(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に使用されるフィルタ素子や発振子として機能させることができる表面弾性波素子や、圧電薄膜を用いたラム波素子や薄膜共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)などの弾性波素子が知られている。こうした表面弾性波素子としては、支持基板と弾性表面波を伝搬させる圧電基板とを貼り合わせ、圧電基板の表面に弾性表面波を励振可能な櫛形電極を設けたものが知られている。このように圧電基板よりも小さな熱膨張係数を持つ支持基板を圧電基板に貼付けることにより、温度が変化したときの圧電基板の大きさの変化を抑制し、弾性表面波素子としての周波数特性の変化を抑制している。
【0003】
特許文献1では、二つの圧電単結晶基板を重ね合わせて直接接合して接合体を得、接合体上に電極を設けることで、表面弾性波素子を製造している。この直接接合は熱処理によって行っている。
【0004】
シリコン基板を圧電単結晶基板に直接接合する場合、一般的にはプラズマ活性化法を用いる。しかし、プラズマ活性化法では、接合後に強度を上げるために加熱が必要であり、接合温度が低いと接合強度が低下する傾向がある。しかし、接合温度を高くすると、シリコン基板と圧電基板との熱膨張係数の相違から、割れが生じやすい。
【0005】
一方、いわゆるFAB(Fast Atom Beam)方式の直接接合法が知られている(特許文献2)。この方法では、中性化原子ビームを常温で各接合面に照射して活性化し、直接接合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、特許文献1、2を参考にして、多結晶セラミックス基板上に圧電性材料基板を接合し、その上に電極を設けて表面弾性波素子を製造することを試みていた。しかし、実際に素子を作製してみると、Q値が低下し、温度特性が劣化する傾向が見られた。
【0008】
本発明の課題は、多結晶セラミックスからなる支持基板上に圧電性材料基板を直接接合したタイプの弾性波素子において、弾性波素子のQ値を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る弾性波素子は、
圧電性材料基板、
前記圧電性材料基板上に設けられた中間層であって、酸化珪素、窒化アルミニウムおよびサイアロンからなる群より選ばれた一種以上の材質からなる中間層、
前記中間層上に設けられた接合層であって,五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化チタン、ムライト、高抵抗シリコンおよび酸化ハフニウムからなる群より選ばれた一種以上の材質からなる接合層、
多結晶セラミックスからなり、前記接合層に対して直接接合された支持基板、および
前記圧電性材料基板上に設けられた電極
を備えており、前記中間層の厚さが前記接合層の厚さの5倍以上、25倍以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、
圧電性材料基板上に中間層を設け、前記中間層が酸化珪素、窒化アルミニウムおよびサイアロンからなる群より選ばれた一種以上の材質からなる工程、
前記中間層上に接合層を設け、前記接合層が、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化チタン、ムライト、高抵抗シリコンおよび酸化ハフニウムからなる群より選ばれた一種以上の材質からなる工程、
前記接合層の表面に中性化ビームを照射することで活性化面とする工程、
多結晶セラミックスからなる支持基板の表面に中性化ビームを照射することで活性化面とする工程、
前記接合層の前記活性化面と前記支持基板の前記活性化面とを直接接合する工程、および
前記圧電性材料基板上に電極を設ける工程
を有しており、前記中間層の厚さが前記接合層の厚さの5倍以上、25倍以下であることを特徴とする、弾性波素子の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明者は、多結晶セラミックスからなる支持基板上に圧電性材料基板を直接接合したタイプの弾性波素子において、弾性波素子のQ値の低下が見られた原因について検討した。この結果、以下の知見を得た。
【0012】
すなわち、目的とする弾性波は、本来、圧電性材料基板中のみを伝搬するべきものである。しかし、多結晶セラミックスからなる支持基板上に圧電性材料基板を直接接合したタイプの弾性波素子においては、接合界面に沿って微細なアモルファス層が生成し、弾性波の一部がこのアモルファス層中を伝搬すると共に、更にアモルファス層を超えて支持基板内も伝搬弾性波が支持基板中を伝搬する傾向が見られた。この結果、弾性波素子のQ値が劣化する傾向が見られた。
【0013】
このため、本発明者は、圧電性材料基板上に、上記した特定種類の異種材質からなる中間層と接合層とを別個に形成し、この接合層を、多結晶セラミックスからなる支持基板に対して直接接合することを試みた。この結果、弾性波素子のQ値が著しく増加することを見いだした。
【0014】
この理由は明らかではないが、こうして得られた弾性波素子においては、圧電性材料基板から漏れた弾性波は、中間層中では比較的に高効率で伝搬すると共に、中間層とは異質な材質からなる接合層との界面で遮断を受け、接合層中での伝搬量が少なくなる。これによって、接合層と支持基板との界面(特にアモルファス層)での伝搬や、支持基板中での伝搬が抑制されることから、Q値が増加するものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1(a)に示すように、圧電性材料基板1は表面1aと1bとを有する。次いで、
図1(b)に示すように、圧電性材料基板1の表面1aに中間層2を設け、中間層2の表面2a上に接合層3を設ける。次いで、
図1(c)に示すように、接合層3の表面3aに対して、矢印Aのように中性化ビームを照射し、接合層3の表面を活性化して活性化面4とする。
【0018】
一方、
図2(a)に示すように、多結晶セラミックスからなる支持基板5を準備する。支持基板5は、一対の表面5a、5bを有する。次いで、
図2(b)に示すように、支持基板5の一方の表面5aに中性化ビームを矢印Bのように照射することによって活性化し、活性化面6とする。そして、
図2(c)に示すように、支持基板5の活性化面6と接合層3の活性化面4とを直接接合することによって、接合体7を得る。
【0019】
好適な実施形態においては、接合体7の圧電性材料基板1の表面1bを更に研磨加工し、
図3(a)に示すように圧電性材料基板1Aの厚さを小さくする。1cは研磨面である。これにより、接合体8を得る。
【0020】
図3(b)では、圧電性材料基板1Aの研磨面1c上に所定の電極9を形成することによって、弾性波素子10を作製している。
【0021】
以下、本発明の効果について
図3を参照しつつ更に補足する。
弾性波は、本来、圧電性材料基板1A中のみを伝搬するべきものである。しかし、多結晶セラミックスからなる支持基板5上に圧電性材料基板1Aを直接接合したタイプの弾性波素子においては、接合界面に沿って微細なアモルファス層が生成し、弾性波の一部がこのアモルファス層中を伝搬すると共に、更にアモルファス層を超えて支持基板5内でも伝搬弾性波が支持基板中を伝搬する傾向が見られた。この結果、弾性波素子のQ値が劣化する傾向が見られた。
【0022】
一方、本発明の弾性波素子10によれば、圧電性材料基板1A上に、前記した特定種類の異種材質からなる中間層2と接合層3とが別個に形成されており、この接合層3が、多結晶セラミックスからなる支持基板5に対して直接接合されている。この結果、弾性波素子のQ値が著しく増加することを見いだした。
【0023】
この理由は明らかではないが、こうして得られた弾性波素子においては、圧電性材料基板1Aから漏れた弾性波は、中間層2中では比較的に高効率で伝搬すると共に、中間層2とは異質な材質からなる接合層3との界面で遮断を受け、接合層3中での伝搬量が少なくなる。これによって、接合層3と支持基板5との界面(特にアモルファス層)での伝搬や、支持基板5中での伝搬が抑制されることから、Q値が増加するものと考えられる。
【0024】
以下、本発明の各構成要素について更に説明する。
弾性波素子としては、弾性表面波素子やラム波素子、薄膜共振子(FBAR)などが知られている。例えば、弾性表面波素子は、圧電性材料基板の表面に、弾性表面波を励振する入力側のIDT(Interdigital Transducer)電極(櫛形電極、すだれ状電極ともいう)と弾性表面波を受信する出力側のIDT電極とを設けたものである。入力側のIDT電極に高周波信号を印加すると、電極間に電界が発生し、弾性表面波が励振されて圧電基板上を伝搬していく。そして、伝搬方向に設けられた出力側のIDT電極から、伝搬された弾性表面波を電気信号として取り出すことができる。
【0025】
圧電性材料基板1Aの底面に金属膜を有していてもよい。金属膜は、弾性波素子としてラム波素子を製造した際に、圧電基板の裏面近傍の電気機械結合係数を大きくする役割を果たす。この場合、ラム波素子は、圧電基板の表面に櫛歯電極が形成され、支持基板に設けられたキャビティによって圧電基板の金属膜が露出した構造となる。こうした金属膜の材質としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、金などが挙げられる。なお、ラム波素子を製造する場合、底面に金属膜を有さない圧電基板を備えた複合基板を用いてもよい。
【0026】
また、圧電性材料基板1Aの底面に金属膜と絶縁膜を有していてもよい。金属膜は、弾性波素子として薄膜共振子を製造した際に、電極の役割を果たす。この場合、薄膜共振子は、圧電基板の表裏面に電極が形成され、絶縁膜をキャビティにすることによって圧電基板の金属膜が露出した構造となる。こうした金属膜の材質としては、例えば、モリブデン、ルテニウム、タングステン、クロム、アルミニウムなどが挙げられる。また、絶縁膜の材質としては、例えば、二酸化ケイ素、リンシリカガラス、ボロンリンシリカガラスなどが挙げられる。
【0027】
圧電性材料基板1Aの材質は、具体的には、タンタル酸リチウム(LT)単結晶、ニオブ酸リチウム(LN)単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、水晶、ホウ酸リチウムを例示できる。このうち、LT又はLNであることがより好ましい。
【0028】
LTやLNは、弾性表面波の伝搬速度が速く、電気機械結合係数が大きいため、高周波数且つ広帯域周波数用の弾性表面波素子として適している。また、圧電性材料基板1Aの主面の法線方向は、特に限定されないが、例えば、圧電性材料基板1AがLTからなるときには、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に36〜47°(例えば42°)回転した方向のものを用いるのが伝搬損失が小さいため好ましい。圧電性材料基板1AがLNからなるときには、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に60〜68°(例えば64°)回転した方向のものを用いるのが伝搬損失が小さいため好ましい。更に、圧電性材料基板の大きさは、特に限定されないが、例えば、直径50〜150mm,厚さが0.2〜60μmである。
【0029】
支持基板5は多結晶セラミックスからなる。これは、好ましくは、ムライト、窒化アルミニウム、およびサイアロンからなる群より選ばれた材質を例示できる。
【0030】
また、支持基板5を構成するセラミックスの相対密度は95%以上が好ましく、100%であってもよい。なお、相対密度は、アルキメデス法によって、測定する。
【0031】
中間層2は、酸化珪素、窒化アルミニウムおよびサイアロンからなる群より選ばれた一種以上の材質からなる。これらの材質からなる中間層2を介在させることで、弾性波の伝搬効率を高くできる。
【0032】
中間層2の厚さは、接合層3および支持基板5側への弾性波の漏れを抑制するという観点からは、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。また、中間層2の厚さは、成膜コスト、基板の反り量という観点からは、5.0μm以下が好ましい。
【0033】
中間層2上に接合層3を設ける。接合層3は、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化チタン、ムライト、高抵抗シリコンおよび酸化ハフニウムからなる群より選ばれた一種以上の材質からなる。こうした接合層3を設けることによって,弾性波の中間層からの漏れを抑制し易い。こうした観点からは、接合層の厚さは、0.01μm以上が好ましく、また、1.0μm以下が好ましい。また、高抵抗シリコンとは、体積抵抗率が1000Ω・cm以上であるシリコンを意味する。
【0034】
また、Q値を増大させるという観点からは、中間層の厚さ/接合層の厚さは、5〜25であることが好ましく、10〜20であることが更に好ましい。
【0035】
次いで、多結晶セラミックスからなる支持基板5の表面5aおよび接合層3の表面3aに中性化ビームを照射することで支持基板5の表面5aおよび接合層3の表面3aを活性化する。この場合、好ましくは、接合層3の表面3a、支持基板5の表面5aをそれぞれ平坦化して平坦面を得ることができる。ここで、各表面を平坦化する方法は、ラップ(lap)研磨、化学機械研磨加工(CMP)などがある。また、平坦面は、Ra≦1nmが必要であるが、0.3nm以下にすると更に好ましい。
【0036】
中性化ビームによる表面活性化を行う際には、特許文献2に記載のような装置を使用して中性化ビームを発生させ、照射することが好ましい。すなわち、ビーム源として、サドルフィールド型の高速原子ビーム源を使用する。そして、チャンバーに不活性ガスを導入し、電極へ直流電源から高電圧を印加する。これにより、電極(正極)と筺体(負極)との間に生じるサドルフィールド型の電界により、電子eが運動して、不活性ガスによる原子とイオンのビームが生成される。グリッドに達したビームのうち、イオンビームはグリッドで中和されるので、中性原子のビームが高速原子ビーム源から出射される。ビームを構成する原子種は、不活性ガス(アルゴン、窒素等)が好ましい。
ビーム照射による活性化時の電圧は0.5〜2.0kVとすることが好ましく、電流は50〜200mAとすることが好ましい。
【0037】
次いで、真空雰囲気で、活性化面同士を接触させ、接合する。この際の温度は常温であるが、具体的には40℃以下が好ましく、30℃以下が更に好ましい。また、接合時の温度は20℃以上、25℃以下が特に好ましい。接合時の圧力は、100〜20000Nが好ましい。
【0038】
好適な実施形態においては、支持基板5と接合層3との界面に沿ってアモルファス層が生じている。こうしたアモルファス層は、支持基板5の材質と接合層3の材質との混合物や組成物となっていることが多い。また、表面活性化時に用いる中性化ビーム(アルゴン、窒素等)を構成する原子種が組成として存在することが多い。そのため、当該アモルファス層は、支持基板5を構成する原子と接合層3を構成する原子と中性化ビームを構成する原子とが混在して形成されている。また、アモルファス層の厚さは20nm以下であることが多い。
【0039】
こうしたアモルファス層の存在は以下のようにして確認できる。
測定装置として、透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−ARM200F)を用いて、微構造観察する。このとき、測定条件は、FIB(集束イオンビーム)法にて薄片化したサンプルに対して、加速電圧200kVにて観察する。
【実施例】
【0040】
(実施例A1)
図1〜
図3を参照しつつ説明した方法に従って、
図3(b)に示す弾性波素子10を作製した。
具体的には、オリエンテーションフラット部(OF部)を有し、直径が4インチ,厚さが250μmのタンタル酸リチウム基板(LT基板)を圧電性材料基板1として使用した。また、支持基板5として、OF部を有し、直径が4インチ,厚さが230μmのサイアロン基板を用意した。LT基板は、弾性表面波(SAW)の伝搬方向をXとし、切り出し角が回転Yカット板である46°YカットX伝搬LT基板を用いた。圧電性材料基板1の表面1aと支持基板5の表面5aは、算術平均粗さRaが1nmとなるように鏡面研磨しておいた。算術平均粗さは原子間力顕微鏡(AFM)で、縦10μm×横10μmの正方形の視野を評価した。
【0041】
次いで、圧電性材料基板1の表面1aに酸化珪素膜からなる厚さ0.5μmの中間層2をスパッタリング法で成膜した。成膜後の算術平均粗さRaは2nmであった。次に、中間層2上に、五酸化タンタルからなる厚さ0.01μmの接合層3をCVD法で成膜した。成膜後のRaは2.0nmであった。次に、接合層3の表面を化学機械研磨加工(CMP)し、平坦化し、Raを0.2nmとした。次に、支持基板5であるサイアロン基板は、化学機械研磨加工(CMP)を行わず、0.5μm以下の超微細な砥粒を用いて機械研磨加工することにより、平坦化し、Raを0.5nm以下とした。
【0042】
次いで、接合層3の表面3aと支持基板5の表面5aとを洗浄し、汚れを取った後、真空チャンバーに導入した。10
−6Pa台まで真空引きした後、それぞれの基板の接合面に高速原子ビーム(加速電圧1kV、Ar流量27sccm)を120sec間照射した。ついで、接合層3のビーム照射面(活性化面)4と支持基板5の活性化面6とを接触させた後、10000Nで2分間加圧して両基板を接合した。そのため、接合層3と支持基板5との間が、接合界面となる(言い換えると、接合層3と支持基板5との界面に沿ってアモルファス層が存在する)。
【0043】
次いで、圧電性材料基板1の表面1bを厚みが当初の250μmから3μmになるように研削及び研磨した(
図3(a)参照)。研削および研磨工程中に接合部分の剥がれは確認できなかった。またクラックオープニング法で接合強度を評価した所、2.0J/m
2であった。
【0044】
次いで、
図3(b)に示すように、圧電性材料基板1Aの研磨面1c上に電極9を設け、弾性波素子10を作製した。得られた素子10について、Q値と弾性波の波長λとを測定した。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例A2〜A5)
実施例A1と同様にして弾性波素子10を作製した。ただし、接合層3の厚さを、表1に示すように変更した(具体的には、接合層3の厚さが、実施例A2では0.02μm、実施例A3では0.05μm、実施例A4では0.1μm、実施例A5では0.5μmである。)。得られた素子10について、Q値と表面弾性波の波長λとを測定し、結果を表1に示す。なお、実施例A2〜A5では、実施例A1と同様、接合層3と支持基板5との間が、接合界面となる。
【0046】
(比較例A1)
実施例A1と同様にして弾性波素子を作製した。ただし、接合層3を設けず、中間層2の表面と支持基板5の表面とを直接接合した。得られた素子について、Q値と表面弾性波の波長λとを測定し、結果を表1に示す。なお、比較例A1では、中間層2と支持基板5との間が、接合界面となる。
【0047】
(比較例A2)
実施例A3(接合層の厚さが0.05μm)と同様にして弾性波素子を作製した。ただし、接合層3と支持基板5とを直接接合しなかった。その代わりに、中間層2と圧電性材料基板1Aとを実施例A3と同様にして直接接合した。得られた素子について、Q値と表面弾性波の波長λとを測定し、結果を表1に示す。なお、比較例A2では、中間層2と圧電性材料基板1Aとの間が、接合界面となる。
【0048】
(比較例A3)
実施例A1と同様にして弾性波素子を作製した。ただし、接合層3を設けなかった。また、中間層2と圧電性材料基板1Aとを実施例A1と同様にして直接接合した。得られた素子について、Q値と表面弾性波の波長λとを測定し、結果を表1に示す。なお、比較例A3では、中間層2と圧電性材料基板1Aとの間が、接合界面となる。
【0049】
【表1】
【0050】
表1からわかるように、本発明の実施例A1〜A5では、Q値が相対的に高くなっている(Q値:1100〜2500)。これに対して比較例A1〜A3では、実施例A1に比べてQ値が著しく低い。
【0051】
この理由であるが、比較例A1(Q値:500)では、接合層3がないため、中間層2を伝搬する弾性波の一部が支持基板5内や中間層2と支持基板5との界面のアモルファス層を伝搬し、伝搬効率が低下するものと考えられる。比較例A2(Q値:600)では、中間層2と圧電性材料基板1Aとが直接接合されているので、圧電性材料基板1Aと中間層2との界面に存在するアモルファス層によって伝搬効率が低下しているものと考えられる。
【0052】
比較例A3(Q値:300)では、接合層3がなく、かつ、中間層2と圧電性材料基板1Aとが直接接合されているので、圧電性材料基板1Aと中間層2との界面に存在するアモルファス層や中間層2を伝搬する弾性波の一部が支持基板5内に漏れて、伝搬効率が最も低下しているものと考えられる。
特に、実施例A2〜A4に示すように、中間層2の厚さ/接合層3の厚さが、5〜25であるとき、Q値を著しく増加させることができる(Q値:2000〜2500)。
【0053】
(実施例B1、B2)
実施例A3と同様にして弾性波素子を作製した。ただし、中間層2の材質を窒化アルミニウムまたはサイアロンに変更した。得られた素子10について、Q値と表面弾性波の波長λとを測定し、結果を表2に示す。なお、実施例B1、B2では、実施例A3と同様、接合層3と支持基板5との間が、接合界面となる。
【0054】
(実施例B3〜B
5)
実施例A3と同様にして弾性波素子を作製した。ただし、接合層3の材質を、五酸化ニオブ、酸化チタン、ムライトに変更した。得られた素子10について、Q値と表面弾性波の波長λとを測定し、結果を表2に示す。なお、実施例B3〜B
5では、実施例A3と同様、接合層3と支持基板5との間が、接合界面となる。
【0055】
(実施例B7、B8)
実施例A3と同様にして弾性波素子を作製した。ただし、支持基板5の材質を、ムライトまたは窒化アルミニウムに変更した。得られた素子10について、Q値と表面弾性波の波長λとを測定し、結果を表2に示す。なお、実施例B7、B8では、実施例A3と同様、接合層3と支持基板5との間が、接合界面となる。
【0056】
【表2】
【0057】
表2からわかるように、本発明の実施例B1〜B8では、実施例A3と同様に、高いQ値が得られている(Q値:2400〜2460)。
なお、表2では、実施例A3と同様、中間層2の厚さ/接合層3の厚さを10としたが、実施例A2、A4と同様に、中間層2の厚さ/接合層3の厚さを5〜25とすることで、Q値を著しく増加させることができる。
【0058】
(実施例B9、B10)
実施例A3と同様にして弾性波素子を作製した。ただし、接合層3の材質を、高抵抗シリコン(HR−Si)または酸化ハフニウムに変更した。得られた素子10について、Q値と表面弾性波の波長λとを測定し、結果を表3に示す。なお、実施例B9、B10では、実施例A3と同様、接合層3と支持基板5との間が、接合界面となる。
【0059】
【表3】
【0060】
表3からわかるように、本発明の実施例B9、B10では、非常に高いQ値が得られている(Q値:2700または2650)。
なお、表3では、実施例A3と同様、中間層2の厚さ/接合層3の厚さを10としたが、実施例A2、A4と同様に、中間層2の厚さ/接合層3の厚さを5〜25とすることで、Q値を著しく増加させることができる。