特許第6780660号(P6780660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧
特許6780660非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤および電気化学デバイス用シール剤組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780660
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤および電気化学デバイス用シール剤組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/08 20060101AFI20201026BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20201026BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20201026BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   H01M2/08 T
   H01M2/08 S
   H01M2/08 A
   H01M2/08 X
   H01M2/08 W
   H01M10/0566
   H01G11/80
   C09K3/10 K
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 Q
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-560433(P2017-560433)
(86)(22)【出願日】2017年1月6日
(86)【国際出願番号】JP2017000269
(87)【国際公開番号】WO2017119485
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-2346(P2016-2346)
(32)【優先日】2016年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】前田 耕一郎
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−070403(JP,A)
【文献】 特開2001−064627(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034825(WO,A1)
【文献】 特開2011−210412(JP,A)
【文献】 特開2000−243359(JP,A)
【文献】 特開平10−055789(JP,A)
【文献】 特表2014−524118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/08
C09K 3/10
H01G 11/80
H01M 10/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなる、非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤。
【請求項2】
前記(A)共役ジエン重合体、前記(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および前記(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の合計量に対して、前記(A)共役ジエン重合体を37質量%以上80質量%以下、前記(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体を3質量%以上30質量%以下、前記(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を10質量%以上60質量%以下含有してなる、請求項1記載の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤。
【請求項3】
前記(A)共役ジエン重合体、前記(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および前記(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなる重合体成分の固形分100質量部に対して、(D)無機フィラーを0.1質量部以上10質量部以下含有してなる、請求項1または2記載の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤を固形分濃度にて1質量%以上20質量%以下となるように有機溶媒に溶解してなる、電気化学デバイス用シール剤組成物。
【請求項5】
開口部を有し、且つ、発電要素を収納した容器と、
シール剤を介して前記容器の前記開口部に装着された絶縁ガスケット、或いは、前記容器の前記開口部に装着された封口体にシール剤を介して取り付けられた絶縁ガスケットと、
を備え、
前記シール剤が、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤である、電気化学デバイス。
【請求項6】
前記絶縁ガスケットが、ポリエステル系熱可塑性エラストマーよりなる、請求項5記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池などの非水系電解液を用いた電気化学デバイスに用いることができる電気化学デバイス用のシール剤、および、このシール剤を用いた電気化学デバイス用シール剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒を含む電解液(非水系電解液)を用いている電気化学デバイスとして、電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池がある。上記電気化学デバイスでは、封止された電解液の蒸散や漏液を防止することが必要であるとともに、外部からの水や水蒸気の侵入を防止することが必要である。そのため、電気化学デバイスではシール剤が広く用いられている。
【0003】
シール剤としては、ビニル芳香族炭化水素−共役ジエンブロック重合体又はその水素添加物や、共役ジエン重合体等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシール剤は、電池封口用のガスケットがポリプロピレンなどの非極性樹脂であるポリオレフィンからなる場合には好適である。
【0004】
近年、電気自動車用など、電気化学デバイスの用途が広がり、より高い温度での耐久性が求められるようになってきた。そのため、電池封口用のガスケットの材料として、高温での機械的強度が高く且つ低温柔軟性の良い樹脂である、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)が用いられるようになってきた。TPCは、ポリプロピレンなどに比べて極性の高い樹脂であるため、極性基を含まないシール剤では十分な濡れ性および十分な密着性を得られない場合があった。即ち、TPC製ガスケットに対してポリプロピレン製ガスケット向けのシール剤などの極性基を含まないシール剤を用いると、シール性能が不十分になる虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3574276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、極性の高い樹脂に対しても十分なシール性能を有する非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤、および、このシール剤を用いた電気化学デバイス用シール剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、共役ジエン重合体、芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体およびアミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなる重合体成分を用いることにより上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、
(1)(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなる、非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤、
(2)前記(A)共役ジエン重合体、前記(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および前記(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の合計量に対して、前記(A)共役ジエン重合体を37質量%以上80質量%以下、前記(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体を3質量%以上30質量%以下、前記(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を10質量%以上60質量%以下含有してなる、(1)記載の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤、
(3)前記(A)共役ジエン重合体、前記(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および前記(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなる重合体成分の固形分100質量部に対して、(D)無機フィラーを0.1質量部以上10質量部以下含有してなる、(1)または(2)記載の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤、
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤を固形分濃度にて1質量%以上20質量%以下となるように有機溶媒に溶解してなる、電気化学デバイス用シール剤組成物、
(5)開口部を有し、且つ、発電要素を収納した容器と、シール剤を介して前記容器の前記開口部に装着された絶縁ガスケット、或いは、前記容器の前記開口部に装着された封口体にシール剤を介して取り付けられた絶縁ガスケットとを備え、前記シール剤が、(1)〜(3)のいずれかに記載の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤である、電気化学デバイス、
(6)前記絶縁ガスケットがポリエステル系熱可塑性エラストマーよりなる、(5)記載の電気化学デバイス、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤および電気化学デバイス用シール剤組成物は、極性の高い樹脂に対しても十分なシール性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤について説明する。本発明の非水系電解液を用いた電気化学デバイス用のシール剤(以下、「シール剤」ということがある。)は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなる。
【0011】
<(A)共役ジエン重合体>
本発明のシール剤は、(A)共役ジエン重合体を含有する。(A)共役ジエン重合体は、共役ジエン化合物を重合してなるものである。共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
なお、(A)共役ジエン重合体は、共役ジエン化合物のみを重合してなる重合体であってもよいし、共役ジエン化合物と、共役ジエン化合物と共重合可能な共役ジエン化合物以外の化合物との共重合体(但し、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物に該当するものを除く)であってもよい。中でも、(A)共役ジエン重合体は、共役ジエン化合物のみを重合してなる重合体であることが好ましい。
【0012】
(A)共役ジエン重合体の重合の際には、これらの共役ジエン化合物をそれぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、(A)共役ジエン重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で好ましくは100,000以上1,000,000以下である。
(A)共役ジエン重合体の製造方法は、特に限定されない。重合方法としては、例えば、乳化重合、溶液重合が使用可能である。また、重合反応としては、例えば、ラジカル重合、アニオン重合などが使用可能である。これらのなかでも、ラジカル重合を用いた溶液重合法が好ましい。
重合は、重合開始剤の存在下、通常0℃以上150℃以下、好ましくは20℃以上100℃以下、特に好ましくは10℃以上80℃以下の温度範囲において行う。
【0013】
<(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体>
また、本発明のシール剤は、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体を含有する。(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の調製に使用し得る芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。中でも、スチレン、α−メチルスチレンが特に好ましい芳香族ビニル化合物である。これらの芳香族ビニル化合物は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の調製に使用し得る共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい共役ジエン化合物である。これらの共役ジエン化合物をそれぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体は、芳香族ビニル重合体ブロック(P)および共役ジエン重合体ブロック(Q)を含有し、かつ、ブロック構造が(P−Q)Pまたは(P−Q)(ただし、nは1以上の整数、好ましくは1以上10以下の整数であり、mは1以上の整数、好ましくは2以上10以下の整数である。)で表されるブロック重合体であることが好ましい。
【0016】
このような(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の具体例としては、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などが挙げられる。また、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体としては、2元ブロック共重合体、3元ブロック共重合体およびそれらの混合物の何れも好ましく用いることができる。3元ブロック共重合体としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)及びスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)などが挙げられる。これらのなかでも、スチレン−イソプレンブロック共重合体(2元ブロック共重合体、3元ブロック共重合体またはそれらの混合物)が好ましく用いられる。
【0017】
(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の製造方法としては、特に限定されないが、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合を用いた方法などが挙げられる。これらのなかでも、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等をリビング重合により行う方法が好ましく、リビングアニオン重合により行う方法が特に好ましい。
【0018】
重合は、重合開始剤の存在下、通常0℃以上150℃以下、好ましくは20℃以上100℃以下、特に好ましくは10℃以上80℃以下の温度範囲において行う。リビングアニオン重合の場合は、重合開始剤として、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム等のモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物等が使用可能である。
【0019】
重合反応形態は、溶液重合、スラリー重合等のいずれでも構わないが、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易である。この場合、ブロック重合体の製造工程で得られる重合体が溶解する不活性溶媒を用いる。使用する不活性溶媒としては、たとえば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒使用量は、全使用単量体100質量部に対して、通常200質量部以上2000質量部以下である。
【0020】
ブロック重合体を得る際に、用いる単量体が2種以上である場合には、或る1成分の連鎖だけが長くなるのを防止するために、ランダマイザー等を使用することができる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物等をランダマイザーとして使用するのが好ましい。ルイス塩基化合物としては、たとえば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;等が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0021】
<(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物>
また、本発明のシール剤は、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有する。(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物は、たとえば、アミン変性前であって、水素添加前の芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体(即ち、上述の(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体等)のリビング末端に、変性剤を用いて付加反応を行うことにより、アミン変性されたブロック重合体を得た後、水素化反応(水添反応)を行うことにより得られる。
【0022】
(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の調製に使用し得る芳香族ビニル化合物の具体例としては、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の調製に使用し得る芳香族ビニル化合物の具体例として例示したものなどが挙げられる。中でも、スチレン、α−メチルスチレンが特に好ましい芳香族ビニル化合物である。これらの芳香族ビニル化合物は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の調製に使用し得る共役ジエン化合物の具体例としては、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の調製に使用し得る共役ジエン化合物として例示したものなどが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン化合物は、それぞれ単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の、アミン変性前であって、水素添加前の芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体は、芳香族ビニル重合体ブロック(P)および共役ジエン重合体ブロック(Q)を含有し、かつ、ブロック構造が(P−Q)Pまたは(P−Q)(ただし、nは1以上の整数、好ましくは1以上10以下の整数であり、mは1以上の整数、好ましくは2以上10以下の整数である。)で表されるブロック重合体であることが好ましい。
【0025】
(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の、アミン変性前であって、水素添加前の芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の製造方法としては、特に限定されないが、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合を用いた方法などが挙げられる。これらのなかでも、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を、リビング重合により行う方法、特にリビングアニオン重合により行う方法を用いた場合に、重合操作及び後工程での水素化反応が容易になる。
【0026】
また、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の、アミン変性前であって、水素添加前の芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の重合条件、重合反応形態についても、特に限定されないが、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の重合条件、重合反応形態と同様の重合条件、重合反応形態を用いることができる。
【0027】
<<アミン変性反応>>
上述のようにして得られたブロック重合体のリビング末端に対して、アミンを有する変性剤、またはアミンを公知の方法により保護した変性剤を付加反応させることにより、アミン変性反応を行うことができる。これにより、アミンを少なくとも1つ有する原子団が少なくとも1個結合してなる芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体(以下、「前駆体」ということがある。)を得ることができる。アミンを有する変性剤としては、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
また、前駆体を得る際に、ブロック重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、ブロック重合体に有機アルカリ金属が付加した重合体に、アミンを有する変性剤を付加反応させてもよい。
なお、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物は、水素化反応により得たブロック重合体の水素添加物をメタレーション反応させた後、アミンを有する変性剤を反応させることにより得ることもできる。
【0029】
<<水素化反応>>
次に、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物は、上述のようにして得られた前駆体を、水素化することによって得られる。水素化は、水素化触媒の存在下で行うことができる。水素化触媒としては、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等から選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒が挙げられ、重合体鎖の切断を防止し、低温・低圧で水素化可能であることから、ニッケルを含む触媒を用いることが好ましい。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能である。また、水素化反応は有機溶媒中で行うのが好ましい。
【0030】
不均一系触媒は、金属又は金属化合物のままで、或いは、適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、たとえば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素、フッ化カルシウム等が挙げられる。触媒の担持量は、通常0.1質量%以上60質量%以下、好ましくは1質量%以上50質量%以下の範囲である。担持型触媒としては、たとえば、比表面積が100m/g以上500m/g以下であり、平均細孔径が100Å以上1000Å以下、好ましくは200Å以上500Å以下であるものが好ましい。上記の比表面積の値は窒素吸着量を測定し、BET式を用いて算出した値であり、平均細孔径の値は水銀圧入法により測定した値である。
【0031】
均一系触媒としては、たとえば、ニッケル、コバルト、チタン又は鉄化合物と有機金属化合物(たとえば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム、鉄、ニッケル等の遷移金属錯体触媒等を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタン又は鉄化合物としては、たとえば、これらの金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が挙げられる。有機リチウム化合物としては、リチウムボロンハイドライド等が挙げられる。
【0032】
遷移金属錯体触媒としては、たとえば、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)鉄、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル等の遷移金属錯体が挙げられる。
【0033】
これらの水素化触媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。水素化触媒の使用量は、重合体100質量部に対して、通常0.01質量部以上100質量部以下、好ましくは0.05質量部以上50質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上30質量部以下である。
【0034】
水素化反応温度は、通常0℃以上250℃以下であり、好ましくは50℃以上200℃以下、より好ましくは80℃以上180℃以下である。上記温度範囲であるときに水素化率が高くなり、分子切断も減少する。また水素圧力は、ゲージ圧で、通常0.1MPa以上30MPa以下、好ましくは1MPa以上20MPa以下、より好ましくは2MPa以上10MPa以下であると、水素化率が高くなり、分子鎖切断も減少し、操作性にも優れる。水素化反応の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率が、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上となるようにする。
【0035】
なお、ブロック重合体の水素添加物の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、水素化反応前後に1H−NMRスペクトルを測定し、水素化反応前後での主鎖及び側鎖部分の炭素−炭素不飽和結合に対応するシグナルの積分値の減少量を求めることにより、算出することができる。
【0036】
(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物は、水素化触媒及び/又は重合触媒を、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含む反応溶液からたとえば濾過、遠心分離等の方法により除去した後、反応溶液から得られる。
【0037】
なお、上記ではアミン変性反応を行った後、水素化反応を行う構成として説明したが、芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体に対して水素化反応を行った後に、アミン変性反応を行ってもよい。
【0038】
(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の具体例としては、アミン変性されたスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物、即ち、アミン変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS);アミン変性されたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物、即ち、アミン変性されたスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。中でも、アミン変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が好ましい。
【0039】
(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物は市販されており、その具体例としては、旭化成ケミカルズ株式会社製タフテック(登録商標)MP10、JSR株式会社製ダイナロン(登録商標)8630P等が挙げられる。
【0040】
(シール剤)
本発明のシール剤は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなる。
なお、シール剤には、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物以外の任意の重合体が含まれていてもよい。
【0041】
また、(A)共役ジエン重合体の配合量は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の合計量に対して、好ましくは37質量%以上80質量%以下、より好ましくは45質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは48質量%以上70質量%以下である。(A)共役ジエン重合体の配合量を上記範囲の上限値以下とすることにより、得られるシール剤層の高温耐久性が過度に悪化する、という現象を抑えることができる。また、(A)共役ジエン重合体の配合量を上記範囲の下限値以上とすることにより、得られるシール剤層の剥離強度が過度に低下する、という現象を抑えることができる。
【0042】
また、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の配合量は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の合計量に対して、好ましくは3質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは7質量%以上20質量%以下である。(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の配合量を上記範囲の上限値以下とすることにより、得られるシール剤層の柔軟性が過度に低下する、即ち、シール性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。また、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の配合量を上記範囲の下限値以上とすることにより、得られるシール剤層の絶縁ガスケットに対する密着性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。
【0043】
また、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の配合量は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の合計量に対して、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは15質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上45質量%以下である。(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の配合量を上記範囲の上限値以下とすることにより、得られるシール剤層の柔軟性が過度に低下する、即ち、シール性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。また、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の配合量を上記範囲の下限値以上とすることにより、得られるシール剤層の絶縁ガスケットに対する密着性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。
【0044】
また、本発明のシール剤は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物の他に、さらに(D)無機フィラーを含むことが好ましい。
【0045】
<(D)無機フィラー>
(D)無機フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等を用いることができる。ここで、カーボンブラックの具体例としては、ファーネスブラック;チャンネルブラック等が挙げられる。また、グラファイトの具体例としては、鱗片状の天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。これらの(D)無機フィラーは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
シール剤中の(D)無機フィラーの配合量は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなる重合体成分(以下、「重合体成分」ということがある。)の固形分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である。(D)無機フィラーの配合量を上記範囲の上限値以下とすることにより、絶縁性が過度に低下する、という現象を抑えることができる。また、(D)無機フィラーの配合量を上記範囲の下限値以上とすることにより、得られるシール剤層の塗りムラの視認が過度に困難となる、という現象を抑えることができる。
なお、シール剤が任意の重合体を更に含有する場合には、上記「重合体成分」は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物および任意の重合体となる。
【0047】
<各種配合剤>
本発明のシール剤は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物および必要に応じて用いられる(D)無機フィラーの他に、樹脂工業分野で通常使用される安定剤、分散剤、紫外線吸収剤等の各種配合剤を含有し得る。
【0048】
安定剤の具体例としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。これらの安定剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。シール剤中の安定剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、上記重合体成分100質量部に対して、通常0.001質量部以上10質量部以下である。
【0049】
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が例示される。これらの中でも、非イオン性化合物を用いることが好ましく、非イオン性化合物の中でも、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0050】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル等の有機物、又は微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物を用いることができる。シール剤中の紫外線吸収剤の含有割合は、紫外線による劣化を防ぐ観点から、上記重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上2質量部以下である。
【0051】
(シール剤組成物)
本発明のシール剤組成物は、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物、必要に応じて用いられる(D)無機フィラー及び各種配合剤等を含有してなるシール剤を有機溶媒に溶解してなる。また、シール剤組成物は、有機溶媒にシール剤が固形分濃度にて1質量%以上20質量%以下となるように溶解してなることが好ましい。
【0052】
有機溶媒中のシール剤の固形分濃度が上記範囲の上限値以下であることにより、シール剤組成物の粘度が高くなりすぎて塗膜の厚みが均一にならない、という現象を抑えることができる。また、有機溶媒中のシール剤の固形分濃度が上記範囲の下限値以上であることにより、過度に薄い塗膜となる、という現象を抑えることができる。
【0053】
シール剤組成物に用いられる有機溶媒は、常温または加温下でシール剤中の重合体成分を溶解し得る有機溶媒であり、特定の有機溶媒に限定されない。当該有機溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ノナン、デカン、デカリン、テトラリン、ドデカン、などの飽和脂肪族および脂環式炭化水素化合物;ガソリン、工業用ガソリンなどの炭化水素混合物;等が挙げられる。
【0054】
シール剤組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の手順により製造することができる。まず、重合体成分を有機溶媒に溶解し、次いで必要に応じて未溶解物をフィルターなどにより除去する。使用するフィルターの具体例は、糸状の繊維、金属などを網目状に織ったもの、微細な細穴を面状物に穿設加工したもの等である。次に、得られた溶液に、必要に応じて(D)無機フィラーを分散させ、更に必要に応じて各種配合剤を溶解または分散させる。更に、必要に応じて溶液に含まれる気泡を除去するために、脱泡を行う。脱泡方法としては、真空法、超音波法等が挙げられる。
【0055】
(非水系電解液を用いた電気化学デバイス)
本発明のシール剤及びシール剤組成物は、非水系電解液を用いた電気化学デバイスに用いることができる。電気化学デバイスとしては、リチウムイオン電池等の二次電池、電界コンデンサー、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどの電気電子部品等が挙げられる。
具体的には、本発明のシール剤またはシール剤組成物を用いた電気化学デバイスとしては、開口部を有し、且つ、発電要素を収納した容器と、シール剤を介して容器の開口部に装着された絶縁ガスケット、或いは、容器の開口部に装着された封口体にシール剤を介して取り付けられた絶縁ガスケットとを備え、シール剤が本発明のシール剤またはシール剤組成物を用いて形成したシール剤層である電気化学デバイスが挙げられる。
なお、高いシール性能を得る観点からは、シール剤を用いて取り付けられる絶縁ガスケットは、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)よりなることが好ましい。
【0056】
例えば、リチウムイオン電池に本発明のシール剤及びシール剤組成物を用いる場合には、発電要素を収納した金属容器の開口部に装着された絶縁ガスケットと金属容器との間、および/または、絶縁ガスケットと封口体との間に、上述のシール剤またはシール剤組成物で形成されたシール剤の層(シール剤層)を設けることができる。リチウムイオン電池に用いる金属容器の素材、発電要素、絶縁ガスケットは、一般に使用されているものでよい。また、このリチウムイオン電池は、その発電要素を金属容器に収納され密閉されたものである。
発電要素とは、電解質、正極用および負極用の活物質、セパレーターなどである。電解質は、非水系電解液を用いたものであり、非水系電解液は、支持電解質と非水系電解液溶媒とからなる。
【0057】
非水系電解液を構成する支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4などのリチウム系化合物などのような水と反応して加水分解しやすい化合物が用いられている。また非水系電解液溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の可燃性有機化合物が用いられている。絶縁ガスケットとしては、TPCを用いるのが好ましい。
【0058】
<シール剤層の形成>
シール剤層は、例えば次の手順により形成することができる。まず、シール剤組成物を、金属容器表面および/または絶縁ガスケット表面に、エアー駆動の定量ディスペンサー、ローラーポンプ、ギアポンプ等の定量ポンプで所定量を送液し塗布する。塗布後、シール材組成物が片寄らないよう水平を維持した状態で自然乾燥を行い、有機溶媒を除去し薄層を形成する。本発明においては、絶縁ガスケットが、TPC等の極性の高い樹脂により構成されることが好ましい。
【0059】
なお、塗布に際しては、定量ポンプを用いる方法に限定されることはなく、少量であれば刷毛を用いて人手で行うことも可能である。また、乾燥に際しては、自然乾燥に代えて、加熱装置を用いた強制乾燥を行ってもよく、この場合には短時間での乾燥が可能となり工業的により適した工程とすることができる。
【0060】
加熱装置を用いる場合には、通常、30〜150℃程度で5〜180分間程度乾燥して有機溶媒を除去する。シール剤層中の有機溶媒の残留濃度は、上記有機溶媒の乾燥除去により、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以下とすることがさらに好ましく、0.5質量%以下とすることが特に好ましい。有機溶媒の乾燥温度が有機溶媒の沸点以上、または沸点近傍だと、発泡が起こり、表面に凹凸が生じ得るので、乾燥温度は有機溶媒の特性に応じて決定することが好ましい。乾燥温度を有機溶媒の沸点より好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上低い温度を目安として決定し、通常、シール剤組成物を30〜150℃の範囲で沸点を考慮して乾燥する。
【0061】
上述の方法で形成されるシール剤層の厚さは、金属容器と絶縁ガスケットの大きさにより任意に選択すれば良く、通常0.1μm以上1000μm以下である。シール剤層の厚さが上記範囲の上限値以下であることにより、シール剤層の形成が困難となる、という現象を抑えることができる。また、シール剤層の厚さが上記範囲の下限値以上であることにより、電解液の液漏れや水分の侵入の問題が生じたり、シール剤層が切断されてしまう、という現象を抑えることができる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特記しない限り質量基準である。実施例及び比較例において、濡れ性、剥離強度、柔軟性(耐屈曲性)、耐熱性および耐電解液性の判定は、以下のように行った。
【0063】
(濡れ性)
実施例および比較例において得られたシール剤組成物を厚さ2mmのTPC板(東レ・デュポン社製ハイトレル5557を射出成型してなる板)にギャップ250μmのドクターブレードでキャストし、80℃で20分間加熱乾燥させて、TPC板上にフィルムを形成した。形成したフィルムを目視にて観察し、形成したフィルムが全体に黒色に着色されている場合には○(良好)、部分的に透明になっている場合には×(不良)として、評価結果を表1に示した。ここで、フィルム全体が黒色に着色されている場合、フィルムが見かけの均一性を有しており、シール剤組成物がTPC板に対して優れた濡れ性を有することを示す。
【0064】
(剥離強度)
実施例および比較例において得られたシール剤組成物を、厚さ2mmのTPC板、ポリプロピレン(PP)板およびアルミ箔のそれぞれに対して、ギャップ250μmのドクターブレードでキャストし、80℃で20分間加熱乾燥させて、TPC板上、PP板上およびアルミ箔上にそれぞれフィルムを形成し、試験片を得た。次に、それぞれの試験片の剥離強度をそれぞれ90°剥離法により測定した。具体的には、試験片をそれぞれ幅18mmのリボン状に切断し、粘着剤付きのアルミテープを貼り合せて、引っ張り試験器を用いて剥離強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0065】
(柔軟性)
実施例および比較例で得られたシール剤組成物を厚さ11μmのアルミ箔にギャップ250μmのドクターブレードでキャストし、80℃で20分間加熱乾燥させて、アルミ箔上にフィルムを形成し、試験片を得た。次に、試験片のフィルムが形成された面を外側にして−30℃において折り曲げ、折り曲げた部分を目視にて観察した。折り曲げた部分についてひび割れ、剥離等が観察されなかった場合には○(良好)、ひび割れ、剥離等が観察された場合には×(不良)として、評価結果を表1に示した。
【0066】
(耐熱性)
実施例および比較例で得られたシール剤組成物を厚さ2mmのアルミ箔にギャップ250μmのドクターブレードでキャストし、80℃で20分間加熱乾燥させて、アルミ箔上にフィルムを形成し、試験片を得た。次に、試験片のアルミ箔側を金属線で垂直に固定し、150℃のオーブンで1時間加熱した。加熱後のフィルムの外観を目視にて観察した。フィルムに変形が見られないものを○(良好)、変形が見られたものを×(不良)として、評価結果を表1に示した。
【0067】
(耐電解液性)
実施例および比較例において得られたシール剤組成物を厚さ2mmのアルミ箔にギャップ250μmのドクターブレードでキャストし、80℃で20分間加熱乾燥させて、アルミ箔上にフィルムを形成し、試験片を得た。試験片を非水系電解液に浸漬(80℃、100時間)し、取り出したフィルムの表面に付着した液滴を除去した後で秤量し、乾燥重量から増えた割合を膨潤度として表1に示した。膨潤度の値が低いほど、耐電解液性に優れることを示す。非水系電解液としては、非水系電解液溶媒(EC/DEC=1/2(体積比))に支持電解質としてのLiPF6を1モル/L溶解させたものを用いた。
【0068】
(重合例1)
10リットルの攪拌機付きオートクレーブにトルエン5000g、ブタジエン810gを加え、十分攪拌した後、ジエチルアルミニウムクロライド0.27mol、塩化クロム・ピリジン錯体0.6mmolを加え、60℃で3時間攪拌しながら重合した。その後、メタノール100mlを加えて重合を停止した。重合停止後、室温まで冷却した後、重合液を取り出した。得られた重合液を水蒸気凝固した後、60℃で48時間真空乾燥して固体状のポリマー(1)780gを得た。得られたポリマー(1)のMwは390,000であった。
【0069】
(重合例2)
10リットルの攪拌機付きオートクレーブにトルエン5000g、ブタジエン810gを加え、十分攪拌した後、ジエチルアルミニウムクロライド0.20mol、塩化クロム・ピリジン錯体0.6mmolを加え、60℃で3時間攪拌しながら重合した。その後、メタノール100mlを加えて重合を停止した。重合停止後、室温まで冷却した後、重合液を取り出した。得られた重合液を水蒸気凝固した後、60℃で48時間真空乾燥して固体状のポリマー(2)760gを得た。得られたポリマー(2)のMwは520,000であった。
【0070】
(実施例1)
(A)共役ジエン重合体として、重合例1で得られたポリマー(1)を55部、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体として、スチレン含有量15%、Mw=32000のSISを15部、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物として、アミン変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(タフテックMP10、旭化成ケミカルズ社製)を30部、(D)無機フィラーとしてカーボンブラック(一次粒径10nmのファーネスブラック)を5部および有機溶媒(キシレン)を攪拌翼付きフラスコで50℃に加温しながら混合し、固形分濃度5%の均一な溶液(シール剤組成物)を得た。
【0071】
(実施例2)
(A)共役ジエン重合体として、重合例1で得られたポリマー(1)を65部、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体として、実施例1と同様のSISを13部、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物として、アミン変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(タフテックMP10、旭化成ケミカルズ社製)を22部、(D)無機フィラーとして実施例1と同様のカーボンブラック5部および有機溶媒(キシレン)を攪拌翼付きフラスコで50℃に加温しながら混合し、固形分濃度10%の均一な溶液(シール剤組成物)を得た。
【0072】
(実施例3)
(A)共役ジエン重合体として、重合例2で得られたポリマー(2)を60部、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体として、実施例1と同様のSISを10部、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物として、アミン変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(タフテックMP10、旭化成ケミカルズ社製)を30部、(D)無機フィラーとして実施例1と同様のカーボンブラックを5部および有機溶媒(キシレン)を攪拌翼付きフラスコで50℃に加温しながら混合し、固形分濃度12%の均一な溶液(シール剤組成物)を得た。
【0073】
(実施例4)
(A)共役ジエン重合体として、重合例1で得られたポリマー(1)を40部および重合例2で得られたポリマー(2)を30部、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体として、実施例1と同様のSISを15部、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物として、アミン変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(タフテックMP10、旭化成ケミカルズ社製)を15部、(D)無機フィラーとして実施例1と同様のカーボンブラックを5部および有機溶媒(キシレン)を攪拌翼付きフラスコで50℃に加温しながら混合し、固形分濃度12%の均一な溶液(シール剤組成物)を得た。
【0074】
(比較例1)
(A)共役ジエン重合体として、実施例1と同様の1,3−ブタジエン重合体(ポリマー(1))を55部、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体として、実施例1と同様のSISを15部、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物に代えて、酸変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物(タフテックMP1911、旭化成ケミカルズ社製)を30部、(D)無機フィラーとして実施例1と同様のカーボンブラックを5部および有機溶媒(キシレン)を攪拌翼付きフラスコで50℃に加温しながら混合し、固形分濃度13%の均一な溶液(シール剤組成物)を得た。
【0075】
(比較例2)
(A)共役ジエン重合体として、実施例1と同様の1,3−ブタジエン重合体(ポリマー(1))を90部、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体に代えて、芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物(タフテックH1041、旭化成ケミカルズ社製)を10部、(D)無機フィラーとして実施例1と同様のカーボンブラックを5部および有機溶媒(キシレン)を攪拌翼付きフラスコで50℃に加温しながら混合し、固形分濃度10%の均一な溶液(シール剤組成物)を得た。なお、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物は、用いなかった。
【0076】
(比較例3)
(A)共役ジエン重合体として、実施例1と同様の1,3−ブタジエン重合体(ポリマー(1))を20部、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体として、実施例1と同様のSISを15部、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物に代えて、酸変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物(タフテックMP1911、旭化成ケミカルズ社製)を65部、(D)無機フィラーとして実施例1と同様のカーボンブラックを5部および有機溶媒(キシレン)を攪拌翼付きフラスコで50℃に加温しながら混合し、固形分濃度15%の均一な溶液(シール剤組成物)を得た。
【0077】
(比較例4)
(A)共役ジエン重合体として、重合例2で得られたポリマー(2)を50部、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体に代えて、芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物(タフテックH1041、旭化成ケミカルズ社製)を50部、(D)無機フィラーとして実施例1と同様のカーボンブラックを5部および有機溶媒(キシレン)を攪拌翼付きフラスコで50℃に加温しながら混合し、固形分濃度15%の均一な溶液(シール剤組成物)を得た。なお、(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物は、用いなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、(A)共役ジエン重合体、(B)芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体および(C)アミン変性された芳香族ビニル−共役ジエンブロック重合体の水素添加物を含有してなるシール剤を用いたシール剤組成物は、濡れ性に優れ、このシール剤組成物から得られるシール剤層の剥離強度、柔軟性、耐熱性および耐電解液性は、いずれも良好であった。