特許第6788987号(P6788987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6788987管理装置、これを備える管理システム、及び、管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788987
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】管理装置、これを備える管理システム、及び、管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   G05B23/02 V
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-68601(P2016-68601)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-182450(P2017-182450A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山上 俊
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−008046(JP,A)
【文献】 特開2013−250695(JP,A)
【文献】 特開2003−233414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の運転パターンのうちのいずれかを加熱運転ごとに選択しながら前記加熱運転を繰り返し行うバッチ運転を行う加熱設備を監視する管理装置であって、
前記加熱設備におけるプロセス値を入力可能な入力部と、
入力される前記プロセス値を蓄積的に記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記プロセス値から、前記バッチ運転において前記加熱運転が行われた加熱運転区間を抽出する区間抽出部と、
前記区間抽出部で抽出された前記加熱運転区間における前記プロセス値の経時的変化であるプロセス値変化パターンを特定する区間特定部と、
前記区間特定部により特定された各プロセス値変化パターンに基づいて、所定期間の前記バッチ運転の間の各加熱運転に対応する各加熱運転区間を、同種の前記プロセス値変化パターンを有するものごとにグループ分けして、複数のグループに分類する区間分類部と、を備え、
前記入力部は、前記加熱設備に投入される投入エネルギー量も入力可能であり、
前記記憶部は、入力される前記投入エネルギー量も蓄積的に記憶し、
分類された複数の前記グループごとに、当該グループに属する各加熱運転区間における前記プロセス値変化パターンに基づき、当該グループにおける平均プロセス値変化パターンを生成し、且つ、当該グループに属する各加熱運転区間における前記投入エネルギー量のプロファイルに基づき、当該グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルを生成する判定基準生成部と、
前記区間抽出部で抽出された判定対象とする前記加熱運転区間である判定対象区間について、前記判定対象区間における前記プロセス値変化パターンと複数の前記グループのそれぞれにおける前記平均プロセス値変化パターンとの比較に基づいて、複数の前記グループのうちで前記判定対象区間が属する所属グループを判定する分類判定部と、
前記判定対象区間における前記投入エネルギー量のプロファイルと前記分類判定部で判定された前記所属グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルとの比較に基づいて、前記加熱設備の状態を判定する状態判定部と、を備える管理装置。
【請求項2】
前記区間特定部は、前記プロセス値変化パターンとして、前記プロセス値の定常値、前記定常値の継続時間、前記定常値に至るまでの前記プロセス値の増加率、及び、前記定常値に至るまでの時間、の少なくともいずれか一つを特定する請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記区間特定部は、移動平均法に基づく平滑化処理を行って前記プロセス値変化パターンを特定する請求項1又は2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記区間分類部におけるグループ分けの基準が変更可能である請求項1〜3のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記プロセス値の経時的変化を示すグラフを表示する表示体に対する画像処理によって前記プロセス値を取得し、前記入力部に前記プロセス値を入力する画像処理器を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記判定基準生成部は、各加熱運転区間における前記投入エネルギー量の変化パターンを各加熱運転区間における前記投入エネルギー量のプロファイルとして、各加熱運転区間における前記投入エネルギー量の変化パターンに基づいて、各グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルとしての平均投入エネルギー量変化パターンを生成し、
前記状態判定部は、前記判定対象区間における前記投入エネルギー量の変化パターンと前記分類判定部で判定された前記所属グループにおける前記平均投入エネルギー量変化パターンとに基づいて、前記加熱設備の状態を判定する請求項1〜5のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の管理装置と、少なくとも一つの前記加熱設備と、を備える管理システムであって、
前記加熱設備の側から、ネットワークを介して、取得した前記プロセス値を前記管理装置の前記入力部に入力可能である管理システム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の管理装置と、少なくとも一つの前記加熱設備と、を備える管理システムであって、
前記加熱設備の側から、ネットワークを介して、取得した前記プロセス値を前記管理装置の前記入力部に入力可能であり、
前記管理装置は、前記ネットワークを介して、前記状態判定部の判定結果に応じて、前記加熱設備の側に警報を通知する管理システム。
【請求項9】
複数種の運転パターンのうちのいずれかを加熱運転ごとに選択しながら前記加熱運転を繰り返し行うバッチ運転を行う加熱設備を監視する管理方法であって、
前記加熱設備におけるプロセス値及び前記加熱設備に投入される投入エネルギーを取得するステップと、
取得した前記プロセス値及び前記投入エネルギーを蓄積的に記憶するステップと、
記憶された前記プロセス値から、前記バッチ運転において前記加熱運転が行われた加熱運転区間を抽出するステップと、
抽出された前記加熱運転区間における前記プロセス値の経時的変化であるプロセス値変化パターンを特定するステップと、
特定された各プロセス値変化パターンに基づいて、所定期間の前記バッチ運転の間の各加熱運転に対応する各加熱運転区間を、同種の前記プロセス値変化パターンを有するものごとにグループ分けして、複数のグループに分類するステップと、
分類された複数の前記グループごとに、当該グループに属する各加熱運転区間における前記プロセス値変化パターンに基づき、当該グループにおける平均プロセス値変化パターンを生成し、且つ、当該グループに属する各加熱運転区間における前記投入エネルギー量のプロファイルに基づき、当該グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルを生成するステップと、
抽出された判定対象とする前記加熱運転区間である判定対象区間について、前記判定対象区間における前記プロセス値変化パターンと複数の前記グループのそれぞれにおける前記平均プロセス値変化パターンとの比較に基づいて、複数の前記グループのうちで前記判定対象区間が属する所属グループを判定するステップと、
前記判定対象区間における前記投入エネルギー量のプロファイルと判定された前記所属グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルとの比較に基づいて、前記加熱設備の状態を判定するステップと、を有する管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の運転パターンのうちのいずれかを加熱運転ごとに選択しながら前記加熱運転を繰り返し行うバッチ運転を行う加熱設備を監視する管理装置、この管理装置と加熱設備とを備える管理システム、及び、管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2011−59790号公報(特許文献1)には、設備の異常を早期に検知するために、センサからの観測データを取得して正常なデータからなる学習データをモデル化し、このモデル化した学習データと観測データとの類似度から観測データの異常の有無を検知する方法が記載されている。つまり、観測データに対し閾値を設定し、閾値に基づき異常の有無を検知するのではなく、観測データの蓄積によりモデルを作成する学習データから観測データの通常の状態を推測し、通常の状態から外れているか否かで観測データの異常の有無を検知することで、早期の異常の検知が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−59790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような管理方法を、加熱運転が繰り返し行われるバッチ運転を行う加熱設備に適用する場合、例えば、加熱運転ごとにその加熱運転の間の観測データを蓄積して、加熱運転における観測データの通常の状態をモデル化し、このモデル化したデータと観測データとを比較して異常を検知することが考えられる。しかし、加熱運転における運転パターンが複数種存在し、バッチ運転における各回の加熱運転で、実行される運転パターンが異なるような場合、観測データのモデル化に当たっては、複数種の運転パターンごとに加熱運転の観測データを蓄積することが必要となる。そして、そのためには、各加熱運転における観測データが複数種の運転パターンのいずれに属するかを識別しなくてはならない。
【0005】
加熱運転における観測データの識別の方法としては、各運転パターンについて識別条件を定めておき、観測データがいずれの運転パターンの識別条件に該当するかにより識別する方法が考えられる。しかし、この方法であるとその加熱設備の運転結果に基づいて細かな条件設定をしなければならず、また、加熱設備が異なれば識別条件も異ならせなくてはならず複数の加熱設備を対象とする場合には各加熱設備について識別条件を設定しなければならないなど、汎用性がなく手間である。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱運転における運転パターンの識別を汎用性高く行うことができる管理装置、管理システム、及び、管理方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る管理装置の特徴構成は、
複数種の運転パターンのうちのいずれかを加熱運転ごとに選択しながら前記加熱運転を繰り返し行うバッチ運転を行う加熱設備を監視する管理装置であって、
前記加熱設備におけるプロセス値を入力可能な入力部と、
入力される前記プロセス値を蓄積的に記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記プロセス値から、前記バッチ運転において前記加熱運転が行われた加熱運転区間を抽出する区間抽出部と、
前記区間抽出部で抽出された前記加熱運転区間における前記プロセス値の経時的変化であるプロセス値変化パターンを特定する区間特定部と、
前記区間特定部により特定された各プロセス値変化パターンに基づいて、所定期間の前記バッチ運転の間の各加熱運転に対応する各加熱運転区間を、同種の前記プロセス値変化パターンを有するものごとにグループ分けして、複数のグループに分類する区間分類部と、を備え
前記入力部は、前記加熱設備に投入される投入エネルギー量も入力可能であり、
前記記憶部は、入力される前記投入エネルギー量も蓄積的に記憶し、
分類された複数の前記グループごとに、当該グループに属する各加熱運転区間における前記プロセス値変化パターンに基づき、当該グループにおける平均プロセス値変化パターンを生成し、且つ、当該グループに属する各加熱運転区間における前記投入エネルギー量のプロファイルに基づき、当該グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルを生成する判定基準生成部と、
前記区間抽出部で抽出された判定対象とする前記加熱運転区間である判定対象区間について、前記判定対象区間における前記プロセス値変化パターンと複数の前記グループのそれぞれにおける前記平均プロセス値変化パターンとの比較に基づいて、複数の前記グループのうちで前記判定対象区間が属する所属グループを判定する分類判定部と、
前記判定対象区間における前記投入エネルギー量のプロファイルと前記分類判定部で判定された前記所属グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルとの比較に基づいて、前記加熱設備の状態を判定する状態判定部と、を備える点にある。
【0008】
上記構成によれば、予め識別条件を定めることなく、単に、各加熱運転区間を同種のプロセス値変化パターンを有するものごとにグループ分けすることで、運転パターンの識別を可能にしてある。つまり、同種の運転パターンであればその運転パターンで運転した各加熱運転におけるプロセス値変化パターンは同種のプロセス値変化パターンを示すこととなり、また、異なる運転パターンで運転を行えば、その加熱運転におけるプロセス値変化パターン(例えば温度)は異なるものとなるため、プロセス値変化パターンに基づいて運転パターンの区別が可能となる。そのため、同種のプロセス値変化パターンを有するもので各加熱運転区間を分類すれば、それぞれ異なる種類のプロセス値変化パターンを有する複数のグループが形成され、その各グループは複数種の運転パターンのいずれかに対応するグループとなる。このように、上記構成によれば、加熱設備ごとに識別条件や方法を変更する必要なく、加熱運転における運転パターンごとに各加熱運転区間を識別することができ、その結果、運転パターンごとに各加熱運転区間のプロセス値変化パターンを蓄積して記憶することができる。したがって、上記構成によれば、加熱運転における運転パターンの識別を汎用性高く行うことができる。
また、この構成によれば、各グループにおける平均プロセス値変化パターンを判定対象区間がいずれのグループ(運転パターン)に属するかの判定基準とし、各グループにおける平均的な投入エネルギー量のプロファイルを加熱設備の状態を判定するための判定基準とすることで、加熱設備の状態の異常を早期に検知することが可能となる。
【0009】
本発明に係る管理装置の更なる特徴構成は、前記区間特定部は、前記プロセス値変化パターンとして、前記プロセス値の定常値、前記定常値の継続時間、前記定常値に至るまでの前記プロセス値の増加率、及び、前記定常値に至るまでの時間、の少なくともいずれか一つを特定する点にある。
【0010】
この構成によれば、簡易な基準により運転パターンの識別が可能となる。
【0011】
本発明に係る管理装置の更なる特徴構成は、前記区間特定部は、移動平均法に基づく平滑化処理を行って前記プロセス値変化パターンを特定する点にある。
【0012】
この構成によれば、不定期に生じ得る外乱の影響をプロセス値変化パターンから除去することができる。
【0013】
本発明に係る管理装置の更なる特徴構成は、前記区間分類部におけるグループ分けの基準が変更可能である点にある。
【0014】
プロセス値変化パターンにはある程度の誤差が生じ得るものであるが、この構成によれば、その誤差にあわせてグループ分けの基準を変更することで、運転パターンや加熱設備ごとの誤差の大きさに対応することが可能となる。
【0015】
本発明に係る管理装置の更なる特徴構成は、前記プロセス値の経時的変化を示すグラフを表示する表示体に対する画像処理によって前記プロセス値を取得し、前記入力部に前記プロセス値を入力する画像処理器を備える点にある。
【0016】
プロセス値を取得する際、必ずしもデジタルデータで取得されず、加熱設備によっては、例えばペンレコーダーにより表示体としての紙等の印刷物にプロセス値の経時的変化が記録されているように、アナログなデータでプロセス値が記録されている場合もあるところ、この構成によれば、表示体に記録されたアナログなデータであっても、画像処理器によりデジタルデータに変換でき、簡便なデータ取得が可能となる。
【0019】
本発明に係る管理装置の更なる特徴構成は、前記判定基準生成部は、各加熱運転区間における前記投入エネルギー量の変化パターンを各加熱運転区間における前記投入エネルギー量のプロファイルとして、各加熱運転区間における前記投入エネルギー量の変化パターンに基づいて、各グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルとしての平均投入エネルギー量変化パターンを生成し、前記状態判定部は、前記判定対象区間における前記投入エネルギー量の変化パターンと前記分類判定部で判定された前記所属グループにおける前記平均投入エネルギー量変化パターンとに基づいて、前記加熱設備の状態を判定する点にある。
【0020】
この構成によれば、確実性高く加熱設備の状態を判定することができる。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る管理システムの特徴構成は、
本発明に係るいずれかの管理装置と、少なくとも一つの前記加熱設備と、を備える管理システムであって、
前記加熱設備の側から、ネットワークを介して、取得した前記プロセス値を前記管理装置の前記入力部に入力可能である点にある。
【0022】
この構成によれば、ネットワークを介して簡易にプロセス値を管理装置に入力することができる。
【0023】
上記目的を達成するための本発明に係る管理システムの特徴構成は、
本発明に係る管理装置と、少なくとも一つの前記加熱設備と、を備える管理システムであって、
前記加熱設備の側から、ネットワークを介して、取得した前記プロセス値を前記管理装置の前記入力部に入力可能であり、
前記管理装置は、前記ネットワークを介して、前記状態判定部の判定結果に応じて、前記加熱設備の側に警報を通知する点にある。
【0024】
この構成によれば、ネットワークを介して簡易にプロセス値を管理装置に入力することができ、且つ、加熱設備の側に加熱設備の異常を素早く通知することができる。
【0025】
上記目的を達成するための本発明に係る管理方法の特徴構成は、
複数種の運転パターンのうちのいずれかを加熱運転ごとに選択しながら前記加熱運転を繰り返し行うバッチ運転を行う加熱設備を監視する管理方法であって、
前記加熱設備におけるプロセス値及び前記加熱設備に投入される投入エネルギー量を取得するステップと、
取得した前記プロセス値及び前記投入エネルギー量を蓄積的に記憶するステップと、
記憶された前記プロセス値から、前記バッチ運転において前記加熱運転が行われた加熱運転区間を抽出するステップと、
抽出された前記加熱運転区間における前記プロセス値の経時的変化であるプロセス値変化パターンを特定するステップと、
特定された各プロセス値変化パターンに基づいて、所定期間の前記バッチ運転の間の各加熱運転に対応する各加熱運転区間を、同種の前記プロセス値変化パターンを有するものごとにグループ分けして、複数のグループに分類するステップと、
分類された複数の前記グループごとに、当該グループに属する各加熱運転区間における前記プロセス値変化パターンに基づき、当該グループにおける平均プロセス値変化パターンを生成し、且つ、当該グループに属する各加熱運転区間における前記投入エネルギー量のプロファイルに基づき、当該グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルを生成するステップと、
抽出された判定対象とする前記加熱運転区間である判定対象区間について、前記判定対象区間における前記プロセス値変化パターンと複数の前記グループのそれぞれにおける前記平均プロセス値変化パターンとの比較に基づいて、複数の前記グループのうちで前記判定対象区間が属する所属グループを判定するステップと、
前記判定対象区間における前記投入エネルギー量のプロファイルと判定された前記所属グループにおける平均的な前記投入エネルギー量のプロファイルとの比較に基づいて、前記加熱設備の状態を判定するステップと、を有する点にある。
【0026】
この構成によれば、本発明に係る管理装置により得られる作用効果を好適に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】管理システムの概略構成図
図2】判定基準生成処理のフローチャート
図3】判定処理のフローチャート
図4】加熱設備における温度とガス流量の時間変化の一例を示す図
図5】判定処理における判定方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る管理装置、管理システム、及び管理方法の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る管理システム1を示し、管理システム1では、複数の加熱設備10と、加熱設備10からネットワーク20を介して送信されるデータに基づいてこれらを監視する管理装置30とを備える。以下、本実施形態に係る管理システム1について具体的に説明する。
【0029】
加熱設備10は、例えば、加熱炉、ボイラ、反応釜等であり、それぞれ加熱運転が繰り返し行われるバッチ運転を行うものである。具体的には、これらは、バッチ運転における加熱運転では、例えば図4に示すように、設定温度や運転時間等の運転条件が異なる複数種の運転パターンのうちのいずれかが加熱運転ごとに選択されて行われるようになっている。そして、各加熱設備は、その運転中にプロセス値(例えば加熱炉内の温度等)を検出しながら、その検出値が目標とする値に達するようにガス等のエネルギーが投入され、これにより、所望の加熱状態を得るようになっている。また、加熱設備10では、バッチ運転において加熱設備10に投入される投入エネルギー量(例えばガスの流量等)と、これに対応する加熱設備10内のプロセス値と、が図示しない計測機器(温度センサや流量計など)により定期的に取得されて、計測機器と接続された通信機器によって、ネットワーク20を介して、取得した投入エネルギー量とプロセス値とが管理装置30に送信されるようになっている。この場合、加熱設備10は、投入エネルギー量とプロセス値とを取得するごとにこれらを管理装置30に送信するものでもよく、また、現場用管理装置に一定期間(例えば一月)分の投入エネルギー量とプロセス値とを蓄積的に記憶しておき、その期間内で取得した投入エネルギー量とプロセス値とを定期的にまとめて管理装置30に送信するようにしてもよい。
【0030】
管理装置30は、各加熱設備10の側からそれぞれ送信される計測データを収集し、加熱設備10ごとにその分析を行う。具体的には、図1に示すように、管理装置30は、データをネットワーク20を介して送受信可能な通信機器等からなる通信部31と、例えばハードディスクからなり各種データを記憶する記憶部32と、CPUからなり各種のデータ処理を行う演算部33と、を備える。また、管理装置30は、加熱設備10の保守管理のためのWebサービスを提供し、演算部33による判定結果の通知を行ったり、利用者からのアクセスに応じて利用者に各種のデータを提示するなど、加熱設備10の保守管理に関する各種機能を利用者に提供する。
【0031】
通信部31は、本実施形態では特に、加熱設備10からの投入エネルギー量とプロセス値とを入力可能な入力部として機能し、投入エネルギー量とプロセス値とを取得する。また、管理装置30は、この通信部31により、ネットワーク20を介して、後述する状態判定部39の判定結果に応じて、加熱設備10の側に警報を通知可能になっている。
【0032】
記憶部32は、投入エネルギー量とプロセス値とを加熱設備10の識別情報及び時間と対応付けて蓄積的に記憶するデータベースを備える。つまり、データベースには、投入エネルギー量とプロセス値との経時的変化が記憶される。このデータベースには演算部33による分析結果も記憶される。なお、管理装置30において、外部サーバを記憶部として、その外部サーバに投入エネルギー量やプロセス値等を記憶するようにしてもよい。
【0033】
演算部33は、加熱設備10の投入エネルギー量及びプロセス値の運転データの蓄積により通常運転時の運転データのモデルを作成し、通常の状態を示すモデル化した運転データと現実の運転データとを比較して、その乖離度から加熱設備10の状態を判定する。そして、特に、加熱運転における運転パターンが複数種存在し、バッチ運転における各回の加熱運転で実行される運転パターンが異なり得る加熱設備10を対象としており、この場合には運転パターンごとに通常時における運転データをモデル化する必要があり、そのためには運転パターンごとに運転データを識別して蓄積する必要があるところ、本実施形態の管理装置30では、各加熱運転における運転データが複数種の運転パターンのいずれに属するかを識別可能にしてあり、各加熱設備10について、運転パターンごとに通常時における運転データのモデル化が可能になっている。
【0034】
そして、そのために、演算部33は、図1に示すように、バッチ運転において加熱運転が行われた加熱運転区間を抽出する区間抽出部34と、区間抽出部34で抽出された各加熱運転区間におけるプロセス値変化パターンを特定する区間特定部35と、区間特定部35で特定されたプロセス値変化パターンに基づいて各加熱運転区間を各運転パターンに対応する複数のグループに分類する区間分類部36と、区間分類部36において分類されたグループごとに、加熱設備10の状態を判定するための判定基準を生成する判定基準生成部37と、判定対象とする加熱運転区間である判定対象区間について、判定基準生成部37で生成された判定基準に基づいて判定対象区間が属する所属グループを判定する分類判定部38と、判定基準生成部37で生成された判定基準に基づいて加熱設備10の状態を判定する状態判定部39と、判定結果に関する情報を生成する警報情報生成部40と、を機能部として備える。以下に、演算部33の各機能部の行う処理について説明する。
【0035】
区間抽出部34は、記憶部32に記憶されたプロセス値や投入エネルギー量の変化パターン(最大値、最小値や極小値、極大値、傾き、積分値などの個々の値や、増加傾向にある時間や定常状態にある時間などの時間、グラフの形状自体など)に基づいて、蓄積的に記憶されたプロセス値及び投入エネルギー量のデータからバッチ運転において加熱運転が行われた加熱運転区間を抽出する。その抽出方法としては、例えば、プロセス値について、加熱運転区間の開始時点や終了時点と判定する条件を定めておき、プロセス値のデータを参照して、各条件を充たした時点を加熱運転区間の開始時点や終了時点と判定して、加熱運転区間を抽出することが挙げられる。例えば、具体的には、プロセス値のみに着目して、プロセス値が上昇開始した時点を加熱運転区間の開始時点とし、そこからある設定時間経過した時点を加熱運転区間の終了時点としたり、プロセス値が一度設定プロセス値に達した後下降を開始した時点を加熱運転の終了時点としたりすることが挙げられる。その他、投入エネルギー量に着目して、投入エネルギー量が0から増加し始めた時点を加熱運転区間の開始時点とし、投入エネルギー量が0に戻った時点を加熱運転区間の終了時点としたり、その他、プロセス値と投入エネルギー量との両者に着目して、両者のいずれか一方又は双方が加熱運転区間の開始時点や終了時点と判定する条件を充たすかから判断してもよい。
【0036】
区間特定部35は、区間抽出部34で抽出された加熱運転区間について、その区間におけるプロセス値及び投入エネルギー量のそれぞれの変化パターンを特定する。具体的には、例えば、プロセス値については、その区間におけるプロセス値のデータについて移動平均法に基づく平滑化処理を行って不定期に生じ得る外乱の影響を除去した上で、プロセス値の変化パターンとして、プロセス値の定常値、定常値の継続時間、定常値に至るまでのプロセス値の増加率、及び、定常値に至るまでの時間の4項目(又は、これらの少なくともいずれか一つ)を特定する。投入エネルギー量については、変化パターンとして、最大値や最小値、その区間における積分値(総投入エネルギー量)等を特定してもいいし、プロセス値と同様にして変化パターンを特定してもよく、また、グラフの形状自体などを投入エネルギー量の変化パターンとして特定するようにしてもよい。
【0037】
区間分類部36は、区間特定部35により特定された各加熱運転区間におけるプロセス値変化パターンに基づいて、所定期間のバッチ運転の間の各加熱運転に対応する各加熱運転区間を、プロセス値について同種の変化パターンを有するものごとにグループ分けして、複数のグループに分類する。具体的には、区間特定部35により特定された各加熱運転区間におけるプロセス値の定常値、定常値の継続時間、定常値に至るまでのプロセス値の増加率、及び、定常値に至るまでの時間に基づいて、これらが類似するものどうしを集めてグループ分けする。グループ分けは適宜の方法で行えばよく、例えば、あるグループに属する加熱運転区間と新たにグループ分けしようとする加熱運転区間とを対比して、比較する項目の値の差が所定値の範囲内にあるときその項目については同種と判定することとし、全項目について同種と判定された場合に、同種の変化パターンを有するとしてその加熱運転区間が属するグループに分類し、いずれかの項目が同種でなかった場合は異なるグループに属するとして、いずれかのグループに属すると判断されるまで、異なるグループに属する加熱運転区間と順次対比する。そして、いずれのグループにも属さないと判定されたときには、新たなグループを作成し、グループ分けしようとする加熱運転区間をその新たなグループに属するものとする。なお、本実施形態では、管理装置30に対する指示に応じて、又は自動的に、グループ分けの基準が変更可能となっており、グループ分けの基準を変更することで、運転パターンや加熱設備ごとの誤差の異なりに対応することが可能となる。自動的にグループ分けの基準を変更する場合には、例えば、プロセス値の変化パターンの揺らぎや誤差が大きい場合にグループ分けの基準を緩やかにすることが挙げられる。
【0038】
このように各加熱運転区間を同種のプロセス値の変化パターンを有するものごとにグループ分けすることで、運転パターンごとに各加熱運転区間を識別・分類することができる。つまり、同種の運転パターンであればその運転パターンで運転した各加熱運転におけるプロセス値の変化パターンは同種の変化パターンを示すこととなり、また、異なる運転パターンで運転を行えば、その加熱運転におけるプロセス値の変化パターンは異なるものとなるため、プロセス値の変化パターンに基づいて運転パターンの区別が可能となる。そのため、同種のプロセス値の変化パターンを有するもので各加熱運転区間を分類すれば、それぞれ異なる種類のプロセス値の変化パターンを有する複数のグループが形成され、その各グループは各運転パターンのいずれかに対応するグループとなる。このように、区間分類部36によれば、加熱設備10ごとに識別条件や方法を変更する必要なく、加熱運転における運転パターンごとに各加熱運転区間を識別することができ、その結果、運転パターンごとに各加熱運転区間のプロセス値の変化パターンを蓄積して記憶することができる。
【0039】
判定基準生成部37は、後述する分類判定部38及び状態判定部39における判定基準を作成する。具体的には、判定基準生成部37は、分類判定部38における判定基準として、区間分類部36により分類された複数のグループごとに、当該グループに属する各加熱運転区間におけるプロセス値の変化パターンに基づき、当該グループにおける平均プロセス値変化パターンを生成する。つまり、各グループに属する加熱運転区間のプロセス値の変化パターンからそのグループにおけるプロセス値の平均的変化パターンを算出し、これをそのグループに対応する運転パターンについての通常時のプロセス値変化パターンとする。また、判定基準生成部37は、状態判定部39における判定基準として、区間分類部36により分類された複数のグループごとに、当該グループに属する各加熱運転区間における投入エネルギー量の変化パターン(投入エネルギー量のプロファイルの一例)に基づき、当該グループにおける平均投入エネルギー量変化パターン(平均的な投入エネルギー量のプロファイルの一例)を生成する。つまり、各グループに属する加熱運転区間の投入エネルギー量の変化パターンからそのグループにおける投入エネルギー量の平均的変化パターンを算出し、これをそのグループに対応する運転パターンについての通常時の投入エネルギー量変化パターンとする。そして、判定基準生成部37により作成された各加熱設備10における、各グループのプロセス値及び投入エネルギー量の平均的変化パターンは、分類判定部38及び状態判定部39における判定基準として記憶部32に記憶される。
【0040】
このように、区間抽出部34、区間特定部35、区間分類部36、及び判定基準生成部37によって、各加熱設備10について、運転パターンごとの通常時におけるプロセス値及び投入エネルギー量の変化パターンが平均プロセス値変化パターン及び平均投入エネルギー量変化パターンによりモデル化され、これらを判定基準として、比較対象の運転データ(投入エネルギー量の変化パターン)がこれからどれだけ剥離しているかで各加熱設備10の状態を判定することができる。そして、管理装置30は、ネットワーク20を介して、状態判定部39の判定結果に応じて、加熱設備10の側に警報を通知するようにしてある。以下、各加熱設備10の状態の判定について説明する。
【0041】
まず、分類判定部38において、判定対象とする加熱運転区間がいずれのグループ(即ち、運転パターン)に属するかを判定する。具体的には、区間抽出部34で抽出された判定対象とする加熱運転区間である判定対象区間について、判定対象区間におけるプロセス値変化パターンと複数のグループのそれぞれにおける平均プロセス値変化パターンとの比較に基づいて、複数のグループのうちで判定対象区間が属する所属グループを判定する。つまり、加熱設備は一般的に、プロセス値に基づいて設備の制御を行うため、設備に不備があったとしても、ガス等のエネルギー投入量を通常時よりも過剰にする等によりプロセス値が所望の変化を示すように運転を行う。そのため、プロセス値の変化パターンについては、機器に不備や異常があったとしても、通常時とほぼ同様の変化パターンを示す。そこで、本実施形態では、機器の不備や異常にかかわらず、判定対象とする加熱運転区間がいずれのグループ(即ち、運転パターン)に属するかを判定するために、プロセス値の変化パターンを用いている。具体的には、区間分類部36と同様に、判定対象区間のプロセス値の変化パターンと複数のグループにおける平均プロセス値変化パターンそれぞれと比較し、プロセス値の定常値、定常値の継続時間、定常値に至るまでのプロセス値の増加率、及び、定常値に至るまでの時間とが同種であるかを判定することにより、いずれのグループに属するかを判定する。
【0042】
そして、状態判定部39において、判定対象区間における投入エネルギー量の変化パターンと分類判定部38で判定された所属グループにおける平均投入エネルギー量変化パターンとの比較に基づいて、加熱設備10の状態を判定する。具体的には、区間特定部35により特定した変化パターンの項目どうしを比較して、両者の差が許容値を超えている場合には加熱設備10に異常があるとし、両者の差が許容値以下に収まる場合には正常と判断する。複数の項目について比較する場合には、差が許容値を超えている項目数に基づいて加熱設備10に異常があるかを判定してもよい(一個でも許容値を超えている項目があれば異常とするのか、全ての項目が許容値を超えているときに異常とするのか、ある個数以上の項目で許容値を超えているものがあれば異常とするのか等)。または、両者の波形の一致度を算出し、一致度が許容値以下であるときに加熱設備10に異常があると判断してもよい。また、加熱設備10に異常があると判定した場合には、両者の間で特にどの部分に乖離が生じているかを判定してもよい。
【0043】
警報情報生成部40は、加熱設備10において、状態判定部39により、どの運転パターンで運転しているか否かにかかわらず、複数回の加熱運転で連続して加熱設備10に異常があると判定されたときは、状態判定部39の判定結果に基づき警報情報を作成する。この場合、運転パターンに着目して、ある運転パターンの加熱運転で複数回連続して加熱設備10に異常があると判定されたときにも警報情報を作成してもよい。また、複数回連続して異常と判定したときに警報情報を生成するのではなく、ある回数の加熱運転のうちで所定回数以上異常と判定された場合に警報情報を生成するようにしてもよい。なお、警報情報としては、単にその加熱設備10が異常であることのみでもよいし、具体的に投入エネルギー量の変化パターンのどの部分に平均投入エネルギー量変化パターンからの乖離が生じたかも含めてもよい。さらに、平均投入エネルギー量変化パターンからの乖離が生じる部分と加熱設備10に対する作業との対応関係を予め作成しておき、この対応関係に基づいて加熱設備10に対する作業も決定して、これも警報情報に含めるようにしてもよい。
【0044】
そして、警報情報が生成されたときは、演算部33は、管理装置30の図示しない表示部に警報情報を表示させたり、通信部31により、ネットワーク20を介して、異常と判定された加熱設備10の現場用管理装置やその加熱設備10の管理者の携帯端末等、加熱設備10の側に警報情報を内容とする警報を通知する。そして、加熱設備10の管理者等は、管理装置30の提供するWebサービスにアクセスすることにより、判定結果等の各種データを閲覧可能になっている。
【0045】
次に、本実施形態による管理システム1により加熱設備10の監視を行う概略的な手順について説明する。以下では、加熱設備10として430℃と480℃と500℃との3種類の運転パターンの加熱運転を行う加熱炉を対象に、プロセス値を加熱炉内の温度とし、投入エネルギー量を加熱炉の運転に用いるガスの流量とした場合を例とする。また、管理装置30には、通信部31を介して所定期間分の温度とガス流量とが入力され、且つ、記憶部32に蓄積的に記憶されているものとする。この場合、管理装置30に対して、加熱設備10の側から所定期間にわたりデータの入力が行われ、それを蓄積的に記憶されるようにしてもよいし、すでに加熱設備10の側で保管されている所定期間分のデータをまとめて管理装置30に入力するようにしてもよい。
【0046】
図2は、判定基準生成部37により判定基準が生成するまでの判定基準作成処理のフローチャートを示す。判定基準作成処理では、まず、区間抽出部34が、所定期間分の温度及びガス流量のデータから、その所定期間におけるバッチ運転において加熱運転が行われた各加熱運転区間を抽出する(#1)。例えば、図4を用いて一例を説明すると、図4は温度及びガス流量の時間変化の一例を示し、これに対し、区間抽出部34は、一度温度が上昇し始めてから温度が下降し始めるまでの各区間(破線で示してある区間)をそれぞれ加熱運転区間として抽出する。
【0047】
そして、区間特定部35が、区間抽出部34により抽出された各加熱運転区間について、プロセス値変化パターンとして温度の変化パターンを特定し、投入エネルギー量の変化パターンとしてガス流量の変化パターンを特定する(#2)。次に、区間分類部36が、区間特定部35により特定された各温度変化パターンに基づいて、各加熱運転区間を、同種の温度変化パターンを有するものごとにグループ分けして、複数のグループに分類する(#3)。図4を用いて説明すると、図4では430℃と480℃と300℃との3種類の運転パターンの加熱運転が行われているが、個々の運転パターンの加熱運転では、温度の変化パターンが異なるため、区間分類部36のように温度の変化パターンに基づいて分類することで、430℃の加熱運転に対応するグループと、480℃の加熱運転に対応するグループと、300℃の加熱運転に対応するグループとに、それぞれグループ分けされることになる。
【0048】
その後、判定情報生成部37が、区間分類部36により分類された複数のグループ(430℃の加熱運転と、480℃の加熱運転と、300℃の加熱運転)ごとに、当該グループに属する各加熱運転区間における温度変化パターンに基づき、当該グループにおける平均温度変化パターンを生成し、且つ、当該グループに属する各加熱運転区間におけるガス流量の変化パターンに基づき、当該グループにおける平均的なガス流量変化パターンを生成する(#4)。そして、最後に、生成された各グループにおける平均温度変化パターン及び平均的なガス流量変化パターンを記憶部32に記憶し(#4)、判定基準作成処理が終了する。
【0049】
図3は、現在の加熱設備10の状態を判定する判定処理のフローチャートを示す。判定処理では、まず、異常判定回数n=0としておく(#5)。そして、加熱設備10の側から直近の温度とガス流量とが入力されると(#6)、入力された温度とガス流量を記憶部32に記憶し、さらに、入力された温度とガス流量から、区間抽出部34が加熱運転区間を抽出し(#7)、抽出された加熱運転区間について、区間特定部35が温度及びガス流量の変化パターンを特定する(#8)。そして、分類判定部38が、記憶部32に記憶された各グループの平均温度変化パターンと、特定された温度の変化パターンとを比較し、当該加熱運転区間の属する所属グループを判定する(#9)。さらに、状態判定部39が、特定された所属グループの平均的なガス流量変化パターンと当該加熱運転区間の変化パターンとを比較し、加熱設備10の状態を判定する(#10)。
【0050】
#9,10の判定について、図5を例に具体的に説明する。図5は500℃の加熱運転に対応するグループにおける平均温度変化パターン及び平均的なガス流量変化パターンと、判定対象とする現在の500℃の加熱運転における温度及びガス流量の変化パターンとを示す。このとき、図5に示すように、500℃の加熱運転に対応するグループの平均温度変化パターンと現在の加熱運転における温度の変化パターンが同種の変化パターンを示すため、#9では、現在の加熱運転が500℃の加熱運転に対応するグループに属すると判定される。そして、図5に示すように、500℃の加熱運転に対応するグループの平均ガス流量変化パターンと現在の加熱運転におけるガス流量の変化パターンとは、温度が定常状態に達している期間におけるガス流量に開きがあるため、#10では、ガス流量の変化パターンについて通常状態からの乖離があるとして、加熱設備10に異常があると判定される。
【0051】
このように、加熱設備10の状態が判定され、加熱設備10の状態が異常である場合には(#11:Yes)、異常判定回数nに1を加算し(#12)、異常判定回数nが閾値ns未満であるときは#6に戻り、次の加熱運転についての判定を行うようにする(#13:No)。一方、加熱設備10の状態が正常と判定されたときには#5に戻り、異常判定回数nを0にリセットしてから次の加熱運転についての判定を行うようにする(#11:No)。そして、これらを繰り返し、異常判定回数nが閾値ns以上となったときは、警報情報生成部40が警報情報を生成して(#14)、判定処理を終了する。
【0052】
このように、本実施形態に係る管理システム1によれば、加熱設備10ごとに識別条件や方法を変更する必要なく、加熱運転における運転パターンごとに各加熱運転区間を識別することができ、その結果、運転パターンごとに各加熱運転区間のプロセス値変化パターンを蓄積して記憶することができ、運転パターンごとに通常時における運転データのモデル化が可能になっている。これにより、本実施形態に係る管理システム1によれば、加熱運転における運転パターンの識別を汎用性高く行うことができる。
【0053】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、加熱設備10の側から、ネットワーク20を介して、管理装置30にプロセス値及び投入エネルギー量を入力する構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。加熱設備10がペンレコーダーにより紙(表示体の一例)等にプロセス値の経時的変化を記録するようなアナログなデータでプロセス値が記録されている場合には、管理装置30に、プロセス値の経時的変化を示すグラフを表示する表示体に対する画像処理によってプロセス値を取得し、入力部にプロセス値を入力する画像処理器を設けて、画像処理器により表示体からプロセス値をデジタルデータとして取得するようにしてもよい。
【0054】
(2)上述の実施形態では、判定基準生成部37では投入エネルギー量の変化パターンから平均投入エネルギー量変化パターンを生成し、状態判定部39で平均投入エネルギー量変化パターンを判定基準として判定を行う構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。判定基準生成部37は、加熱運転区間における投入エネルギー量のプロファイルに基づき、当該グループにおける平均的な投入エネルギー量のプロファイルを生成するものであればよく、状態判定部39は、判定対象区間における投入エネルギー量のプロファイルと分類判定部38で判定された所属グループにおける平均的な投入エネルギー量のプロファイルとの比較に基づいて、加熱設備10の状態を判定するものであればよい。
【0055】
(3)上述の実施形態では、プロセス値を加熱炉内の温度とし、投入エネルギー量を加熱炉の運転に用いるガスの流量とした場合を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、投入エネルギー量をガス以外の燃料の投入量にしてもよいし、また、プロセス値を蒸気の発生量としてもよく、適宜選択可能である。
【0056】
(4)上述の実施形態では、区間分類部36で各運転パターンに対応する複数のグループに分類された各加熱運転区間のデータ(プロセス値及び投入エネルギー量)から、判定基準作成部37が判定基準を作成する構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。区間分類部36で各運転パターンに対応する複数のグループに分類された各加熱運転区間のデータ(プロセス値及び投入エネルギー量)は種々の分析に利用することができ、例えば、グループごとに平均的な投入エネルギーの経時的変化を求めて、加熱設備の劣化傾向を推定するようにしてもよい。
【0057】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば加熱設備の監視に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 管理システム
10 加熱設備
20 ネットワーク
30 管理装置
31 通信部(入力部)
32 記憶部
34 区分抽出部
35 区分特定部
36 区分分類部
37 判定基準生成部
38 分類判定部
39 状態判定部
図1
図2
図3
図4
図5