特許第6766865号(P6766865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6766865
(24)【登録日】2020年9月23日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ナール構造付きフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   B29C59/04 C
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-503093(P2018-503093)
(86)(22)【出願日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2017006960
(87)【国際公開番号】WO2017150352
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2019年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-37492(P2016-37492)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-37556(P2016-37556)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖典
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 靖真
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030542(JP,A)
【文献】 特開2014−019077(JP,A)
【文献】 特開2002−001813(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/030684(WO,A1)
【文献】 特開2002−018944(JP,A)
【文献】 特開2013−022905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00−59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ール構造付きフィルムの製造方法であって、
前記ナール構造付きフィルムは、
長尺状のナール構造付きフィルムであって、その幅方向端部に設けられたナール領域を備え、
前記ナール領域は、複数のナール構造単位を有し、
それぞれの前記ナール構造単位は、1つの凹部と、前記凹部の周囲に形成された、畝状に連続した頂部を有し、
前記ナール構造単位は、以下の式(1)を満たす、ナール構造付きフィルムであって、
1.05<AvHmax/AvHmin≦30 (1)
但し式(1)において、
AvHmaxは、複数の前記ナール構造単位のHmaxの平均値であり、Hmaxは、それぞれの前記ナール構造単位の前記頂部の最大高さであり、
AvHminは、複数の前記ナール構造単位のHminの平均値であり、Hminは、それぞれの前記ナール構造単位の前記頂部の最小高さであり、
前記製造方法は、
搬送される長尺のフィルムの一方の面に、回転するバックロールを当接させて前記フィルムを支持し、他方の面に、回転するローレットを圧接させることにより、前記フィルムの幅方向端部にナール構造を形成する賦形工程を含み、
前記ローレットの周速度が、前記バックロールの周速度よりも速い、ナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ローレットの周速度Vr(m/min)、及び前記バックロールの周速度Vb(m/min)が、以下の式(2)を満たす、請求項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
1<Vr/Vb<1.15 式(2)
【請求項3】
前記ローレット周面に加えられる駆動力Fr、及び前記バックロール周面に加えられる駆動力Fbが、Fr≧Fbの関係を満たす、請求項1又は2に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記バックロール周面のヤング率が、前記フィルムのヤング率よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ローレットは、その回転軸が、前記フィルムの幅方向に対して傾斜した方向となるよう配置され、前記傾斜は、前記フィルムの幅方向内側において前記回転軸が前記フィルムに近く、前記フィルムの幅方向外側において前記回転軸が前記フィルムから遠くなる向きの傾斜である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記賦形工程を断続的に行い、前記賦形工程を行わない際に、前記バックロールの支持を維持した状態で、前記ローレットの圧接を解除する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムの搬送速度が、20m/min以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項8】
賦形工程において形成された前記ナール構造の高さを計測する計測工程と、
前記計測工程において計測された前記高さに基づいて、前記賦形工程において形成される前記ナール構造の高さをフィードバック制御するフィードバック工程と
をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記フィルムが、脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記フィルムの厚みが、10μm以上200μm以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記ナール構造単位内における前記頂部の最大高さHmaxを与える頂部Tmaxの位置の分布が、前記ナール構造付きフィルムの長手方向において偏在する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記ナール構造単位内における前記頂部の最大高さHmaxを与える頂部Tmaxの位置の分布が、前記ナール構造付きフィルムの幅方向において偏在する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナール構造付きフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学フィルムなどのフィルムを製造する場合、ある程度の量をまとめて長尺状に製造し、このフィルムを巻回してフィルムロールとして保存することが行われている。
【0003】
フィルムの製造において、種々の目的で、フィルムの面の一部の領域に凹凸構造を付与することが知られている。例えば、長尺のフィルムを巻回する際のフィルムの取り扱い性の向上のため、フィルムの端部に凹凸構造を付与することが知られている。このような凹凸構造は、ナール構造とも呼ばれることがあり、このようなナール構造を賦与する処理は、ナーリング処理等の名称で呼ばれる。ナーリング処理の具体的な操作の例としては、フィルムにナール構造を有する型を当接する方法、及びフィルムにレーザー光を照射する方法といった各種の方法が知られている(例えば特許文献1及び2)。フィルムを巻回してフィルムロールとするのに先立ち、フィルムの表面にかかるナール構造を設けてナール構造付きフィルムとすることにより、フィルムロール中のフィルム間の摩擦による傷の発生、フィルムのブロッキング(フィルムロールにおいて、重なったフィルムの面が付着する現象)等の不所望な現象が低減され、フィルムの取り扱い性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−001813号公報
【特許文献2】特開2002−018944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルムを巻回してフィルムロールとした後、これを長期間保存すると、ナール構造の高さが変化する現象が見られる場合がある。具体的には、ナール構造を賦与した後、ナール構造の高さが経時的に低下する場合がある。このような現象はナール戻りとも呼ばれる。ナール戻りが発生すると、ナール構造の効果が損なわれ、ブロッキング等の不所望な現象が発生する場合がある。したがって、このようなナール戻りを低減する技術が求められている。
【0006】
本発明の目的は、ナール戻りの少ないナール構造を有するナール構造付きフィルム、及びナール戻りの少ないナール構造の賦与を行いうる、ナール構造付きフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述した課題を解決するべく検討した結果、ナール構造を構成するナール構造単位として、特定の形状を有するものを形成することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
本発明者はまた、ナール構造の賦与を、バックロールとローレットとを組み合わせて用いた工程により行い、且つ当該工程における条件を特定のものとすることにより、上記製造を容易に行いうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき完成された。
すなわち、本発明によれば、下記〔A1〕〜〔A3〕及び〔B1〕〜〔B10〕が提供される。〔B1〕〜〔B10〕の製造方法は、〔A1〕〜〔A3〕のナール構造付きフィルムの製造に用いうる。
【0008】
〔A1〕 長尺状のナール構造付きフィルムであって、
前記ナール構造付きフィルムは、その幅方向端部に設けられたナール領域を備え、
前記ナール領域は、複数のナール構造単位を有し、
それぞれの前記ナール構造単位は、1つの凹部と、前記凹部の周囲に形成された、畝状に連続した頂部を有し、
前記ナール構造単位は、以下の式(1)を満たす、ナール構造付きフィルム:
1.05<AvHmax/AvHmin≦30 (1)
但し式(1)において、
AvHmaxは、複数の前記ナール構造単位のHmaxの平均値であり、Hmaxは、それぞれの前記ナール構造単位の前記頂部の最大高さであり、
AvHminは、複数の前記ナール構造単位のHminの平均値であり、Hminは、それぞれの前記ナール構造単位の前記頂部の最小高さである。
〔A2〕 前記ナール構造単位内における前記頂部の最大高さHmaxを与える頂部Tmaxの位置の分布が、前記ナール構造付きフィルムの長手方向において偏在する、〔A1〕に記載のナール構造付きフィルム。
〔A3〕 前記ナール構造単位内における前記頂部の最大高さHmaxを与える頂部Tmaxの位置の分布が、前記ナール構造付きフィルムの幅方向において偏在する、〔A1〕又は〔A2〕に記載のナール構造付きフィルム。
〔B1〕 搬送される長尺のフィルムの一方の面に、回転するバックロールを当接させて前記フィルムを支持し、他方の面に、回転するローレットを圧接させることにより、前記フィルムの幅方向端部にナール構造を形成する賦形工程を含み、
前記ローレットの周速度が、前記バックロールの周速度よりも速い、ナール構造付きフィルムの製造方法。
〔B2〕 前記ローレットの周速度Vr(m/min)、及び前記バックロールの周速度Vb(m/min)が、以下の式(2)を満たす、〔B1〕に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
1<Vr/Vb<1.15 式(2)
〔B3〕 前記ローレット周面に加えられる駆動力Fr、及び前記バックロール周面に加えられる駆動力Fbが、Fr≧Fbの関係を満たす、〔B1〕又は〔B2〕に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
〔B4〕 前記バックロール周面のヤング率が、前記フィルムのヤング率よりも大きい、〔B1〕〜〔B3〕のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
〔B5〕 前記ローレットは、その回転軸が、前記フィルムの幅方向に対して傾斜した方向となるよう配置され、前記傾斜は、前記フィルムの幅方向内側において前記回転軸が前記フィルムに近く、前記フィルムの幅方向外側において前記回転軸が前記フィルムから遠くなる向きの傾斜である、〔B1〕〜〔B4〕のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
〔B6〕 前記賦形工程を断続的に行い、前記賦形工程を行わない際に、前記バックロールの支持を維持した状態で、前記ローレットの圧接を解除する、〔B1〕〜〔B5〕のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
〔B7〕 前記フィルムの搬送速度が、20m/min以上である、〔B1〕〜〔B6〕のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
〔B8〕 賦形工程において形成された前記ナール構造の高さを計測する計測工程と、
前記計測工程において計測された前記高さに基づいて、前記賦形工程において形成される前記ナール構造の高さをフィードバック制御するフィードバック工程と
をさらに含む、〔B1〕〜〔B7〕のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
〔B9〕 前記フィルムが、脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムである、〔B1〕〜〔B8〕のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
〔B10〕 前記フィルムの厚みが、10μm以上200μm以下である、〔B1〕〜〔B9〕のいずれか1項に記載のナール構造付きフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のナール構造付きフィルムは、ナール戻りの少ないものとしうる。本発明の製造方法によれば、ナール戻りの少ないナール構造を有する、ナール構造付きフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のナール構造付きフィルムの製造のための賦形工程及びそれにより製造される本発明のナール構造付きフィルムの一例を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すナール構造付きフィルム100の、点線Fで示す領域内を拡大して概略的に示す上面図である。
図3図3は、図1に示す賦形装置の、バックロール110、フィルム及びローレット120の関係を拡大して概略的に示す縦断面図である。
図4図4は、図2に示すナール構造付きフィルム100の、点線Gで示す領域内を拡大して概略的に示す上面図である。
図5図5は、図4に示すナール構造単位の、頂部300Tのうちのある点における断面図である。
図6図6は、図4に示すナール構造単位の、頂部300Tのうちの別のある点における断面図である。
図7図7は、ローレットの回転軸の傾斜の態様の一例を概略的に示す立面図である。
図8図8は、ローレットの回転軸の傾斜の態様の別の一例を概略的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
【0012】
本願において、本発明の方法を実施するための部材の構成要素の方向が「平行」とは、本発明の効果を著しく損なわない範囲内(例えば±5°)での誤差を含んでいてもよい。また、「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
【0013】
〔1.概要:ナール領域〕
本発明のナール構造付きフィルムは、長尺状のナール構造付きフィルムであって、ナール構造付きフィルムは、その幅方向端部に設けられたナール領域を備える。
本発明のナール構造付きフィルムを製造する方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法の例として、バックロールとローレットを用いた賦形工程を含む特定の製造方法が挙げられる。以下において、当該製造方法を、本発明の製造方法として説明する。かかる賦形工程においては、搬送される長尺のフィルムの一方の面に、回転するバックロールを当接させてフィルムを支持し、他方の面に、回転するローレットを圧接させる。これにより、フィルムの幅方向端部にナール構造を形成する。このような製造方法を採用した場合、ナール構造付きフィルムの製造速度を高めることができ、且つ、得られるナール構造付きフィルムにおけるナール構造の高さのバラツキを低減することができる。以下においては主に、この賦形工程を含む製造方法により製造されるナール構造付きフィルムを、本発明のナール構造付きフィルムの好ましい例として参照して説明する。
以下の説明においては、本発明のナール構造付きフィルムの製造のための材料であって、ナール構造が形成される前の状態のフィルムを、区別のため「処理前フィルム」ということがある。また、処理前フィルムと、ナール構造付きフィルムとを総称して単に「フィルム」と呼ぶ場合がある。
【0014】
図1は、本発明のナール構造付きフィルムの製造のための賦形工程及びそれにより製造される本発明のナール構造付きフィルムの一例を概略的に示す斜視図である。図1において、賦形装置1は、バックロール110及び一対のローレット120を備える。この例ではフィルムの搬送経路の上側にローレットを配置し、下側にバックロールを配置しているが、賦形工程はこれに限られず、例えば下側にローレットを配置し、上側にバックロールを配置することも可能である。
【0015】
バックロール110は、円筒形の周面を有し、かかる周面は、ローレット120が圧接される部分において平滑な表面である。ローレット120が圧接される部分以外の周面は、平滑であっても平滑で無くてもよい。バックロール110は、任意の支持装置(不図示)により、その軸110Cを中心に回転可能に支持される。バックロール110はさらに、任意の駆動装置により、矢印R1方向に駆動可能に設けられる。駆動装置は、軸110Cを介して駆動力を与える装置としうる。但し、本発明において、バックロールはそのように駆動されるものには限られない。例えば、バックロール110は、駆動装置を伴わず、単に回転可能に支持され、フィルムに追従して回転しうるものであってもよい。
【0016】
ローレットとは、その周面に凹凸構造を有するロールである。図1の例では、ローレット120は、任意の支持装置(不図示)により、その軸120Cを中心に回転可能であり、且つバックロール110に向かって付勢されうるよう支持される。これにより、ローレット120を、バックロール110に向かって圧接することができる。ローレット120はさらに、任意の駆動装置により、矢印R2方向に駆動可能に設けられる。ローレット120の軸120Cは、バックロール110の軸110Cと平行か、平行に近い角度関係に配置される。ローレット120を設ける位置は、フィルムの搬送経路におけるフィルム幅方向端部においてローレット120の周面がフィルムと当接するよう調節される。
【0017】
賦形装置1はさらに、任意に、フィルムを搬送するための構成要素(不図示)、及びフィードバック工程等の任意の工程を行うための構成要素(不図示)を備えうる。
【0018】
賦形工程にあたり、賦形装置1に導入された長尺状の処理前フィルム10は、矢印A1方向に搬送され、バックロール110と、ローレット120との間に導かれ、これらの間に挟まれる。この例においては、フィルムの搬送方向は水平方向である。但し賦形工程はこれに限られず、フィルムの搬送方向は任意の方向としうる。この例においては、バックロール110は矢印R1方向に回転するよう駆動され、ローレット120は矢印R2方向に回転するよう駆動される。さらに、ローレット120は、バックロール110に向かって圧接される。これにより、搬送される処理前フィルム10の下側の面に回転するバックロール110を当接させて処理前フィルム10を支持し、且つ処理前フィルム10の上側の面に、回転するローレットを圧接させることができる。
【0019】
賦形工程においてこのような操作を行うことにより、処理前フィルムの幅方向端部に、ナール構造を形成することができる。図1の例では、バックロール110とローレット120との間を通過した処理前フィルム10には、ローレット120の周面の凹凸構造が転写されることにより、処理前フィルム10の上側の面の幅方向両端部に、多数のナール構造単位が形成された、帯状のナール領域101が形成され、それにより、ナール構造付きフィルム100が製造される。本願において、フィルムの幅方向端部とは、フィルムの縁100Eに接して設けられた領域であってもよいが、図1の例における領域101のように、フィルムの幅方向の縁100Eより内側に、縁100Eから離隔して設定された、縁100Eの近傍の領域であってもよい。
【0020】
〔2.ナール構造単位〕
本発明のナール構造付きフィルムにおいて、ナール領域は、複数のナール構造単位を有し、それぞれのナール構造単位は、1つの凹部と、前記凹部の周囲に形成された、畝状に連続した頂部を有する。かかる特徴について、上に説明した例をより具体的に参照してさらに説明する。
【0021】
図2は、図1に示す賦形工程により得られたナール構造付きフィルム100の、点線Fで示す領域内を拡大して概略的に示す上面図である。また、図3は、図1に示す賦形装置の、バックロール110、フィルム及びローレット120の関係を拡大して概略的に示す縦断面図である。
【0022】
図2に示す通り、ナール領域101内には、ローレット120の周面の凹凸構造が転写されることにより形成された、複数のナール構造単位が形成されている。図2では、ナール構造単位の配置は、その頂部300Tの位置を示すことにより図示している。図3に示す通り、ナール構造単位300は、ローレット120の周面上の突起121が、処理前フィルム10に圧接され、その結果、突起121の先端の形状が転写されることにより形成されたものである。ナール構造単位300は、突起121の形状に対応した凹部300Bと、その周囲に形成された頂部300Tとを含む。頂部300Tを含む凸状の構造は、突起121が処理前フィルム10に圧接され、フィルムを構成する樹脂等の材料が凹部300Bの周囲に駆出されることにより形成される、畝状の構造である。そのため、頂部300Tは通常、凹部300Bの全周を取り囲む閉曲線の形状に延長する。
【0023】
この例では、突起121としてひし形の頂面を有するものを用いたため、図2に示す通り、ナール構造単位のそれぞれの頂部300Tはひし形の形状に延長する形状を有する。この例ではまた、水平に搬送されるナール構造付きフィルム100のナール構造単位300の凹部300Bは、ナール構造単位300を有しない領域のフィルム上側の面100Uより低い水準となり、一方頂部300Tは、フィルム上面100Uより高い水準となっている。一方ナール構造付きフィルム100の下側の面100Dは、実質的な凹凸構造が形成されず略平坦な状態となっている。したがって、ナール構造付きフィルム100の厚さは、凹部300Bが形成された領域ではナール構造単位300を有しない領域よりも薄く、頂部300T付近の領域ではナール構造単位300を有しない領域よりも厚くなっている。
【0024】
〔3.ナール構造単位の高さ〕
本発明のナール構造付きフィルムにおいては、それぞれのナール構造単位における頂部の最大高さHmaxの平均値AvHmax、及びそれぞれのナール構造単位における頂部の最小高さHminの平均値AvHminが、以下の式(1)を満たす。
1.05<AvHmax/AvHmin≦30 (1)
かかる特徴について、上に説明した例をより具体的に参照してさらに説明する。
【0025】
図4は、図2に示すナール構造付きフィルム100の、点線Gで示す領域内を拡大して概略的に示す上面図である。図4においては、一つのナール構造単位の頂部300Tが拡大して示される。図5及び図6はそれぞれ、図4に示すナール構造単位の頂部300Tのうちのある点における断面図である。詳細には、図5は、ひし形に延長する頂部300Tのうちのある点300T1を含む線C1−D1を通り、ナール構造付きフィルム100に垂直な面で、当該頂部近傍を切断した断面図であり、図6は、頂部300Tのうちの別のある点300T2を含む線C2−D2を通り、ナール構造付きフィルム100に垂直な面で、当該頂部近傍を切断した断面図である。ナール構造単位の頂部の高さは、頂部と、ナール構造単位を有しない領域のフィルム表面との水準の差で示される。例えば、図5においては、頂部の高さH1は、頂部300T1と、ナール構造単位300を有しない領域のフィルム上側の面100Uとの水準の差であり、図6においては、頂部の高さH2は、頂部300T2と、ナール構造単位300を有しない領域のフィルム上側の面100Uとの水準の差である。
【0026】
製造の条件を調整することにより、それぞれのナール構造単位における畝状に連続する頂部300Tの高さは一様でない高さとしうる。そのようなナール構造単位を、顕微鏡(例えばキーエンス社製超深度顕微鏡VK−9500)を用いて観察することにより、それぞれのナール構造単位における頂部の最も高い位置Tmaxにおける高さHmax、及び頂部の最も低い位置Tminにおける高さHminを測定しうる。そして、所定以上の数(例えば10個以上)のナール構造単位においてHmax及びHminを求めることにより、それぞれの平均値AvHmax及びAvHminを求めうる。本発明のナール構造付きフィルムは、かかるAvHmax及びAvHminが前記式(1)を満たす。測定個数の上限は、特に限定されないが、例えば100個以下としうる。測定個数の上限は、以下の他の測定においても同じとしうる。
【0027】
本発明のナール構造付きフィルムにおいては、AvHmax/AvHminの値は、1.05超であり、好ましくは1.10以上であり、より好ましくは1.50以上である。一方、AvHmax/AvHminの値は、30以下であり、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下である。本発明者が見出したところによれば、AvHmax/AvHminの値がかかる範囲内であることにより、ナール構造のナール戻りを低減することができる。
【0028】
AvHmax及びAvHminのそれぞれの値は特に限定されず、所望の効果が得られる適切な値としうる。例えば、AvHmaxは好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一方好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。AvHminは好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、一方好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0029】
本発明のナール構造付きフィルムにおけるナール構造単位において、頂部の高さの偏りがどのような態様であるかについては、特に限定は無く種々の態様としうる。例えば、最大高さHmaxを与える頂部Tmaxの位置の分布は、ナール構造付きフィルムの長手方向において偏在する分布としうる。より具体的には、頂部の高さの偏りは、ナール構造付きフィルムの長手方向において偏在する偏りとしうる。通常は、Vr>Vbであることにより生じる偏りは、ナール構造単位の上流側より下流側のほうが高くなる偏りとなり得る。長手方向におけるTmaxの位置の分布の偏在の有無は、所定以上の数(例えば10個以上)のナール構造単位のそれぞれにおいて、ナール構造付きフィルムの幅方向に平行であり、且つナール構造単位の頂部を等しい長さに2分する線を境界として、頂部を上流側及び下流側に分割すると、その下流側及び上流側のどちらに頂部の最も高い位置Tmaxが存在するかを判定し、さらに、所定割合(例えば70%)以上のナール構造単位において、Tmaxが下流側及び上流側のどちらかに偏在している場合は、頂部の高さの偏りがあると判定しうる。具体的には、図4に示すナール構造単位300においては、ナール構造付きフィルム100の幅方向に平行であり、且つナール構造単位の頂部300Tを等しい長さに2分する線D−TDを境界として、頂部300Tを上流側及び下流側に分割すると、その上流側(図4の図面中では左側)及び下流側(図4の図面中では右側)のいずれか一方に、Tmaxの位置が偏在しうる。より具体的には、Vr>Vbである場合、上流側より下流側に、頂部の高い部分が偏在しうる。
【0030】
Tmaxの位置の分布が、ナール構造付きフィルムの長手方向において偏在する場合は、フィルムに無理な変形を与えずに円滑なナール構造付きフィルムの製造を行うことができるため好ましい。特にTmaxの位置が下流側に偏在することが、ナール構造付きフィルムの製造をさらに円滑に行うことができるため好ましい。
【0031】
また例えば、最大高さHmaxを与える頂部Tmaxの位置の分布は、ナール構造付きフィルムの幅方向において偏在する分布としうる。即ち、ナール構造単位の内側及び外側の一方より他方において高くなるような、頂部の高さの偏りを設けうる。ここで内側とは、フィルム幅方向の中心に近い側であり、外側とは、フィルム幅方向の中心から遠い側である。幅方向におけるTmaxの位置の分布の偏在の有無は、所定以上の数(例えば10個以上)のナール構造単位のそれぞれにおいて、ナール構造付きフィルムの長手方向に平行であり、且つナール構造単位の頂部を等しい長さに2分する線を境界として、頂部を内側及び外側に分割すると、その内側及び外側のどちらに頂部の最も高い位置Tmaxが存在するかを判定し、さらに、所定割合(例えば70%)以上のナール構造単位において、Tmaxが内側及び外側のどちらかに偏在している場合は、頂部の高さの偏りがあると判定しうる。具体的には、図4に示すナール構造単位300においては、ナール構造付きフィルム100の長手方向に平行であり、且つナール構造単位の頂部300Tを等しい長さに2分する線D−MDを境界として、頂部300Tを内側(図4の図面中では上側)及び外側(図4の図面中では下側)に分割すると、その一方より他方に、Tmaxの位置が偏在しうる。ナール構造付きフィルムの幅方向における頂部高さの偏在は、ローレットの回転軸の方向が、フィルムの幅方向に対して傾斜した方向となるよう、ローレットを配置することにより設けうる。
【0032】
Tmaxの位置の分布が、ナール構造付きフィルムの幅方向において偏在する場合は、フィルムを安定して搬送した状態で円滑なナール構造付きフィルムの製造を行うことができるため好ましい。特にTmaxの位置が内側に偏在することが、ナール構造付きフィルムの製造をさらに円滑に行うことができるため好ましい。
【0033】
個々のナール構造単位の大きさは、特に限定されず所望の大きさとしうる。具体的にはフィルム長手方向長さ及び幅方向長さの平均として、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上であり、一方好ましくは20000μm以下、より好ましくは10000μm以下である。
【0034】
〔4.バックロール及びローレットを用いた賦形工程の条件〕
上に例示した賦形装置1のような、バックロール及びローレットを備える賦形装置を用いて賦形工程を実施し、本発明のナール構造付きフィルムを製造する場合の、調節しうる製造条件としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0035】
〔4.1.周速度比〕
本発明の製造方法では、バックロール及びローレットを用いた賦形工程においては、ローレットの周速度Vrが、バックロールの周速度Vbよりも速くなるよう(即ちVr>Vbとなるよう)、これらの速度を調整することが好ましい。Vr及びVbは、より好ましくは以下の式(2)を満たす。
1<Vr/Vb<1.15 式(2)
【0036】
従来技術においてこのようにローレット及びバックロールを用いた賦形工程を行う場合、Vr及びVbは、なるべく等しくなるよう調整される。しかしながら、本発明者が見出したところによれば、VrとVbとに差を設けることにより、ナール戻りの少ないナール構造の賦与を行いうる。特定の理論に拘束されるものでは無いが、このような効果は、そのような速度差を設けることにより、それぞれのナール構造単位内における頂部の高さに偏りが生じることに起因すると考えられる。即ち、そのような偏りを有するナール構造は、ナール構造付きフィルムをフィルムロールとした際に、ナール戻りが少ない巻回を達成しうるものと考えられる。そのような賦形工程を行うことにより、Tmaxの位置がナール構造単位の上流側より下流側に偏在する偏りを形成し、前記式(1)等の要件を満たすナール構造付きフィルムを製造することができる。また、VrをVbより大きくすることにより、偏りを十分に得ることができ且つ円滑な搬送及び賦形を達成することができる。また、Vr/Vbを1.15未満とすることにより、高い成形の精度を維持しうる。前記Vr/Vbは、好ましくは1.01<Vr/Vb<1.12、より好ましくは1.02<Vr/Vb<1.10としうる。
【0037】
〔4.2.ローレットの回転軸の傾斜〕
バックロール及びローレットを用いた賦形工程においては、ローレットの回転軸の傾斜を調節しうる。かかる傾斜の調節は、ローレットの回転軸の方向が、フィルムの幅方向に対して傾斜した方向となるよう行いうる。かかる調節を行うことにより、Tmaxの位置がナール構造単位の内側又は外側に偏在する偏りを形成し、前記式(1)等の要件を満たすナール構造付きフィルムを製造することができる。
【0038】
図7は、ローレットの回転軸の傾斜の態様の一例を概略的に示す立面図である。図7においては、バックロール110、ナール構造付きフィルム100及びローレット120を、フィルム搬送方向から観察した状態を示している。図7において、一対のローレット120の回転軸120Cは、フィルム幅方向と平行な方向(点線HZで示される方向)に対して、角度θ12を成して、垂直方向(フィルム面に対して垂直な方向)に傾斜している。ローレットの回転軸がフィルムの幅方向に対して傾斜した方向となるよう配置される場合、傾斜は、図7の例のように、フィルムの幅方向内側において回転軸がフィルムに近く、フィルムの幅方向外側において回転軸がフィルムから遠くなる向きの傾斜であることが好ましい。このような向きの傾斜とすることにより、ナール構造単位頂部の高さの偏りを設けることができるのに加えて、フィルムの搬送を安定化させ、円滑な賦形工程を行うことができる。このような角度θ12を設ける場合、好ましいθ12の範囲は、0〜5°であり、より好ましくは0〜3°である。
図7で示した回転軸120Cの傾斜は、垂直方向へ回転軸が傾いた傾斜であるが、これに代えて又はこれに加えて、水平方向(フィルム面に対して水平な方向)へ回転軸が傾いた傾斜を設けてもよい。図8は、ローレットの回転軸の傾斜の態様の別の一例を概略的に示す上面図である。図8において、一対のローレット120の回転軸120Cは、フィルム幅方向と平行な方向(点線HZで示される方向)に対して、角度θ13を成して、水平方向に傾斜している。ローレットの回転軸がフィルムの幅方向に対して傾斜した方向となるよう配置される場合、傾斜は、図8の例のように、フィルムの幅方向外側において回転軸が上流に近く、フィルムの幅方向内側において回転軸が上流から遠くなる向きの傾斜であることが好ましい。このような向きの傾斜とすることにより、ナール構造単位頂部の高さの偏りを設けることができるのに加えて、フィルムの搬送を安定化させ、円滑な賦形工程を行うことができる。このような角度θ13を設ける場合、好ましいθ13の範囲は、0〜5°であり、より好ましくは0〜3°である。
【0039】
〔4.3.その他の条件〕
搬送工程におけるフィルムの搬送速度Vtは、好ましくは20m/min以上、より好ましくは50m/min以上である。搬送速度の上限は特に限定されないが、例えば200m/min以下としうる。搬送速度を前記下限以上とすることにより、ナール戻りの少ないナール構造を容易に形成することができる。
【0040】
搬送工程におけるフィルムの搬送速度Vtは、バックロールの周速度Vbと等しいか、差があっても少ないことが、円滑な搬送及び高い成形の精度を維持する上で好ましい。具体的には、0.95<Vt/Vb<1.05であることが好ましい。速度比Vt/Vbは、より好ましくは0.99<Vt/Vb<1.01である。
【0041】
搬送工程において用いるバックロールは、その周面のヤング率が、フィルムのヤング率よりも大きいものであることが好ましい。より好ましくは、バックロール周面のヤング率は、フィルムのヤング率の1.5倍以上である。さらにより好ましくは、バックロール周面のヤング率は、フィルムのヤング率の1.5〜10倍である。このようなヤング率のバックロールを採用することにより、図2の例に示すような、バックロール側の面が略平坦でローレット側にナール構造を有するナール構造付きフィルム100を、フィルムの折れ曲がり等を伴わずに、円滑に製造することができる。前記ヤング率は、ASTM D638に準拠し、市販の微小硬度計、例えば、フィッシャー社製、微小硬度計 PICODENTOR HM500により測定することができる。
【0042】
図1及び図3に示す例においては、バックロールは駆動装置から駆動力を付与してもしなくてもよい。バックロール及びローレットを、それらの周面がフィルムの搬送方向に沿った方向に回転するよう駆動する場合、ローレット周面に加えられる駆動力Fr、及びバックロール周面に加えられる駆動力Fbが、Fr≧Fbの関係を満たすことが好ましい。Fr及びFbは、より好ましくは1<Fr/Fb<2の関係を有するものとしうる。このような駆動力比を有することにより、ローレットの突起がフィルム材料を周囲に駆出する効果が高くなり、賦形工程を円滑に行うことができる。駆動力Frは、ローレットの駆動トルクTr及びローレットの半径Rrから式Fr=Tr/Rrにより求めうる。また駆動力Fbは、バックロールの駆動トルクTb及びバックロールの半径Rbから式Fb=Tb/Rbにより求めうる。したがって、例えばローレットとバックロールの径が同じであれば、トルク比Tr/Tbの値と、駆動力比Fr/Fbの値とは等しくなる。
【0043】
賦形工程を実施する温度は、特に限定されず、例えば室温環境下としうる。但し、ローレットを、適切な加熱装置により加熱して、ナール構造形成に適した一定の温度として、処理前フィルムに接触させることが好ましい。好ましいローレットの温度は、フィルムのガラス転移温度Tgと相対的に、好ましい温度に設定しうる。具体的には、好ましくは(Tg+10)℃以上、より好ましくは(Tg+20)℃以上であり、一方好ましくは(Tg+200)℃以下、より好ましくは(Tg+150)℃以下である。このような温度範囲で賦形工程を実施することにより、ナール構造における残留応力を低減し、ナール戻りをさらに良好に低減しうる。
【0044】
本発明のナール構造付きフィルムは、その全長にわたってナール構造付きフィルム領域を備えていてもよいが、ナール領域が断続的に設けられ、長手方向の一部においてナール領域を有していなくてもよい。本発明のナール構造付きフィルムの製造方法では、長尺の処理前フィルムの全長にわたって賦形工程を行う連続的な処理を行ってもよいが、賦形工程はそのような連続的な処理に限られず、一部にわたって賦形工程を行わない断続的な処理であってもよい。そのような断続的な処理を行う場合において、賦形工程を行わない時の操作としては、バックロールの支持を維持した状態で、ローレットをフィルムから離隔させ、圧接を解除することが好ましい。このような方法を採用することにより、フィルム搬送の乱れを抑制し、精密な搬送及びナール構造形成を行うことができる。
【0045】
〔5.その他の賦形工程〕
本発明のナール構造付きフィルムを製造するための賦形工程は、上に例示した賦形装置1のような、バックロール及びローレットを備える賦形装置を用いたものに限られず、本発明の要件を満たすナール構造を形成しうる任意の態様の工程としうる。例えば、処理前フィルムにレーザー光を照射してその幅方向端部を加工し、レーザー光の強度、照射角度及び走査の図形を適宜調整することにより、本発明の要件を満たすナール構造を形成してもよい。
【0046】
〔6.その他の工程〕
本発明のナール構造付きフィルムの製造にあたっては、上に述べた賦形工程に加えて、任意の工程を行いうる。例えば、賦形工程において形成されたナール構造の高さを計測する計測工程と、計測工程において計測された高さに基づいて、賦形工程において形成されるナール構造の高さをフィードバック制御するフィードバック工程とをさらに含む方法としうる。このような計測工程及びフィードバック工程を行うことにより、ナール構造の高さを均一なものとし、ナール戻りをさらに低減することができる。
【0047】
計測工程における計測の具体的な方法は、特に限定されず、搬送されるナール構造付きフィルム状の多数のナール構造単位の高さを連続的に測定しうる既知の方法を適宜選択し採用しうる。そのような測定を行うための測定器としては、測定対象にレーザーを照射し反射光を受光し解析することにより、観察される測定対象の外形の寸法の測定を行う既知の装置を適宜選択しうる。具体的には、例えば、株式会社キーエンス製、商品名「LKシリーズ」等のCCDレーザー変位計を用いうる。また、ナール構造の高さの制御は、賦形工程の条件を適宜変更することにより行いうる。例えば、賦形工程がバックロール及びローレットを用いた工程である場合、ローレットの圧接の圧力、ローレットとバックロールの周速度比、ローレットの軸の傾斜の角度、ローレットのトルク、バックロールのトルク、ローレットの温度等の条件のうちの1以上を適宜変更することにより行いうる。
【0048】
〔7.変形例〕
本発明のナール構造付きフィルム及びその製造方法は、上に具体的に述べた例に限られず、これに様々な変更を施したものとしうる。
例えば、上に述べた例では水平に搬送するフィルムの上側にローレットを配置し、下側にバックロールを配置したが、本発明はこれに限られず、例えば下側にローレットを配置し、上側にバックロールを配置することも可能である。また、上に述べた例ではフィルムを水平に搬送したが、本発明はこれに限られず、フィルムの搬送方向は任意の方向としうる。また例えば、上に述べた例のように、ナール構造は通常ナール構造付きフィルムの幅方向両端部に設けられるが、本発明はこれに限られず、例えばナール構造はフィルム幅方向の片方の端部のみに設けてもよい。また、ナール構造をフィルム幅方向の一方又は両方の端部に設けるのに加えて、フィルム幅方向の中央部といった、それ以外の領域に併せて設けてもよい。
【0049】
〔8.処理前フィルムの形状〕
本発明のナール構造付きフィルムの製造に供する処理前フィルムの寸法は、特に限定されず、ナール構造付きフィルムにおいて所望される任意の寸法としうる。処理前フィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、一方好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。このような厚み範囲のフィルムは、特に変形し易くナール戻りが生じ易いため、本発明のナール構造付きフィルムの形状を備えることによりその効果を有利に得ることができる。
【0050】
〔9.処理前フィルムの材料〕
本発明のナール構造付きフィルムの製造に供する処理前フィルムの材料は、特に限定されず、各種のフィルムを用いうる。フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。
【0051】
ナール構造付きフィルムを光学フィルムとして使用する場合には、処理前フィルムは、光学部材としての機能を発揮する観点から、通常は高い透明性を有していることが好ましい。具体的には、処理前フィルムの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−2000」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値である。
【0052】
また、ナール構造付きフィルムを光学フィルムとして使用する場合には、処理前フィルムは、通常、ヘイズが小さいことが好ましい。具体的には、処理前フィルムのヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。ヘイズを低い値とすることにより、ナール構造付きフィルムから切り出したフィルム片を例えば表示装置に組み込んだ場合に、その表示装置の表示画像の鮮明性を高めることができる。ここで、ヘイズは、日本電色工業社製の濁度計「NDH2000」を用いて測定できる。
【0053】
処理前フィルムは通常、各種の重合体を含む樹脂のフィルムである。かかる重合体としては、炭化水素重合体、(メタ)アクリル重合体およびポリエステル等が挙げられる。
【0054】
処理前フィルムは、炭化水素重合体を含むことが好ましい。「炭化水素重合体を含む」フィルムには、炭化水素重合体を含む樹脂の層を1層以上備えるフィルム、及び炭化水素重合体を含む樹脂の層の1層以上と、その他の任意の層を1層以上とを備えるフィルムの両方が含まれる。
【0055】
炭化水素重合体とは、重合体の繰り返し単位の少なくとも一部が、炭化水素基である重合体をいう。炭化水素重合体中の、繰り返し単位である炭化水素基の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうるが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0056】
炭化水素重合体としては、脂環式構造含有重合体が好ましい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムは、光学フィルムとして良好な特性を有する一方、ナール構造を賦与してフィルムロールとした場合のナール戻りが発生し易いため、本発明のナール構造付きフィルムの形状を備えることによりその効果を有利に得ることができる。
【0057】
脂環式構造含有重合体とは、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖に脂環式構造を有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を有する重合体のいずれであってもよい。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0058】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0059】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性が高度にバランスされ、好適である。
【0060】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうるが、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、フィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
【0061】
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0062】
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の任意の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の任意の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物;等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
【0063】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0065】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な任意の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0066】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な任意の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
【0067】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0068】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な任意の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより得ることができる。
【0069】
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
【0070】
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系モノマーの付加重合体を環化反応して得られる重合体;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体;およびこれらの水素化物;などを挙げることができる。
【0071】
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香環部分を水素化してなる水素化物;ビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体、またはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な任意のモノマーとのランダム共重合体若しくはブロック共重合体等の共重合体の、芳香環の水素化物;等を挙げることができる。前記のブロック共重合体としては、例えば、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体またはそれ以上のマルチブロック共重合体、並びに傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
【0072】
炭化水素重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。
【0073】
炭化水素重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は通常1.2以上、好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.8以上であり、通常3.5以下、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.7以下である。ナール構造付きフィルムを光学フィルムとして使用する場合、炭化水素重合体の分子量分布が3.5を超えると低分子成分が増すため緩和時間の短い成分が増加し、一見同じ面内レターデーションReを有するフィルムであっても高温暴露時の緩和が短時間で大きくなることが推定され、フィルムの安定性が低下するおそれがある。一方、分子量分布が1.2を下回るようなものは炭化水素重合体の生産性の低下とコスト増につながりうる。
【0074】
炭化水素重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択しうるが、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。ガラス転移温度が80℃を下回ると高温下における耐久性が悪化する可能性があり、200℃を上回るものは耐久性は向上するが通常の延伸加工が困難となる可能性がある。
【0075】
フィルムを構成する樹脂の層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、脂環式構造含有重合体等の重合体に加えて、それ以外の任意成分を含んでいてもよい。任意成分の例を挙げると、顔料、染料等の着色剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;酸化防止剤;滑剤;などの添加剤が挙げられる。なお、任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、フィルムを構成する樹脂の層は、脂環式構造含有重合体等の重合体を、一般的には約50%〜100%、または約70%〜100%含むことが好ましい。
【0076】
本発明のナール構造付きフィルムの製造に用いる処理前フィルムは、樹脂を公知のフィルム成形法で成形することによって得られる。フィルム成形法としては、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。得られた樹脂の層は、そのまま本発明のナール構造付きフィルムの製造に供するフィルムとして用いることができる。または、得られた樹脂の層の表面上に、任意に易滑層、帯電防止層等の任意の層を形成し、これを製造に用いるフィルムとすることもできる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施し得る。以下の操作は、別途記載のない限り、常温常圧大気中にて行った。
【0078】
〔実施例A1〕
(A1−1.処理前フィルムの調製)
脂環式構造含有重合体樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1430」;ガラス転移温度135℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥させた。乾燥させたペレットを、65mm径のスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機に供給した。この成形機を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイの幅1500mmの成形条件で、厚さ50μm、幅1200mm、長さ4000mの処理前フィルムを製造した。このフィルムのヤング率は2.2GPaであった。
【0079】
(A1−2.賦形工程)
図1及び図3に概略的に示す賦形装置1を用いて、賦形工程を実施した。
(A1−1)で製造した処理前フィルム10を、賦形装置1内で、矢印A1の方向に搬送させた。搬送速度は50m/minとした。搬送される処理前フィルム10の下側の面にバックロール110を当接させて処理前フィルム10を支持した状態で、上側の面の幅方向両端部にローレット120を圧接することにより、賦形工程を実施した。
賦形工程の実施に際して、バックロール110としては、直径150mm、周面のヤング率が207GPaのものを用いた。バックロール110は周速度50m/minで矢印R1方向に回転させた。ローレット120としては、直径110mmで、周面に、図3に概略的に示す通り、突起121を含む凹凸構造を有するものを用いた。ローレット120の温度は250℃、圧接の圧力は130Nとした。ローレット120は周速度52m/minで矢印R2方向に回転させた。したがって、周速度比Vr/Vbは1.04であった。ローレット120の軸120Cの、垂直方向傾斜の角度(図7におけるθ12)は1°とした。ローレット120の軸120Cの、水平方向傾斜の角度(図8におけるθ13)は0°とした。ローレット120のトルクTr及びバックロール110のトルクTbの比Tr/Tbは1.00であり、従って駆動力比Fr/Fbは1.36であった。これにより、幅15mmのナール領域101を有するナール構造付きフィルム100を製造した。
【0080】
得られたナール構造付きフィルム100のナール領域101には、ひし形の形状に延長する頂部300Tを有する多数のナール構造単位300が形成されていた。ナール構造単位300は、図2に示す態様で、ナール領域101内に規則的に配置された。個々のナール構造単位300の、フィルム長手方向の長さは0.4mm、フィルム幅方向の長さは0.4mmであった。
【0081】
(A1−3.ナール頂部高さの計測、及び頂部の位置の分布)
(A1−2)でナール構造付きフィルム100を得た直後、ナール領域101内のナール頂部の高さを計測した。計測には、キーエンス社製超深度顕微鏡VK−9500を用いた。計測に際しナール構造単位300を無作為に10個抽出し、それぞれの単位内においてナール頂部高さが最高である箇所のナール頂部高さHmax及びナール頂部高さが最低である箇所のナール頂部高さHminを計測し、10個のHmaxの平均AvHmax及び10個のHminの平均AvHminを求め、さらにこれらの比AvHmax/AvHminを計算した。
【0082】
さらに、抽出した10個のナール構造300のそれぞれにおける、Hmaxを与える頂部Tmaxの位置を調べた。
Tmaxの位置が、ナール構造付きフィルム100の幅方向に平行な中心線D−TDの上流側及び下流側のうちのどちら側に位置しているかを調べて、10個のナール構造300のうち7個以上が上流側及び下流側のうちのどちらか一方に存在している場合は、長手方向非対称(長手方向における偏在がある)と評価し、それ以外の場合は長手方向対称(長手方向における偏在がある)と評価した。
また、Tmaxの位置が、ナール構造付きフィルム100の長手方向に平行な中心線D−MDの内側及び外側のうちのどちら側に位置しているかを調べて、10個のナール構造300のうち7個以上が内側及び外側のうちのどちらか一方に存在している場合は、幅方向非対称(幅方向における偏在がある)と評価し、それ以外の場合は幅方向対称(幅方向における偏在がある)と評価した。
【0083】
(A1−4.ナール戻りの測定)
(A1−3)での計測を行ったナール構造付きフィルム100を巻き取りフィルムロールとした。巻き取りは、外半径172mmの巻き芯に100N/mの張力を負荷した状態で行った。得られたフィルムロールを、温度25℃の定温環境下で3か月間保管した。保管期間終了直後に、フィルムロールからナール構造付きフィルムを巻き出し、(A1−3)と同じ手順でナール頂部高さを計測した。保管前のAvHmaxと、保管後のAvHmaxの変化率(((保管前AvHmax−保管後AvHmax)/保管前AxHmax)×100)を計算し、下記の評価基準に従って評価した。
S:変化率が5%未満
A:変化率が5%以上10%未満。
B:変化率が10%以上30%未満。
C:変化率が30%以上。
【0084】
〔実施例A2〕
(A1−2)においてローレットの圧接を行わず、代わりにレーザー照射によるナール構造の賦与を行った。この変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
レーザー照射のための照射装置としては、COレーザー光照射装置(MLZ9510キーエンス社製、レーザー波長10.6μm)を用いた。
レーザー照射の方向の極角は、処理前フィルム10の上面の法線方向に対して5°とした。レーザー照射の方向の方位は、処理前フィルムの長手方向及び幅方向と45°の角度をなす方位とし、照射装置の位置が、フィルム上の照射位置より下流で且つ内側の位置となる方位とした。照射装置を移動させることにより、ひし形の形状のナール構造単位を描き、ナール領域101内に多数形成した。描画した形状及びそれらの配置は、実施例A1における頂部300Tの形状及び配置と同じとした。
【0085】
〔実施例A3〕
(A1−2)においてローレット120の周速度を54m/minに変更した。この変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0086】
〔実施例A4〕
(A1−2)においてローレット120の周速度を55m/minに変更した。この変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0087】
〔実施例A5〕
(A1−2)においてローレット120の周速度を57m/minに変更した。この変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0088】
〔実施例A6〕
(A1−2)においてローレット120の周速度を50m/minに変更した。この変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0089】
〔実施例A7〕
(A1−2)においてローレット120の周速度を54m/minに変更し、且つローレット120の軸120Cの垂直方向傾斜の角度(図7におけるθ12)を0°とした。これら変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0090】
〔比較例A1〕
(A1−2)においてローレット120の周速度を50m/minに変更し、且つローレット120の軸120Cの傾斜の垂直方向角度(図7におけるθ12)を0°とした。これらの変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0091】
〔比較例A2〕
レーザー照射の方向の極角は、処理前フィルム10の上面の法線方向(即ち極角0°)とした。この変更点の他は、実施例A2と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0092】
〔比較例A3〕
(A1−2)においてローレット120の周速度を60m/minに変更した。この変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0093】
実施例A1〜A7及び比較例A1〜A3の評価結果を、表1及び表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
表1及び表2の結果から、本発明のナール構造付きフィルムは、ナール戻りが少ないことが分かる。特に、長手方向及び幅方向の両方にTmax分布が偏在している場合、変化率10%未満という、特にナール戻りが少ないナール構造付きフィルムとなることが分かる。
【0097】
〔実施例B1〕
(A1−2)において、ローレット120の軸120Cの垂直方向傾斜の角度(図7におけるθ12)を0°に変更した。この変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0098】
〔実施例B2〕
(A1−2)においてローレット120の周速度を57m/minに変更した。さらに、ローレット120の軸120Cの垂直方向傾斜の角度(図7におけるθ12)を0°に変更した。これらの変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0099】
〔実施例B3〕
(A1−2)においてローレット120のトルクを変更し、トルク比Tr/Tbを1.10に変更し、その結果駆動力比Fr/Fbを1.50とした。さらに、ローレット120の軸120Cの垂直方向傾斜の角度(図7におけるθ12)を0°に変更した。これらの変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0100】
〔実施例B4〕
(A1−2)において、使用するバックロールを変更し、直径150mm、周面のヤング率が3.5GPaのものを用いた。また、ローレット120の周速度を54m/minに変更した。さらに、ローレット120の軸120Cの垂直方向傾斜の角度(図7におけるθ12)を0°に変更した。これらの変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0101】
〔実施例B5〕
(A1−2)において、ローレット120の軸120Cの垂直方向傾斜の角度(図7におけるθ12)を2°に変更した。また、ローレット120の周速度を54m/minに変更した。これらの変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0102】
〔実施例B6〕
(A1−2)において、使用するバックロールを変更し、直径150mm、周面のヤング率が0.1GPaのものを用いた。また、ローレット120の周速度を54m/minに変更した。さらに、ローレット120の軸120Cの垂直方向傾斜の角度(図7におけるθ12)を0°に変更した。これらの変更点の他は、実施例A1と同じ操作により、ナール構造付きフィルムを製造し評価した。
【0103】
実施例B1〜B6の評価結果を、表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
表3の結果から、本発明の要件を満たす製造方法では、ナール戻りが少ないナール構造付きフィルムが得られることが分かる。特に、バックロールとしてフィルムのヤング率より高い周面のヤング率を有するものを用いることにより、変化率10%未満という、特にナール戻りが少ないナール構造付きフィルムが得られることが分かる。
【符号の説明】
【0106】
1:賦形装置
10:処理前フィルム
100:ナール構造付きフィルム
100D:ナール構造付きフィルムの下側の面
100E:フィルムの縁
100U:ナール構造単位を有しない領域のフィルム上側の面
101:ナール領域
110:バックロール
110C:バックロール軸
120:ローレット
120C:ローレット軸
121:ローレットの周面上の突起
300:ナール構造単位
300B:凹部
300T:ナール構造単位頂部
300T1:頂部のうちのある点
300T2:頂部のうちのある点
H1:頂部の高さ
H2:頂部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8