特許第6759589号(P6759589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6759589電気化学素子用導電性組成物、電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体及び電気化学素子用電極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759589
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】電気化学素子用導電性組成物、電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体及び電気化学素子用電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20200910BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20200910BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20200910BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01M4/62 Z
   H01G11/38
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-1491(P2016-1491)
(22)【出願日】2016年1月7日
(65)【公開番号】特開2017-123264(P2017-123264A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雄介
【審査官】 上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/073647(WO,A1)
【文献】 特開2015−005474(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/129257(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/107896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
H01G 11/38
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5%酢酸水溶液に0.5質量%となるように溶解させた水溶液の粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下であるキトサン化合物と、
芳香族ビニル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び酸性基含有単量体単位を含んでなり、
電解液膨潤度((浸漬後質量B/浸漬前質量A)×100)が100%以上500%以下であって、前記浸漬後質量Bは、温度60℃の電解液(エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を20℃での質量比がEC:EMC=3:7となるように混合してなる混合溶媒に、LiPFが1.0mol/L の濃度で溶解した溶液)中に浸漬したフィルムを72時間後に引き上げ、タオルペーパ一で電解液を拭きとってすぐに測定した質量であり、
表面酸量が0.1mmol/g以上である粒子状共重合体と、
導電材と
を含み、
前記キトサン化合物の質量を前記粒子状共重合体の質量で除した値が0.1以上10以下である電気化学素子用導電性組成物。
【請求項2】
前記粒子状共重合体に含まれる芳香族ビニル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位の含有割合が10質量%以上70質量%以下である請求項1記載の電気化学素子用導電性組成物。
【請求項3】
前記粒子状共重合体に含まれる芳香族ビニル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合が30質量%以上90質量%以下である請求項1又は2記載の電気化学素子用導電性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物を含んでなり、電極活物質を含有する、電気化学素子電極用組成物。
【請求項5】
集電体上に、請求項1〜3の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物を用いてなる導電性接着剤層を有する、接着剤層付集電体。
【請求項6】
請求項5に記載の接着剤層付集電体の前記導電性接着剤層上に、電極活物質を含む電極組成物層を有する、電気化学素子用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工性に優れた電気化学素子用導電性組成物、この電気化学素子用導電性組成物を用いて得られる電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体及び電気化学素子用電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能な電気化学素子、特にリチウムイオン電池は、その特性を活かして急速に需要を拡大している。また、リチウムイオン電池に代表される電気化学素子は、エネルギー密度、出力密度が大きいことから、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータの小型用途から、車載などの大型用途での利用が期待されている。そのため、これらの電気化学素子には、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、高容量化、高耐電圧、機械的特性、サイクル寿命の向上など、よりいっそうの改善が求められている。
【0003】
電気化学素子は、有機系電解液を用いることで作動電圧を高め、エネルギー密度を高めることができるが、一方では電解液の粘度が高いために、内部抵抗が大きいという問題点があった。
【0004】
内部抵抗を低減させるために、電極組成物層と集電体との間に導電性接着剤層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1においては、導電性カーボン、水溶性高分子、粒子状結着剤、及び分散媒を含む電気化学素子用導電性組成物を用いて導電性接着剤層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/051043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、導電性組成物は、集電体への塗工性を考慮すると、その粘度を適度に低くすることが求められる。そのためには、例えば導電性カーボンの凝集を抑える必要がある。ここで、導電性カーボンが凝集すると、導電性組成物を用いて得られる導電性接着剤層の抵抗が増加するため、得られる電池は出力特性に劣る虞がある。
【0007】
本発明の目的は、集電体に対する塗工性に優れ、得られる電気化学素子の出力特性及びサイクル特性が良好である電気化学素子用導電性組成物、この電気化学素子用導電性組成物を含む電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体、及び電気化学素子用電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、特定の粘度を有するキトサン化合物の水溶液と特定の表面酸量を有する粒子状共重合体とを併用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、
(1) 0.5%酢酸水溶液に0.5質量%となるように溶解させた水溶液の粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下であるキトサン化合物と、表面酸量が0.1mmol/g以上である粒子状共重合体と、導電材とを含む電気化学素子用導電性組成物、
(2) 前記粒子状共重合体の電解液膨潤度が100%以上500%以下である(1)記載の電気化学素子用導電性組成物、
(3) 前記キトサン化合物の質量を、前記粒子状共重合体の質量で除した値が0.1以上10以下である(1)又は(2)記載の電気化学素子用導電性組成物、
(4) 前記粒子状共重合体は芳香族ビニル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含み、前記粒子状共重合体に含まれる芳香族ビニル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位の含有割合が10質量%以上70質量%以下である(1)〜(3)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物、
(5) 前記粒子状共重合体は芳香族ビニル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含み、前記粒子状共重合体に含まれる芳香族ビニル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合が30質量%以上90質量%以下である(1)〜(4)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物、
(6) (1)〜(5)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物を含んでなり、電極活物質を含有する、電気化学素子電極用組成物、
(7) 集電体上に、(1)〜(5)の何れかに記載の電気化学素子用導電性組成物を用いてなる導電性接着剤層を有する、接着剤層付集電体、
(8) (7)に記載の接着剤層付集電体の前記導電性接着剤層上に、電極活物質を含む電極組成物層を有する、電気化学素子用電極
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、集電体に対する塗工性に優れ、得られる電気化学素子の出力特性及びサイクル特性が良好である電気化学素子用導電性組成物、この電気化学素子用導電性組成物を含む電気化学素子電極用組成物、接着剤層付集電体、及び電気化学素子用電極が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】粒子状共重合体の表面酸量の算出にあたり、添加した塩酸の累計量(mmol)に対して電気伝導度(mS)をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、実施形態を含めてさらに具体的に説明する。本発明の電気化学素子用導電性組成物(以下、単に「導電性組成物」と記載することがある)は、0.5%酢酸水溶液に0.5質量%となるように溶解させた水溶液の粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下であるキトサン化合物と、表面酸量が0.1mmol/g以上である粒子状共重合体と、導電材とを含む。
【0012】
(キトサン化合物)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、0.5%酢酸水溶液に0.5質量%となるように溶解させた水溶液の粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下であるキトサン化合物を含む。
【0013】
キトサン化合物は、本発明の電気化学素子用導電性組成物中において、水などの分散媒に溶解することで粘度調整剤として機能しつつ、導電性組成物を使用して集電体上に塗布乾燥して導電性接着剤層からなる塗膜(以下、単に「塗膜」と記載することがある)を形成した場合、塗膜成分の脱離を防ぐ結着剤、及び塗膜上に形成される電極組成物層との密着性を向上させる成分としても機能しうる。
【0014】
本発明の電気化学素子用導電性組成物に用いるキトサン化合物としては、例えば、キチンを脱アセチル化することにより得られるキトサン、およびその誘導体(キトサン誘導体)が挙げられる。またキトサン化合物はナトリウム塩などの塩の形態となっていてもよい。ここでキトサン誘導体としては、例えば、キトサン中に複数存在するヒドロキシル基および/またはアミノ基の水素原子の少なくとも一部が他の構造に置換されたものが挙げられる。このようなキトサン誘導体としては、例えば、特開2009−277660号公報、特開2015−5474号公報、特開2013−229110号公報に記載のものが挙げられる。
【0015】
これらのキトサン化合物の中でも、本発明においては水溶性のキトサン化合物を使用することが必要である。キトサン化合物が「水溶性」であるとは、キトサン化合物および水を含む評価用試料が250メッシュのスクリーンを通過した際の、添加したキトサン化合物の質量(固形分相当)に対する、スクリーンを通過せずにスクリーン上に残る残渣の質量(固形分相当)の割合が50質量%以下となることをいう。また、上記条件を満たす場合、本発明においては「キトサン化合物が水に溶解した」という。ここで、上述した評価用試料は、イオン交換水100質量部当たりキトサン化合物1質量部(固形分相当)を添加し撹拌して得られる混合物を、温度20℃以上70℃以下の範囲内で、かつ、pH5以上7以下(pH調整にはHCl水溶液を使用)の範囲内である条件のうち少なくとも一条件に調整したものである。なお、上記評価用試料が、静置した場合に二相に分離するエマルジョン状態であっても、上記定義を満たせば、そのキトサン化合物は水溶性であると規定する。
キトサン化合物が非水溶性であると、スラリー状の導電性組成物(以下、単に「スラリー」と記載することがある)の塗工性が損なわれ、また電極のピール強度およびリチウムイオン二次電池の出力特性とサイクル特性が低下する問題が発生する。
【0016】
本発明に用いるキトサン化合物の、0.5%酢酸水溶液に0.5質量%となるように溶解させた水溶液の粘度は、塗工性及び分散性が良好なスラリーが得られる観点から、1mPa・s以上500mPa・s以下、好ましくは5mPa・s以上300mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以上100mPa・s以下である。粘度が高すぎると、スラリーの粘度が増加し、塗工性が低下する。逆に、粘度が低すぎると、スラリーの分散性が低下し、得られる塗膜の抵抗値が増加する。
【0017】
電気化学素子用導電性組成物中におけるキトサン化合物の含有割合は、好ましくは2質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上40質量%以下、特に好ましくは4質量%以上30質量%以下である。
【0018】
(粒子状共重合体)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、表面酸量が0.1mmol/g以上である粒子状共重合体を含む。本発明に用いられる粒子状共重合体としては、芳香族ビニル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、脂肪族共役ジエン単量体単位、酸性基含有単量体単位等を含むものが挙げられ、芳香族ビニル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、酸性基含有単量体単位を含むものであることが好ましい。
【0019】
(芳香族ビニル単量体)
芳香族ビニル単量体単位を形成しうる芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、塗膜の機械的強度を高める観点から、スチレンが好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明に用いる粒子状共重合体に含まれる、芳香族ビニル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、塗膜の密着性が良好となり、電解液浸漬時の膨潤を抑制する観点から、好ましくは10質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下、特に好ましくは30質量%以上50質量%以下である。芳香族ビニル単量体単位の含有割合が上記範囲の上限値以下であると、塗膜の強度及び密着性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。また、その含有割合が上記範囲の下限値以上であると、膨潤により塗膜と集電体との間の密着性が過度に低下する、という現象や、膨潤により塗膜と電極組成物層との密着性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。
【0021】
((メタ)アクリル酸エステル単量体)
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成しうる(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。これらの中でも、塗膜に十分な柔軟性と密着性を付与する観点から、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルのことを意味する。
【0022】
本発明に用いる粒子状共重合体に含まれる、芳香族ビニル単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は、塗膜の密着性が良好となり、電解液浸漬時の膨潤を抑制する観点から、好ましくは30質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上80質量%以下、特に好ましくは50質量%以上70質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合が上記範囲の上限値以下であると、膨潤により塗膜と集電体との間の密着性が過度に低下する、という現象や、膨潤により塗膜と電極組成物層との密着性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。また、その含有割合が上記範囲の下限値以上であると、塗膜の強度及び密着性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。
【0023】
(脂肪族共役ジエン単量体)
脂肪族共役ジエン単量体単位を形成しうる脂肪族共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(酸性基含有単量体)
酸性基含有単量体単位を形成しうる酸性基含有単量体としては、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、およびリン酸基を有する単量体が挙げられる。なお、本発明において酸性基を有する単量体は、酸性基以外の官能基(例えばアミド基やヒドロキシル基)を有している場合であっても、酸性基含有単量体に含まれるものとする。
【0025】
カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0026】
スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味する。
【0027】
リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
【0028】
これらの中でも、酸性基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸がより好ましく、イタコン酸が特に好ましい。また、酸性基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、酸性基含有単量体として、カルボン酸を有する単量体およびスルホン酸基を有する単量体を併用することもできる。
【0029】
本発明に用いる粒子状共重合体を構成する全単量体単位に対する酸性基含有単量体単位の含有割合は、集電体と導電性接着剤層との結着性が高まる観点、及び導電性接着剤層と電極組成物層との結着性が高まる観点から、好ましくは1〜5質量%、さらに好ましくは1.5〜4.5質量%、特に好ましくは2〜4質量%である。酸性基含有単量体単位の含有割合が、上記範囲の上限値以下であると、集電体と導電性接着剤層との結着性が過度に弱くなる、という現象や、導電性接着剤層と電極組成物層との結着性が過度に弱くなる、という現象を抑えることができる。逆に、上記範囲の下限値以上であると、集電体と導電性接着剤層との結着性が過度に弱くなる、という現象や、導電性接着剤層と電極組成物層との結着性が過度に弱くなる、という現象を抑えることができる。
【0030】
(表面酸量)
本発明に用いる粒子状共重合体の表面酸量は、安定性及び塗工性が良好なスラリーが得られる観点から、0.1mmol/g以上、好ましくは0.15mmol/g以上、より好ましくは0.2mmol/g以上であり、好ましくは0.5mmol/g以下である。表面酸量が少なすぎると、得られるスラリーの安定性が低下し、塗工性が低下する。
【0031】
本発明において、粒子状共重合体の表面酸量とは、粒子状共重合体の固形分1g当たりの表面酸量をいう。ここで、粒子状共重合体の表面酸量は、以下の方法で算出することができる。
【0032】
まず、粒子状共重合体を含む水分散液(固形分濃度4%)を調製する。蒸留水で洗浄した容量150mLのガラス容器に、前記粒子状共重合体を含む水分散液を50g入れ、溶液電導率計(COM−2000、平沼産業製)にセットして撹拌する。なお、撹拌は、後述する塩酸の添加が終了するまで継続する。
粒子状共重合体を含む水分散液の電気伝導度が2.5〜3.0mSになるように、0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液を、粒子状共重合体を含む水分散液に添加する。その後、5分経過してから、電気伝導度を測定する。この値を測定開始時の電気伝導度とする。
【0033】
さらに、この粒子状共重合体を含む水分散液に0.1規定の塩酸を0.5mL添加して、30秒後に電気伝導度を測定する。その後、再び0.1規定の塩酸を0.5mL添加して、30秒後に電気伝導度を測定する。この操作を、30秒間隔で、粒子状共重合体を含む水分散液の電気伝導度が測定開始時の電気伝導度以上になるまで繰り返し行う。
【0034】
得られた電気伝導度データを、電気伝導度(単位「mS」)を縦軸(Y座標軸)、添加した塩酸の累計量(単位「mmol」)を横軸(X座標軸)としたグラフ上にプロットする。これにより、図1のように3つの変曲点を有する塩酸量−電気伝導度曲線が得られる。3つの変曲点のX座標を、値が小さい方から順にそれぞれP1、P2、及びP3とする。X座標が、零から座標P1まで、座標P1から座標P2まで、及び座標P2から座標P3まで、の3つの区分内のデータについて、それぞれ、最小二乗法により近似直線L1、L2、及びL3を求める。近似直線L1と近似直線L2との交点のX座標をA1(mmol)、近似直線L2と近似直線L3との交点のX座標をA2(mmol)とする。
粒子状共重合体1g当たりの表面酸量は、下記の式(a)により、塩酸換算した値(mmol/g)として、与えられる。
粒子状共重合体1g当たりの表面酸量=A2−A1 …(a)
【0035】
粒子状共重合体の表面酸量は、例えば、粒子状共重合体を構成する単量体単位の種類及びその割合、そして重合方法の変更により制御しうる。
より具体的には、例えば、酸性基含有単量体単位の種類及びその割合を調整することにより、表面酸量を効率的に制御することができる。通常は、酸性基含有単量体のうちでも他の単量体と比べて反応性の違いが大きいもの(イタコン酸など)を用いると、酸性基含有単量体が粒子状共重合体の表面で共重合しやすくなるので、表面酸量が上昇し易い傾向がある。
【0036】
(電解液膨潤度)
本発明に用いる粒子状共重合体の電解液膨潤度は、塗膜の抵抗値が増加しない観点及び塗膜と電極組成物層との間の密着性が維持される観点から、好ましくは100%以上500%以下、さらに好ましくは100%以上300%以下、特に好ましくは100%以上150%以下である。粒子共重合体の電解液膨潤度が、上記範囲の上限値以下であると、塗膜の抵抗値が過度に増加する、という現象や、塗膜と電極組成物層との間の密着性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。
【0037】
ここで、粒子状共重合体の電解液膨潤度とは、粒子状共重合体の水分散液を乾燥させて得たフィルムを特定の電解液に浸漬した際の膨潤度合いをいう。粒子状共重合体の電解液膨潤度は、以下の方法で算出することができる。
粒子状共重合体を含む水分散液を用意し、この水分散液を室温下で乾燥させて、厚み0.2〜0.5mmのフィルムを形成する。このフィルムを10mmφの円形に打ち抜き、質量(浸漬前質量A)を測定する。質量測定後のフィルム片を温度60℃の電解液(エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を20℃での質量比がEC:EMC=3:7となるように混合してなる混合溶媒に、LiPFが1.0mol/Lの濃度で溶解した溶液)中に浸漬する。浸漬したフィルムを72時間後に引き上げ、タオルペーパ一で電解液を拭きとってすぐに質量(浸漬後質量B)を測定する。下記式にしたがって質量変化を計算し、これを電解液膨潤度とする。
電解液膨潤度(%)=(B/A)×100
【0038】
本発明の電気化学素子用導電性組成物に含まれる成分の内、キトサン化合物の質量を粒子状共重合体の質量で除した値は、導電材の分散性が良好となる観点、及び塗膜の密着性が良好となる観点から、好ましくは0.1以上10以下、さらに好ましくは0.2以上9以下、特に好ましくは0.3以上8以下である。この値が上記範囲の上限値以下であると、スラリーの粘度が増加し、塗工性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。また、この値が上記範囲の下限値以上であると、導電材の分散性が低下し、塗膜の抵抗値が過度に増加する、という現象を抑えることができる。
【0039】
(粒子状共重合体の製造)
粒子状共重合体の製法は特に限定はされないが、上述したように、高分子化合物を構成する単量体を含む単量体混合物を乳化重合して得ることができる。乳化重合の方法としては、特に限定されず、従来公知の乳化重合法を採用すれば良い。
【0040】
乳化重合に使用する重合開始剤としては、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0041】
これらのなかでも、無機過酸化物が好ましく使用できる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、過酸化物開始剤は、重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。なお、重合開始剤の使用量は、重合に使用する単量体混合物の全量100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。
【0042】
乳化重合時に、さらにアニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。アニオン性界面活性剤を使用することにより、重合安定性を向上させることができる。
【0043】
アニオン性界面活性剤としては、乳化重合において従来公知のものが使用できる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ナトリウムラウリルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムオクチルサルフェート、ナトリウムデシルサルフェート、ナトリウムテトラデシルサルフェート、ナトリウムヘキサデシルサルフェート、ナトリウムオクタデシルサルフェートなどの高級アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどの脂肪族スルホン酸塩;などが挙げられる。
【0044】
アニオン性界面活性剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。この使用量が少ないと、得られる粒子の粒径が大きくなり、使用量が多いと粒径が小さくなる傾向がある。また、アニオン性界面活性剤に加えて、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを併用することもできる。
【0045】
さらに乳化重合の際に、水酸化ナトリウム、アンモニアなどのpH調整剤;分散剤、キレート剤、酸素捕捉剤、ビルダー、粒子径調節のためのシードラテックスなどの各種添加剤を適宜使用することができる。特にシードラテックスを用いた乳化重合が好ましい。シードラテックスとは、乳化重合の際に反応の核となる微小粒子の分散液をいう。微小粒子は粒径が100nm以下であることが多い。微小粒子は特に限定はされず、アクリル系重合体などの汎用の重合体が用いられる。シード重合法によれば、比較的粒径の揃った粒子状共重合体が得られる。
【0046】
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは40〜80℃とする。このような温度範囲で乳化重合し、所定の重合転化率で、重合停止剤を添加したり、重合系を冷却したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する重合転化率は、好ましくは93質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
【0047】
重合反応を停止した後、所望により、未反応単量体を除去し、pHや固形分濃度を調整して、粒子状共重合体が分散媒に分散された形態(ラテックス)で得られる。その後、必要に応じ、分散媒を置換してもよく、また分散媒を蒸発し、粒子状結着剤を粉末形状で得ても良い。
【0048】
得られる粒子状共重合体の分散液には、公知の分散剤、増粘剤、老化防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、ブリスター防止剤、pH調整剤などを必要に応じて添加することができる。
【0049】
(導電材)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、導電材を含む。導電材としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン等を含むことが好ましく、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブを含むことがさらに好ましく、カーボンブラック及びグラファイトを含むことが特に好ましい。導電材として、カーボンブラックとグラファイトを混合して用いることにより導電性が向上するため、これらを混合して用いることが好ましい。これらの導電材は、それぞれ単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
カーボンブラックは、黒鉛質の炭素微結晶が数層集まって乱層構造を形成した球状集合体であり、具体的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、その他のファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラックなどを例示することができる。導電材としては、単一のカーボンブラックのみを単独で、または種類の異なるカーボンブラックを複数組み合わせて使用することができる。
【0051】
電気化学素子用導電性組成物中におけるカーボンブラックの含有割合は、良好な導電性を保ち、高速塗工に適した粘度のスラリーを得る観点から、好ましくは3質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下、特に好ましくは7質量%以上20質量%以下である。カーボンブラックの含有割合が上記範囲の上限値以下であると、過度に高粘度となりスラリーの製造が困難となる、という現象を抑えることができる。逆に、カーボンブラックの含有割合が上記範囲の下限値以上であると、導電性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。
【0052】
(濡れ材)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、濡れ材を含むことが好ましい。濡れ材としては、集電体に対する導電性組成物の濡れ性を高める観点、及び集電体に均一に塗工できる観点から、ポリアミド重合体、ポリエステル重合体等を用いることが好ましい。
【0053】
(ポリアミド重合体)
ポリアミド重合体としては、下記一般式(1)で表されるものを用いることが好ましい。
【化1】


(上記一般式(1)中、Rは、2、4、6あるいは8個のカルボン酸アミド基によって割りこまれた炭素数6〜150の脂肪族あるいは脂肪族と芳香族との両者を含む炭化水素基、炭素数2〜60の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、または2〜75個の酸素原子(−O−)によって割りこまれた炭素数4〜150の脂肪族炭化水素基、R’は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または−Z’−(Q)y−(OH)x、xは1〜3、yは0または1、Zは炭素数2〜6のアルキレン基、Z’は炭素数2〜6のZと同じまたは異なるアルキレン基、QはZおよび(または)Z′に−O−またはカルボキシル基を介して連結されており、0〜99個の酸素原子および(または)カルボン酸エステル基によって割りこまれている炭素数2〜200の脂肪族炭化水素基、nは2〜3である。)
【0054】
(ポリエステル重合体)
ポリエステル重合体としては、下記一般式(2)で表されるものを用いることが好ましい。
【化2】


(上記一般式(2)中、Rが、分子当たり1〜3個のヒドロキシル基を有する化合物の有機ラジカル、又はシリコン原子に結合しない1〜3個のヒドロキシル基を有するポリシロキサンのラジカルであり、Rが、二価の直鎖又は分枝脂肪酸又はシクロ脂肪酸ラジカルであり、xが2〜8、nが10〜500、且つmが1〜3である。)
【0055】
電気化学素子用導電性組成物中における濡れ材の含有割合は、集電体に対する導電性組成物の濡れ性を高める観点、及び集電体に均一に塗工できる観点から、好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.2〜2質量%、特に好ましくは0.3〜1質量%である。濡れ材の含有割合が上記範囲の上限値以下であると、導電性接着剤層からなる塗膜の抵抗値が過度に増加する、という現象を抑えることができる。逆に、濡れ材の含有割合が上記範囲の下限値以上であると、濡れ性が過度に低下し、均一な塗工が困難となる、という現象を抑えることができる。
【0056】
(分散剤)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、分散剤を含むことが好ましい。分散剤としては、アニオン系の界面活性剤、カチオン系の界面活性剤、両性界面活性剤、及び高分子系界面活性剤を例示することができる。具体的には、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(例えば、デモールNL:花王株式会社製)、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(例えば、サニゾールC:花王株式会社製)、ラウリルジメチルアミンオキサイド(例えば、アンヒトール20N:花王株式会社製)、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、エマルゲンA−60:花王株式会社製)等が挙げられ、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、およびポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルが好ましく、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩がより好ましい。
【0057】
電気化学素子用導電性組成物中における分散剤の含有割合は、カーボンブラックが水に分散し易くなる観点から、好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%、特に好ましくは1.1〜2質量%である。分散剤の含有割合が上記範囲の上限値以下であると、導電性接着剤層からなる塗膜の抵抗値が過度に増加する、という現象を抑えることができる。逆に、分散剤の含有割合が上記範囲の下限値以上であると、カーボンブラックが過度に水に分散し難い、という現象を抑えることができる。
【0058】
(分散媒およびその他の成分)
本発明の電気化学素子用導電性組成物は、上記したキトサン化合物、粒子状共重合体、導電材、濡れ材、及び分散剤が、分散媒に分散されたスラリー状の組成物である。ここで分散媒は、上記各成分を均一に分散でき、安定的に分散状態を保ちうる限り、水や、NMP、トルエン、キシレン、アセトン等の各種有機溶媒が特に制限されることなく使用できる。中でも、水、又はNMPを用いることが好ましく、水を用いることがさらに好ましい。
【0059】
電気化学素子用導電性組成物中における分散媒の含有割合は、塗工に適した粘度となる観点から好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは65〜85質量%、特に好ましくは68〜85質量%である。
【0060】
本発明の電気化学素子用導電性組成物には、さらに防腐剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。
防腐剤の具体例としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下において「MIT」と表すことがある。)、1,2−ベンズ−4−イソチアゾリン−3−オン(以下において「BIT」と表すことがある。)等のイソチアゾリン系化合物が挙げられる。これらイソチアゾリン系化合物は、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、イソチアゾリン系化合物としては、MIT、及びBITを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0061】
(電気化学素子用導電性組成物)
本発明の電気化学素子用導電性組成物はスラリー状であり、その粘度は、良好な塗工性が得られる観点から、好ましくは200mPa・s以下、さらに好ましくは150mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下である。なお、上記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
【0062】
また、本発明の電気化学素子用導電性組成物のpHは、集電体を腐食させることなく、低抵抗な電極が得られる観点から、6〜10、好ましくは6.5〜9.7、より好ましくは7〜9.5である。
【0063】
(電気化学素子用導電性組成物の製造方法)
導電性組成物の製造方法は、特に限定はされず、上記した分散媒に分散させることができればいかなる手段であってもよい。たとえば、まず、分散媒に分散剤、濡れ材、キトサン化合物、粒子状共重合体の分散液、および必要に応じ添加される任意の成分を一括添加し、均一に撹拌した後、導電材を添加し、撹拌することにより予備的な分散を行い原料組成物を得てから、次に、原料組成物に対し、高圧分散機を用いて高圧分散処理を行うことが好ましい。
【0064】
ここで、予備分散を行う際の回転数は、良好な分散性を得る観点から、通常500〜3000rmp、好ましくは700〜1800rpm、さらに好ましくは1000〜1500rpmである。
【0065】
また、高圧分散機は、原料組成物を高圧にしてノズル等の細い間隙から噴出させる装置であって、カーボンブラックの凝集をほぐすことができれば特に限定されないが、ナノヴェイタ(C−ES008、吉田機械興業株式会社製)を用いることが好ましい。高圧分散処理を行う際の圧力としては、良好な分散性が得られる観点から、通常20〜150MPa、好ましくは30〜110MPa、さらに好ましくは40〜70MPaである。
【0066】
(接着剤層付集電体)
本発明の接着剤層付集電体は、集電体上に上記の電気化学素子用導電性組成物から得られる導電性接着剤層を有する。
【0067】
集電体の材料は、例えば、金属、炭素、導電性高分子などであり、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましい。
集電体の厚みは、5〜100μmで、好ましくは8〜70μm、特に好ましくは10〜50μmである。
【0068】
導電性接着剤層の形成方法は、特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ダイコート法、ハケ塗りなどによって、集電体上に形成される。また、剥離紙上に、導電性接着剤層を形成した後に、これを集電体に転写してもよい。
【0069】
導電性接着剤層の乾燥方法としては、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。中でも、熱風による乾燥法、遠赤外線の照射による乾燥法が好ましい。乾燥温度と乾燥時間は、集電体上に塗布した導電性組成物中の溶媒を完全に除去できる温度と時間が好ましく、乾燥温度は通常50〜300℃、好ましくは80〜250℃である。乾燥時間は、通常2時間以下、好ましくは5秒〜30分である。
【0070】
導電性接着剤層の厚みは、後述する電極組成物層との密着性が良好で、かつ、低抵抗である電極が得られる観点から、0.5〜5μm、好ましくは0.5〜4μm、特に好ましくは0.5〜3μmである。
【0071】
導電性接着剤層は、電気化学素子用導電性組成物の固形分組成に応じた組成を有し、キトサン化合物、粒子状共重合体、導電材、濡れ材、分散剤を含む。
【0072】
(電気化学素子用電極)
本発明の電気化学素子用電極は、上記接着剤層付集電体の導電性接着剤層上に電極活物質を含む電極組成物層を有する。電極組成物層は、電極活物質、電極用バインダー、および必要に応じて用いられる電極用導電材等からなり、これら成分を含む電極用スラリーから調製される。
【0073】
(電極活物質)
電極活物質は負極活物質であってもよく、また正極活物質であってもよい。電極活物質は、電池内で電子の受け渡しをする物質である。以下、本発明の電気化学素子用電極をリチウムイオン二次電池に用いる場合について説明する。
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な化合物である。正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
【0074】
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVOなどのリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13などの遷移金属酸化物が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
【0075】
有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩などが挙げられる。なお、正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
【0076】
負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素の同素体が挙げられる。前記炭素の同素体からなる負極活物質は、金属、金属塩、酸化物などとの混合体や被覆体の形態で利用することも出来る。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコーン等を使用できる。
【0077】
電極活物質の体積平均粒子径は、正極活物質、負極活物質ともに通常0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜20μmである。これらの電極活物質は、それぞれ単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
(電極用バインダー)
電極用バインダーは、電極活物質、電極用導電材を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。
【0079】
電極用バインダーの量は、得られる電極組成物層と導電性接着剤層との密着性が充分に確保でき、リチウムイオン電池の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる観点から、電極活物質100質量部に対して、通常は0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0080】
(電極用導電材)
必要に応じて用いられる電極用導電材は、導電性を有し、電気二重層を形成し得る細孔を有さない、粒子状の炭素の同素体からなり、具体的には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベルケミカルズベスローテンフェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびファーネスブラックが好ましい。
【0081】
(電極組成物層)
電極組成物層は、導電性接着剤層上に設けられるが、その形成方法は制限されない。電極用スラリーは、電極活物質、電極用バインダーを必須成分として、必要に応じて電極用導電材、分散剤およびその他の添加剤を配合することができる。分散剤の具体例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの分散剤の量は、格別な限定はないが、電極活物質100質量部に対して、通常は0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは0.8〜2質量部の範囲である。
【0082】
電極組成物層を形成する場合、ペースト状の電極用スラリー(正極用スラリーまたは負極用スラリー)は、電極活物質および電極用バインダーの必須成分、並びに必要に応じて用いられる電極用導電材、分散剤および添加剤を、水またはN−メチル−2−ピロリドンやテトラヒドロフランなどの有機溶媒中で混練することにより製造することができる。
【0083】
電極用スラリーを得るために用いる溶媒は、特に限定されないが、上記の分散剤を用いる場合には、分散剤を溶解可能な溶媒が好適に用いられる。具体的には、通常水が用いられるが、有機溶媒を用いることもできるし、水と有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキサイド、スルホラン等のイオウ系溶剤;等が挙げられる。この中でも有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。電極用スラリーは、電極組成物層の乾燥の容易さと環境への負荷に優れる点から水を分散媒とした水系スラリーが好ましい。水と、水よりも沸点の低い有機溶媒とを併用すると、乾燥時に、乾燥速度を速くすることができる。また、水と併用する有機溶媒の量または種類によって、電極用バインダーの分散性または分散剤の溶解性が変わる。これにより、電極用スラリーの粘度や流動性を調整することができ、生産効率を向上させることができる。
【0084】
電極用スラリーを調製するときに使用する溶媒の量は、各成分を均一に分散させる観点から、スラリーの固形分濃度が、通常1〜90質量%、好ましくは5〜85質量%、より好ましくは10〜80質量%の範囲となる量である。
【0085】
電極活物質、および電極用バインダー、並びに必要に応じて用いられる電極用導電材、分散剤および添加剤を溶媒に分散または溶解する方法または手順は特に限定されず、例えば、溶媒に電極活物質、電極用バインダー、電極用導電材、分散剤および添加剤を添加し混合する方法;溶媒に分散剤を溶解した後、溶媒に分散させた電極用バインダーを添加して混合し、最後に電極活物質および電極用導電材を添加して混合する方法;溶媒に分散させた電極用バインダーに電極活物質および電極用導電材を添加して混合し、この混合物に溶媒に溶解させた分散剤を添加して混合する方法等が挙げられる。混合の手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機器が挙げられる。混合は、通常、室温〜80℃の範囲で、10分〜数時間行う。
【0086】
電極用スラリーの粘度は、生産性を上げることができる観点から、室温において、通常10〜100,000mPa・s、好ましくは30〜50,000mPa・s、より好ましくは50〜20,000mPa・sの範囲である。
【0087】
電極用スラリーの導電性接着剤層上への塗布方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。スラリーの塗布厚は、目的とする電極組成物層の厚みに応じて適宜に設定される。
【0088】
乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。中でも、遠赤外線の照射による乾燥法が好ましい。乾燥温度と乾燥時間は、集電体に塗布したスラリー中の溶媒を完全に除去できる温度と時間が好ましく、乾燥温度としては100〜300℃、好ましくは120〜250℃である。乾燥時間としては、通常5分〜100時間、好ましくは10分〜20時間である。
【0089】
電極組成物層の密度は、特に制限されないが、通常は0.30〜10g/cm、好ましくは0.35〜8.0g/cm、より好ましくは0.40〜6.0g/cmである。また、電極組成物層の厚みは、特に制限されないが、通常は5〜1000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは30〜300μmである。
【0090】
(電気化学素子)
電気化学素子用電極の使用態様としては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウム電池、マグネシウム電池などが挙げられるが、上記電極を用いたリチウムイオン二次電池が好適である。たとえばリチウムイオン二次電池は、上記電気化学素子用電極、セパレータおよび電解液で構成される。
【0091】
(セパレータ)
セパレータは、電気化学素子用電極の間を絶縁でき、陽イオンおよび陰イオンを通過させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、(a)気孔部を有する多孔性セパレータ、(b)片面または両面に高分子コート層が形成された多孔性セパレータ、または(c)無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート層が形成された多孔性セパレータが挙げられる。これらの非制限的な例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリオレフィン系、またはアラミド系多孔性セパレータ、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルまたはポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体などの固体高分子電解質用またはゲル状高分子電解質用の高分子フィルム、ゲル化高分子コート層がコートされたセパレータ、または無機フィラー、無機フィラー用分散剤からなる多孔膜層がコートされたセパレータなどを用いることができる。セパレータは、上記一対の電極組成物層が対向するように、電気化学素子用電極の間に配置され、素子が得られる。セパレータの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は1〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは15〜60μmである。
【0092】
(電解液)
電解液は、特に限定されないが、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiは好適に用いられる。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。支持電解質の量は、電解液に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、また通常は30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。支持電解質の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下し電池の充電特性、放電特性が低下する。
【0093】
電解液に使用する溶媒としては、支持電解質を溶解させるものであれば特に限定されないが、通常、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびメチルエチルカーボネート(MEC)などのアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類、1,2−ジメトキシエタン、およびテトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、およびジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。また、電解液には添加剤を含有させて用いることも可能である。また、添加剤としてはビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましい。
【0094】
上記以外の電解液としては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、硫化リチウム、LiI、LiN、LiS−Pガラスセラミックなどの無機固体電解質を挙げることができる。
【0095】
二次電池は、負極と正極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口して得られる。さらに必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をすることもできる。電池の形状は、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
【0096】
本発明の電気化学素子用導電性組成物によれば、集電体に対する塗工性に優れ、得られる電気化学素子の出力特性及びサイクル特性が良好である。
また、本発明においては、粘度が適切な範囲に制御されたキトサン化合物と、表面酸量が適切な範囲に制御された粒子状共重合体を併用することにより、得られる導電性組成物は導電性カーボンの分散性が良好であり、この導電性組成物を用いて得られる導電性接着剤層は、強度及び耐電解液性に優れ、導電性接着剤層の上に形成される電極組成物層との密着性にも優れる。
【0097】
なお、上述の実施形態においては、本発明の電気化学素子用導電性組成物を用いて導電性接着剤層を形成する構成について説明したが、本発明の電気化学素子用導電性組成物と電極活物質(好ましくは正極活物質)とを含む電気化学素子電極用組成物(カーボンペースト)を作製してもよい。この場合には、この電気化学素子電極用組成物を集電体上に塗布・乾燥することにより電極が得られる。また、この電極、セパレータおよび電解液を含んでなる電気化学素子を作製することができる。ここで、電気化学素子としてのリチウムイオン二次電池を作製する場合、上記した電極活物質、集電体、セパレータ、および電解液を用いることができる。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。各特性は、以下の方法により評価する。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」および「質量%」である。
粒子状共重合体の電解液膨潤度、及び表面酸量は上述の方法で算出及び測定を行った。
【0099】
(導電性組成物の塗工性)
グラビアコーター(μCoater350TM、廉井精機製)を使用して、アルミニウム集電箔上に、スラリー状の導電性組成物を5m/分の速度で塗布した。アルミニウム集電箔上に形成された導電性接着剤層の表面を観察し、アルミニウム集電箔上の未塗工部発生率を求めた。未塗工部発生率を下記の基準により評価し、結果を表1に示した。未塗工部発生率が少ないほど塗工性に優れることを示す。
A:未塗工部が0%以上1%未満
B:未塗工部が1%以上5%未満
C:未塗工部が5%以上10%未満
D:未塗工部が10%以上
【0100】
(リチウムイオン二次電池の出力特性)
実施例および比較例で作製したラミネート型セルを用い、25℃で0.1Cの定電流で充電深度(SOC)50%まで充電し、電圧V1を測定した。その後、25℃で5Cの定電流で10秒間放電し、電圧V2を測定した。これらの測定結果から、電圧降下△V=V1−V2を算出した。算出された電圧降下△Vを、下記基準により評価し、結果を表1に示した。電圧降下△Vの値が小さいほど、出力特性に優れることを示す。
A:電圧降下△Vが100mV以上150mV未満
B:電圧降下△Vが150mV以上200mV未満
C:電圧降下△Vが200mV以上250mV未満
D:電圧降下△Vが250mV以上300mV未満
【0101】
(リチウムイオン二次電池のサイクル特性)
実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池を25℃の環境下で24時間静置させた。その後、25℃の環境下で、1.0Cのレートにて4.2Vまで充電し、3.0Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。さらに、このリチウムイオン二次電池を、60℃の環境下で、前記と同様の充放電を200回繰り返し(200サイクル)、200サイクル後の容量C1を測定した。サイクル特性(高温サイクル特性)は、ΔC=(C1/C0)×100(%)で示す容量維持率ΔCを算出し、以下の基準により評価した。この容量維持率ΔCの値が高いほど、サイクル特性に優れることを示す。
A:容量維持率ΔCが85%以上
B:容量維持率ΔCが80%以上85%未満
C:容量維持率ΔCが75%以上80%未満
D:容量維持率ΔCが75%未満
【0102】
(キトサン溶液の粘度測定)
各実施例及び各比較例で用いるキトサン0.5%及び酢酸0.5%からなる水溶液を調製し、その粘度をブルックフィールドデジタル粘度計(以下、「B型粘度計」ということがある。)LVDV−IIProを使用して測定した。測定開始から60秒後の値をキトサン溶液の粘度の測定値とし、単位をmPa・sとして示した。測定条件は温度25℃、回転数60rpm、スピンドル形状を4とした。
【0103】
(実施例1)
(粒子状共重合体の製造)
撹拌装置を備えたステンレス製耐圧反応器に、2エチルヘキシルアクリレート63.4部、イタコン酸2.5部、スチレン34.1部、アンモニウムラウリルサルフェート(アニオン性界面活性剤)2部、およびイオン交換水108部を添加し、撹拌した。次いで、反応器内の温度を60℃に昇温した後、4%過硫酸カリウム水溶液10部を投入して重合反応を開始させた。そして、重合反応を進行させ、重合転化率が70%に達したとき、反応温度を70℃に昇温した。反応温度を70℃に維持しながら、重合転化率が97%に達するまで、重合反応を継続した。反応系を室温まで冷却して、重合反応を停止し、減圧して未反応単量体を除去した。イオン交換水を添加し、固形分濃度を45%、分散液のpHを7.5に調整することにより、粒子状共重合体の分散液を得た。なお、分散液のpHの調整は、10%アンモニア水溶液を添加することにより行った。得られた粒子状共重合体の体積平均粒子径は約300nmであり、表面酸量は0.2mmol/gであり、電解液膨潤度は120%であった。
【0104】
(導電性組成物の製造)
イオン交換水に分散剤としてアニオン系の界面活性剤(デモールNL、花王製)1.5部、濡れ材としてポリエステル重合体(DISPERBYK−2010、BYK製)0.5部、粘度50mPa・sのキトサン水溶液(キトサン50(和光純薬工業株式会社製)0.5%、及び酢酸0.5%を含む水溶液)(以下の実施例及び比較例において、キトサン水溶液はキトサン化合物の他に酢酸を0.5%含む)をキトサン固形分相当で2部、上記にて得られた粒子状共重合体(スチレン/アクリル酸系ポリマー)を固形分相当で4部、及び防腐剤としてインチアゾリン化合物水溶液(ACTICIDE(登録商標)、MBS(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)/1,2−ベンズ−4−イソチアゾリン−3−オン(BIT)=50/50の5%水溶液)、ソー・ジャパン製)を固形分相当で0.1部添加し、1000rpmで10分間撹拌した。均一に撹拌されたことを確認した後、導電材として炭素材料(カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業社製)を5部、及びグラファイトを15部)を添加し、予備的な分散のため、ディスパーを使用して1200rpmで10分間撹拌した。その後、原料組成物の温度を20℃まで冷却し、高圧分散機としてナノヴェイタ(C−ES008、吉田機械興業株式会社製)を使用して、ノズル径が400μmのクロス型ノズルを用い、50MPaの条件で2回高圧分散処理を実施し、導電性組成物を作製した。得られた導電性組成物の固形分濃度は25質量%であった。また、得られた導電性組成物に含まれるキトサンの質量を粒子状共重合体の質量で除した値は、0.5であった。
【0105】
(導電性接着剤層の形成)
得られた導電性組成物を、グラビアコーター(μCoater350TM、廉井精機製)を使用して5m/分の速度でアルミニウム集電箔の片面に塗布した。乾燥温度を100℃として、厚さ約1μmの導電性接着剤層を形成した。
【0106】
(電極の作製)
正極の電極活物質として、体積平均粒子径が20μmのリチウム含有ニッケルマンガンコバルト複合酸化物を94部、正極用バインダーとしてポリフッ化ビニリデンの9.0%水溶液(HSV900、Kynar社製)を固形分相当で3部、電極用導電材としてアセチレンブラック(デンカブラック粉状、電気化学工業社製)を3部、及び溶媒としてN−メチルピロリドンを加えてスラリーを作製した。N−メチルピロリドンを徐々に加えて固形分濃度を落としつつ、混練機(練太郎、シンキー社製)を使用して混練を繰り返した。最終的には全固形分濃度を55%まで落とし、塗工に適する粘度とし、正極用スラリーを得た。前記にて導電性接着剤層を形成したアルミニウム集電体に前記正極用スラリーを20m/分の電極成形速度で集電体の表面に塗布し、80℃で20分間、さらに120℃で20分間乾燥した後、4.0cm×3.8cmとなるように切り出して、片面厚さ100μmの正極組成物層を形成した。次いで、ロールプレスで圧延して厚さ50μmの正極用極板を得た。
【0107】
一方、負極の電極活物質として、体積平均粒子径が3.7μmであるグラファイト(KS−6、ティムカル社製)を100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1.5%水溶液(MAC350HC、日本製紙ケミカル株式会社製)を固形分相当で1部、負極用バインダーとしてガラス転移温度が−48℃で、数平均粒子径が0.18μmのジエン重合体の40%水分散体を固形分相当で1部、およびイオン交換水を全固形分濃度が50%となるようにプラネタリーミキサーを使用して混合し、塗工に適した粘度として、負極用スラリーを調製した。この負極用スラリーを、アプリケーターを用いて、厚さ18μmの銅箔の片面に乾燥後の膜厚が100μm程度になるように塗布し、50℃で20分乾燥後、110℃で20分間加熱処理して負極組成物層を形成した。次いで、ロールプレスで圧延して厚さ50μmの負極用極板を得た。
【0108】
(電池の製造)
前記正極、負極及びセパレータを用いて、積層型ラミネートセル形状のリチウムイオン電池を作製した。電解液としてはエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートを質量比3:7で混合したものに、ビニレンカーボネートを質量比で2.0%加え混合した溶媒に、LiPFを1.0mol/リットルの濃度で溶解させたものを用いた。
【0109】
(実施例2)
使用するキトサン化合物の種類をキトサン5(和光純薬工業株式会社製)に変更し、粘度5mPa・sのキトサン水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0110】
(実施例3)
使用するキトサン化合物の種類をキトサン500(和光純薬工業株式会社製)に変更し、粘度500mPa・sのキトサン水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0111】
(実施例4)
2エチルヘキシルアクリレートの量を63.7部、イタコン酸の量を2部、スチレンの量を34.3部に変更したこと以外は、実施例1と同様に粒子状共重合体の製造を行った。得られた粒子状共重合体の体積平均粒子径は約300nmであり、表面酸量は0.15mmol/gであり、電解液膨潤度は120%であった。この粒子状共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。また、この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0112】
(実施例5)
2エチルヘキシルアクリレートの量を64部、イタコン酸の量を1.5部、スチレンの量を34.5部に変更したこと以外は、実施例1と同様に粒子状共重合体の製造を行った。得られた粒子状共重合体の体積平均粒子径は約300nmであり、表面酸量は0.1mmol/gであり、電解液膨潤度は120%であった。この粒子状共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。また、この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0113】
(実施例6)
2エチルヘキシルアクリレートの量を73.1部、スチレンの量を24.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様に粒子状共重合体の製造を行った。得られた粒子状共重合体の体積平均粒子径は約300nmであり、表面酸量は0.2mmol/gであり、電解液膨潤度は150%であった。この粒子状共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。また、この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0114】
(実施例7)
粘度50mPa・sのキトサン水溶液をキトサン固形分相当で0.4部用いたこと以外は、実施例6と同様に導電性組成物の製造を行った。得られた導電性組成物に含まれるキトサンの質量を粒子状共重合体の質量で除した値は、0.1であった。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0115】
(実施例8)
2エチルヘキシルアクリレートの量を82.9部、スチレンの量を14.6部に変更したこと以外は、実施例1と同様に粒子状共重合体の製造を行った。得られた粒子状共重合体の体積平均粒子径は約300nmであり、表面酸量は0.2mmol/gであり、電解液膨潤度は180%であった。この粒子状共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。また、この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0116】
(比較例1)
2エチルヘキシルアクリレートの量を64.7部、イタコン酸の量を0.5部、スチレンの量を34.8部に変更したこと以外は、実施例1と同様に粒子状共重合体の製造を行った。得られた粒子状共重合体の体積平均粒子径は約300nmであり、表面酸量は0.05mmol/gであり、電解液膨潤度は120%であった。この粒子状共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。また、この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0117】
(比較例2)
導電性組成物の製造において、粘度0.5mPa・sのキトサン水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
なお、粘度0.5mPa・sのキトサン水溶液は、キトサン5(和光純薬工業株式会社製)0.5%、及び酢酸0.5%を含む水溶液を高圧分散機としてナノヴェイタ(C−ES008、吉田機械興業株式会社製)を使用して、ノズル径が400μmのクロス型ノズルを用い、200MPaの条件で3回高圧分散処理を実施することにより得た。
【0118】
(比較例3)
導電性組成物の製造において、粘度1000mPa・sのキトサン水溶液(ダイキトサンH(大日精化工業製)0.5%、及び酢酸0.5%を含む水溶液)を用いたこと以外は、実施例1と同様に導電性組成物の製造を行った。この導電性組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様に電極の作製および電池の製造を行った。
【0119】
【表1】
【0120】
表1に示すように、0.5%酢酸水溶液に0.5質量%となるように溶解させた水溶液の粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下であるキトサン化合物と、表面酸量が0.1mmol/g以上である粒子状共重合体と、導電材とを含む電気化学素子用導電性組成物は、塗工性に優れる。またこの電気化学素子用導電性組成物を用いて導電性接着剤層を形成すると、得られる電池は出力特性、及びサイクル特性に優れる。
図1