(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性部材と前記振動発生部との間に設けられ、前記振動発生部に機械的に接続される4つの支持片をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、
図1〜
図22を用いて説明する。車両用空調装置10は、走行用にエンジン27を搭載する自動車などの車両において、車室内を空調する空調ユニット11をエアコンECUによって制御するように構成されたいわゆるオートエアコンシステムである。空調ユニット11は、車室内最前部のインストルメントパネルの内側に配置されて、その外殻を形成する空調ケース12内に室内用ブロワ13、蒸発器14、ヒータコア15等を収容している。
【0013】
空調ケース12は、車室内に送風される送風空気の空気通路を内部に形成しており、たとえばポリプロピレン等の樹脂にて成形されている。空調ケース12内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気である内気と車室外空気である外気とを切り替え導入する内外気切替箱16が配置されている。
【0014】
内外気切替箱16には、空調ケース12内に内気を導入させる内気導入口17および外気を導入させる外気導入口18が形成されている。さらに、内外気切替箱16の内部には、内気導入口17および外気導入口18の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア19が配置されている。
【0015】
内外気切替ドア19は、空調ケース12内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。内外気切替ドア19は、内外気切替ドア19用の電動アクチュエータによって駆動される。内外気切替ドア19用の電動アクチュエータは、エアコンECUから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0016】
内外気切替箱16の空気流れ下流側には、内外気切替箱16を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する室内用ブロワ13が配置されている。室内用ブロワ13は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機であり、エアコンECUから出力される制御電圧によって回転数が制御される。
【0017】
室内用ブロワ13の空気流れ下流側には、蒸発器14が配置されている。蒸発器14は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。空調ケース12内において、蒸発器14の空気流れ下流側には、蒸発器14を通過した後の空気を流す温風通路20および冷風通路21といった空気通路、並びに、温風通路20および冷風通路21から流出した空気を混合させる混合空間22が形成されている。
【0018】
温風通路20には、蒸発器14を通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア15が配置されている。ヒータコア15は、その内部を流れる温水と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア15は、エンジン27で温められた温水が流入し、流入する温水が空気と熱交換して、空気を加熱する。ヒータコア15は、エアミックスドア23がヒータコア15を空気が通過しない開閉状態の場合には、単なる流路として機能する。
【0019】
冷風通路21は、蒸発器14を通過後の空気を、ヒータコア15を通過させることなく、混合空間22に導くための空気通路である。したがって、混合空間22にて混合された送風空気の温度は、温風通路20を通過する空気および冷風通路21を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0020】
本実施形態では、蒸発器14の空気流れ下流側であって、温風通路20および冷風通路21の入口側には、温風通路20および冷風通路21へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア23を配置している。したがって、エアミックスドア23は、混合空間22内の空気温度を調整する温度調整手段を構成する。エアミックスドア23は、エアミックスドア23用の電動アクチュエータによって駆動される。エアミックスドア23用の電動アクチュエータは、エアコンECUから出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0021】
蒸発器14は、圧縮機24、凝縮器25、膨張弁26、アキュムレータ28等とともに、冷凍サイクルを構成している。圧縮機24は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクルにおいて冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機24は、車両のエンジンルーム内に搭載されたエンジン27で駆動されて、冷媒を吸入して、圧縮して吐出する。
【0022】
凝縮器25は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と外気とを熱交換させることにより、圧縮された冷媒を凝縮液化させるものである。アキュムレータ28は、凝縮器25からの気液二相冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離する。膨張弁26は、アキュムレータ28によって分離された液冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器14は、冷媒と送風空気との熱交換により、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる。
【0023】
冷房サイクル運転時の冷媒の流れについて説明する。冷房サイクルは、圧縮機24、凝縮器25、アキュムレータ28、膨張弁26、蒸発器14の順に流れて、再び、圧縮機24に戻る。このように冷媒が流れる配管によって、冷凍サイクルの構成要素が環状に接続することによって形成されている。圧縮機24は、冷媒を吸入して吐出する。圧縮機24が吐出した冷媒は、凝縮器25に至る。このときヒータコア15を空気が通過しないように、エアミックスドア23の開度が制御されている。
【0024】
凝縮器25は、圧縮機24から吐出された冷媒が流入し、流入する冷媒が空気と熱交換して放熱する。凝縮器25を流出した冷媒は、アキュムレータ28によって気液分離される。アキュムレータ28によって分離された液冷媒は、膨張弁26によって減圧されて冷却される。蒸発器14には、膨張弁26で減圧された冷媒が流入し、蒸発して送風空気を冷却する。その後、蒸発器14を通過した冷媒を圧縮機24に吸入させる。
【0025】
図1および
図2に示すように、圧縮機24は、防振装置31を介して、エンジン27に搭載されている。エンジン27は、設置対象物であるエンジンルームに搭載されている。防振装置31は、
図3および
図4に示すように、エンジン27に3本の取付けボルト30で機械的に接続されている。
【0026】
したがって圧縮機24の振動は、
図1に矢印で示すようにエンジン27に伝達し、エンジン27から車外へ圧縮機24の振動に起因した音が放射される。エンジン27が駆動している場合は、エンジン27の振動およびエンジン27の駆動音が外部に放射されるので、圧縮機24に起因する騒音が運転者は気にならない。しかしエンジン27が停止時およびアイドル時などエンジン音が小さいときに、圧縮機24からエンジン27に伝わる振動に起因した車外音が問題となる。
【0027】
そこで本実施形態では、圧縮機24の振動を防振装置31によって抑制し、エンジン27に圧縮機24の振動が伝達することを抑制している。防振装置31は、支持部材32と、4つの弾性部材33と、4つの支持片34とを含んで構成される。圧縮機24は、円筒状であって、前後方向Xに延びる。前後方向Xに直行する方向のうち、鉛直方向を上下方向Zと称する。また前後方向Xおよび上下方向Zに直交する方向を、左右方向Yと称する。
【0028】
支持部材32は、
図6および
図7に示すように、前後方向Xに見て、断面形状が略L状である。支持部材32は、上下方向Zおよび前後方向Xに延びエンジン27に対向する壁部32aと、前後方向Xおよび左右方向Yに延び圧縮機24を支持する底部32bとを含む。壁部32aには、
図6および
図9に示すように、3つの挿通穴32cが形成されている。支持部材32をエンジン27に取り付けるとき、挿通穴32cには、
図3および
図4に示すように、取付けボルト30が挿通されて、エンジン27に形成されている雌ねじに、取付けボルト30の雄ねじが螺合する。これによって支持部材32がエンジン27に固定される。
【0029】
底部32bには、
図6および
図8に示すように、上下方向Zの上方側に斜面を有する斜面部35が4つ形成されている。斜面部35の中央には、貫通孔35aが形成されている。4つの斜面部35は、上下方向Zに見て、長方形の仮想平面36の4つの頂点36aに配置されている。仮想平面36における一辺が延びる方向は、前後方向Xである。また仮想平面36において一辺と直交する方向が左右方向Yである。
【0030】
4つの斜面部35の位置関係は、斜面部35の各貫通孔35aが
図8に示すように、上下方向Zに見て長方形の仮想平面36の4つの頂点36aに配置されている。また4つの斜面部35の法線は、
図7および
図9に仮想線37で示すように、斜め上方に延びる。したがって
図8に示すように、対角同士の斜面部35は、斜面が上方に広がるように向き合っている。
【0031】
また支持部材32は、2つの部材をボルト32dで締結することによって構成されている。
図7および
図8に示すように、上下方向Zおよび前後方向Xを含む切断面によって、左右方向Yに分離可能である。そして前後方向Xの両端部を、左右方向Yに延びるボルト32dによって固定している。
【0032】
弾性部材33は、
図17に示すように、貫通孔33aを有する円柱状である。弾性部材33は、弾性を有し、たとえばゴムである。弾性部材33は、円柱の軸が所定の搭載軸33bとなる。搭載軸33bに交差する面が圧縮機24からの荷重を受ける抑制面33cとなる。抑制面33cは、本実施形態では搭載軸33bに垂直な平面である。ここで垂直とは、厳密な90度だけでなく、85度以上95度以下であってもよい。換言すると、抑制面33cは、搭載軸33bに対して、85度以上95度以下で交わっている。本実施形態では、弾性部材33の軸方向の圧縮機24側の面が抑制面33cとなる。4つの弾性部材33は、長方形の仮想平面36における4つの頂点36aにそれぞれ配置されている。4つの頂点36aは、上下方向Zに見て、少なくとも弾性部材33の内部に配置されていればよい。そして4つの弾性部材33を上下方向Zに見て、各弾性部材33の中心を結んだ形状が長方形となることが好ましい。また4つの弾性部材33を前後方向Xおよび左右方向Yに見て、各弾性部材33の中心は一直線に並ぶ。また仮想平面36の中心は、上下方向Zに見て、圧縮機24の重心24aを通る鉛直軸と重なるように配置されるのが好ましい。
【0033】
支持片34は、
図10、
図11および
図12に示すように、貫通孔38aを有する傾斜部38と、貫通孔39aを有する取付部39とを含む。傾斜部38は、斜面部35と同様の傾斜角度を有し、
図14および
図16に示すように、斜面部35に弾性部材33を介して装着される。取付部39は、
図13に示すように、左右方向Yに延びる貫通孔39aを有する。
【0034】
支持片34は、
図5に示すように、弾性部材33と圧縮機24との間に設けられ、圧縮機24にボルト24bによって機械的に接続される。
図15に示すように、左右方向Yに対向する取付部39を連結するように、ボルト24bが挿通される。取付部39に挿通されるボルト24bは、圧縮機24に形成されている取付孔(図示せず)を挿通する。圧縮機24の取付孔は、左右方向Yに延びる。換言すると、圧縮機24の下部には、左右方向Yにボルトが挿通する取付孔が前後方向Xに間隔をあけて、2つ設けられている。
【0035】
また支持片34は、斜面部35にそれぞれボルト34aによって機械的に接続される。斜面部35と支持片34との間には、
図17に示す弾性部材33が挟まれる。そして斜面部35の貫通孔35a、弾性部材33の貫通孔33aおよび傾斜部38の貫通孔38aを挿通するようにボルト34aが設けられ、ナット34bによって締結される。これによって支持部材32と弾性部材33と支持片34とが機械的に接続される。
【0036】
弾性部材33が斜面部35と支持片34の傾斜部38とに挟まれて配置されるので、弾性部材33の抑制面33cが圧縮機24の重心24aに向いている。具体的には、各弾性部材33における抑制面33cに対向する位置には、圧縮機24の重心24aが配置されている。抑制面33cが対向する位置に重心24aがあるとは、抑制面33cから搭載軸33bが延びる方向に放射状に延びる領域内に重心24aがあることである。そして好ましくは、抑制面33cが対向する位置に重心24aがあるとは、抑制面33cから搭載軸33bが延びる方向に投影した投影領域内に重心24aがあることである。
【0037】
次に、回転振動と並進振動の連成を抑制するための、弾性部材33の位置関係に関して、
図18および
図19を用いて説明する。
図18および
図19は、回転振動と並進振動との抑制を計算するためモデルを示している。計算モデルでは、
図18に示すように、前後方向Xに見て、弾性部材33の搭載軸33bが上下方向Zに対して角度αで傾斜している。また弾性部材33は、圧縮機24の重心24aから上下方向Zに関して、高さcだけ離れた位置に当接している。また弾性部材33は、圧縮機24の重心24aから左右方向Yに関して、幅bだけ離れた位置に当接している。また圧縮機24の直径は、Dとする。
【0038】
また計算モデルでは、
図19に示すように、左右方向Yに見て、弾性部材33の搭載軸33bが上下方向Zに対して角度βで傾斜している。また弾性部材33は、圧縮機24の重心24aから前後方向Xに関して、長さaだけ離れた位置に当接している。
【0039】
また計算モデルでは、弾性部材33において、前後方向Xに見た場合の径方向の剛性をk1で示し、左右方向Yに見た場合の径方向の剛性をk2で示す。また弾性部材33の搭載軸33b方向の剛性をk3で示す。
【0040】
まず
図18のYZ平面における運動方程式に関して説明する。並進の運動方程式を式(1)に示し、回転の運動方程式を式(2)に示す。式(1)において、連成項は左辺の第3項である。また式(2)において、連成項も左辺の第3項である。
【数1】
【0041】
また連成項の係数K
24は、式(3)で示される。連成項が0であれば、連成していない状態、いわゆる非連成となる。したがって連成項の係数K
24が0となれば、連成項も0となるので、非連成となる。
【数2】
【0042】
式(3)では、添字iは、4つの弾性部材33に割り当てられている。したがってiは、1〜4までの整数である。式(3)における係数K
22iおよび係数K
23iは、式(4)および式(5)によって表せる。
【数3】
【0043】
ここで、各弾性部材33の剛性kは、式(6)〜式(8)に示すように同じ値とする。
【数4】
【0044】
同様に、各弾性部材33の位置は、式(9)〜式(12)に示すように同じ値とする。
【数5】
【0045】
すると、係数K
22iおよび係数K
23iも、式(13)および式(14)に示すように同じ値となる。
【数6】
【0046】
式(13)および式(14)を式(3)に代入し、係数K
24が0とする条件は、式(15)によって表せる。
【数7】
【0047】
式(15)に、式(4)、式(5)、式(13)および式(14)を代入すると、式(16)となる。
【数8】
【0048】
同様に、
図19のXZ平面における運動方程式についても、連成を抑制するための係数K
24が0となる条件は,式(11)においてbをaに、k2をk1に、αをβに置き換え、式(17)によって表せる。
【数9】
【0049】
前後方向X、左右方向Y、上下方向Zの全ての並進方向の剛性および共振周波数を同じ値にするために、α=β=45degとする。また
図17に示すように、弾性部材33が円筒型の場合、弾性部材33の場合、剛性はk1=k2となる。弾性部材33は、円筒形に限るものではなく、
図22に示すように、貫通孔33aを有する正方形状であってもよい。このような正方形状でも、剛性はk1=k2となる。したがって、a=bとすれば、式(16)および式(17)の両方を満たすことができる剛性比k
1/k
3、および剛性比k
2/k
3を決定することができる。
【0050】
図20には、式(16)および式(17)を満足する場合の、搭載位置の比と剛性比との関係が示されている。したがって
図20に示す関係を満たす比となるように、搭載位置および弾性部材33を選択することによって、XZ平面およびYZ平面において非連成となる。
【0051】
本実施形態では、
図20に示す剛性比、搭載位置の比の関係になるように、弾性部材33が設置される。さらにYZ平面において、弾性部材33を支持部材32に設置するため、b<Dとすることが好ましい。換言すると、圧縮機24の左右方向Yにおける寸法は、仮想平面36の左右方向Yの寸法よりも大きいことが好ましい。
【0052】
また一般的な圧縮機24は、
図4に示すように、外径D<前後方向Xの長さLとなるので、前述のようにa=bとすれば、a<Lとなる。したがって弾性部材33の前後方向Xにおける位置aは、支持部材32の前後方向Xの端部よりも重心24a側となる。換言すると圧縮機24の前後方向Xにおける寸法は、仮想平面36の前後方向Xの寸法よりも大きい。これによって前後方向Xに関して、圧縮機24の外方に弾性部材33を配置する場合よりも、弾性部材33を搭載しやすい。
【0053】
次に、
図21を用いて、本実施形態の効果に関して説明する。
図21では、本実施形態の防振装置31と搭載した実施例の波形と、比較例1の波形と、比較例2の波形とが描かれている。
図21の縦軸は、圧縮機24からエンジン27に伝わる伝達荷重を示し、横軸は周波数を示す。高周波数領域、たとえば周波数が500Hz以上の領域で、伝達荷重が0.1N以下が目標となる。
【0054】
比較例1は、支持部材32とエンジン27との間に弾性部材33を設けた構成である。具体的には、比較例1は、支持部材32とエンジン27とを取付けボルト30と取り付ける際に、取付けボルト30の外周に弾性部材33を設けた構成である。したがって比較例1では、圧縮機24と支持部材32との間には、弾性部材33が設けられていない。比較例2は、本実施形態から4つの弾性部材33を除いた構成である。換言すると、比較例1からエンジン27と支持部材32との間から弾性部材33を除いた構成である。
【0055】
図21に示すように、比較例2では、弾性部材33を用いていないため、高周波領域で共振周波数が発生し、高周波領域の全域で目標を上回っている。比較例1では、弾性部材33によって少しは低減できているものの、連成しているので複数の共振周波数が発生し500Hzにおいて伝達荷重を低減できない。
【0056】
これに対して、実施例では、非連成であるので、共振周波数を300Hz付近に集めることができている。これによって500Hz以上の荷重を低減できる。したがってエンジン27に高周波の振動が伝達することを抑制することができる。
【0057】
以上説明したように本実施形態の防振装置31は、圧縮機24を4つの弾性部材33によって支持する。4つの弾性部材33は、長方形の仮想平面36の4つの頂点36aにそれぞれ配置されている。そして弾性部材33の抑制面33cは、圧縮機24の重心24aに対向する位置に配置されている。これによって重心24aを四方から囲むように、4つの弾性部材33が配置されることになる。したがって長さ方向である前後方向Xの荷重および幅方向である左右方向Yの荷重が4つの弾性部材33に均等に分散される。また仮想平面36に垂直な高さ方向である上下方向Zの荷重も4つの弾性部材33に均等に分散される。これによって各弾性部材33における共振周波数を同一にすることができるので、高周波領域における振動を抑制することができる。
【0058】
換言すると、前後方向X、左右方向Y、上下方向Zの荷重が掛かる場合において、弾性部材33が受ける荷重が同一にすることができるので、複数の共振周波数の発生を抑制し、高周波を防振することができる。
【0059】
また本実施形態では、各抑制面33cの中心から圧縮機24の重心24aまでの距離は、互いに等しい。これによって前述の式(16)および式(17)の両方を満たすことができる剛性比を決定しやすくなる。したがって回転と並進との連成による共振の発生を抑制する構成を実現しやすいので、高周波領域における振動をさらに抑制することができる。
【0060】
さらに本実施形態では、防振装置31は、4つの支持片34を含んで構成される。支持片34は、弾性部材33と圧縮機24との間に設けられ、圧縮機24に機械的に接続される。支持片34を設けることによって、組み付け性を向上することができる。
【0061】
また本実施形態では、圧縮機24の左右方向Yにおける寸法は、仮想平面36の左右方向Yの寸法よりも大きい。仮想平面36の左右方向Yの寸法は、
図15に示すように、弾性部材33の左右方向Yの間隔である。これによって
図4に示すように、弾性部材33を圧縮機24の下側に隠れるように配置することができる。したがって防振装置31を小型にすることができる。
【0062】
さらに本実施形態では、圧縮機24の前後方向Xにおける寸法は、仮想平面36の前後方向Xの寸法よりも大きい。仮想平面36の前後方向Xの寸法は、
図15に示すように、弾性部材33の前後方向Xの間隔である。これによって
図5に示すように、弾性部材33を圧縮機24の内側に配置することができる。したがって防振装置31を小型にすることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0064】
上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0065】
前述の第1実施形態では、圧縮機24を設置する設置対象物はエンジン27であったが、設置対象物はエンジン27に限るものではない。たとえばエンジン27の他の振動発生部であってもよい。また設置対象物は、振動発生源でなく、振動発生源からの振動が伝わる部分であってもよい。また車両に限るものでもない。
【0066】
前述の第1実施形態では、支持片34を含んで構成されているが、支持片34を含まない構成であってもよい。たとえば圧縮機24に予め支持片34に相当する足を有する構成であり、足と弾性部材33とを機械的に接続する構成であってもよい。
【0067】
前述の第1実施形態では、各抑制面33cの中心から圧縮機24の重心24aまでの距離は、互いに等しいが、厳密に等しい場合に限るものではない。各抑制面33cの中心から圧縮機24の重心24aまでの距離が厳密には異なっていても、各抑制面33cから重心24aまでの距離の差が5%以内であれば、等しいとみなしてよい。