特許第6753212号(P6753212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753212
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20200831BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20200831BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20200831BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D113:00
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-162675(P2016-162675)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-30406(P2018-30406A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 一志
(72)【発明者】
【氏名】葉山 良平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−256076(JP,A)
【文献】 特開2015−042527(JP,A)
【文献】 特開平10−309961(JP,A)
【文献】 特開2010−195088(JP,A)
【文献】 特開2004−352001(JP,A)
【文献】 特開2010−188917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04− 6/10
B62D 101/00−137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向の情報に基づき前記車両を車線に従って走行させるために転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを操作する自動操舵処理と、
ユーザがステアリングに加えるトルクである操舵トルクの検出値を入力とし、前記検出値が大きい場合に小さい場合よりも前記転舵アクチュエータに内蔵された電動機のトルクを大きくするように前記転舵アクチュエータを操作する手動操舵処理と、
前記自動操舵処理から前記手動操舵処理への切替要求を取得する手動切替要求取得処理と、
前記自動操舵処理により右旋回または左旋回のいずれか一方の操舵が実行されていたときに前記ステアリングが他方に操作されたことによって前記手動操舵処理への切替要求が生じた後、前記ステアリングが前記いずれか一方に再度操作されることを条件に、前記電動機のトルクの初期値を、前記再度の操作によって前記他方への操作から前記いずれか一方への操作に切り替わったときの前記電動機のトルクとし、前記電動機のトルクの絶対値を、前記トルクの初期値を定めた時点から操舵角の変化量の絶対値が大きくなるにつれて漸減させる漸減処理と、を実行する運転支援装置。
【請求項2】
前記漸減処理は、前記ステアリングが前記他方に操作されたことによって前記切替要求が生じた後、前記ステアリングが中立位置に向かって操作されることを条件に、前記電動機のトルクの絶対値を、前記操舵角が中立位置に近づくにつれて漸減させる処理を含む請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記切替要求が生じることに加えて、前記操舵トルクの検出値に基づき前記手動操舵処理が実行されたと仮定した場合の前記電動機のトルクと前記切替要求が生じたときの前記電動機のトルクとの差の絶対値が閾値を上回ることを条件に、前記漸減処理を実行する請求項1または2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記漸減処理の実行中に前記操舵トルクの検出値に基づき前記手動操舵処理が実行されたと仮定した場合の前記電動機のトルクと前記電動機の実際のトルクとの差の絶対値が前記閾値以下となることを条件に、前記手動操舵処理に切り替える請求項3記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記自動操舵処理は、前記車両を目標走行軌跡に沿って走行させるものであり、
前記手動操舵処理から前記自動操舵処理への切替要求を取得する自動切替要求取得処理と、
前記自動操舵処理への切替要求が生じることを条件に、前記自動操舵処理による前記車両の進行方向に直交する方向である横方向における前記車両の前記目標走行軌跡からのずれ量の積算値の増加速度が大きい場合に小さい場合よりも、前記切替要求が生じた時点における前記手動操舵処理による前記電動機のトルクから前記自動操舵処理による前記電動機のトルクへの移行速度を大きくしつつ前記電動機のトルクを前記自動操舵処理によるトルクに収束させる収束処理と、を実行する請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記ステアリングは、前記転舵輪にトルクを伝達可能である請求項1〜5のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵処理から手動操舵処理への切替処理を実行する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には、車両の進行方向の情報に基づき車両を車線に従って走行させるために転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを操作する自動操舵処理と、ユーザがステアリングに加えるトルクである操舵トルクの検出値に基づき転舵アクチュエータを操作する手動操舵処理とを実行する運転支援装置が記載されている。この装置では、自動操舵処理が実行されているときに操舵トルクの検出値に基づき、手動操舵への切替を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−256076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置において、たとえば自動操舵処理によって右旋回の操舵が実行されているときにユーザがステアリングを中立位置側に戻す操舵をする場合、操舵トルクの検出値の絶対値が大きくなり、手動操舵への切替が実行されることとなる。しかし、切替要求が生じた時点において、転舵アクチュエータに内蔵された電動機のトルクは、操舵トルクの検出値に基づく手動操舵処理による電動機のトルクとは符号が逆となる。このため、手動操舵への切替の設定によっては、手動操舵への切替に伴って電動機のトルクが大きく変動し、転舵輪に加わるトルクが大きく変動するおそれがある。
【0005】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動操舵処理から手動操舵処理への切替に伴って転舵輪に加わるトルクが大きく変動することを抑制できるようにした運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.上記運転支援装置において、車両の進行方向の情報に基づき前記車両を車線に従って走行させるために転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを操作する自動操舵処理と、ユーザがステアリングに加えるトルクである操舵トルクの検出値を入力とし、前記検出値が大きい場合に小さい場合よりも前記転舵アクチュエータに内蔵された電動機のトルクを大きくするように前記転舵アクチュエータを操作する手動操舵処理と、前記自動操舵処理から前記手動操舵処理への切替要求を取得する手動切替要求取得処理と、前記自動操舵処理により右旋回または左旋回のいずれか一方の操舵が実行されていたときに前記ステアリングが他方に操作されたことによって前記手動操舵処理への切替要求が生じた後、前記ステアリングが前記いずれか一方に再度操作されることを条件に、前記電動機のトルクの初期値を、前記再度の操作によって前記他方への操作から前記いずれか一方への操作に切り替わったときの前記電動機のトルクとし、前記電動機のトルクの絶対値を、前記トルクの初期値を定めた時点から操舵角の変化量の絶対値が大きくなるにつれて漸減させる漸減処理と、を実行する。
【0007】
自動操舵処理により右旋回または左旋回のいずれか一方の操舵が実行されていたときにステアリングが他方に操作されたことによって手動操舵処理への切替要求が生じる場合、手動操舵処理が仮になされた場合の電動機のトルクは、電動機が実際に生成しているトルクとは極性が逆となる。ここで、ステアリングが再度いずれか一方側に操作される場合、いずれか一方に切り替わってからの操舵角の絶対値の増加に伴って操舵トルクは徐々に減少する傾向がある。ここで、上記構成では、電動機のトルクを操舵角の変化量の絶対値が大きくなるにつれて漸減させる。このため、手動操舵処理に切り替えたと仮定した場合のトルクの大きさと、電動機の実際のトルクの大きさとをともに漸減させることができる。このため、その後、手動操舵処理に切り替える際、電動機のトルクが大きく変動することを抑制することができ、ひいては自動操舵処理から手動操舵処理への切替に伴って転舵輪に加わるトルクが大きく変動することを抑制できる。
【0008】
2.上記1記載の運転支援装置において、前記漸減処理は、前記ステアリングが前記他方に操作されたことによって前記切替要求が生じた後、前記ステアリングが中立位置に向かって操作されることを条件に、前記電動機のトルクの絶対値を、前記操舵角が中立位置に近づくにつれて漸減させる処理を含む。
【0009】
手動操舵処理において、中立位置に近い領域では、電動機のトルクの絶対値は小さくなる傾向がある。上記構成では、この点に鑑み、操舵角が中立位置に近づくにつれて電動機のトルクを漸減させることにより、手動操舵処理に切り替える際、電動機のトルクが大きく変動することを抑制できる。
【0010】
3.上記1または2記載の運転支援装置において、前記切替要求が生じることに加えて、前記操舵トルクの検出値に基づき前記手動操舵処理が実行されたと仮定した場合の前記電動機のトルクと前記切替要求が生じたときの前記電動機のトルクとの差の絶対値が閾値を上回ることを条件に、前記漸減処理を実行する。
【0011】
上記構成では、漸減処理の実行条件に、操舵トルクの検出値に基づき手動操舵処理が実行されたと仮定した場合の電動機のトルクと切替要求が生じたときの電動機のトルクとの差の絶対値が閾値を上回ることを条件とすることにより、手動操舵処理に直ちに切り替えることによって電動機のトルクが大きく変動する場合に漸減処理を実行することができる。
【0012】
4.上記3記載の運転支援装置において、前記漸減処理の実行中に前記操舵トルクの検出値に基づき前記手動操舵処理が実行されたと仮定した場合の前記電動機のトルクと前記電動機の実際のトルクとの差の絶対値が前記閾値以下となることを条件に、前記手動操舵処理に切り替える。
【0013】
上記構成では、手動操舵処理への切替の条件に、手動操舵処理が実行されたと仮定した場合の電動機のトルクと電動機の実際のトルクとの差の絶対値が閾値以下となることを条件を含めることにより、手動操舵処理への切替に伴って電動機のトルクが大きく変動することを抑制することができる。
【0014】
5.上記1〜4のいずれか1項に記載の運転支援装置において、前記自動操舵処理は、前記車両を目標走行軌跡に沿って走行させるものであり、前記手動操舵処理から前記自動操舵処理への切替要求を取得する自動切替要求取得処理と、前記自動操舵処理への切替要求が生じることを条件に、前記自動操舵処理による前記車両の進行方向に直交する方向である横方向における前記車両の前記目標走行軌跡からのずれ量の積算値の増加速度が大きい場合に小さい場合よりも、前記切替要求が生じた時点における前記手動操舵処理による前記電動機のトルクから前記自動操舵処理による前記電動機のトルクへの移行速度を大きくしつつ前記電動機のトルクを前記自動操舵処理によるトルクに収束させる収束処理と、を実行する。
【0015】
上記構成では、自動操舵処理による目標走行軌跡とのずれが大きいほど自動操舵処理によるトルクへの移行速度を大きくすることによって、自動操舵処理への移行時に車両が目標走行軌跡から大きくずれることを抑制することができる。
【0016】
6.上記1〜5のいずれか1項に記載の運転支援装置において、前記ステアリングは、前記転舵輪にトルクを伝達可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態にかかる運転支援装置を備えた車両の一部を示す図。
図2】同実施形態にかかる運転支援装置の処理の一部を示すブロック図。
図3】同実施形態にかかる移行制御処理部の処理の手順を示す流れ図。
図4】同実施形態にかかる移行制御処理部の処理の手順を示す流れ図。
図5】同実施形態にかかる切替処理部の処理の手順を示す流れ図。
図6】同実施形態において、自動操舵処理から手動操舵処理への移行制御時における操舵トルクの推移を例示する図。
図7】第2の実施形態にかかる移行制御処理部の処理の手順を示す流れ図。
図8】第3の実施形態にかかる運転支援装置の処理の一部を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、運転支援装置にかかる第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態にかかる操舵機構においては、ステアリングホイール(ステアリング10)が、ステアリングシャフト12に固定されており、ステアリングシャフト12の回転に応じてラック軸20が軸方向に往復動する。なお、ステアリングシャフト12は、ステアリング10側から順にコラム軸14、中間軸16、およびピニオン軸18を連結することにより構成されている。
【0019】
ピニオン軸18は、ラック軸20と所定の交叉角をもって配置されており、ラック軸20に形成された第1ラック歯20aとピニオン軸18に形成されたピニオン歯18aとが噛合されることで第1ラックアンドピニオン機構22が構成されている。また、ラック軸20の両端には、タイロッド24が連結されており、タイロッド24の先端は転舵輪26が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、ステアリング10の操作に伴うステアリングシャフト12の回転が第1ラックアンドピニオン機構22によりラック軸20の軸方向変位に変換され、この軸方向変位がタイロッド24を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪26の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0020】
上記ラック軸20は、ピニオン軸28と所定の交叉角をもって配置されており、ラック軸20に形成された第2ラック歯20bとピニオン軸28に形成されたピニオン歯28aとが噛合されることで第2ラックアンドピニオン機構30が構成されている。
【0021】
ピニオン軸28は、ウォームアンドホイール等の減速機構32を介して、電動機34の回転軸34aに接続されている。電動機34には、電動機34の各端子に電圧を印加するインバータ36が接続されている。なお、図1においては、破線にて囲われた、ラック軸20、ピニオン軸28、減速機構32、電動機34、およびインバータ36が転舵アクチュエータPSAを構成する。
【0022】
操舵制御装置(操舵ECU60)は、各種センサの検出値に基づき、インバータ36を操作することによって、電動機34の制御量(トルク)を制御する。各種センサとしては、たとえば、ピニオン軸18に設けられたトーションバー50の捩れに基づきピニオン軸18に加わるトルク(操舵トルクTrqs)を検出するトルクセンサ52や、回転軸34aの回転角度θmを検出する回転角度センサ54、インバータ36の出力線電流(電流iu,iv,iw)を検出する電流センサ55がある。また、ステアリング10の回転角度(操舵角)を検出する舵角センサ56がある。
【0023】
上位ECU70は、車両を車線に従って走行させるために転舵アクチュエータPSAを操作する自動操舵処理と、操舵トルクTrqsに基づき転舵アクチュエータPSAを操作する手動操舵処理とのいずれを実行するかを決定する。たとえば、上位ECU70は、自動操舵処理による車両の走行軌跡と、ステアリング10の操作による実際の車両の走行軌跡とが整合することを条件に、手動操舵処理から自動操舵処理へと切り替える。この際、上位ECU70は、自動操舵処理への切替指令信号を操舵ECU60に出力する。また上位ECU70は、自動操舵処理のための指令値を算出して操舵ECU60に出力する。すなわち、上位ECU70は、カメラ58から出力される車両の進行方向(前方)の画像データに基づき、車両を車線に従って走行させるうえでの目標走行軌跡を算出し、目標走行軌跡とするうえでの転舵角指令値を算出する。そして、上位ECU70は、転舵角指令値と転舵角との差Δθvを算出して、この差Δθvを、自動操舵処理のための指令値として、操舵ECU60に出力する。なお、本実施形態では、ステアリング10の回転角度である操舵角と転舵輪26の回転角度である転舵角との比である舵角比が固定されているため、転舵角は、舵角センサ56が検出する操舵角θhによって代用される。
【0024】
また、上位ECU70は、自動操舵処理の実行中に操舵トルクTrqsの絶対値が所定値以上となる場合等には、オーバーライド判定をして、手動操舵処理に切り替えるべく、切替指令信号を操舵ECU60に出力する。
【0025】
操舵ECU60は、中央処理装置(CPU62)およびメモリ64を備えており、メモリ64に記憶されたプログラムをCPU62が実行することにより、各種処理を実行する。図2に、操舵ECU60にて実行される処理の一部を示す。
【0026】
図2に示すアシストトルク算出処理部M10は操舵トルクTrqsおよび操舵角θhによって代用される転舵角に基づき、ステアリング10の操舵をアシストするために電動機34が生成すべきトルクであるアシストトルクTmeを算出して出力する。アシストトルクTmeは、基本的には、操舵トルクTrqsと正の相関を有する。詳しくは、アシストトルク算出処理部M10は、操舵トルクTrqsから開ループ制御によって定まるアシストトルクTmeのベース値と、操舵トルクTrqsから定まる転舵角の目標値に転舵角をフィードバック制御するための操作量との和を、アシストトルクTmeとする。ここで、上記ベース値は、操舵トルクTrqsと正の相関を有し、フィードバック制御のための操作量は、ベース値の補正量となる。
【0027】
自動操舵トルク算出処理部M12は、上位ECU70が出力した差Δθvを「0」に制御するための操作量としての電動機34のトルクであるベース自動操舵トルクTm*を算出する。
【0028】
切替判定処理部M14は、上位ECU70の切替信号に基づき、自動操舵処理を実行するモードであるか、手動操舵処理を実行するモードであるかを判定する。そして切替判定処理部M14は、自動操舵処理を実行するモードである場合、切替フラグGc*を「1」とする一方、手動操舵処理を実行するモードである場合、切替フラグGc*を「0」とする。
【0029】
移行制御処理部M16は、ベース自動操舵トルクTm*を適宜修正するなどした自動操舵トルクTmt*を算出して出力する。詳しくは、移行制御処理部M16は、自動操舵処理が継続されているときには、ベース自動操舵トルクTm*を自動操舵トルクTmt*として出力する。一方、自動操舵処理から手動操舵処理への切替時や手動操舵処理から自動操舵処理への切替時には、ベース自動操舵トルクTm*を修正した値等を自動操舵トルクTmt*として出力する。
【0030】
切替処理部M18は、アシストトルクTmeと自動操舵トルクTmt*とのいずれか一方を、電動機34に対するトルク指令値Trq*として出力する。操作処理部M20は、電動機34のトルクをトルク指令値Trq*とすべく、インバータ36を操作する。この際、操作処理部M20は、回転角度θmや電流iu,iv,iwを参照する。
【0031】
図3に、移行制御処理部M16が実行する処理のうち、特に手動操舵処理から自動操作処理への移行処理の手順を示す。図3に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0032】
図3に示す一連の処理において、CPU62は、まず、切替フラグGc*が「1」であるか否かを判定する(S10)。そしてCPU62は、「1」であると判定する場合(S10:YES)、自動移行フラグFaが「1」であるか否かを判定する(S12)。自動移行フラグFaは、「1」である場合に、自動操舵トルクTmt*をベース自動操舵トルクTm*に徐々に移行させる移行制御を実行していることを示し、「0」である場合に同移行制御を実行していないことを示す。
【0033】
CPU62は、自動移行フラグFaが「0」であると判定する場合(S12:NO)、切替フラグGc*が「0」から「1」に切り替わった時点であるか否かを判定する(S14)。この処理は、図3に示す一連の処理の前回の制御周期において切替フラグGc*が「0」であって且つ今回の制御周期において「1」となったか否かの判定処理となる。そしてCPU62は、切り替わった時点であると判定する場合(S14:YES)、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値よりも大きいか否かを判定する(S16)。この処理は、電動機34に対するトルク指令値Trq*をベース自動操舵トルクTm*に直ちに変更した場合に電動機34のトルクに急激且つ大きな変動が生じるか否かを判定するためのものである。そしてCPU62は、閾値以下であると判定する場合(S16:NO)や、ステップS14において否定判定される場合には、自動移行フラグFaと、後述する積算値InDとを初期化する(S18)。そしてCPU62は、移行制御処理部M16の出力値である自動操舵トルクTmt*に、ベース自動操舵トルクTm*の値を代入する(S20)。
【0034】
これに対しCPU62は、閾値を超えると判定する場合(S16:YES)、自動移行フラグFaを「1」とし(S22)、自動操舵トルクTmt*に、アシストトルクTmeの値を代入する(S24)。なお、この処理は、トルク指令値Trq*を、アシストトルクTmeとするための処理ではなく、後述する演算処理に利用するために自動操舵トルクTmt*を一時的にアシストトルクTmeとする処理である。
【0035】
CPU62は、ステップS24の処理が完了する場合や、ステップS12において肯定判定する場合には、積算値InDの変化速度を算出する(S26)。ここで、積算値InDは、車両の進行方向に直交する方向(横方向)における、自動操舵処理による目標走行軌跡からの実際の車両の位置のずれ量Dの積算値である。ここで、実際の車両の位置とは、たとえば左右の前輪のそれぞれの位置の間の中央の位置とすればよい。
【0036】
次にCPU62は、ベース自動操舵トルクTm*を取得する(S28)。そして、CPU62は、自動操舵トルクTmt*を算出する(S30)。ここでは、現在所持している自動操舵トルクTmt*と、ベース自動操舵トルクTm*との加重移動平均処理値を、自動操舵トルクTmt*とする。ここでは、ベース自動操舵トルクTm*に乗算する重み係数αを、積算値InDの変化速度が大きい場合に小さい場合よりも大きい値とする。これは、変化速度が大きい場合に小さい場合よりも自動操舵トルクTmt*のベース自動操舵トルクTm*への移行速度を大きくするための設定である。
【0037】
CPU62は、ステップS30の処理が完了する場合や、ステップS20の処理が完了する場合には、自動操舵トルクTmt*を、図2に示した移行制御処理部M16から切替処理部M18に出力する(S32)。
【0038】
なお、CPU62は、ステップS32の処理が完了する場合や、ステップS10において否定判定する場合には、図3に示す一連の処理を一旦終了する。
図4に、移行制御処理部M16が実行する処理のうち、特に自動操舵処理から手動操作処理への移行処理の手順を示す。図4に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0039】
図4に示す一連の処理において、CPU62は、まず、手動移行フラグFが「1」であるか否かを判定する(S40)。手動移行フラグFは、「1」である場合に、アシストトルクTmeへと直ちに切り替えることなく徐々に移行させる移行制御を実行していることを示し、「0」である場合に、同制御を実行していないことを示す。CPU62は、手動移行フラグFが「0」であると判定する場合(S40:NO)、切替フラグGc*が「1」から「0」に切り替わったところであるか否かを判定する(S42)。この処理は、図4に示す処理の前回の制御周期において切替フラグGc*が「1」であって且つ今回の制御周期において切替フラグGc*が「0」であるか否かの判定処理となる。
【0040】
そしてCPU62は、切り替わったところであると判定する場合(S42:YES)、手動移行フラグFを「1」とし(S44)、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値よりも大きいか否かを判定する(S46)。そしてCPU62は、閾値よりも大きいと判定する場合(S46:YES)、手動操舵処理への切替要求が、自動操舵処理によって右旋回または左旋回のいずれか一方の操舵が実行されていたときにステアリング10が他方に操作されたことに起因して生じたものであるか否かを判定する(S48)。換言すれば、ステアリング10に逆相入力が生じたことに起因して生じたものか否かを判定する。この処理は、たとえばベース自動操舵トルクTm*の大きさが所定値以上であることと、操舵トルクTrqsとベース自動操舵トルクTm*との極性が相違することとの論理積が真である場合に、肯定判定される処理とすればよい。
【0041】
CPU62は、ステップS48において肯定判定される場合、初期値Tm0*に、ベース自動操舵トルクTm*の値を代入する(S50)。そしてCPU62は、自動操舵トルクTmt*に、初期値Tm0*の値を代入し、自動操舵トルクTmt*を、移行制御処理部M16から切替処理部M18に受け渡す(S52)。
【0042】
一方、CPU62は、手動移行フラグFが「1」であると判定する場合(S40:YES)、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値以下であるか否かを判定する(S54)。そしてCPU62は、閾値よりも大きいと判定する場合(S54:NO)、反転フラグFrが「1」であるか否かを判定する(S56)。ここで、反転フラグFrは、「1」である場合に、切替フラグGc*が「1」から「0」に切り替わった後、操舵角θhの変化速度である操舵角速度が反転した履歴があることを示し、「0」である場合に、反転した履歴がないことを示す。
【0043】
CPU62は、反転フラグFrが「0」であると判定する場合(S56:NO)、操舵速度が反転したか否かを判定する(S58)。この処理は、ステアリング10が中立位置側に向かって操作される状態から中立位置から離間する側に操作されるようになったか否かを判定するものである。
【0044】
CPU62は、操舵速度が反転していないと判定する場合(S58:NO)、ステップS52の処理に移行する。一方、CPU62は、操舵速度が反転したと判定する場合(S58:YES)、反転フラグFrを「1」とし、後述の漸減処理に利用する初期角度θcに、現在の操舵角θhの値を代入する(S60)。そして、CPU62は、初期値Tm0*および初期角度θcに基づき、初期角度θcから操舵角θhが離間するにつれて自動操舵トルクTmt*を所定の減少速度で漸減させた場合に自動操舵トルクTmt*がゼロとなる角度である予測角度θEを算出する(S62)。予測角度θEは、自動操舵トルクTmt*の漸減速度を定めるものであり、漸減速度は実験等によって適合される適合値である。
【0045】
CPU62は、ステップS62の処理が完了する場合や、ステップS56において反転フラグFrが「1」であると判定する場合(S56:YES)には、操舵角θhに基づき自動操舵トルクTmt*を算出し、自動操舵トルクTmt*を移行制御処理部M16から切替処理部M18に受け渡す(S64)。ここでは、以下の式に基づき、自動操舵トルクTmt*を算出する。ただし、以下の式は、初期値Tm0*が正である場合の式であり、初期値Tm0*が負である場合には、「−1」を除いた式となる。
【0046】
(−1)・{Tm0*・(θh−θc)/(θE−θc)}+Tm0*
上記の式により定まる自動操舵トルクTmt*は、操舵角θhが初期角度θcから離れて予測角度θEに近づくにつれて小さくなり、操舵角θhが予測角度θEとなることによりゼロとなる。
【0047】
CPU62は、ステップS46,S48において否定判定する場合や、ステップS54において肯定判定する場合には、手動移行フラグFおよび反転フラグFrを初期化する(S66)。
【0048】
なお、CPU62は、ステップS52,S64,S66の処理が完了する場合や、ステップS42において否定判定する場合には、図4に示す一連の処理を一旦終了する。
図5に、切替処理部M18の処理の手順を示す。図5に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0049】
図5に示す一連の処理において、CPU62は、まず切替フラグGc*が「1」であるか否かを判定する(S70)。そしてCPU62は、切替フラグGc*が「1」であると判定する場合(S70:YES)、トルク指令値Trq*に、自動操舵トルクTmt*の値を代入する(S72)。これに対し、CPU62は、切替フラグGc*が「0」であると判定する場合(S70:NO)、切替フラグGc*が「0」であることと、切替フラグGc*が「0」となってから手動移行フラグFが「1」から「0」に切り替わった履歴があることとの論理積が真であるか否かを判定する(S74)。そして、CPU62は、論理積が偽であると判定する場合(S74:NO)、ステップS72の処理に移行する一方、論理積が真であると判定する場合(S74:YES)、トルク指令値Trq*に、アシストトルクTmeの値を代入する(S76)。
【0050】
なお、CPU62は、ステップS72,S76の処理が完了する場合、図5に示す一連の処理を一旦終了する。
ここで本実施形態の作用を説明する。
【0051】
トルク指令値Trq*にベース自動操舵トルクTm*の値が代入される自動操舵処理により、右旋回および左旋回のいずれか一方への操舵が実行される場合、電動機34のトルクによって、ステアリング10もいずれか一方に回転する。ここで、ユーザがステアリング10を他方に回転操作することによって上位ECU70によってオーバーライド判定がなされて操舵ECU60に切替指令が出力されると、CPU62では、切替フラグGc*を「1」から「0」に切り替える。そしてCPU62は、操舵トルクTrqsの極性と電動機34のトルクの極性とが逆であることから、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値よりも大きい場合、トルク指令値Trq*に、そのときのベース自動操舵トルクTm*の値を代入する状態を操舵速度が反転するまで保持する。
【0052】
ステアリング10が上記他方に回転操作される場合、トーションバー50が捩れ、操舵トルクTrqsが上記他方側の極性を有した値として検出される。この状態において、ステアリング10が上記いずれか一方に回転操作されると、トーションバー50の捩れ量が減少していくことから、操舵トルクTrqsの絶対値は漸減する。
【0053】
図6に、ユーザがステアリング10を上記他方に操作し始める点P1からいずれか一方への回転操作に切り替わる点P2を得て、操舵トルクTrqsが漸減してゼロとなると想定される点P3までの操舵トルクTrqsの推移を示す。
【0054】
操舵トルクTrqsの絶対値が減少する場合、操舵トルクTrqsに基づき算出されるアシストトルクTmeも、その絶対値が減少する。この際、CPU62は、自動操舵トルクTmt*を漸減させることによって、電動機34のトルクを漸減させる。このため、アシストトルクTmeと自動操舵トルクTmt*とがともに漸減し、それらの差の絶対値が減少する。そして、差の絶対値が閾値以下となることにより、手動操舵処理に切り替えられ、トルク指令値Trq*に、アシストトルクTmeの値が代入される。このため、自動操舵処理から手動操舵処理への切替に伴って転舵輪26に加わるトルクが大きく変動することを抑制できる。ちなみに、操舵トルクTrqsが点P2から点P3に移行するのに伴って漸減するときに自動操舵トルクTmt*を漸減させる場合、ステアリング10に入力されるトルクと電動機34のトルクとの合計のトルクが、転舵輪26を操舵角θhに応じた転舵角に維持する上で必要とされるトルクに対して不足することもあり得る。しかし、転舵輪26と路面との摩擦に起因して、ステアリング10を上記いずれか一方側に操作するために必要な操舵トルクTrqsが、上記合計のトルクが不足することとなった時点から直ちに大きくなることはない。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する効果が得られる。
(1)CPU62により、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値を上回ることを条件に、漸減処理を実行した。これにより、手動操舵処理に直ちに切り替えることによって電動機34のトルクが大きく変動する場合に、漸減処理を実行することができる。
【0056】
(2)CPU62により、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値以下となることを条件に、手動操舵処理に切り替えた。これにより、手動操舵処理への切替に伴って電動機34のトルクが大きく変動することを回避することができる。
【0057】
(3)CPU62は、自動操舵処理への切替要求に応じてアシストトルクTmeからベース自動操舵トルクTm*へと移行させる場合、積算値InDの増加速度が大きい場合に小さい場合よりも、アシストトルクTmeからベース自動操舵トルクTm*への移行速度を大きくした。これにより、自動操舵処理への移行時に車両が目標走行軌跡から大きくずれることを抑制することができる。
【0058】
<第2の実施形態>
以下、運転支援装置にかかる第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0059】
上記第1の実施形態においては、手動操舵処理への移行制御を開始すると、操舵速度が反転するまではトルク指令値Trq*を手動操舵処理への切替要求が生じたときにおけるベース自動操舵トルクTm*に保持した。しかしこの場合、ユーザがステアリング10を中立位置を超えて上記他方側に回転させる場合、電動機34による操舵のアシストができない。そこで、本実施形態では、移行制御を以下のように変更する。
【0060】
図7に、移行制御処理部M16が実行する処理のうち、特に自動操舵処理から手動操作処理への移行処理の手順を示す。図7に示す処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。なお、図7に示す処理において、図4に示した処理に対応するものについては、便宜上同一のステップ番号を付与してその説明を省略する。
【0061】
図7に示す一連の処理において、CPU62は、ステップS48において肯定判定する場合、初期値Tm0*に、ベース自動操舵トルクTm*の値を代入し、初期角度θcに、現在の操舵角θhの値を代入し(S60a)、ステップS62に移行する。一方、CPU62は、ステップS54において否定判定する場合、ステップS58に移行し、ステップS58において否定判定する場合、ステップS64に移行する一方、肯定判定する場合、ベース自動操舵トルクTm*に、現在の自動操舵トルクTmt*の値を代入し(S68)、ステップS60aに移行する。
【0062】
なお、CPU62は、ステップS46,S48において否定判定する場合や、ステップS54において肯定判定する場合には、手動移行フラグFを初期化する(S66a)。
ここで、本実施形態の作用を説明する。
【0063】
自動操舵処理により右旋回および左旋回のいずれか一方への操舵が実行されているときに、ユーザがステアリング10を他方に回転操作することによって上位ECU70によってオーバーライド判定がなされて操舵ECU60に切替指令が出力されると、CPU62では、切替フラグGc*を「1」から「0」に切り替える。そしてCPU62は、操舵トルクTrqsの極性と電動機34のトルクの極性とが逆であることから、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値よりも大きい場合、ステアリング10が上記他方に回転操作されるのに伴って自動操舵トルクTmt*を漸減させる。これにより、ステアリング10が上記他方に回転操作されるのに伴って電動機34のトルクが漸減する。
【0064】
一方、ステアリング10が上記他方に回転操作される場合、ステアリング10が中立位置側に戻されることから、電動機34のトルクが漸減する場合、ユーザがステアリング10を上記他方に回転操作するために加える操舵トルクTrqsも漸減する。操舵トルクTrqsの絶対値が減少する場合、操舵トルクTrqsに基づき算出されるアシストトルクTmeも、その絶対値が減少する。このため、アシストトルクTmeの絶対値と自動操舵トルクTmt*の絶対値とがともに漸減し、それらの差の絶対値が減少する。そして、差の絶対値が閾値以下となることにより、手動操舵処理に切り替えられ、トルク指令値Trq*に、アシストトルクTmeの値が代入される。このため、自動操舵処理から手動操舵処理への切替に伴って転舵輪26に加わるトルクが大きく変動することを抑制できる。
【0065】
<第3の実施形態>
以下、運転支援装置にかかる第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図8に、本実施形態にかかる操舵ECU60にて実行される処理の一部を示す。なお、図8において、図2に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
本実施形態では、意思検出処理部M22と補正処理部M24とを追加する。意思検出処理部M22は、操舵トルクTrqsと操舵角θhとに基づき、ユーザが操舵をする意思を有する度合いを定量評価し、それに基づき、ベース自動操舵トルクTm*を補正するためのゲインGmを算出する。ゲインGmは、「0」以上「1」以下の値をとる。
【0068】
意思検出処理部M22は、インピーダンス算出処理部M22aと、ゲイン算出処理部M22bとを備えている。インピーダンス算出処理部M22aは、操舵角θhによる操舵トルクTrqsの1階微分値をインピーダンスIとして算出する。インピーダンスIは、値が大きいほどユーザの操舵の意思が大きいことを示す。ゲイン算出処理部M22bは、インピーダンスIに基づきゲインGmを算出する。具体的には、ゲイン算出処理部M22bは、インピーダンスIが大きいほどゲインGmを小さい値とする。
【0069】
補正処理部M24は、ベース自動操舵トルクTm*にゲインGmを乗算することによって、移行制御処理部M16に出力するベース自動操舵トルクTm*を補正する。
ここで本実施形態の作用を説明する。
【0070】
自動操舵処理が実行されているときに、意思検出処理部M22は、ゲインGmを算出し、補正処理部M24では、ゲインGmに基づきベース自動操舵トルクTm*を補正する。これにより、自動操舵処理時にユーザがステアリング10に手をかけているなら、上位ECU70から操舵ECU60への差Δθvの出力信号にノイズが重畳したり、上位ECU70から操舵ECU60への信号の伝達経路に瞬間的な遮断が生じることにより、ベース自動操舵トルクTm*が不適切な値とされる場合、インピーダンスIが大きくなる。このため、ゲインGmが小さくなり、ゲインGmによって補正されたベース自動操舵トルクTm*が小さくなる。このため、ノイズ等によって車両が意図しない挙動を示すことを抑制することができる。
【0071】
<対応関係>
上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項と、上記実施形態における事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。
【0072】
1.自動操作処理は、トルク指令値Trq*にベース自動操舵トルクTm*の値が代入されてインバータ36が操作される処理に対応し、手動操舵処理は、トルク指令値Trq*にアシストトルクTmeの値が代入されてインバータ36が操作される処理に対応する。手動切替要求取得処理は、ステップS42の処理に対応し、漸減処理は、図4においてはステップS64の処理に対応し、図7においては、ステップS58の処理において奇数回肯定判定された後のステップS64の処理に対応する。運転支援装置は、操舵ECU60に対応する。
【0073】
2.漸減処理は、ステップS58において肯定判定された回数がゼロまたは偶数であるときにおけるステップS64の処理に対応する。
3.漸減処理の実行条件に、ステップS46の処理によって定まる条件を設けたことに対応する。
【0074】
4.ステップS54において肯定判定される場合にステップS66,S66aの処理に移行することに対応する。
5.自動切替要求取得処理は、ステップS14の処理に対応し、収束処理は、ステップS30の処理に対応する。
【0075】
6.図1の構成に対応する。
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態の各事項の少なくとも1つを、以下のように変更してもよい。
【0076】
・「上位ECU70から操舵ECU60への出力について」
上位ECU70が操舵ECU60に差Δθvを出力する代わりに転舵角指令値を出力することとしてもよい。
【0077】
・「手動操舵処理について」
上記実施形態では、操舵トルクTrqsに基づき転舵角指令値を算出し、転舵角を転舵角指令値にフィードバック制御するための操作量と、操舵トルクTrqsを入力として開ループ制御によって定まるベーストルクとに基づき、アシストトルクTmeを算出したが、これに限らない。たとえば、操舵トルクTrqsを入力とする開ループ操作量自体をアシストトルクTmeとしてもよい。
【0078】
・「漸減処理について」
上記第1の実施形態では、反転フラグFrが「1」とされてから反転フラグFrが初期化される前にステアリング10が中立位置側に操作される事態を想定しなかった。これを想定する場合には、たとえば、ステアリング10が中立位置側に操作され、操舵速度が再度反転する場合には、図7のステップS58において複数回肯定判定される場合の処理を実行すればよい。
【0079】
上記第2の実施形態では、手動移行フラグFが「1」に切り替わると直ちに電動機34のトルクを操舵角θhの変化に応じて漸減させたがこれに限らない。たとえば、手動移行フラグFが「1」に切り替わってから、次の条件の論理和が真となる場合に、電動機34のトルクを操舵角θhの変化に応じて漸減させてもよい。すなわち、ステップS58の処理において肯定判定される旨の条件(ア)と、操舵角θhと中立位置との間の角度が所定角度以下となる旨の条件(イ)と、操舵角θhが中立位置側に変化する速度が所定速度以上である旨の条件(ウ)との論理和が真である場合としてもよい。ここで、条件(イ)は、操舵角θhが中立位置に近い旨の条件であり、条件(ウ)は、操舵角θhが中立位置にかなり接近すると予測できる旨の条件である。
【0080】
・「移行制御について」
自動操舵処理への移行時に、自動操舵処理によるトルクであるベース自動操舵トルクTm*への移行速度を、積算値InDの増加速度が大きい場合に小さい場合よりも大きくすることは必須ではない。たとえば、移行速度を積算値InDの増加速度によらない固定値としてもよい。
【0081】
移行制御の実行条件に、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値よりも大きい旨の条件を含めることは必須ではない。ここで、この条件を含めない場合の図4および図7の処理としては、ステップS46の処理を削除することに加えて、たとえば、ステップS54の処理を、操舵角θhが予測角度θEとなるか否かの処理とすればよい。この場合、CPU62は、操舵角θhが予測角度θEとなると判定することにより、手動移行フラグFを「0」とすればよい。
【0082】
手動操舵処理に移行する条件としての、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値以下となる旨の条件としては、ステップS46の処理における閾値を用いたステップS54の処理によって実現されるものに限らない。たとえばステップS46における閾値よりも小さい所定値を用いて、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が所定値以下であるか否かの処理によって実現されるものであってもよい。すなわち、この場合であっても、ベース自動操舵トルクTm*とアシストトルクTmeとの差の絶対値が閾値以下となることを条件に、手動操舵処理に移行することに相違ない。
【0083】
・「操舵装置について」
操舵角と転舵角との比である舵角比を電子制御によって可変とする舵角比可変アクチュエータを備えたものであってもよい。この場合、転舵角は、たとえば回転角度θmの積算処理等によって算出すればよい。
【0084】
ステアリング10が転舵輪26にトルクを伝達可能なものに限らない。たとえば、ステアリング10と転舵輪26とが機械的に遮断されているものであっても、ステアリング10が転舵輪26にトルクを伝達可能なものである場合にステアリング10に加わる反力トルクと同一のトルクを反力アクチュエータによってステアリングに付与する制御を実行しているものにあっては、上記漸減処理が有効である。
【0085】
・「運転支援装置について」
運転支援装置としては、操舵ECU60に限らず、たとえば上位ECU70と操舵ECU60との双方を一体化した装置であってもよい。
【0086】
操舵ECU60が、CPU62およびメモリ64を備えて、上述した各種処理を全てソフトウェア処理するものに限らない。たとえば、切替処理部M18の処理を、専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)にて処理するなど、少なくとも一部の処理を実行するASICを備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…ステアリング、12…ステアリングシャフト、14…コラム軸、16…中間軸、18…ピニオン軸、18a…ピニオン歯、20…ラック軸、20a…第1ラック歯、20b…第2ラック歯、22…第1ラックアンドピニオン機構、24…タイロッド、26…転舵輪、28…ピニオン軸、28a…ピニオン歯、30…第2ラックアンドピニオン機構、32…減速機構、34…電動機、34a…回転軸、36…インバータ、50…トーションバー、52…トルクセンサ、54…回転角度センサ、55…電流センサ、56…舵角センサ、58…カメラ、60…操舵ECU、62…CPU、64…メモリ、70…上位ECU。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8