(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755376
(24)【登録日】2020年8月27日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】球状フッ化カルシウム
(51)【国際特許分類】
C01F 11/22 20060101AFI20200907BHJP
B01J 2/02 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
C01F11/22
B01J2/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-176755(P2019-176755)
(22)【出願日】2019年9月27日
(62)【分割の表示】特願2015-224395(P2015-224395)の分割
【原出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2020-7223(P2020-7223A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡部 拓人
(72)【発明者】
【氏名】深澤 元晴
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第1529754(EP,A1)
【文献】
特開2004−344797(JP,A)
【文献】
特表2011−503327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/00 − 11/48
B01J 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が3〜41μmであり、且つ、平均円形度が0.93以上である球状フッ化カルシウム。
【請求項2】
フッ化カルシウム原料を、融点以上の温度の高温域を通過させ球状化させる粉末溶融法によって製造する、請求項1に記載の球状フッ化カルシウムの製造方法。
【請求項3】
フッ化カルシウムを溶解させ、ノズルを介して滴下した溶湯に対し、流体を噴射することにより、溶湯を分散・噴霧し急冷凝固させて球状化させるアトマイズ法によって製造する、請求項1に記載の球状フッ化カルシウムの製造方法。
【請求項4】
フッ化カルシウムを溶解させ、ノズルを介して滴下した溶湯に対し、回転したディスクに溶湯を滴下することにより、溶湯を分散・噴霧し急冷凝固させて球状化させるアトマイズ法によって製造する、請求項1に記載の球状フッ化カルシウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状フッ化カルシウムに関する。本発明は、例えば、フィラーとして、樹脂やプラスチック等の高分子材料に配合する際の流動性や充填性を高める目的で球状化した球状フッ化カルシウムに関する。本発明は、例えば、球状フッ化カルシウムを充填した樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチック、ゴム等の物性や機能等を向上させることを目的として、様々なフィラーが使用されている。フッ化カルシウムは、天然からは蛍石として産出される無機化合物であり、化学産業において排出される含フッ素化合物をカルシウム塩の形で補足した合成フッ化カルシウムとしても容易に入手可能な無機化合物である。又、フッ化カルシウムの屈折率は1.43、熱伝導率は10W/mK、熱膨張率は24ppm/K、誘電率は6.8であり、真空紫外から赤外の広範囲の光に対し優れた透過性を示す、シリカやアルミナに比べ、モース硬度が低く(モース硬度4)、金型を傷めにくい等、多様な特徴を有している。このため、プラスチックやゴム等の屈折率や熱伝導率、熱膨張率等を制御するために、多くの用途に使用されることが期待されている。
【0003】
しかしながら、樹脂に配合されるフィラーとしては、それほど一般的ではない。例えば、特許文献1では、人工大理石中の充填材、特許文献2では、フッ化カルシウムを含有させた樹脂摺動部材が記載されている。このように、樹脂フィラーとしてのフッ化カルシウムは、特殊な用途にわずかに使用されているだけである。
【0004】
フィラーとしてより好適に使用するためには、樹脂への充填性や加工性、溶融流動性を向上させる必要があり、フッ化カルシウムの場合も球状で適当な粒度分布を持ち、且つ、凝集が少ないことが求められている。例えば、特許文献3では、破砕状フッ化カルシウムを79%充填しているが、シランカップリング剤で表面処理する必要があることに加え、樹脂として熱可塑性樹脂に限られている。特許文献4では、球形又は粒子形のフッ化カルシウムをポリマーに充填しているが、そこに例示されているフッ化カルシウムはアスペクト比が1.8であり、球形とは言いがたく、充填率も不十分であった。
【0005】
フッ化カルシウムの球状化方法としては種々の方法が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献5では、モース硬度5以下の鉱物質微粒子をスラリーにし、噴射圧力100〜200MPaで両側から噴射して互いに衝突させることによる湿式粉砕により球状化する方法が明記されている。湿式処理では、フィラーとして用いるためには、得られた粒子の乾燥工程が必要であり、更に溶媒を使用する分コストがかかってしまう。非特許文献1では、塩化カルシウムとフッ化アンモニウムの反応による湿式合成により球状フッ化カルシウムを合成しているが、上記の湿式処理のデメリットに加え、フィラーとして好適に用いられるミクロンオーダーの粒子を合成することが困難である。
【0007】
又、非特許文献2では、ガスアトマイズ法により、フッ化バリウムとフッ化カルシウムの混合物を球状化しているが、樹脂への充填性に関する効果は明記されていない。又、フッ化カルシウムの割合が30%程度であり、主成分がフッ化バリウムであることから、水への溶解度、比重が大きくなり、樹脂に充填するフィラーとして適していない。更に、特許文献6では、アトマイズ法が可能であると記載があるが、アトマイズ法の詳細やアトマイズ法によって得られた粒子の粒径や平均円形度に関する記載がないことに加え、球状化したことによる効果が明記されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4491619号公報
【特許文献2】特許第5465270号公報
【特許文献3】特開2003−40619号公報
【特許文献4】特許第5547644号公報
【特許文献5】特許第4193913号公報
【特許文献6】特開2002−188007号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】AsepBayu Dani Nandiyantoet al., KonapowderandParticle Journal, No.29, 141−157, 2011
【非特許文献2】MalcolmK. Stanford, Tribology Transactions, 51, 829−834, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、樹脂に高充填した場合にも低粘度・高流動性を有する樹脂組成物を調製できる球状フッ化カルシウムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)平均粒子径が1〜50μmであり、且つ、平均円形度が0.90以上である球状フッ化カルシウム。
(2)フッ化カルシウム原料を、融点以上の温度の高温域を通過させ球状化させる粉末溶融法によって製造する、(1)に記載の球状フッ化カルシウムの製造方法。
(3)フッ化カルシウムを溶解させ、ノズルを介して滴下した溶湯に対し、流体を噴射することにより、溶湯を分散・噴霧し急冷凝固させて球状化させるアトマイズ法によって製造する、(1)に記載の球状フッ化カルシウムの製造方法。
(4)フッ化カルシウムを溶解させ、ノズルを介して滴下した溶湯に対し、回転したディスクに溶湯を滴下することにより、溶湯を分散・噴霧し急冷凝固させて球状化させるアトマイズ法によって製造する、(1)に記載の球状フッ化カルシウムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明者によれば、樹脂組成物に高充填した場合にも低粘度・高流動性を有する樹脂組成物を調製できる球状フッ化カルシウムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は実施例1で得られた球状フッ化カルシウムの走査型電子顕微鏡写真である。白線は寸法である。
【
図2】
図2は実施例1の原料及び比較例8で使用したフッ化カルシウムの走査型電子顕微鏡写真である。白線は寸法である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の球状フッ化カルシウムは、平均粒子径が1〜50μmであり、且つ、平均円形度が0.90以上である。球状フッ化カルシウムの平均粒子径が1μm未満であると、樹脂と混ぜ合わせた際の粘度の増大と樹脂組成物を金型等に注入する際の流動性が低下し、50μmより大きくなると、樹脂への充填性が悪くなる。又、球状フッ化カルシウムの平均円形度は0.90以上、好ましくは0.95以上である。平均円形度が0.90未満であると、樹脂と混合した際の粒子の転がり抵抗が大きくなり、流動性が低下する。
【0015】
本発明の原料であるフッ化カルシウムは特に制限なく、天然の蛍石を粉砕したものを使用しても構わないし、合成フッ化カルシウムを使用しても構わない。合成フッ化カルシウムとしては、フッ素化合物を使用する化学工業或いは半導体工業等のプロセスから排出されるフッ酸或いはフッ化物イオンを、水酸化カルシウムや炭酸カルシウムと反応させてフッ化カルシウムとして回収した、回収フッ化カルシウムも含まれる。
【0016】
又、本発明の原料であるフッ化カルシウムの純度は、75質量%以上が好ましく、90質量%がより好ましい。75質量%未満だと、フッ化カルシウム自体の物性が損なわれることに加え、不純物も多くなる場合がある。本発明の原料であるフッ化カルシウムの平均粒子径は、1〜50μmが好ましい。
【0017】
本発明の球状フッ化カルシウムの製造方法は、粉末溶融法又はアトマイズ法が用いられる。
【0018】
粉末溶融法は、原料粉末を融点以上の温度の高温域を通過させる方法であり、例えば、化学炎又は熱プラズマ中に投入し溶融させ、自身の表面張力により球状化させる方法である。又、ここで記載する粉末溶融法は、化学炎又は熱プラズマを用いず原料粉末を融点以上の温度の高温域を通過させる方法も含み、例えば、縦型管状炉やタワーキルン中に原料を投入し、溶融させ、自身の表面張力により球状化させる方法も含む。
【0019】
又、粉末溶融法はスプレードライヤー等により粉末状の原料を造粒した粒子、及び、バルク状材料を粉砕し、所望の粒度分布になるように調整した粒子等を用いることができ、それらの粒子を、粒子の凝集を抑制しながら化学炎又は熱プラズマ、縦型管状炉等の中に投入し、化学炎又は熱プラズマ、縦型管状炉等の中で溶融させることによって行われる。又、溶剤等に分散した原料の分散液を調整し、その液状原料を、ノズル等を用いて化学炎又は熱プラズマ、縦型管状炉等の中に噴霧し、分散媒を蒸発させた上で溶融させることによって行われる。
【0020】
粉末溶融法において、化学炎とは、例えば、可燃性ガスをバーナーで燃焼することにより発生する炎をいう。化学炎の発生源としては、フッ化カルシウムの融点以上の温度が得られれば良く、例えば、可燃性ガスとして、天然ガス、プロパンガス、アセチレンガス、液化石油ガス(LPG)、水素等を用いることができる。支燃性ガスとして空気や酸素等を可燃性ガスに併用する。化学炎の大きさ、温度等の調整は、バーナーの大きさ、可燃性ガスと支燃性ガスの流量によって調整することができる。原料であるフッ化カルシウムの供給量は、可燃性ガスと支燃性ガスの総量に対し、0.01〜10kg/Nm
3が好ましく、0.05〜2kg/Nm
3がより好ましい。0.01kg/Nm
3よりも少量になると生産性が低下し、10kg/Nm
3よりも多くなるとフッ化カルシウムが凝集するため、粒子径の制御が難しくなる。特記しない限り、流量はノルマル表記である。又、熱プラズマの発生源としては、酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス及びこれらの混合ガスが好適に用いられる。更に、溶融源として、縦型管状炉やタワーキルンも用いることができる。炉の溶融雰囲気は、フッ化カルシウムの融点以上に加熱が可能であり、原料が蒸発又は分解せず、且つ、炉内部が著しく消耗しない雰囲気で行われることが好ましい。フレームを用いない場合、原料であるフッ化カルシウムの供給量は、雰囲気ガス1Nm
3あたり、0.01〜10kgが好ましい。0.01kgよりも少量になると生産性が低下し、10kgよりも多くなるとフッ化カルシウムが凝集するため、粒子径の制御が難しくなる。
【0021】
アトマイズ法は、例えば、フッ化カルシウム原料を、坩堝等を用いて溶解させ、坩堝下部のノズルを介して滴下した溶湯に対し、水やガス等の流体を噴射したり、回転したディスクに溶湯を滴下したりすることにより、溶湯を分散・噴霧し、急冷凝固させて球状フッ化カルシウムを得る方法である。アトマイズ法としては、溶湯流の分散方法により、ガスアトマイズ法、遠心アトマイズ法、ハイブリッドアトマイズ法、水アトマイズ法、高速燃焼炎アトマイズ法等、いずれの手法でも好適に用いることができる。
【0022】
ガスアトマイズ法において、溶湯の温度(溶融温度)は、1500〜2000℃が好ましい。坩堝下部のノズルの直径は、0.5〜3.0mmが好ましい。ガスとしては、アルゴンガス等が挙げられる。流体の噴射圧は、0.8〜10MPaが好ましい。遠心アトマイズ法において、溶湯の温度(溶融温度)は、1500〜2000℃が好ましい。坩堝下部のノズルの直径は、0.5〜3.0mmが好ましい。ディスクの回転数は、20000rpm〜120000rpmが好ましい。ディスクの直径は、20mm〜100mmが好ましい。ディスクの材質としては、フッ化カルシウムよりも高い融点を持ち、熱衝撃に強い材料、例えば、Mo、W、Pt、SiC、BN等が選択される。
【0023】
アトマイズ法の場合、原料の形状としては、粉体、バルク体のいずれでも良く、又、これらを組み合わせたものでも良い。これらの原料をフッ化カルシウムの融点より高い融点を有する坩堝、例えば、カーボン、Mo、W、Pt製等の坩堝に収容した後溶融させる。溶融方法は、原料をその融点以上に加熱することが可能な方法であれば、いかなる方法でも良く、例えば、高周波、プラズマ、レーザー、電子ビーム、光又は赤外線を用いることができる。原料の溶融は、原料が蒸発又は分解せず、且つ坩堝が著しく消耗しない雰囲気で行われることが好ましい。大気中、不活性ガス中、真空中等、加熱温度及び用いられる坩堝の材質に応じて最適な雰囲気が選択される。
【0024】
本発明で得られた球状フッ化カルシウムは、平均円形度が高いため、極めて流動性が良く、樹脂に充填する際に極めて良好な成形性を示し、又、充填率を高めることができる。得られた球状粒子は、所望の充填率が得られるよう分級された後、必要に応じて表面処理が施され、更に充填率を上げることができる。表面処理剤としては、一般にシランカップリング剤が用いられるが、他にチタネートカップリング剤及びアルミネート系カップリング剤も用いることができる。
【0025】
次に、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0026】
本発明で使用される樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂等が挙げられる。
【0027】
更に、本発明の樹脂組成物には、低応力化剤、シランカップリング剤、表面処理剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、離型剤等を必要に応じて含有することができる。低応力化剤としては、シリコーンゴム、ポリサルファイドゴム、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン系ブロックコポリマーや飽和型エラストマー等のゴム状物質、各種熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂等や、更にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂の一部又は全部をアミノシリコーン、エポキシシリコーン、アルコキシシリコーン等で変性した樹脂等が挙げられる。シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等の疎水性シラン化合物やメルカプトシランな等が挙げられる。表面処理剤としては、Zrキレート、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。難燃剤としては、ハロゲン化エポキシ樹脂やリン化合物等が挙げられる。難燃助剤としては、Sb
2O
3、Sb
2O
4、Sb
2O
5等が挙げられる。着色剤としては、カーボンブラック、酸化鉄、染料、顔料等が挙げられる。離型剤としては、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン等が挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物において、樹脂の使用量は、球状フッ化カルシウム100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、上記諸材料をブレンダーやミキサーで混合した後、加熱ロール、ニーダー、一軸又は二軸押出機、バンバリーミキサー等によって溶融混練し、冷却することによって製造することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1−4、比較例1−4
表1に示す平均粒子径のフッ化カルシウム原料粉末を、表1に示す量のLPGと表1に示す量の酸素ガスによって形成された高温火炎中に、表1に示す粉末供給量にて投入し球状化処理を行い、表3に示す平均粒子径及び平均円形度を有する球状フッ化カルシウムを作製した。使用したフッ化カルシウム原料粉末の純度は、99.5%である。
【0032】
上記の方法により得られた球状フッ化カルシウム100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER828」)25質量部、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR−250」、回転数2000rpm)にて混練し、樹脂組成物を作製した。
【0033】
実施例及び比較例にて作製した粒子組成物及び樹脂組成物の特性を、以下の方法で評価した。結果を
図1及び表4に示す。
【0034】
[平均粒子径]
ベックマンコールター製「レーザー回折式粒度分布測定装置LS 13 320」を用いて測定を行った。試料はガラスビーカーに10ccの純水と、球状フッ化カルシウム1g添加して、超音波洗浄機で1分間、分散処理を行った。分散処理を行った球状フッ化カルシウムの分散液をスポイトでレーザー回折式粒度分布測定装置に一滴ずつ添加し、再度超音波を90秒間照射した。照射してから60秒後に測定を行った。レーザー回折式粒度分布測定装置では、センサで検出した粒子による回折/散乱光の光強度分布のデータから粒度分布を計算した。平均粒子径は測定される粒子径の値に相対粒子量(差分%)を乗じて、相対粒子量の合計(100%)で割って求めた。ここでの%は体積%である。
【0035】
[平均円形度]
セイシン企業社製粉体画像解析装置(PITA−1)を用いて測定を行った。試料を純水に分散させて、この液体を平面伸張流動セル内に流し、セル内を移動する球状フッ化カルシウム粒子の200個を、対物レンズにて画像として記録し、この記録画像及び次の式(1)から平均円形度を算出した。式(1)中、Sは撮影した記録画像の粒子投影図における面積、Lは粒子投影図の周囲長を表す。このようにして算出された粒子200個の平均値を球状フッ化カルシウム粒子の平均円形度とした。
平均円形度=4πS/L
2 (1)
【0036】
[粘度]
得られた樹脂組成物を、レオメーター(日本シイベルヘグナー社製「MCR−300」)を用い下記条件にて粘度を測定した。
プレート形状:円形平板25mmφ
試料厚み:1mm
温度:25±1℃
剪断速度:0.1s
−1
【0037】
実施例5−8、比較例5−6
表1に示す平均粒子径のフッ化カルシウム原料粉末を、1600℃に設定した縦型管状炉内に、表1に粉末供給量にて投入し球状化処理を行い、表3に示す平均粒子径及び平均円形度を有する球状フッ化カルシウムを作製した。LPGと酸素ガスは使用しなかった。それ以外は、実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0038】
実施例9−13、比較例7−9
表2に示す平均粒子径のフッ化カルシウム原料粉末を、カーボン坩堝で、表2に示す溶融温度で溶融させ、表2に示す直径を有するノズルを介して滴下させながら、表2に示す噴射圧のアルゴンガスを噴射することで溶湯を分散・噴霧させ球状化処理を行い、表3に示す平均粒子径及び平均円形度を有する球状フッ化カルシウムを作製した。それ以外は、実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0039】
実施例16−17、比較例10−12
表3に示すフッ化カルシウム原料粉末を、カーボン坩堝で、表3に示す溶融温度で溶融させ、表3に示す直径を有するノズルを介して滴下させながら、表3に示すディスク直径及び回転数で溶湯を分散・噴霧させ球状化処理を行い、表3に示す平均粒子径及び平均円形度を有する球状フッ化カルシウムを作製した。それ以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0040】
比較例8
実施例1で使用した、球状化処理していないフッ化カルシウム原料粉末そのものを使用したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
本発明の球状フッ化カルシウムを含有する樹脂組成物は、平均円形度が小さいフッ化カルシウムフィラーを含有する樹脂組成物と比較して、粘度が低く抑えられ、高充填できるという結果になった。実施例1で得られた球状フッ化カルシウムの形状を示す走査型電子顕微鏡写真を
図1に示した。実施例1のフッ化カルシウム原料粉末(即ち、比較例8で使用したフッ化カルシウム)の形状を示す走査型電子顕微鏡写真を
図2に示した。
【0046】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の球状フッ化カルシウムを用いた樹脂組成物は、粘度が低く高充填できるため、プラスチックやゴム等の屈折率や熱伝導率、熱膨張率等を制御するフィラーとして利用可能である。