(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記実行部は、前記複数の子局装置の各々の設置位置に基づいて、互いに隣接する子局装置同士が同一の通信セクタを構成し、かつ互いの距離が第4閾値より大きい子局装置同士が互いに異なる通信セクタを構成するように、前記セクタ割当を実行する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信中継システム。
前記実行部は、前記複数の通信セクタの各々を構成する子局装置の個数を、前記複数の通信セクタの各々で行われる通信の通信方式に応じて異ならせるように、前記セクタ割当を実行する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の通信中継システム。
前記判定部は、時間単位、週単位、または日単位での前記トラフィックの統計に基づいて、時間、週、または日に応じて前記セクタ割当を実行する必要があるか否かを判定する、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の通信中継システム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0008】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
【0009】
図1は、第1実施形態の技術が適用される分散アンテナシステムの概念を説明するための例示的なブロック図である。分散アンテナシステムとは、たとえば携帯電話基地局などの無線装置からの電波を、電波の届かないいわゆる不感知帯まで有線で伝送することで、不感知帯内の携帯端末と、無線装置との間の通信を実現するシステムである。不感知帯としては、たとえば、ビルや地下街、トンネルなどが挙げられる。
【0010】
すなわち、
図1に示されるように、分散アンテナシステムは、不感知帯外の基地局BSと、不感知帯内の無線通信端末Tとの間の通信を中継するように構成されている。分散アンテナシステムは、基地局BSに接続される親局装置101と、無線通信端末Tと通信可能なアンテナ103aを有する複数の子局装置103と、を備える。なお、
図1には、親局装置101と子局装置103とがハブ局装置102を介して間接的に接続された例が示されているが、分散アンテナシステムでは、親局装置101と子局装置103とがハブ局装置102を介さずに直接的に接続されることもある。
【0011】
図2は、第1実施形態による通信中継システム200の全体構成を示した例示的な構成図である。この通信中継システム200は、上記で説明した分散アンテナシステムを構成する。
【0012】
図2に示されるように、第1実施形態による通信中継システム200は、親局装置201と、複数(
図2では3個)のハブ局装置202a〜202cと、複数(
図2では9個)の子局装置203a〜203iと、を備える。ハブ局装置202a〜202cは、親局装置201に接続されている。また、ハブ局装置202aは、子局装置203a〜203cに接続され、ハブ局装置202bは、子局装置203d〜203fに接続され、ハブ局装置202cは、子局装置203g〜203iに接続されている。以下では、ハブ局装置202a〜202cを区別する必要がない場合、ハブ局装置202a〜202cを総称してハブ局装置202と記載し、子局装置203a〜203iを区別する必要が無い場合、子局装置203a〜203iを総称して子局装置203と記載する。
【0013】
ここで、第1実施形態による親局装置201は、子局装置203a〜203iを複数のグループに分割して当該複数のグループにそれぞれ異なる複数の通信セクタを割り当てるセクタ割当(セクタ分割)を実行可能に構成されている。たとえば、
図2の例では、子局装置203a〜203cに第1の通信セクタ205aが割り当てられ、子局装置203d〜203fに第2の通信セクタ205bが割り当てられ、子局装置203g〜203iに第3の通信セクタ205cが割り当てられている。なお、親局装置201には、セクタ割当を実現するためのハードウェア構成として、可変減衰器210が設けられている。
【0014】
ところで、上記のような構成では、通信リソースを有効に活用するため、特定の通信セクタにトラフィックが集中するのを回避することが望まれている。そこで、第1実施形態では、以下のような構成により、無線通信端末Tから基地局BS側に送信される上り信号(アップリンク信号)のトラフィックを考慮しながら動的にセクタ割当を実行することで、通信リソースの有効活用を図る。
【0015】
図3は、第1実施形態による親局装置201、子局装置203、およびハブ局装置202の機能的構成を示した例示的なブロック図である。
図3に示される機能的構成は、親局装置201、子局装置203、およびハブ局装置202の各々に設けられるプロセッサがメモリなどに格納されたプログラムを読み出して実行した結果として実現される。なお、第1実施形態では、
図3に示される機能的構成の一部または全部が、専用のハードウェア(回路など)によって実現されてもよい。
【0016】
図3に示されるように、子局装置203は、トラフィック推定部301を備えている。トラフィック推定部301は、当該トラフィック推定部301が設けられた子局装置203経由で通信を行う無線通信端末T(
図3には不図示)から基地局BS(
図3には不図示)側に送信される上り信号の有無に基づいて、当該上り信号のトラフィックを推定する。上り信号とは、たとえばアップリンク信号である。
図3の例では、子局装置203a〜203iのトラフィック推定部301は、それぞれ、子局装置203a〜203i経由で通信を行う無線通信端末Tから送信される上り信号のトラフィックを推定する。なお、ここで言及しているトラフィックは、上り信号が送信された時間の、ある一定の時間内における割合(占有率)を示す値であり、トラフィック量とも称されうる。
【0017】
また、ハブ局装置202は、トラフィック集約部311を備えている。トラフィック集約部311は、当該トラフィック集約部311を備えたハブ局装置202に接続された複数の子局装置203の各々のトラフィック推定部301の推定結果を集約する。つまり、
図3の例では、ハブ局装置202aのトラフィック集約部311は、子局装置203a〜203cのトラフィック推定部301の推定結果を集約し、ハブ局装置202bのトラフィック集約部311は、子局装置203d〜203fのトラフィック推定部301の推定結果を集約し、ハブ局装置202cのトラフィック集約部311は、子局装置203g〜203iのトラフィック推定部301の推定結果を集約する。
【0018】
また、親局装置201は、トラフィック集約部321と、トラフィック解析部322と、セクタ割当判定部323と、セクタ割当実行部324と、を備えている。トラフィック集約部321は、複数のハブ局装置202の各々のトラフィック集約部311の集約結果をさらに集約する。トラフィック解析部322は、トラフィック集約部321の集約結果を解析する。セクタ割当判定部323は、トラフィック解析部322の解析結果に基づいて、セクタ割当の要否を判定する。セクタ割当実行部324は、セクタ割当を実行する必要があるとセクタ割当判定部323により判定された場合に、セクタ割当を実行する。
【0019】
セクタ割当の要否の判定基準としては、様々なものが考えられる。
【0020】
(第1の判定基準)
まず、第1の判定基準として、所定の周期内におけるトラフィックの変化が閾値以上か否かという判定基準が考えられる。この場合、親局装置201の各部による処理は、所定の周期で繰り返し実行される。すなわち、この場合、トラフィック解析部322は、所定の周期内における子局装置203毎のトラフィックの変化を解析する。そして、セクタ割当判定部323は、トラフィック解析部322の解析結果に基づき、各通信セクタにおけるトラフィックの変化を算出し、当該トラフィックの変化量が閾値以上の通信セクタが存在する場合に、セクタ割当を実行する必要があると判定する。そして、セクタ割当実行部324は、セクタ割当を実行する必要があるとセクタ割当判定部323が判定した場合に、セクタ割当を実行することで、特定の通信セクタにトラフィックが集中するのを抑制する。
【0021】
なお、上記の所定の周期は、状況に応じて変動しない一定の値として設定されてもよいし、状況に応じて変動する値として設定されてもよい。後者の例として、たとえば、所定の周期を、時間単位、週単位、または日単位で集計したトラフィックなどといった統計的な情報に基づいて決定することが考えられる。
【0022】
一般に、オフィスなどにおいては、時間単位でみると、日中はトラフィックが比較的大きくなる一方、夜間はトラフィックが比較的小さくなる傾向がある。また、日単位で考えると、平日はトラフィックが比較的大きくなる一方、週末はトラフィックが比較的小さくなる傾向がある。さらに、週単位で考えても、トラフィックが比較的大きくなる週と、トラフィックが比較的小さくなる週と、が存在することが考えられる。したがって、これらの傾向を踏まえて、トラフィックが大きくなる傾向がある状況では比較的短い周期を設定し、トラフィックが小さくなる傾向がある状況では比較的長い周期を設定すれば、より効果的にセクタ割当の要否を判定することが可能である。
【0023】
このように、第1実施形態では、セクタ割当判定部323が、時間単位、週単位、または日単位でのトラフィックの統計に基づいて、時間、週、または日に応じてセクタ割当を実行する必要があるか否かを判定してもよい。
【0024】
(第2の判定基準)
また、第2の判定基準として、1つの通信セクタを構成する子局装置203の個数が所定の許容値を超えたか否かという判定基準も考えられる。一般に、子局装置203が新規に追加された場合、当該追加された子局装置203は、既に存在している複数の通信セクタのうちいずれかに割り当てられる。しかしながら、1つの通信セクタを構成する子局装置203の個数が増加すると、当該1つの通信セクタにおけるトラフィックも増大する。そこで、第1実施形態では、1つの通信セクタにトラフィックが集中するのを抑制するため、セクタ割当判定部323は、1つの通信セクタを構成する子局装置203が所定の許容値を超えた場合に、セクタ割当を実行する必要があると判定する。そして、セクタ割当実行部324は、セクタ割当を実行する必要があるとセクタ割当判定部323が判定した場合に、各通信セクタを構成する子局装置203の個数が許容値以下になるようにセクタ割当を実行する。
【0025】
以上の構成により、第1実施形態では、以下のような動作が実現される。
【0026】
図4は、第1実施形態による親局装置201およびハブ局装置202の全体的な動作の流れを示した例示的なシーケンス図である。
【0027】
図4に示されるように、第1実施形態では、まず、S401において、ハブ局装置202aは、自身に接続された子局装置203a〜203cで推定されたトラフィックを集約する。同様に、S402において、ハブ局装置202bは、子局装置203d〜203fで推定されたトラフィックを集約し、S403において、ハブ局装置202cは、子局装置203g〜203iで推定されたトラフィックを集約する。
【0028】
そして、S404において、ハブ局装置202aは、集約したトラフィックを親局装置201に送信する。同様に、S405およびS406において、ハブ局装置202bおよび202cは、集約したトラフィックを親局装置201に送信する。
【0029】
そして、S407において、親局装置201のトラフィック集約部321は、ハブ局装置202a〜202cから受信したトラフィックを集約する。そして、S408において、トラフィック集約部321は、集約結果をトラフィック解析部322に出力する。
【0030】
そして、トラフィック解析部322は、S409において、トラフィック集約部321の集約結果に基づいてトラフィックを解析し、S410において、解析結果をセクタ割当判定部323に出力する。解析結果の例としては、たとえば、各通信セクタにおける所定の周期内でのトラフィックの変化量などが挙げられる。
【0031】
そして、S411において、セクタ割当判定部323は、トラフィック解析部322の解析結果に基づいて、セクタ割当の要否を判定する。たとえば、前述の例のように、セクタ割当判定部323は、所定の周期内におけるトラフィックの変化量が閾値以上の通信セクタが存在する場合に、当該通信セクタにトラフィックが集中するのを回避するようにセクタ割当を実行する必要があると判定する。
【0032】
S412において、セクタ割当判定部323は、S411の判定結果に応じた指示を、セクタ割当実行部324に出力する。そして、S413において、セクタ割当実行部324は、セクタ割当判定部323からの指示に応じて、セクタ割当を実行する。
【0033】
第1実施形態では、上記のS401〜S413の動作が、所定の周期で繰り返し実行される。前述したように、所定の周期は、状況に応じて変動しない一定の値として設定されてもよいし、時間単位、週単位、または日単位でのトラフィックなどといった統計的な情報に基づいて変動する値として設定されてもよい。
【0034】
以下、第1実施形態による親局装置201のセクタ割当判定部323が実行する処理(上記のS411およびS412)の例についてより具体的に説明する。
【0035】
図5は、第1実施形態による親局装置201のセクタ割当判定部323が第1の判定基準に基づいてセクタ割当の要否を判定する際に実行する一連の処理を示した例示的なフローチャートである。前述したように、第1の判定基準とは、所定の周期内におけるトラフィックの変化が閾値以上か否かという判定基準である。
【0036】
図5に示されるように、セクタ割当判定部323は、まず、S501において、トラフィックの推定周期が経過したか否か、すなわち前回トラフィックの推定を行ってから上記の所定の周期が経過したか否かを判断する。このS501の処理は、トラフィックの推定周期が経過したと判断されるまで繰り返される。そして、S501において、トラフィックの推定周期が経過したと判断された場合、S502に処理が進む。
【0037】
S502において、セクタ割当判定部323は、子局装置203毎のトラフィックの変化を合算し、各通信セクタにおけるトラフィックの変化を算出する。そして、S503において、セクタ割当判定部323は、トラフィックの変化量が閾値以上の通信セクタが存在するか否かを判断する。
【0038】
S503において、トラフィックの変化量が閾値以上の通信セクタが存在すると判断された場合、特定の通信セクタにトラフィックが集中していると判定することができる。したがって、この場合、S504に処理が進み、当該S504において、セクタ割当判定部323は、セクタ割当実行部324に対してセクタ割当の実行を指示する。そして、S501に処理が戻る。
【0039】
なお、S503において、トラフィックの変化量が閾値以上の通信セクタが存在しないと判断された場合、セクタ割当を実行する必要がないので、S504の処理は実行されず、S501に処理が戻る。
【0040】
図6は、第1実施形態による親局装置201のセクタ割当判定部323が第2の判定基準に基づいてセクタ割当の要否を判定する際に実行する一連の処理を示した例示的なフローチャートである。前述したように、第2の判定基準とは、1つの通信セクタを構成する子局装置203の個数が所定の許容値を超えたか否かという判定基準である。
【0041】
図6に示されるように、セクタ割当判定部323は、まず、S601において、子局装置203の個数が許容値を超えた通信セクタが存在するか否かを判断する。なお、子局装置203の個数が許容値を超えるという事態は、たとえば子局装置203が新規に追加された場合に起こりうる。
【0042】
上記のS601の処理は、子局装置203の個数が許容値を超えた通信セクタが存在すると判断されるまで繰り返される。すなわち、S601において、子局装置203の個数が許容値を超えた通信セクタが存在すると判断された場合、当該通信セクタにトラフィックが集中していると判定することができる。したがって、この場合、S602に処理が進み、当該S602において、セクタ割当判定部323は、セクタ割当実行部324に対してセクタ割当の実行を指示する。そして、S601に処理が戻る。
【0043】
一方、S601において、子局装置203の個数が許容値を超えた通信セクタが存在しない場合、セクタ割当を実行する必要はないので、S602の処理は実行されず、S601の処理が再び実行される。
【0044】
以上説明したように、第1実施形態では、複数の子局装置203の各々が、無線通信端末Tから基地局BS側に送信される上り信号(アップリンク信号)の有無に基づいて当該上り信号のトラフィックを推定するトラフィック推定部301を備えている。また、親局装置201は、トラフィック集約部321と、セクタ割当判定部323と、セクタ割当実行部324と、を備えている。ここで、トラフィック集約部321は、各子局装置203のトラフィック推定部301の推定結果を集約する。また、セクタ割当判定部323は、トラフィック集約部321の集約結果に基づいて、複数の子局装置203を複数のグループに分割して当該複数のグループにそれぞれ異なる複数の通信セクタを割り当てるセクタ割当を実行する必要があるか否かを判定する。セクタ割当実行部324は、セクタ割当を実行する必要があると判定された場合に、セクタ割当を実行する。これらの構成により、第1実施形態では、通信セクタ毎のトラフィックに応じてより柔軟にセクタ割当を実行することができる。
【0045】
(セクタ割当の要否を判定するための判定基準の他の例)
なお、上記では、セクタ割当の要否の判定基準として、所定の周期内におけるトラフィックの変化が閾値以上か否かという第1の判定基準と、1つの通信セクタを構成する子局装置203の個数が所定の許容値を超えたか否かという第2の判定基準と、の2つの判定基準を例示した。しかしながら、これら2つの判定基準の代わりに、または、これら2つの判定基準に加えて、以下に説明する第3の判定基準が用いられてもよい。
【0046】
(第3の判定基準)
図7は、第1実施形態においてセクタ割当の要否が判定される際に用いられうる第3の判定基準を説明するための図である。第3の判定基準では、複数の通信セクタのうちの少なくとも1つにおけるトラフィックの値と、複数の通信セクタ全体におけるトラフィックの合算値を複数の通信セクタの個数で除算した平均値と、の差が所定の閾値より大きい場合、すなわち下記の式(1)が満たされる場合に、セクタ割当を実行する必要があると判断される。
【0047】
各通信セクタにおけるトラフィック(子局装置のトラフィックのセクタ毎の合算値)>全通信セクタにおけるトラフィックの総和の平均値+所定の閾値 … (1)
【0048】
図7において、(a)は、あるセクタにおけるトラフィックの状況を表す(b)と、別のセクタにおけるトラフィックの状況を表す(c)と、さらに別のセクタにおけるトラフィックの状況を表す(d)と、でトラフィックの総和をとったものを表している。前述したように、トラフィックは、上り信号が送信された時間の、ある一定の時間内における割合(占有率)を示す値として定義されるため、
図7では、(b)〜(d)における「トラフィックあり」の時間について論理和(OR)をとったものが、(a)となっている。
【0049】
第3の判定基準では、
図7の(b)〜(d)の各々から、上記の式(1)の左辺の「各通信セクタにおけるトラフィック」が求められ、
図7の(a)から、上記の式(1)の右辺の「全通信セクタにおけるトラフィックの総和の平均値」が求められる。そして、上記の式(1)が満たされる場合に、セクタ割当を実行する必要があると判断される。
【0050】
第3の判定基準では、上記のように、複数の通信セクタ全体におけるトラフィックの平均値が考慮されるので、当該平均値からのズレ具合に基づいて、セクタ割当を効果的に実行することができる。
【0051】
(セクタ割当の際に考慮されうる条件)
また、上記の第1実施形態では、セクタ割当が実行される場合、下記で説明する複数の条件のうち少なくとも1つが考慮されうる。
【0052】
(第1の条件)
図8は、第1実施形態においてセクタ割当が実行される際に考慮されうる第1の条件を説明するための図である。この第1の条件下では、複数の通信セクタを構成する子局装置の個数が均等になるように、セクタ割当が実行される。
【0053】
より具体的に、
図8の例では、セクタ割当が実行される前の段階で、セクタIDが「1」である通信セクタの子局装置の個数が「3」となっており、セクタIDが「2」である通信セクタの子局装置の個数が「10」となっており、セクタIDが「3」である通信セクタの子局装置の個数が「2」となっている。この状況で、第1の条件を考慮したセクタ割当が実行されると、各通信セクタの子局装置の個数が均等になる、つまり各通信セクタの子局装置の個数が「5」となる。
【0054】
第1の条件によれば、上記のように、セクタ割当の実行後における各通信セクタの子局装置の個数が均等になるので、特定の通信セクタにトラフィックが集中するのを容易に回避することができる。
【0055】
(第2の条件)
図9は、第1実施形態においてセクタ割当が実行される際に考慮されうる第2の条件を説明するための図である。この第2の条件下では、複数の子局装置の各々の設置位置に基づいて、互いに隣接する子局装置同士が同一の通信セクタを構成し、かつ互いの距離が閾値より大きい子局装置同士が互いに異なる通信セクタを構成するように、セクタ割当が実行される。
【0056】
図9の例では、あるフロア901に設置された複数(12個)の子局装置910a〜910lのうち、子局装置910a〜910dが通信セクタ920aを構成し、子局装置910e〜910hが別の通信セクタ920bを構成している。
図9に示されるように、子局装置910a〜910dは、互いに隣接する位置に設置されており、子局装置910e〜910hは、互いに隣接する位置に設置されている。ここで、
図9の例では、子局装置910bおよび910dは、子局装置910eおよび910gと隣接するように設置されているが、当該子局装置910eおよび910gは、子局装置910bおよび910dと隣接する他の子局装置910aおよび910cから離れた位置に設置されている。このため、
図9の例では、子局装置910bおよび910dと、子局装置910eおよび910gとは、互いに隣接しているものの、互いに異なる通信セクタ920aおよび920bをそれぞれ構成する。
【0057】
第2の条件では、上記のように、互いに隣接する子局装置同士が同一の通信セクタを構成するようにセクタ割当が実行されるので、近距離を移動中に通信セクタが他の通信セクタに切り替わることで発生するハンドオーバーによる処理の遅延を回避することができる。また、互いの距離が閾値より大きい子局装置同士が互いに異なる通信セクタを構成するようにセクタ割当が実行されるので、互いに隣接する子局装置が全て同一の通信セクタに属することによるトラフィックの増大を回避することができる。
【0058】
(第3の条件)
図10は、第1実施形態においてセクタ割当が実行される際に考慮されうる第3の条件を説明するための図である。この第3の条件下では、複数の子局装置が、階段で接続される複数の階層を有した1つの建物内に設置されている場合、当該階段の近傍に設置された子局装置が同一の通信セクタを構成するように、セクタ割当が実行される。
【0059】
図10の例では、フロア1001に4個の子局装置1010a〜1010dが設置され、フロア1001と階段1001aで接続されたフロア1002に4個の子局装置1010e〜1010hが設置され、フロア1002と階段1002aで接続されたフロア1003に4個の子局装置1010i〜1010lが設置されている。なお、フロア1003は、階段1003aで他のフロア(
図10には不図示)に接続されている。
【0060】
図10の例では、第3の条件に従ってセクタ割当が実行される結果として、フロア1001の階段1001aの近傍に設置された子局装置1010aと、フロア1002の階段1002aの近傍に設置された子局装置1010eと、フロア1003の階段1003aの近傍に設置された子局装置1010iとが、同一の通信セクタ1020を構成する。これにより、階層を移動中に通信セクタが切り替わることで発生するハンドオーバーによる処理の遅延を回避することができる。また、この場合、フロア1001内における子局装置1010a以外の子局装置1010b〜1010dが同一の通信セクタを構成し、フロア1002内における子局装置1010e以外の子局装置1010f〜1010hが同一の通信セクタを構成し、フロア1003内における子局装置1010i以外の子局装置1010j〜1010lが同一の通信セクタを構成するように、セクタ割当が実行されてもよい。これにより、各フロア1001〜1003における階段1001a〜1003a近傍以外の領域を移動中に通信セクタが切り替わることで発生するハンドオーバーによる処理の遅延を回避することができる。
【0061】
(第4の条件)
図11は、第1実施形態においてセクタ割当が実行される際に考慮されうる第4の条件を説明するための図である。この第4の条件下では、複数の通信セクタの各々を構成する子局装置の個数を、複数の通信セクタの各々で行われる通信の通信方式に応じて異ならせるように、セクタ割当が実行される。
【0062】
図11に示されるように、無線通信では、LTE(Long Term Evolution)や、3G(3rd Generation)などといった、複数の通信方式が用いられる。一般に、これら複数の通信方式は、通信容量が異なっている。たとえば、LTEは、3Gよりも通信容量が大きい。このため、LTEの通信が行われる通信セクタには、3Gの通信が行われる通信セクタよりも多くの子局装置を割り当てることが可能である。
図9の例では、LTEの通信セクタ1101に10個の子局装置が割り当てられ、3Gの通信セクタ1102および1103にそれぞれ5個の子局装置が割り当てられている。なお、
図9に例示した個数は、あくまで一例であって、具体的な数字を制限するものではない。
【0063】
第4の条件によれば、通信セクタが許容する子局装置の個数が、当該通信セクタで行われる通信の通信方式に応じて変更されるので、各通信セクタのトラフィックを通信容量に応じて適切にコントロールすることができる。
【0064】
(第5の条件)
図12は、第1実施形態においてセクタ割当が実行される際に考慮されうる第5の条件を説明するための図である。この第5の条件は、子局装置が複数のアンテナを有する構成において、当該複数のアンテナのうちの少なくとも一部(ただし複数)がMIMO(Multi−Input Multi−Output)のアンテナとして使用される場合に考慮されうる。第5の条件では、子局装置単位でセクタ割当が実行されるのではなく、アンテナ単位でセクタ割当が実行される。ただし、第5の条件では、MIMOのアンテナとして使用される複数のアンテナが同一の通信セクタを構成するように、セクタ割当が実行される。
【0065】
図12の例では、複数の子局装置203の各々が、複数のアンテナを有している。具体的に、子局装置203aは、アンテナ1201a〜1201cを有し、子局装置203bは、アンテナ1202a〜1202cを有し、子局装置203cは、アンテナ1203a〜1203cを有している。また、子局装置203dは、アンテナ1204a〜1204cを有し、子局装置203eは、アンテナ1205a〜1205cを有し、子局装置203fは、アンテナ1206a〜1206cを有している。また、子局装置203gは、アンテナ1207a〜1207cを有し、子局装置203hは、アンテナ1208a〜1208cを有し、子局装置203iは、アンテナ1209a〜1209cを有している。
【0066】
ここで、
図12の例において、子局装置203cのアンテナ1203aおよび1203bが、MIMOのアンテナとして使用されるものとする。この場合、第5の条件を考慮したセクタ割当が実行されると、子局装置203cのアンテナ1203aおよび1203bは、同一の通信セクタ1205aに設定されるが、子局装置203cの他のアンテナ1203cは、別の通信セクタ1205bに設定される。
【0067】
同様に、
図12の例において、子局装置203fのアンテナ1206bおよび1206cが、MIMOのアンテナとして使用されるものとする。この場合、第5の条件を考慮したセクタ割当が実行されると、子局装置203fのアンテナ1206bおよび1206cは、同一の通信セクタ1205cに設定されるが、子局装置203fの他のアンテナ1206aは、別の通信セクタ1205bに設定される。
【0068】
第5の条件によれば、上記のように、複数の子局装置203の各々が複数のアンテナを有する構成において、子局装置単位ではなく、アンテナ単位でグループ化することができる(ただしMIMOのアンテナは同一の通信セクタに設定する必要がある)。これにより、より柔軟にセクタ割当を実行することができる。
【0069】
(第6の条件)
図13は、第1実施形態においてセクタ割当が実行される際に考慮されうる第6の条件を説明するための図である。第6の条件では、通信方式を考慮する上記の第4の条件と、MIMOのアンテナか否かの情報を考慮する上記の第5の条件と、が同時に考慮される。これにより、第6の条件によれば、上記の第4の条件のメリットと、上記の第5の条件のメリットと、を同時に得ることができる。
【0070】
図13の例では、子局装置が、物理的なIDが「0」であるアンテナXと、物理的なIDが「1」であるアンテナYと、物理的なIDが「2」であるアンテナZと、の合計3個のアンテナを有している。アンテナXおよびYは、LTEに対応しているとともに、MIMOのアンテナとして使用される。また、アンテナZは、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)に対応しており、MIMOのアンテナではない単独のアンテナとして使用される。
【0071】
図13の例において、第6の条件を考慮したセクタ割当が実行されると、同一の通信方式に対応したMIMOのアンテナであるアンテナXおよびYが、同一の通信セクタに設定され、他の単独で使用されるアンテナZが、アンテナXおよびYとは異なる通信セクタに設定される。
【0072】
(セクタ割当を実現するためのハードウェア構成の変形例)
図14は、第1実施形態においてセクタ割当を実現するためのハードウェア構成の変形例を示した例示的な構成図である。前述したように、第1実施形態(
図2参照)では、セクタ割当を実現するためのハードウェア構成として、親局装置201に設けられた可変減衰器210を例示した。しかしながら、
図14に示されるように、変形例として、親局装置201aにマトリクス制御部210aを設けることも考えられる。可変減衰器210(
図2参照)によれば、通信セクタの切り替えを徐々に行うことが可能であるが、マトリクス制御部210aによれば、通信セクタの切り替えを瞬時に行うことが可能である。
【0073】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、セクタ割当を実現するための構成が、親局装置ではなくハブ局装置に設けられる点で、第1実施形態と異なる。
【0074】
図15は、第2実施形態による通信中継システム1500の全体構成を示した例示的なブロック図である。この通信中継システム1500も、第1実施形態による通信中継システム200(
図2参照)と同様に、分散アンテナシステムを構成する。
【0075】
図15に示されるように、通信中継システム1500は、親局装置1501と、ハブ局装置1502と、子局装置1503a〜1503cと、を備える。ハブ局装置1502は、親局装置1501と、子局装置1503a〜1503cとを接続するように設けられている。以下では、子局装置1503a〜1503cを総称して子局装置1503と記載することがある。なお、
図15には、一例として、ハブ局装置1502の個数が1個であり、当該1個のハブ局装置1502に3個の子局装置1503が接続された構成が例示されているが、第2実施形態では、ハブ局装置1502の個数は2個以上であってもよいし、1個のハブ局装置1502に2個以下、または4個以上の子局装置1503が接続されてもよい。
【0076】
ここで、第2実施形態では、ハブ局装置1502に、可変減衰器1510が設けられている。この可変減衰器1510というハードウェア構成により、ハブ局装置1502は、子局装置1503a〜1503c(および
図15に不図示の他のハブ局装置に接続された他の子局装置)を複数のグループに分割し、当該複数のグループにそれぞれ異なる複数の通信セクタを割り当てるセクタ割当を行うことが可能である。
【0077】
図16は、第2実施形態によるハブ局装置1502および子局装置1503の機能的構成を示した例示的なブロック図である。第2実施形態では、ハブ局装置1502がセクタ割当を行う機能を有しているので、以下では、親局装置1501の機能的構成については説明を省略する。
【0078】
図16に示されるように、各子局装置1503は、トラフィック推定部1601を備えている。また、ハブ局装置1502は、トラフィック集約部1611と、トラフィック解析部1612と、セクタ割当判定部1613と、セクタ割当実行部1614と、を備えている。
【0079】
トラフィック推定部1601は、子局装置1503経由で通信を行う無線通信端末T(
図16には不図示)から基地局BS(
図16には不図示)側に送信されるアップリンク信号の有無に基づいて、当該アップリンク信号のトラフィックを推定する。そして、トラフィック集約部1611は、各子局装置1503のトラフィック推定部1601によるトラフィックの推定結果を集約し、トラフィック解析部1612に出力する。なお、トラフィック解析部1612、セクタ割当判定部1613、およびセクタ割当実行部1614は、それぞれ、第1実施形態(
図3参照)によるトラフィック解析部322、セクタ割当判定部323、およびセクタ割当実行部324と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0080】
以上の構成により、第2実施形態では、以下のような動作が実現される。
【0081】
図17は、第2実施形態によるハブ局装置1502および子局装置1503の全体的な動作の流れを示した例示的なシーケンス図である。
【0082】
図17に示されるように、第2実施形態では、まず、S1701〜S1703において、子局装置1503a〜1503cは、自身を介して通信を行う無線通信端末Tから送信される上り信号のトラフィックを推定する。そして、S1704〜S1706において、子局装置1503a〜1503cは、S1701〜S1703における推定結果であるトラフィックを、ハブ局装置1502に送信する。
【0083】
そして、S1707において、ハブ局装置1502のトラフィック集約部1611は、子局装置1503a〜1503cから受信したトラフィックを集約する。そして、S1708において、トラフィック集約部1611は、集約結果をトラフィック解析部1612に出力する。
【0084】
そして、トラフィック解析部1612は、S1709において、トラフィック集約部1611から入力された集約結果(トラフィック)を解析し、S1710において、解析結果をセクタ割当判定部1613に出力する。
【0085】
そして、S1711において、セクタ割当判定部1613は、トラフィック解析部1612の解析結果に基づいて、セクタ割当の要否を判定する。セクタ割当の要否の判定基準については、上記で既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0086】
S1712において、セクタ割当判定部1613は、S1711の判定結果に応じた指示を、セクタ割当実行部1614に出力する。そして、S1713において、セクタ割当実行部1614は、セクタ割当判定部1613からの指示に応じて、セクタ割当を実行する。
【0087】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、S1701〜S1713の動作が、所定の周期で繰り返し実行される。前述したように、所定の周期は、状況に応じて変動しない一定の値として設定されてもよいし、時間単位、週単位、または日単位でのトラフィックなどといった統計的な情報に基づいて変動する値として設定されてもよい。
【0088】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、セクタ割当を実現するためのハードウェア構成として、可変減衰器1510(
図15参照)以外のハードウェアを用いることが可能である。
【0089】
図18は、第2実施形態の変形例によるハブ局装置1502aのハードウェア構成を示した例示的な構成図である。
図18に示されるように、第2実施形態の変形例によるハブ局装置1502aは、マトリクス制御部1510aを備えており、当該マトリクス制御部1510aにより、セクタ割当を実現する。
【0090】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、親局装置と子局装置とがハブ局装置を介さずに直接的に接続される点で、第1実施形態と異なる。
【0091】
図19は、第3実施形態による通信中継システム1900の構成を示した例示的なブロック図である。
図19に示されるように、通信中継システム1900は、親局装置1901と、子局装置1902a〜1902cとが直接的に接続されることにより構成されている。以下では、子局装置1902a〜1902cを総称して子局装置1902と記載することがある。
【0092】
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、親局装置1901が、トラフィックに応じたセクタ割当を実現する機能を有している。すなわち、第3実施形態による子局装置1902は、当該子局装置1902経由で通信を行う無線通信端末T(
図19には不図示)からの上り信号のトラフィックを推定するトラフィック推定部1911を備えている。また、第3実施形態による親局装置1901は、トラフィック推定部1911が推定したトラフィックを集約するトラフィック集約部1921と、トラフィック集約部1921の集約結果を解析するトラフィック解析部1922と、トラフィック解析部1922の解析結果に基づいてセクタ割当の要否を判定するセクタ割当判定部1923と、セクタ割当判定部1923の判定結果に応じてセクタ割当を実行するセクタ割当実行部1924と、を備えている。
【0093】
第3実施形態は、親局装置1901と子局装置1902との間におけるハブ局装置の有無以外の構成は、第1実施形態と同様である。したがって、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、通信セクタ毎のトラフィックに応じてより柔軟にセクタ割当を実行することができる。
【0094】
以上、本発明のいくつかの実施形態および変形例を説明したが、上述した実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した実施形態および変形例は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。