特許第6756261号(P6756261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756261
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】ジャダー発生判定装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/12 20060101AFI20200907BHJP
   F16H 61/14 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   F16D25/12 D
   F16H61/14 601Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-249814(P2016-249814)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-105345(P2018-105345A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】山口 展生
(72)【発明者】
【氏名】社本 卓也
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−159271(JP,A)
【文献】 特開2012−057654(JP,A)
【文献】 特開平08−338524(JP,A)
【文献】 特開平07−042768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/14
F16D 25/00−39/00,48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動トルクを出力する駆動源と連結された入力部材と、車両の駆動輪と回転連結された出力部材とを有し、前記入力部材と前記出力部材とを係合又は切断する摩擦式クラッチのジャダーの発生を判定する装置であって、
前記出力部材の回転速度を検出する出力部材回転速度検出部と、
前記出力部材回転速度検出部によって検出された前記出力部材の回転速度に基づいて、前記出力部材の回転速度の振動の周期である振動周期を演算する振動周期演算部と、
前記振動周期演算部によって演算された前記振動周期を順次記憶する振動周期記憶部と、
前記振動周期記憶部に記憶されている最新の前記振動周期が、前記振動周期記憶部に記憶されている最新の前記振動周期よりも一つ前の前記振動周期に対して規定範囲内である回数が、第一規定回数以上連続した場合に、前記ジャダーが発生していると判定するジャダー発生判定部と、を有するジャダー発生判定装置。
【請求項2】
前記出力部材回転速度検出部によって検出された前記出力部材の回転速度に基づいて、前記出力部材の回転速度の前記振動の振幅である振動振幅を演算する振動振幅演算部を有し、
前記ジャダー発生判定部は、前記振動振幅演算部が演算した前記振動振幅が規定値以上である前記出力部材の回転速度の前記振動に関して前記振動周期演算部によって演算された前記振動周期に基づいて、前記ジャダーが発生したか否かを判定する請求項1に記載のジャダー発生判定装置。
【請求項3】
前記ジャダーが発生していると判定された際における前記振動周期記憶部に記憶されている最新の前記振動周期から所定回数前までの前記振動周期に基づいて、基準周期を演算する基準周期演算部を有し、
前記ジャダー発生判定部は、前記基準周期演算部によって前記基準周期が演算された以降の前記ジャダーの検出については、前記振動周期記憶部に記憶されている最新の前記振動周期が、前記基準周期演算部によって演算された前記基準周期に対して規定範囲内である回数が、前記第一規定回数よりも少ない回数である第二規定回数以上連続した場合に、前記ジャダーが発生したと判定する請求項1又は請求項2に記載のジャダー発生判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャダー発生判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の駆動源と駆動輪との間に、トルクコンバータのロックアップクラッチ等の摩擦式クラッチを備えた車両が有る。このような摩擦式クラッチが切断している状態から接続される際には、摩擦式クラッチの係合トルクを徐々に増大させるスリップ制御が実行される。このスリップ制御が実行される際に、摩擦式クラッチにおいてスティックスリップが発生して、摩擦式クラッチにおいてジャダーが発生する場合がある。摩擦式クラッチにおいてジャダーが発生すると、摩擦式クラッチにおいて、振動や異音が発生する。
【0003】
そこで、特許文献1に示されるように、駆動輪の回転速度の振動周期が予め規定された規定周期範囲の範囲内である回数が規定回数以上である場合に、摩擦式クラッチにおいてジャダーが発生していると判定するジャダー発生判定装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−42768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
変速機やデフのギヤ比等によって、駆動輪の回転速度の振動周期は、車種によって異なる。このため、特許文献1に示されるジャダー発生判定装置では、ジャダーの発生を判定するための規定周期範囲が固定値である場合には、車種によっては、ジャダーの発生を判定できない場合があった。このため、特許文献1に示されるジャダー発生判定装置では、車種によって、ジャダーの発生を判定するための規定周期範囲を変更する必要があるため、ジャダーの発生を判定するためのプログラムを車種毎に作成する必要があった。このため、ジャダー発生判定装置の開発コストが、高くなっていた。
【0006】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、開発コストを低減することができるジャダー発生判定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係るジャダー発生判定装置の発明は、駆動トルクを出力する駆動源と連結された入力部材と、車両の駆動輪と回転連結された出力部材とを有し、前記入力部材と前記出力部材とを係合又は切断する摩擦式クラッチのジャダーの発生を判定する装置であって、前記出力部材の回転速度を検出する出力部材回転速度検出部と、前記出力部材回転速度検出部によって検出された前記出力部材の回転速度に基づいて、前記出力部材の回転速度の振動の周期である振動周期を演算する振動周期演算部と、前記振動周期演算部によって演算された前記振動周期を順次記憶する振動周期記憶部と、前記振動周期記憶部に記憶されている最新の前記振動周期が、前記振動周期記憶部に記憶されている最新の前記振動周期よりも一つ前の前記振動周期に対して規定範囲内である回数が、第一規定回数以上連続した場合に、前記ジャダーが発生していると判定するジャダー発生判定部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
このように、振動周期演算部は、出力部材回転速度検出部によって検出された出力部材の回転速度に基づいて、出力部材の回転速度の振動の周期である振動周期を演算し、振動周期記憶部は、振動周期演算部によって演算された振動周期を順次記憶し、ジャダー発生判定部は、振動周期記憶部に記憶されている最新の振動周期が、振動周期記憶部に記憶されている最新の振動周期よりも一つ前の振動周期に対して規定範囲内である回数が、第一規定回数以上連続した場合に、ジャダーが発生したと判定する。これにより、車種の違いによって、出力部材回転速度検出部によって検出される振動周期が異なったとしても、摩擦式クラッチにおいてジャダーが発生したか否かを判定することができる。このため、摩擦式クラッチにおいてジャダーの発生を判定するためのプログラムを車種毎に作成する必要が無く、ジャダー発生判定装置の開発コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のジャダー発生判定装置が搭載された車両の構成を示す構成図である。
図2】出力部材回転速度、振動振幅、及び振動半周期との関係を表したタイムチャートである。
図3】第一実施形態のジャダー発生判定処理のフローチャートである。
図4】第二実施形態のジャダー発生判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(車両の説明)
図1に基づき、本発明の第一実施形態によるジャダー発生判定装置1が搭載された車両100について説明する。ジャダー発生判定装置1は、後述する摩擦式クラッチであるロックアップクラッチ34の入力部材31と出力部材34aとの間のジャダーの発生を判定するものである。ジャダーとは、入力部材31と出力部材34aとが、係合とスリップを繰り返すスティックスリップが発生し、振動や異音が発生することである。
【0011】
図1に示すように、車両100には、エンジン2、トルクコンバータ3、自動変速機4、デファレンシャル17が、この順番に、直列に設けられている。デファレンシャル17には、車両100の駆動輪18R,18Lが接続されている。なお、駆動輪18R,18Lは、車両100の前輪又は後輪、或いは、前後輪である。また、車両100は、オイルポンプ5、及び制御部10を有している。
【0012】
エンジン2は、ピストン(不図示)により回転駆動されるクランクシャフト2aを有している。エンジン2は、特許請求の範囲に記載の駆動源に相当する。エンジン2は、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用し、駆動トルクをクランクシャフト2aに出力するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等である。
【0013】
トルクコンバータ3は、エンジン2のクランクシャフト2aと自動変速機4の入力軸41の間に設けられている。トルクコンバータ3は、エンジン2からの駆動トルクを増幅させたうえで入力軸41に伝達するものである。トルクコンバータ3は、入力部材31、ポンプインペラ32、タービンランナ33、ロックアップクラッチ34、ロックアップコントロールバルブ37を備えている。
【0014】
入力部材31は、エンジン2のクランクシャフト2aに連結されている。入力部材31は、一方側が開口した扁平な有底筒状のカバー部材である。ポンプインペラ32は、入力部材31の開口部を閉塞するように、入力部材31に接続されている。このような構成により、ポンプインペラ32は、入力部材31を介してエンジン2のクランクシャフト2aに接続され、クランクシャフト2aと一体回転する。タービンランナ33は、ポンプインペラ32と対向して配置され、入力部材31内に収容されている。タービンランナ33は、入力軸41に接続され、入力軸41と一体回転する。入力部材31及びポンプインペラ32によって囲まれる空間には、オイルが満たされ、ポンプインペラ32とタービンランナ33の間にも、オイルが満たされている。エンジン2が出力する駆動トルクによってポンプインペラ32が回転すると、ポンプインペラ32の回転によって発生するオイルの螺旋流により、駆動トルクが増幅されてタービンランナ33に伝達される。
【0015】
ロックアップクラッチ34は、入力部材31と出力部材34a(タービンランナ33)とを係合又は切断する摩擦式のクラッチである。ロックアップクラッチ34は、クランクシャフト2aと入力軸41とが直結したロックアップ状態と、クランクシャフト2aと入力軸41との直結を解除して、エンジン2のクランクシャフト2aと入力軸41との間に回転差が生じるトルクコンバータ状態とに切り換える。ロックアップクラッチ34は、入力部材31、出力部材34a、摩擦材34b、及びダンパー34cとから構成されている。
【0016】
出力部材34aは、円板形状であり、タービンランナ33に相対回転不能且つ軸線移動可能に取り付けられている。出力部材34aは、入力部材31の内壁面と対向している。出力部材34aは、入力部材31の内部を液密に区画している。出力部材34aとタービンランナ33の間には、液密な第一室35が形成されている。出力部材34aと入力部材31の内周面との間には、液密な第二室36が形成されている。出力部材34aの入力部材31の内壁面と対向する位置に、摩擦材34bが設けられている。
【0017】
第一室35に油圧が供給されると、出力部材34aが入力部材31の内壁面に側に移動して、摩擦材34bが入力部材31の内壁面に押し付けられる。すると、入力部材31とタービンランナ33とが直結して、トルクコンバータ3がロックアップ状態となる。すると、クランクシャフト2aと入力軸41とが直結し、後述のオイルによるトルク伝達に比べて、クランクシャフト2aと入力軸41間におけるトルクの伝達ロスが低減される。
【0018】
一方で、第二室36に油圧が供給されると、出力部材34aがタービンランナ33側に移動し、摩擦材34bが入力部材31の内壁面から離れ、入力部材31とタービンランナ33との直結が解除され、トルクコンバータ3がトルクコンバータ状態となる。すると、ポンプインペラ32とタービンランナ33の間にあるオイルによって、エンジン2から出力された駆動トルクが、増幅されてタービンランナ33に伝達される。
【0019】
出力部材34aには、コイルスプリング等の弾性体で構成されたダンパー34cが設けられている。トルクコンバータ3がロックアップ状態となった場合に、ダンパー34cが変位(伸縮)することにより、エンジン2から入力軸41に入力される駆動トルクのトルク変動が吸収される。
【0020】
ロックアップコントロールバルブ37には、後述するオイルポンプ5からオイルが供給される。そして、ロックアップコントロールバルブ37は、制御部10からの指令によって、供給されたオイルによる油圧を第一室35及び第二室36のいずれかに供給することにより、トルクコンバータ3をロックアップ状態にし、又はトルクコンバータ状態にする。
【0021】
自動変速機4は、トルクコンバータ3とデファレンシャル17との間に設けられている。自動変速機4は、オイルタンク4a、入力軸41、出力軸42、複数の遊星歯車機構(不図示)、複数又は単一のATクラッチ(不図示)、及び複数又は単一のATブレーキ(不図示)を備えている。
【0022】
入力軸41は、トルクコンバータ3を介してエンジン2から出力された駆動トルクが入力される。入力軸41は、タービンランナ33及び出力部材34aと連結している。出力軸42は、デファレンシャル17を介して駆動輪18R,18Lに回転連結されている。複数の遊星歯車機構は、入力軸41及び出力軸42に回転連結されている。このような構成によって、出力部材34aは、駆動輪18R,18Lに回転連結されている。ATクラッチは、複数の遊星歯車機構の要素(サンギヤ、キャリア、リングギヤ)同士を係脱可能に接続するものである。ATブレーキは、複数の遊星歯車機構の要素を自動変速機4のハウジング(不図示)に係脱可能に連結するものである。
【0023】
複数又は単一のATクラッチ及び複数又は単一のATブレーキからなる係合要素のそれぞれが、係合状態又は解放状態に選択的に切り替えられることにより、複数の遊星歯車機構の動力伝達経路が切り換えられる。複数の遊星歯車機構の動力伝達経路の切換によって、入力軸41の回転速度を出力軸42の回転速度で除した変速比がそれぞれ異なる複数の変速段が形成される。
【0024】
オイルタンク4aは、自動変速機4を構成する各要素やトルクコンバータ3に供給されるオイルが貯留されている。
オイルポンプ5は、本実施形態では、入力軸41の回転によって駆動される機械式のオイルポンプである。なお、オイルポンプ5は、モータによって駆動される電動オイルポンプであっても差し支え無い。オイルポンプ5は、オイルタンク4aからオイルを吸入して、ロックアップコントロールバルブ37にオイルを供給する。
【0025】
入力軸41に隣接する位置には、出力部材回転速度検出部44が設けられている。出力部材回転速度検出部44は、入力軸41の回転速度、つまり、入力軸41と連結されている出力部材34aの回転速度(以下、出力部材回転速度と略す)を検出し、その検出結果を制御部10に出力するセンサである。
【0026】
制御部10は、ロックアップクラッチ34におけるジャダーの発生を検出する。制御部10は、振動振幅演算部10a、振動周期演算部10b、振動周期記憶部10c、及びジャダー発生判定部10dを有している。
振動振幅演算部10aは、出力部材回転速度検出部44によって検出された出力部材回転速度に基づいて、出力部材回転速度の振動の振幅である振動振幅ΔNnを演算する。
振動周期演算部10bは、出力部材回転速度検出部44によって検出された出力部材回転速度に基づいて、出力部材回転速度の振動の半周期である振動半周期Tnを演算する。
振動周期記憶部10cは、振動周期演算部10bによって演算された振動半周期Tnを順次記憶する。
ジャダー発生判定部10dは、後で詳細に説明するように、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnが、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnよりも一つ前の振動半周期T(n−1)に対して規定範囲内である回数が、第一規定回数以上連続した場合に、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生していると判定する。
ジャダー発生判定装置1は、出力部材回転速度検出部44及び制御部10とから構成されている。
【0027】
(ジャダー発生判定処理の概要)
以下に、図2に示すタイムチャートを用いて、ジャダー発生判定処理の概要を説明する。ロックアップクラッチ34がロックアップ状態とされ、ロックアップクラッチ34の入力部材31と出力部材34aとの間においてジャダーが発生すると、図2の一番上のタイムチャートに示すように、出力部材回転速度が周期的に変化する。つまり、出力部材回転速度が速くなったり遅くなったりすることを繰り返して振動する。
【0028】
出力部材回転速度が振動している状態において、出力部材回転速度の振動の振幅、つまり、出力部材回転速度が最も速い時点の出力部材回転速度と出力部材回転速度が最も遅い時点の出力部材回転速度との差回転速を、振動振幅ΔN1、ΔN2、ΔN3…とする。以下の説明において、振動振幅ΔN1、ΔN2、ΔN3を、適宜、振動振幅ΔNnと表す。
【0029】
また、出力部材回転速度が振動している状態において、出力部材回転速度の振動の半周期、つまり、出力部材回転速度が最も速い時点と出力部材回転速度が最も遅い時点のとの間の時間、又は、出力部材回転速度が最も遅い時点と出力部材回転速度が最も速い時点との間の時間を、振動半周期T1、T2、T3…とする。以下の説明において、振動半周期T1、T2、T3を、適宜、振動半周期Tnと表す。なお、振動半周期Tnは、特許請求の範囲に記載の振動周期に相当する。
【0030】
ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生すると、図2の一番上のタイムチャートに示すように、出力部材回転速度が周期的に変化し、出力部材回転速度が振動する。そこで、本実施形態では、振動半周期の今回値Tnが、振動半周期の前回値T(n−1)の規定範囲であることが、規定回数以上連続した場合に、出力部材回転速度が周期的に変化して振動し、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生したと判定する。
【0031】
なお、本実施形態では、振動振幅ΔNnが規定値以上である出力部材回転速度の振動に関する振動半周期Tnに基づいて、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生したか否かを判定している。つまり、振動半周期の今回値Tnが、振動半周期の前回値T(n−1)の規定範囲内であることが、規定回数以上連続した場合であっても、振動振幅ΔNnが規定値よりも小さい場合には、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生したと判定しない。これにより、車両100が悪路を走行する等により車両100に振動が付与され、出力部材回転速度に付与されたノイズに起因するロックアップクラッチ34におけるジャダーの発生の誤検知が防止される。
【0032】
(第一実施形態のジャダー発生判定処理)
以下に、図3に示すフローチャートを用いて、第一実施形態のジャダー発生判定処理について説明する。車両100のイグニッションがONとされると、第一実施形態のジャダー発生判定処理が開始し、プログラムはステップS11に進む。
ステップS11において、振動振幅演算部10aは、出力部材回転速度検出部44によって検出された出力部材回転速度に基づいて、出力部材回転速度の振動振幅ΔNnを演算する。ステップS11が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS12に進める。
【0033】
ステップS12において、ジャダー発生判定部10dは、ステップS11において演算された出力部材回転速度の振動振幅ΔNnが、規定値以上であると判断した場合には(ステップS12:YES)、プログラムをステップS13に進める。一方で、ジャダー発生判定部10dは、ステップS11において演算された出力部材回転速度の振動振幅ΔNnが、規定値よりも小さいと判断した場合には(ステップS12:NO)、プログラムをステップS11に戻す。規定値は、出力部材回転速度の振動が、ロックアップクラッチ34のジャダーに起因するものであるか否かを判断するための基準である。出力部材回転速度の振動振幅ΔNnが、規定値よりも小さい場合には、出力部材回転速度の振動が、ロックアップクラッチ34のジャダーに起因しないと判断される。
【0034】
ステップS13において、振動振幅演算部10aは、出力部材回転速度検出部44によって検出された出力部材回転速度に基づいて、出力部材回転速度の振動半周期Tnを演算する。ステップS13が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS14に進める。
ステップS14において、制御部10は、ステップS13において演算され出力部材回転速度の振動半周期Tnを振動周期記憶部10cに記憶させる。ステップS14が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS21に進める。
【0035】
ステップS21において、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnよりも一つ前の出力部材回転速度の振動半周期T(n−1)に第一係数αを乗算した値以上であると判断した場合には(ステップS21:YES)、プログラムをステップS22に進める。一方で、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnよりも一つ前の出力部材回転速度の振動半周期T(n−1)に第一係数αを乗算した値よりも小さいと判断した場合には(ステップS21:NO)、プログラムをステップS25に進める。なお、第一係数αは、1よりも小さい値であり、例えば、0.8である。
【0036】
ステップS22において、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnよりも一つ前の出力部材回転速度の振動半周期T(n−1)に第二係数βを乗算した値以下であると判断した場合には(ステップS22:YES)、プログラムをステップS23に進める。一方で、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnよりも一つ前の出力部材回転速度の振動半周期T(n−1)に第二係数βを乗算した値よりも大きいと判断した場合には(ステップS22:NO)、プログラムをステップS25に進める。なお、第二係数βは、1よりも大きい値であり、例えば、1.2である。
【0037】
ステップS23において、ジャダー発生判定部10dは、振動カウンタを1つ加算する。振動カウンタは、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生しているか否かを検出するためのカウンタであり、振動カウンタが第一規定回数以上である場合には、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生していると判断される。ステップS23が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS31に進める。
【0038】
ステップS25において、ジャダー発生判定部10dは、振動カウンタをクリアする。ステップS21、S22のいずれかで、NOと判断されれば、それまで加算されていた振動カウンタがクリアされる。ステップS25が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS11に戻す。
【0039】
ステップS31において、ジャダー発生判定部10dは、振動カウンタが第一規定回数(例えば5回)以上であると判断した場合には(ステップS31:YES)、プログラムをステップS32に進める。一方で、ジャダー発生判定部10dは、振動カウンタが第一規定回数よりも少ないと判断した場合には(ステップS31:NO)、プログラムをステップS11に戻す。
【0040】
ステップS32において、ジャダー発生判定部10dは、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生していると判定する。このように、ジャダー発生判定部10dは、出力部材回転速度の振動振幅ΔNnが規定値以上であり(ステップS12:YES)、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnよりも一つ前の出力部材回転速度の振動半周期T(n−1)に対して規定範囲内である回数が、第一規定回数以上連続した場合に(ステップS31:YES)、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生したと判定する。ステップS32が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS11に戻す。
【0041】
なお、ステップS32においてジャダーが発生したと判定された場合には、制御部10は、ロックアップクラッチ34を切断して、トルクコンバータ3をトルクコンバータ状態にする。これにより、ロックアップクラッチ34において振動や異音の発生が防止される。トルクコンバータ3がロックアップ状態からトルクコンバータ状態にされたとしても、トルクコンバータ3によって、エンジン2から出力された駆動トルクが、自動変速機4の入力軸41に伝達されるので、車両100の走行に支障は生じ無い。
【0042】
(本実施形態の効果)
以上の説明から明らかなように、振動周期演算部10bは、出力部材回転速度検出部44によって検出された出力部材回転速度に基づいて、出力部材回転速度の振動の半周期である振動半周期Tnを演算する(図3のステップS13)。そして、振動周期記憶部10cは、振動周期演算部10bによって演算された振動半周期Tnを順次記憶する(ステップS14)。そして、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnが、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnよりも一つ前の振動半周期T(n−1)に対して規定範囲内である回数が、第一規定回数以上連続した場合に(ステップS31:YES)、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生していると判定する(ステップS32)。これにより、車種の違いによって、出力部材回転速度検出部44によって検出される振動半周期Tnが異なったとしても、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生したか否かを判定することができる。このため、ロックアップクラッチ34においてジャダーの発生を判定するためのプログラムを車種毎に作成する必要が無く、ジャダー発生判定装置1の開発コストを低減することができる。
【0043】
また、振動振幅演算部10aは、出力部材回転速度検出部44によって検出された出力部材回転速度に基づいて、出力部材回転速度の振動の振幅である振動振幅ΔNnを演算する(ステップS11)。そして、ジャダー発生判定部10dは、振動振幅演算部10aが演算した振動振幅ΔNnが規定値以上である出力部材回転速度の振動に関して振動周期演算部10bによって演算された振動半周期Tnに基づいて(ステップS12:YES)、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生したか否かを判定する(ステップS21〜S32)。これにより、振動振幅ΔNnが規定値よりも小さい場合には、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生したと判定しない。このため、車両100が悪路を走行する等により出力部材回転速度に付与されるノイズに起因するロックアップクラッチ34におけるジャダーの発生の誤検知が防止される。
【0044】
(第二実施形態のジャダー発生判定装置)
以下に、第二実施形態のジャダー発生判定装置1について説明する。第二実施形態のジャダー発生判定装置1の制御部10は、基準周期演算部10eを有している。基準周期演算部10eは、後述するように、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生していると判定された際における、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnから所定回数x前までの振動半周期T(n−x)基づいて、基準半周期を演算する。以下に、図4に示すフローチャートを用いて、第二実施形態のジャダー発生判定装置1の制御部10が実行する第二実施形態のジャダー発生判定処理について説明する。なお、第二実施形態のジャダー発生判定処理について、第一実施形態のジャダー発生判定処理と同一の処理については、第一実施形態のジャダー発生判定処理と同じステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0045】
ステップS32が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS41に進める。
ステップS41において、制御部10は、OFFであったジャダー検出フラグをONにする。ジャダー検出フラグは、ロックアップクラッチ34において、既にジャダーが検出されたか否かを表すフラグである。ジャダー検出フラグがONである場合には、ロックアップクラッチ34において、既にジャダーが検出されていることを表している。一方で、ジャダー検出フラグがOFFである場合には、ロックアップクラッチ34において、未だジャダーが検出されていないことを表している。本実施形態では、イグニッションがOFFされたとしても、ジャダー検出フラグはONである状態が維持される。ステップS41が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS42に進める。
【0046】
ステップS42において、基準周期演算部10eは、ステップS32において、ジャダーが発生したと判定した際における、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnから所定回数x前までの振動半周期T(n−x)の平均値を基準半周期として演算する。所定回数xは、本実施形態では、第一規定回数から1つ減算した回数である。なお、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnから所定回数x前までの振動半周期T(n−x)のうち、最大値及び最小値を除外した振動半周期Tnの平均値を基準半周期として演算することにしても差し支え無い。なお、基準半周期は、特許請求の範囲に記載の基準周期に相当する。ステップS42が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS11に戻す。
【0047】
ステップS14が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS15に進める。
ステップS15において、制御部10は、ジャダー検出フラグがOFFであると判断した場合には(ステップS15:YES)、プログラムをステップS21に進める。一方で、制御部10は、ジャダー検出フラグがONであると判断した場合には(ステップS15:NO)、プログラムをステップS51に進める。
【0048】
ステップS51において、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、ステップS42で演算された基準半周期に第一係数αを乗算した値以上であると判断した場合には(ステップS51:YES)、プログラムをステップS52に進める。一方で、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、ステップS42で演算された基準半周期に第一係数αを乗算した値よりも小さいと判断した場合には(ステップS51:NO)、プログラムをステップS55に進める。
【0049】
ステップS52において、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、ステップS42で演算された基準半周期に第二係数βを乗算した値以下であると判断した場合には(ステップS52:YES)、プログラムをステップS53に進める。一方で、ジャダー発生判定部10dは、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の出力部材回転速度の振動半周期Tnが、ステップS42で演算された基準半周期に第二係数βを乗算した値よりも大きい判断した場合には(ステップS52:NO)、プログラムをステップS55に進める。
【0050】
ステップS53において、ジャダー発生判定部10dは、振動カウンタを1つ加算する。ステップS53が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS61に進める。
ステップS55において、ジャダー発生判定部10dは、振動カウンタをクリアする。ステップS51、S52のいずれかで、NOと判断されれば、それまで加算されていた振動カウンタがクリアされる。ステップS55が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS11に戻す。
【0051】
ステップS61において、ジャダー発生判定部10dは、振動カウンタが第二規定回数(例えば3回)以上であると判断した場合には(ステップS61:YES)、プログラムをステップS62に進める。一方で、ジャダー発生判定部10dは、振動カウンタが第二規定回数よりも少ないと判断した場合には(ステップS61:NO)、プログラムをステップS11に戻す。第二規定回数は、第一規定回数よりも少ない回数である。
【0052】
ステップS62において、ジャダー発生判定部10dは、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生していると判定する。このように、ジャダー発生判定部10dは、出力部材回転速度の振動振幅ΔNnが規定値以上であり(ステップS12:YES)、ジャダー検出フラグがONであり(ステップS15:YES)、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnが、基準半周期に対して規定範囲内である回数が、第一規定回数よりも少ない回数である第二規定回数以上連続した場合に(ステップS61:YES)、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生していると判定する。ステップS62が終了すると、制御部10は、プログラムをステップS11に戻す。
【0053】
(第二実施形態のジャダー発生判定装置の効果)
以上の説明から明らかなように、基準周期演算部10eは、ロックアップクラッチ34において、ジャダーが発生していると判定された際における振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnから所定回数x前までの振動半周期T(n−x)に基づいて、基準半周期を演算する(図4のステップS42)。そして、ジャダー発生判定部10dは、基準周期演算部10eによって基準半周期が演算された以降のロックアップクラッチ34におけるジャダーの検出については(ステップS15:YES)、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnが、基準周期演算部10eによって演算された基準半周期に対して規定範囲内である回数が、第一規定回数よりも少ない回数である第二規定回数以上連続した場合に(ステップS61:YES)、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生していると判定する(ステップS62)。このように、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生したか否かを判定するための第二規定回数は、第一規定回数よりも少ない回数である。このため、第一実施形態のジャダー発生判定装置1と比較して、第二実施形態のジャダー発生判定装置1は、より短時間で、ロックアップクラッチ34におけるジャダーの発生を判定することができる。
【0054】
(別の実施形態)
上記の説明では、駆動トルクを出力する駆動源は、エンジン2である。しかし、駆動トルクを出力する駆動源が、モータである実施形態であっても差し支え無い。
以上の説明では、摩擦式クラッチの一例であるロックアップクラッチ34のジャダー検出について、ジャダー発生判定装置1について説明した。しかし、摩擦式クラッチが、自動変速機4のクラッチやブレーキ、オートメイテッドマニュアルトランスミッションやデュアルクラッチ式トランスミッションのクラッチである実施形態にも、本発明のジャダー発生判定装置1は適用可能である。
【0055】
上記の説明では、出力部材回転速度検出部44は、入力軸41の回転速度を検出することにより、出力部材回転速度を検出している。しかし、出力部材回転速度検出部44は、入力軸41や出力部材34aと回転連結されている部材の回転速度を検出することにより、出力部材回転速度を検出する実施形態であっても差し支え無い。
【0056】
上記の説明では、ステップS42において、基準周期演算部10eは、ステップS32において、ジャダーが発生したと判定した際における、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnから所定回数x前までの振動半周期T(n−x)の平均値を基準半周期として演算する。しかし、ステップS42において、基準周期演算部10eは、ステップS32において、ジャダーが発生したと判定した際における、振動周期記憶部10cに記憶されている最新の振動半周期Tnから所定回数x前までの振動半周期T(n−x)の中央値を基準半周期として演算する実施形態であっても差し支え無い。
【0057】
上記の説明では、ジャダー検出フラグは、イグニッションがOFFされたとしてもONである状態が維持される。しかし、イグニッションがOFFされる度に、ONであったジャダー検出フラグがOFFにされる実施形態であっても差し支え無い。或いは、一定時間が経過する度や、車両100が規定走行距離を走行する度、ロックアップクラッチ34が規定回数接続される度に、ONであったジャダー検出フラグがOFFにされる実施形態であっても差し支え無い。
【0058】
上記の説明では、周期的変化が発生している出力部材回転速度の半周期である振動半周期T1、T2、T3…に基づいて、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生しているか否かを判断している。しかし、周期的変化が発生している出力部材回転速度の周期である振動周期t1、t2、t3…(図2示)に基づいて、ロックアップクラッチ34においてジャダーが発生しているか否かを判定する実施形態であっても差し支え無い。この実施形態では、図4のステップS42において、基準周期演算部10eは、最新の振動周期tnから所定回数x前までの振動周期t(n−x)に基づいて、基準周期を演算する。
なお、特許請求の範囲に記載の振動周期には、振動半周期T1、T2、T3…及び振動周期t1、t2、t3…の両方を含むものとする。また、特許請求の範囲に記載の基準周期には、基準半周期及び基準周期の両方を含むものとする。
本発明のジャダー発生判定装置1は、多板式のロックアップクラッチ34を有するトルクコンバータ3にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…ジャダー発生判定装置、2…エンジン(駆動源)、10…制御部、10a…振動振幅演算部、10b…振動周期演算部、10c…振動周期記憶部、10d…ジャダー発生判定部、10e…基準周期演算部、18R,18L…駆動輪、31…入力部材、34…ロックアップクラッチ(摩擦式クラッチ)、34a…出力部材、44…出力部材回転速度検出部
図1
図2
図3
図4