(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1の蓄電池ユニット、前記第1のDC−DC変換器、前記第2の蓄電池ユニット、および前記第2のDC−DC変換器に異常が生じていない場合、前記第3のスイッチを遮断状態にする、
請求項1または2記載の鉄道車両。
前記制御部は、前記第1の蓄電池ユニットまたは前記第1のDC−DC変換器に異常が生じており、且つ、前記第2の蓄電池ユニットまたは前記第2のDC−DC変換器に異常が生じている場合、前記第1のAD変換部と前記第2のAD変換部とのうち少なくとも一方を、前記第1のDCリンクおよび前記第2のDCリンクの電圧を前記目標電圧に近づけるように動作させる、
請求項4記載の鉄道車両。
前記制御部は、前記第1の蓄電池ユニットまたは前記第1のDC−DC変換器に異常が生じており、且つ、前記第2の蓄電池ユニットまたは前記第2のDC−DC変換器に異常が生じている場合、前記第3のスイッチを遮断状態にする、
請求項4記載の鉄道車両。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の鉄道車両を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の鉄道車両1の概略図である。鉄道車両1は、例えば、架線から電力供給を受けずに、線路上を走行する車両である。鉄道車両1には、車輪80−1、80−2、80−3、および80−4の車軸に連結され、それぞれの車輪を駆動するモータ70A−1、70A−2、70B−1、および70B−2が搭載されている。また、鉄道車両1には、モータ70A−1、70A−2、70B−1、および70B−2に交流電力を供給する鉄道車両用電力供給システム10が搭載されている。以下、いずれのモータであるか区別しないときは、単にモータ70と称し、いずれの車輪であるか区別しないときは、単に車輪80と称する。モータ70は、例えば、永久磁石モータであるが、これに限らず、同期リラクタンスモータなどの誘導モータであっても構わない。鉄道車両用電力供給システム10の構成要素は、鉄道車両1の床下部分に搭載されてもよいし、車室内に搭載されてもよい。また、
図1に示したモータ70や車輪80の数または組み合わせは、あくまで一例であり、如何様に変更されてもよい。モータ70A−1と70A−2のうち一方または双方は、第1のモータの一例であり、モータ70B−1と70B−2のうち一方または双方は、第2のモータの一例である。
【0009】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態の鉄道車両1に搭載される鉄道車両用電力供給システム10の構成図である。第1の実施形態において、モータ70は永久磁石モータであるものとする。鉄道車両用電力供給システム10は、例えば、エンジン12と、発電機14と、第1のDCリンク20Aおよびこれに接続された機器と、第2のDCリンク20Bおよびこれに接続された機器と、第3のDCリンク40とを備える。なお、鉄道車両用電力供給システム10からエンジン12および発電機14を除いたものを、鉄道車両用電力変換装置と称してもよい。
【0010】
エンジン12は、燃料を燃焼させることで動力を出力する内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)である。エンジン12は、例えば、負荷トルクによらず所定回転数で運転するように制御される。発電機14は、エンジン12の出力する動力を用いて交流電力を発電する。発電機14は、例えば、三相交流電力を出力する。
【0011】
[第1のDCリンク側の構成]
第1のDCリンク20Aには、蓄電池ユニット22A、DC−DC変換器24A、第1のスイッチ26A、平滑コンデンサ28A、電圧センサ30A、AC−DC変換器(コンバータ)32A、DC−AC変換器(インバータ)34A−1および34A−2などの機器が接続されている。蓄電池ユニット22Aは第1の蓄電池ユニットの一例であり、DC−DC変換器24Aは第1のDC−DC変換器の一例であり、AC−DC変換器32Aは第1のAC−DC変換器の一例であり、DC−AC変換器34A−1および34A−2は第1のDC−AC変換器の一例である。
【0012】
蓄電池ユニット22Aは、リチウムイオン電池などの蓄電池と、充電回路、電圧センサ、電流センサ、温度計、およびこれらの検出値に基づいて充電率(SOC:State Of Charge)を計算するBMU(Battery Management Unit)などの機器とを含む。
【0013】
DC−DC変換器24Aは、例えば、DC−DCチョッパである。DC−DC変換器24Aは、蓄電池ユニット22A側と、DC−AC変換器34A−1および34A−2側との間で電圧変換を行う。DC−DC変換器24Aは、第1のDCリンク20Aの電圧が一定値に維持されるように動作する。
【0014】
平滑コンデンサ28Aは、第1のDCリンク20Aの電圧を平滑化する。電圧センサ30Aは、第1のDCリンク20Aの電圧を測定し、制御部50に出力する。
【0015】
AC−DC変換器32Aは、発電機14により発電された三相交流の電力を、直流に変換して第1のDCリンク20A側に出力する。
【0016】
DC−AC変換器34A−1は、例えば、内部に複数のスイッチング素子を備える。DC−AC変換器34A−1は、第1のDCリンク20Aを介して供給される直流を三相交流に変換し、モータ70A−1に供給する。DC−AC変換器34A−1とモータ70A−1の間には、接触器36A−1が設けられている。同様に、DC−AC変換器34A−2は、第1のDCリンク20Aを介して供給される直流を三相交流に変換し、モータ70A−2に供給する。DC−AC変換器34A−2とモータ70A−2の間には、接触器36A−2が設けられている。接触器36A−1および36A−2は、モータ70A−1および70A−2を駆動しない状態で車輪80−1および80−2が回転する場合、例えば鉄道車両1が他の車両によって牽引されるような場合、或いは鉄道車両1が退避走行を行って停止する場合などに、制御部50によって遮断状態に制御される。
【0017】
[第2のDCリンク側の構成]
第2のDCリンク20Bには、蓄電池ユニット22B、DC−DC変換器24B、第1のスイッチ26B、平滑コンデンサ28B、電圧センサ30B、AC−DC変換器(コンバータ)32B、DC−AC変換器(インバータ)34B−1および34B−2などの機器が接続されている。蓄電池ユニット22Bは第2の蓄電池ユニットの一例であり、DC−DC変換器24Bは第2のDC−DC変換器の一例であり、AC−DC変換器32Bは第2のAC−DC変換器の一例であり、DC−AC変換器34B−1および34B−2は第2のDC−AC変換器の一例である。
【0018】
蓄電池ユニット22Bは、リチウムイオン電池などの蓄電池と、充電回路、電圧センサ、電流センサ、温度計、およびこれらの検出値に基づいて充電率を計算するBMUなどの機器とを含む。
【0019】
DC−DC変換器24Bは、例えば、DC−DCチョッパである。DC−DC変換器24Bは、蓄電池ユニット22B側と、DC−AC変換器34B−1および34B−2側との間で電圧変換を行う。DC−DC変換器24Bは、第2のDCリンク20Bの電圧が一定値に維持されるように動作する。
【0020】
平滑コンデンサ28Bは、第2のDCリンク20Bの電圧を平滑化する。電圧センサ30Aは、第2のDCリンク20Bの電圧を測定し、制御部50に出力する。
【0021】
AC−DC変換器32Bは、発電機14により発電された三相交流の電力を、直流に変換して第2のDCリンク20B側に出力する。
【0022】
DC−AC変換器34B−1は、例えば、内部に複数のスイッチング素子を備える。DC−AC変換器34B−1は、第2のDCリンク20Bを介して供給される直流を三相交流に変換し、モータ70B−1に供給する。DC−AC変換器34B−1とモータ70B−1の間には、接触器36B−1が設けられている。同様に、DC−AC変換器34B−2は、第2のDCリンク20Bを介して供給される直流を三相交流に変換し、モータ70B−2に供給する。DC−AC変換器34B−2とモータ70B−2の間には、接触器36B−2が設けられている。接触器36B−1および36B−2は、モータ70B−1および70B−2を駆動しない状態で車輪80−3および80−4が回転する場合、例えば鉄道車両1が他の車両によって牽引されるような場合、或いは鉄道車両1が退避走行を行って停止する場合などに、制御部50によって遮断状態に制御される。
【0023】
[第3のDCリンク]
第3のDCリンク40は、第1のDCリンク20Aにおける第1のスイッチ26AとDC−AC変換器34A−1および34A−2との間の箇所P1、P2と、第2のDCリンク20Bにおける第2のスイッチ26BとDC−AC変換器34B−1および34B−2との間の箇所P3、P4とを接続する。第3のDCリンク40には、第3のスイッチ42が設けられている。
【0024】
第1のスイッチ26A、第2のスイッチ26B、第3のスイッチ42、並びに接触器36A−1、36A−2、36B−1、36B−2は、例えば、コンタクタ(電磁接触器)である。
【0025】
以下、いずれのDCリンク側の構成であるか区別しないときは、いずれのDCリンク側の構成であるかを示す符号「A」、「B」、「A−1」、「B−1」などを適宜省略して説明する。
【0026】
[制御部]
制御部50は、鉄道車両用電力供給システム10の全体を制御する。制御部50には、マスターコントローラ60からの指示信号や、速度計61からの速度測定値などの情報が入力される。
【0027】
図3は、制御部50の機能構成図である。制御部50は、例えば、エンジン出力演算部51と、AC−DC変換器制御部52と、DC−DC変換器制御部53と、DC−AC変換器制御部54と、異常判定部55と、スイッチ制御部56とを備える。これらの各制御部は、例えば、一以上のハードウェアプロセッサがプログラムを実行することにより実現される。また、これらの各制御部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御部50は、複数のハードウェアプロセッサ、LSI、ASIC、FPGAなどによって分散処理を行うものであってもよい。この場合、制御部50は、別体である複数の構成を備えてよく、その一部または全部が、制御対象の機器の近くに設置され、或いは同じ筐体内に収容されてもよい。
【0028】
エンジン出力演算部51は、例えば、エンジン12を、所定回転数Neで運転するように制御する。所定回転数Neは、所定の負荷トルクTeとの組み合わせでエンジン12をエネルギー効率良く運転できる回転数である。エンジン出力演算部51は、決定した回転数を、エンジン12の制御装置(不図示)に出力する。なお、エンジン出力演算部51は、エンジン12の出力と蓄電池ユニット22Aおよび22Bの出力の和が、マスターコントローラ60からの指示信号と速度計61からの速度測定値に基づいて決定される要求パワーになるように制御する。そして、エンジン出力演算部51は、蓄電池ユニット22Aまたは22Bにおいて、SOCや温度などに起因する充放電制限が生じた場合、その制限を満たすように所定回転数Neを上昇または下降させてよい。
【0029】
AC−DC変換器制御部52は、AC−DC変換器32に、例えば、以下に説明するいずれかの制御を実行させる。
(1)トルク制御
この場合、AC−DC変換器制御部52は、エンジン12に所定の負荷トルクをかけるようにAC−DC変換器32を制御する。所定の負荷トルクとは、エンジン12をエネルギー効率の良い運転ポイントで運転させるためのトルクである。
図4は、所定の負荷トルクを導出するためのマップの一例を示す図である。図示するように、このマップは、エンジン12の回転数Neに対して所定の負荷トルクTeが対応付けられたマップである。AC−DC変換器制御部52は、制御時点のエンジン12の回転数Neを取得し、マップを参照することで所定の負荷トルクTeを導出する。なお、マップを参照することで所定の負荷トルクTeを導出する処理は、エンジン出力演算部51において行われてもよい。
(2)DCリンク電圧制御
この場合、AC−DC変換器制御部52は、第1のDCリンク20Aの電圧を一定に維持するようにAC−DC変換器32Aに指示し、且つ/または、第2のDCリンク20Bの電圧を一定に維持するようにAC−DC変換器32Bに指示する。DCリンク電圧制御の内容は、例えば、簡易的に式(1)で表される。式中、Kp1は、比例項のゲインであり、V#は、第1のDCリンク20Aまたは第2のDCリンク20Bの目標電圧であり、Vは、電圧センサ30Aまたは30Bにより測定される電圧であり、Ki1は、積分項のゲインである。すなわち、第2のモードにおける制御は、電圧Vを目標電圧V#に近づけるフィードバック制御(PI制御)である。なお、AC−DC変換器制御部52は、PI制御に代えて、PID制御その他の態様のフィードバック制御を行ってもよい。
ΔTe=Kp1(V#−V)+Ki1∫(V#−V)dt …(1)
【0030】
DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24Aおよび24Bを制御する。DC−DC変換器制御部53は、第1のDCリンク20Aの電圧を一定に維持するようにDC−DC変換器24Aに指示すると共に、第2のDCリンク20Bの電圧を一定に維持するようにDC−DC変換器24Bに指示する。以下、DC−DC変換器制御部53による制御を、AC−DC変換器制御部52による制御と同様に「DCリンク電圧制御」と称する場合がある。DC−DC変換器制御部53によるDCリンク電圧制御の内容は、例えば、簡易的に式(2)で表される。式中、Dは各DC−DC変換器24に与えるデューティ比であり、Kp2は、比例項のゲインであり、Ki2は、積分項のゲインである、すなわち、DC−DC変換器制御部53による制御は、電圧Vを目標電圧V#に近づけるフィードバック制御(PI制御)である。なお、DC−DC変換器制御部53は、PI制御に代えて、PID制御その他の態様のフィードバック制御を行ってもよい。
ΔD=Kp2(V#−V)+Ki2∫(V#−V)dt …(2)
【0031】
DC−AC変換器制御部54は、各DC−AC変換器34を制御する。DC−AC変換器制御部54は、例えば、マスターコントローラ60から入力されたノッチ数と速度計61から入力された鉄道車両1の速度とに基づいて、各モータ70が出力すべき目標トルクを決定する。そして、DC−AC変換器制御部54は、決定した目標トルクに基づいて、DC−AC変換器34に与える制御情報を決定する。各DC−AC変換器34は、入力された制御情報に基づいてモータ70に三相交流を供給する。これによってモータ70が駆動力を出力し、鉄道車両1が走行することができる。なお、上記の制御情報を決定する際には、例えば、三相交流のうち少なくとも二相の電流値に基づくベクトル制御演算、V/F制御演算などが行われるが、これについての詳細な説明は省略する。
【0032】
異常判定部55は、鉄道車両用電力供給システム10の監視対象機器に異常が生じているか否かを判定する。監視対象機器は、少なくとも、蓄電池ユニット22A、DC−DC変換器24A、蓄電池ユニット22B、およびDC−DC変換器24Bを含む。異常判定部55は、例えば、監視対象機器に対して送信した信号への応答の有無および内容、或いは、定期的に送信される生存確認信号、出力される制御信号などに基づいて、監視対象機器に異常が生じているか否かを判定する。また、異常判定部55は、鉄道車両用電力供給システム10の各部における電圧または電流に基づいて、監視対象機器に異常が生じているか否かを判定してもよい。異常判定部55は、例えば、監視対象機器に対して送信した信号への応答が無い場合に、監視対象機器に異常が生じたと判定する。また、異常判定部55は、監視対象機器から定期的に送信される生存確認信号が途絶えた場合に、監視対象機器に異常が生じたと判定してもよい。また、異常判定部55は、監視対象機器から出力される制御信号が異常値を示す場合に、監視対象機器に異常が生じたと判定してもよい。また、異常判定部55は、鉄道車両用電力供給システム10の各部における電圧または電流の示す値が異常値である場合に、監視対象機器に異常が生じたと判定してもよい。
【0033】
スイッチ制御部56は、異常判定部55による判定結果に基づく監視対象機器の状態に基づいて、第1のスイッチ26A、第2のスイッチ26B、および第3のスイッチ42のそれぞれを、導通状態または遮断状態に制御する。
【0034】
[状態ごとの制御]
図5は、異常判定部55による判定結果に基づく状態ごとの、スイッチ制御および変換器制御の内容を示す図である。異常判定部55により、蓄電池ユニット22A、DC−DC変換器24A、蓄電池ユニット22B、DC−DC変換器24Bのいずれにも異常が生じていないと判定された場合(通常状態である場合)、スイッチ制御部56は、第1のスイッチ26Aおよび第2のスイッチ26Bを導通状態とし、第3のスイッチ42を遮断状態とする。なお、通常状態において第3のスイッチ42を導通状態としてもよいが、この場合、第1のDCリンク20Aと第2のDCリンク20Bの間で電流アンバランスや電圧の乱れなどが生じることが想定される。これを防止するために、各変換器の出力する電流を均等にするフィードバック制御を追加したり、DC−DC変換器24Aおよび24Bから流出する方向のみ電流を許容するダイオードを追加するなどが考えられるが、制御が複雑になったり、回生ができなくなるといった不都合が生じる。このため、通常状態において第3のスイッチ42を遮断状態とする方が好ましい。
【0035】
また、通常状態である場合、AC−DC変換器制御部52は、AC−DC変換器32Aおよび32Bにトルク制御を実行させ、DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24Aおよび24BにDCリンク電圧制御を実行させる。
【0036】
図6は、通常状態における電力供給経路を示す図である。なお、
図6から9において、一部の構成要素を省略して示している。また、図中、電力供給経路を太線で示している。通常状態において、第1のDCリンク20Aと第2のDCリンク20Bの間は遮断されている。また、通常状態において、第1のDCリンク20Aに対して、発電機14およびAC−DC変換器32Aと、蓄電池ユニット22AおよびDC−DC変換器24Aとから電力が供給可能である。このため、AC−DC変換器32Aに対してはトルク制御が行われ、DC−DC変換器24Aに対してはDCリンク電圧制御が行われる。
【0037】
同様に、通常状態においては、第2のDCリンク20Bに対して、発電機14およびAC−DC変換器32Bと、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bとから電力が供給可能である。このため、AC−DC変換器32Bに対してはトルク制御が行われ、DC−DC変換器24Bに対してはDCリンク電圧制御が行われる。
【0038】
図5に戻り、異常判定部55により、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bに異常が生じていないと判定された場合、スイッチ制御部56は、第1のスイッチ26Aを遮断状態とし、第2のスイッチ26Bおよび第3のスイッチ42を導通状態とする。
【0039】
また、異常判定部55により、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bに異常が生じていないと判定された場合、AC−DC変換器制御部52は、AC−DC変換器32Aおよび32Bにトルク制御を実行させ、DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24Aを停止させ、DC−DC変換器24BにDCリンク電圧制御を実行させる。
【0040】
図7は、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bに異常が生じていない場合における電力供給経路を示す図である。この場合、第1のDCリンク20Aと第2のDCリンク20Bが導通しており、それらに対して、発電機14およびAC−DC変換器32Aと、発電機14およびAC−DC変換器32Bと、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bとから電力が供給可能である。このため、AC−DC変換器32AおよびAC−DC変換器32Bに対してはトルク制御が行われ、DC−DC変換器24Bに対してはDCリンク電圧制御が行われる。
【0041】
図5に戻り、異常判定部55により、蓄電池ユニット22AおよびDC−DC変換器24Aに異常が生じておらず、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じていると判定された場合、スイッチ制御部56は、第1のスイッチ26Aを導通状態、第2のスイッチ26Bを遮断状態、第3のスイッチ42を導通状態とする。
【0042】
また、異常判定部55により、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じておらず、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bに異常が生じていると判定された場合、AC−DC変換器制御部52は、AC−DC変換器32Aおよび32Bにトルク制御を実行させ、DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24AにDCリンク電圧制御を実行させ、DC−DC変換器24Bを停止させる。
【0043】
図8は、蓄電池ユニット22AおよびDC−DC変換器24Aに異常が生じておらず、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じている場合における電力供給経路を示す図である。この場合、第1のDCリンク20Aと第2のDCリンク20Bが導通しており、それらに対して、発電機14およびAC−DC変換器32Aと、発電機14およびAC−DC変換器32Bと、蓄電池ユニット22AおよびDC−DC変換器24Aとから電力が供給可能である。このため、AC−DC変換器32AおよびAC−DC変換器32Bに対してはトルク制御が行われ、DC−DC変換器24Aに対してはDCリンク電圧制御が行われる。
【0044】
図5に戻り、異常判定部55により、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、且つ、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じていると判定された場合、スイッチ制御部56は、第1のスイッチ26A、第2のスイッチ26B、および第3のスイッチ42を遮断状態とする。なお、この場合も通常時と同様、第3のスイッチ42を導通状態としてもよいのであるが、電流アンバランスや電圧の乱れを抑制するための構成・機能を追加することのデメリットが存在するため、第3のスイッチ42を遮断状態とする方が好ましい。
【0045】
また、異常判定部55により、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、且つ、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じていると判定された場合、AC−DC変換器制御部52は、AC−DC変換器32Aおよび32BにDCリンク電圧制御を実行させ、DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24Aおよび24Bを停止させる。
【0046】
図9は、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、且つ、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じている場合における電力供給経路を示す図である。この場合、例えば、第1のDCリンク20Aと第2のDCリンク20Bの間は遮断されている。また、この場合、第1のDCリンク20Aに対して、発電機14およびAC−DC変換器32Aから電力が供給可能であり、蓄電池ユニット22AおよびDC−DC変換器24Aから電力が供給可能でない。従って、AC−DC変換器32Aに対してDCリンク電圧制御が行われる。第1のDCリンク20Aの電圧が大きく変動するようだと、モータ70A−1および70A−2を適切に駆動することができない場合があるからである。第2のDCリンク20Bに対して、発電機14およびAC−DC変換器32Bから電力が供給可能であり、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bから電力が供給可能でない。従って、AC−DC変換器32Bに対してDCリンク電圧制御が行われる。
【0047】
[まとめ]
図2のような、エンジン12およびAC−DC変換器32と、蓄電池ユニット22およびDC−DC変換器24とを並列に設けた構成を採用することで、エンジン12やAC−DC変換器32の定格を下げ、装置の小型化と低コスト化を進めることができる。その場合、エンジン12とAC−DC変換器32、或いは蓄電池ユニット22とDC−DC変換器24のうち一方だけでは、目標とする電力を出力することができないが、両方を合わせて目標とする電力を出力するように構成されることが想定される。
【0048】
仮に、第3のDCリンク40を備えない構成を考えた場合、上記のように電力を出力することは可能であるが、電圧を目標電圧に近づける機能が停止するため、AC−DC変換器32はDCリンク電圧制御を行わざるを得ない。これによって、エンジン12を、エネルギー効率の良い運転ポイントで運転できなくなる場合がある。
【0049】
また、第3のDCリンク40および第3のスイッチ42を備えない構成では、
図1に示すようなモータ70の配置である場合、蓄電池ユニット22A、DC−DC変換器24A、蓄電池ユニット22B、およびDC−DC変換器24Bのうちいずれか一つに異常が生じた場合、モータ70A−1および70A−2の組と、モータ70B−1および70B−2の組とで出力する駆動力が異なる場合がある。この結果、軸重アンバランスが生じ、振動が増大してしまう、また、制御部50による制御の難易度が上がってしまう。
【0050】
更に、モータ70が永久磁石モータである場合、DC−AC変換器34から電力供給されない状態で車輪80が回転すると、モータ70が発電機として動作し、逆起電圧が発生する。接触器36を設けることで逆起電圧のDC−AC変換器34側への流入を避けることは可能である。しかしながら、永久磁石モータにおいて、回転子に設けられた永久磁石は近接する固定子ティースにエアギャップを介し引き寄せられ、回転に対して抵抗する力を発生させる。このため、牽引による移動が困難になる場合がある。
【0051】
これに対し、実施形態の鉄道車両1では、第3のDCリンク40および第3のスイッチ42を備え、蓄電池ユニット22A、DC−DC変換器24A、蓄電池ユニット22B、およびDC−DC変換器24Bのうちいずれか一つに異常が生じた場合、第3のスイッチ42を導通状態に制御して第1のDCリンク20Aと第2のDCリンク20Bを導通させるため、モータ70A−1および70A−2の組と、モータ70B−1および70B−2の組とで出力する駆動力を同じにすることができる。
【0052】
また、この場合において、蓄電池ユニット22AおよびDC−DC変換器24Aの組と、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bの組のうち一つが正常に動作していれば、その組を用いてDCリンク電圧制御を行うことができるため、AC−DC変換器32に対してトルク制御を行うことができる。このため、エンジン12を、継続的にエネルギー効率の良い運転ポイントで運転することができる。
【0053】
また、実施形態の鉄道車両1では、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、且つ、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じている場合、AC−DC変換器32Aおよび32Bの双方に対してDCリンク電圧制御を行うことで、エンジン12のエネルギー効率は悪化する可能性があるものの、退避場所まで移動するといった退避行動をとることができる。
【0054】
また、鉄道車両1は、モータ70に電力供給されない状態でモータ70が引き回されるという事態が生じる蓋然性を低減することができる。
【0055】
以上説明した第1の実施形態の鉄道車両1によれば、電力系統の異常発生時において、より継続的に走行することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態において、モータ70は、同期リラクタンスモータなどの誘導モータである。
図10は、第2の実施形態の鉄道車両に搭載される鉄道車両用電力供給システム10Aの構成図である。誘導モータの場合、複数のモータ70を一つのDC−AC変換器34で駆動することができる。また、接触器36を省略することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1または第2の実施形態の構成から、エンジン12、発電機14、およびAC−DC変換器32を省略した構成を有する。
図11は、第3の実施形態の鉄道車両に搭載される鉄道車両用電力供給システム10Bの構成図である。鉄道車両用電力供給システム10Bは、プラグ90を介して外部給電装置から電力供給を受けることができる構成であってもよい。
【0058】
図12は、第3の実施形態に係る異常判定部55による判定結果に基づく状態ごとの、スイッチ制御および変換器制御の内容を示す図である。通常状態である場合、スイッチ制御部56は、第1のスイッチ26Aおよび第2のスイッチ26Bを導通状態とし、第3のスイッチ42を遮断状態とする。また、通常状態である場合、DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24Aおよび24BにDCリンク電圧制御を実行させる。
【0059】
蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bに異常が生じていない場合、スイッチ制御部56は、第1のスイッチ26Aを遮断状態とし、第2のスイッチ26Bおよび第3のスイッチ42を導通状態とする。
【0060】
また、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bに異常が生じていない場合、DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24Aを停止させ、DC−DC変換器24BにDCリンク電圧制御を実行させる。
【0061】
蓄電池ユニット22AおよびDC−DC変換器24Aに異常が生じておらず、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じている場合、スイッチ制御部56は、第1のスイッチ26Aを導通状態、第2のスイッチ26Bを遮断状態、第3のスイッチ42を導通状態とする。
【0062】
また、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じておらず、蓄電池ユニット22BおよびDC−DC変換器24Bに異常が生じている場合、DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24AにDCリンク電圧制御を実行させ、DC−DC変換器24Bを停止させる。
【0063】
蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、且つ、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じている場合、スイッチ制御部56は、第1のスイッチ26A、第2のスイッチ26B、および第3のスイッチ42を遮断状態とする。
【0064】
また、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じており、且つ、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じている場合、DC−DC変換器制御部53は、DC−DC変換器24Aおよび24Bを停止させる。
【0065】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、第1ないし第3の実施形態の構成に対し、DCリンクに接続された補機駆動用の電源装置が追加されたものである。
図13は、第4の実施形態に係る鉄道車両に搭載される鉄道車両用電力供給システム10Cの構成図である。図示するように、第1のDCリンク20Aには電源装置91Aが、第2のDCリンク20Bには電源装置91Bが、それぞれ接続される。電源装置91Aは、例えば、第1のDCリンク20Aの電圧を降圧し、鉄道車両に搭載された空調装置や照明などの補機に電力を供給する。電源装置91Bは、例えば、第2のDCリンク20Bの電圧を降圧し、同じく補機に電力を供給する。なお、第1のDCリンク20Aと第2のDCリンク20Bのいずれかにのみ電源装置を接続してもよい。
【0066】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、蓄電池ユニット22A、DC−DC変換器24A、蓄電池ユニット22B、およびDC−DC変換器24Bに異常が生じていない場合、第1のスイッチ26Aおよび第2のスイッチ26Bを導通状態にし、蓄電池ユニット22AまたはDC−DC変換器24Aに異常が生じている場合、第1のスイッチ26Aを遮断状態にすると共に、第2のスイッチ26Bおよび第3のスイッチ42を導通状態にし、蓄電池ユニット22BまたはDC−DC変換器24Bに異常が生じている場合、第2のスイッチ26Bを遮断状態にすると共に、第1のスイッチ26Aおよび第3のスイッチ42を導通状態にすることで、電力系統の異常発生時において、より継続的に走行することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。