【実施例】
【0084】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されず、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
(1)リタデーション(Re)
リタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|nx−ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性及び異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)を用いてフィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向が長辺となるように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(nx,ny)、及び厚さ方向の屈折率(nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR−4T、測定波長589nm)を用いて測定し、前記二軸の屈折率の差の絶対値(|nx−ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。
【0086】
(2)Nz係数
|ny−nz|/|ny−nx|で得られる値をNz係数とした。ただし、ny>nxとなるように、ny及びnxの値を選択した。
【0087】
(3)面配向度(△P)
(nx+ny)/2−nzで得られる値を面配向度(△P)とした。
【0088】
(4)厚さ方向リタデーション(Rth)
厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|nx−nz|)、△Nyz(=|ny−nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。リタデーションの測定と同様の方法でnx、ny、nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。
【0089】
(5)クリアハードコート層との密着性
後述する方法で作成した偏光子保護フィルムの片面に下記のクリアハードコート層用塗布液を塗布し、70℃で60秒乾燥の後、UV照射機を用いて、照射量500mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ3μmのクリアハードコート層を有する偏光子保護フィルムを得た。ただし、偏光子保護フィルムの両面が同じ易接着層の場合は片方の表面に、両面が異なる易接着層(易接着層AおよびB)を有する場合は易接着層B面に、ハードコート層塗布液を塗布して塗布層を設けた。なお、偏光子保護フィルム1にクリアハードコート層を設けた面のヘイズ値は1.5%であった。
【0090】
(クリアハードコート層用塗布液)
オルガノシリカゾル MIBK−ST(日産化学工業(株)製) 177質量部、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬(株)製)10質量部、PETA(ペンタエスリトールトリアクリレート:カヤラッドPET−30:日本化薬(株)製)7質量部、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート(ライトアクリレート 1,6HX−A:共栄社化学(株)製)3質量部、イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製)2質量部、シリコーン系界面活性剤 (東レ・ダウコーニング製、DC57)0.1質量部にメチルエチルケトンを加え固形分8質量%のハードコート層塗布液を作製した。
【0091】
このクリアハードコート層にカット間隔を2mmとしてJIS K5400に準じて密着性を評価した。但し、同一箇所の剥離操作を5回繰り返した後に、はがれなかった升目の面積の割合に応じて以下の評価とした。同様な評価を同じフィルムに対して、評価場所を変更して5回行い、5回の評価で最も多い頻度の段階をフィルムのクリアハードコート層との密着性評価とした。
◎:100個の升目すべてではがれが見られない
○:96〜99個の升目ではがれが見られない
△:80〜95個の升目ではがれが見られない
×:79〜50個の升目ではがれが見られない
××:49個以下の升目ではがれが見られない
【0092】
(6)耐湿熱性
前述の(5)で作製した片面にクリアハードコートを有する偏光子保護フィルムを、50mm×50mmの大きさに裁断し、80℃−95%RHの条件下で500時間暴露した。暴露後のクリアハードコートを有する偏光子保護フィルムを上記と同様にして密着性を評価した。
◎:100個の升目すべてではがれが見られない
○:96〜99個の升目ではがれが見られない
△:80〜95個の升目ではがれが見られない
×:79〜50個の升目ではがれが見られない
××:49個以下の升目ではがれが見られない
【0093】
(7)屈曲性
前述の(5)で作製した片面にクリアハードコートを有する偏光子保護フィルムを、100mm×50mmの大きさに裁断し、JIS−K5600−5−1に記載されているマンドレル試験(2mmから32mmの金属製円柱にサンプルを巻きつける試験)に準じ、円柱にクリアハードコート層を外側にした状態で偏光子保護フィルムの長尺方向に巻き付けたときのクラック(ひび)が発生しなかった円柱の最小直径を記載した。つまり、直径12mmの円柱でクラックが発生し、直径16mmで発生しなかった場合は、屈曲性を16mmとした。但し、今回の試験では下記の各種直径の金属製円柱を使用した。
2mm,3mm,4.5mm,6mm,8mm,10mm,12mm,16mm,19mm,20mm,25mm,32mm
【0094】
(8)虹斑観察
PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に前述の(5)で作成した片面にクリアハードコート層を設けた偏光子保護フィルム(ポリエステルフィルム)のもう一方の面を偏光子の偏光軸と偏光子保護フィルムの配向主軸が垂直になるように下記のUV硬化型接着剤で貼り付け、その反対側の面にTACフィルム(富士フィルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を、液晶を挟んで両側に一枚ずつ、各偏光板がクロスニコルの条件下になるよう配置して液晶表示装置を作製した。各偏光板は、前記クリアハードコート層を設けた偏光子保護フィルムが液晶とは反対側(遠位)となるように配置された。液晶表示装置の光源には、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)に用いた。このような液晶表示装置の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。
【0095】
◎: いずれの方向からも虹斑の発生無し。
〇: 斜め方向から観察したときに、角度によって極薄い虹斑が観察される。
△: 斜め方向から観察したときに、角度によって薄い虹斑が観察される。
×: 斜め方向から観察したときに、虹斑が観察される。
××: 正面方向及び斜め方向から観察したときに、虹斑が観察される。
【0096】
(UV硬化型接着剤)
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 70質量部、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル 20質量部、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル 10質量部を混合し、光カチオン重合開始剤としてトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.25質量部を添加した。
【0097】
(9)打ち抜き加工性
50mm×50mmの刃を用い、SD型レバー式試料裁断機(SDL−200、ダンベル社製)により、上記(8)で作製した偏光板をTACフィルム側から打ち抜いた。
打ち抜いた偏光板の、端部のポリエステルフィルム側の剥離または割れの程度を目視で観察し、以下の4段階で評価した。同様な評価を同じ偏光板に対して、5回行い、5回の評価で最も多い頻度の段階を偏光板の打ち抜き加工性評価とした。
◎:まったく剥離および割れが見られない
○:端部全体の5%未満に剥離または割れが見られる
△:端部全体の5〜20%未満に剥離または割れが見られる
×:端部全体の20%以上に剥離または割れが見られる
【0098】
(製造例1−ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
【0099】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(A)と略す。)
【0100】
(製造例2−ポリエステルB)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た。(以後、PET(B)と略す。)
【0101】
(製造例3−ポリエステルC)
平均粒径2.3μm、細孔容積1.6ml/gの不定形塊状シリカ粒子をエチレングリコールに分散させ、不定形塊状シリカ粒子を濃度15質量%含有するエチレングリコールスラリーを作製した。
【0102】
加圧昇温前に、液を30℃以下に保持した状態で上記グリコールスラリーを、生成PETに対して2000ppmとなるよう添加すること以外は製造例1と同様にして、不活性粒子を含有する固有粘度0.62dl/gのポリエステル樹脂(C)を作製した(以後、PET(C)と略す。)
【0103】
(製造例4−水分散性ポリエステル樹脂液(E−1))
攪拌機、温度計、及び部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル302.9質量部、ジメチル−5−ナトリウムスルホイソフタレート47.4質量部、エチレングリコール198.6質量部、1,6−ヘキサンジオール118.2質量部、及びテトラーnーブチルチタネート0.4質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。さらに、セバシン酸121.4重量部を加え、エステル化反応を行なった.次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(X)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。さらに、攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、上記ポリエステル樹脂(X)20質量部、エチレングリコールt−ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、イオン交換水65質量部を上記ポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分20質量%の乳白色の水分散性ポリエステル樹脂液(E−1)を作製した。
【0104】
(製造例5−水分散性ポリウレタン樹脂液(U−1))
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4−ジシクロヘキシルジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450質量部を添加し、液温25℃に調整して、攪拌しながら、上記のポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35質量%の水分散性ポリウレタン樹脂液(U−1)を調製した。
【0105】
(製造例6−水分散性アクリル樹脂液(A−1))
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、イオン交換水302質量部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5質量部、亜硫酸水素ナトリウム0.2質量部を添加し、さらに、メチルメタクリレート46.7質量部、エチルアクリレート23.3質量部、N−メチロールアクリルアミド6.8質量部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分30質量%の水分散性アクリル樹脂液(A−1)を得た。
【0106】
(製造例7−水分散性ポリオレフィン樹脂液(OL−1))
耐圧性の撹拌機を備えたガラス容器に、ポリオレフィン樹脂(住友化学工業社製ボンダインHX−8210)60質量部、イソプロパノール60質量部、トリエチルアミン4.5質量部および蒸留水175.5質量部を仕込み、140〜145℃に昇温して20分間撹拌した。その後、攪拌しつつ、室温まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター加圧濾過し、乳白色の均一な固形分20質量%水分散性ポリオレフィン樹脂液(OL−1)を得た。
【0107】
(製造例8−カルボジイミド水性樹脂液(C−1))
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート168質量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(M400、平均分子量400)220質量部を仕込み、120℃で1時間、攪拌し、更に4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート26質量部とカルボジイミド化触媒として3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド3.8質量部(全イソシアネートに対して2質量%)を加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌した。反応液の赤外スペクトルを測定し、波長220〜2300cm
−1の吸収が消失したことを確認した。60℃まで放冷し、イオン交換水を567質量部加え、固形分40質量%のカルボジイミド水性樹脂液(C−1)を得た。
【0108】
(製造例9−オキサゾリン水性樹脂液(O−1))
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコに性媒体としてのイオン交換水58質量部とイソプロパノール58質量部との混合物、および、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩)4質量部を投入した。一方、滴下ロートに、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としての2−イソプロペニル−2−オキサゾリン16質量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数・9モル、新中村化学製)32質量部、およびメタクリル酸メチル32質量部の混合物を投入し、窒素雰囲気下、70℃において1時間にわたり滴下した。滴下終了後、反応溶液を9時間攪拌し、冷却することで固形分濃度40質量%のオキサゾリン水性樹脂液(O−1)を得た。
【0109】
(製造例10−イソシアネート水性樹脂液(I−1))
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、固形分75質量%のイソシアネート水性樹脂液(I−1)を得た。
【0110】
上記で得られた水性樹脂等を下表の質量部で混合して固形分濃度6質量%の塗布液(Z−1)を調整した。粒子Aは平均1次粒径12nm、粒子Bは平均1次粒径500nmのシリカ粒子である。
【0111】
イオン交換水 45.21質量部
イソプロパノール 30.00質量部
水分散性ポリエステル樹脂液(E−1) 18.19質量部
カルボジイミド水性樹脂液(C−1) 3.90質量部
粒子A 2.50質量部
(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI−30、固形分30質量%)
粒子B 0.17質量部
(日本触媒(株)製 シーホスターKEW50、固形分15質量%)
界面活性剤A 0.03質量部
(日本ユニカー(株)製 L−7604、固形分100質量%)
【0112】
(偏光子保護フィルム1)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層及び外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0113】
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m
2になるように、塗布液(Z−1)を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0114】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度135℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に3.8倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0115】
(偏光子保護フィルム2)
塗布液(Z−1)中の水分散性ポリエステル樹脂液(E−1)の代わりに水分散性ポリウレタン樹脂液(U−1)11.88質量部を用い、カルボジイミド水性樹脂液(C−1)の添加量を2.6質量部に変更し、塗布液の固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−2)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0116】
(偏光子保護フィルム3)
塗布液(Z−1)中の水分散性ポリエステル樹脂液(E−1)の代わりに水分散性アクリル樹脂液(A−1)10.39質量部を用い、カルボジイミド水性樹脂液(C−1)の添加量を5.2質量部に変更し、塗布液の固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−3))を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0117】
(偏光子保護フィルム4)
塗布液(Z−1)中の水分散性ポリエステル樹脂液(E−1)の代わりに水分散性オレフィン樹脂液(OL−1)16.89質量部を用い、カルボジイミド水性樹脂液(C−1)の添加量を4.55質量部に変更し、塗布液の固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−4)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0118】
(偏光子保護フィルム5)
塗布液(Z−1)中の水分散性ポリエステル樹脂液(E−1)の添加量を12.97質量部に変更し、水分散性ポリウレタン樹脂液(U−1)を2.98質量部添加し、塗布液の固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−5)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0119】
(偏光子保護フィルム6)
塗布液(Z−1)中のカルボジイミド水性樹脂液(C−1)の添加量を2.92質量部に変更し、オキサゾリン水性樹脂液(O−1)を0.98質量部添加し、固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−6)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0120】
(偏光子保護フィルム7)
塗布液(Z−1)の代わりに下記の塗布液(Z−7)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0121】
各水性樹脂等を下表の質量部で混合して固形分濃度6.5質量%の塗布液(Z−7)を調整した。
【0122】
塗布液(Z−7)
イオン交換水 37.29質量部
イソプロパノール 30.00質量部
水分散性ポリエステル樹脂液(E−2) 21.39質量部
(互応化学(株)製、プラスコート Z−687、固形分25質量%)
カルボジイミド水性樹脂液(C−2) 2.62質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40質量%)
粒子A 2.50質量部
(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI−30、固形分30質量%)
粒子B 0.17質量部
(日本触媒(株)製 シーホスターKEW50、固形分15質量%)
界面活性剤B 1.74質量部
(日油(株)製 ラピゾールB−90の水溶液、固形分1質量%)
界面活性剤C 4.29質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の水溶液、固形分1質量%)
【0123】
(偏光子保護フィルム8)
偏光子保護フィルム7と同様の方法を用いて、両面に易接着層を有する厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。その片面の塗布層の上に、コロナ放電処理を行い、塗布液(Z−8A)を乾燥膜厚100nmとなるように塗布し第2の易接着層A を形成した。同様に反対面に塗布液(Z−8B)を塗布して第2の易接着層Bを形成し、偏光板保護フィルム8を得た。
【0124】
各水性樹脂等を下表の質量部で混合して固形分濃度1.3質量%の塗布液(Z−8A)を調整した。粒子Cは平均1次粒径40nm、粒子Dは平均1次粒径50nmのシリカ粒子である。
【0125】
塗布液(Z−8A)
イオン交換水 93.66質量部
水分散性ポリウレタン樹脂液(U−2) 2.28質量部
(三井化学(株)製、オレスターUD−350、固形分38質量%)
水分散性アクリル樹脂液(A−2) 0.26質量部
(ダイセル化学工業(株)製、EM48D、固形分27.5質量%)
カルボジイミド水性樹脂液(C−2) 0.47質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40質量%)
粒子C 0.16質量部
(日本エアロジル(株)製 アエロジルOX−50の水分散体、固形分10質量%)
粒子D 0.35質量部
(日産化学工業(株)製 スノーテックスXL、固形分40.質量%)
界面活性剤B 1.27質量部
(日油(株)製 ラピゾールB−90の水溶液、固形分1質量%)
界面活性剤C 1.55質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の水溶液、固形分1質量%)
【0126】
各水性樹脂等を下表の質量部で混合して固形分濃度1.4質量%の塗布液(Z−8B)を調整した。
【0127】
塗布液(Z−8B)
イオン交換水 91.83質量部
水分散性アクリル樹脂液(A−2) 4.26質量部
(ダイセル化学工業(株)製、EM48D、固形分27.5質量%)
カルボジイミド水性樹脂液(C−2) 0.48質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40質量%)
粒子C 0.19質量部
(日本エアロジル(株)製 アエロジルOX−50の水分散体、固形分10質量%)
粒子D 0.08質量部
(日産化学工業(株)製 スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
界面活性剤B 1.58質量部
(日油(株)製 ラピゾールB−90の水溶液、固形分1質量%)
界面活性剤C 1.58質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の水溶液、固形分1質量%)
【0128】
(偏光子保護フィルム9)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)樹脂ペレット95質量部とPET(C)樹脂ペレット5質量部を常法により乾燥して押出機1(外層I層及び外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0129】
この未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度135℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に3.8倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0130】
次いで、得られた一軸配向PETフィルムの片面に、バーコート法により乾燥後の塗布量が0.10g/m
2になるように、下記の塗布液(Z−9)を塗布した後、150℃で50秒間加熱乾燥した。さらに、反対面も同様に塗布を行い、塗布層を両面に設けた。
【0131】
各水性樹脂等を下表の質量部で混合して固形分濃度1.6質量%の塗布液(Z−9)を調整した。
【0132】
塗布液(Z−9)
イオン交換水 62.48質量部
イソプロパノール 30.00質量部
水分散性ポリエステル樹脂液(E−2) 5.35質量部
(互応化学(株)製、プラスコート Z−687、固形分25質量%)
カルボジイミド水性樹脂液(C−2) 0.66質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40質量%)
界面活性剤B 0.44質量部
(日油(株)製 ラピゾールB−90の水溶液、固形分1質量%)
界面活性剤C 1.07質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の水溶液、固形分1質量%)
【0133】
(偏光子保護フィルム10)
バーコート法により一軸配向PETフィルムに塗布する前にコロナ処理すること以外は偏光子保護フィルム9と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0134】
(偏光子保護フィルム11)
偏光子保護フィルム10を使用して、偏光子保護フィルム8と同様にして両面に第2の易接着層AとBを有するフィルムを得た。
【0135】
(偏光子保護フィルム12)
塗布液(Z−1)中の水分散性ポリエステル樹脂液(E−1)の添加量を25.99質量部に変更し、カルボジイミド水性樹脂液(C−1)を添加しないで、固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−10)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0136】
(偏光子保護フィルム13)
塗布液(Z−1)中の水分散性ポリエステル樹脂液(E−1)の代わりに水分散性ポリウレタン樹脂液(U−1)を14.85質量部に変更し、カルボジイミド水性樹脂液(C−1)を添加しないで、固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−11)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0137】
(偏光子保護フィルム14)
塗布液(Z−1)中のカルボジイミド水性樹脂液(C−1)の代わりにオキサゾリン水性樹脂液(O−1)を3.90質量部に添加し、固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−12)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0138】
(偏光子保護フィルム15)
塗布液(Z−1)中のカルボジイミド水性樹脂液(C−1)の代わりにヘキサメトキシメチルメラミンを1.56質量部に添加し、固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−13)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0139】
(偏光子保護フィルム16)
塗布液(Z−1)中のカルボジイミド水性樹脂液(C−1)の代わりにイソシアネート水性樹脂液(I−1)を2.08質量部に添加し、固形分濃度が塗布液(Z−1)と同じになる様にイオン交換水により調整した塗布液(Z−14)を使用した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法を用いて、厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0140】
(偏光子保護フィルム17)
温度125℃の熱風ゾーンに導いた後、幅方向に4.0倍に延伸した以外は偏光子保護フィルム1と同様の方法によりフィルム厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0141】
(偏光子保護フィルム18)
温度125℃の熱風ゾーンに導いた後、幅方向に4.0倍に延伸した以外は偏光子保護フィルム7と同様の方法によりフィルム厚み約100μmの一軸配向PETフィルムを得た。
【0142】
(偏光子保護フィルム19)
未延伸フィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に3.1倍延伸し、温度110℃の熱風ゾーンに導いた後、幅方向に3.8倍に延伸した以外は、偏光子保護フィルム7と同様の方法で、フィルム厚み約100μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0143】
(偏光子保護フィルム20)
下記の塗布液(Z−15)を使用した以外は偏光子保護フィルム19と同様の方法を用いて、厚み約100μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0144】
塗布液(Z−15)
イオン交換水 48.93質量部
イソプロパノール 30.00質量部
水分散性ポリエステル液(E−2) 11.37質量部
(互応化学(株)製、プラスコート Z−687、固形分25質量%)
カルボジイミド水性樹脂液(C−2) 3.99質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40質量%)
オキサゾリン水性樹脂液(O−2) 1.77質量部
(日本触媒(株)製、エポクロスK2020E、固形分40質量%)
粒子A 2.50質量部
(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI−30、固形分30質量%)
粒子B 0.17質量部
(日本触媒(株)製 シーホスターKEW50、固形分15質量%)
界面活性剤B 1.27質量部
(日油(株)製 ラピゾールB−90の水溶液、固形分1質量%)
界面活性剤C 1.55質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の水溶液、固形分1質量%)
【0145】
(偏光子保護フィルム21)
偏光子保護フィルム19と同様の方法を用いて、両面に易接着層を有する厚み約100μmの二軸配向PETフィルムを得た。その片面の塗布層の上に、コロナ放電処理を行い、塗布液(Z−8A)を乾燥膜厚100nmとなるように塗布し第2の易接着層A を形成した。同様に反対面に塗布液(Z−8B)を塗布して第2の易接着層Bを形成し、偏光板保護フィルム21を得た。
【0146】
(偏光子保護フィルム22)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)樹脂ペレット95質量部とPET(C)樹脂ペレット5質量部を常法により乾燥して押出機1(外層I層及び外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0147】
この未延伸フィルムを、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に3.1倍延伸し、温度110℃の熱風ゾーンに導いた後、幅方向に3.8倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0148】
この次いで、得られた二軸配向PETフィルムの片面に、偏光子保護フィルム9と同様にして、塗布層を両面に設けた。
【0149】
(偏光子保護フィルム23)
バーコート法により二軸配向PETフィルムに塗布する前にコロナ処理すること以外は偏光子保護フィルム22と同様の方法を用いて、厚み約100μmの二軸配向PETフィルムを得た。
【0150】
(偏光子保護フィルム24)
偏光子保護フィルム23を使用して、偏光子保護フィルム8と同様にして両面に第2の易接着層AとBを有するフィルムを得た。
【0151】
上記の偏光子保護フィルムの詳細を表1に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
偏光子保護フィルム1〜24を用いて上述するように作製した液晶表示装置について虹斑観察及びフィルムの性能を評価した結果を以下の表2に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
また、偏光子保護フィルム1の虹斑観察において、光源を白色LEDの代わりに冷陰極管を用いた場合には、評価結果は「××」であった。さらに、偏光子保護フィルム1、7、17及び19の偏光子との接着面の反対面のクリ
アハードコート層を設けないで虹斑観察を実施した。これら結果は、クリアハードコート層を設けた場合と変化なく、それぞれ「◎」、「◎」、「△」、「×」であった。
【0156】
表2に示された結果から、両面にポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂とカルボジミド系架橋剤からなる塗布層を有し、リタデーションが4000以上であり、且つ、そのNz係数が1.7以下である場合に、虹斑の発生が顕著に抑制され、偏光子及びクリアハードコート層との接着性や耐湿熱性の耐久性が向上することが示された。また、この条件に加えて、配向ポリエステルフィルムの面配向度を0.13以下に制御することによって、より効果的に虹斑の発生を抑制することが可能であることが示された。