特許第6773110号(P6773110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773110
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】プラズマエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
   H01L21/302 104Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-505864(P2018-505864)
(86)(22)【出願日】2017年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2017009330
(87)【国際公開番号】WO2017159511
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-52931(P2016-52931)
(32)【優先日】2016年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】松浦 豪
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−140151(JP,A)
【文献】 特開2002−198357(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/117082(WO,A1)
【文献】 米国特許第6461975(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象であるシリコン酸化膜と、非加工対象とを備える被処理体のプラズマエッチング方法であって、少なくとも一種のフルオロカーボンガスと、化学式(I)で表される少なくとも一種のハイドロフルオロエーテルガスとの混合ガスを処理ガスとして用いる、プラズマエッチング方法。
【化1】
[式中、R1は、水素原子、フッ素原子、又はCx2x+1で示されるフルオロアルキル基を;R2は、水素原子、フッ素原子、又はCy2y+1で示されるフルオロアルキル基を;R3は、水素原子、フッ素原子、又はCz2z+1で示されるフルオロアルキル基を、それぞれ表す。ここで、x〜zはそれぞれ0以上3以下の整数であり、1≦x+y+z≦3を満たす。また、R1〜R3は、それぞれ同一でも異なっていても良い。]
【請求項2】
前記処理ガス中における、前記ハイドロフルオロエーテルガスの混合割合が、前記フルオロカーボンガス100体積部に対して、1体積部以上100体積部以下である、請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記フルオロカーボンガスが、組成式C、C、C、C、C、又はCで表される化合物のガスである、請求項1又は2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記ハイドロフルオロエーテルガスが、組成式COで表される化合物のガスである、請求項1〜3の何れかに記載のプラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマエッチング方法に関するものであり、特に、シリコン酸化膜を選択的にプラズマエッチングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、被処理体上に形成された薄膜を微細加工するにあたり、処理ガスを用いてプラズマエッチングを行うことがある。かかる薄膜は、例えば、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜等のシリコン化合物膜や、アモルファスカーボン又はフォトレジスト組成物などにより形成されうる、炭素を主成分とする有機膜でありうる。なかでも、シリコン酸化膜をエッチング加工対象とする場合には、同じ被処理体上に形成された、非加工対象のシリコン窒化膜や有機膜等の薄膜に対して、加工対象のシリコン酸化膜を選択的にエッチングする必要がある。即ち、エッチング時の選択性を高める必要がある。
【0003】
そこで従来、エッチング時の選択性を十分に高めて、加工対象を十分に選択的かつ効率的にエッチングするために、様々なプラズマエッチング用の処理ガスが提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、シリコン酸化膜のエッチングに、C、C、Cといったフルオロカーボンや、CHF、CHFといったハイドロフルオロカーボンを処理ガスとして用いるプラズマエッチング方法が記載されている。
【0004】
さらに、近年、半導体デバイスの軽量化、小型化、及び高密度化に対する要求が高まっている。これに伴い、シリコン化合物膜や有機膜を備えてなる被処理体上にセルフアラインコンタクトホールのような微小構造をエッチングにより形成する際には、エッチング時の選択性だけではなく、エッチングにより得られる加工形状の精度を向上させることも重要となってきている。ここで、プラズマエッチングにおいて、一般に非加工対象上には保護膜が形成され、非加工対象がエッチングされることを防止するが、特に、セルフアラインコンタクトホールの加工においては、シリコン窒化膜により構成されるスペーサーの肩部上には保護膜が形成されにくい。そのため、スペーサーを構成するシリコン窒化膜に隣接する加工対象であるシリコン酸化膜をエッチングすれば、スペーサーを構成するシリコン窒化膜の肩部がエッチングされ易かった。その結果、エッチング工程を終えた段階でスペーサーの肩部が薄くなっているか、或いは既に消失している場合があった(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。以下、本明細書では、非加工対象により形成される、スペーサーなどの構造の肩部が消失することを、「肩落ち」とも称する。なお、概して、スペーサーはゲート材料とコンタクトホール内に金属配線材料を埋め込んで形成しうる金属配線とを絶縁するために用いられるが、このスペーサーが薄くなる或いは消失すると、ゲート材料と金属配線との間で短絡が起こり、半導体デバイスとしての機能を失ってしまう。このため、半導体デバイスの製造において、肩落ちは大きな問題とされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5440170号公報
【特許文献2】特開平9−219394号公報
【特許文献3】特願平10−329780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されているような、エッチング時の選択性を高めるために従来から処理ガスとして使用されているフルオロカーボンガスやハイドロフルオロカーボンガスよりなる混合ガスを用いたプラズマエッチング方法では、シリコン酸化膜をプラズマエッチングする際に、非加工対象により形成される構造の肩落ちの発生を抑制することに関して、改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、シリコン酸化膜をプラズマエッチングする際に、肩落ちの発生を十分に抑制することができる、プラズマエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、プラズマエッチング用の処理ガスとして、フルオロカーボンガスと、ある分子構造上の条件を満たすハイドロフルオロエーテルガスとを混合して用いることで、非加工対象よりなる構造の肩落ちを十分に抑制しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のプラズマエッチング方法は、加工対象であるシリコン酸化膜と、非加工対象とを備える被処理体のプラズマエッチング方法であって、少なくとも一種のフルオロカーボンガスと、化学式(I)で表される少なくとも一種のハイドロフルオロエーテルガスとの混合ガスを処理ガスとして用いることを特徴とする。
【化1】
[式中、R1は、水素原子、フッ素原子、又はCx2x+1で示されるフルオロアルキル基を;R2は、水素原子、フッ素原子、又はCy2y+1で示されるフルオロアルキル基を;R3は、水素原子、フッ素原子、又はCz2z+1で示されるフルオロアルキル基を、それぞれ表す。ここで、x〜zはそれぞれ0以上3以下の整数であり、1≦x+y+z≦3を満たす。また、R1〜R3は、それぞれ同一でも異なっていても良い。]
フルオロカーボンガスと、上記化学式(I)で表されるハイドロフルオロエーテルとの混合ガスを用いてシリコン酸化膜をプラズマエッチングすれば、非加工対象により構成される肩部の肩落ちを十分に抑制することができる。
【0010】
ここで、本発明のプラズマエッチング方法は、前記処理ガス中における、前記ハイドロフルオロエーテルガスの混合割合が、前記フルオロカーボンガス100体積部に対して、1体積部以上100体積部以下であることが好ましい。エッチング時の選択性を向上させるとともに、肩落ちを一層抑制することができるからである。
【0011】
また、本発明のプラズマエッチング方法は、前記フルオロカーボンガスが、組成式C、C、C、C、C、又はCで表される化合物のガスであることが好ましい。エッチング時の選択性を向上させることができるからである。
【0012】
また、本発明のプラズマエッチング方法は、前記ハイドロフルオロエーテルガスが、組成式COで表される化合物のガスであることが好ましい。ハイドロフルオロエーテルガスが、組成式COで表される化合物のガスであれば、一層十分に肩落ちを抑制することができるとともに、エッチング時の選択性も向上させることができるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シリコン酸化膜をプラズマエッチングする際に、肩落ちの発生を十分に抑制することができる、プラズマエッチング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例及び比較例で用いた、パターン化されたシリコン窒化膜と、シリコン酸化膜とを有する被処理体の概略的な断面図である。
図2図1に示す積層体を、本発明の実施例1に従うプラズマエッチング方法によりエッチングした後の状態を示す、概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明のプラズマエッチング方法は、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、SAC(Self Aligned Contact)を形成する際に用いられうる。本発明のプラズマエッチング方法は、少なくとも一種のフルオロカーボンガスと、特定の構造を有する少なくとも一種のハイドロフルオロエーテルガスとの混合ガスを処理ガスとして用いて、加工対象であるシリコン酸化膜と、非加工対象とを備える被処理体をプラズマエッチングする方法である。被処理体は、プラズマエッチングにて使用可能である限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる対象物でありうる。被処理体は、例えば、ガラス基板、シリコン単結晶ウエハー、ガリウム−砒素基板を含みうる。そして、例えば、被処理体は、シリコン単結晶ウエハー上に、必要に応じて形成された、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、及び/又は、有機膜を備えてなりうる。
【0016】
なお、本明細書において、「シリコン窒化膜」とは、Si(SiN)、SiCN、SiBCN等の窒素原子を含有するシリコン化合物により形成される膜のことをいう。さらに、本明細書において、「シリコン酸化膜」とは、SiО、SiOC、SiOCH等の酸素原子を含有するシリコン化合物により形成される膜のことをいう。さらにまた、本明細書において、「有機膜」とは、炭素を主成分とする膜をいう。「炭素を主成分とする」とは膜を形成する材料に含まれる炭素の割合が50質量%超であることをいい、具体的にはアモルファスカーボン等の炭素系材料や、フォトレジスト組成物などにより形成される膜(以下、レジスト膜とも称する)のことをいう。
【0017】
また、本発明のプラズマエッチング方法において、「エッチング」とは、半導体デバイスの製造工程などで用いられる、加工対象及び非加工対象とを備える被処理体に、極めて高集積化された微細パターンを食刻する技術をいう。また、「プラズマエッチング」とは、処理ガスに高周波の電場を印加してグロー放電を起こし、処理ガスを化学的に活性なイオン、電子、中性種に分離させて、これらの活性種とエッチング対象材料との化学的反応及び物理的衝突による反応を利用してエッチングを行う技術をいう。
【0018】
(処理ガス)
処理ガスは、少なくとも一種のフルオロカーボンガスと、特定の構造を有する少なくとも一種のハイドロフルオロエーテルガスとを含み、任意で、その他のガスを含みうる。
【0019】
<フルオロカーボンガス>
フルオロカーボンガスとしては、組成式C、C、C、C、C、及びCで表されうる化合物のガスが挙げられる。プラズマ条件下にて、これらの化合物により活性種が生成され、生成された活性種間の相互作用により、各種反応が生じる。よって、これらの組成式により表されうる化合物であれば、それらの実際の構造にかかわらず、本発明のプラズマエッチング方法の効果を奏しうる。そして、これらのフルオロカーボンガスは1種単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、組成式Cで表される化合物が好ましく、特に、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが好ましい。組成式Cで表される化合物、中でも、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンは、シリコン酸化膜に対するエッチング速度が十分高く、かつシリコン窒化膜の肩落ちを抑制する効果が高いからである。
【0020】
<ハイドロフルオロエーテルガス>
ハイドロフルオロエーテルガスとしては、下記化学式(I)で表されるハイドロフルオロエーテルのガスを用いる。
【化2】
[式中、R1は、水素原子、フッ素原子、又はCx2x+1で示されるフルオロアルキル基を;R2は、水素原子、フッ素原子、又はCy2y+1で示されるフルオロアルキル基を;R3は、水素原子、フッ素原子、又はCz2z+1で示されるフルオロアルキル基を、それぞれ表す。ここで、x〜zはそれぞれ0以上3以下の整数であり、1≦x+y+z≦3を満たす。また、R1〜R3は、それぞれ同一でも異なっていても良い。]
【0021】
上記化学式(I)で表されるハイドロフルオロエーテルガスとしては、例えば、CF−O−CH−C、CF−O−CH−n−C、CF−O−CH−i−C、C−O−CH−CF、C−O−CH−C、n−C−O−CH、及びi−C−O−CHのガスが挙げられる。これらのハイドロフルオロエーテルガスは1種単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。中でも、ハイドロフルオロエーテルガスは、n−C−O−CH(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル)、及び/又は、i−C−O−CH(ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル)のガスであることが好ましい。これらのガスは、シリコン酸化膜に対するエッチング速度が十分高く、かつシリコン窒化膜の肩落ちを抑制する効果が高いからである。
【0022】
上記化学式(I)より明らかなように、ハイドロフルオロエーテルガスを構成するハイドロフルオロエーテルは、酸素原子と結合しない炭素がフッ素及び水素の両方と結合しないことを特徴としている。換言すると、一つの炭素がフッ素及び水素と結合する場合には、かかる炭素は酸素原子とも結合した構造となっていることを特徴としている。かかる構造を有するハイドロフルオロエーテルのガスにより、肩落ち抑制効果が達成される理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。
【0023】
まず、同一炭素上にフッ素と水素が存在する場合、Cαγβ(α、γ、βはそれぞれ正の整数)の構造で表されるラジカルやイオンが生成する。これらの活性種は、シリコン窒化膜と容易に反応し、シリコン窒化膜をエッチングしてしまう。一方、同一炭素上にフッ素と水素に加えて、酸素が存在する場合、炭素は電子が極端に不足した状態となり、水素が容易に脱離しやすくなる。その結果、シリコン窒化膜との反応性が比較的低いCαβ(α、βはそれぞれ正の整数)やCαβOの構造で表されるラジカルやイオンが生成しやすくなる。一方、脱離した水素イオンや水素ラジカルは、処理ガスに含まれる少なくとも一種のフルオロカーボンガス等に由来するフッ素ラジカルやフッ素イオンと容易に反応しHFを生成して反応性を失い、反応系外に排出されうる。フッ素ラジカルやフッ素イオンもシリコン窒化膜と反応性が高い為、これらが反応性を失い、更には系外に排出されることで、シリコン窒化膜を非加工対象とした場合の、加工対象のエッチング選択比が更に向上しうる。また、CαβOの構造で表されるイオンは、被処理体に形成された構造の底部まで酸素原子を供給する効果がある。酸素原子源として、処理ガスに酸素ガスのみを混合した場合は、処理容器内に存在する酸素元素含有成分は酸素ラジカルが主体となるため、被処理体に形成された構造の底部に達する前に、酸素ラジカルが何らかの対象と反応して反応性を失う等して、酸素原子を底部まで到達させることができず、プラズマエッチング工程が途中で停止してしまう。以上のことから、酸素原子と結合しない炭素がフッ素及び水素の両方と結合しない構造を有するハイドロフルオロエーテルのガスを処理ガスに含有させることで、シリコン窒化膜を非加工対象とした場合の、加工対象のエッチング選択比を向上しつつ、エッチング工程を良好に進行させることができると推察される。
【0024】
さらに、酸素原子と結合しない炭素がフッ素及び水素の両方と結合しない構造を有するハイドロフルオロエーテルからは、Cαβ(α、βは正の整数)のほかにCHδ(δは正の整数)の構造で表されるラジカルやイオンが生成しやすい。Cαβ及びCHδのラジカルやイオンなどの活性種はCαγβよりもシリコン窒化膜との反応性が低いため、シリコン窒化膜を非加工対象とした場合の、加工対象(例えば、シリコン酸化膜)のエッチング選択比を高めることができる。また、水素原子とフッ素原子との間には強い水素結合が形成されうるため、Cαβを前駆体として保護膜上にCHδが吸着しやすくなる。その結果、Cαβのみで形成される保護膜よりも強固で厚い保護膜が、非加工対象であるシリコン窒化膜の側面や肩部に形成され、非加工対象であるシリコン窒化膜の肩落ちを抑制可能であると推察される。
【0025】
なお、ここまで、非加工対象がシリコン窒化膜であると仮定して、酸素原子と結合しない炭素がフッ素及び水素の両方と結合しない構造を有するハイドロフルオロエーテルを処理ガスに含有させることによるエッチング選択比及び肩落ち抑制能の向上について説明してきた。しかし、上述したような非加工対象と反応性が高い活性種、特にフッ素ラジカルやフッ素イオンは、有機膜等の他の非加工対象についても反応性が高い。このため、水素イオンや水素ラジカルを生じさせてフッ素ラジカルやフッ素イオンを失活させうる上記化学式(I)により表されるハイドロフルオロエーテルは、シリコン窒化膜のみならず、有機膜等の他の非加工対象についても有利に保護することができると推察される。また、有機膜を非加工対象とした場合にも、Cαβを前駆体として保護膜上にCHδが吸着しやすくなり、強固で厚い保護膜を非加工対象である有機膜の側面や肩部において形成することができ、肩落ちを抑制することができると推察される。
【0026】
[フルオロカーボンガスとハイドロフルオロエーテルガスとの混合割合]
フルオロカーボンガスに対するハイドロフルオロエーテルガスの混合割合は、エッチングの条件等によって異なるが、フルオロカーボンガス100体積部に対して、1体積部以上であることが好ましく、3体積部以上であることがより好ましく、5体積部以上であることがさらに好ましく、30体積部以上であることがさらにより好ましく、100体積部以下であることが好ましく、90体積部以下であることがより好ましく、80体積部以下であることがさらに好ましい。エッチング時の選択性を向上させるとともに、肩落ちを一層抑制することができるからである。
【0027】
<その他のガス>
処理ガスには、任意で、希ガスや酸素ガス等のその他のガスを混合することも可能である。希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、及びキセノンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。希ガスや酸素ガスを混合して用いることにより、より十分なエッチング速度と、非加工対象に対するより高いエッチング選択比を同時に得られるプラズマエッチングを実現することができる。
【0028】
[希ガスの混合割合]
処理ガスに希ガスを混合して用いる場合、希ガスの混合割合は、フルオロカーボンガス100体積部に対して、通常、1体積部以上、好ましくは、10体積部以上、より好ましくは20体積部以上であり、通常、10000体積部以下、好ましくは、7000体積部以下、より好ましくは、5000体積部以下である。
【0029】
[酸素ガスの混合割合]
処理ガスに酸素ガスを混合して用いる場合、酸素ガスの混合割合は、フルオロカーボンガス100体積部に対して、通常、2000体積部以下、好ましくは、1000体積部以下、より好ましくは500体積部以下、さらに好ましくは300体積部以下である。
【0030】
処理ガスとして用いるフルオロカーボンガス、ハイドロフルオロエーテルガス、及び任意で使用可能な希ガス、酸素ガス等の各ガスは、通常、それぞれ独立して、ボンベ等の容器に充填されて運搬され、ドライエッチング設備(ドライエッチングチャンバー)に対して接続されて、設置される。そして、ボンベ等のバルブを開くことにより、各ガスが、プラズマの作用を受けるドライエッチングチャンバー内に所定割合で導入され、後述するように、各ガスにプラズマが作用し、ドライエッチングを進行させることができる。
【0031】
(プラズマエッチング方法の流れ)
本発明のプラズマエッチング方法の流れは以下の通りである。被処理体としては、シリコン酸化膜及びレジスト膜が形成されたパターン付き被処理体や、同一基板上にシリコン窒化膜、シリコン酸化膜及びレジスト膜が形成された、パターン付き被処理体を用いる場合等も同様である。なお、「パターン付き」とは、被処理体上に形成された膜により、何らかの構造が形成された状態をいい、例えば、図1に示すような被処理体が「パターン付き被処理体」に相当する。図1については実施例にてより詳細に説明する。
【0032】
[準備工程]
まず、被処理体を、プラズマ発生装置を有するドライエッチングチャンバー(以下、処理容器ともいう)内に設置し、処理容器内を脱気して真空にする。さらに、準備工程において、被処理体の温度を−50℃以上とすることが好ましく、−20℃以上とすることがより好ましく、0℃以上とすることがさらに好ましく、+120℃以下とすることが好ましく、+100℃以下とすることがより好ましく、+80℃以下とすることがさらに好ましい。被処理体の温度は、例えば、ヘリウムガスなどの冷却ガス及び冷却装置を用いて制御することができる。そこへ、用いる処理ガスに含有されうる各種ガスを、それぞれ所定の速度及び圧力となるように導入する。処理ガスの導入速度は、処理ガス中における各種ガスの混合割合に比例させて決定すればよい。そして、処理容器内に処理ガスを供給している間、処理容器内の圧力は、通常、1Pa以上13Pa以下の範囲に保持することが好ましい。
【0033】
[プラズマエッチング工程]
次いで、プラズマ発生装置により、処理容器内の処理ガスに高周波の電場を印加してグロー放電を起こさせ、プラズマを発生させる。プラズマ発生装置としては、特に限定されることなく、ヘリコン波方式プラズマ発生装置、高周波誘導方式プラズマ発生装置、平行平板型プラズマ発生装置、マグネトロン方式プラズマ発生装置、又はマイクロ波方式プラズマ発生装置等の一般的なプラズマ発生装置が挙げられる。本発明においては、平行平板型プラズマ発生装置、高周波誘導方式プラズマ発生装置、及びマイクロ波方式プラズマ発生装置が好適に使用されうる。高密度領域のプラズマを容易に発生させることができるからである。
【0034】
プラズマエッチングの条件は、特に限定されず、従来公知のエッチング条件で行えばよい。例えば、平行平板型プラズマ発生装置の上部電極が60MHz、下部電極が2MHzで、これらの電極間の距離が35mmである、高周波型のプラズマエッチング装置を用いる場合、上部電極への供給電力は100W以上2000W以下、下部電極への供給電力は0W以上600W以下の範囲で自由に組み合わせることができる。なお、プラズマエッチング工程の時間は、通常、5秒から5分、好ましくは10秒から4分である。
【0035】
そして、本発明のプラズマエッチング方法は、エッチング速度が260nm/分以上であることが好ましい。かかるエッチング速度は、近年、シリコン酸化膜のエッチングにおいて、処理ガスとして最もよく使用されているCと酸素の混合ガスによるエッチングを行う際に、通常得られるエッチング速度以上である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、用いる処理ガスの種類、エッチング条件等を変更することができる。実施例及び比較例において使用した被処理体及びプラズマエッチング装置はそれぞれ以下の通りであり、実施例及び比較例において採用したプラズマエッチング条件は以下の通りであった。さらに、実施例、比較例において、エッチング深さ、耐肩落ち性、及びエッチング選択比は、それぞれ、以下のようにして測定及び評価した。
【0037】
<被処理体>
被処理体としては、図1に示す構造のシリコン単結晶ウエハーのチップ片を用いた。図1に示す被処理体1は、シリコン単結晶ウエハー(Si)100上に第1シリコン窒化膜(Si膜)101、シリコン酸化膜(SiO膜)102、及びパターン化された第2シリコン窒化膜(Si膜)103が順次積層されてなる。被処理体1の最上層を形成する第2のシリコン窒化膜103は、一定幅の溝状のパターンを形成している。そして、本発明の実施例1に従うプラズマエッチング後の被処理体の概略的な断面図を図2に示す。図2にかかる被処理体も、図1に示すプラズマエッチング前の被処理体と同様に、各膜を備える。図1と同様の部分については、同一の符号に「’」を付して示す。また、図2において、矢印A〜Cとして各構造のサイズを示す。矢印A及びA’は、それぞれ、プラズマエッチング前後の第2のシリコン窒化膜103、103’の厚みを示す。矢印Bは、プラズマエッチング前のシリコン酸化膜102の厚みを、矢印B’は、プラズマエッチング後に残存したシリコン酸化膜102’の厚みを示す。矢印Cは、第2のシリコン窒化膜103の最表面における溝の幅(以下、パターンの「入口寸法」とも称する)を示し、矢印C’は、プラズマエッチング後の第2のシリコン窒化膜103’における入口寸法を示す。なお、図2では、プラズマエッチング後の被処理体1’では、プラズマエッチング前の被処理体1と比較すると、溝の幅がCからC’に狭まっているように図示する。しかし、比較例に従うプラズマエッチング方法などによれば、概して、溝の幅C’は元の溝の幅Cよりも広がる。
【0038】
<プラズマエッチング装置>
プラズマエッチング装置としては、平行平板型プラズマ発生装置を備えるプラズマエッチング装置を使用した。平行平板型プラズマ発生装置は、上部電極と、被処理基板を載置する下部電極とを有し、上部電極の下面と下部電極の上面との間隔は35mmであった。平行平板型プラズマ発生装置の上部電極の周波数は60MHzであり、下部電極の周波数は2MHzであった。また、下部電極は、冷却ユニットを備えており、かかる冷却ユニットは下部電極にヘリウムガスを接触させることにより下部電極を冷却するように構成されていた。なお、冷却ユニットはヘリウムガスが処理容器内部には流出しない態様で構成されていた。
<プラズマエッチング条件>
プラズマエッチングは、上部電極の電力を150W、下部電極の電力を500Wとし、チャンバー内圧力を2Paで一定にし、下部電極の冷却は、冷却ユニットを60℃としヘリウムガスの圧力を1000Paに設定した。また、実施例、比較例にてプラズマエッチングの時間は全て60秒間とした。よって、実施例、比較例にて得られた被処理体のエッチング深さの値は、そのまま各プラズマエッチング方法の1分当たりのエッチング速度に相当する。
【0039】
<エッチング深さ>
実施例、比較例において、市販されているエリプソメトリー膜厚計を用いて、計測を行った。
加工対象であるシリコン酸化膜のエッチング深さは、図1及び図2を参照して説明した、プラズマエッチング前後のシリコン酸化膜102、102’の厚みの差分(B−B’)により算出した。また、非加工対象である第2のシリコン窒化膜のエッチング深さは、同様にして(A−A’)により算出した。
<耐肩落ち性>
耐肩落ち性の評価指標となる、入口寸法拡大量は、図1及び図2を参照して説明した(C’−C)により算出した。当然、C’がCよりも小さければ、即ち、プラズマエッチングを経て、溝の幅が狭まっていれば、溝の幅の拡大量は、負の値となる。そして、C’がCよりも大きい場合には、プラズマエッチングにて非加工対象である第2のシリコン窒化膜がエッチングされて肩落ちが生じたことを意味し、その値が大きいほど肩落ちの程度が大きいことを意味する。即ち、入口寸法拡大量の値が小さければ、耐肩落ち性に優れ、逆に、入口寸法拡大量の値が大きければ、耐肩落ち性に劣るということを意味する。
なお、プラズマエッチング後の入口寸法C’は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察に基づいて決定した被処理体の最表面についてSEM画像を取得し、得られたSEM画像上で溝の幅を計測して得た。
<エッチング選択比>
シリコン酸化膜(102)のエッチング深さ(B−B’)をシリコン窒化膜(103)のエッチング深さ(A−A’)で除した値をシリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜のエッチング選択比とした。
シリコン酸化膜(102)のエッチング深さ(B−B’)を入口寸法拡大量(C’−C)で除した値を入口寸法に対する選択比とした。「入口寸法に対する選択比」は、シリコン窒化膜の入口寸法を保ちつつシリコン酸化膜をエッチングする度合いを示すものであり、かかる値が大きいほどシリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜のエッチング選択性と耐肩落ち性との両立が良好であったことを表す。ここで入口寸法拡大幅がゼロ以下の値となる場合は、入口寸法に対する選択比は無限大(∞)と定義した。
【0040】
(実施例1)
<処理ガス>
フルオロカーボンガスとしてヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン(C)を10sccm、その他のガスとして酸素ガスを10sccm、ハイドロフルオロエーテルガスとして、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル(i−C−O−CH)を5sccm、希ガスとしてアルゴンガスを200sccmで、プラズマエッチング装置の処理容器内に導入した。得られた被処理体について上述の方法に従って各種測定をした結果を表1に示す。
【0041】
(実施例2)
ハイドロフルオロエーテルガスを1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(n−C−O−CH)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、プラズマエッチングを行った。得られた被処理体について上述の方法に従って各種測定をした結果を表1に示す。
【0042】
(実施例3)
ハイドロフルオロエーテルガスを2,2,2‐トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CF−CH−O−CHF)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、プラズマエッチングを行った。得られた被処理体について上述の方法に従って各種測定をした結果を表1に示す。
【0043】
(比較例1)
ハイドロフルオロエーテルガスを用いないこと以外は、実施例1と同様にして、プラズマエッチングを行った。得られた被処理体について上述の方法に従って各種測定をした結果を表1に示す。
【0044】
(比較例2)
ハイドロフルオロエーテルガスを(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)メチルエーテル(CHF−CF−O−CH)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、プラズマエッチングを行った。得られた被処理体について上述の方法に従って各種測定をした結果を表1に示す。
【0045】
(比較例3)
ハイドロフルオロエーテルガスをヘキサフルオロプロピレンオキシド(CO)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、プラズマエッチングを行った。得られた被処理体について上述の方法に従って各種測定をした結果を表1に示す。
【0046】
(比較例4)
ハイドロフルオロエーテルガスをオクタフルオロテトラヒドロフラン(CO)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、プラズマエッチングを行った。得られた被処理体について上述の方法に従って各種測定をした結果を表1に示す。
【0047】
(比較例5)
ハイドロフルオロエーテルガスをヘプタフルオロシクロペンテン(CHF)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、プラズマエッチングを行った。得られた被処理体について上述の方法に従って各種測定をした結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1より、以下のことが分かる。まず、実施例1〜3のように、少なくとも一種のフルオロカーボンガスと、特定の構造を有する少なくとも一種のハイドロフルオロエーテルガスとの混合ガスを処理ガスとして用いるプラズマエッチング方法は、耐肩落ち性に優れる。なお、実施例、比較例では溝状のパターンの形成された被処理体を用いたが、かかる被処理体に基づく評価結果は、SACのようなホール状の構造についてもあてはまると推察される。
具体的には、実施例1及び実施例2では、260nm以上のシリコン酸化膜(102)のエッチング深さを維持しながら、入口寸法に対する選択比は無限大を実現している。実施例3でも、260nm以上のシリコン酸化膜(102)のエッチング深さを維持しながら、入口寸法に対する選択比が58.6と高い。一方、比較例1ではエッチング深さは実施例1、2と同程度であるが、入口寸法に対する選択比は8.6であり、シリコン窒化膜の肩部がエッチングされてしまう。従ってフルオロカーボンガスを単独で用いるよりも、ハイドロフルオロエーテルガスを混合したほうが、入口寸法に対する選択比を大幅に改善できる。
比較例2では、シリコン酸化膜(102)のエッチング深さ、入口寸法に対する選択比ともに実施例1〜3に比べて著しく劣る。
比較例3,4は水素原子を含まないフルオロエーテルガスを用いているが、シリコン酸化膜(102)のエッチング深さは、各々319nm、306nmであって実施例1〜3よりも深く、エッチング速度が速いものの、いずれも、入口寸法に対する選択比は実施例1〜3に比べて著しく劣る。以上の事から、分子構造に水素を含まないフルオロエーテルは処理ガスとして適切ではない。
比較例5では、同一炭素上に水素原子とフッ素原子が存在しないハイドロフルオロカーボンであるCHFを処理ガスとして用いているが、シリコン酸化膜(102)のエッチング深さ、入口寸法に対する選択比ともに、比較例1よりも悪化している。このことから、処理ガスが、エーテル結合を分子中に有するハイドロフルオロエーテルガスを含有する必要があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、処理ガスとして、フルオロカーボンガスと上述したような化学式(I)を満たすハイドロフルオロエーテルガスの混合ガスとを用いることで、シリコン窒化膜の肩落ちを抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,1’ 被処理体
100,100’ シリコン単結晶ウエハー
101,101’ 第1シリコン窒化膜
102,102’ シリコン酸化膜
103,103’ パターン化された第2シリコン窒化膜
A プラズマエッチング前の第2のシリコン窒化膜103の厚み
A’ プラズマエッチング後の第2のシリコン窒化膜103’の厚み
B プラズマエッチング前のシリコン酸化膜102の厚み
B’ プラズマエッチング後に残存したシリコン酸化膜102’の厚み
C 第2のシリコン窒化膜103に形成されたパターンの入口寸法
C’ プラズマエッチング後の第2のシリコン窒化膜103’における入口寸法
図1
図2