(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の防水通音部材1の平面図である。
図2は、防水通音部材1の断面図である。なお、
図1では、第3粘着層6の図示を省略している。防水通音部材1は、防水通音膜2と、防水通音膜2に接着された支持層3と、を備えている。防水通音膜2は、音の透過を許容し、水の通過を遮断する膜である。支持層3は、防水通音膜2の少なくとも一方側の面に接着していればよく、本実施形態では、防水通音膜2の一方側(
図2の上側)の面のみに接着されている。防水通音部材1は、第1粘着層4、第2粘着層5及び第3粘着層6をさらに備えている。第2粘着層5は、防水通音膜2の一方側(
図2の上側)の面に設けられ、支持層3を防水通音膜2に接着している。第3粘着層6は、支持層3の一方側(
図2の上側)の面に設けられ、支持層3を筐体に接着している。第1粘着層4は、防水通音膜2の他方側(
図2の下側)の面に設けられ、防水通音膜2を音響装置(例えば、
図6に示すマイクロフォン33、
図7に示すスピーカ45)に接着している。防水通音部材1は、第3粘着層6、支持層3、第2粘着層5、防水通音膜2及び第1粘着層4の順に積層されている。
【0011】
図3に示すように、防水通音部材1は、第3粘着層6を備えていない構成であってもよい。また、
図4に示すように、防水通音部材1は、第1粘着層4上に、第2支持層7と第4粘着層8とをさらに備えていてもよい。第2支持層7は、防水通音膜2の他方側(
図4の下側)の面に接着される。第1粘着層4は、防水通音膜2の他方側(
図4の下側)の面に設けられ、防水通音膜2を第2支持層7に接着している。第4粘着層8は、第2支持層7の他方側(
図2の下側)の面に設けられ、第2支持層7を音響装置(例えば、
図6に示すマイクロフォン33、
図7に示すスピーカ45)に接着している。また、
図5に示すように、防水通音部材1は、
図4に示した構成から第3粘着層6が除去された構成であってもよい。
【0012】
図1に示すように、防水通音膜2の外周端は、長辺及び短辺を有する長方形である。音が通過する方向に沿って見たときに、支持層3は、防水通音膜2の外周端と一致する外周端を有する。支持層3は、内部領域10を囲む枠部3Aと、枠部3Aに接続した連結部3Bと、を有している。内部領域10の外周端は、長辺及び短辺を有する長方形である。連結部3Bは、内部領域10を第1開口部11と第2開口部12とに分割するように配置されている。内部領域10を含むように内部領域10に接する仮想的な長方形のうち面積が最小となる長方形を第1四角形21としたときに、第1四角形21の短辺に対する長辺の比R1が5以上である。すなわち、内部領域10の外周端は、細長い長方形である。防水通音部材1を通過する音の歪みは、比R1が5以上、さらに7以上である場合に顕著となる。
図1において、比R1は、(D1+E+D2)/Cにより表される。
【0013】
第1開口部11及び第2開口部12の外周端は、それぞれ長辺及び短辺を有する長方形である。本実施形態では、第1開口部11及び第2開口部12は、同一の形状を有している。第1開口部11の長辺及び短辺の長さは、第2開口部12の長辺及び短辺の長さとそれぞれ同一である。第1開口部11及び第2開口部12のそれぞれについて、各開口部11,12を含むように当該開口部11,12に接する仮想的な長方形のうち面積が最小となる長方形を第2四角形22A,22Bとしたときに、第2四角形22A,22Bの短辺に対する長辺の比R2が比R1よりも小さくなるように、連結部3Bが配置されている。すなわち、各開口部11,12の外周端は、内部領域10の外周端に比して細長くない長方形である。比R2は、4以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましい。比R2は、その定義より、1以上の値となる。なお、比R2が1であるとき、第2四角形22A,22Bは、正方形となる。
図1において、比R2は、D1/C又はD2/Cにより表される。
【0014】
連結部3Bは、内部領域10を第1開口部11と第2開口部12とに分割するように配置されている。本実施形態では、連結部3Bは、内部領域10を等しく分割する中心線Oに沿って内部領域10を横断し、枠部3Aの内周端を連結するように配置されている。本実施形態では、連結部3Bは、内部領域10の外周端の長辺に対して垂直、かつ内部領域10の外周端の短辺に対して平行に延びている。内部領域10の面積に対する連結部3Bの面積の比は0.3以下であることが好ましい。言い換えれば、内部領域10の面積に対する2以上の開口部の面積の合計の比(開口部11,12の面積の合計の比)R3が0.7以上であることが好ましい。比R3は、0.8以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。ただし、比R3は、その定義より、1未満の値となる。比R3が大きく、連結部3Bの面積が開口部11,12の面積の合計に比して十分に小さい形態は、防水通音膜2の通音性の確保に適している。
【0015】
防水通音膜2は、開口部11,12から露出している通音領域2A,2Bを有している。音が通過する方向に沿って見たときに、第1粘着層4、第2粘着層5及び第3粘着層6の外周端は、防水通音膜2の外周端と一致する。第1粘着層4、第2粘着層5及び第3粘着層6は、それぞれ2つの開口部を有し、音が通過する方向に沿って見たときに、2つの開口部を囲む粘着層4,5,6の内周端は、開口部11,12の外周端と一致している。
【0016】
防水通音部材1の外周端の短辺の長さAは、例えば2.0mm以上30mm以下であることが好ましく、防水通音部材1の外周端の長辺の長さBは、例えば4.0mm以上60mm以下であることが好ましい。開口部11,12の外周端の短辺の長さCは、例えば0.5mm以上29mm以下であることが好ましく、開口部11,12の外周端の長辺の長さD1及びD2は、例えば0.5mm以上29mm以下であることが好ましい。連結部3Bの幅の長さEは、例えば0.5mm以上20mm以下であることが好ましい。内部領域10の外周端の短辺の長さCは、例えば0.5mm以上29mm以下であることが好ましい。内部領域10の外周端の長辺の長さ(D1+E+D2)は、例えば0.5mm以上58mm以下であることが好ましい。
【0017】
本実施形態では、音が通過する方向に沿って見たときに、支持層3の外周端は、防水通音膜2の外周端と一致する外周端を有するが、防水通音膜2の外周端と異なる外周端を有していてもよい。例えば、防水通音膜2は、開口部11,12を覆うことができる限り、支持層3の外周端よりも全周にわたって内側に位置する外周端を有していてもよい。
【0018】
本実施形態では、防水通音部材1は、1つの連結部3Bが配置されていたが、少なくとも1つの連結部が配置されていればよく、2以上の連結部が配置されていてもよい。
図8に示すように、防水通音部材1は、2つの第1連結部3C及び第2連結部3Dが配置されていてもよい。第1連結部3C及び第2連結部3Dは、互いに接していない。このように、2以上の連結部が互いに接しないように配置されていることが好ましい。
図8に示したように、第1連結部3Cは、内部領域10を第1開口部11と第2開口部12とに分割するように配置されている。第2連結部3Dは、内部領域10を第2開口部13と第3開口部13とに分割するように配置されている。
【0019】
開口部11〜13の外周端は、それぞれ長辺及び短辺を有する長方形である。開口部11〜13は、同一の形状を有している。第1開口部11の長辺及び短辺の長さは、第2開口部12の長辺及び短辺の長さ、及び第3開口部13の長辺及び短辺の長さと同一である。開口部11〜13のそれぞれについて、各開口部11〜13を含むように当該開口部11〜13に接する仮想的な長方形のうち面積が最小となる長方形を第2四角形22A〜22Cとしたときに、第2四角形22A〜22Cの短辺に対する長辺の比R2が比R1よりも小さくなるように、連結部3C,3Dが配置されている。すなわち、各開口部11〜13の外周端は、内部領域10の外周端に比して細長くない長方形である。したがって、内部領域10を通音領域とした場合に比して、音の歪みを低減することができる。
【0020】
図8において、比R1は、(D3+E1+D4+E2+D5)/Cにより表される。また、比R2は、D3/C、D4/C又はD5/Cにより表される。
【0021】
図9に示す実施形態では、音が通過する方向に沿って見たときに、開口部11,13を囲む枠部3Aの内周端が、長方形の隅角部の一部が丸まった略長方形となっている。第1四角形21は、内部領域10を含むように内部領域10に接する仮想的な長方形のうち面積が最小となる長方形である。開口部11〜13は、実質的に同一の形状である。連結部は、2以上の開口部が実質的に同一の形状を有するように配置されていることが好ましい。
【0022】
防水通音膜2の材料としては、高分子材料が挙げられる。防水通音膜2を構成する好適な高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。また、防水通音膜2はフッ素樹脂からなることが好ましく、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン延伸多孔質膜が特に好ましい。また、防水通音膜2は、不織布の態様を有していてもよく、ナノファイバーを集結させることにより構成されていてもよい。また、防水通音膜2には撥水処理が施されていてもよい。
【0023】
支持層3は、防水通音膜2に接着されることにより防水通音部材1の剛性を高める。すなわち、支持層3は、防水通音部材1の形状を安定させる作用を有する。本実施形態では、支持層3はフィルム状の形態を有する。支持層3は、発泡樹脂(樹脂発泡体)により構成されていることが好ましい。音の歪みの抑制に適しているためである。また、本実施形態では、支持層3の材料がウレタン系樹脂発泡体である。支持層3の材料は、ウレタン系樹脂発泡体に限定されるものではなく、ポリオレフィン系樹脂発泡体であってもよい。ポリオレフィン系樹脂発泡体としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂のみを樹脂成分として含む樹脂発泡体でもよいが、クッション性、柔軟性、高発泡倍率などの観点から、ポリオレフィン樹脂とゴムや熱可塑性エラストマー等のエラストマー成分との混合物を樹脂成分として含む発泡体であることが好ましい。
【0024】
第1粘着層4、第2粘着層5及び第3粘着層6は、アクリル系、シリコーン系などの粘着剤を用いた両面粘着テープが用いられる。あるいは、第1粘着層4、第2粘着層5及び第3粘着層6は、粘着剤のみにより構成されていてもよい。
【0025】
防水通音部材1が適用された電子機器の例として、
図6に携帯電話30を示す。
【0026】
携帯電話30の筐体38内には、マイクロフォン33が収容されている。筐体38には、外部からの音声をマイクロフォン33に導く第1集音口39が設けられている。マイクロフォン33のパッケージ35内には、音声を電気信号に変換する集音部34が収容されている。パッケージ35は内部が空洞の直方体であり、パッケージ35の一つの面には、筐体38の第1集音口39から導入された音声を、マイクロフォン33の集音部34に導く第2集音口36が設けられている。第1集音口39及び第2集音口36は、防水通音膜2により隔てられつつ、防水通音膜2を介して通音可能な位置に設けられている。マイクロフォン33は、パッケージ35の底面に設けられた端子(図示せず)によって、携帯電話30の回路基板31と電気的に接続されており、集音部34によって音声から変換された電気信号が、端子を介して回路基板31に出力される。携帯電話30では、第1集音口39及び第2集音口36を隔てるように配置された防水通音膜2によって、第1集音口39及び第2集音口36からマイクロフォン33の集音部34への塵芥や水等の異物の侵入を防ぎながら、集音部34へ音声を通過させることができ、マイクロフォン33における雑音の発生やその故障を防止しながら、マイクロフォン33の性能を確保できる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
PTFE延伸多孔質シート(日東電工社製、NTF610AP)及びウレタン系発泡樹脂シートであるPORON(登録商標) SR−S 48P(ロジャースイノアック社製)をそれぞれ
図1に示す形状(防水通音膜及び支持層の外形の短辺の長さAが7mm、防水通音膜及び支持層の外形の長辺の長さBが25mm、第1開口部及び第2開口部の内形の短辺の長さCが2.8mm、第1開口部及び第2開口部の内形の長辺の長さD1及びD2が9.9mm、連結部の外形の短辺の長さEが1.5mm)となるようにトムソン型を用いて打ち抜くことにより、防水通音膜及び支持層を作製した。第1の両面粘着テープ、支持層、第2の両面粘着テープ、防水通音膜、第3の両面粘着テープを、この順に積層することにより、
図2に示す構造の防水通音部材を作製した。第1〜第3の両面粘着テープの厚さは、0.05mmであり、基材は、PETにより構成されていた。
【0028】
(実施例2)
PTFE多孔質シート及びウレタン系発泡樹脂シートを
図8に示す形状(防水通音膜及び支持層の外形の短辺の長さAが7mm、防水通音膜及び支持層の外形の長辺の長さBが25mm、第1開口部、第2開口部及び第3開口部の内形の短辺の長さCが2.8mm、第1開口部、第2開口部及び第3開口部の内形の長辺の長さD3、D4及びD5が6.6mm、第1連結部及び第2連結部の外形の短辺の長さE1及びE2が1.0mm)となるようにトムソン型を用いて打ち抜くことにより、防水通音膜及び支持層を作製したこと以外は、実施例1と同様の手順により、防水通音部材を作製した。
【0029】
(比較例1)
PTFE多孔質シート及びウレタン系発泡樹脂シートを
図10に示す形状(防水通音膜及び支持層の外形の短辺の長さAが7mm、防水通音膜及び支持層の外形の長辺の長さBが25mm、第1開口部の内形の短辺の長さCが2.8mm、第1開口部の内形の長辺の長さDが19.8mm)となるようにトムソン型を用いて打ち抜くことにより、防水通音膜及び支持層を作製したこと以外は、実施例1と同様の手順により、防水通音部材を作製した。
【0030】
実施例1、実施例2及び比較例1の防水通音部材につき、次のようにして、高調波歪みを調べた。
【0031】
[高調波歪み]
防水通音部材における高調波歪みは、以下のように測定した。
【0032】
最初に、
図7に示すような、携帯電話の筐体を模した模擬筐体41(アクリル製、長さ70×幅50×高さ15mm)を準備した。この模擬筐体41は第1部分41a及び第2部分41bからなり、第1部分41aと第2部分41bとは互いに嵌め合わせることができる。第1部分41aには、取付穴42が設けられている。第1部分41a及び第2部分41bを互いに嵌め合わせることによって、模擬筐体41内に、取付穴42及びリード線44の導通口43以外の開口がない空間が形成される。
【0033】
これとは別に、各実施例及び比較例において作製した防水通音部材の第3の両面粘着テープを音源となるスピーカ45(スター精密社製、SCM−09C−J)に貼り付けた。
【0034】
次に、防水通音部材を貼り付けたスピーカ45を、模擬筐体41の第1部分41aにおける取付穴42に、防水通音部材が取付穴42に面するとともに防水通音部材が取付穴42を塞ぐように、第2部分41bと嵌め合わせたときに内側となる面から固定した。スピーカ45の第1部分41aへの固定は、防水通音部材におけるスピーカ45側とは反対側の面に貼り付けられた第1の両面粘着テープ(第3粘着層6)により行い、その際に、第1の両面粘着テープが取付穴42にかからないようにするとともに、取付穴42が防水通音部材によって完全に塞がれるように注意した。
【0035】
次に、スピーカ45のリード線44を、導通口43を通して模擬筐体41の外部に導き出しながら、第1部分41aと第2部分41b部分とを嵌め合わせ、防水通音部材の高調波歪みを測定するための模擬筐体41を形成した。導通口43は、リード線44を導き出した後、パテで塞いだ。
【0036】
次に、リード線44とマイク(B&K社製、Type2669)とを通音性評価装置(B&K社製、3560−B−030)に接続し、スピーカ45から50mm離れた位置にマイクを配置した。
【0037】
上述したように防水通音部材を設置した状態で、通音性評価装置の評価方式としてSSR分析(定常状態応答分析、試験信号20Hz〜20kHz、sweep)を選択、実行し、防水通音膜の高調波歪みを測定した。詳細には、基本波200〜800Hzの音における12〜100次高調波の音の総和で表される高調波歪みを測定した。
【0038】
防水通音部材につき、上記のようにして高調波歪みを測定した結果を、第1四角形の短辺に対する長辺の比R1、第2四角形の短辺に対する長辺の比R2及び内部領域の面積に対する開口部の面積の合計の比R3とともに、表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1及び2では、比R1が5以上であり、比R2が比R1よりも小さく、4以下であった。実施例1及び2では、各開口部の外周端は、内部領域の外周端に比して細長くない長方形であった。比較例1では、比R1が5以上であり、比R2が比R1と等しい。比較例1では、開口部の外周端は、細長い長方形であった。この結果、実施例1及び2における高調波歪みは、比較例1における高調波歪みよりも小さい。したがって、実施例1及び2の防水通音部材は、比較例1の防水通音部材よりも音の歪みを低減することができた。