特許第6757433号(P6757433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6757433
(24)【登録日】2020年9月1日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1097 20160101AFI20200907BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/1016 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/1286 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/124 20160101ALI20200907BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20200907BHJP
   H01M 8/1006 20160101ALN20200907BHJP
   H01M 8/122 20160101ALN20200907BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20200907BHJP
【FI】
   H01M8/1097
   H01M8/1004
   H01M8/1016
   H01M8/1286
   H01M8/1226
   H01M8/1213
   H01M8/124
   !H01M8/10
   !H01M8/1006
   !H01M8/122
   !H01M8/12 101
   !H01M8/12 102A
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-53359(P2019-53359)
(22)【出願日】2019年3月20日
【審査請求日】2020年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕己
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/043328(WO,A1)
【文献】 特開2005−026055(JP,A)
【文献】 特開2015−167128(JP,A)
【文献】 特開2016−181350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
H01M 8/12
C25B 9/00
C25B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、第2電極層、及び前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される電解質層、を有するセル本体部と、
前記セル本体部を支持する支持面、及び前記支持面に開口する供給孔、を有し、前記セル本体部を支持する金属支持体と、
を備え、
前記セル本体部の少なくとも一部は、前記金属支持体の前記供給孔内に入り込んでおり、
前記金属支持体は、前記支持面と前記供給孔の内壁面とを連結する湾曲面を有する、
電気化学セル。
【請求項2】
前記第1電極層は、前記金属支持体の支持面上に配置される、
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記第1電極層は、前記金属支持体を向く面の反対側の面に形成される凹部を有し、
前記凹部は、前記第1電極層の厚さ方向視において前記供給孔と重複する、
請求項1又は2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記湾曲面の表面粗さは、前記供給孔の内壁面の表面粗さよりも小さい、
請求項1から3のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記第1電極層は、アノードとして機能し、
前記第2電極層は、カソードとして機能する、
請求項1から3のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記電解質層は、酸素イオン伝導性を有する、
請求項1から5のいずれかに記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記電解質層は、水酸化物イオン伝導性を有する、
請求項1から5のいずれかに記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池などの電気化学セルにおいて、金属支持体によってセル本体部を支持する構造が知られている。例えば、特許文献1に開示された電気化学セルは、金属支持体上に、電極層、中間層、電解質層、反応防止層、及び対極電極層対向がこの順で積層されている。金属支持体は、電極層へ気体を供給するために、貫通孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/181926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属支持体はセル本体部と熱膨張率が異なるため、電気化学セルの運転及び停止のくり返しなどによって、金属支持体上に形成された電極層が金属支持体から剥離するおそれがあるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、金属支持体からのセル本体部の剥離を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る電気化学セルは、セル本体部と、金属支持体とを備える。セル本体部は、第1電極層、第2電極層、及び電解質層を有する。電解質層は、第1電極層と第2電極層との間に配置される。金属支持体は、セル本体部を支持する。金属支持体は、支持面、及び供給孔を有する。支持面は、セル本体部を支持する。供給孔は、支持面に開口する。セル本体部の少なくとも一部は、金属支持体の供給孔内に入り込んでいる。金属支持体は、支持面と供給孔の内壁面とを連結する湾曲面を有する。
【0007】
この構成によれば、セル本体部の一部が金属支持体の供給孔内に入り込んでいるため、セル本体部と金属支持体との接合強度を向上させることができる。このため、金属支持体からのセル本体部の剥離を抑制することができる。ここで、単にセル本体部の一部を供給孔内に入り込ませる構成では、セル本体部のうち、供給孔のエッジ部分と当接する部分に応力集中が発生してセル本体部にクラックが生じるおそれがある。これに対して、上述したように構成された電気化学セルでは、供給孔の内壁面と、金属支持体の支持面との間を湾曲面によって構成している。このため、セル本体部は、供給孔のエッジ部分には当接せずに湾曲面と当接することになる。したがって、供給孔のエッジ部分に起因するセル本体部のクラックの発生を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、第1電極層は、金属支持体の支持面上に配置される。
【0009】
好ましくは、第1電極層は、金属支持体を向く面の反対側の面に形成される凹部を有する。凹部は、第1電極層の厚さ方向視において供給孔と重複する。この構成によれば、供給孔から供給された燃料などが第1電極層の面内方向に広がりやすくなる。
【0010】
好ましくは、湾曲面の表面粗さは、供給孔の内壁面の表面粗さよりも小さい。
【0011】
好ましくは、第1電極層はアノードとして機能し、第2電極層はカソードとして機能する。
【0012】
好ましくは、電解質層は、酸素イオン伝導性を有する。
【0013】
好ましくは、電解質層は、水酸化物イオン伝導性を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属支持体からのセル本体部の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る燃料電池セルの構成を示す断面図。
図2】第1実施形態に係る燃料電池セルの詳細を示す拡大断面図。
図3】第1実施形態に係る燃料電池セルにおけるガスの流れを模式的に示す図。
図4】第2実施形態に係る燃料電池セルの構成を示す断面図。
図5】第2実施形態に係る燃料電池セルの詳細を示す拡大断面図。
図6】第2実施形態に係る燃料電池セルにおけるガスの流れを模式的に示す図。
図7】第1実施形態の変形例に係る燃料電池セルの詳細を示す拡大断面図。
図8】第2実施形態の変形例に係る燃料電池セルの詳細を示す拡大断面図。
図9】第1実施形態の変形例に係る燃料電池セルの構成を示す断面図。
図10】第1及び第2実施形態の変形例に係る燃料電池セルの詳細を示す拡大断面図。
図11】第1及び第2実施形態の変形例に係る燃料電池セルの詳細を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態
[固体酸化物形燃料電池セル]
固体酸化物形燃料電池セル1は、O2−(酸素イオン)をキャリアとする。固体酸化物形燃料電池セル1は、本発明に係る「電気化学セル」の一例である。以下の説明では、固体酸化物形燃料電池セルを「セル」と略称する。
【0017】
図1は、第1実施形態に係るセル1の構成を示す断面図である。セル1は、セル本体部10と、金属支持体4とを備える。また、セル1は、流路部材3をさらに備えている。セル本体部10は、第1電極層5、中間層6、電解質層7、反応防止層8、及び第2電極層9を有する。
【0018】
[流路部材3]
流路部材3は、金属支持体4に接合される。流路部材3は、流路31を有する。流路31は、流路部材3の金属支持体4と対向する面に形成されている。本実施形態では、流路部材3の上面に流路31が形成されている。流路31は、金属支持体4に向かって開口している。流路31は、図示しないマニホールドなどに繋がる。本実施形態では、流路31に燃料ガス(例えば、水素ガス)が供給される。
【0019】
流路部材3は、例えば、合金材料によって構成することができる。流路部材3は、金属支持体4と同様の材料によって形成されていてもよい。
【0020】
[金属支持体4]
金属支持体4は、セル本体部10を支持する。本実施形態において、金属支持体4は、板状に形成されているが、これに限られない。金属支持体4は、例えば、筒状、或いは、箱状などの他の形状であってもよい。
【0021】
金属支持体4は、複数の供給孔41、及び支持面42を有している。金属支持体4の支持面42は、セル本体部10を支持している。なお、本実施形態では、金属支持体4の上面が支持面42である。
【0022】
複数の供給孔41は、金属支持体4のうち第1電極層5に接合される領域に形成されている。供給孔41は、支持面42に開口している。詳細には、供給孔41は、金属支持体4を厚さ方向に貫通している。供給孔41は、流路部材3の流路31と連通している。
【0023】
このため、流路31を流れる燃料ガスは、供給孔41を介して、第1電極層5に供給される。この供給孔41内にセル本体部10の少なくとも一部が入り込んでいる。詳細には、セル本体部10の第1電極層5の一部が供給孔41内に入り込んでいる。
【0024】
供給孔41は、機械加工(例えば、パンチング加工)、レーザ加工、或いは、化学加工(例えば、エッチング加工)などによって形成することができる。供給孔41は、例えば、金属支持体4の厚さ方向視において、円形状である。また、金属支持体4は、ガス透過性を持たせるために、多孔質金属を用いることもできる。
【0025】
金属支持体4は、板状に形成される。金属支持体4は、平板状であってもよいし、曲板状であってもよい。金属支持体4は、セル1の強度を保つことができればよく、その厚みは特に制限されないが、例えば0.1mm〜2.0mmとすることができる。
【0026】
金属支持体4は、金属材料によって構成されている。例えば、金属支持体4は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。金属支持体4におけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。
【0027】
金属支持体4は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。金属支持体4におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。金属支持体4におけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。金属支持体4は、TiをTiO(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl(アルミナ)として含有していてもよい。
【0028】
金属支持体4は、表面に酸化クロム膜を有していてもよい。酸化クロム膜は、金属支持体4の表面のうち少なくとも一部を覆う。酸化クロム膜は、金属支持体4の表面のうち少なくとも一部を覆っていればよいが、表面の略全面を覆っていてもよい。また、酸化クロム膜は、供給孔41の内壁面を覆っていてもよい。
【0029】
酸化クロム膜は、酸化クロムを主成分として含有する。本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含む」とは、組成物X全体のうち、物質Yが70重量%以上を占めることを意味する。酸化クロム膜の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜20μmとすることができる。
【0030】
[第1電極層5]
第1電極層5は、金属支持体4によって支持される。詳細には、第1電極層5は、金属支持体4の支持面42上に配置される。第1電極層5は、金属支持体4のうち複数の供給孔41が設けられた領域を覆うように設けられる。
【0031】
図2に示すように、第1電極層5の一部は、供給孔41に入り込んでいる。特に限定されるものではないが、この供給孔41に入り込んだ第1電極層5の高さhは、0.5〜50μm程度である。
【0032】
第1電極層5は、多孔質であることが好ましい。第1電極層5の気孔率は特に制限されないが、例えば20%〜70%とすることができる。第1電極層5の厚さは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0033】
本実施形態において、第1電極層5には燃料ガス(例えば、水素ガス)が供給され、第1電極層5は、アノード(燃料極)として機能する。第1電極層5は、NiO−GDC(ガドリニウムドープセリア)、Ni−GDC、NiO−YSZ(イットリア安定化ジルコニア))、Ni−YSZ、CuO−CeO、Cu−CeOなどの複合材料によって構成することができる。
【0034】
第1電極層5の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法(溶射法、エアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法など)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することができる。また、第1電極層5は、金属支持体4の支持面42上に形成される。
【0035】
[中間層6]
図1に示すように、中間層6は、第1電極層5上に配置される。中間層6は、第1電極層5と電解質層7との間に介挿される。中間層6の厚さは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0036】
中間層6は、酸化物イオン(酸素イオン)伝導性を有することが好ましい。中間層6は、電子伝導性を有することがより好ましい。中間層6は、YSZ、GDC、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)などによって構成することができる。中間層6の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0037】
[電解質層7]
電解質層7は、第1電極層5と第2電極層9との間に配置される。本実施形態では、セル本体部10が中間層6及び反応防止層8を有しているため、電解質層7は、中間層6と反応防止層8との間に介挿されている。
【0038】
本実施形態において、電解質層7は、第1電極層5全体を覆うように形成されており、電解質層7の外縁は、金属支持体4の支持面42に接合されている。これにより、第1電極層5に供給される燃料ガスと第2電極層9に供給される酸化剤ガスとの混合を抑制できるため、金属支持体4と電解質層7との間を別途封止する必要がない。
【0039】
電解質層7は、酸化物イオン伝導性を有する。具体的には、電解質層7は、酸素イオン伝導性を有する。電解質層7は、酸化剤ガスと燃料ガスとの混合を抑制できる程度のガスバリア性を有する。電解質層7は、複層構造であってもよいが、少なくとも1つの層が緻密層であることが好ましい。緻密層の気孔率は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。電解質層7の厚さは特に制限されないが、例えば1μm〜10μmとすることができる。
【0040】
電解質層7は、YSZ、GDC、SSZ、SDC、LSGMなどによって構成することができる。電解質層7の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0041】
[反応防止層8]
反応防止層8は、電解質層7上に配置される。反応防止層8は、電解質層7と第2電極層9との間に介挿される。反応防止層8の厚さは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。反応防止層8は、第2電極層9の構成材料と電解質層7の構成材料とが反応して高抵抗層が形成されることを抑制する。
【0042】
反応防止層8は、GDC、SDCなどのセリア系材料によって構成することができる。反応防止層8の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0043】
[第2電極層9]
第2電極層9は、電解質層7を基準として、第1電極層5の反対側に配置される。本実施形態では、セル1が反応防止層8を有しているため、第2電極層9は、反応防止層8上に配置される。
【0044】
第2電極層9は、多孔質であることが好ましい。第2電極層9の気孔率は特に制限されないが、例えば20%〜70%とすることができる。第2電極層9の厚さは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0045】
本実施形態において、第2電極層9には酸化剤ガス(例えば、空気)が供給され、第2電極層9は、カソード(空気極)として機能する。第2電極層9は、LSCF、LSF、LSC、LNF、LSMなどによって構成することができる。特に、第2電極層9は、La、Sr、Sm、Mn、CoおよびFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含んでいることが好ましい。
【0046】
第2電極層9の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。第2電極層9の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0047】
[金属支持体の供給孔周りの詳細な構成]
図2に示すように、金属支持体4は、湾曲面43を有している。この湾曲面43は、供給孔41の内壁面と、支持面42とを連結している。すなわち、供給孔41のセル本体部10側のエッジ部分が湾曲面43によって構成されている。湾曲面43は、外側に向かって膨らむように湾曲している。湾曲面43の断面形状は、円弧状である。湾曲面43は、供給孔41の内壁面と支持面42とがなす角部を面取り加工することによって形成することができる。特に限定されるものではないが、この湾曲面43の曲率半径は、例えば、20〜1000μm程度である。
【0048】
湾曲面43の表面粗さは、供給孔41の内壁面の表面粗さよりも小さくてもよい。詳細には、湾曲面43の算術平均粗さが、供給孔41の内壁面の算術平均粗さよりも小さくてもよい。なお、これらの表面粗さは、第1電極層5が形成される前の金属支持体4単体の状態で測定する。
【0049】
第1電極層5は、第1主面51と、第2主面52を有している。第1主面51は、金属支持体4を向く面である。すなわち、第1主面51は、金属支持体4の支持面42と接合する面である。本実施形態では、第1主面51は、第1電極層5の下面である。
【0050】
第2主面52は、第1主面51の反対側の面である。すなわち、第2主面52は、電解質層7を向く面である。なお、第2主面52は、中間層6と接合している。本実施形態では、第2主面52は、第1電極層5の上面である。
【0051】
第1電極層5は、複数の凹部53を有している。凹部53は、第1電極層5の第2主面52に形成されている。凹部53は、第1電極層5の厚さ方向視(図2の上下方向視)において、供給孔41と重複している。すなわち、凹部53は、供給孔41の直上に配置されている。
【0052】
凹部53の深さdは、特に限定されるものではないが、例えば、0.5〜50μm程度である。また、凹部53は、外周縁から中央部に向かって徐々に深くなっている。凹部53は、最も深い部分から外周縁に向かう斜面を有している。
【0053】
このように、供給孔41の直上に凹部53が配置されているため、図3に示すように、供給孔41から第1電極層5に供給されたガス(例えば燃料ガス)は、凹部53にガイドされて第1電極層5の面内方向に広がりやすい。このため、供給孔41直上以外の部分の界面にもガスが供給されやすくなる。なお、図3の矢印は、ガスの流れを模式的に表したものである。
【0054】
[セル1の動作]
まず、流路31から各供給孔41を介して第1電極層5に燃料ガスを供給し、かつ、第2電極層9に酸化剤ガスを供給しながら、セル1を作動温度(例えば、600℃〜850℃)まで加熱する。すると、第2電極層9においてO(酸素)がe(電子)と反応してO2−(酸素イオン)が生成される。生成されたO2−は、電解質層7を通って第1電極層5に移動する。第1電極層5に移動したO2−は、燃料ガスに含まれるH(水素)と反応して、HO(水)とeとが生成される。このような反応によって、第1電極層5と第2電極層9との間に起電力が発生する。
【0055】
2.第2実施形態
[固体アルカリ形燃料電池セル]
固体アルカリ形燃料電池セル11は、OH(水酸化物イオン)をキャリアとするアルカリ形燃料電池(AFC)の一種である。固体アルカリ形燃料電池セル11は、本発明に係る「電気化学セル」の一例である。以下の説明では、固体アルカリ形燃料電池セルを「セル」と略称する。
【0056】
図4は、第2実施形態に係るセル11の構成を示す断面図である。セル11は、セル本体部110と、金属支持体14とを備える。また、セル11は、流路部材13をさらに備えている。セル本体部110は、第1電極層15、電解質層17、及び第2電極層19を有する。
【0057】
[流路部材13]
流路部材13は、金属支持体14に接合される。流路部材13は、流路131を有する。流路131は、流路部材13の金属支持体14と対向する面に形成されている。本実施形態では、流路部材13の上面に流路131が形成されている。流路131は、金属支持体14に向かって開口している。流路131は、図示しないマニホールドなどに繋がる。本実施形態では、流路131に燃料が供給される。
【0058】
流路部材13は、例えば、合金材料によって構成することができる。流路部材13は、金属支持体14と同様の材料によって形成されていてもよい。
【0059】
[金属支持体14]
金属支持体14は、セル本体部110を支持する。本実施形態において、金属支持体14は、板状に形成されているが、これに限られない。金属支持体14は、例えば、筒状、或いは、箱状などの他の形状であってもよい。
【0060】
金属支持体14は、複数の供給孔141、及び支持面142を有している。金属支持体14の支持面142は、セル本体部110を支持している。なお、本実施形態では、金属支持体14の上面が支持面142である。
【0061】
複数の供給孔141は、金属支持体14のうち第1電極層15に接合される領域に形成されている。供給孔141は、支持面142に開口している。詳細には、供給孔141は、金属支持体14を厚さ方向に貫通している。供給孔141は、流路部材13の流路131と連通している。
【0062】
このため、流路131を流れる燃料は、供給孔141を介して、第1電極層15に供給される。この供給孔141内にセル本体部110の少なくとも一部が入り込んでいる。詳細には、セル本体部110の第1電極層15の一部が供給孔141内に入り込んでいる。
【0063】
供給孔141は、機械加工(例えば、パンチング加工)、レーザ加工、或いは、化学加工(例えば、エッチング加工)などによって形成することができる。供給孔141は、例えば、金属支持体14の厚さ方向視において、円形状である。また、金属支持体14は、多孔質金属を用いることもできる。
【0064】
金属支持体14は、板状に形成される。金属支持体14は、平板状であってもよいし、曲板状であってもよい。金属支持体14は、セル11の強度を保つことができればよく、その厚みは特に制限されないが、例えば0.1mm〜2.0mmとすることができる。
【0065】
金属支持体14は、金属材料によって構成されている。例えば、金属支持体14は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。金属支持体14におけるCrの含有率は特に制限されないが、4〜30質量%とすることができる。
【0066】
金属支持体14は、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。金属支持体14におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01〜1.0at.%とすることができる。金属支持体14におけるAlの含有率は特に制限されないが、0.01〜0.4at.%とすることができる。金属支持体14は、TiをTiO(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl(アルミナ)として含有していてもよい。
【0067】
金属支持体14は、表面に酸化クロム膜を有していてもよい。酸化クロム膜は、金属支持体14の表面のうち少なくとも一部を覆う。酸化クロム膜は、金属支持体14の表面のうち少なくとも一部を覆っていればよいが、表面の略全面を覆っていてもよい。また、酸化クロム膜は、供給孔141の内壁面を覆っていてもよい。
【0068】
酸化クロム膜は、酸化クロムを主成分として含有する。本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含む」とは、組成物X全体のうち、物質Yが70重量%以上を占めることを意味する。酸化クロム膜の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜20μmとすることができる。
【0069】
[第1電極層15]
第1電極層15は、金属支持体14によって支持される。詳細には、第1電極層15は、金属支持体14の支持面142上に配置される。第1電極層15は、金属支持体14のうち複数の供給孔141が設けられた領域を覆うように設けられる。
【0070】
図5に示すように、第1電極層15の一部は、供給孔141に入り込んでいる。特に限定されるものではないが、この供給孔141に入り込んだ第1電極層15の高さhは、0.5〜50μm程度である。
【0071】
第1電極層15は、多孔質であることが好ましい。第1電極層15の気孔率は特に制限されないが、例えば20%〜70%とすることができる。第1電極層15の厚さは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0072】
第1電極層15は、一般的に燃料極と呼ばれるアノードである。本実施形態において、第1電極層15には水素原子(H)を含む燃料が供給される。水素原子を含む燃料は、第1電極層15において水酸化物イオン(OH)と反応可能な燃料化合物を含んでいればよく、液体燃料及び気体燃料のいずれの形態であってもよい。
【0073】
燃料化合物としては、例えば、(i)ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、及びカルボンヒドラジド((NHNHCO)等のヒドラジン類、(ii)尿素(NHCONH)、(iii)アンモニア(NH)、(iv)イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等の複素環類化合物、(v)ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)等のヒドロキシルアミン類、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの燃料化合物のうち炭素を含まない化合物(すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アンモニア、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)は、一酸化炭素による触媒被毒の問題が無いため特に好適である。
【0074】
燃料化合物は、そのまま燃料として用いてもよいが、水及び/又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール等)に溶解させた溶液として用いてもよい。例えば、上記燃料化合物のうち、ヒドラジン、水化ヒドラジン、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンは液体であるので、そのまま液体燃料として使用可能である。また、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、カルボンヒドラジド、尿素、イミダゾール、及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、及び硫酸ヒドロキシルアミンは固体であるが水に可溶である。1,3,5−トリアジン及びヒドロキシルアミンは固体であるがアルコールに可溶である。アンモニアは気体であるが水に可溶である。このように、固体の燃料化合物は、水又はアルコールに溶解させて液体燃料として使用可能である。燃料化合物を水及び/又はアルコールに溶解させて用いる場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、例えば30〜99.9重量%であり、好ましくは66〜99.9重量%である。
【0075】
また、メタノール、エタノール等のアルコール類やエーテル類を含む炭化水素系液体燃料、メタン等の炭化水素系ガス、或いは純水素などは、そのまま燃料として用いることができる。特に、本実施形態に係るセル10に用いられる燃料としては、メタノールが好適である。メタノールは、気体状態、液体状態、及び、気液混合状態のいずれであってもよい。
【0076】
第1電極層15は、AFCに使用される公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。第1電極層15及びそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、白金ルテニウム担持カーボン(PtRu/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0077】
第1電極層15の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を金属支持体14の支持面142上に塗布することにより形成することができる。
【0078】
[電解質層17]
図4に示すように、電解質層17は、第1電極層15と第2電極層19との間に配置される。電解質層17は、第1電極層15及び第2電極層19のそれぞれに接続される。
【0079】
本実施形態において、電解質層17は、第1電極層15全体を覆うように形成されており、電解質層17の外縁は、金属支持体14の支持面142に接合されている。これにより、第1電極層15に供給される燃料と第2電極層19に供給される酸化剤との混合を抑制できるため、金属支持体14と電解質層17との間を別途封止する必要がない。
【0080】
電解質層17は、水酸化物イオン伝導性を有する。セル11の発電中、電解質層17は、第2電極層19側から第1電極層15側に水酸化物イオン(OH)を伝導させる。電解質層17の水酸化物イオン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。電解質層17の水酸化物イオン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
【0081】
電解質層17は、緻密であることが好ましい。アルキメデス法で算出される電解質層17の相対密度は特に制限されないが、90%以上が好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上である。電解質層17は、例えば水熱処理によって緻密化することができる。
【0082】
電解質層17は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料によって構成することができる。このようなセラミックス材料としては、水酸化物イオン伝導性を有する周知のセラミックスを用いることができるが、以下に説明する層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)が特に好適である。
【0083】
LDHは、M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4、mは水のモル数を意味する任意の整数である)の一般式で示される基本組成を有する。M2+の例としてはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、及びZn2+が挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Y3+、Ce3+、Mo3+、及びCr3+が挙げられ、Anの例としてはCO2−及びOHが挙げられる。M2+及びM3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0084】
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。中間層は、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層は、例えば金属MがNi、Al、Tiの場合には、Ni、Al、Ti及びOH基を含む。以下、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含む場合について説明する。
【0085】
LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましいが、他の元素ないしイオンを含んでいてもよいし、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物は、製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。
【0086】
LDHの中間層は、陰イオン及びHOで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH及び/又はCO2−を含む。
【0087】
上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合、LDHは、一般式:Ni2+1−x−yAl3+Ti4+(OH)n−(x+2y)/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0088】
[第2電極層19]
第2電極層19は、電解質層17を基準として、第1電極層15の反対側に配置される。本実施形態では、第2電極層19は、電解質層17上に配置される。
【0089】
第2電極層19は、多孔質であることが好ましい。第2電極層19の気孔率は特に制限されないが、例えば20%〜70%とすることができる。第2電極層19の厚さは特に制限されないが、例えば1μm〜100μmとすることができる。
【0090】
第2電極層19は、一般的に空気極と呼ばれるカソードである。セル10の発電中、第2電極層19には、酸素(O)を含む酸化剤が供給される。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。第2電極層19は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。
【0091】
第2電極層19は、AFCに使用される公知のカソード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8〜10族元素(IUPAC形式での周期表において第8〜10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。第2電極層19における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.05〜10mg/cm、より好ましくは、0.05〜5mg/cmである。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。第2電極層19ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、白金コバルト担持カーボン(PtCo/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0092】
第2電極層19の作製方法は特に限定されないが、例えば、カソード触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を電解質層17上に塗布することにより形成することができる。
【0093】
[金属支持体の供給孔周りの詳細な構成]
図5に示すように、金属支持体14は、湾曲面143を有している。この湾曲面143は、供給孔141の内壁面と、支持面142とを連結している。すなわち、供給孔141のセル本体部110側のエッジ部分が湾曲面143によって構成されている。湾曲面143は、外側に向かって膨らむように湾曲している。湾曲面143の断面形状は、円弧状である。湾曲面143は、供給孔141の内壁面と支持面142とがなす角部を面取り加工することによって形成することができる。特に限定されるものではないが、この湾曲面143の曲率半径は、例えば、20〜1000μm程度である。
【0094】
湾曲面143の表面粗さは、供給孔141の内壁面の表面粗さよりも小さくてもよい。詳細には、湾曲面143の算術平均粗さが、供給孔141の内壁面の算術平均粗さよりも小さくてもよい。なお、これらの表面粗さは、第1電極層15が形成される前の金属支持体14単体の状態で測定する。
【0095】
第1電極層15は、第1主面151と、第2主面152を有している。第1主面151は、金属支持体14を向く面である。すなわち、第1主面151は、金属支持体14の支持面142と接合する面である。本実施形態では、第1主面151は、第1電極層15の下面である。
【0096】
第2主面152は、第1主面151の反対側の面である。すなわち、第2主面152は、電解質層17を向く面である。なお、第2主面152は、電解質層17と接合している。本実施形態では、第2主面152は、第1電極層15の上面である。
【0097】
第1電極層15は、複数の凹部153を有している。凹部153は、第1電極層15の第2主面152に形成されている。凹部153は、第1電極層15の厚さ方向視(図5の上下方向視)において、供給孔141と重複している。すなわち、凹部153は、供給孔141の直上に配置されている。
【0098】
凹部153の深さdは、特に限定されるものではないが、例えば、0.5〜50μm程度である。また、凹部153は、外周縁から中央部に向かって徐々に深くなっている。凹部153は、最も深い部分から外周縁に向かう斜面を有している。
【0099】
このように、供給孔141の直上に凹部153が配置されているため、図6に示すように、供給孔141から第1電極層15に供給された燃料は、凹部153にガイドされて第1電極層15の面内方向に広がりやすい。このため、供給孔41直上以外の部分の界面にも燃料が供給されやすくなる。なお、図6の矢印は、燃料の流れを模式的に表したものである。
【0100】
[セル11の動作]
まず、流路131から各供給孔141を介して第1電極層15に燃料ガスを供給し、かつ、第2電極層19に酸化剤を供給しながら、セル11を作動温度(例えば、50℃〜250℃)まで加熱する。すると、第2電極層19においてO(酸素)が水及びe(電子)と反応してOH(水酸化物イオン)が生成される。生成されたOHは、電解質層17を通って第1電極層15に移動する。第1電極層15に移動したOHは、燃料と反応して、HO(水)とCO(二酸化炭素)とeとが生成される。このような反応によって、第1電極層15と第2電極層19との間に起電力が発生する。
【0101】
[変形例]
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0102】
変形例1
上記第1実施形態では、第1電極層5が金属支持体4の供給孔41の一部のみに入り込んでいるが、セル1の構成はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、第1電極層5が、供給孔41の全体に入り込んでいてもよい。同様に、第2実施形態でも、第1電極層15が金属支持体14の供給孔141の一部のみに入り込んでいるが、セル11の構成はこれに限定されない。例えば、図8に示すように、第1電極層15が、供給孔141の全体に入り込んでいてもよい。
【0103】
変形例2
上記第1及び第2実施形態において、金属支持体4、14は、酸化クロム膜を有することとしたが、酸化クロム膜を有していなくてもよい。また、金属支持体4、14は、酸化クロム膜上に形成された被覆膜をさらに有していてもよい。被覆膜を構成する材料としては、セラミックス材料及び金属材料などを用いることができる。セラミックス材料としては、例えば、LaおよびSrを含有するペロブスカイト形複合酸化物、Mn,Co,Ni,Fe,Cu等の遷移金属から構成されるスピネル型複合酸化物、ガラス材料などを用いることができる。金属材料としては、Ni、Co、Fe、Cuなどを用いることができる。なお、金属支持体4、14の表面のうち流路部材3、13及び第1電極層5、15それぞれが接続されない領域には導電性が必要とされないため、当該領域は、絶縁性材料で構成される被覆膜によって被覆されていてもよい。
【0104】
変形例3
上記第1実施形態において、セル本体部10は、中間層6及び反応防止層8を有しているが、中間層6及び反応防止層8の少なくとも一方を有していなくてよい。
【0105】
変形例4
上記第1及び第2実施形態において、第1電極層5、15はアノードとして機能し、第2電極層9、19はカソードとして機能することとしたが、第1電極層5、15がカソードとして機能し、第2電極層9、19がアノードとして機能してもよい。この場合、第1電極層5、15と第2電極層9、19の構成材料を入れ替えるとともに、第1電極層5、15の外表面に燃料を流すとともに、流路31,131に酸化剤を流せばよい。そして、上記第1実施形態の場合は、図9に示すように、中間層6と反応防止層8の配置を入れ替えてもよい。
【0106】
変形例5
上記第1及び第2実施形態では、供給孔4、14は、厚さ方向視において円形状であるが、供給孔4、14の形状はこれに限定されない。例えば、供給孔4、14はスリット状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0107】
変形例6
第1及び第2実施形態において、図10に示すように、金属支持体4、14は、複数の突起部44,144をさらに有していてもよい。突起部44、144は、金属支持体4、14の露出面45,145と供給孔41,141の内壁面とがなす角部から突出している。なお、露出面45,145は支持面42,142と反対側の面である。露出面45,145は、流路部材3、13を向いている。露出面45,145は、流路31,131に露出している。
【0108】
突起部44,144は、図10に示すように流路31,131に向かって延びていてもよいし、図11に示すように供給孔41,141の対向する内壁面に向かって延びていてもよい。突起部44,144は、供給孔41,141の外周縁に沿って連続して形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。突起部44,144は、断面形状において、先端に向かって細くなるように形成されている。この突起部44,144は、例えば、所望の突起形状が付与された金型によりプレス加工することによって形成することができる。
【0109】
変形例7
上記第1実施形態では、電気化学セルの一例として、O2−(酸素イオン)をキャリアとする固体酸化物形燃料電池セル1について説明した。また、上記第2実施形態では、電気化学セルの一例として、OH(水酸化物イオン)をキャリアとする固体アルカリ形燃料電池セル11について説明した。しかしながら、電気化学セルとは、電気エネルギーを化学エネルギーに変えるため、全体的な酸化還元反応から起電力が生じるように一対の電極が配置された素子と、化学エネルギーを電気エネルギーに変えるための素子との総称である。従って、電気化学セルには、例えば、プロトンをキャリアとする燃料電池や、水蒸気から水素と酸素を生成する電解セルなどが含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1、11 セル
4、14 金属支持体
41、141 供給孔
42、142 支持面
43、143 湾曲面
5、15 第1電極層
53、153 凹部
7、17 電解質層
9、19 第2電極層
10、110 セル本体部
【要約】
【課題】金属支持体からのセル本体部の剥離を抑制する。
【解決手段】電気化学セル1は、セル本体部と、金属支持体4とを備える。セル本体部は、第1電極層5、第2電極層、及び電解質層7を有する。電解質層7は、第1電極層5と第2電極層との間に配置される。金属支持体4は、セル本体部を支持する。金属支持体4は、支持面42、及び供給孔41を有する。支持面42は、セル本体部を支持する。供給孔41は、支持面42に開口する。セル本体部の少なくとも一部は、金属支持体4の供給孔41内に入り込んでいる。金属支持体4は、支持面42と供給孔41の内壁面とを連結する湾曲面43を有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11