(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1(a)〜(d)は、三相ブラシレスモータ10の構成および動作を説明するための図である。この三相ブラシレスモータ10は、三相2極巻線のアウタロータ形のブラシレスDCモータであり、たとえば送風用ファンの駆動に用いられる。
【0012】
図1(a)において、この三相ブラシレスモータ10は、円筒状のロータ1と、ロータ1の内側に設けられたステータ3とを備える。ロータ1の内周面には、4つのメインマグネット(界磁用永久磁石)2が等角度間隔(90度間隔)で配置されている。互いに対向する1対のメインマグネット2はステータ3側にN極を向けて配置され、互いに対向するもう1対のメインマグネットはステータ3側にS極を向けて配置されている。
【0013】
ステータ3の外周には6つの突出部(コア)3a〜3fが設けられ、6つの突出部3a〜3fの外周部には6つの電機子コイル4a〜4fがそれぞれ巻回されている。3つの電機子コイル4a〜4cに三相交流電流を流すとともに、もう3つの電機子コイル4d〜4fに三相交流電流を流すと、ステータ3の周囲に回転磁界が発生し、ロータ1が回転する。
【0014】
ロータ1の回転軸にはロータ1と一体に回転するシャフト6が設けられ、シャフト6にはロータ1の回転位置をモニタするためのセンサマグネット5が取り付けられている。ロータ1は、シャフト6を介して軸受(図示せず)によって回転可能に支持されている。ロータ1、シャフト6、センサマグネット5、およびステータ3は同軸に設けられている。センサマグネット5には、N極とS極とが2対、ロータ1の回転中心に対し均等角度で配置されている。ロータ1、4つのメインマグネット2、センサマグネット5、およびシャフト6は、一体となって回転方向Rの向きに回転する。
【0015】
さらに、3つの磁気センサMS1〜MS3が、センサマグネット5の外周面に対向してロータ1の回転方向に等角度間隔(120°間隔)で配列されており、それぞれセンサ信号S1〜S3を出力する。磁気センサMS1〜MS3の各々は、センサマグネット5によって発生する磁界の方向を検出する。磁気センサMS1〜MS3の各々には、たとえばホールICが使用される。ホールICは、電流に直角に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が生じる、いわゆるホール効果を利用して磁界を検出するセンサである。
【0016】
なお、ホールICの出力信号を矩形波信号に整形するコンパレータを磁気センサMSの内部、外部、あるいはモータ10の外部に設けてもよい。また、センサマグネット5を省略し、4つのメインマグネット2によって発生する磁界の方向を磁気センサM1〜M3によって検出しても構わない。
【0017】
センサ信号S1〜S3の各々は、対応する磁気センサMSがセンサマグネット5のN極に対向している場合は「H」レベル(第1の論理レベル)にされ、対応する磁気センサMSがセンサマグネット5のS極に対向している場合は「L」レベル(第2の論理レベル)にされる。センサ信号S1〜S3の各々は、ロータ1の回転に従って「H」レベルおよび「L」レベルに交互に変化する。センサ信号S1〜S3の位相は、互いに120度ずつずれている。ロータ1が一定の回転速度で回転すると、センサ信号S1〜S3の各々は一定周波数の矩形波信号となる。センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせは、60度毎に変化する。
【0018】
三相ブラシレスモータ10では、電機子コイル4a〜4fに流す電流を切り替えるタイミング、すなわち、ロータ1とメインマグネット2の位置関係に応じて、発生するトルクが変化する。センサマグネット5は、本実施の形態では、メインマグネット2に対して遅れ角42°でシャフト6に取り付けられている。さらに電気的な進角制御も行なわれる。
【0019】
図1(a)において、領域P1は、電流経路が短く、他の電機子コイルに対して2倍の電流が流れている電機子コイルを示している。領域P2は、電機子コイル4c(4f)とメインマグネット2との反発力による正回転トルクの発生位置を示している。領域P3は、電機子コイル4a(4d)とメインマグネット2との反発力による逆トルクの発生位置を示している。
【0020】
ブラシレスモータ10が
図1(a)の状態にあるとき、後述するMOSトランジスタ(スイッチング素子)Q1〜Q6から電機子コイル4a〜4fには、
図1(b)に示すような経路で電流が流される。
【0021】
すなわち、磁気センサMS3から出力される信号に同期してMOSトランジスタQ1,Q5がオンされ、外部の直流電源から所定の直流電圧が接続点Uaと接続点Vaの間に印加される。このとき、接続点Uaから接続点Vaに向けて、2つの電流経路に沿って電流が流れる。第1の電流経路は、接続点Uaから電機子コイル4c,4fを経て接続点Vaに至る経路であり、第2の電流経路は、接続点Uaから電機子コイル4b,4eおよび4a,4dを経て接続点Vaに至る経路である。
【0022】
図1(b)の接続状態にある場合、第1の電流経路の抵抗値は第2の電流経路の抵抗値の半分になるため、第1の電流経路には、第2の電流経路に対して2倍の電流が流れる。
図1(a)の領域P1は、2倍の電流が流れる電機子コイル4c,4fを示している。第1の電流経路の電機子コイル4c,4fとメインマグネット2との間には、第2の電流経路の電機子コイル4a,4b,4d,4eと比べて、特に強い反発力が生じる。この反発力によって、上述した逆トルクが打ち消されて、ロータ1は回転方向Rの向きに回転する。
【0023】
図1(c)は、
図1(a)の状態と比べて、ロータ1が回転方向Rの向きに30°回転した状態を示している。
図1(d)は、このときのMOSトランジスタQ1〜Q6の状態を示している。この場合、磁気センサMS1から出力される信号に同期してMOSトランジスタQ3,Q5がオンされ、所定の直流電圧が接続点Waと接続点Vaの間に印加される。
【0024】
図1(c)の場合は、電機子コイル4a,4dとメインマグネット2との間に、他の電機子コイル4b,4c,4e,4fと比べて、特に強い反発力が生じ、ロータ1は、さらに回転方向Rの向きに回転する。以下、同様の動作を繰り返して、ロータ1は回転方向Rの向きに回転を続ける。
【0025】
なお、この三相ブラシレスモータ10では、センサマグネット5のN極およびS極が90°毎に配置されるので、磁気センサMS1〜MS3の出力信号はロータ1が1回転する間に2周期変化する。これにより、ロータ1の回転を2倍細かくタイミング制御することができる。
【0026】
また、3つの磁気センサMS1〜MS3を設けたので、1つの磁気センサのみを設けた場合に比べ、ロータ1の回転を3倍細かくタイミング制御することができる。3つの磁気センサMS1〜MS3の出力信号に基づき、ロータ1が1回転する間にMOSトランジスタQ1〜Q6のオン/オフを計12回切り替え、オンさせたMOSトランジスタの組み合わせによって、電機子コイル4a〜4fに電圧を印加する電源側接続点と接地側接続点とを順次切り替えることによって、電機子コイル4a〜4fに流れる電流の方向を切り替える。その結果、回転磁界が生成されて、ロータ1を回転方向Rの向きに回転させる駆動力が得られる。
【0027】
図2は、
図1に示した三相ブラシレスモータ10を駆動するモータ駆動装置20の構成を示す回路ブロック図である。
図2において、モータ駆動装置20は、MOSトランジスタQ1〜Q6、抵抗素子(ゲート抵抗)R1〜R6、およびドライバ11を備える。
【0028】
MOSトランジスタQ1〜Q3のドレインはともに、外部の直流電源(図示せず)から供給される直流電圧VDCを受け、それらのソースはそれぞれ接続点Ua,Va,Waに接続される。MOSトランジスタQ4〜Q6のドレインは、それぞれ接続点Ua,Va,Waに接続され、それらのソースはともに接地電圧GNDを受ける。MOSトランジスタQ1〜Q6のゲートは、それぞれ抵抗素子R1〜R6を介してドライバ11に接続される。
【0029】
ドライバ11は、直流電圧VDCによって駆動され、PWM信号φ1〜φ6を抵抗素子R1〜R6を介してMOSトランジスタQ1〜Q6のゲートに与え、MOSトランジスタQ1〜Q6の各々を所定のタイミングでオン/オフさせる。
【0030】
このモータ駆動装置20は、さらに、センサ信号生成回路12、リセット回路13、異常検出部14、ロック検出部15、駆動電流制御部16、および報知部17を備える。センサ信号生成回路12は、磁気センサMS1〜MS3の出力信号S1〜S3を増幅して異常検出部14、ロック検出部15、および駆動電流制御部16に与える。
【0031】
リセット回路13は、直流電圧VDCが投入された場合、および回転速度指令値RCによって指令される回転速度が0にされた場合の各々において、異常検出部14およびロック検出部15をリセットするためのリセット信号REを所定時間だけ出力する。
【0032】
異常検出部14は、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせが変化する毎に、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせが正常であるか否かを判定する。異常検出部14は、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせが正常でない期間、たとえばセンサ信号S1〜S3がともに「L」レベルである期間に異常検出信号FDa(第2の異常検出信号)を出力する。
【0033】
さらに異常検出部14は、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせに異常が発生したことに応じて、センサ信号S1〜S3の各々のエッジの数(レベル変化の回数)をカウントし、センサ信号S1〜S3のうちのいずれかのセンサ信号のエッジのカウント値がしきい値Cthに到達した場合に異常検出信号FDb(第1の異常検出信号)を出力する。異常検出部14は、リセット信号REに応答して、異常検出信号FDa,FDbの出力を停止する。
【0034】
ロック検出部15は、回転速度指令値RCによって指令される所定の回転速度よりもロータ1の回転速度が低下した場合において、ロック検出時間TL内にセンサ信号S1〜S3のエッジが発生しないとき、ロータ1の回転がロックしたと判別してロック検出信号LDを出力する。
【0035】
たとえば、モータの極対数Pが2である場合、ロータ1が1回転する間にセンサ信号S1〜S3のエッジが12個発生する。ロック検出時間TLを1秒とすると、ロータ1の回転数が5(rpm)以下になった場合において、TL=1秒以内にセンサ信号S1〜S3のエッジが発生しないとき、ロータ1の回転がロックしたと判別される。ロータ1の回転がロックしたと判別されるときのロータ1の回転数をRtとすると、数式Rt=60/(6×P×TL)が成立する。ロック検出部15は、リセット信号REに応答して、ロック検出信号LDの出力を停止する。
【0036】
駆動電流制御部16は、センサ信号S1〜S3に同期して動作し、ロータ1の回転速度が回転速度指令値RCによって指令される回転速度に一致するようにPWM信号φ1〜φ6を生成する。駆動電流制御部16は、異常検出信号FDa、異常検出信号FDb、およびロック検出信号LDの各々に応答してPWM信号φ1〜φ6の出力を停止する。トランジスタQ1〜Q6、抵抗素子R1〜R6、ドライバ11、および駆動電流制御部16は、駆動回路を構成する。
【0037】
報知部17は、異常検出信号FDa、異常検出信号FDb、およびロック検出信号LDの各々に応答して、三相ブラシレスモータ10が故障したことを報知する警報信号ALを出力する。警報信号ALに応答して、音、光などによってモータ10の使用者に故障が発生したことを報知するブザー、ランプなどをさらに設けても構わない。
【0038】
図3は、異常検出部14の構成を示すブロック図である。
図3において、異常検出部14は、判定部30、カウンタ31〜33、および信号発生部34を含む。判定部30は、リセット信号REによってリセットされ、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせが変化する毎に、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせが正常であるか否かを判定する。
【0039】
図1で示したように、センサマグネット5が回転方向に4分割されてS極とN極が交互に配置され、3つの磁気センサMS1〜MS3がセンサマグネット5の外周面に対向して120度間隔で配置されているので、磁気センサMS1〜MS3が正常であればセンサ信号S1〜S3の論理レベルが同じになることはない。
【0040】
判定部30は、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせが正常でない期間(たとえば、信号S1〜S3の論理レベルが同じである期間)に異常検出信号FDaを出力する。
【0041】
さらに判定部30は、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせに異常が発生したことに応じて(たとえば、信号S1〜S3の論理レベルが同じになったことに応じて)、活性化信号ENを出力する。判定部30は、リセット信号REに応答して、異常検出信号FDaおよび活性化信号ENの出力を停止する。
【0042】
カウンタ31〜33は、判定部30から活性化信号ENが出力されている期間に活性化され、それぞれセンサ信号S1〜S3のレベル変化の回数をカウントし、それぞれカウント値C1〜C3を信号発生部34に出力する。判定部30からの活性化信号ENの出力が停止すると、カウンタ31〜33のカウント値C1〜C3は0にリセットされる。
【0043】
信号発生部34は、カウンタ31〜33のカウント値C1〜C3のうちのいずれか1つのカウント値がしきい値Cthに到達し、かつカウント値C1〜C3のうちのいずれか1つのカウント値が0である場合に異常検出信号FDbを出力する。
【0044】
図4は、
図3に示した判定部30の動作を示すフローチャートである。
図4において、判定部30は、ステップST1においてリセット信号REが「H」レベルであるか否か(すなわちリセット信号REが出力されているか否か)を判別する。ステップST1においてリセット信号REが「L」レベルである(すなわちリセット信号REが出力されていない)と判別した場合、判定部30は、ステップST2においてセンサ信号S1〜S3が同じであるか否か(すなわちS1=S2=S3であるか否か)を判別する。
【0045】
ステップST2においてセンサ信号S1〜S3が同じである(すなわちセンサ信号S1〜S3が異常である)と判別した場合、判定部30は、ステップST3において異常検出信号FDaを「H」レベルにし(すなわち異常検出信号FDaを出力し)、ステップST4において活性化信号ENを「H」レベルにし(すなわち活性化信号ENを出力し)、ステップST1に戻る。
【0046】
ステップST2においてセンサ信号S1〜S3が同じであるという条件が成立しない場合、判定部30は、ステップST5において異常検出信号FDaを「L」レベルにし(すなわち異常検出信号FDaの出力を停止し)、ステップST1に戻る。
【0047】
判定部30は、ステップST1においてリセット信号REが「H」レベルである(すなわちリセット信号REが出力されている)と判別した場合は、ステップST6において活性化信号ENを「L」レベルにし(すなわち活性化信号ENの出力を停止し)、ステップST1に戻る。
【0048】
図5は、
図3に示したカウンタ31の動作を示すフローチャートである。
図5において、カウンタ31は、ステップST11において活性化信号ENが「H」レベルであるか否か(すなわち活性化信号ENが出力されているか否か)を判別する。ステップST11において活性化信号ENが「H」レベルである(すなわち活性化信号ENが出力されている)と判別した場合、カウンタ31は、ステップST12においてセンサ信号S1のエッジ(レベル変化)があるか否かを判別する。
【0049】
カウンタ31は、ステップST12においてセンサ信号S1のエッジがないと判別した場合はステップST11に戻り、ステップST12においてセンサ信号S1のエッジがあったと判別した場合はステップST13においてカウント値C1をインクリメント(+1)し、ステップST11に戻る。
【0050】
カウンタ31は、ステップST11において活性化信号ENが「H」レベルでない(すなわち活性化信号ENが出力されていない)と判別した場合、ステップST14においてカウント値C1を0にリセットしてステップST11に戻る。カウンタ32,33の動作は、カウンタ31の動作と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0051】
図6は、
図3に示した信号発生部34の動作を示すフローチャートである。
図6において、信号発生部34は、ステップST21においてカウンタ31〜33のカウント値C1〜C3を検出し、ステップST22において、C1≧Cth、またはC2≧Cth、またはC3≧Cthであるか否か(すなわちカウント値C1〜C3のうちのいずれかのカウント値がしきい値Cthに到達したか否か)を判別する。
【0052】
ステップST22においてC1≧Cth、またはC2≧Cth、またはC3≧Cthであると判別した場合は、信号発生部34は、ステップST23においてC1=0、またはC2=0、またはC3=0であるか否か(すなわちカウント値C1〜C3のうちのいずれかのカウント値が0であるか否か)を判別する。
【0053】
ステップST23においてC1=0、またはC2=0、またはC3=0であると判別した場合、信号発生部34は、ステップST24において異常検出信号FDbを「H」レベルにし(すなわち異常検出信号FDbを出力し)、ステップST21に戻る。
【0054】
ステップST22においてC1≧Cth、またはC2≧Cth、またはC3≧Cthでない場合は、信号発生部34は、ステップST25において異常検出信号FDbを「L」レベルにし、ステップST21に戻る。ステップST23においてC1=0、またはC2=0、またはC3=0でない場合は、信号発生部34は、ステップST25において異常検出信号FDbを「L」レベルにし、ステップST21に戻る。なお、ステップST23においてC1=0、またはC2=0、またはC3=0でない場合としては、センサ信号S1〜S3が異常になった後に直ぐに正常に回復した場合がある。
【0055】
図7(a)〜(g)は、単相故障が発生した場合におけるモータ駆動装置20の動作を示すタイムチャートである。
図7(a)〜(g)は、それぞれセンサ信号S1、センサ信号S2、センサ信号S3、異常検出信号FDa、活性化信号EN、ロック検出信号LD、および異常検出信号FDbの波形を示している。
【0056】
単相故障とは、3つのセンサ信号S1〜S3のうちの1つのセンサ信号のみに異常が発生した場合をいう。単相故障が発生した場合は、三相ブラシレスモータ10が二相運転され、ロータ1の回転が継続される。このため、ロック検出部15によってモータ10への給電を停止させることができず、過電流が流れてトランジスタQ1〜Q6が破損する恐れがある。本実施の形態では、単相故障が発生した場合は、異常検出部14によってモータ10への給電を停止させる。
【0057】
初期状態(時刻t0)では、センサ信号S1〜S3は正常であり、異常検出信号FDa、活性化信号EN、ロック検出信号LD、および異常検出信号FDbはともに非活性化レベルの「L」レベルになっている。なお、リセット信号REは、非活性化レベルの「L」レベルになっている。
【0058】
時刻t1において、磁気センサMS1〜MS3のうちの磁気センサMS3のみが故障し、センサ信号S3が「L」レベルから変化しなくなったものとする。センサ信号S1,S2は正常であるので、センサ信号S1,S2に同期して三相ブラシレスモータ10が二相運転される。
【0059】
時刻t2においてセンサ信号S2が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられると、センサ信号S1〜S3がともに0(「L」レベル)になり、
図3の判定部30によって異常検出信号FDaおよび活性化信号ENがともに非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられる(
図4のステップST1〜ST4)。
【0060】
異常検出信号FDaが「H」レベルに立ち上げれると、駆動電流制御部16によってトランジスタQ1〜Q6がともにオフ状態に固定され、電機子コイル4a〜4fへの給電が停止される。活性化信号ENが「H」レベルに立ち上げられると、
図3のカウンタ31〜33が活性化される。
【0061】
時刻t3においてセンサ信号S1が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられると、異常検出信号FDaは非活性化レベルの「L」レベルに立ち下げられるとともに(
図4のステップST1,ST2,ST5)、カウンタ31のカウント値C1がインクリメントされてC1=1となる(
図5のステップST11〜ST13)。異常検出信号FDaが「L」レベルに立ち下げれると、駆動電流制御部16によってセンサ信号S1,S2に対応するトランジスタQのオン/オフが開始され、電機子コイル4a〜4fへの給電が開始され、三相ブラシレスモータ10が二相運転される。
【0062】
時刻t4においてセンサ信号S2が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられると、カウンタ32のカウント値C2がインクリメントされてC2=1となる。時刻t5においてセンサ信号S1が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられると、カウンタ31のカウント値C1がインクリメントされてC1=2となる(
図5のステップST11〜ST13)。
【0063】
時刻t6においてセンサ信号S2が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられると、センサ信号S1〜S3がともに0(「L」レベル)になり、
図3の判定部30によって異常検出信号FDaが非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられる(
図4のステップST1〜ST4)とともに、カウンタ32のカウント値C2がインクリメントされてC2=2となる。
【0064】
以下同様に、センサ信号S1の論理レベルが変化する毎にカウンタ31のカウント値C1がインクリメントされ、センサ信号S2の論理レベルが変化する毎にカウンタ32のカウント値C2がインクリメントされ、センサ信号S1〜S3がともに「L」レベルになる度に異常検出信号FDaが「H」レベルにされる。
【0065】
時刻t15においてセンサ信号S1が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられると、カウンタ31のカウント値C1がしきい値Cth=7に到達する。このとき、カウンタ33のカウント値C3が0であるので、
図3の信号発生部34によって異常検出信号FDbが非活性化レベルの「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられる(
図6のステップST21〜ST24)。
【0066】
異常検出信号FDbが「H」レベルにされると、駆動電流制御部16によってトランジスタQ1〜Q6がともにオフ状態に固定され、電機子コイル4a〜4fへの給電が停止され、ロータ1の回転が停止される。したがって、トランジスタQ1〜Q6に過電流が流れてトランジスタQ1〜Q6が破損することを防止することができる。
【0067】
また、異常検出信号FDbが「H」レベルにされると、
図2の報知部17によって警報信号ALが「H」レベルにされ(すなわち警報信号ALが出力され)、故障が発生したことがモータ10の使用者に報知される。モータ10の使用者は、警報信号ALに応答して、たとえば直流電圧VDCを遮断し、三相ブラシレスモータ10を修理する。修理後に直流電圧VDCを投入すると、
図13のリセット回路13によってリセット信号REが一定時間だけ活性化レベルの「H」レベルにされ、異常検出部14がリセットされる(
図4のステップST1,ST6、
図5のステップST11,ST14)。
【0068】
図8(a)〜(e)は、二相故障が発生した場合におけるモータ駆動装置20の動作を示すタイムチャートである。
図8(a)〜(e)は、それぞれセンサ信号S1、センサ信号S2、センサ信号S3、ロック検出信号LD、および異常検出信号FDbの波形を示している。二相故障とは、3つのセンサ信号S1〜S3のうちの2つのセンサ信号のみに異常が発生した場合をいう。二相故障が発生した場合は、ロータ1の回転が停止され、ロック検出部15によってモータ10への給電が停止される。
【0069】
初期状態(時刻t0)では、センサ信号S1〜S3は正常であり、ロック検出信号LDおよび異常検出信号FDbはともに非活性化レベルの「L」レベルになっている。時刻t1において、磁気センサMS1〜MS3のうちの磁気センサMS2,MS3のみが故障し、センサ信号S2,S3がそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルから変化しなくなったものとする。二相故障が発生すると、トランジスタQ1〜Q6の各々が故障発生時の状態(オンまたはオフ)に固定される。時刻t1〜t2の期間では、センサマグネット5のN極とS極の境界付近に磁気センサMS1が位置し、センサ信号S1のレベルが振動している状態が例示されている。
【0070】
時刻t2において、ロータ1が完全に停止する。ロータ1の回転速度が所定値よりも低下してから一定時間経過後の時刻t3において、ロック検出部15によってロック検出信号LDが非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられる(すなわちロック検出信号LDが出力される)。
【0071】
ロック検出信号LDが「H」レベルにされると、駆動電流制御部16によってトランジスタQ1〜Q6がオフ状態に固定され、電機子コイル4a〜4fへの給電が停止されるとともに、報知部17によって警報信号ALが活性化レベルの「H」レベルにされる(すなわち警報信号ALが出力される)。これにより、トランジスタQ1〜Q6の破損が防止されるとともに、故障が発生したことがモータ10の使用者に報知される。
【0072】
図9(a)〜(e)は、三相故障が発生した場合におけるモータ駆動装置20の動作を示すタイムチャートである。
図9(a)〜(e)は、それぞれセンサ信号S1、センサ信号S2、センサ信号S3、ロック検出信号LD、および異常検出信号FDbの波形を示している。三相故障とは、3つのセンサ信号S1〜S3の全てに異常が発生した場合をいう。三相故障が発生した場合は、ロータ1の回転が停止され、ロック検出部15によってモータ10への給電が停止される。
【0073】
初期状態(時刻t0)では、センサ信号S1〜S3は正常であり、ロック検出信号LDおよび異常検出信号FDbはともに非活性化レベルの「L」レベルになっている。時刻t1において、磁気センサMS1〜MS3の全てが故障し、センサ信号S1,S2,S3がそれぞれ「L」レベル、「H」レベル、および「L」レベルから変化しなくなったものとする。三相故障が発生すると、トランジスタQ1〜Q6の各々が故障発生時の状態(オンまたはオフ)に固定される。
【0074】
時刻t2において、ロータ1が完全に停止する。ロータ1の回転速度が0になってから一定時間経過後の時刻t3において、ロック検出部15によってロック検出信号LDが非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられる(すなわちロック検出信号LDが出力される)。
【0075】
ロック検出信号LDが「H」レベルにされると、駆動電流制御部16によってトランジスタQ1〜Q6がオフ状態に固定され、電機子コイル4a〜4fへの給電が停止されるとともに、報知部17によって警報信号ALが活性化レベルの「H」レベルにされる(すなわち警報信号ALが出力される)。これにより、トランジスタQ1〜Q6の破損が防止されるとともに、故障が発生したことがモータ10の使用者に報知される。
【0076】
図10(a)〜(g)は、ロータ1の回転がロックし、かつセンサマグネット5のN極とS極の境界付近に磁気センサMS2が位置し、センサ信号S2の論理レベルが振動する場合におけるモータ駆動装置20の動作を示すタイムチャートである。
図10(a)〜(e)は、それぞれセンサ信号S1、センサ信号S2、センサ信号S3、異常検出信号FDa、活性化信号EN、ロック検出信号LD、および異常検出信号FDbの波形を示している。
【0077】
モータ10の負荷(たとえば送風用ファン)が故障してロータ1の回転がロックした場合、ロック検出部15内の計時手段によってセンサ信号S1〜S3の論理レベルの変化が停止してから経過した時間が計測され、経過時間が所定時間に到達した場合にロック検出信号LDが出力されてモータ10への給電が停止される。
【0078】
しかし、センサマグネット5のN極とS極の境界付近に磁気センサMSが位置し、ロータ1の回転方向への振動に従ってセンサ信号S2の論理レベルが振動する場合がある。この現象は、ロータ1の回転速度が一定になるようにモータ10を制御している場合に発生し易い。なぜなら、ロータ1の回転がロックすると、駆動電流制御部16がロータ1を回転させようとして電機子コイル4a〜4fに流す電流を増加させ続けるため、ロックの原因となっている異物と負荷の回転体との接点で振動が発生するからである。このような場合には、ロック検出部15がロック発生からの経過時間を計測することができず、ロック検出信号LDを出力することはできない。本実施の形態では、そのような場合には異常検出部14によってモータ10への給電を停止する。
【0079】
初期状態(時刻t0)では、センサ信号S1〜S3は正常であり、異常検出信号FDa、活性化信号EN、ロック検出信号LD、および異常検出信号FDbはともに非活性化レベルの「L」レベルになっている。時刻t1において、ロータ1の回転がロックし、かつセンサマグネット5のN極とS極の境界付近に磁気センサMS2が位置し、ロータ1の回転方向への振動に従ってセンサ信号S2の論理レベルが振動したものとする。
【0080】
時刻t1においてセンサ信号S1〜S3がともに0(「L」レベル)になり、
図3の判定部30によって異常検出信号FDaおよび活性化信号ENの各々が非活性化レベルの「L」レベルから活性化レベルの「H」レベルに立ち上げられる。
【0081】
時刻t2においてセンサ信号S2が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられると、カウンタ32のカウント値C2がインクリメントされてC2=1となるとともに、異常検出信号FDaが「L」レベルに立ち下げられる。時刻t3において、センサ信号S2が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられると、カウンタ32のカウント値C2がインクリメントされてC2=2となるとともに、異常検出信号FDaが「H」レベルに立ち上げられる。以下同様に、センサ信号S2の論理レベルが変化する毎に、カウンタ32のカウント値C2がインクリメントされるとともに、異常検出信号FDaの論理レベルが変化する。
【0082】
時刻t8において、センサ信号S2が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられると、カウンタ32のカウント値C2がしきい値Cth=7に到達する。このとき、カウンタ31,33のカウント値C1,C3が0であるので、
図3の信号発生部34によって異常検出信号FDbが非活性化レベルの「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられる。
【0083】
異常検出信号FDbが「H」レベルにされると、駆動電流制御部16によってトランジスタQ1〜Q6がともにオフ状態に固定され、電機子コイル4a〜4fへの給電が停止される。したがって、トランジスタQ1〜Q6に過電流が流れてトランジスタQ1〜Q6が破損することを防止することができる。
【0084】
また、異常検出信号FDbが「H」レベルにされると、
図2の報知部17によって警報信号ALが「H」レベルにされ(すなわち警報信号ALが出力され)、故障が発生したことがモータ10の使用者に報知される。
【0085】
以上のように、この実施の形態では、センサ信号S1〜S3の論理レベルの組み合わせが異常になったことに応じてセンサ信号S1〜S3のレベル変化の回数をカウントし、センサ信号S1〜S3のうちのいずれかのセンサ信号のレベル変化の回数のカウント値がしきい値Cthに到達した場合に三相ブラシレスモータ10への駆動電流の供給を停止する。したがって、センサ信号S1〜S3のうちの1つのセンサ信号のみが異常になった場合にも、トランジスタQ1〜Q6に過電流が流れてトランジスタQ1〜Q6が破損することを防止することができる。
【0086】
さらに、ロータ1の回転がロックし、かつセンサマグネット5のN極とS極の境界付近に磁気センサMSが位置し、ロータ1の回転方向の振動に従ってセンサ信号のレベルが振動する場合にも、三相ブラシレスモータ10への駆動電流の供給を停止し、トランジスタQ1〜Q6の破損を防止することができる。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。