特許第6790560号(P6790560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6790560有機系酸素吸収剤含有酸素吸収性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6790560
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】有機系酸素吸収剤含有酸素吸収性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20201116BHJP
   C08K 5/1539 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 3/11 20180101ALI20201116BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20201116BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20201116BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K5/1539
   C08K5/20
   C08K5/3417
   C08K5/098
   C08K3/11
   B65D81/26 J
   B65D65/40 D
   B65D1/02 110
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-153412(P2016-153412)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-21128(P2018-21128A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】澤 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】平山 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】村松 かんな
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−523791(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/099921(WO,A1)
【文献】 特開2015−137295(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/003235(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/102086(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/137450(WO,A1)
【文献】 特開2004−131118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
B65D 1/02
B65D 65/40
B65D 81/26
C08K 3/11
C08K 5/098
C08K 5/1539
C08K 5/20
C08K 5/3417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂と有機系酸素吸収剤とを含む酸素吸収性樹脂組成物において、該組成物は、元素換算で、1030ppmのコバルトと、1〜15ppmのチタンを含有し、前記有機系酸素吸収剤を0.5〜2.0質量%の量で含有していることを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機系酸素吸収剤が、下記式(1):
【化1】
式中、環Xは、1つの不飽和結合を有する脂肪族環であり、
Yは、アルキル基である、
で表わされる酸無水物、該酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド又はジカルボン酸、及び該酸無水物に由来する構成単位を有する重合体からなる群より選択された少なくとも一種である請求項1に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機系酸素吸収剤が、分子量が1000以下の非ポリマー型化合物である請求項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機系酸素吸収剤が、前記酸無水物とジアミンから誘導されるビスイミド化合物である請求項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機系酸素吸収剤が、前記酸無水物と脂肪族ジアミンとから誘導される脂肪族系ビスイミド化合物である請求項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜の何れかに記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる層を有している単層又は多層構造の成形体。
【請求項7】
容器である請求項に記載の成形体。
【請求項8】
容器用プリフォームである請求項に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系酸素吸収剤を含む酸素吸収性樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂と有機系酸素吸収剤とを含む酸素吸収性樹脂組成物に関するものであり、更には該酸素吸収性樹脂組成物を用いて形成される容器にも関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂は、成形性、透明性、機械的強度、耐薬品性などの特性に優れており、また、酸素等のガスバリア性も比較的高く、フィルム、シート、ボトルなどの包装材料として種々の分野で使用されている。また、このような包装材料のガスバリア性を高めるために、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物やポリアミド等のガスバリア性に優れたガスバリア性樹脂からなる層を、適当な接着剤樹脂層を介して、ポリエステル樹脂からなる内外層の間の中間層として設けた多層構造体も知られている。
【0003】
ところで、市販のポリエステルボトル等の包装容器に関して、省資源及び軽量化等の観点から、胴部等の厚みをさらに薄肉化することが求められているが、このような要求を満足するためには、当然のことながら、薄肉化による酸素等に対するガスバリア性の低下を抑制することが必要となる。この場合、上記のようなガスバリア性樹脂を用いる態様では、ガスの透過を遮断するために、多層化が必要であり、容器の薄肉化に十分に対処することができない。このため、更なるガスバリア性の向上が求められている。
【0004】
ガスバリア性樹脂を使用せずに酸素等に対するバリア性を高める手段としては、鉄粉等の無機系酸素吸収剤を使用することが知られているが、このような酸素吸収剤は、それ自体が酸化されることにより酸素を吸収し、酸素吸収により酸素透過を遮断するバリア性を示すのであるが、樹脂を着色してしまうため、透明性が要求される包装の分野には適用されない。従って、包装の分野では、樹脂の着色を生じない有機系の酸素吸収剤の使用が一般的である。
【0005】
有機系の酸素吸収剤は、脂肪族系不飽和結合を有する化合物であり、炭素間不飽和結合に酸素が反応することにより、酸素吸収性を示すというものであり、例えば、特許文献1には、未変性のポリブタジエンや無水マレイン酸変性ポリブタジエン等の酸化性有機成分(有機系酸素吸収剤)を含む酸素吸収性樹脂組成物が提案されている。
また、特許文献2には、不飽和脂環構造(シクロヘキセン構造)を有する化合物を有機系酸素吸収剤として含む酸素捕集組成物が提案されている。
【0006】
更に、特許文献3〜5には、下記式;
【化1】
式中、環Xは、1つの不飽和結合を有する脂肪族環であり、
nはゼロまたは1の数であり、
Yはアルキル基である、
で表される酸無水物;該酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド、ジカルボン酸などの誘導体;或いは該酸無水物から誘導される構成単位を含むポリマー;などを有機系酸素吸収剤として含む酸素吸収性樹脂組成物が、本出願人により提案されている。
【0007】
更にまた、特許文献6には、上記式で表される酸無水物に芳香族ジアミンを反応させて得られるビスイミドを有機系酸素吸収剤として含む酸素吸収性樹脂組成物が提案されている。
【0008】
ところで、上述した有機系酸素吸収剤は、酸素との反応(酸化)を促進させるために遷移金属触媒が併用されている。このような遷移金属触媒として、最も効果的なものがコバルト系触媒であることが知られている。
上述した特許文献3〜6等において、このような遷移金属触媒(コバルト触媒)の使用量は少なくとも10ppm程度と記載されているが、有機系酸素吸収剤の低い濃度領域において十分な酸素吸収性(酸化性)を発現させるためには、本発明者らの研究によると、少なくとも70ppm以上の濃度となるように配合することが必要である。
【0009】
しかしながら、上記のような遷移金属触媒、特にコバルト触媒は、非常に高価であるため、可及的に少ない配合量で充分な酸素吸収性を発現させることが求められているのが実情である。
また、コバルト触媒の使用量が多い場合には、基材であるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂も酸化されて劣化してしまい、容器壁の強度低下や黄変をもたらすこともある。このような強度低下は、容器壁を薄肉化する場合には、極めて大きな問題となる。また、容器壁が薄肉になる程、黄変が顕著になる傾向がある。従って、このような観点からもコバルト触媒の使用量の低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−161796
【特許文献2】特表2010−523799
【特許文献3】WO2012/102086
【特許文献4】WO2013/099921
【特許文献5】特開2015−174895
【特許文献6】特開2013−531084
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂と有機系酸素吸収剤とを含み、更に該有機系酸素吸収剤の酸化を促進させるための触媒として、コバルト触媒を含む酸素吸収性樹脂組成物において、コバルト触媒の配合量を少なくして酸素吸収能が高められている酸素吸収性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記酸素吸収性樹脂組成物により形成された層を含む容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、コバルト触媒を用いてエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂中に分散されている有機系酸素吸収剤の酸素吸収性(被酸化性)について多くの実験を行い、検討した結果、触媒成分としてチタン化合物を微量併用することにより、コバルト触媒の使用量を大きく低減させて酸素吸収性を高めることができ、しかも、チタン化合物を併用した場合には、コバルト触媒の量を従来採用されているような量で使用すると、その酸素吸収性が低下してしまうという驚くべき事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明によれば、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂と有機系酸素吸収剤とを含む酸素吸収性樹脂組成物において、該組成物は、元素換算で、5〜50ppmのコバルトと、1〜15ppmのチタンを含有していることを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物が提供される。
本発明によればまた、上記酸素吸収性樹脂組成物からなる層を有している単層又は多層構造の成形体が提供される。
かかる成形体は、一般に、容器または容器用プリフォームとして使用される。
【0014】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物においては、
(1)前記コバルトを5〜50ppmの濃度で含有していること、
(2)前記有機系酸素吸収剤を0.5〜2.0質量%の量で含有していること、
(3)前記有機系酸素吸収剤が、下記式(1):
【化2】
式中、環Xは、1つの不飽和結合を有する脂肪族環であり、
Yは、アルキル基である、
で表わされる酸無水物、該酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド又はジカルボン酸、及び該酸無水物に由来する構成単位を有する重合体からなる群より選択された少なくとも一種であること、
(4)前記有機系酸素吸収剤が、分子量が1000以下の非ポリマー型化合物であること、
(5)前記有機系酸素吸収剤が、前記酸無水物とジアミンから誘導されるビスイミド化合物であること、
(6)前記有機系酸素吸収剤が、前記酸無水物と脂肪族ジアミンとから誘導される脂肪族系ビスイミド化合物であること、
が好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少量のチタンを組成物中にコバルトと共存させることにより、元素換算でのコバルト量が5〜50ppm、特に10〜30ppmとなるような著しく少量でのコバルト触媒の使用により、大きな酸素吸収性を実現することができる。
例えば、後述する実施例に示されているように、本発明に従い、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(以下、単にPETと呼ぶことがある)にコバルト触媒と共にチタンが共存している酸素吸収性樹脂組成物を用いて成形された500mLボトルに無酸素水を充填したものについて、23℃50%RH×1週間経過後の水中溶存酸素濃度を測定すると、PET単独では約1.0ppmであったものが約0.4ppm以下、特に0.2ppm近くにまで大きく低減している。一方、コバルト触媒のみでチタンが共存していない酸素吸収性樹脂組成物により成形されたボトルでは、本発明と同程度にまで溶存酸素濃度を低減させるには約70ppm以上もの量でコバルト触媒を配合することが必要である。
このことから理解されるように、本発明によれば、高い酸素吸収性を発揮させるためのコバルト触媒の量を大きく低減させることができる。
更に、上記実験結果によれば、チタンを共存させた場合、本発明で規定する範囲を超えてコバルト触媒の量が多くなると、溶存酸素濃度は増大していくことが確認されている。即ち、チタンの共存により、コバルト触媒の量がある程度以上増大すると酸素吸収能は増大するのではなく、むしろ低下していくという極めて予想外な結果が確認される。
【0016】
このようなチタンの共存による酸素吸収能の挙動の理由は、実験的に確認されてはいるが、明確に解明されてはいない。おそらく、チタンとコバルトとが有機系酸素吸収剤の酸化反応に相乗的に作用しているものではないかと本発明者らは推定している。
【0017】
このように、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、高価なコバルト触媒の量を大きく低減させて、優れた酸素吸収性を実現できるため、コストの低減の上で極めて有利であり、しかも、多量のコバルト触媒の使用による過剰な酸化劣化を回避し、容器壁の薄肉化にも有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、基材樹脂(A)(即ち、マトリックスとなる樹脂成分)、有機系酸素吸収剤(B)、触媒成分(C)を含み、さらに、必要により、この種の樹脂組成物に配合されるそれ自体公知の配合剤が配合されているものである。
【0019】
<基材樹脂(A)>
基材樹脂(A)としては、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂、具体的には、テレフタル酸とエチレングリコールとから形成されるポリエチレンテレフタレート(PET)が使用される。
このようなポリエチレンテレフタレートは、通常、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃、特に55〜80℃、融点(Tm)が200〜275℃、特に220〜270℃の範囲にある。
【0020】
また、ポリエチレンテレフタレートの基本特性が損なわれない限り、例えば、エステル反復単位中、エチレンテレフタレート単位が70モル%以上、特に80モル%以上を占めるものであることを条件として、テレフタル酸以外の二塩基酸やエチレングリコール以外のジオール単位から誘導されるエステル単位を含む共重合ポリエステルも好適に使用することができる。このようなテレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0021】
このような上記ポリエステルは、少なくともフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、通常、その固有粘度(I.V.)は、0.6〜1.4dL/g、特に0.63〜1.3dL/gの範囲にあることが望ましい。
【0022】
<有機系酸素吸収剤(B)>
本発明において、酸素を吸収する有機系酸素吸収剤(B)としては、それ自体公知のもの、例えば、脂肪族不飽和結合を有するポリエン重合体、例えば、ポリブタジエンやポリイソプレン等や不飽和脂環構造を有する化合物等が好適に使用される。このような有機系酸素吸収剤は、着色の問題が無く、透明性を必要とする用途に好適に使用できるばかりか、耐熱性も良好であり、基材として使用されるPETの優れた特性が損なわれることもない。特に、不飽和脂環構造を有する化合物は、これが酸素と接触したとき、環内の不飽和結合の部分が容易に酸化され、これにより、酸素が吸収され、酸素吸収性が発揮される。例えば芳香族環内の不飽和結合では、このような被酸化性は示さない。
【0023】
本発明において、上記のような不飽和脂環構造を有する化合物(不飽和脂環構造化合物)としては、メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等があるが、本発明においては、特に下記式(1):
【化3】
式中、環Xは、1つの不飽和結合を有する脂肪族環であり、
Yは、アルキル基である、
で表わされる酸無水物、該酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド又はジカルボン酸、及び該酸無水物に由来する構成単位を有する重合体からなる群より選択された少なくとも一種が好適に使用される。
【0024】
上記の式(1)において、脂肪族環Xは、一つの不飽和結合を有する6員環、即ち、シクロヘキセン環であり、不飽和結合の位置は、3位及び4位の何れでもよいが、特に3位であることが被酸化性の観点から好適である。また、アルキル基としては、特に制限されないが、一般的には、合成上及び被酸化性の観点から、炭素数が3以下の低級アルキル基、特にメチル基が好ましく、その結合位置は、一般に3位或いは4位の何れでもよい。このような酸無水物は、アルキルテトラヒドロ無水フタル酸であり、無水マレイン酸とジエンとのディールスアルダー反応により得られ、それぞれ異性体の混合物の形態で得られ、その混合物のまま、酸素吸収成分(B)として使用することができる。
本発明において、上記酸無水物の最も好適な例としては、下記式(2)で表される3−メチル−Δ−テトラヒドロフタル酸無水物、及び下記式(3)で表される4−メチル−Δ−テトラヒドロフタル酸無水物を挙げることができる。
【化4】
【化5】
【0025】
また、上記の酸無水物は、それ自体公知の方法で誘導体を形成し得るが、不飽和脂環構造が維持されている限り、このような誘導体を酸素吸収成分(B)として使用することができる。即ち、上記の酸無水物から誘導されるエステル、アミド、イミド、或いはジカルボン酸を酸素吸収成分(B)として使用することができる。
【0026】
上記のエステルは、アルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物と各種アルコールと反応させて得られるエステルであり、エステル化に用いるアルコールとしては、特に制限されず、メチルアルコールやエチルアルコール等の脂肪族アルコールやフェノール等の芳香族アルコールの何れも使用することができる。さらにグリコール等の多価アルコールも使用することができる。この場合には、1分子中のアルコールの数に相当する数の不飽和脂環構造を導入することができる。
また、かかるエステルは、上記酸無水物の部分エステルであってもよい。
即ち、このようなエステルは、例えば下記式で表される。
R−O−OC−Z−CO−O−R
HOOC−Z−CO−O−R
或いは
HOOC−Z−CO−O−R−O−CO−Z−COOH
式中、Zは、酸無水物が有する不飽和脂環であり、
Rは、反応に用いたアルコールに由来する有機基である。
【0027】
また、上記のアミドは、アルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物と各種アミン化合物と反応させて得られるものである。
用いるアミンは、特に制限されず、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等の脂肪族アミンや、フェニルアミン等の芳香族アミンの何れも使用することができ、酸無水物基を形成している2個のカルボニル基の内の一方がアミド化されたものであってもよいし、両方がアミド化されたものであってもよい。さらに、モノアミンに限定されず、ジアミン、トリアミン等の多価アミンも使用することができ、この場合には、1分子中のアミンの数に相当する数の不飽和脂環構造を導入することができる。
【0028】
また、イミドは、上記のアミドを熱処理してイミド化したものであり、例えば、下記式;
HOOC−Z−CONH−R
或いは
HOOC−Z−CONH−R−CONH−Z−COOH
式中、Zは、酸無水物が有する不飽和脂環であり、
Rは、反応に用いたアミンに由来する有機基である、
で表されるアミドを熱処理することにより得られ、下記式;
Z−(CO)−N−R
或いは
Z−(CO)−N−R−N−(CO)−Z
式中、Z及びRは、上記と同じである、
で表される。
【0029】
さらに、ジカルボン酸は、酸無水物が加水分解して酸無水物基が開裂したものであり、下記式で表される。
HOOC−Z−COOH
式中、Z及びRは、上記と同じである。
【0030】
さらに、前述した酸無水物に由来する構成単位を有する重合体も、酸素吸収成分(B)として使用することができる。即ち、前述した式(1)で表される酸無水物は、ポリエステルを形成する二塩基酸成分として使用することができる。このような共重合ポリエステルは、分子鎖中に不飽和脂環構造を有しており、従って、所定の酸素吸収性(被酸化性)を示すため、酸素吸収成分(B)として使用することが可能となるわけである。特に、このような共重合ポリエステルは、基材樹脂(A)として用いるポリエステル樹脂との親和性が極めて高く、酸素吸収成分(B)を一様に分散させる上で極めて好適である。
【0031】
また、本発明においては、上述した一般式で表される酸無水物、或いは該酸無水物から誘導される化合物の中でも、特に分子量が2000以下、より好ましくは1000以下の非ポリマー型の化合物(即ち、繰り返し単位を分子中に有していない化合物)が好適である。このような低分子量の非ポリマー型化合物は分子の運動性が高いため、特に酸素との反応性が高く、高い酸素吸収性を示すからである。また、このような低分子量の非ポリマー型の化合物の中でも、特に前記一般式(1)の酸無水物とアミンとの反応物であるアミドを熱処理して得られるイミド化合物が特に高い酸素吸収能を示し、より好適に使用される。
【0032】
このようなイミド化合物の製造に使用される前記アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンのいずれも使用することができるが、特に脂肪族アミンを反応させて得られるイミド化合物が最も好適である。即ち、脂肪族アミンを反応させて得られるイミド化合物は、芳香族アミンから得られるイミド化合物に比してガラス転移点が低く、例えば、容器として使用した場合、使用環境時における分子の運動性が高く、この結果より高い酸素吸収性を示すこととなる。
上記の脂肪族アミンの中でも特に基材として使用されるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂に対する分散性が高く、且つ、酸素吸収(酸化)に起因する黄変を防止するという観点から、炭素数が20以下の範囲にある脂肪族モノアミン或いは脂肪族ジアミンを前記酸無水物に反応させ、次いで熱処理することによって得られるイミド化合物が最適である。
【0033】
なお、上記の脂肪族モノアミン及び脂肪族ジアミンの例としては、メチルアミン、メチレンジアミン、プロピルアミン、プロピレンジアミン、ブチルアミン、ブチレンジアミン、ペンチルアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプチルアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクチルアミン、オクタメチレンジアミン、ノニルアミン、ノナメチレンジアミン、デシルアミン、デカメチレンジアミン、ウンデシルアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデシルアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデシルアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデシルアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデシルアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデシルアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデシルアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデシルアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデシルアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコシルアミン等のアルキルアミン若しくはアルキレンジアミンを挙げることができる。
【0034】
本発明において、上述した酸素吸収剤(B)の使用量は、十分な酸素吸収性が得られ且つ基材樹脂(A)として用いるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂の成形性等の特性が損なわれないように設定される。その具体的な量は、その形態が様々であるため、厳密に規定することはできないが、一般的には、酸素吸収性樹脂組成物中に0.1〜5.0質量%、特に0.5〜2.0質量%の範囲が好適である。
【0035】
<触媒成分(C)>
本発明においては、上記酸素吸収剤(B)の酸化を促進させ、酸素吸収性を高めるために、触媒成分(C)が使用されるが、係る触媒成分としては、コバルト系触媒とチタン系触媒とが併用される。
【0036】
このようなコバルト系触媒及びチタン系触媒は、これら金属の酸化物(例えば、酸化チタン等)、無機酸塩、有機酸塩、或いは錯塩の形態を有している。
無機酸塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
一方有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩などが挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の金属塩が挙げられる。
一方、コバルト又はチタンの錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることができる。
【0037】
本発明では、チタン触媒をコバルト触媒と併用することにより、コバルト触媒の量を大幅に低減させて高い酸素吸収性を発現させることができる。
即ち、本発明の酸素吸収性樹脂組成物には、コバルト触媒は元素換算で5〜50ppm、特に10〜30ppmの量で含まれていればよく、従来公知の酸素吸収性樹脂組成物と比較して、著しく少ない量で高い酸素吸収性を発現させることができる。しかも、コバルト触媒の量が、上記範囲よりも多いと、極めて意外なことに、酸素吸収性は逆に低下することとなってしまう(後述する実施例参照)。
【0038】
また、コバルト触媒と併用するチタン触媒の量は、元素換算で1〜15ppm、特に2〜10ppmの範囲である。この量が少ないとコバルト触媒を多量に使用しないと高い酸素吸収性を発現させることが困難となってしまう。また、必要以上に多量のチタン触媒を使用したとしても、更に酸素吸収性を高めることはできず、むしろ、コスト的に不利になってしまう。
【0039】
なお、上記触媒成分の内、チタン触媒は基材樹脂であるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を重合する際の触媒としても使用されることがある。従って、チタン系重合触媒を用いて製造されたエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を基材樹脂として使用する場合には、該樹脂中に触媒残渣として存在するチタン成分がコバルト系触媒の触媒活性を高めることとなり、従って、この場合には更にチタン触媒成分を添加する必要はない。
【0040】
<その他の配合剤>
上述した(A)〜(C)の成分を含有する本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、その用途等に応じて、適宜、公知の配合剤を配合することができる。
【0041】
前述した有機系酸素吸収剤(B)や触媒成分(C)の量が所定範囲内に保持されており、目的とする酸素吸収性が損なわれない限りにおいて、それ自体公知の配合剤、例えばガスバリア性樹脂等を適宜配合することができる。
即ち、上述した酸素吸収剤(B)及び触媒成分(C)を含む樹脂組成物は、酸化によって酸素を吸収することにより酸素に対するバリア性を高めるという機能を有しているが、経時と共に、その酸素に対するバリア性は低下していく。このような不都合を有効に回避し、酸素バリア性に対する寿命を向上させるという観点から、このようなガスバリア性樹脂の使用は好適である。また、ガスバリア性樹脂の使用は、その他のガスに対するバリア性(例えば水蒸気や炭酸ガスなど)を向上させるという利点もある。
【0042】
上記のようなガスバリア性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/6・6共重合体、ポリメタキシリレンジアジパミド(MXD6)、ナイロン6・10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13等のポリアミド樹脂が代表的である。これらのポリアミドの中でも、末端アミノ基量が40eq/10g以上、特に50eq/10gを超えるポリメタキシリレンジアジパミドは、酸化劣化に対する耐性も高く、好適である。
また、ポリアミド樹脂以外のガスバリア性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体が代表的である。例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、特に25〜50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が、好適に使用される。
上記のようなガスバリア性樹脂は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有していればよい。
【0043】
また、ガスバリア性樹脂以外の配合剤としては、例えば充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属石鹸やワックス等の滑剤、改質用樹脂乃至ゴム等挙げることができる。
【0044】
<酸素吸収性樹脂組成物の調製及び用途>
上述した酸素吸収性樹脂組成物は、一般的には前述した各成分を、非酸化性雰囲気中で、押出機等を用いて混練することにより調製されるが、一部の成分を予め混合しておき、残りの成分を後から混合する等の手段も採用することができる。
例えば、基材樹脂(A)として使用されるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂の一部を、二軸押出機を用いて脱気しながら酸素吸収剤(B)及び触媒成分(C)と溶融混練してマスターバッチペレットを調製しておき、使用直前に、残りのエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を混練して成形に供することもできる。
また、前述した触媒成分(コバルト触媒及びチタン触媒)は、これを均質に配合するため、適当な有機溶媒(例えばアルコール系、エーテル系、ケトン系、炭化水素系等の有機溶媒)に溶解させた溶液を調製し、この溶液を、押出機等の混練機中で他の成分と混合することが好適である。この場合、チタン系重合触媒を用いて得られたエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂が基材樹脂として使用されている場合には、先にも述べたように、触媒成分(C)としてチタン触媒の使用を省略することができる。
【0045】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、高価なコバルト触媒の使用量が少ないにも関わらず、優れた酸素吸収性を示し、コストの点で極めて有利である。また、コバルト触媒の使用量が少ないことに関連して、過度の酸化による基材樹脂の酸化劣化を回避し、酸化による強度低下、着色(黄変)等の不都合を有効に回避することができる。しかも酸素吸収に際して異臭の原因となる低分子量分解物の副生を伴わないため、内容物の酸化劣化を防止し且つフレーバーを損なわないという点で、包装材の分野に極めて好適であり、例えばフィルム、シート、カップ、トレイ、ボトル、チューブ或いは蓋体等の形態で包装材として好適に使用される。また、粉末、フィルム、シート等の形態で密封包装容器内の酸素吸収の目的で使用することもできる。
【0046】
また、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収に際して異臭の原因となる低分子量分解物の副生を伴わないことから、袋、カップ、ボトル、チューブ等の包装容器の成形に用いた場合、この樹脂組成物からなる層を容器内容物と接触する側に位置することができ、従って、この樹脂組成物からなる層のみで包装容器を形成せしめることができる。
このような単層構造の包装容器では、上記樹脂組成物からなる層の優れた酸素吸収による酸素バリア性を活かして、その容器壁を薄肉化することができ、容器の軽量化や省資源化、低コスト化を実現できる。
【0047】
上記のような包装容器への成形は、それ自体公知の手段で行えばよく、例えば、上記の樹脂組成物を用いて押出成形等によりフィルムを成形し、得られたフィルムをヒートシールにより貼り合せることにより袋状の容器とすることができる。また、押出成形、射出成形等により、シート状或いは試験管状のプリフォームを成形し、これを、真空成形、張出成形、圧空成形、プラグアシスト成形、ブロー延伸成形等の二次成形に供することにより、カップ状、トレイ状、ボトル状の包装容器とすることができる。さらに、押出成形、射出成形、ダイレクトブロー成形等により、直接チューブ状の包装容器とすることもできる。
【0048】
さらに、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、他の樹脂乃至樹脂組成物との組み合わせにより多層構造の包装容器とすることもできる。このような多層化により、酸素に対するバリア性を更に高めるばかりか、酸素以外の気体(例えば炭酸ガスや水蒸気)に対するバリア性を高め、さらには、酸素吸収性を長期間にわたって持続させることもできる。
【0049】
このような多層構造の例としては、以下の層構成を例示することができる。
尚、以下の層構成において、以下の略号を使用した。
OAR:本発明の酸素吸収性樹脂組成物を用いて形成された酸素吸収層。
PET:ポリエチレンテレフタレート層;
PE:低、中或いは高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンまたは線状超低密度
ポリエチレンからなる層
PP:ポリプロピレンからなる層
COC:環状オレフィン樹脂の層:
GBAR:芳香族ポリアミド或いはエチレンビニルアルコール共重合体からなるガスバ
リア層
【0050】
二層構造の例;
PET/OAR
三層構造の例;
PE/OAR/PET
PET/OAR/PET
GBAR/OAR/PET
PE/OAR/COC
四層構造;
PE/PET/OAR/PET
PE/OAR/GBAR/PET
PET/OAR/GBAR/PET
PE/OAR/GBAR/COC
PE/OAR/GBAR/PE
五層構造;
PET/OAR/PET/OAR/PET
PE/PET/OAR/GBAR/PET
PET/OAR/GBAR/COC/PET
PET/OAR/PET/COC/PET
PE/OAR/GBAR/COC/PET
PE/GBAR/OAR/GBAR/PE
PP/GBAR/OAR/GBAR/PP
六層構造;
PET/OAR/PET/OAR/GBAR/PET
PE/PET/OAR/COC/GBAR/PET
PET/OAR/GBAR/PET/COC/PET
PE/GBAR/OAR/PE/GBAR/PE
PP/EVOH/OAR/PP/GBAR/PP
七層構造;
PET/OAR/COC/PET/GBAR/OAR/PET
【0051】
上記のような多層構造においては、ガスバリア樹脂層(GBAR)を含んでいる態様が、酸素吸収層(OAR)の酸素吸収性を長期間持続させる上で好適である。
また、上記の多層構造では、何れの側が容器の内面側或いは外面側に形成されていてもよい。
さらに、各層の間の接着性が不十分な場合には、適宜、不飽和カルボン酸で変性されたオレフィン系樹脂などの接着剤樹脂の層を間に介在させることも可能である。
このような多層構造の包装容器は、共押出や共射出等による多層化を利用して、前述した単層構造の場合と同様にして成形を行うことにより製造される。
【0052】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物からなる層を備えた包装容器は、その優れた酸素吸収性により優れた酸素バリア性を示すため、単層構造及び多層構造の何れの場合においても、ビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等の飲料や、果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品、その他医薬品、化粧品、ガソリン等、酸素の存在で劣化を生じる種々の内容物を充填するための容器として、極めて好適である。
また、透明性にも優れているため、透明性の要求される用途にも好適に使用できる。
【実施例】
【0053】
本発明を次の例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に規制されるものではない。
【0054】
元素量の定量;
なお、実験に用いたポリエステル樹脂に含まれるチタン(Ti)、アンチモン(Sb)、コバルト(Co)の各元素についての定量は、以下の方法により行った。
試料を凍結粉砕器により粉状に粉砕し、約0.5gを秤量したものをテフロン(登録商標)製ステンレスジャケット付密閉容器に入れ、硫酸6ml硝酸3mlを添加した後密閉した。電気炉で220℃20時間加熱することで完全に分解した。内標準物質としてイットリウムを加え、超純水で20mlまでメスアップしたものを測定溶液としてICP発光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)にて測定を行った。
【0055】
溶存酸素濃度の測定;
無酸素水製造器(LOW DISSOLVED OXYGEN:三浦工業(株)製)でほぼ酸素濃度が0である無酸素水を作成し、これを成形したボトルに満注充填し、プラスチックキャップで密封した。23℃50%RHの恒温恒湿室に1週間保管した後のボトル内水中溶存酸素濃度を水中溶存酸素濃度計(oxygen indicater:orbisphere laboratories製)で測定した。
【0056】
<使用ポリエステル樹脂(A)>
(A1)エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(5015W)
新光合繊製、重合触媒Sb
(A2)エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(5512T)
新光合繊製、重合触媒Ti
(A3)エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(CR8839T)
華潤製、重合触媒Ti
【0057】
<酸素吸収成分(B)>
窒素雰囲気下で2−プロパノール57kgにヘキサメチレンジアミン(東レ製)6kgを溶解し、そこへ4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸を45重量%およびcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸を21重量%含有するメチルテトラヒドロ無水フタル酸混合物(HN−2200:日立化成製)19kgを液温が50℃を超えないようにゆっくりと加えた。
全量投入後、100〜160℃で生成する水および溶媒を除去しながら約7時間反応させることで酸素吸収成分(B)16.7kgを得た。
【0058】
<遷移金属触媒(C)>
ネオデカン酸コバルト(OMG製)
<酸素吸収性樹脂ペレットの製造>
バレル設定温度を260〜280℃とした造粒設備付帯二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用い、ポリエステル樹脂(A)に酸素吸収成分(B)を10%混合混練しストランド状に押出、酸素吸収性樹脂ペレットを得た。酸素吸収成分(B)は液体フィーダー(モーノポンプ:兵神装備製)により押出機中途の開口部より添加した。
【0059】
<実施例1>
ポリエステル樹脂(A3)90質量部、ポリエステル樹脂(A3)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.015質量部をドライブレンドして成形機のホッパーに投入し、射出成形によりボトル用の25g単層プリフォームを成形した。次いで、成形したプリフォームを500mL用ボトルに二軸延伸ブロー成形した。
成形したボトルの含有元素量(ppm)、酸素吸収成分量(wt%)1週間後の溶存酸素濃度(ppm)を表1に示す。
【0060】
<実施例2>
ポリエステル樹脂(A3)90質量部、ポリエステル樹脂(A3)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.010質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0061】
<実施例3>
ポリエステル樹脂(A3)90質量部、ポリエステル樹脂(A3)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.005質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0062】
<実施例4>
ポリエステル樹脂(A3)85質量部、ポリエステル樹脂(A3)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット15質量部、遷移金属触媒(C)0.030質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0063】
<実施例5>
ポリエステル樹脂(A3)85質量部、ポリエステル樹脂(A3)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット15質量部、遷移金属触媒(C)0.015質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0064】
<実施例6>
ポリエステル樹脂(A3)90質量部、ポリエステル樹脂(A1)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.015質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0065】
<実施例7>
ポリエステル樹脂(A1)45質量部、ポリエステル樹脂(A3)45質量部、ポリエステル樹脂(A1)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット5質量部、ポリエステル樹脂(A1)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット5質量部、遷移金属触媒(C)0.030質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0066】
<比較例1>
ポリエステル樹脂(A1)90質量部、ポリエステル樹脂(A1)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.050質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0067】
<比較例2>
ポリエステル樹脂(A1)90質量部、ポリエステル樹脂(A1)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.015質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0068】
<比較例3>
ポリエステル樹脂(A3)90質量部、ポリエステル樹脂(A3)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.050質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0069】
<比較例4>
ポリエステル樹脂(A3)85質量部、ポリエステル樹脂(A3)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット15質量部、遷移金属触媒(C)0.050質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0070】
<比較例5>
ポリエステル樹脂(A2)90質量部、ポリエステル樹脂(A2)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.050質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0071】
<比較例6>
ポリエステル樹脂(A2)90質量部、ポリエステル樹脂(A2)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部、遷移金属触媒(C)0.015質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0072】
<比較例7>
ポリエステル樹脂(A2)90質量部、ポリエステル樹脂(A2)を基材に用いた酸素吸収性樹脂ペレット10質量部とする以外は実施例1と同様の方法でボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】