特許第6752386号(P6752386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6752386
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1226 20160101AFI20200831BHJP
   C25D 5/50 20060101ALI20200831BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20200831BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20200831BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20200831BHJP
【FI】
   H01M8/1226
   C25D5/50
   C25D7/00 G
   C25D5/02 E
   H01M8/12 101
   H01M8/12 102A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-37731(P2020-37731)
(22)【出願日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2019-41696(P2019-41696)
(32)【優先日】2019年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕己
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−66616(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/181922(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/181926(WO,A1)
【文献】 特開2016−195029(JP,A)
【文献】 特開2016−51699(JP,A)
【文献】 特開2018−37299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金部材と、
前記合金部材上に配置される素子部と、
を備え、
前記素子部は、
前記合金部材によって支持される第1電極層と、
第2電極層と、
前記第1電極層と第2電極層との間に配置される電解質層と、
を有し、
前記合金部材は、
クロムを含有する合金材料によって構成される基材と、
前記基材の少なくとも一部を覆う酸化クロム膜と、
を有し、
前記酸化クロム膜は、前記基材の第1主面上に形成される第1部分を含み、
前記第1部分は、前記素子部のうち少なくとも前記第1電極層と前記基材との間に介挿される介挿部と、前記素子部と前記基材との間に介挿されない非介挿部とを含み、
前記介挿部の厚みは、前記非介挿部の厚みより薄い、
電気化学セル。
【請求項2】
前記介挿部は、前記素子部のうち前記第1電極層及び前記電解質層それぞれと前記基材との間に介挿される、
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記合金部材は、前記酸化クロム膜の表面の少なくとも一部を覆う被覆膜を有する、
請求項1又は2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記酸化クロム膜は、前記基材の第2主面上に形成される第2部分を含み、
前記第2部分の厚みは、前記非介挿部の厚みより薄い、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記非介挿部の厚みに対する前記介挿部の厚みの比は、0.1以上0.93以下である、
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合金部材と、合金部材上に配置される素子部とを備える電気化学セルが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の合金部材は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される基材と、基材の表面を覆う酸化クロム膜とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/181926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化クロム膜は、基材からCrが揮発することを抑制する機能だけでなく、合金部材の強度を向上させる機能も有している。そのため、Crの揮発抑制と合金部材の強度向上のためには、酸化クロム膜を厚くすることが好ましいが、酸化クロム膜を厚くすると、合金部材と素子部との電気的接続性が低くなってしまう。
【0005】
本発明は、合金部材と素子部との電気的接続性を向上可能な電気化学セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気化学セルは、合金部材と、合金部材上に配置される素子部とを備える。素子部は、合金部材によって支持される第1電極層と、第2電極層と、第1電極層と第2電極層との間に配置される電解質層とを有する。合金部材は、クロムを含有する合金材料によって構成される基材と、基材の少なくとも一部を覆う酸化クロム膜とを有する。酸化クロム膜は、基材の第1主面上に形成される第1部分を含む。第1部分は、素子部のうち少なくとも第1電極層と基材との間に介挿される介挿部と、素子部と基材との間に介挿されない非介挿部とを含む。介挿部の厚みは、非介挿部の厚みより薄い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、合金部材と素子部との電気的接続性を向上可能な電気化学セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る燃料電池セルの構成を示す断面図
図2図1の領域Xaの拡大図
図3】他の実施形態に係る燃料電池セルの構成を示す断面図
図4図3の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(燃料電池セル1の構成)
燃料電池セル1は、本発明に係る「電気化学セル」の一例である。「電気化学セル」とは、燃料電池セルのほか、水蒸気から水素と酸素を生成するための電解セルをも含む概念である。以下の説明では、燃料電池セルを「セル」と略称する。
【0010】
図1は、実施形態に係るセル1の構成を示す断面図である。セル1は、流路部材3、合金部材4、第1電極層5、中間層6、電解質層7、反応防止層8、及び第2電極層9を有する。本実施形態において、第1電極層5、中間層6、電解質層7、反応防止層8、及び第2電極層9は、合金部材4の表面4S上に配置される「素子部10」を構成する。
【0011】
[流路部材3]
流路部材3は、U字状に形成される。流路部材3は、合金部材4の裏面4Tに接合される。流路部材3と合金部材4との間には、流路3Sが形成される。流路3Sは、図示しないマニホールドに繋がる。本実施形態では、マニホールドから流路3Sに燃料ガス(例えば、水素ガス)が供給される。
【0012】
流路部材3は、例えば、合金材料によって構成することができる。流路部材3は、合金部材4と同様の構成を有していてもよい。
【0013】
[合金部材4]
合金部材4は、第1電極層5、中間層6、電解質層7、反応防止層8、及び第2電極層9を支持する支持体である。本実施形態において、合金部材4は、板状に形成されているが、これに限られない。合金部材4は、例えば、筒状、或いは、箱状など他の形状であってもよい。
【0014】
合金部材4のうち第1電極層5に接合される領域には、複数の貫通孔4pが形成されている。流路3Sを流れる燃料ガスは、各貫通孔4pを介して、第1電極層5に供給される。各貫通孔4pは、機械加工(例えば、パンチング加工)、レーザ加工、或いは、化学加工(例えば、エッチング加工)などによって形成することができる。或いは、合金部材4は、ガス透過性を有する多孔質金属によって構成されていてもよい。この場合、多孔質金属に形成された孔が貫通孔4pとして機能するため、貫通孔4pを形成するための加工を施す必要がない。
【0015】
合金部材4は、板状に形成される。合金部材4は、平板状であってもよいし、曲板状であってもよい。合金部材4は、セル1の強度を保つことができればよく、その厚みは特に制限されないが、例えば0.1mm〜2.0mmとすることができる。合金部材4の詳細な構成については後述する。
【0016】
[第1電極層5]
第1電極層5は、合金部材4によって支持される。第1電極層5は、電解質層7の合金部材4側に配置される。第1電極層5は、合金部材4の表面4S上に設けられる。第1電極層5は、合金部材4のうち複数の貫通孔4pが設けられた領域を覆うように設けられる。図1において、第1電極層5は、合金部材4の表面上に配置されており、各貫通孔4pに入り込んでいないが、第1電極層5の少なくとも一部は、各貫通孔4pに入り込んでいてもよい。
【0017】
第1電極層5は、多孔質であることが好ましい。第1電極層5の気孔率は特に制限されないが、例えば20%〜70%とすることができる。第1電極層5の厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0018】
本実施形態において、第1電極層5には燃料ガス(例えば、水素ガス)が供給され、第1電極層5は、アノード(燃料極)として機能する。第1電極層5は、NiO−GDC(ガドリニウムドープセリア)、Ni−GDC、NiO−YSZ(イットリア安定化ジルコニア))、Ni−YSZ、CuO−CeO、Cu−CeOなどの複合材料によって構成することができる。
【0019】
第1電極層5の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法(溶射法、エアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法など)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することができる。
【0020】
[中間層6]
中間層6は、第1電極層5上に配置される。中間層6は、第1電極層5と電解質層7との間に介挿される。中間層6の厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0021】
中間層6は、酸化物イオン(酸素イオン)伝導性を有することが好ましい。中間層6は、電子伝導性を有することがより好ましい。中間層6は、YSZ、GDC、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)などによって構成することができる。中間層6の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0022】
[電解質層7]
電解質層7は、第1電極層5と第2電極層9との間に配置される。本実施形態では、セル1が中間層6及び反応防止層8を有しているため、電解質層7は、中間層6と反応防止層8との間に介挿されている。
【0023】
本実施形態において、電解質層7は、第1電極層5全体を覆うように形成されており、電解質層7の外縁は、合金部材4に接合されている。これにより、第1電極層5に供給される燃料ガスと第2電極層9に供給される酸化剤ガスとの混合を抑制できるため、合金部材4と電解質層7との間を別途封止する必要がない。
【0024】
電解質層7は、酸化物イオン伝導性を有する。電解質層7は、酸化剤ガスと燃料ガスとの混合を抑制できる程度のガスバリア性を有する。電解質層7は、複層構造であってもよいが、少なくとも1つの層が緻密層であることが好ましい。緻密層の気孔率は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。電解質層7の厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜10μmとすることができる。
【0025】
電解質層7は、YSZ、GDC、SSZ、SDC、LSGMなどによって構成することができる。電解質層7の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0026】
[反応防止層8]
反応防止層8は、電解質層7上に配置される。反応防止層8は、電解質層7と第2電極層9との間に介挿される。反応防止層8の厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。反応防止層8は、第2電極層9の構成材料と電解質層7の構成材料とが反応して高抵抗層が形成されることを抑制する。
【0027】
反応防止層8は、GDC、SDCなどのセリア系材料によって構成することができる。反応防止層8の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0028】
[第2電極層9]
第2電極層9は、電解質層7を基準として、第1電極層5の反対側に配置される。本実施形態では、セル1が反応防止層8を有しているため、第2電極層9は、反応防止層8上に配置される。
【0029】
第2電極層9は、多孔質であることが好ましい。第2電極層9の気孔率は特に制限されないが、例えば20%〜70%とすることができる。第2電極層9の厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0030】
本実施形態において、第2電極層9には酸化剤ガス(例えば、空気)が供給され、第2電極層9は、カソード(空気極)として機能する。第2電極層9は、LSCF、LSF、LSC、LNF、LSMなどによって構成することができる。特に、第2電極層9は、La、Sr、Sm、Mn、CoおよびFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含んでいることが好ましい。
【0031】
第2電極層9の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。第2電極層9の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0032】
[セル1の動作]
まず、流路3Sから各貫通孔4pを介して第1電極層5に燃料ガスを供給し、かつ、第2電極層9に酸化剤ガスを供給しながら、セル1を作動温度(例えば、600℃〜850℃)まで加熱する。すると、第2電極層9においてO(酸素)がe(電子)と反応してO2−(酸素イオン)が生成される。生成されたO2−は、電解質層7を通って第1電極層5に移動する。第1電極層5に移動したO2−は、燃料ガスに含まれるH(水素)と反応して、HO(水)とeとが生成される。このような反応によって、第1電極層5と第2電極層9との間に起電力が発生する。
【0033】
(合金部材4の詳細な構成)
図2は、図1に示した領域Xaを拡大して示す断面図である。
【0034】
図2に示すように、合金部材4は、基材41及び酸化クロム膜42を有する。
【0035】
基材41は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。基材41におけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。
【0036】
基材41は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。基材41におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。基材41におけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。基材41は、TiをTiO(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl(アルミナ)として含有していてもよい。
【0037】
基材41は、第1主面Sa、第2主面Sb、外周面Sc、及び各貫通孔4pの内周面Sdを有する。第1主面Sa、第2主面Sb、外周面Sc、及び内周面Sdは、基材41の表面である。第1主面Sa、第2主面Sb、及び外周面Scは、基材41の外表面であり、内周面Sdは、基材41の内表面である。
【0038】
基材41の第1主面Saは、合金部材4の表面4S側に設けられる。基材41の第2主面Sbは、合金部材4の裏面4T側に設けられる。基材41の第2主面Sbは、基材41の第1主面Saの反対側に設けられる。外周面Scは、第1主面Sa及び第2主面Sbそれぞれの外縁に連なる。外周面Scは、環状に形成される。各内周面Sdは、第1主面Sa及び第2主面Sbそれぞれに連なる。各内周面Sdは、筒状に形成される。
【0039】
酸化クロム膜42は、基材41上に形成される。酸化クロム膜42は、基材41の少なくとも一部を覆う。酸化クロム膜42は、基材41の少なくとも一部を覆っていればよいが、基材41全体を覆っていてもよい。
【0040】
酸化クロム膜42は、酸化クロムを主成分として含有する。本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含む」とは、組成物X全体のうち、物質Yが70重量%以上を占めることを意味する。
【0041】
酸化クロム膜42は、基材41からCrが揮発することを抑制する機能と、合金部材4の強度を向上させる機能とを有する。
【0042】
本実施形態において、酸化クロム膜42は、第1部分42a、第2部分42b、第3部分42c、及び複数の第4部分42dを有する。第1部分42aは、基材41の第1主面Sa上に形成される。第2部分42bは、基材41の第2主面Sb上に形成される。第3部分42cは、基材41の外周面Sc上に形成される。各第4部分42dは、基材41の各内周面Sd上に形成される。第1乃至第4部分42a〜42dは、互いに一体的に連なっていてもよい。
【0043】
酸化クロム膜42の第1部分42aは、介挿部a1と、非介挿部a2とを含む。
【0044】
介挿部a1は、素子部10と基材41との間に介挿される。介挿部a1は、素子部10のうち少なくとも第1電極層5によって被覆される。介挿部a1は、素子部10のうち少なくとも第1電極層5と電気的かつ機械的に接続される。本実施形態において、介挿部a1は、素子部10のうち第1電極層5、中間層6、及び電解質層7それぞれと基材41との間に介挿されているが、少なくとも第1電極層5と基材41との間に介挿されていればよい。
【0045】
非介挿部a2は、基材41と素子部10との間に介挿されない。非介挿部a2は、素子部10から露出している。ただし、本実施形態において、非介挿部a2は、介挿部a1との段差(内側面)において素子部10の電解質層7と接触している。
【0046】
介挿部a1の厚みTHa1は、非介挿部a2の厚みTHa2より薄い。このように、介挿部a1の厚みTHa1を薄くすることによって、素子部10(特に、第1電極層5)と合金部材4との電気的接続性を向上させることができる。また、非介挿部a2の厚みTHa2を厚くすることができるため、Crの揮発抑制と合金部材4の強度確保とを両立させることができる。
【0047】
介挿部a1の厚みTHa1とは、FE−SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)を用いて、合金部材4の表面4Sに垂直な断面を観察した場合において、酸化クロム膜42の第1部分42aのうち第1電極層5と基材41との間に介挿された部分の最大厚みを測定することによって得られる。
【0048】
介挿部a1の厚みTHa1は特に制限されないが、0.1μm以上7μm以下が好ましい。これにより、合金部材4のうち素子部10と接する部分の可撓性を確保できるため、熱応力によって合金部材4と素子部10との間に剥離が生じることを抑制できる。介挿部a1の厚みTHa1は、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。
【0049】
非介挿部a2の厚みTHa2は、FE−SEMを用いて、合金部材4の表面4Sに垂直な断面を観察した場合において、酸化クロム膜42の第1部分42aのうち素子部10と基材41との間に介挿されていない部分の最大厚みを測定することによって得られる。
【0050】
非介挿部a2の厚みTHa2は特に制限されないが、0.2μm以上10μm以下が好ましい。これにより、合金部材4のうち外周部分の強度を確保できるため、合金部材4が変形することによって合金部材4と素子部10との間に剥離が生じることを抑制できる。非介挿部a2の厚みTHa2は、0.2μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.4μm以上が特に好ましい。
【0051】
ここで、非介挿部a2の厚みTHa2に対する介挿部a1の厚みTHa1の比(THa1/THa2)は、0.1以上0.93以下であることが好ましい。これにより、合金部材4の可撓性と強度とのバランスを良好にすることができるため、合金部材4と素子部10との間に剥離が生じることを効率的に抑制できる。
【0052】
第2部分42bの厚みTHbは、非介挿部a2の厚みTHa2より厚くてもよいが、非介挿部a2の厚みTHa2より薄いことが好ましい。これにより、合金部材4に適度な強度を付与して、合金部材4の応力緩和機能を向上させることができる。具体的には、まず、第2部分42bを設けることによって、合金部材4が過度に変形しやすくなることを抑えることができる。従って、合金部材4の貫通孔4pが閉塞したり、或いは、セル1に接続される他の部材(例えば、図示しないセパレーターや集電部材など)とセル1との接合箇所に剥離などが生じたりすることを抑制できる。また、第2部分42bの厚みTHbを非介挿部a2の厚みTHa2より薄くすることによって、合金部材4全体が過度に硬くなることを抑えて変形性を確保できる。従って、昇降温時に素子部10の内部に熱応力が発生することを抑制できるため、素子部10に剥離やクラックが生じることを抑制できる。第2部分42bの厚みTHbは特に制限されないが、例えば、0.1μm以上7μm以下とすることができる。第2部分42bの厚みTHbは、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。
【0053】
第3部分42cの厚みTHcは、非介挿部a2の厚みTHa2より厚くてもよいが、非介挿部a2の厚みTHa2より薄いことが好ましい。これにより、合金部材4に適度な強度を付与して、合金部材4の応力緩和機能を向上させることができる。第3部分42cの厚みTHcは特に制限されないが、例えば、0.1μm以上7μm以下とすることができる。第3部分42cの厚みTHcは、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。
【0054】
第4部分42dの厚みTHdは、非介挿部a2の厚みTHa2より厚くてもよいが、非介挿部a2の厚みTHa2より薄いことが好ましい。これにより、合金部材4に適度な強度を付与して、合金部材4の応力緩和機能を向上させることができる。第4部分42dの厚みTHdは特に制限されないが、例えば、0.1μm以上7μm以下とすることができる。第4部分42dの厚みTHdは、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。
【0055】
(合金部材4の作製方法)
合金部材4を作製するには、クロムめっき法、PVD法、酸化クロムペースト塗布などの各種方法を用いることができる。
【0056】
例えば、クロムめっき法を用いた合金部材4の作製方法は、以下の通りである。
【0057】
まず、基材41の表面のうち非介挿部a2を形成する領域以外の領域(すなわち、第1主面Saのうち介挿部a1を形成する領域、第2主面Sb、外周面Sc、及び内周面Sd)をマスキングする。
【0058】
次に、基材41の表面のうち非介挿部a2を形成する領域にクロムめっき処理を行うことによって、非介挿部a2を形成する領域にクロムめっき膜を形成する。
【0059】
次に、基材41の表面に施したマスキングを除去する。
【0060】
次に、基材41の表面全体にクロムめっき処理を行うことによって、基材41の表面のうち非介挿部a2を形成する領域以外の領域にクロムめっき膜を形成するとともに、非介挿部a2を形成する領域に形成したクロムめっき膜を厚膜化する。
【0061】
次に、クロムめっき膜が形成された基材41を大気雰囲気で熱処理(例えば、550℃〜850℃、3時間〜100時間)することによって、酸化クロム膜42によって被覆された基材41が完成する。
【0062】
(他の実施形態)
本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0063】
上記実施形態において、合金部材4は、基材41及び酸化クロム膜42を有することとしたが、酸化クロム膜42上に形成された被覆膜を有していてもよい。被覆膜を構成する材料としては、セラミックス材料及び金属材料などを用いることができる。セラミックス材料としては、例えば、LaおよびSrを含有するペロブスカイト形複合酸化物、Mn,Co,Ni,Fe,Cu等の遷移金属から構成されるスピネル型複合酸化物、ガラス材料などを用いることができる。金属材料としては、Ni、Co、Fe、Cuなどを用いることができる。なお、合金部材4の表面のうち流路部材3及び第1電極層5それぞれが接続されない領域には導電性が必要とされないため、当該領域は、絶縁性材料で構成される被覆膜によって被覆されていてもよい。
【0064】
上記実施形態において、素子部10は、中間層6及び反応防止層8を含むこととしたが、少なくとも中間層6及び反応防止層8の一方を含んでいなくてよい。
【0065】
上記実施形態において、第1電極層5はアノードとして機能し、第2電極層9はカソードとして機能することとしたが、第1電極層5がカソードとして機能し、第2電極層9がアノードとして機能してもよい。この場合、第1電極層5と第2電極層9の構成材料を入れ替えるとともに、第1電極層5の外表面に燃料ガスを流すとともに、流路3Sに酸化剤ガスを流せばよい。
【0066】
上記実施形態において、酸化クロム膜42の第1部分42aのうち介挿部a1は、素子部10のうち第1電極層5、中間層6、及び電解質層7それぞれと基材41との間に介挿されることとしたが、少なくとも第1電極層5と基材41との間に介挿されていればよい。例えば、素子部10が中間層6を含まない場合、介挿部a1は素子部10のうち第1電極層5及び電解質層7それぞれと基材41との間に介挿されることになる。また、中間層6及び電解質層7が合金部材4と接触しない場合、介挿部a1は素子部10のうち第1電極層5のみと基材41との間に介挿されることになる。ただし、介挿部a1は、第1電極層5と基材41との間だけでなく、電解質層7と基材41との間にも介挿されていることが好ましい。これにより、素子部10と合金部材4との電気的接続性を更に向上させることができる。
【0067】
上記実施形態において、酸化クロム膜42は、第1部分42a、第2部分42b、第3部分42c、及び複数の第4部分42dを有することとしたが、少なくとも第1部分42aを有していればよく、第2部分42b、第3部分42c、及び複数の第4部分42dのうち少なくとも1つを有していなくてもよい。
【0068】
上記実施形態において、燃料電池セル1は、第2電極層9に供給される酸化剤ガスを流すために特定の流路を備えないこととしたが、図3に示すように、酸化剤ガスが流れる流路20Sを形成する流路部材20を備えていてもよい。流路部材20は、ガラス材などの接合材21を介して、合金部材4の表面4Sに接合される。この場合、図4に示すように、合金部材4が有する酸化クロム膜42の第1部分42aのうち非介挿部a2は、接合材21が接合される接合領域a3において薄くなっていることが好ましい。これによって、接合界面の接合強度を向上させることができる。接合領域a3の厚みTHa3は特に制限されないが、例えば、0.1μm以上7μm以下とすることができる。なお、このように非介挿部a2が部分的に薄膜化されている場合であっても、非介挿部a2の厚みTHa2は、第1部分42aのうち素子部10と基材41との間に介挿されていない部分の最大厚みである。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、非介挿部a2の厚みTHa2に対する介挿部a1の厚みTHa1の比(THa1/THa2)が、合金部材4と素子部10との剥離に与える影響について検証する。
(実施例1〜13及び比較例1〜3)
以下のように、実施例1〜13及び比較例1〜3に係る燃料電池セル1を作製した。
まず、厚さ0.5mmのステンレス鋼製の基材41を準備して、基材41の表面のうち非介挿部a2を形成する領域以外をマスキングした。
【0070】
次に、基材41の表面のうち非介挿部a2を形成する領域にクロムめっき処理を施すことによってクロムめっき膜を形成した。この際、クロムめっき処理時間を調整することによって、表1に示すように、非介挿部a2の厚みTHa2を調整した。
【0071】
次に、基材41の表面に施したマスキングを除去した後、基材41の表面全体にクロムめっき処理を行うことによって、非介挿部a2を形成する領域以外にクロムめっき膜を形成するとともに、非介挿部a2を形成する領域に形成したクロムめっき膜を厚膜化した。この際、クロムめっき処理時間を調整することによって、表1に示すように、介挿部a1の厚みTHa1及び非介挿部a2の厚みTHa2を調整した。
【0072】
次に、クロムめっき膜が形成された基材41を大気雰囲気で熱処理(550℃、1時間)することによって合金部材4を完成させた。
【0073】
次に、図1に示した構成を有する燃料電池セル1を準備し、導電性接合材としてのNiペーストを用いて、合金部材4の介挿部a1に燃料電池セル1を接合し、窒素雰囲気において800℃で1時間焼成することにより焼結させた。以上により、実施例1〜13及び比較例1〜3に係る燃料電池セル1が完成した。
【0074】
(熱サイクル試験)
実施例1〜13及び比較例1〜3に係る燃料電池セル1を加熱炉に入れ、室温〜550℃まで昇温速度200℃/hで昇温させる工程と、550℃〜室温まで降温速度200℃/hで降温させる工程とを50回繰り返した。
【0075】
次に、超音波探傷器(日立パワーソリューションズ社製、型式FineSAT FS100III)を用いて燃料電池セル1の検査超音波探傷試験および断面観察を実施し、合金部材4と素子部10との間における剥離の有無を確認した。具体的には、Cスキャン法により合金部材4と素子部10の界面近傍の深さ位置の反射エコーを画像化した。次に、Cスキャン画像の輝度の明るい領域について、合金部材4の厚み方向に沿った断面をFE−SEMで観察して剥離の有無を確認した。確認結果を表1に示す。表1では、合金部材4と素子部10との間に剥離が確認されなかったものを〇と評価し、合金部材4と素子部10との間に剥離が確認されたものを×と評価した。
【0076】
次に、合金部材4の厚み方向に沿った断面をFE−SEMで観察し、介挿部a1の厚みTHa1と非介挿部a2の厚みTHa2とを測定した。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、非介挿部a2の厚みTHa2に対する介挿部a1の厚みTHa1の比(THa1/THa2)を0.1以上0.93以下とした実施例1〜13では、合金部材4と素子部10との間に剥離が生じることを抑制できた。このような結果が得られたのは、合金部材4の可撓性と強度とのバランスを良好にすることができたためである。
【符号の説明】
【0079】
1 セル
3 流路部材
4 合金部材
4S 表面
4T 裏面
4p 貫通孔
41 基材
Sa 第1主面
Sb 第2主面
Sc 外周面
Sd 内周面
42 酸化クロム膜
42a 第1部分
a1 介挿部
a2 非介挿部
42b 第2部分
42c 第3部分
42d 第4部分
5 第1電極層
6 中間層
7 電解質層
8 反応防止層
9 第2電極層
【要約】
【課題】合金部材と素子部との電気的接続性を向上可能な電気化学セルを提供する。
【解決手段】セル1は、合金部材4と、合金部材4上に配置される素子部10とを備える。素子部10は、合金部材4によって支持される第1電極層5と、電解質層7と、第2電極層9とを有する。合金部材4は、クロムを含有する合金材料によって構成される基材41と、基材41の少なくとも一部を覆う酸化クロム膜42とを有する。酸化クロム膜42は、基材41の第1主面Sa上に形成される第1部分42aを含む。第1部分42aは、素子部10のうち少なくとも第1電極層51と基材41との間に介挿される介挿部a1と、素子部10と基材41との間に介挿されない非介挿部a2とを含む。介挿部a1の厚みTHa1は、非介挿部a2の厚みTHa2より薄い。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4