特許第6671312号(P6671312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671312
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20200316BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G01S7/40 191
   G01S7/02 216
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-75940(P2017-75940)
(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公開番号】特開2018-179612(P2018-179612A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡宏
(72)【発明者】
【氏名】増田 和也
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/067321(WO,A1)
【文献】 特開平08−204428(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0045609(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0113652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 − G01S 7/42
G01S 13/00 − G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナの相互のビーム形成に係る特性である相対位置および相対透過位相の少なくとも一方を校正するレーダ装置であって、
決められた信号数の互いに直交する直交信号のいずれかをそれぞれが送信する、複数の前記送信アンテナと、複数の前記送信アンテナから、互いの特性を校正する複数の校正対象アンテナを選択する選択部と、互いに校正されて無い前記校正対象アンテナ同士に異なる前記直交信号を割り当てる割当部と、割り当てられた前記直交信号をそれぞれの前記校正対象アンテナから送信して受信アンテナで受信した受信信号を、前記直交信号毎の成分に分離する分離部と、前記成分間の相対的な振幅比および位相差を基に前記特性を算出して、前記校正対象アンテナ同士の校正を行う校正部とを備え、
前記選択部は、二以上の前記送信アンテナで構成された第1アンテナ群、および、一以上の前記送信アンテナで構成された第2アンテナ群のそれぞれから、一つ以上の前記送信アンテナを前記校正対象アンテナとして選択し、
前記第1アンテナ群は、相互に校正が行われた前記送信アンテナの全てによって構成され、
前記第2アンテナ群は、前記第1アンテナ群を構成する前記送信アンテナ以外の前記送信アンテナから構成された、
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記第1アンテナ群から複数の前記送信アンテナを前記校正対象アンテナに選択することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
複数の送信アンテナの相互のビーム形成に係る特性である相対位置および相対透過位相の少なくとも一方を校正するレーダ装置であって、
決められた信号数の互いに直交する直交信号のいずれかをそれぞれが送信する、複数の前記送信アンテナと、複数の前記送信アンテナから、互いの特性を校正する複数の校正対象アンテナを選択する選択部と、互いに校正されて無い前記校正対象アンテナ同士に異なる前記直交信号を割り当てる割当部と、割り当てられた前記直交信号をそれぞれの前記校正対象アンテナから送信して受信アンテナで受信した受信信号を、前記直交信号毎の成分に分離する分離部と、前記成分間の相対的な振幅比および位相差を基に前記特性を算出して、前記校正対象アンテナ同士の校正を行う校正部とを備え、
前記選択部は、二以上の前記送信アンテナで構成された第1アンテナ群、および、一以上の前記送信アンテナで構成された第2アンテナ群の少なくとも一方から、一つ以上の前記送信アンテナを前記校正対象アンテナとして選択し、
前記第1アンテナ群は、相互に校正が行われた前記送信アンテナの全てによって構成され、
前記第2アンテナ群は、前記第1アンテナ群を構成する前記送信アンテナ以外の前記送信アンテナから構成され、
前記選択部は、前記第1アンテナ群から一つの前記送信アンテナを前記校正対象アンテナに選択することを特徴とする、レーダ装置。
【請求項4】
前記校正対象アンテナから送信された前記直交信号を反射する決められた目標の位置情報を格納情報として格納した格納部を備え、前記受信アンテナは、前記目標により反射された前記受信信号を受信し、前記校正部は、前記特性の算出に、さらに前記格納情報を用いることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記格納部は、複数の前記位置情報を前記格納情報として格納し、前記受信アンテナは、前記格納情報における位置毎に存在する前記目標により反射された前記受信信号をそれぞれ受信し、前記分離部は、前記受信アンテナが前記目標の位置毎にそれぞれ受信した前記受信信号を前記成分に分離することを特徴とする、請求項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記格納部は、移動目標である前記目標の時間経過による時間毎の複数の前記位置情報を前記格納情報として格納することを特徴とする、請求項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記受信アンテナを複数備え、前記受信アンテナそれぞれに対応した前記分離部を備え、前記校正部は、それぞれの前記分離部で分離された同一の前記直交信号に対する各成分を合成した合成成分を前記成分とすることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、特に、複数の送信アンテナあるいは送信サブアレイと複数の受信アンテナあるいは受信サブアレイからなる分散アレイアンテナで構成されるMIMO(Multi-input Multi-output)レーダ装置の校正技術に関する。
【背景技術】
【0002】
分散アレイアンテナを有するレーダ装置では、DBF(Digital Beam Forming)によって、高い空間分解能および高い捜索効率を得ることができるが、DBFを正常に動作させるためには、分散アレイを構成する複数の送信アンテナおよび受信アンテナのそれぞれの位置および透過位相を正確に把握する必要がある。各アンテナの位置および透過位相が時間変動する場合には、都度その値を取得し、校正する必要があり、簡易な校正手法が求められる。
【0003】
この問題への解決策として、特許文献1では位置情報既知の移動目標に対するレーダ観測信号を利用する方法が記載されている。また、実施の形態の1つとして、MIMOレーダと組み合わせることで、受信アンテナのみならず送信アンテナの位置および透過位相も校正する手法が記載されている。
【0004】
MIMOレーダは、各送信アンテナから互いに直交する複数の信号を送信し、受信アンテナで受信後にその信号を復調分離し、デジタル処理で荷重合成を行う技術である。この処理を行うことで、受信のみならず送信のDBF処理も可能となる。また、互いに直交する複数の信号を生成するには、送信信号に対する符号変調を用いる方式、送信アンテナ毎に周波数を変える方式、送信アンテナ毎に送信タイミングを変える(時分割)方式、レーダ送信のパルス毎に位相変調を与える(ドップラ周波数を変える)方式等が存在する。いずれにしても、互いに直交する複数の信号は、無限にあるわけではなく、送信信号として用いることのできる周波数帯域幅、および要求される信号間の相互相関(DBF処理の損失量)、および目標の速度等によって、直交信号の数は制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016−067321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MIMOレーダでは各送信アンテナから異なる直交信号を送信することが前提となるが、前述のように送信アンテナの数が多い場合には送信アンテナ数分の直交信号を生成できない問題が起こる。このような場合、送信信号の直交性が崩れたことによる相互相関成分の影響で、送信アンテナの校正処理に誤差が発生し、ひいてはその校正処理を実施した後のレーダ観測にも測定誤差が生じたり、探知距離が低減するなどの問題が発生する。
【0007】
それゆえに、本発明の目的は、校正に使用する直交信号の個数が、送信アンテナの個数より少ない場合でも、送信アンテナを校正することができるレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の送信アンテナの相互のビーム形成に係る特性である相対位置および相対透過位相の少なくとも一方を校正するレーダ装置である。レーダ装置は、決められた信号数の互いに直交する直交信号のいずれかをそれぞれが送信する、複数の送信アンテナと、複数の送信アンテナから、互いの特性を校正する複数の校正対象アンテナを選択する選択部と、互いに校正されて無い校正対象アンテナ同士に異なる直交信号を割り当てる割当部と、割り当てられた直交信号をそれぞれの校正対象アンテナから送信して受信アンテナで受信した受信信号を、直交信号毎の成分に分離する分離部と、成分間の相対的な振幅比および位相差を基に特性を算出して、校正対象アンテナ同士の校正を行う校正部とを備える。選択部は、二以上の送信アンテナで構成された第1アンテナ群、および、一以上の送信アンテナで構成された第2アンテナ群の少なくとも一方から、一つ以上の送信アンテナを校正対象アンテナとして選択する。第1アンテナ群は、相互に校正が行われた送信アンテナのうち、少なくとも二以上のものを組み合わせて構成される。第2アンテナ群は、第1アンテナ群を構成する送信アンテナ以外の送信アンテナから構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、校正に使用する直交信号の個数が、送信アンテナの個数より少ない場合でも、直交信号を効率的に利用して、相互相関成分の影響を回避しながら送信アンテナを校正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るレーダ装置2の構成を示す図である。
図2】実施の形態1のレーダ装置2の送信アンテナの校正処理の手順を表わすフローチャートである。
図3】実施の形態1における繰り返し処理による送信アレイアンテナ4の校正手順を説明するための図である。
図4】実施の形態2のレーダ装置2の送信アンテナの校正処理の手順を表わすフローチャートである。
図5】実施の形態2における繰り返し処理による送信アレイアンテナ4の校正手順を説明するための図である。
図6】実施の形態3における繰り返し処理における送信アレイアンテナ4の校正手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。各図中、同一符号は同一又は相当部分を表す。以降の説明では本発明の主たる特徴である送信アンテナの構成を中心に説明する。ただし、実際には特許文献1と同様の手法によって受信アンテナを構成することも可能である。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るレーダ装置2の構成を示す図である。
このレーダ装置2は、MIMOレーダ方式のレーダ装置である。レーダ装置2は、分散アレイ校正装置1と、レーダ運用部6とを備える。
分散アレイ校正装置1は、送信信号生成部7と、割当部8と、送信部9(1)〜9(N)と、送信アレイアンテナ4とを備える。
分散アレイ校正装置1は、受信アレイアンテナ5と、受信部10(1)〜10(N)と、A/D変換部11(1)〜11(N)と、分離部12(1)〜12(N)と、校正部13と、校正部13と、格納部15と、選択部25とを備える。
【0013】
送信アレイアンテナ4は、M個の送信アンテナTx(1)〜Tx(M)によって構成される。受信アレイアンテナ5は、N個の受信アンテナRx(1)〜Rx(N)によって構成される。
選択部25は、M個の送信アンテナTx(1)〜Tx(M)の中から互いの特性を校正する複数の校正対象アンテナを選択する。
送信アレイアンテナ4を校正するときには、少なくとも1つの校正対象の送信アンテナを含む複数個の送信アンテナ(M個以下の送信アンテナ)から信号が送信される。
【0014】
送信信号生成部7は、1個以上の送信信号を生成して、生成した1個以上の送信信号を割当部8へ出力する。送信信号生成部7は、送信アレイアンテナ4を校正するときには、互いに直交するK個の直交信号を1個以上の送信信号として生成する。ただし、Kは、2以上、かつM未満とする。K個の直交信号の中の任意の2つの信号間の相互相関は0となる。
【0015】
符号変調を用いたMIMOレーダ方式の場合は、送信信号生成部7は、互いに直交する拡散符号を用いて符号変調されることによって互いに直交化されたK個の直交信号を生成する。あるいは、送信信号生成部7は、チャープ変調(線形チャープのアップチャープとダウンチャープによる変調など)を用いて互いに直交されたK個の直交信号を生成するものとしてもよい。
【0016】
周波数分割によるMIMOレーダ方式の場合は、送信信号生成部7は、互いに直交するサブキャリアを用いて周波数変調することによって互いに直交化されたK個の直交信号を生成する。
【0017】
時分割によるMIMOレーダ方式の場合は、送信信号生成部7は、互いに異なるタイミングで割当部8に出力することによって、互いに異なるタイミングで送信アンテナから送信される結果、互いに直交化されるK個の直交信号を生成する。
【0018】
ドップラ変調によるMIMOレーダ方式の場合には、送信信号生成部7は、互いに異なるドップラ周波数変調を用いることによって、互いに直交化されたK個の直交信号を生成する。一般的に複数のパルスを送信するパルスレーダでは、目標が移動した結果、ドップラ周波数が生じる場合、パルス間で目標速度に応じて、受信信号の位相が変化する。位相の時間変化は周波数と同義のため、これはドップラ周波数として検出される。具体的には1つのパルスを信号の1つの時間サンプルとみなしてフーリエ変換(離散フーリエ変換、高速フーリエ変換等)を行う等によりドップラ周波数が検出される。ドップラ周波数変調は、これを利用したものである。送信側が、送信信号の複数パルス間で位相変化を与え、送信段階で信号にドップラ周波数を与えるものである。送信側が、複数の送信アンテナから出力される信号に異なるドップラ周波数を与え、受信側が、これらをドップラ周波数の検出処理で分離することができる。たとえば、送信信号生成部7は、パルス状の正弦波信号を符号長の異なる複数種の符号系列に対応してそれぞれの符号系列を用いてパルス毎に位相変調を与えた複数種のパルス波形データに基づく送信信号を生成するものとしてもよい。
【0019】
選択部25は、二以上の送信アンテナで構成された第1アンテナ群、および、一以上の送信アンテナで構成された第2アンテナ群の少なくとも一方から、一つ以上の送信アンテナを校正対象アンテナとして選択する。
ここで、第1アンテナ群は、相互に校正が行われた送信アンテナのうち、少なくとも二以上のものを組み合わせて構成される。第2アンテナ群は、第1アンテナ群を構成する送信アンテナ以外の送信アンテナから構成される。
割当部8は、送信信号生成部7から出力される各送信信号を送信部9(1)〜9(M)のうちのいずれかへ出力する。割当部8は、送信アレイアンテナ4を校正するときには、少なくとも1つの校正対象の送信アンテナを含む複数個の送信アンテナ(M個以下の送信アンテナ)にK個の直交信号のいずれかを割り当てて、対応する送信部へ出力する。割当部8は、互いに校正されて無い校正対象アンテナ同士に異なる直交信号を割り当てる。
【0020】
送信部9(m)は、割当部8からの送信信号を受けると、その送信信号に対して、必要に応じて周波数変換および増幅等を施して、送信アンテナTx(m)へ出力する。m=1〜Mである。
送信アンテナTx(m)は、送信部9(m)から出力される送信信号を移動目標3に向けて照射する。m=1〜Mである。
【0021】
受信アンテナRx(n)は、移動目標3で反射された信号を受信する。n=1〜Nである。
受信部10(n)は、受信アンテナRx(n)から出力される受信信号に対して必要に応じて増幅および周波数変換を施す。
A/D変換部11(n)は、受信部10(n)から出力される信号をデジタル信号に変換する。
【0022】
分離部12(n)は、A/D変換部11(n)から出力される信号をK個の直交信号に対応するK個の信号成分に分離する。
校正部13は、複数の観測時点において、分離部12(1)〜12(N)から出力されるN×K個の信号成分について、同一の直交信号に対応するN個の信号成分を合成することによってK個の合成信号を求める。校正部13は、K個の合成信号の間の相対的な振幅および位相を表わす振幅位相情報を算出する。
【0023】
格納部15は、移動目標3の時間経過による時間ごとの複数の位置情報を格納する。
校正部13は、複数の観測時点についての、校正部13で算出された振幅位相情報と、格納部15に格納されている移動目標3の位置情報とに基づいて、複数の送信アンテナの相互のビーム形成に係る特性を算出して、校正対象の送信アンテナ同士の校正を行う。
レーダ運用部6は、校正部13で推定された校正対象の送信アンテナのパラメータである校正情報を用いて、レーダ運用を行う。
【0024】
図2は、実施の形態1のレーダ装置2の送信アンテナの校正処理の手順を表わすフローチャートである。
図2では前提として、送信信号生成部7で生成され、送信信号として用いることのできる直交信号がK個存在する場合を想定している。なお、Kは2以上である。また、直交信号の個数Kは送信アンテナの個数Mより少ないものとする。
【0025】
ステップST100において、割当部8は、校正対象の送信アンテナの個数を指定する変数iを1に初期設定する。
ステップST101において、選択部25は、送信アンテナTx(1)〜Tx(i+K−1)を校正対象に選択する。
ステップST102において、割当部8は、送信アンテナTx(1)〜Tx(i)に1番目の直交信号L1を割り当て、送信アンテナTx(i+1)〜Tx(i+K−1)にそれぞれ2番目〜K番目の直交信号L2〜LKを割り当てる。たとえば、i=1の初期状態であれば、送信アンテナTx(1)〜Tx(K)に直交信号L1〜LKがそれぞれ割り当てられた状態となる。
【0026】
ステップST103において、送信アンテナTx(m)は、割り当てられた直交信号を位置情報が既知の移動目標3へ送信する。m=1〜(i+K−1)である。
受信アンテナRx(n)は、移動目標3からの反射信号を指定観測回数だけ受信する。n=1〜Nである。指定観測回数は、校正対象の送信アンテナのパラメータがアンテナの透過位相のみの場合は、少なくとも1回、校正対象の送信アンテナの位置の場合は少なくとも3回、その両方の場合は少なくとも4回とする。受信部10(n)は、受信アンテナRx(n)から出力される信号に対して必要に応じて増幅および周波数変換を施す。A/D変換部11(n)は、受信部10(n)の出力をデジタル信号に変換する。
【0027】
ステップST104において、分離部12(n)は、A/D変換部11(n)から出力される信号をK個の直交信号L1〜LKに対応するK個の信号成分f1(n)〜fK(n)へ分離する。
具体的な分離手法は、用いているMIMOレーダ方式によって異なる。符号変調を用いたMIMOレーダ方式の場合は、各送信信号に対応したMatched Filterあるいはそれに相当する処理によって分離処理が実施される。周波数分割によるMIMOレーダ方式の場合は、各直交信号の周波数に対応したBand Pass Filterとして分離処理が実施される。時分割によるMIMOレーダの場合であれば、時間信号に対する窓関数の乗算により分離処理が実施される。ドップラ変調によるMIMOレーダの場合であれば、パルスドップラフィルタとして分離処理が実施される。いずれにしても、MIMOレーダの変調方式に対応した形で分離処理(復調処理)が実施される。
【0028】
ステップST105において、校正部13は、N個の分離部12(1)〜12(N)から出力されるN×K個の信号成分について、同一の直交信号に対応するN個の信号成分を合成することによってK個の合成信号を求める。すなわち、校正部13は、直交信号Lkに対応する分離部12(1)〜12(N)から出力される信号成分fk(1)〜fk(N)を荷重合成して、合成信号fkを生成する。k=1〜Kである。直交信号の数がK個なので、荷重合成された合成信号がK個生成される。つまり、MIMOレーダでは、分離部12(1)〜12(N)から出力される(K×N)個の信号成分の各々は、送信アレイアンテナ4に割り当てられるK個の直交信号のいずれかと、受信アレイアンテナ5に含まれるN個の受信アンテナのいずれかに対応する。同一の直交信号に対応したN個の信号成分を荷重合成することは、受信アンテナRx(1)〜Rx(N)について信号合成を各直交信号に対して行っていることと等価である。荷重合成された後のK個の信号成分は、それぞれK個の直交信号に対応する。これは一般的なMIMOレーダの性質である。
【0029】
校正部13は、荷重合成後のK個の合成信号f1〜fKの間の相対的な振幅および位相を表わす振幅位相情報H(j)を算出する。なお、変数jは、前述の複数の観測番号を表す変数である。tは時刻である。このとき、荷重合成されたK個の合成信号f1(j,t)〜fK(j,t)を並べたベクトルを下式のFj(t)と表記する。fk(j、t)は、荷重合成後の合成信号fkの観測番号j、時刻tにおける値を表わす。
【数1】
ここで、A(θj,φj)、θj、φj、s(t)は、それぞれK個の直交信号L1〜LKに対応した複数個の送信アンテナのステアリングベクトル、j回目の観測時の移動目標3への仰角、j回目の観測時の移動目標3への方位角、受信信号波形、つまり、荷重合成されたK個の合成信号f1(j,t)〜fK(j,t)の共通成分を表わす。また、添字のTは転置を表わす。
【0030】
1つの直交信号L1に複数の送信アンテナが対応している場合、1つの直交信号L1に対応した複数の送信アンテナで構成されるアレーアンテナの位相の平均から1つのエレメントファクタa1(θj,φj)が計算されることになる。
θjは送信アンテナおよび受信アンテナの個数および違いによらず、不変であると仮定する。これはアレーアンテナの配置の広がりよりもレーダ装置2から移動目標3までの距離が十分に大きい場合に一般的に成り立つ仮定である(遠方界)。
【0031】
振幅位相情報H(j)の算出方法としては複数の方法が考えられるが、一例としては、以下の式に示すように、任意のタイミングt0を抽出して、Fj(t0)をH(j)とする方法がある。
【数2】
【0032】
それ以外にも、例えば、以下の式のように、合成信号f1(j,t)〜fK(j,t)と任意のs番目の直交信号Lsに対応する合成信号fs(j,t)との相関演算を行う手法もある。
【数3】
式(5)の*は複素共役を、E[]は期待値演算をそれぞれ表す。いずれにしても一般的に利用される信号間の相対位相および相対振幅を抽出する演算によって、K個の合成信号間の相対位相および相対振幅を表わす振幅位相情報H(j)が算出される。
【0033】
校正部13は、振幅位相情報H(j)と、移動目標3の位置情報とを用いた最尤推定によって、校正パラメータξを推定する。具体的には下式の評価関数J(ξ)の最小化問題として実現される。
【数4】
【0034】
式(6)において、A′(θj,φj,ξ)はステアリングベクトルの計算値であり、ξは推定対象となる校正情報を要素とするベクトルである。ここで、k(>1)番目の直交信号Lkが割り当てられた送信アンテナをTx(p)とする。1番目の直交信号L1が割り当てられた送信アンテナの位置、透過位相に対する、k(>1)番目の直交信号Lkが割り当てられた送信アンテナTx(p)の相対位置(xk,yk,zk)、相対透過位相ψkとした場合、ξは以下で表される。実施の形態1では、1番目の直交信号L1が割り当てられた送信アンテナが複数個ある場合には、相対位置(xk,yk,zk)および相対透過位相ψkは、1番目の直交信号L1が割り当てられた送信アンテナの位置の平均および透過位相の平均に対する相対位置および相対透過位相である。
【数5】
【0035】
このとき、ステアリングベクトルA′(θj,φj,ξ)中のK番目の要素であるK番目の直交信号Lkが割り当てられた送信アンテナTx(p)に対応したエレメントファクタa′k(θj,φj,ξ)は以下の式で表される。
【数6】
式(9)中のGk(θj,φj)は、k番目の直交信号Lkが割り当てられた送信アンテナTx(p)単体の利得である。複数の送信アンテナに1番目の直交信号L1が割り当てられている場合には、G1(θk,φk)はそれら複数の送信アンテナで構成されるアレーアンテナの利得である。
【0036】
dkは、k番目の直交信号Lkが割り当てられた送信アンテナTx(p)の相対位置ベクトル、u(θj,φj)は、j回目の観測時の目標からの到来方向ベクトルである。複数の送信アンテナに1番目の直交信号L1が割り当てられている場合には、d1は、それら複数の送信アンテナの位置ベクトルの平均である。なお、一般的に座標系の取り方によって式(11)の到来方向ベクトルの表現は変化する。
【数7】
θj,φjは、j回目の観測時の移動目標3の位置情報と送信アレイアンテナ4および受信アレイアンテナ5の位置情報から得ることができるので、上記の式(9)をj(観測番号)ならびにk(送信アンテナ番号)について、ξを変化させながら計算して、式(6)のj(ξ)の最小値探索を行うことで、校正情報の推定値ξ′を得ることができる。
【0037】
ここまでに記載した校正部13ならびにST105における送信アンテナの位置推定は、三角測量と同様の原理を用いている。三角測量では、複数の観測点から測量対象への角度を求め、それらの複数の角度情報の整合がとれる位置を測量対象の位置としている。本実施の形態の推定手法では、J回の観測による各目標方位が三角測量における複数の観測点から測量対象への角度と等価であり、それらの複数の目標方位の整合がとれる送信アンテナ間の位相関係を探索し、それに対応したk番目の直交信号が対応した送信アンテナの位置dkを位置推定の結果としている。
【0038】
なお、ここでは最尤推定をベースとした手法を記述しているが、他の手法をベースに校正情報の推定を行ってもよい。例えば、最小二乗法を用いて、最尤推定と同様に式(9)のステアリングベクトルの計算値を利用した評価関数を作成し、校正部13は、評価関数の最小化問題として校正情報の推定を行うこともできる。具体的には下式の評価関数J(ξ)の最小化問題として実現される。a′1(θj,φj,ξ)は、ステアリングベクトルA′(θj,φj,ξ)の第1成分である。
【数8】
【0039】
また、ここでは例として式(8)のように送信アンテナの相対位置、相対透過位相の両方を推定する場合を想定していたが、これらのどちらか1つが未知の場合にも対応可能である。例えば、相対透過位相は既知で、送信アンテナの相対位置のみを推定する場合には、ξを以下の様に設定し推定処理を行う。
【数9】
【0040】
以上の処理によって、送信アンテナTx(1)〜Tx(i)と送信アンテナTx(i+1)〜Tx(i+K−1)の相対位置および相対透過位相(あるいはそのどちらか一方)の推定が行われる。
ステップS106において、推定された相対位置および相対透過位相の情報を補正値として、Tx(i+1)〜Tx(i+K−1)の送信アレイアンテナ4に適用する。
【0041】
ステップS107において、校正対象の送信アンテナを指定する変数iを(K−1)だけ増加させる。
ステップS108において、全ての送信アンテナの校正が完了した場合には処理が終了し、未完了の場合は、処理がステップST102に戻って、ST102〜ST107の処理が繰り返される。この判定は具体的には、i≧Mの場合には終了という判定式が用いられる。
【0042】
図3は、実施の形態1における繰り返し処理による送信アレイアンテナ4の校正手順を説明するための図である。
実施の形態1では、選択部25は、第1アンテナ群から複数の送信アンテナを校正対象アンテナとして選択する。
実施の形態1では、割当部8は、校正情報の推定が完了した送信アンテナが存在しないときには、M個の送信アンテナのうちのK個の送信アンテナにK個の直交信号をそれぞれ割当てる。割当部8は、校正情報の推定が完了した1個以上の送信アンテナが存在するときには、校正情報の推定が完了したすべての送信アンテナに1つの直交信号L1を割り当て、M個の送信アンテナのうちの校正情報の推定が完了していない1個以上の送信アンテナの中の(K−1)個の送信アンテナに、割り当てた1つの直交信号L1を除く(K−1)個の直交信号をそれぞれ割り当てる。
【0043】
図3は、直交信号数K=3、送信アンテナの数M=7の場合を示している。K=3であるので、校正対象の送信アンテナを指定する変数iは2ずつ増加している。
i=1のステップにおいて、K=3より、送信アンテナTx(1)に対する送信アンテナTx(2)、Tx(3)の相対位置および相対透過位相が推定される。
【0044】
次のステップのi=3では、i=1において校正が完了した3つの送信アンテナTx((1)〜Tx(3)を1つの送信アンテナとして扱って、これに対する送信アンテナTx(4)、Tx(5)の相対位置および相対透過位相が推定される。これは、図2のST102においてTx(1)〜Tx(i)の複数の送信アンテナに同じ直交信号L1を割り当てていることに相当する。
【0045】
同様に、次のi=5のステップでは校正が完了した5つの送信アンテナTx(1)〜Tx(5)を1つの送信アンテナとして扱って、これに対する送信アンテナTx(6)、Tx(7)の相対位置および相対透過位相が推定され、全ての送信アンテナの校正が完了している。
【0046】
以上のように、実施の形態1に係るレーダ装置によれば、直交信号数が送信アンテナの数より少ない状況下において、直交信号を一部の送信アンテナに割り当て、MIMOレーダ処理を用いながら移動目標に対する複数回のレーダ観測を行なう。このレーダ装置は、各観測における送信アンテナ間の相対位相および相対振幅を表わす情報を取得するとともに、レーダ観測に対応した移動目標の位置情報も別途取得し、その両方を用いて校正対象の送信アンテナの相対位置および相対透過位相を推定する。レーダ装置は、さらに直交信号を割り当てる送信アンテナを切り替えて同様の処理を繰り返すことによって、全送信アンテナの相対位置および相対透過位相を推定し、その推定結果をレーダ運用時に利用する。
このような構成により、分散アレイに送信アンテナの追加した場合に、直交信号数が送信アンテナの数よりも少ない場合でも、高精度な基準信号送信源を高精度に別途配置せずに、校正対象の送信アンテナの校正情報を取得することができる。
【0047】
なお、レーダ装置2において、受信アレイアンテナ5における受信アンテナの数Nは、1以上であれば構わない。Nが1の場合、受信部10、A/D変換部11、および分離部12の数はそれぞれ1つである。この場合、校正部13は、直交信号Lkに対応する分離部12(1)〜12(N)から出力される信号成分fk〜fkの間の相対的な振幅および位相を表わす振幅位相情報H(j)を算出する。その他については、Nが複数である場合と同じである。
【0048】
また、上記説明では、受信アンテナRxは、移動目標3で反射された信号を受信するものとして説明したが、移動可能な受信アンテナRxまたはそれぞれが異なる位置に設けられた複数の受信アンテナRxが、送信アンテナTxから送信される送信信号を直接受信する構成としても良い。このようにして校正する場合、上述の式(1)〜式(3)において、A(θj,φj)は、K個の直交信号L1〜LKに対応した複数個の送信アンテナTxの受信アンテナRxに向かう方向のステアリングベクトル、θjは、j回目の観測時の送信アンテナから受信アンテナへの仰角、φjは、j回目の観測時の送信アンテナから受信アンテナへの方位角、s(t)は、受信信号波形である。なお、校正対象の送信アンテナのパラメータが送信アンテナの位置を含む場合は、受信アンテナを移動させながら受信するかまたはそれぞれが異なる位置に設けられた複数の受信アンテナで受信する必要があるが、校正対象の送信アンテナのパラメータが送信アンテナの透過位相のみの場合は、1つの固定された受信アンテナで受信するのみでも良い。
【0049】
また、上記説明では、送信アンテナは、送信部から出力される送信信号を移動目標3に向けて照射し、受信アンテナは、移動目標3で反射された信号を受信するものとしたが、これに限定するものではない。
格納部が、複数の位置情報を格納情報として格納し、受信アンテナが、格納情報における位置毎に存在する目標により反射された受信信号をそれぞれ受信し、分離部が、受信アンテナが目標の位置毎にそれぞれ受信した受信信号を成分に分離し、校正部が、分離された成分および格納情報を用いることとしてもよい。
【0050】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2のレーダ装置2の送信アンテナの校正処理の手順を表わすフローチャートである。
図4でも実施の形態1と同様に、送信信号生成部7で生成され、送信信号として用いることのできる直交信号がK個存在する場合を想定している。Kは2以上である。また、直交信号数Kは送信アンテナ数Mより少ないものとする。
【0051】
図4において、実施の形態1と異なる部分、すなわち、ST101Bと、ST102BとST105Bについて説明する。
ステップST101Bにおいて、選択部25は、送信アンテナTx(1)、Tx(i)〜Tx(i+K−1)を校正対象に選択する。
ステップST102Bにおいて、実施の形態2では、実施の形態1と異なり、割当部8は、1番目の直交信号L1を割り当てる送信アンテナを常に同一の送信アンテナTx(1)とする。
【0052】
ステップST105Bにおいて、ステップST102Bでの直交信号の割当てに伴って、相対的な位置および透過位相の推定も、送信アンテナTx(1)と、送信アンテナTx(i+1)〜Tx(i+K−1)の間で実施される。
すなわち、1つの直交信号L1に1つの送信アンテナTx(1)が常に対応しているので、送信アンテナTx(1)の位相から1つのエレメントファクタa1(θj,φj)が計算される。k>1について、相対位置(xk,yk,zk)および相対透過位相ψkは、1番目の直交信号L1が割り当てられた送信アンテナTx(1)の位置および透過位相に対する相対位置および相対透過位相である。G1(θk,φk)は、送信アンテナTx(1)の利得である。d1は、送信アンテナTx(1)の位置ベクトルである。
【0053】
図5は、実施の形態2における繰り返し処理による送信アレイアンテナ4の校正手順を説明するための図である。
実施の形態2では、割当部8は、校正情報の推定が完了した送信アンテナが存在しないときには、M個の送信アンテナのうちのK個の送信アンテナにK個の直交信号をそれぞれ割当てる。割当部8は、校正情報の推定が完了した1個以上の送信アンテナが存在するときには、校正情報の推定が完了した1個以上の送信アンテナの中の1つのアンテナに1つの直交信号L1を割り当て、M個の送信アンテナのうちの校正情報の推定が完了していない1個以上の送信アンテナの中の(K−1)個の送信アンテナに、割り当てた1つの直交信号L1を除く(K−1)個の直交信号をそれぞれ割り当てる。
【0054】
図5の処理の大まかな流れは、実施の形態1の図3と同様であるが、相対位置および透過位相の推定対象が常に1番目の送信アンテナTx(1)に対して行われていることがわかる。
実施の形態2では、選択部25は、第1アンテナ群から1個の送信アンテナを校正対象アンテナとして選択する。
i=1のステップにおいて、K=3より、送信アンテナTx(1)に対する送信アンテナTx(2)、Tx(3)の相対位置および相対透過位相が推定される。
【0055】
次のステップのi=3では、i=1において校正が完了した3つの送信アンテナTx((1)〜Tx(3)の中の1つの送信アンテナTx(1)に対する送信アンテナTx(4)、Tx(5)の相対位置および相対透過位相が推定される。これは、図2のST102においてTx(1)のみに直交信号L1を割り当てていることに相当する。
【0056】
同様に、次のi=5のステップでは校正が完了した5つの送信アンテナTx(1)〜Tx(5)の中の1つの送信アンテナTx(1)に対する送信アンテナTx(6)、Tx(7)の相対位置および相対透過位相が推定され、全ての送信アンテナの校正が完了している。
【0057】
以上のように、実施の形態2に係るレーダ装置によれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。
また、実施の形態1の場合、複数の送信アンテナに同一の信号(1番目の直交信号L1)を割り当てるためビームパターンが形成される。その場合、移動目標3の方位によっては、ビームパターンの影響で却って目標の観測SN比が劣化する場合がある。そのような場合は、実施の形態2のように直交信号を割り当てる送信アンテナは常に1つとしたほうがよい。
【0058】
実施の形態3.
実施の形態1および2では、校正を完了した送信アンテナTx(1)〜Tx(i)に対して、校正が行われていない送信アンテナTx(i+1)〜Tx(i+K−1)を校正する。これを順次繰り返すことにより、K個の直交信号L1〜LKにより、K個より多いM個の以上の送信アンテナTx(1)〜Tx(M)の校正を行っている。しかし、校正を完了した送信アンテナTx(1)〜Tx(i)に対して、送信アンテナTx(1)〜Tx(i)以外の送信アンテナとの間で校正を行った送信アンテナの校正を行うようにしても良い。
実施の形態3では、第1アンテン群は、相互に校正が行われた送信アンテナのうち、全てのものを組み合わせて構成される。
【0059】
図6は、実施の形態3における繰り返し処理における送信アレイアンテナ4の校正手順を説明するための図である。送信アンテナTx(1)〜Tx(3)の校正については、図3および図5におけるi=1のステップと同様である。図6では、Tx(1)〜Tx(7)の校正として、校正を完了した送信アンテナTx(1)〜Tx(3)に対して、送信アンテナTx(1)〜Tx(3)以外の送信アンテナの校正を行う。この際、校正を行っていない送信アンテナTx(7)の他、別に校正を行った送信アンテナTx(4)〜Tx(6)が送信アンテナTx(1)〜Tx(3)に対して校正を行う送信アンテナとなる。図6では、送信アンテナTx(2)およびTx(3)は送信アンテナTx(1)に対して校正され、送信アンテナTx(5)およびTx(6)は送信アンテナTx(4)に対して校正されている。このため、送信アンテナTx(1)に対して、送信アンテナTx(4)およびTx(7)の校正を行うことで、Tx(1)〜Tx(7)の校正が完了する。
【0060】
なお、図6においては、送信アンテナTx(1)〜Tx(3)と送信アンテナTx(4)〜Tx(6)、送信アンテナTx(1)とTx(4)とTx(7)のように、校正を行う送信アンテナTx同士を2段階で校正する構造にしている。しかし、送信アンテナTxの数Mと直交信号の数Kとに応じて3段階以上で校正する構造にしても良い。また、一回の校正で比較する送信アンテナTXについても、直交信号L1〜LKが割り当て可能である限り、送信アンテナや互いに校正が行われた送信アンテナの組をどの様に組み合わせたものであっても良い。
【0061】
以上のように、実施の形態3に係るレーダ装置によれば、実施の形態1や実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0062】
実施の形態4.
実施の形態1および2では、例えば図1の送信アレイアンテナ4と受信アレイアンテナ5は、別々、すなわち送受分離型のレーダとして構成していた。
実施の形態4のレーダ装置は、受信アンテナが、送信アンテナから送信される送信信号を直接受信する場合を除いて、送信アンテナおよび受信アンテナの全部があるいは一部が送受兼用という構成とすることができる。
【0063】
(変形例)
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、たとえば以下のような変形例も含む。
(1)図1では、送信アンテナTx(1)〜Tx(M)の各々は、単一のアンテナとして記載されているが、送信アンテナTx(1)〜Tx(M)の各々自体がアレイアンテナとして構成される(よって、送信アンテナTx(m)がサブアアレイとして構成される)ものとしてもよい。
(2)各アンテナは固定のアンテナの場合もあれば、それぞれが移動体に備えられたアンテナとして構成されてもよい。
(3)実施の形態の説明では、波動として電波を用いるレーダ装置について述べたが、それ以外の波動、例えば超音波を用いるレーダ装置にも適用可能である。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 分散アレイ校正装置、2 レーダ装置、3 移動目標、4 送信アレイアンテナ、5 受信アレイアンテナ、6 レーダ運用部、7 送信信号生成部、8 割当部、9(1)〜9(M) 送信部、10(1)〜10(N) 受信部、11(1)〜11(N) A/D変換部、12(1)〜12(N) 分離部、13 校正部、15 格納部、25 選択部、Tx(1)〜Tx(M) 送信アンテナ、Rx(1)〜Rx(N) 受信アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6