の負電荷を生じさせ、電荷の反発によりケイ酸塩を分散させる等の機構により分散剤として作用することが知られている。
【0018】
[ゲル形成性組成物の調製]
本発明に用いられるゲル形成性組成物の調製方法としては、水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、分散剤(C)並びに水及び水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶媒の各成分を混合する方法であれば特に限定されないが、例えば、水溶性有機高分子(A)の水溶液と、ケイ酸塩(B)及びケイ酸塩の分散剤(C)の水分散液とを混合し、場合により該水分散液又は水溶液と水分散液を混合する際に、更に1種又は2種以上の水溶性有機溶媒を添加する方法が挙げられる。
本発明において上記水溶液及び水分散液は、加工時の流動性を高くするため各成分が低含有率で含まれるように調製する。具体的な濃度としては、水溶性有機高分子(A)の溶液において水溶性有機高分子(A)の濃度は0.1質量%乃至1質量%、ケイ酸塩(B)及びケイ酸塩の分散剤(C)の分散液においてケイ酸塩(B)の濃度は0.1質量%乃至3質量%、分散剤(C)の濃度は0.01質量%乃至0.5質量%である。
【0019】
水溶液又は水分散液中の各成分を混合する方法としては、機械式又は手動による撹拌の他、超音波処理を用いることができるが、機械式撹拌が好ましい。機械式撹拌には、例えば、マグネチックスターラー、プロペラ式撹拌機、自転・公転式ミキサー、ディスパー、ホモジナイザー、振とう機、ボルテックスミキサー、ボールミル、ニーダー、ラインミキサー、超音波発振器等を使用することができる。その中でも、好ましくはマグネチックスターラー、プロペラ式撹拌機、自転・公転式ミキサー、ラインミキサーによる混合である。
前記調製液(水溶液及び水分散液)を混合する際の温度は、水溶液又は水分散液の凝固点乃至沸点、好ましくは−5℃乃至100℃であり、より好ましくは0℃乃至50℃である。
前記水溶性有機溶媒としては特に限定されないが、例えば下記に例示された水溶性有機溶媒が挙げられる。
【0020】
[ゲルの成型加工]
前記調製液(水溶液及び水分散液)の混合は、水溶液及び水分散液のそれぞれをシャーレやバット、トレー等の容器に流し込むことによって行うことができる。得られるゲル形成性組成物は、これらの容器に保持した後でゲル化することによりゲルとして成形加工ができる他に、塗布又はスピンコートすることによりシート状に薄膜化することもできる。
前記ゲル形成性組成物を容器に保持した後のゲル化では、蓋で上部を覆い溶媒の蒸発を防ぎ製造する他に、容器上部を開放し溶媒を蒸発させ脱溶媒(濃縮)することもできる。
上記ゲル化の際の温度は−5℃乃至200℃であり、好ましくは0℃乃至150℃である。
ゲルの脱溶媒、すなわち濃縮や乾燥は、ゲル形成性組成物をゲル化するとともに該ゲル形成性組成物に含まれる溶媒分を蒸発させる方法の他、一度製造したゲルを用いてゲルに含まれる溶媒分を蒸発する方法によっても行うことができる。
脱溶媒は常圧の他、減圧下で行うことも可能で、その圧力は0.1kPa乃至100kPaであり、好ましくは1kPa乃至100kPaである。
本発明においては、脱溶媒率が20%、好ましくは25%以上である場合、得られるゲルの破断強度の向上効果が認められる。
なお、本発明において、脱溶媒率は次のように定義される。
脱溶媒率=(脱溶媒前のゲル形成性組成物又はゲルの質量−脱溶媒後のゲルの質量)/(脱溶媒前のゲル形成性組成物又はゲル中の溶媒の質量)×100
【0021】
[乾燥ゲルの取り出し]
脱溶媒率が50%以上である、高濃縮されたゲル(乾燥ゲルとも言う)は、特に、溶媒として、不揮発性の水溶性有機溶媒を使用しなかった場合、硬くなる上に容器の底部に張りつきやすいため、そのまま容器から取り出す場合、破損しやすく剥離が困難になることがある。そこで得られたゲルを無機塩の水溶液や水溶性有機溶媒と水の混合溶液に浸すことで容器から剥離しやすくする。
使用する無機塩は一価の塩であり、好ましくは塩化ナトリウムや、塩化リチウム、より好ましくは塩化ナトリウムである。
無機塩の濃度は、高いほど乾燥ゲルへの浸透による膨張が抑えられ、好ましくは0.1質量%乃至30質量%、より好ましくは0.5質量%乃至20質量%である。
使用する水溶性有機溶媒はアルコールやケトン、アミド、ニトリル等であり、好ましくはアルコール系有機溶媒であり、より好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン又は1,3−ブチレングリコールである。
水溶性有機溶媒の濃度は、好ましくは1質量%乃至99質量%、より好ましくは5質量%乃至80質量%である。
一方でゲル製造前に(前記水溶液、水分散液又は水溶液と水分散液を混合した液中に)予め不揮発性の水溶性有機溶媒を添加することで、乾燥後もゲルの柔軟性が保たれることから、溶液に浸すことなく容器から取り出すことができる。
不揮発性の水溶性有機溶媒として好ましくは多価アルコール系有機溶媒であり、より好ましくはエチレングリコール、グリセリン又は1,3−ブチレングリコールである。
不揮発性の水溶性有機溶媒の濃度は、好ましくは1質量%乃至80質量%、より好ましくは5質量%乃至50質量%である。
【0022】
[脱溶媒後のゲルへの溶媒添加]
脱溶媒後のゲルに水を加えると、膨潤して柔軟なゲルになるが、加える水の量を調整することで、任意の濃度および強度のゲルを製造することができる。シート状ゲルの場合、膨張の際は厚さ方向への拡張の他に平面方向にも拡張し、元のゲルと比べると薄く広いシート状ゲルとなる。しかし、同じ含水率のゲルの比較では、脱溶媒(乾燥)、溶媒添加処理したゲルの方が破断強度の向上が見られる。更に、膨張の際加える水に、1種若しくは2種以上の水溶性有機溶媒又は各種水溶性添加剤を加えることも可能である。
【0023】
[乾燥ゲルの粉末化]
不揮発性の水溶性有機溶媒を添加しない条件のもと、ゲルを乾燥させる脱溶媒工程を経て、前記脱溶媒率が少なくとも90%以上である乾燥ゲルを製造後、該乾燥ゲルを粉砕することにより粉末化することができる。粉末ゲルは水を加えることで膨潤し、粒状ゲルができる。更に、膨潤の際加える水に、1種若しくは2種以上の水溶性有機溶媒又は各種水溶性添加剤を加えることも可能である。
【0024】
[シート状ゲルの強度測定]
得られるシート状ゲルの強度は、例えば突刺し破断強度測定機により測定することができる。例えば、株式会社山電製クリープメーターRE2−33005Bを用いて突刺し破断強度測定を行うことができる。測定法は直径23mmの円形穴の開いた2枚のプレートでハイドロゲルシートを挟み、直径3mmの円柱状のシャフト(株式会社山電製プランジャー 形状円柱、番号No.3S、形式P−3S)を円形穴上部から1mm/秒の速度で押し当て、破断までの応力と歪率を測定する。本発明で得られるゲルの突刺し破断強度測定機による破断応力は、5〜1000kPaであり、強度が要求される用途に関しては、下限値としては、20kPa、100kPa、300kPaが挙げられ、上限値としては、300kPa、500kPa、1000kPaが挙げられる。その一例としては、20〜300kPa、100〜1000kPaである。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
[製造例1:9%ラポナイトXLG水分散液の製造]
低重合ポリアクリル酸ナトリウム(ジュリマーAC−103: 東亞合成株式会社製、重量平均分子量6000)7.5部、尿素3部(純正化学製)、フェノキシエタノール0.5部(純正化学製)、水74部を混合し、均一な溶液になるまで25℃にて撹拌した。これに、ラポナイトXLG(ロックウッド・アディティブズ社製)9部を少しずつ加え、均一に分散した後にクエン酸(純正化学製)の10%水溶液3部を加えた。混合物を激しく撹拌しながら80℃まで昇温し、80℃で30分撹拌を続けた後、氷水浴下25℃まで冷却しながら撹拌し、クエン酸(純正化学製)の10%水溶液3部を加え、1時間激しく撹拌し目的物を得た。
【0027】
[製造例2:1.5%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液の製造]
尿素3部(純正化学製)、フェノキシエタノール0.5部(純正化学製)、水92.5部を混合し、均一な溶液になるまで25℃にて撹拌した。これを激しく撹拌しながら高重合ポリアクリル酸ナトリウム(ビスコメートNP−800:昭和電工株式会社製)1.5部を少しずつ加えた後、高重合ポリアクリル酸ナトリウムが完全に溶解するまで25℃で激しく撹拌を続け(約5時間)目的物を得た。
【0028】
[製造例3:シート状ゲル1の製造]
製造例1で製造した9%ラポナイトXLG水分散液6mLに、水6mLを加え、25℃で10分間撹拌した。これに、製造例2で製造した1.5%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液12mLを加え、25℃で1分間激しく撹拌した。混合物を直径9cmのシャーレに均一に流し込み、蓋をして48時間25℃で静置し、目的物を得た。
【0029】
[実施例1:シート状ゲル2の製造]
製造例3で製造したシート状ゲル1をシャーレ上で質量が約30%減少するまで40℃で加熱し水分(溶媒分)を蒸発させ、28.4%脱水(脱溶媒)した目的物を得た。
【0030】
[実施例2:シート状ゲル3の製造]
製造例3で製造したシート状ゲル1をシャーレ上で質量が約50%減少するまで40℃で加熱し水分を蒸発させ、49.2%脱水した目的物を得た。
【0031】
[実施例3:シート状ゲル4の製造]
製造例3で製造したシート状ゲル1をシャーレ上で質量が約80%減少するまで40℃で加熱し水分を蒸発させた。冷却後シャーレに10%食塩水100部加え25℃で1時間静置した。ゲルをシャーレからゆっくり剥離し、77.5%脱水した目的物を得た。
【0032】
[実施例4:シート状ゲル5の製造]
製造例3で製造したシート状ゲル1をシャーレ上で質量が90%以上減少するまで40℃で加熱し水分を蒸発させた。冷却後シャーレに10%食塩水100部加え25℃で1時間静置した。ゲルをシャーレからゆっくり剥離し、94.4%脱水した目的物を得た。
【0033】
[実施例5:シート状ゲル6の製造]
製造例3で製造したシート状ゲル1をシャーレ上で質量が90%以上減少するまで40℃で加熱し水分を蒸発させた。冷却後シャーレにエタノール50部、水50部の混合溶液を加え25度で1時間静置した。ゲルをシャーレからゆっくり剥離し、93.0%脱水した目的物を得た。
【0034】
[実施例6:シート状ゲル7の製造]
製造例1で製造した9%ラポナイトXLG水分散液6mLに、水6mL、グリセリン2.4mLを加え、25℃で10分撹拌した。これに、製造例2で製造した1.5%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液12mLを加え、25℃で1分間激しく撹拌した。混合物を直径9cmのシャーレに均一に流し込み、蓋をせず開放状態のまま48時間25℃で静置し、90.6%脱水した目的物を得た。シャーレ上のシート状ゲルはそのままシャーレから剥離することができた。
【0035】
[実施例7:シート状ゲル8の製造]
製造例3で製造したシート状ゲル1をシャーレ上で質量が90%以上減少するまで40℃で加熱し水分を蒸発させた。93.2%まで脱水後冷却した後、減少した分の水を加え25℃で24時間静置し、目的物を得た。
【0036】
[実施例8:シート状ゲル9の製造]
製造例3で製造したシート状ゲル1をシャーレ上で質量が90%以上減少するまで40℃で加熱し水分を蒸発させた。96.5%まで脱水後冷却した後、50%脱水分に相当する水を加え25℃で24時間静置し、目的物を得た。
【0037】
[実施例9:シート状ゲルの突刺し強度試験]
実施例1乃至実施例8および製造例3の製法で製造したシート状ゲルについて、突刺し強度測定を行った。測定法は株式会社山電製クリープメーターRE2−33005Bを使用し、直径23mmの円形穴の開いた2枚のプレートでハイドロゲルシートを挟み、直径3mmの円柱状のシャフト(株式会社山電製プランジャー 形状円柱、番号No.3S、形式P−3S)を円形穴上部から1mm/秒の速度で押し当て、破断までの応力および歪率を測定した。測定結果を表1に、また実施例1乃至実施例4および製造例3のシート状ゲルの応力−歪み曲線の比較グラフを
図1に示す。脱溶媒しない製造例3のゲルと比較して、脱溶媒処理を行った全てのゲルにおいて破断応力の向上、即ちゲル強度の向上が見られた。実施例1乃至実施例4の比較では、脱溶媒率の向上とともにゲル強度が増加した。脱溶媒の後に再び溶媒添加した実施例7(脱溶媒率0%)のゲルは、同じ脱溶媒率の製造例3のゲルと比較して破断応力が高く、脱溶媒後の溶媒添加処理による強度向上の効果が確認できた。同様の効果は実施例2(脱溶媒率49.2%:溶媒添加処理なし)と実施例8(脱溶媒率50%:溶媒添加処理あり)の比較においても確認できた。
【0038】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のゲルは、製造が容易な上、溶媒分蒸発による固形分濃度の調整により、破断強度や変形率などのゲルの粘弾性を調整することが可能である。また、得られたゲルは透明性が高く伸縮性もあり、加工も容易である。種々の水溶性有機溶媒を添加することも可能である。その特性を生かして、種々の製品に応用することができる。
例えば、創傷被覆材、ハップ剤、止血材等の外用薬基材、外科用シーラント材料、再生医療用足場材料、人工角膜、人工水晶体、人工硝子体、人工皮膚、人工関節、人工軟骨、豊胸用材料等のインプラント材料、並びにソフトコンタクトレンズ用材料等の医療材料、組織培養又は微生物培養等の培地材料、パック用シート等の化粧品素材、子供用・成人用オムツやサニタリーナプキン等のサニタリー用材料、芳香剤又は消臭剤用ゲル素材、菓子又はイヌ用ガム材料、クロマトグラフィー担体用材料、バイオリアクター担体用材料、分離機能膜材料、建材用不燃材料、耐火被覆材、調湿材、保冷剤、耐震緩衝材、土石流防止材、又は土嚢等の建築・土木材料、土壌保水剤、育苗用培地、又は農園芸用の水耕栽培用支持体等の緑化材料、子供用玩具又は模型等の玩具材料、文具用材料、スポーツシューズ、プロテクター等のスポーツ用品の衝撃吸収材料、靴底のクッション材、防弾チョッキ用緩衝材、自動車等の緩衝材、輸送用緩衝材、パッキング材料、緩衝・保護マット材料、電子機器内部の衝撃緩衝材、光学機器、半導体関連部品等の精密部品の運搬台車用緩衝材、産業機器の防振・制振材料、モーター使用機器やコンプレッサー等の産業機器の静音化材料、タイヤ用や輪ゴム用のゴム代替材料、並びにプラスチック代替材料等の環境調和材料装置の摩擦部分のコーティング材、塗料添加物、廃泥のゲル化剤又は逸泥防止剤等の廃棄物処理、接着材、密封用シール材、1次電池、2次電池、キャパシタ用のゲル電解質材料、並びに色素増感型太陽電池用ゲル電解質材料又は燃料電池用材料等の電子材料、写真用フィルム用材料等を挙げることができる。